法の巻(抜き書き)

rólan férmales

王国の法典 rólan férmales「法の巻」から、よく引かれる条を抜き書きしたもの。法典は書の司が守り、版の書体で刷られる。条は当為法(-és-)で書かれ、主語を書かなければ「人は〜すべし」、mé を前に置けば「何人も〜してはならない」の意味になる。法の中身と裁きのしくみは、世界設定の法の項(world/law.md)にまとめてある。

序

法典の書き出し。王国では、書かれたものだけが法である。

ésa férmal virá lísen.

読み:エーサ フェルマル ヴィラー リーセン。

és-aférmalvirálís-en.
いる-<(軽いものが)>法<主格>言葉<主格>書く-<〜した・〜された>

「法とは、書かれた言葉である。」

名詞が述語の文(és- +主語+述語)。virá lísen「書かれた言葉」は、高原の文字そのものの呼び名でもある。

na ésa férmal virá nalísen.

読み:ナ エーサ フェルマル ヴィラー ナリーセン。

naés-aférmalvirána-lís-en.
<〜ない>いる-<(軽いものが)>法<主格>言葉<主格><〜ない>-書く-<〜した・〜された>

「法は、書かれていない言葉ではない。」

分詞の否定は接頭辞 na-(nalísen「書かれていない」)。口で言っただけの言葉は、王の言葉でも法にならない。

崖の条

崖の縁から物を投げ落とすことは、法典の中でもっとも重い罪の一つ。荷は決められた降ろし場で、作法に従って下ろす。

mé þraunésa fáron es orénos du dálor.

読み:メー スラウネーサ ファーロン エス オレーノス ドゥ ダーロル。

méþraun-és-afáronesorén-osdudálor.
<禁止・願いの打ち消し>投げる-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>から縁-<属格>下手下の国<対格>

「何人も、縁から下の国へ荷を投げてはならない。」

mé +当為法で禁止。主語を書かないので「何人も」。fáron は重性なので、対格も主格と同じ形。es orénos「縁から」と du dálor「下の国へ」で、投げる向きを書き切る。次の罰の条の du dálor「下の国へ(下ろす)」と対になる。

duliþésa du dálor éndran te þráunsa fáron es orénos du dálor.

読み:ドゥリセーサ ドゥ ダーロル エンドラン テ スラウンサ ファーロン エス オレーノス ドゥ ダーロル。

dul-íþ-és-adudáloréndr-anteþráuns-afáronesorén-osdudálor.
下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>下手下の国<対格>人-<対格><関係節>投げる<〜し終えた>-<(軽いものが)>荷<対格>から縁-<属格>下手下の国<対格>

「縁から下の国へ荷を投げた者は、下の国へ下ろすべし。」

下ろしの刑の条。関係節のついた名詞句(éndran te …)は節の最後に置くので、du dálor が前に出る。関係節の動詞の -a(軽性)が主語は人だと示し、重性の fáron は目的語とわかる。

星の条

星を数え、星の数を記すことは、星の司の星読みだけに許されている。

mé rimbésa ilánais.

読み:メー リンベーサ イラーナイス。

mérimb-és-ailán-ais.
<禁止・願いの打ち消し>数える-<〜すべし>-<(軽いものが)>灯-<〜たちを>

「何人も、星を数えてはならない。」

ilána は「灯」で、星は昇った祖先の炉の火とされる。「千の星」のように数えきれないことを言う決まり文句は、この条に当たらない。

硬木の条

硬木は伐って乾かしても水に沈む「下へ行きたがる木」。そこに言葉を載せれば言葉が沈むとされる。

mé tilésa lisáis gandéroi.

読み:メー ティレーサ リサイス ガンデーロイ。

métil-és-alis-áisgandér-oi.
<禁止・願いの打ち消し>彫る-<〜すべし>-<(軽いものが)>字-<〜たちを>硬木-<与格>

「何人も、硬木に字を彫ってはならない。」

彫る先は与格(gandéroi「硬木に」)。丸太の木口の焼印は字ではなく「しるし」なので、この条に当たらない。

書の条

証文と帳簿の決まり。数字は弧を一本書き足すだけで変わってしまうので、字で綴った念押しを添える。

simberésa sáindaran.

読み:シンベレーサ サインダラン。

simb-ér-és-asáindar-an.
印-<〜でする>-<〜すべし>-<(軽いものが)>証文-<対格>

「証文には印を押すべし。」

simbér-「印を押す」は、símbo「印」に名詞から動詞を作る -ér- がついた語。印のない証文は、裁きの場で通らない。

meirésa freimvirán rimblisáil.

読み:メイレーサ フレインヴィラーン リンブリサイル。

meir-és-afreimvir-ánrimblis-áil.
与える-<〜すべし>-<(軽いものが)>念押し-<対格>数字-<〜らに>

「数字には念押しを添えるべし。」

字義は「数字たちに念押しを与えるべし」。念押しは数字と同じ行には書かず、念押しの欄か、数字のすぐ下の行に書く。

霧の条

霧の中の言葉は祖先に届かない。霧期に結んだ約束は、誓いとしても約束としても重さがない。

mé þundésa þondán nébros.

読み:メー スンデーサ ソンダーン ネーブロス。

méþund-és-aþond-ánnébr-os.
<禁止・願いの打ち消し>裁く-<〜すべし>-<(軽いものが)>誓い-<対格>霧-<属格>

「霧の約束は、裁きにかけてはならない。」

þondá nébros「霧の約束」は、当てにならない約束のたとえにもなる。縁の市で精算を「霧の前に」済ませるのはこのため。

裁きの書きつけ(例)

下ろしの刑を言い渡した裁きの書きつけの一部。言い渡しの一文から先、罪人は重性で書かれる。人を重性で受けるのはふだんならひどい侮辱だが、下ろされる者はもう「重いもの」として扱われる。

þóunda þundár éndran te þráunsa fáron es orénos du dálor.

読み:ソーンダ スンダール エンドラン テ スラウンサ ファーロン エス オレーノス ドゥ ダーロル。

þóund-aþund-áréndr-anteþráuns-afáronesorén-osdudálor.
裁く<〜し終えた>-<(軽いものが)>裁く-<〜する人・主格>人-<対格><関係節>投げる<〜し終えた>-<(軽いものが)>荷<対格>から縁-<属格>下手下の国<対格>

「法官は、縁から下の国へ荷を投げた者を裁き終えた。」

þóund- は þúnd-「裁く」の完了の語根。ここまでは罪人を éndran「人を」(軽性)で受けている。

dulíþa senár ó du dálor.

読み:ドゥリーサ セナール オー ドゥ ダーロル。

dul-íþ-asen-áródudálor.
下る-<〜させる>-<(軽いものが)>見る-<〜する人・主格><3人称単数・重性・対格>下手下の国<対格>

「目付は、それを下の国へ下ろす。」

罪人を重性の代名詞 ó「それ」で受ける。人を指すのに ó を使うのは、この書きつけの中だけ。

dúlo ó du dálor.

読み:ドゥーロ オー ドゥ ダーロル。

dúl-oódudálor.
下る-<(重いものが)><3人称単数・重性・主格>下手下の国<対格>

「それは、下の国へ下りていく。」

動詞も重性の -o。荷や硬木と同じ一致で、罪人が「重いもの」になったことを文法が示している。

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