第8章 敬語

高原語の敬語は、すべて「高さ」で組み立てられています。話題の人を高めるには「昇る」から来た接頭辞 au- を、自分を低めるには「下る」から来た接頭辞 du- を使います。さらに、聞き手との身分の差によって、動詞の法・人称・問いのしかたを切りかえます。この章では、まず敬語を支える社会のしくみを述べ(8.1)、次に語形の上の敬語(8.2〜8.5)、話し方の段階(8.6)、文の中での上下の表し方(8.7〜8.8)、言葉の層による違い(8.9)の順に説明します。

8.1 敬語の背景

8.1.1 「高さ」で表す敬意

高原の人々は、世界を「上へ昇る軽いもの」と「下へ沈む重いもの」に分けて見ています(→ 第3章 名詞の性)。人の上下も同じ軸の上にあり、敬意はすべて高さで表されます。

8.1.2 十の段

高原の社会は、十の段からなる階段として考えられています。「段」þrén という語は、もともと王の丘に刻まれた石段の一段を指す語です。十という数は、両手の指がそろった「欠けのない数」とされます。

段は頂から何段下りているかで言います。王の段は「下りぬ段」で、そこから一段下り、二段下り……と数え、いちばん下が九段下りです。序数で「第何段」と言う言い方はありません(「下りた」で言う言い方は → 第3章)。

段 主な人々
下りぬ段 王と王の直系
一段下り・二段下り 王族の傍系、都の古い大家
三段下り 宮廷の高官、大きな森の氏族の長
四段下り 書記、星読み、法官などの役人。小さな氏族の長
五段下り 鋳物師、紙すき、木版の彫り師など、都の上位の職人
六段下り 都の商人、崖道の商人、一般の職人
七段下り 湖畔と段々畑の農民、牧人
八段下り 森の民(樵・狩人・炭焼き)、鉱山の働き手
九段下り 崖道の運び人、縁の肩の番人

改まった名乗りでは、名に家名・源からの世代(瀬)の数・身分の段を一息に添えます(例文は → 8.3.1)。

8.1.3 段の三つの層と話し方

ひとことで「段」と言っても、実際には三つの層が重なっています。

層 かかる範囲 説明
流れの段(家格) 家(流れ)全体 書の司の系譜の巻に記録される。ゆっくりとしか動かない
役の段 本人だけ 役に就いているあいだ、その役の段の者として扱われる。役を離れるともとの段に戻る
炉の段(法の上の身分) 本人とその世帯 ふだんは流れの段と同じ。罰の段下ろしはこの層にかかる

話し方を決めるのは、その場で相手が帯びている段です。七段下りの農家の娘が星読みの役に就けば、役のあいだは四段下りとして扱われ、四段下りに向ける言葉で話しかけられます。親兄弟は七段下りのままなので、里帰りすると、母が娘に改まった言葉を使ってしまう、という気まずさが生じます。

8.1.4 段の外の人々と縁の市

崖の下の干潟の人々と、外から来た者は段の外にいます。高原の人々にとって干潟の人は、身分が低いというより「階段に乗っていない人」で、どう扱えばいいのかわからない相手です。

8.1.5 言葉の高さ

高原の信仰では、言葉は息であり、息は軽く、上へ昇るものです。

8.2 敬語の二つの軸

高原語の敬語には、二つの別々の軸があります。

  1. 話題の人の高さ:文の中に出てくる人を高めるか、自分を低めるか。動詞の接頭辞 au-・du-(8.3)、補充動詞(8.4)、名詞の au-(8.5)で表します。
  2. 聞き手との段の差:話し相手が自分より上か、同じか、下か。動詞の法、2人称を使うかどうか、問いのしかたで表します(8.6)。

二つは組み合わせて使います。目の前の目上の人に頼みごとをするときは、相手を役職名+au- の3人称で主語に立て、尊敬の補充動詞を願望法にします。ここでは二つの軸が同時に働いています(8.6.4)。

誰を基準に高めるか。 二つの軸は、それぞれ別の基準で決まります。

たとえば、八段下りの樵が、四段下りの書記に、六段下りの商人のことを報告するとします。商人は樵より上なので、樵は商人を au- で高めます(商人が書記より下であることは関係しません)。書記は樵より上なので、樵は書記に上向きの話し方をします。

fléira aubándar du orén.

