小説
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彫る
版木に字を彫る。
tilésa lisáis flaindélei, mé tilésa gandér.
読み:ティレーサ リサイス フラインデーレイ、メー ティレーサ ガンデール。
| til-és-a | lis-áis | flaindél-ei, | mé | til-és-a | gandér. |
| 彫る-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 字-<〜たちを> | 版の木-<与格>, | <禁止・願いの打ち消し> | 彫る-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 硬木<対格> |
「字は版の木に彫るべし。硬木は彫らぬこと。」
彫り師の作法を説く教えの言葉で、法典や碑文と同じ当為法を使う。主語を言わないので「人は〜すべし」の意味になり、動詞は軽性の -a をとる。flaindél は軽性の子音語幹なので与格は -ei。後半の gandér は重性なので、主格と対格が同じ形のまま目的語になる。言葉は上へ昇るもので、版の木はそれを載せる木、硬木は下へ行く木なので彫らない、という考えを述べた文。
tílim lisáis flaindélei náumei.
読み:ティーリン リサイス フラインデーレイ ナウメイ。
| tíl-im | lis-áis | flaindél-ei | náum-ei. |
| 彫る-<私が> | 字-<〜たちを> | 版の木-<与格> | 柔らかい-<軽性・与格> |
「柔らかな版の木に字を彫る。」
彫り師の仕事を言う文。版の木は伐って寝かせたあとも軽性のままなので、形容詞は軽性の与格 -ei で一致する。伐った脂の木なら重性の -oi で一致するので、その違いが比べどころになる。
éso gandér krán an flaindélei, na tílim gandér.
読み:エーソ ガンデール クラーン アン フラインデーレイ、ナ ティーリン ガンデール。
| és-o | gandér | krán | an | flaindél-ei, | na | tíl-im | gandér. |
| いる-<(重いものが)> | 硬木<主格> | 硬い | 上手 | 版の木-<与格> | <〜ない> | 彫る-<私が> | 硬木<対格> |
「硬木は版の木より硬い。硬木は彫らない。」
彫り師の言葉。性質の程度がまさることは「an+与格」(〜の上手に)で言う。主語の gandér は重性なので、繋辞は és-o になり、形容詞 krán も重性・主格の形(語尾なし)になる。後半の gandér は目的語で、重性なので主格と同じ形。硬木を彫らないのは、硬すぎるからでもあり、禁忌だからでもある。
lúin tíla tilár pandán, lóima loimán.
読み:ルーイン ティーラ ティラール パンダーン、ロイマ ロイマーン。
| lúin | tíl-a | til-ár | pand-án, | lóim-a | loim-án. |
| とき | 彫る-<(軽いものが)> | 彫る-<〜する人> | 版木-<対格> | 唱える-<(軽いものが)> | 詞-<対格> |
「彫り師は版木を彫るとき、詞を唱える。」
彫り師が彫りはじめに、版の木へ「言葉を載せて運んでほしい」と願う短い詞を唱える習わし。lúin で始まる「〜とき」の節は、主節の前に置く。後半の主節では主語を言わないが、動詞の語尾から、前半と同じ彫り師が主語だとわかる。
ésa pandá tilárei.
読み:エーサ パンダー ティラーレイ。
| és-a | pandá | til-ár-ei. |
| いる-<(軽いものが)> | 版木<主格> | 彫る-<〜する人>-<与格> |
「彫り師には版木がある。」
所有を「ある+持ち主の与格」で言う文。tilár「彫り師」は tíl-「彫る」に -ár「〜する人」がついた語。pandá は版の木から作るので、伐ったあとも軽性のまま。そのため繋辞は軽性の ésa になる。
mé tíl gandér!
読み:メー ティール ガンデール!
| mé | tíl | gandér! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 彫る<命令法><あなたが> | 硬木<対格> |
「硬木を彫るな。」
硬木に文字を彫ることを禁じる言い方で、年長者が若い者を戒めるときに使う。禁止は「mé+命令法」で言う。tíl- は語末に削られる子音のつながりがないので、命令形も tíl のまま。重性名詞 gandér は、主格と対格が同じ形になる。
刻む
石や青銅の鋳型に字や銘を刻む。
tíla brándal viráis.
読み:ティーラ ブランダル ヴィライス。
| tíl-a | brándal | vir-áis. |
| 刻む-<(軽いものが)> | 司<主格> | 言葉-<〜たちを> |
「司が言葉を刻む。」
碑の由来を記す書き言葉の文。時制がないので、「刻む」とも「刻んだ」とも読める。石に刻んだ言葉は、昇りも消えもせず、その場所に据えておくものとされる。
tílan þelán houmáres.
読み:ティーラン セラーン ホウマーレス。
| tíl-an | þel-án | houmár-es. |
| 刻む-<彼らが> | 名前-<対格> | 家の主-<属格> |
「家の主の名を刻む。」
鋳物師が青銅の器に持ち主の名を入れる習わしを述べた文。銘は鋳型に刻んでから鋳こむ。主語を言わない3人称複数で、「(鋳物師たちは)〜する」という一般的な事柄を表す。名前を書いたり刻んだりするのは息を使わないので、禁忌には当たらない。
版木や石に字を刻むこと。彫り師は彫りはじめに、版の木へ「言葉を載せて運んでほしい」と願う短い詞を唱える。碑文を石に刻むことにも使う。硬木に字を彫ることは禁忌である。
完了語根 téil-。派生 tilár「彫り師」
古い語。
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