第4章 形容詞・代名詞・指示詞・前置詞

この章では、名詞のまわりで働く語を扱います。名詞に一致する形容詞と分詞、名詞の代わりをする代名詞、名詞句を閉じる指示詞、名詞と組んで方向と位置を表す前置詞です。最後に、これらが名詞句の中でどう並ぶか、王や役人をどう呼ぶかをまとめます。

4.1 形容詞と分詞

4.1.1 本来の形容詞と、分詞から来た形容詞

本来の形容詞は少ししかありません(gléin「清い」、þáil「澄んだ」など)。このほか、gróm「重い・粗野な」、fláin「軽い・上品な」、klér「冷たい」、káil「乾いた」、bróus「多い」、snír「少ない」なども形容詞として働きます。

日本語で形容詞にあたる語の多くは、実は動詞の分詞です(→ 第5章)。áuren「高い」は、もとは áur-「昇る」の分詞で「昇った」という意味でした。分詞は語根に -en をつけて作り、完了の意味をもちます。

形容詞と分詞は、置き場所も一致のしかたも同じなので、この章ではまとめて扱います。

4.1.2 一致の語尾

形容詞と分詞は名詞の後ろに置き、名詞の性・数・格に一致させます。語尾は、軽性なら②型(aldár の型)、重性なら③型(gandér の型)と同じです(→ 3.4)。

軽性 重性
単 主 (なし) (なし)
単 対 -an (なし)
単 属 -es -os
単 与 -ei -oi
双 主対 -au -ou
双 属与 -aun -oun
複 主 -ai -ul
複 対 -ais -ul
複 属 -ar -ur
複 与 -ail -uls

áuren「高い」の変化を、aldár「座」(軽性)と þráin「峰」(重性)につけて示します。

軽性 aldár áuren「高き座」 重性 þráin áuren「高い峰」
単 主 aldár áuren þráin áuren
単 対 aldáran áurenan þráin áuren
単 属 aldáres áurenes þráinos áurenos
単 与 aldárei áurenei þráinoi áurenoi
双 主対 aldárau áurenau þráinou áurenou
双 属与 aldáraun áurenaun þráinoun áurenoun
複 主 aldárai áurenai þráinul áurenul
複 対 aldárais áurenais þráinul áurenul
複 属 aldárar áurenar þráinur áurenur
複 与 aldárail áurenail þráinuls áurenuls

aldána aldár áuren an dúnoi

読み:アルダーナ アルダール アウレン アン ドゥーノイ

aldán-aaldáráur-enandún-oi
おわす-<(軽いものが)>座<主格>昇る-<〜した・〜された>上手丘-<与格>

「高き座は丘の上におわします。」

sénim lónan áurenan sélvanes.

読み:セーニン ローナン アウレナン セルヴァネス。

sén-imlón-anáur-en-ansélvan-es.
見る-<私が>柱の木-<対格>昇る-<〜した・〜された>-<対格>セルヴァン-<属格>

「私はセルヴァンの高い柱の木を見る。」

selvéna aurél virán fláinan.

読み:セルヴェーナ アウレール ヴィラーン フライナン。

selvén-aaurélvir-ánfláin-an.
おっしゃる-<(軽いものが)>あの方<主格>言葉-<対格>上品な-<軽性・対格>

「あの方は上品なお言葉をおっしゃる。」

þóran planélai bróusai or flaindélail.

読み:ソーラン プラネーライ ブローサイ オル フラインデーライル。

þór-anplanél-aibróus-aiorflaindél-ail.
立つ-<彼らが>白樹皮の木-<〜たちが>多い-<〜たちが>日の出側版の木-<〜らに>

「版の木々の日の出側に、白樹皮の木がたくさん立っている。」

sán fáronul grómul ín an kórvoi.

読み:サーン ファーロヌル グロームル イーン アン コルヴォイ。

sánfáron-ulgróm-ulínankórv-oi.
いる<彼らが>荷-<〜たちが>重い-<〜たちが>一上手倉-<与格>

「倉の北側に、重い荷がいくつかある。」

ほかの例:aldáres áurenes「高き座の」、þrén nadúlen「下りぬ段」(重・単・主)、elþái narímbenai「数えられぬ火」(軽・複・主)。

4.1.3 一致と性の転用

形容詞・分詞は、名詞の語形の性ではなく、名詞が指すもののいまの状態に一致します(→ 3.2.3)。伐った木を飾る分詞は、名詞が軽性でも重性の形になります(pélsei kélenoi「伐った脂の木に」)。ただし形容詞・分詞は、一致の階層(→ 3.2.5)の中で、名詞にいちばん近い語です。場面による転用(祀りの茶)では、ふつうの人は形容詞を元の性のまま残します。

性の違う名詞を並べたときは、人が一人でも含まれれば軽性、物どうしならいちばん近い名詞の性に合わせます(→ 3.2.7)。

ésau éndra si fáron káilau.

読み:エーサウ エンドラ シ ファーロン カイラウ。

és-auéndrasifáronkáil-au.
いる-<双数>人<主格>と荷<主格>乾いた-<双数>

「人と荷は乾いている。」

崖道の言葉では、双数の名詞を受ける形容詞を複数にします(→ 3.6.3)。

4.1.4 述語になる形容詞

形容詞が述語になるときも、主語に一致させます。「AはBい」は、繋辞 és- を先頭に置いて「és- +主語+形容詞」の順に言います(→ 第6章)。

ésa lisím sélvanes gléin.