読み:フレーラ アウバンダル ドゥ オレーン。

fléir-aau-bándarduorén.
お出ましになる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-商人<主格>下手縁<対格>

「商人の方は、縁へお出ましになりました。」

luuménde aulisár sáindaran aubándares.

読み:ルーメンデ アウリサール サインダラン アウバンダレス。

luum-énd-eau-lis-ársáindar-anau-bándar-es.
ご覧になる-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人・主格>証文-<対格><お〜になる・御〜>-商人-<属格>

「書記の方に、商人の方の証文をご覧いただきたく存じます。」

一つめでは、商人に尊敬の補充形 fléir- と高め名詞 aubándar(au- + vándar「商人」)を使っています。二つめでは、聞き手の書記を au- の3人称で主語に立て、願望法で頼んでいます。話題の商人も、書記の前だからといって高めるのをやめません。

8.3 尊敬の au- と謙譲の du-

8.3.1 働き

自分の側には、話し手本人のほか、外の人や目上の人に向かって話すときの、自分の家の者や部下も入ります。部下が目上の人のもとへ行くことを目上の人に話すときは、部下の行いにも drén- を使います。

aulisénde aulisár sáindaran.

読み:アウリセンデ アウリサール サインダラン。

au-lis-énd-eau-lis-ársáindar-an.
<お〜になる・御〜>-書く-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人・主格>証文-<対格>

「書記の方に、証文をお書きいただきたく存じます。」

duþélim sélvanan, an fóndaros ráimaros dúlenan dáumbar téir lóurul, dúlenan fáir þrénul.

読み:ドゥセーリン セルヴァナン、アン フォンダロス ライマロス ドゥーレナン ダウンバル テール ロールル、ドゥーレナン ファイル スレーヌル。

du-þél-imsélvan-an,anfóndar-osráimar-osdúl-en-andáumbartéirlóur-ul,dúl-en-anfáirþrén-ul.
<〜させていただく>-名乗る-<私が>セルヴァン-<対格>上手源-<属格>ライマル-<属格>下る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>二十三瀬-<〜たちを>下る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>四段-<〜たちを>

「ライマルの源から二十三瀬下りた、四段下りの者、セルヴァンと名乗らせていただきます。」

一つめの例では、目上の人に頼むので命令法ではなく願望法を使い、動詞にも名詞にも au- がついています。二つめは改まった場での名乗りで、謙譲の du- がついています。分詞 dúlenan は二度とも、名前の sélvanan(軽性・単数・対格)に一致しています。

8.3.2 動詞の中の位置と強勢

敬語の接頭辞は、動詞のいちばん前に立ちます(動詞の組み立ては → 第5章)。

(敬語の接頭辞)+ 語根 +(使役 -íþ-)+(法の接尾辞)+ 人称の語尾

8.3.3 異形態

接頭辞と語根の頭がくっつくとき、形は規則どおりには変わりません。

語根の頭 au- du-
母音 aur- dul-
v-・w- aub- dumb-
h- h が落ちる(au- + 語根の母音) そのまま
それ以外 そのまま そのまま

aubandénde ausenár fáron.

読み:アウバンデンデ アウセナール ファーロン。

au-band-énd-eau-sen-árfáron.
<お〜になる・御〜>-量る-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人・主格>荷<対格>

「目付殿に、荷をお量りいただきたく存じます。」

8.3.4 由来

au- は動詞 áur-「昇る」から、du- は dúl-「下る」から来ています。母音の前に現れる aur-・dul- は、この古い動詞の形が顔を出したものです。v-・w- の前の aub-・dumb-、h- の前の h の脱落も、歴史上の音の変化の名残です(→ 第1章)。du- は、前置詞 du「下手」や名詞 duló「滝」とも同じ源です。

