小説
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本番
練習ではなく、実際に正式に行う場・機会。
sarénei, áura virá an ilánais.
読み:サレーネイ、アウラ ヴィラー アン イラーナイス。
| sarén-ei, | áur-a | virá | an | ilán-ais. |
| 本番-<与格> | 昇る-<(軽いものが)> | 言葉<主格> | 上手 | 灯-<〜たちを> |
「本番では、言葉は星々のもとへ昇る。」
日常で、練習とは違う本番の重みを言い聞かせるときの言い回し。練習の言葉は数に入らないが、本番の言葉は息となって祖先に届く、という考え方を表す。与格 sarénei を場面の枠に置き、読点で区切る。主語の virá は軽性なので、動詞は -a で受ける。
dórel, sarénei, méirim sáindaran senárei.
読み:ドーレル、サレーネイ、メーリン サインダラン セナーレイ。
| dórel, | sarén-ei, | méir-im | sáindar-an | sen-ár-ei. |
| 明日 | 本番-<与格> | 与える-<私が> | 証文-<対格> | 見る-<〜する人>-<与格> |
「明日、本番で、私は目付に証文を渡す。」
縁の市で、目付の前に正式に証文を差し出す場面を言う。場面の枠は「時→場所」の順に並べ、時の dórel を先に置く。sarénei は場面の枠に入れ、動詞の後ろの与格は受け手の senárei 一つだけにする(裸の与格は一つまで)。
sarénei, loimésa ráuvan loimán gandéroi.
読み:サレーネイ、ロイメーサ ラウヴァン ロイマーン ガンデーロイ。
| sarén-ei, | loim-és-a | ráuvan | loim-án | gandér-oi. |
| 本番-<与格> | 唱える-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 森の巫<主格> | 詞-<対格> | 硬木-<与格> |
「本番には、森の巫が硬木に向かって詞を唱えるべし。」
伐り出しの作法を書き記した文で、碑文や作法書の当為法。主語の ráuvan は人なので、当為法は軽性の -ésa になる。強勢は -és- に移るので、語根 lóim- の強勢は消える。下詠みや練習で詞を唱えても数に入らず、木の前で唱える本番の詞だけが儀式として成り立つ、という含みがある。
na rainiþíre kréva ó, na ráina éndra ó sarénei.
読み:ナ ライニシーレ クレーヴァ オー、ナ ライナ エンドラ オー サレーネイ。
| na | rainiþ-ír-e | kréva | ó, | na | ráin-a | éndra | ó | sarén-ei. |
| <〜ない> | 教える-<もし〜なら>-<(軽いものが)> | 練習<主格> | <3人称単数・重性・対格> | <〜ない> | 知る-<(軽いものが)> | 人<主格> | <3人称単数・重性・対格> | 本番-<与格> |
「練習でできないことは、本番でもできない。」
【既存の用例との照合】既存の用例と比べて、次の点が一致していることを確かめました。 - kréva「練習」は語根に強勢のあるa語幹です(対格は kréva-n)。ここでは主格のまま主語に使っています。 - 「教える」は使役形 rainíþ- です(rainiþ-énd-e、rain-íþ-a と同じ語)。 - 否定の na は動詞の直前に置きます。 - 仮定法の節は主節の前に置き、接続詞は使いません(toríro nébro…, na senéimor… と同じ型)。 - 目的語の ó は 3SG.HV.ACC とグロスします。 直すべき食い違いはなかったので、訳は変えていません。 【言い換え】辞書には「できる」にあたる語がありません。そこで ráin-「知る・心得ている」で言い換えました。後半は「人は本番でそれを心得ていない」になります。前半は同じ動詞の使役形 rainíþ-「教える(=知らせる)」を使い、「練習が身につけさせないなら」としました。こうすると、「練習で身につかないものは、本番でも身につかない」という元の意味が保てます。 【構文】仮定法の3人称単数・軽性は -íre です。強勢が -ír- に移るので、-íþ- の強勢は消えます(rainiþíre)。 【一致】 - 前半の主語 kréva は軽性a語幹なので、語尾は -e(仮定法・軽性)になります。 - 後半の主語 éndra「人」は、一般の人を指します。前半とは主語が違うので、省かずに言いました。人なので軽性で、語尾は -a です。 【目的語】目的語の枠は空けられません。どちらの節にも、重性の代名詞 ó(対格)「それ(しなければならない事柄)」を置きました。受け手の「人に」は、言わなくても文が成り立つので省いています。 【法】帰結の節は格言で、一般に成り立つことを言っています。そのため推量法ではなく、直説法で言い切りました。 【「でも」】「も」にあたる小辞は辞書にありません。同じ動詞(ráin-/rainíþ-)と同じ代名詞 ó を前後に並べた対句にして、「同じく〜ない」の響きを出しました。
(詩合わせの)正式の詠み
詩合わせで、勝ち負けの判定にかかる正式の詠み。その前の下詠みと区別して言う。
lúin tóra saréna mélnes, mé véil virán!
読み:ルーイン トーラ サレーナ メルネス、メー ヴェール ヴィラーン!
| lúin | tór-a | saréna | méln-es, | mé | véil | vir-án! |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 本番<主格> | 詩-<属格> | <禁止・願いの打ち消し> | 忘れる<命令法><あなたが> | 言葉-<対格> |
「詩合わせで正式の詠みの番が来たら、句を忘れるなよ。」
詩合わせの前に、目上の者が目下の者に言う励ましの言葉。saréna mélnes「詩の本番」は、勝ち負けの判定にかかる正式の詠みを指し、その前の下詠みと区別する。lúin 節では saréna が主語になり、軽性なので動詞は -a で受ける。禁止は mé +命令法の言い方で、2人称単数なので下向きの話し方になる。
練習(kréva)に対して、人の目の前や取引・儀式の場で、実際に、正式に行う場や機会を指す。高原では、整った言葉は息となって祖先のもとへ昇ると考えられている。練習の言葉は数に入らないが、本番の言葉は昇り、祖先に聞かれるものとされる。そのため saréna には「やり直しのきかない場」「言ったことが残る場」という重みがある。詩合わせで実際に詠む場、婚姻の席で系譜を読み交わす場、市で目付の前に証文を差し出す場、伐り出しの詞を木の前で唱える場などに広く使う。与格 sarénei「本番で」の形で、文頭の場面の枠に置いて使うことが多い(sarénei, …「本番では、…」)。軽性名詞なので、受ける語も軽性で一致する。
軽性・a語幹(語根に強勢)。対格 sarénan、属格 sarénes、与格 sarénei、複数 sarénai。くだけた話し方では語末の母音が落ちて sarén になる。
由来のはっきりしない古い語。詩合わせと礼法の言葉から、日常の言葉に広まったとされる。
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