読み:エーサ リシーン セルヴァネス グレーン。

és-alis-ímsélvan-esgléin.
いる-<(軽いものが)>書く-<〜の技・〜さ・主格>セルヴァン-<属格>清い

「セルヴァンの書法は清い。」

éso dún náuren.

読み:エーソ ドゥーン ナウレン。

és-odúnn-áur-en.
いる-<(重いものが)>丘<主格><〜ない>-昇る-<〜した・〜された>

「丘は高からぬ(低い)。」

4.1.5 否定の na-

分詞と形容詞の頭に na- をつけると、その性質を打ち消します。母音で始まる語の前では n- になります。na- は無強勢です。

もとの語 na- のついた形
dúlen「下りた」 nadúlen「下りぬ」
rímben「数えられた」 narímben「数えられていない」
gléin「清い」 nagléin「清からぬ」
áuren「高い」 náuren「高からぬ」

na éso ílmo nagléin.

読み:ナ エーソ イルモ ナグレーン。

naés-oílmona-gléin.
<〜ない>いる-<(重いものが)>水<主格><〜ない>-清い

「水は清からぬものではない(悪くない水だ)。」

4.1.6 形容詞から副詞を作る -in

形容詞に -in をつけると、副詞「〜く」になります(gléinin「清く」、fláinin「軽く」)。これは動詞の副動詞 -in(→ 第5章)や、代名詞から副詞を作る -in(sérin「このように」、pórin「どのように」。→ 4.4.5)と同じ語尾です。-in の形は一致せず、形が変わりません。

lísa lisár plánan gléinin.

読み:リーサ リサール プラーナン グレーニン。

lís-alis-árplán-angléin-in.
書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格>帳簿-<対格>清い-<〜して・〜く>

「書記は帳簿を清く書く。」

gléin・fláin の ein・ain は、二重母音に n がついた一つの音節で、-in ではありません。-in はいつも音節を一つ増やします(glei-nin)。

4.1.7 分詞のとる目的語と属格

分詞は短い関係節の代わりになります(pélsa kélen「伐られた脂の木」)。主語と目的語の両方を言いたいときなど、分詞で言えない長い修飾には、関係節 te を使います(→ 第7章)。

4.1.8 比較

比べる言い方にも、形容詞と前置詞 an・du を使います。「〜より(その性質が)まさって」は an +与格、「〜より劣って」は du +与格、「いちばん〜」は an +同じ仲間の複数与格です(áuren an lónail「柱の木々の上手に高い」=いちばん高い)。詳しくは第6章で扱います。

ésa lóna áuren an pélsei.

読み:エーサ ローナ アウレン アン ペルセイ。

és-alónaáur-enanpéls-ei.
いる-<(軽いものが)>柱の木<主格>昇る-<〜した・〜された>上手脂の木-<与格>

「柱の木は脂の木より高い。」

4.2 人称代名詞

4.2.1 格変化

人称代名詞は、1人称・2人称・3人称の単数と複数、それに人称を区別しない双数があります。3人称は、単数・複数とも軽性と重性を区別します。変化のしかたは、次の三種類に分かれます。

主 対 属 与
1単 ném néman némes némei
2単 tás tásan táses tásei
3単・軽 él élan éles élei
3単・重 ó ó ós ói
1複 némor némoran némores némorei
2複 társ társan társes társei
3複・軽 élai élais élar élail
3複・重 óul óul óur óuls
双数(人称なし) dáun dáun dáunaun dáunaun

tóra lisár te séna néman.

読み:トーラ リサール テ セーナ ネーマン。

tór-alis-ártesén-aném-an.
来る-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格><関係節>見る-<(軽いものが)><私>-<対格>

「私を見る書記が来る。」

anórel, an kórvoi, léisin sáindaran, méira lisár élan senárei.

読み:アノーレル、アン コルヴォイ、レーシン サインダラン、メーラ リサール エーラン セナーレイ。

anórel,ankórv-oi,léis-insáindar-an,méir-alis-árél-ansen-ár-ei.
昨日上手倉-<与格>書く<〜し終えた>-<〜して・〜く>証文-<対格>与える-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格><3人称単数・軽性>-<対格>見る-<〜する人>-<与格>

「昨日、倉の北側で、証文を書き終えて、書記はそれを目付に渡した。」

rímban brándalai némoran.

読み:リンバン ブランダライ ネーモラン。

rímb-anbrándal-ainémor-an.
物のように扱う-<彼らが>司-<〜たちが><我々>-<対格>

「お役所の連中は、俺たちを物のように扱う。」

二つめの例の élan「それを」は、軽性の証文 sáindar を受けています。3人称の代名詞は人だけでなく、物も指します。軽性のもの(人、鳥獣、言葉、紙など)は él、重性のもの(石、金属、硬木、荷、霧、泥など)は ó で受けます。

4.2.2 主語の代名詞は言わない

ké éso tambór tásei? na éso tambór némei.

読み:ケー エーソ タンボール ターセイ?ナ エーソ タンボール ネーメイ。

kéés-otambórtás-ei?naés-otambórném-ei.
<〜か>いる-<(重いものが)>雑穀<主格><あなた>-<与格><〜ない>いる-<(重いものが)>雑穀<主格><私>-<与格>

「「お前、雑穀はあるか?」「私には雑穀はない。」」

4.2.3 双数の代名詞 dáun

dáun は人称を区別しない双数の代名詞で、「われら二人」「お前たち二人」「あの二人」のどれにもなります。夫婦、組になって働く運び人、ひと組の綱など、二つでそろったものを指すのに好まれます。

gélau némor dáun du orén.