8.3.5 文字での書き方

尊敬の au- は、文字では特別な結び字「昇り結び」áuren で書きます。この結び字は尊敬の接頭辞にかぎって使います。áura「昇る」、aurá「縁鷲」のように、もともと au で始まる語は、a と u の字をふつうにつないで書きます。そのため、字を見れば「尊敬の au-」か「語の一部の au」かがわかります。

8.4 六つの補充動詞

8.4.1 一覧

日常よく使う六つの動詞は、敬語にすると au-・du- をつけずに、まったく別の語に入れかわります(補充形)。

意味 ふつう 尊敬(高める) 謙譲(低める)
いる・ある és- aldán-「おわす」 dóm-「控える」
行く gél- fléir-「お出ましになる」 drén-「参る」
来る tór- glóir-「お越しになる」 dunér-「参上する」
言う vír- selvén-「おっしゃる」 léun-「申す」
食べる mán- nélis-「召し上がる」 dúmar-「いただく」
見る sén- lúum-「ご覧になる」 dúrel-「拝見する」

これら六つの動詞では、*au-gél- や *du-sén- のように接頭辞をつけた形は使いません。

8.4.2 それぞれの語

8.4.3 活用

補充動詞の活用は、ふつうの動詞と同じです。人称の語尾も法の接尾辞も規則どおりにつき、強勢をもつ接尾辞がつけば語根の強勢は消えます(gloiréla「お越しになったのでしょうか」、luuménde「ご覧になりますように」、fleiréla「お出ましになるのでしょうか」)。

完了相も規則どおり、語根の母音を変えて作ります(→ 第5章)。次のような完了語根があります。

未完了 完了
aldán- aldáin-
fléir- fléirs-
glóir- glóirs-
lúum- lúums-
nélis- néelis-
drén- dréen-
léun- léuns-
dúmar- dóumar-

8.4.4 例

aldána aldár áuren an dúnoi.

読み:アルダーナ アルダール アウレン アン ドゥーノイ。

aldán-aaldáráur-enandún-oi.
おわす-<(軽いものが)>座<主格>昇る-<〜した・〜された>上手丘-<与格>

「高き座は丘の上におわします。」

gloiréla aulisár es orénos?

読み:グロイレーラ アウリサール エス オレーノス?

gloir-él-aau-lis-áresorén-os?
お越しになる-<〜だろう>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人・主格>から縁-<属格>

「書記の方は縁からお越しになったのでしょうか。」

selvéna ausenár ré mé duliþésa fáron es orénos.

読み:セルヴェーナ アウセナール レー メー ドゥリセーサ ファーロン エス オレーノス。

selvén-aau-sen-árrémédul-iþ-és-afáronesorén-os.
おっしゃる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人・主格><〜と(節)><禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>から縁-<属格>

「目付殿は、「縁から荷を落とさぬこと」とおっしゃる。」

léunim dáu viríñau.

読み:レウニン ダウ ヴィリーニャウ。

léun-imdáuvir-íñ-au.
申す-<私が>二言葉-<小さな・拙い>-<双数>

「拙い句を二つ、申し上げます。」

最後の例は、詩の挨拶で目下の者が先に詠むときの前置きです。指小辞 -íña が、ここではへりくだった「拙い」の意味を表しています(→ 9.2.6)。

8.4.5 そのほかの敬語の動詞

六つの補充動詞のほかは、au-・du- を規則どおりにつけて作ります。よく使うものに、謙譲の dupovér-「お尋ねいたします」があります。目上の人のことを尋ねるときに使います(8.6.4)。

8.5 名詞と持ち物の敬語

8.5.1 高め名詞

目上の人を指す名詞にも au- をつけます。これを高め名詞と呼びます。

名詞には補充形を使いません。ausenár は sén-「見る」+ -ár「〜する人」に au- をつけたもので、動詞の lúum- のような補充形は名詞には及びません。

役職名に au- をつけたものは、それだけで完全な名詞句になります。目上の人は、この形で文の主語になります。目上の人を目的語や与格にするときも、名詞には au- をつけたままにします(8.7)。

