小説
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峰
岩の峰、山の頂。
auríþan ólmarai kréinul an þráin.
読み:アウリーサン オルマライ クレーヌル アン スライン。
| aur-íþ-an | ólmar-ai | kréin-ul | an | þráin. |
| 昇る-<〜させる>-<彼らが> | 年長者-<〜たちが> | 遺骨-<〜たちを> | 上手 | 峰<対格> |
「年長者たちが遺骨を上手の峰へ運び上げる。」
葬送の描写。火葬のあとの骨は、北の高みや丘の上の納骨所に収める。使役の auríþ-「上げる」と an+対格「上手へ」を組み合わせて、骨を高い所へ送る動きを言う。
lúin áura endríña an þráin, léuna aursárail.
読み:ルーイン アウラ エンドリーニャ アン スライン、レウナ アウルサーライル。
| lúin | áur-a | endríña | an | þráin, | léun-a | aursár-ail. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 未成年の者<主格> | 上手 | 峰<対格> | 申す-<(軽いものが)> | 祖先-<〜らに> |
「未成年の者は峰に登ると、祖先に言葉を申し上げる。」
成人の儀の次第を述べる書き言葉の文。主節では主語を言っていないが、動詞の語尾から、lúin の節と同じ者が主語だとわかる。祖先に向けた言葉なので、謙譲の補充形 léun- を使う。この儀を終えると成名が与えられ、endríña ではなくなる。
dúla anléuma es þráinos, ésa élvar þáil.
読み:ドゥーラ アンレウマ エス スライノス、エーサ エルヴァル サイル。
| dúl-a | anléuma | es | þráin-os, | és-a | élvar | þáil. |
| 下る-<(軽いものが)> | 上の風<主格> | から | 峰-<属格> | いる-<(軽いものが)> | 天<主格> | 澄んだ |
「上の風が峰から下りてきて、空が澄みわたっている。」
乾風期の初めのころの空模様を言う文。接続詞を使わずに主節を二つ並べ、あいだを区切りの印(読点)で区切っている。anléuma は北の高みから下りてくる風なので、動詞は「昇る」ではなく dúl-「下る」を使う。þráin「峰」は石の峰なので重性で、属格は -os になる。anléuma は清く良い風とされ、この風が吹くと星読みの季節が来る。
ráumimor an þráin dórel.
読み:ラウミモル アン スライン ドーレル。
| ráum-imor | an | þráin | dórel. |
| 歩く-<我々が> | 上手 | 峰<対格> | 明日 |
「明日、我々は峰へ登る。」
高原語の移動の表現では、上るか下るかをかならず言い分ける。峰へ行くときは an+対格「上手へ」を使う。þráin は重性の子音語幹なので、対格は主格と同じ形になる。時制がないので、未来のことは dórel「明日」で示す。
éso þráin tó áuren.
読み:エーソ スライン トー アウレン。
| és-o | þráin | tó | áur-en. |
| いる-<(重いものが)> | 峰<主格> | あの<重性> | 昇る-<〜した・〜された> |
「あの峰は高い。」
一年じゅう雪の消えない峰を見上げて言う日常の文。「AはBだ」の文も繋辞 és- を先頭に置く。þráin は重性なので、繋辞は -o、指示詞は重性の tó になる。述語の分詞 áuren は重性・単数・主格なので一致の語尾がつかない。
sénimor þráinul álul.
読み:セーニモル スライヌル アールル。
| sén-imor | þráin-ul | ál-ul. |
| 見る-<我々が> | 峰-<〜たちを> | 白い-<重性・〜ら(古い母音交替)・対格> |
「我々には白い峰々が見える。」
雪をかぶった北の高みの峰を言う文。峰 þráin は重性なので、複数の主格と対格は -ul になる。形容詞も重性・複数・対格の -ul で一致する。
éso lóur só þáil, an þráinos tóro.
読み:エーソ ロール ソー サイル、アン スライノス トーロ。
| és-o | lóur | só | þáil, | an | þráin-os | tór-o. |
| いる-<(重いものが)> | 瀬<主格> | この<重性> | 澄んだ | 上手 | 峰-<属格> | 来る-<(重いものが)> |
「この瀬は澄んでいる。峰の方から流れてくる水だ。」
水の澄み方を言う用法。瀬 lóur は重性なので、繋辞は éiso、形容詞は重性の主格(語尾なし)。重性の指示詞 só が主語の名詞句の終わりを示す。後半は an+属格で「上手から」を表し、主語は前半と同じ瀬。北の高みから来る水ほど清いとされる。
北の高み
複数形 þráinul で、北の山地全体を指す地名的な言い方。
éso kreinándo aursárar þráinuls.
読み:エーソ クレイナンド アウルサーラル スライヌルス。
| és-o | kreinándo | aursár-ar | þráin-uls. |
| いる-<(重いものが)> | 納骨所<主格> | 祖先-<〜らの> | 峰-<〜らに> |
「祖先たちの納骨所は北の高みにある。」
複数形 þráinul(ここでは与格 þráinuls)は、峰々の連なる北の山地全体を地名のように指す。納骨所 kreinándo は重性の o 語幹なので、動詞は -o で一致する。骨を谷底や崖下に埋めず、天に近い高みに納めるという葬送の慣習を述べた文。
fléira aldár áuren an þráinul.
読み:フレーラ アルダール アウレン アン スライヌル。
| fléir-a | aldár | áur-en | an | þráin-ul. |
| お出ましになる-<(軽いものが)> | 座<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | 上手 | 峰-<〜たちを> |
「高き座が北の高みへお出ましになる。」
王家の聖地や納骨所のある北の高みへの行幸を言う文。峰の複数 þráinul が「北の高み(峰々の連なり)」を表す。an+対格で「上手へ」。重性の複数は主格も対格も -ul。fléir- は「行く」の尊敬の補充形。
岩の峰、山の頂。とくに北の高みの、一年じゅう雪の消えない峰々を言う。天にいちばん近い場所として、王家と古い氏族の聖地や納骨所が置かれる。岩でできたものなので重性に属する。複数形 þráinul は、地方の名としての「北の高み」を指す。
重性・子音語幹(③型)。属 þráinos、与 þráinoi、複 þráinul。
古高原語 *þráina から。主格の *-a は古い脱落で消えた。
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