読み:ゲーラウ ネーモル ダウン ドゥ オレーン。

gél-aunémordáunduorén.
行く-<双数><我々>二人下手縁<対格>

「我ら二人は縁へ行く。」

biléndes dáunaun.

読み:ビレンデス ダウナウン。

bil-énd-esdáun-aun.
仲立ちする-<〜しますように>-<あなたが>二人-<双数の〜の・〜に>

「二人の仲立ちを頼む。」

4.2.4 重性の代名詞 ó

ó は3人称単数・重性の代名詞で、石・金属・硬木・荷・霧・泥など、重性の名詞が指すものを受けます。

文 ó の位置 読み方
他動詞、前置きなし 動詞の後ろに単独 目的語(dulíþo ó「それを下ろす」)
他動詞、重性の主語を前に出した 動詞のすぐ後ろ 再述の ó(主語の枠を埋める。ílmo dulíþo ó fáron)
自動詞 動詞の後ろ 主語。目的語の枠がないので紛れない。わざわざ言うので強調になる
自動詞 動詞の前 主語の強調(ó dúlo「ほかでもなく、それが下りていく」)。再述の ó は要らない

dulíþo ó.

読み:ドゥリーソ オー。

dul-íþ-oó.
下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・対格>

「(それが)それを下ろす。」

ó dúlo.

読み:オー ドゥーロ。

ódúl-o.
<3人称単数・重性・主格>下る-<(重いものが)>

「ほかでもなく、それが下りていく。」

ílmo dulíþo ó fáron.

読み:イルモ ドゥリーソ オー ファーロン。

ílmodul-íþ-oófáron.
水<主格>下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・主格>荷<対格>

「水こそが、荷を下ろす。」

gandér dulíþo óo.

読み:ガンデール ドゥリーソ オー。

gandérdul-íþ-oóo.
硬木<主格>下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・NOM+ACC>

「硬木こそが、それを下ろす。」

4.2.5 2人称と、目上の人の言い方

4.2.6 敬意を表す代名詞

形 意味 使い方
aurél あの方 3人称単数の尊敬の代名詞。話題の目上の人を、名を口にせず、役職名をくり返さずに受ける。数えられないので数詞も双数もつけない。複数 aurélai は「あの方々」というひとまとまりの意味だけ。今の王には使わず、王は aldár「座」で受ける
duném 手前 1人称単数の謙譲の代名詞。上向きの話し方で、自分をわざわざ言う必要があるときに ném の代わりに使う。主語は動詞の語尾でわかるので、ふつう与格 dunémei「手前に」や属格 dunémes「手前の」で現れる。手紙や願い出の書面に多い。同じ段の相手に使うと、かえってよそよそしく皮肉に響く

glóira aurél es orénos.

読み:グロイラ アウレール エス オレーノス。

glóir-aaurélesorén-os.
お越しになる-<(軽いものが)>あの方<主格>から縁-<属格>

「あの方は縁からお越しになる。」

aumeirénde ausenár sáindaran dunémei.

読み:アウメイレンデ アウセナール サインダラン ドゥネーメイ。

au-meir-énd-eau-sen-ársáindar-anduném-ei.
<お〜になる・御〜>-与える-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人・主格>証文-<対格>手前-<与格>

「目付殿に、手前へ証文をお下げ渡しいただきたく存じます。」

4.2.7 死者を指す élaur

élaur「昇りゆく人」 は、亡くなってから一年のあいだ、名を口にできない死者を指す代名詞です。él「彼」+áur-「昇る」からできた語で、「昇っている彼」の意味です。複合語は後ろの要素に強勢を置くのがふつうですが(→ 9.4.1)、élaur は前の él に強勢を残します。代名詞として古くから固まった語で、一般の決まりの外にある例外です。名を呼ぶと、上へ昇っていく途中の魂を呼び戻してしまうとされるので、その代わりに使います。一年が過ぎて昇名が定まると使わなくなり、昇名に au- を添えて呼びます。王には使わず、王については「お昇りになった座」と言います(→ 3.2.8・3.8.5)。

4.2.8 再帰代名詞 mír

mír「自分」 は、同じ節の主語と同じ人・ものを指し返す再帰代名詞です。ré の節の中の mír は ré の節の主語を指し、言った人・思った人は指しません(→ 7.2)。人称・性を区別しないので、私・お前・彼のどれにも、また重性の主語にも使えます。②型の語尾で変化します(対 míran、属 míres、与 mírei)。目上の人が主語のときは、尊敬形 aumír「御自身」 を使います。

flúuna faronár míran.

読み:フルーナ ファロナール ミーラン。

flúun-afaronármír-an.
洗う-<(軽いものが)>運び人<主格>自分-<対格>

「運び人は自分の体を洗う。」

lóima lourvirár ráun míres es fóndaros.

読み:ロイマ ロウルヴィラール ラウン ミーレス エス フォンダロス。

lóim-alourvirárráunmír-esesfóndar-os.
唱える-<(軽いものが)>系譜読み<主格>流れ<対格>自分-<属格>から源-<属格>

「系譜読みは、源から自分の流れを唱える。」

相互の代名詞 mírmir「互い」。 二人以上の者が、たがいに相手に同じことをするときは、mír を重ねた mírmir を使います。ínin「それぞれ」(ín の重ね形)と同じ作りです。

言いたいこと 言い方
互いに相手を〜する 目的語・与格に mírmir
それぞれが自分を〜する 主語の後ろに ínin、目的語に mír
それぞれが自分の〜を…する 主語の後ろに ínin、持ち主に míres

flúunau dáu faronárau mírmiran.