8.5.2 持ち物と体の部分

目上の人の持ち物や体の部分にも au- をつけます。

高めた持ち物は、数えてかまいません。aumárou「御両手」のように双数にすることもできます(8.8)。

所有の文と敬語。 所有の文(éso fáron némei「私には荷がある」→ 第6章)の文法上の主語は、持たれている物です。動詞の au- や尊敬の補充形は主語の側を高めるものなので(8.7)、目上の人の持ち物だからといって、存在の動詞を尊敬の aldán- にはしません。

8.5.3 敬語の代名詞

8.5.4 へりくだりの指小辞

自分の言葉や持ち物には、指小辞 -íña/-íño をつけて「拙い〜」とへりくだることがあります(viríña「拙い詩句」)。これは派生の一種なので、9.2.6 で扱います。

8.5.5 王の呼び方

8.6 話し方の三つの段階

8.6.1 三つの段階を分けるもの

話し手と聞き手の段の差によって、話し方は上向き(相手が上)、並び(同じ段)、下向き(相手が下)の三つの段階に分かれます。段階は、次の三点で決まります。

  1. 動詞の法(命令法か願望法か)
  2. 2人称を使うかどうか
  3. 問いのしかた(問いの小辞 ké を使うか、推量法で推し量るか)
下向き 並び 上向き
頼み・命令 命令法 願望法・2人称 願望法・3人称
相手の指し方 2人称 2人称 役職名+au- の3人称
はい・いいえの問い ké ké 推量法

願望法は並びと上向きの両方に、2人称と ké は下向きと並びの両方に出てきます。そのため、どの段階で話しているかは、一つの形ではなく、法・人称・尊敬形の組み合わせから伝わります。改まった場では、文の最初の動詞(法の接尾辞、人称の語尾、尊敬の形)を聞けば、たいてい段階がわかります。

8.6.2 下向き

相手が下のときは、命令法も2人称も使えます。問いは ké で作り、疑問詞でじかに尋ねます。

pá éses? es pós tóres?

読み:パー エーセス?エス ポース トーレス?

páés-es?espóstór-es?
誰<述語><主格>いる-<あなたが>から何<属格>来る-<あなたが>

「お前は誰だ。どこから来た?(なぜ来た?)」

崖道の番人が、見知らぬ者を目下として扱って投げかける問いです。2人称そのものは同じ段の相手にも使うので、この文が下向きなのは、番人と相手の関係と、ぶっきらぼうな問い詰め方によります。

8.6.3 並び

同じ段の相手には、2人称を使いながら、頼みごとは命令法でなく願望法で言います(senéndes plánan sé.「この帳簿を見てくれぬか」)。

8.6.4 上向き

相手が上のときは、次の約束に従います。

luuménde ausenár plánan sé.

読み:ルーメンデ アウセナール プラーナン セー。

luum-énd-eau-sen-árplán-ansé.
ご覧になる-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人・主格>帳簿-<対格>この<軽性>

「目付殿に、この帳簿をご覧いただきたく存じます。」

du pó fleiréla ausenár?

読み:ドゥ ポー フレイレーラ アウセナール?

dupófleir-él-aau-sen-ár?
下手何<対格>お出ましになる-<〜だろう>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人・主格>

「目付殿は、下手のどちらへお出ましになるのでしょうか。」

na éso ílmo nagléin.

読み:ナ エーソ イルモ ナグレーン。

naés-oílmona-gléin.
<〜ない>いる-<(重いものが)>水<主格><〜ない>-清い

「水は清からぬものではない(悪くない水だ)。」

二つめの例は、目付殿本人に向けた問いではありません。目付殿の行き先を、そばにいる同輩や目下の者に尋ねる文です。聞き手は目上ではないので疑問詞を使えますが、話題の目付殿は話し手より上なので、推量法と尊敬の補充形、役職名+au- で高めています。目付殿本人に行き先を伺いたいときは、ké も疑問詞も使わず、fleiréla ausenár du orén?「目付殿は縁へお出ましになるのでしょうか」のように、推し量る形で尋ねます。

8.6.5 命令と依頼の四つの言い方

同じ「この帳簿を見て」という頼みは、相手との段の差によって四通りに言い分けます。四つめは段に乗らない縁の市の言い方です(→ 第6章)。

場 形 例
下向き(相手が下) 命令法・2人称 sén plánan sé!
並び(同じ段) 願望法・2人称 senéndes plánan sé.
上向き(相手が上) 願望法・3人称。相手は役職名+au-、動詞は補充形 luuménde ausenár plánan sé.
縁の市 むき出しの語幹+格語尾なし+ende sén plána, ende.