読み:フルーナウ ダウ ファロナーラウ ミルミラン。

flúun-audáufaronár-aumírmir-an.
洗う-<双数>二運び人-<双数>互い-<対格>

「二人の運び人は互いを洗った。」

flúunau dáu faronárau ínin míran.

読み:フルーナウ ダウ ファロナーラウ イーニン ミーラン。

flúun-audáufaronár-auíninmír-an.
洗う-<双数>二運び人-<双数>それぞれ自分-<対格>

「二人の運び人は、それぞれ自分の体を洗った。」

méiran kelárai fúnel mírmirei.

読み:メーラン ケラーライ フーネル ミルミレイ。

méir-ankel-ár-aifúnelmírmir-ei.
与える-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>綱<対格>互い-<与格>

「樵たちは互いに綱を渡した。」

táulan kelárai ínin fúnel míres.

読み:タウラン ケラーライ イーニン フーネル ミーレス。

tául-ankel-ár-aiíninfúnelmír-es.
取る-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>それぞれ綱<対格>自分-<属格>

「樵たちは、それぞれ自分の綱を取った。」

4.2.9 不定代名詞と数量の代名詞

形 意味 使い方
páin 誰か 不特定の人。na と組むと「誰も〜ない」。霧の中で名を呼べないとき、遠回しに「誰か」と呼びかけるのにも使う
póin 何か 不特定のもの。na と組むと「何も〜ない」。物は重性で受けるのがふつうなので、重性の形をとる
ómbra/ómbro すべて・みな 全体・全員。軽性 ómbra、重性 ómbro。単数は「まるごと・全体」、複数 ómbrai/ómbrul は「みな・どれも」
ínin それぞれ ひとつひとつに分けて言う配分の語

na ésa páin séndoi.

読み:ナ エーサ パイン センドイ。

naés-apáinsénd-oi.
<〜ない>いる-<(軽いものが)>誰も<主格>ここ-<与格>

「ここには誰もいない。」

ké éso póin tásei?

読み:ケー エーソ ポイン ターセイ?

kéés-opóintás-ei?
<〜か>いる-<(重いものが)>何か<主格><あなた>-<与格>

「何か持っているか。」

hóinan ómbra kelárar.

読み:ホイナン オンブラ ケラーラル。

hóin-anómbrakel-ár-ar.
帰る-<彼らが>みな<主格>伐る-<〜する人>-<〜らの>

「樵たちはみな帰っていく。」

méira houmár tambór kelárail ínin.

読み:メーラ ホウマール タンボール ケラーライル イーニン。

méir-ahoumártambórkel-ár-ailínin.
与える-<(軽いものが)>家の主<主格>雑穀<対格>伐る-<〜する人>-<〜らに>それぞれ

「家の主は、樵たちそれぞれに雑穀を分け与える。」

lísa páin þelán míres sáindarei.

読み:リーサ パイン セラーン ミーレス サインダレイ。

lís-apáinþel-ánmír-essáindar-ei.
書く-<(軽いものが)>誰か<主格>名前-<対格>自分-<属格>証文-<与格>

「誰かが証文に自分の名を書いていった。」

4.3 疑問詞

疑問詞も名詞と同じように格で形が変わり、文の先頭、動詞の前に出ます。疑問文の組み立てと、目上の人への尋ね方は第6章で扱います。ここでは形をまとめます。

主 対 属 与
pá「誰」(軽性・a語幹) pá pán pés péi
pó「何」(重性・o語幹) pó pón(前置詞の後ろでは pó) pós pói

pá éses? es pós tóres?

読み:パー エーセス?エス ポース トーレス?

páés-es?espóstór-es?
誰<主格>いる-<あなたが>から何<属格>来る-<あなたが>

「お前は誰だ。どこから来た?(なぜ来た?)」

pón dulíþo gandér?

読み:ポーン ドゥリーソ ガンデール?

póndul-íþ-ogandér?
何<対格>下る-<〜させる>-<(重いものが)>硬木<主格>

「硬木は何を下ろすのか。」

pó dulíþo gandér?

読み:ポー ドゥリーソ ガンデール?

pódul-íþ-ogandér?
何<主格>下る-<〜させる>-<(重いものが)>硬木<対格>

「何が硬木を下ろすのか。」

そのほかの疑問詞:

形 意味 使い方
pél/pól どの・どれ いくつかの中から一つを選ばせる。指示詞と同じく名詞の後ろに置き、性によってだけ形が変わる(軽性 pél、重性 pól)。名詞句ごと文頭に出す。目上の人を選ばせる問いには使わない
pómbar いくつ 物の数を尋ねる。名詞の前に置き、名詞は複数(→ 3.7.5)
plúin いつ 時を尋ねる(plúin tóres?「いつ来た」)。an plúin「いつより前に」、du plúin「いつより後に」とも言う
pórin どのように 方法・様子を尋ねる(pórin lísim?「どう書けばいい」)。sérin・térin と組になる(→ 4.4.5)

fáron pól vándes?

読み:ファーロン ポール ヴァンデス?

fáronpólvánd-es?
荷<対格>どの<重性>量る-<あなたが>

「どの荷を量っているんだ?」

人の数を尋ねる疑問詞はありません。人は数えないからです。

4.4 指示詞

4.4.1 名詞につく指示詞

名詞につく指示詞は「この」と「あの」の二つで、性によってだけ形が変わり、格では変わりません。どれも強勢をもちます。

軽性 重性
この sé só
あの té tó

éso dún tó lóuvan, éso dún só trúin.