下向きの sén plánan sé! と市の sén plána, ende. は、動詞の形が同じです。違いはまわりの語に出ます。命令法の文では目的語に格語尾がつき(plánan)、指示詞も添えます。市の言葉では格語尾が落ち(plána)、ende がつきます。

8.6.6 揺れ

段を測りかねる相手には、話し方が揺れます。揺れる向きは、話し手自身の段で決まります。

sén, senéndes plánan sé.

読み:セーン、セネンデス プラーナン セー。

sén,sen-énd-esplán-ansé.
見る<命令法><あなたが>見る-<〜しますように>-<あなたが>帳簿-<対格>この<軽性>

「見ろ……いや、この帳簿を見てくれぬか。」

都の大商家の手代(六段下り)が、段の外の相手に話しかけています。手代は自分のほうが上だと思っているので、下向きの命令法 sén を言いかけて、並びの願望法2人称に言い直しています。最初の sén は市のむき出しの語幹と同じ形ですが、格語尾つきの plánan と指示詞 sé が続き、ende がないので、市の言葉ではなく命令法だとわかります。

こうした揺れを見せるのは、手代や崖道の商人です。市の目付は干潟の人と縁商人を通して話し、むき出しの語幹と同じ形を口にしないので、この揺れはまず見せません。

8.7 主語と目的語の高さを両方表す

高原語では、一つの文の中で、主語と目的語(や与格)のそれぞれの高さを同時に表せます。

dulísim sáindaran aulisárei.

読み:ドゥリーシン サインダラン アウリサーレイ。

du-lís-imsáindar-anau-lis-ár-ei.
<〜させていただく>-書く-<私が>証文-<対格><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<与格>

「書記の方に、証文を書いて差し上げます。」

目上の人と目下の人を一つの文に出すとき。 目上の人と目下の人を、si「と」で一つの主語に並べることは、改まった言葉では避けます。二つの文に分ければ、目上の人の動詞を尊敬の形にしたまま、目下の人の動詞をふつうの形にできます。

fléira aulisár si tóra faronár.

読み:フレーラ アウリサール シ トーラ ファロナール。

fléir-aau-lis-ársitór-afaron-ár.
お出ましになる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人・主格>と来る-<(軽いものが)>荷-<〜する人・主格>

「書記の方がお出ましになり、運び人も来る。」

lísa lisár sáindaran si lúuma ausenár.

読み:リーサ リサール サインダラン シ ルーマ アウセナール。

lís-alis-ársáindar-ansilúum-aau-sen-ár.
書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格>証文-<対格>とご覧になる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人・主格>

「書記が証文を書き、目付殿がご覧になる。」

それでも一つの主語に並べるときは、目上の人が一人でも含まれていれば、二人でも双数にせず複数で受けます(8.8)。

8.8 数えない敬意

目上の人を数詞で数えてはいけません。

星を数えない禁忌も、同じ考えから来ています(→ 第3章)。

8.9 言葉の層と敬語

同じ用件でも、市の言葉と都の改まった言葉では、次のように形がまったく変わります。

ván fáron, ende.

読み:ヴァーン ファーロン、エンデ。

vánfáron,ende.
量る<命令法><あなたが>荷<対格>どうぞ

「荷を量ってくれ、頼む。」

aubandénde ausenár fáron.

読み:アウバンデンデ アウセナール ファーロン。

au-band-énd-eau-sen-árfáron.
<お〜になる・御〜>-量る-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人・主格>荷<対格>

「目付殿に、荷をお量りいただきたく存じます。」

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