読み:エーソ ドゥーン トー ローヴァン、エーソ ドゥーン ソー トルーイン。

és-odúntólóuvan,és-odúnsótrúin.
いる-<(重いものが)>丘<主格>あの<重性>遠いいる-<(重いものが)>丘<主格>この<重性>近い

「あの丘は遠く、この丘は近い。」

tóra dórin té es orénos.

読み:トーラ ドーリン テー エス オレーノス。

tór-adórintéesorén-os.
来る-<(軽いものが)>男<主格>あの<軽性>から縁-<属格>

「あの男が縁のほうから来る。」

luuménde ausenár plánan sé.

読み:ルーメンデ アウセナール プラーナン セー。

luum-énd-eau-sen-árplán-ansé.
ご覧になる-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人・主格>帳簿-<対格>この<軽性>

「目付殿に、この帳簿をご覧いただきたく存じます。」

三つめの例の plánan sé のように、名詞が対格でも、指示詞は sé のままです。

4.4.2 名詞句を閉じる目印

指示詞は、名詞句の中でいちばん後ろに置く語なので、名詞句の終わりの目印になります。

dúlo gandér kélen kelárar só du orén.

読み:ドゥーロ ガンデール ケーレン ケラーラル ソー ドゥ オレーン。

dúl-ogandérkél-enkel-ár-arsóduorén.
下る-<(重いものが)>硬木<主格>伐る-<〜した・〜された>伐る-<〜する人>-<〜らの>この<重性>下手縁<対格>

「樵たちが伐ったこの硬木が、縁へ下りていく。」

éso fáron gróm só némei.

読み:エーソ ファーロン グローン ソー ネーメイ。

és-ofárongrómsóném-ei.
いる-<(重いものが)>荷<主格>重いこの<重性><私>-<与格>

「私には、この重い荷がある。」

一つめの例では、só で名詞句が閉じるので、du orén は名詞句の中ではなく、主節の動詞にかかります。二つめの例では、só があるので、gróm が名詞句の中で荷を飾っていることがはっきりします(→ 4.6.4)。

4.4.3 指示詞と関係節の te

関係節を導く小辞 te は、軽性の指示詞 té「あの」が固まったものです(→ 第7章)。二つは次のように見分けます。

  1. 強勢:指示詞の té には強勢があり、そのあとに短い切れ目が入ります。関係節の te には強勢がなく、次の動詞に寄りかかって一続きに発音されます。転写では te と té を書き分けます。
  2. 後ろに来るもの:関係節の te の後ろには、かならず動詞(または na・mé+動詞)が来ます。
  3. 書き言葉:高原の文字は強勢を書かないので、te と té は同じ字になります。そのかわり、主節を接続詞なしで二つ並べるときは、あいだにかならず区切りの印を打ちます。区切りの印なしで「名詞 té 動詞…」と続いていれば、関係節と読みます。
  4. 性:重性の名詞の後ろでも、関係節なら te のままです。gandér tó は「あの硬木」、gandér te dúlo… は「下りていく硬木」です。

指示詞と関係節を両方置くとき

tóra senár él te lísim sáindaran élei.

読み:トーラ セナール エール テ リーシン サインダラン エーレイ。

tór-asen-áréltelís-imsáindar-anél-ei.
来る-<(軽いものが)>見る-<〜する人・主格><3人称単数・軽性><関係節>書く-<私が>証文-<対格><3人称単数・軽性>-<与格>

「私が証文を書いてやる、あの目付が来る。」

lisáran té, séna senár.

読み:リサーラン テー、セーナ セナール。

lis-ár-anté,sén-asen-ár.
書く-<〜する人>-<対格>あの<軽性>見る-<(軽いものが)>見る-<〜する人・主格>

「あの書記をこそ、目付が見る。」

二つめの例のように、前に出した名詞句が té で終わるときは、té の後ろに区切りを入れます。区切りがないと、関係節の te と読まれてしまいます。

4.4.4 呼びかけの té

té は単独で「そこの方」「おい」という呼びかけになります。霧の中など、名を呼べない場面で使います(→ 3.8.5)。

té, séir! na sénim nóumo táses.

読み:テー、セール!ナ セーニン ノーモ ターセス。

té,séir!nasén-imnóumotás-es.
そこの方待つ<命令法><あなたが><〜ない>見る-<私が>顔<対格><あなた>-<属格>

「そこの方、待て!顔が見えない。」

4.4.5 場所・様子・時の指示詞

「この」「あの」の sé・té から、場所・様子・時を指す語が作られています。

近い(この) 遠い・既知(あの・その) 問い
場所 séndo「ここ」 téndo「あそこ」 (pói「どこで」)
様子 sérin「このように」 térin「そのように・そのとおりに」 pórin「どのように」
時 selúin「今」 telúin「その時」 (plúin「いつ」)

場所の指示詞 séndo・téndo

léim fáron séndo, ende.

読み:レーン ファーロン センド、エンデ。

léimfáronséndo,ende.
置く<命令法><あなたが>荷<対格>ここどうぞ

「荷はここに置いてくれ、頼む。」

tóra faronár an séndo es orénos.

読み:トーラ ファロナール アン センド エス オレーノス。

tór-afaronáranséndoesorén-os.
来る-<(軽いものが)>運び人<主格>上手ここ<対格>から縁-<属格>

「運び人が縁からここへ上ってくる。」

aldána ausenár téndoi.

読み:アルダーナ アウセナール テンドイ。

aldán-aau-sen-árténd-oi.
おわす-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人・主格>あそこ-<与格>

「目付殿は、あちらにおいでです。」

様子の指示詞 sérin・térin

lís þelán táses sérin.

読み:リース セラーン ターセス セーリン。

lísþel-ántás-essérin.
書く<命令法><あなたが>名前-<対格><あなた>-<属格>このように

「自分の名前を、こうやって書いてごらん。」

mé vír térin!

読み:メー ヴィール テーリン!

mévírtérin!
<禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>そのように

「そんなふうに言うんじゃない!」

meirésa orenvandár gandér térin lísen sáindarei.

読み:メイレーサ オレンヴァンダール ガンデール テーリン リーセン サインダレイ。

meir-és-aorenvandárgandértérinlís-ensáindar-ei.
与える-<〜すべし>-<(軽いものが)>縁商人<主格>硬木<対格>そのとおりに書く-<〜した・〜された>証文-<与格>

「縁商人は、証文に書かれたとおりに硬木を渡すべし。」

時の指示詞 selúin・telúin

4.4.6 指示詞と性の転用

指示詞は、一致の階層(→ 3.2.5)で形容詞と動詞のあいだにあります。

þróumo dórin tó.

読み:スローモ ドーリン トー。

þróum-odórintó.
死ぬ<〜し終えた>-<(重いものが)>男<主格>あの<重性>

「あの男はくたばった。」

この例では、人に「死ぬ」þrúm- を使い(→ 3.2.8)、動詞の -o と指示詞 tó で人を重性に受けていて、二重に罵る言い方になっています。

4.5 前置詞

4.5.1 前置詞の一覧

前置詞は名詞の前に置き、組む格によって意味が変わります。対格と組めば「〜へ」、与格なら「〜で」、属格なら「〜から」です。

前置詞 意味 成り立ち
an 上手・北 古高原語 *an
du 下手・南 動詞 dul-「下る」や謙譲の接頭辞 du- と同じ語源
or 日の出側・東 órun「日の出」が縮まったもの
vel 日の入り側・西 vélun「日の入り」が縮まったもの
un 内・中
sal 外
es 方向を問わない「〜から」 属格とだけ組む

4.5.2 格と意味

前置詞 +対格(〜へ) +与格(〜で) +属格(〜から)
an 上手へ 上手で 上手から
du 下手へ 下手で 下手から
or 日の出側へ 日の出側で 日の出側から
vel 日の入り側へ 日の入り側で 日の入り側から
un 〜の中へ 〜の中で 〜の中から
sal 〜の外へ 〜の外で 〜の外から
es — — 〜から

方角の前置詞 an・du・or・vel には、二つの使い方があります。

dúlo gandér du dálor

読み:ドゥーロ ガンデール ドゥ ダーロル

dúl-ogandérdudálor
下る-<(重いものが)>硬木<主格>下手下の国<対格>

「硬木が下の国へ下りていく。」

mé duliþésa fáron es orénos.

読み:メー ドゥリセーサ ファーロン エス オレーノス。

médul-iþ-és-afáronesorén-os.
<禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>から縁-<属格>

「縁から荷を落とさぬこと。」

hóinan faronárai vel orén.

読み:ホイナン ファロナーライ ヴェル オレーン。

hóin-anfaronár-aivelorén.
帰る-<彼らが>運び人-<〜たちが>西へ縁<対格>

「運び人たちは縁の日の入り側へと帰っていく。」

ésa rúsil vel álmarei.

読み:エーサ ルーシル ヴェル アルマレイ。

és-arúsilvelálmar-ei.
いる-<(軽いものが)>赤月<主格>日の入り側白月-<与格>

「赤月は白月の日の入り側にある。」

þóra bóula mór or planélei.

読み:ソーラ ボーラ モール オル プラネーレイ。

þór-abóulamórorplanél-ei.
立つ-<(軽いものが)>どんぐりの木<主格>大きい日の出側白樹皮の木-<与格>

「白樹皮の木の日の出側に、大きなどんぐりの木が立っている。」

éso sáko némei un kórvoi.

読み:エーソ サーコ ネーメイ ウン コルヴォイ。

és-osákoném-eiunkórv-oi.
いる-<(重いものが)>塩<主格><私>-<与格>内に倉-<与格>

「私には倉の中に塩がある。」

faronér fáron só sal kórvo!

読み:ファロネール ファーロン ソー サル コルヴォ!

faronérfáronsósalkórvo!
担ぐ<命令法><あなたが>荷<対格>この<重性>〜の外に倉<対格>

「この荷を倉の外へ担ぎ出せ。」

ésa dalorár sal þrénuls, na ésa du þrénuls.

読み:エーサ ダロラール サル スレーヌルス、ナ エーサ ドゥ スレーヌルス。

és-adalorársalþrén-uls,naés-aduþrén-uls.
いる-<(軽いものが)>下の国の者<主格>〜の枠の外に段-<〜らに><〜ない>いる-<(軽いものが)>下手段-<〜らに>

「下の国の者は段の外にいるのであって、段の下にいるのではない。」

4.5.3 発音

前置詞 an・du・or・vel・es・un・sal は強勢をもたず、次の語に寄りかかって一続きに発音されます(un bóralei「家の中で」)。

4.5.4 an・du の軸:北か、高い方か

高原はふつう北ほど高いので、「上手」と「北」は重なります。ずれるのは、北へ下る斜面のような場所です。

dúlim an dún.

読み:ドゥーリン アン ドゥーン。

dúl-imandún.
下る-<私が>上手丘<対格>

「私は丘の北側へ下る。」

これは都の言い方で、森や縁の人は同じ道を du dún と言います。都の役人と森の案内人が道を言い合って食い違うのは、この差のためです。

絶対方位と左右:地形や道案内は、an・du・or・vel の絶対方位で言います。上ったか下ったかは、移動の動詞で必ず言い分けます。いっぽう、体・家の中・宮廷の並び・書き物の上では、左右 ormár「左(日の出の手)」・velmár「右(日の入りの手)」を使います(→ 第10章)。星は指さしてはいけないので、星の位置も or ombára ilánail「十の灯の日の出側に」のように、ほかの星との位置関係で言います。

4.5.5 時の前後と比較

an・du は、空間の上手・下手だけでなく、時の前後と比較にも使います。時間は源から流れ下る川と見られ、早いほうが上手、遅いほうが下手です。

形 空間 時 比較
an +与格 〜の上手で 〜の前に(an nébroi「霧の前に」) 〜より(その性質が)まさって
du +与格 〜の下手で 〜の後に 〜より劣って
an +属格 〜の上手から 〜以来 —
du +対格 〜の下手へ 〜まで —

an nébros, na tóra orenvandár.

読み:アン ネーブロス、ナ トーラ オレンヴァンダール。

annébr-os,natór-aorenvandár.
上手霧-<属格><〜ない>来る-<(軽いものが)>縁商人<主格>

「霧の季節が来て以来、縁商人は来ない。」

ésim séndoi du nébro.

読み:エーシン センドイ ドゥ ネーブロ。

és-imsénd-oidunébro.
いる-<私が>ここ-<与格>下手霧<対格>

「私は霧の季節までここにいる。」

時の読みと場所の読みの見分け方は第7章、比較の読みと場所の読みの見分け方は第6章で扱います。

4.5.6 前置詞の後ろの双数

双数の属格と与格は同じ形(-aun・-oun)なので、前置詞の後ろでは「〜で」か「〜から」かが決まりません。そこで、an・du・or・vel・un・sal の後ろでは、都の言葉でも双数のかわりに複数の形を使います(an sílarail「二つの月の上手に」)。紛れの起こらない方向の対格でも、これらの前置詞の後ろでは一律に複数にします(du sílarais「二つの月の下手へ」)。es は属格としか組まないので紛れず、双数のままでかまいません(es sílaraun「二つの月のほうから」)。例文は 3.6.2 にあります。

4.5.7 前置詞と疑問詞

du pó fleiréla ausenár?

読み:ドゥ ポー フレイレーラ アウセナール?

dupófleir-él-aau-sen-ár?
下手何<対格>お出ましになる-<〜だろう>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人・主格>

「目付殿は、下手のどちらへお出ましになるのでしょうか。」

or pó géles?

読み:オル ポー ゲーレス?

orpógél-es?
東へ何<対格>行く-<あなたが>

「東のどこへ行くのだ。」

4.5.8 前置詞から生まれた語

前置詞は、ほかの語と結びついて多くの語を作っています(→ 第9章)。

語 成り立ち 意味
duói du「下手」+ói「それに」 それから(→ 第6章)
esós es「から」+ós「それの」 だから
salóur sal「〜の外に」+lóur「瀬」(l が二つ続くところを一つにした) しかし
orvél or「日の出側」+vel「日の入り側」 または
anórel an+órel「日」 昨日(上手の日)
dórel du+órel 明日(下手の日)
amfóndar an+fóndar「源」 上手の源(詩・系譜での国名)
anléuma an+léuma「風」 上の風
duléumo du+léuma 下の風(重性の語尾 -o に改まっている)
ansén- an+sén-「見る」 思い出す(上手を見る)

4.6 名詞句の組み立て

4.6.1 並び順

名詞句の中では、中心の名詞が先に来て、飾りの語はすべてその後ろに並びます。前に置けるのは、九十九までの数詞と量の名詞だけです。

〔数詞・量の名詞〕+ 名詞 + 形容詞・分詞 + 属格 + 指示詞・不定の ín + 関係節

位置 入るもの 例
数詞・量の名詞 ín・dáu・téir … 九十九まで、báron など téir báronul gandérur「硬木三本」(→ 3.7)
名詞 中心の名詞 gandér
形容詞・分詞 名詞の性・数・格に一致 gandér kélen
属格 持ち主・出どころ・動作主 gandér kélen kelárar
指示詞・不定の ín sé・só・té・tó、または ín gandér kélen kelárar só
関係節 te +動詞で始まる節 → 第7章

gandér kélen kelárar só「樵たちが伐った、この硬木」:硬木・伐られた・樵たちの・この

éso fáron gróm némes só.

読み:エーソ ファーロン グローン ネーメス ソー。

és-ofárongrómném-essó.
いる-<(重いものが)>荷<主格>重い<私>-<属格>この<重性>

「この、私の重い荷がある。」

4.6.2 属格の読み方

属格は、形容詞・分詞の後ろに置きます。どう読むかは、前に何があるかで決まります。

sénim plíndo lísen lisáres senáres só.

読み:セーニン プリンド リーセン リサーレス セナーレス ソー。

sén-implíndolís-enlis-ár-essen-ár-essó.
見る-<私が>荷札<対格>書く-<〜した・〜された>書く-<〜する人>-<属格>見る-<〜する人>-<属格>この<重性>

「私は、書記が書いた目付のこの荷札を見る。」

sénim lónan áurenan sélvanes.

読み:セーニン ローナン アウレナン セルヴァネス。

sén-imlón-anáur-en-ansélvan-es.
見る-<私が>柱の木-<対格>昇る-<〜した・〜された>-<対格>セルヴァン-<属格>

「私はセルヴァンの高い柱の木を見る。」

4.6.3 指示詞と不定の ín

éso ílmo klér ín an kórvoi.

読み:エーソ イルモ クレール イーン アン コルヴォイ。

és-oílmoklérínankórv-oi.
いる-<(重いものが)>水<主格>冷たい一上手倉-<与格>

「倉の北側に、冷たい水がある。」

sán fáronul grómul ín an kórvoi.

読み:サーン ファーロヌル グロームル イーン アン コルヴォイ。

sánfáron-ulgróm-ulínankórv-oi.
いる<彼らが>荷-<〜たちが>重い-<〜たちが>一上手倉-<与格>

「倉の北側に、重い荷がいくつかある。」

ín で名詞句を閉じると、その後ろの an kórvoi は比較ではなく場所と読めます。これは次の決まりによります。

名詞を飾る形容詞の比較と述語の形容詞の比較の並べ方は、第6章で並べて示します。指示詞 só で閉じると「この冷たい水」と定まってしまうので、新しいものを紹介するときは ín を使います(→ 第6章)。

4.6.4 形容詞が名詞句の中にあるか、外にあるか

属格より後ろに来た形容詞は、名詞句の外にあります。 名詞を飾る形容詞はかならず属格より前に置くので、属格の後ろの形容詞は述語と読みます。

éso fáron némes gróm.

読み:エーソ ファーロン ネーメス グローン。

és-ofáronném-esgróm.
いる-<(重いものが)>荷<主格><私>-<属格>重い

「私の荷は重い。」

éso fáron gróm némes só.

読み:エーソ ファーロン グローン ネーメス ソー。

és-ofárongrómném-essó.
いる-<(重いものが)>荷<主格>重い<私>-<属格>この<重性>

「この、私の重い荷がある。」

主語が名詞一語だけで、属格も指示詞もないときは、名詞を飾る形容詞と述語の形容詞が同じ並びになります。このときの読み分け(後ろに与格があれば存在・所有の文として読む)は第6章で扱います。

éso fáron gróm némei.

読み:エーソ ファーロン グローン ネーメイ。

és-ofárongrómném-ei.
いる-<(重いものが)>荷<主格>重い<私>-<与格>

「私には重い荷がある。」

4.7 座名と称号

4.7.1 王の呼び方

王の位そのものは aldár áuren「高き座」 と言います。話し手にとって今の王を指すときは、これだけで足ります。aldár「座」は、実際の座が石や木でできていても、人を指す語なので軽性です(→ 3.2.2)。

lúin fléira aldár áuren es dúnos, snéiman éndrai.

読み:ルーイン フレーラ アルダール アウレン エス ドゥーノス、スネーマン エンドライ。

lúinfléir-aaldáráur-enesdún-os,snéim-anéndr-ai.
ときお出ましになる-<(軽いものが)>座<主格>昇る-<〜した・〜された>から王の丘-<属格>身をかがめる-<彼らが>人-<〜たちが>

「高き座が王の丘からお出ましになると、人々は身をかがめる。」

王一人ひとりを区別するときは、即位のときに与えられる座名を使います。座名は「aldár áuren +称えの語の属格」の形です。

aldár áuren þáiles「澄みの高き座」:座・高き・澄んだ(ものの)

王に直接ものを頼むときも、2人称は使わず、aldár áuren を3人称の主語にして願望法で言います(→ 第8章)。

luuménde aldár áuren sáindaran sé.

読み:ルーメンデ アルダール アウレン サインダラン セー。

luum-énd-ealdáráur-ensáindar-ansé.
ご覧になる-<〜しますように>-<(軽いものが)>座<主格>高い-<〜した・〜された>証文-<対格>この<軽性>

「高き座に、この証文をご覧いただきたく存じます。」

4.7.2 役職名と高め名詞

aulisénde aulisár sáindaran.

読み:アウリセンデ アウリサール サインダラン。

au-lis-énd-eau-lis-ársáindar-an.
<お〜になる・御〜>-書く-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人・主格>証文-<対格>

「書記の方に、証文をお書きいただきたく存じます。」

dulísim sáindaran aulisárei.

読み:ドゥリーシン サインダラン アウリサーレイ。

du-lís-imsáindar-anau-lis-ár-ei.
<〜させていただく>-書く-<私が>証文-<対格><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<与格>

「書記の方に、証文を書いて差し上げます。」

4.7.3 司の名

王のもとに置かれた六つの司(brándal)は、どれも「brándal +属格」で呼びます。

呼び名 字義 受け持ち
brándal lisímes 書法の司(書の司) 記録、年代記、王統の巻、法典、裁き、書記の養成
brándal ilánar 灯たちの司(星の司) 暦、天文、宮廷の祭祀。星を数えて記録する
brándal arnélvares 木々の天の司(森の司) 王の森、硬木の伐り出し
brándal kumbóros 青銅の司(金の司) 鉱山、青銅の鋳造
brándal kórvos 倉の司 雑穀の税、倉、度量衡
brándal orénos 縁の司(道の司) 崖道、降ろし場、縁の市

森の司は、ふだんは「森」の基本の語で brándal ráuvos とも言い、森の氏族は自分たちの語で brándal dravénes と呼びます。どの名で呼ぶかに、森を誰のものと見ているかが表れます。dravéna「森」を軽性で受けるか重性で受けるかが話し手によって分かれるのと(→ 3.2.4)、同じ種類の違いです。

4.7.4 呼びかけ

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