小説
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木
生えている立ち木の総称。軽性で一致する。
sénimor fíñelan an árnelei.
読み:セーニモル フィーニェラン アン アルネレイ。
| sén-imor | fíñel-an | an | árnel-ei. |
| 見る-<我々が> | 山猫-<対格> | 上手 | 木-<与格> |
「我々は木の上に山猫を見た。」
狩りの報告。時制がないので、直説法のままで「見た」とも訳せる。fíñel は軽性の子音語幹で、対格は -an。生えている木 árnel は軽性なので、与格は -ei をとる。
ráina tókal árnelan, ráina kelár tókalan.
読み:ライナ トーカル アルネラン、ライナ ケラール トーカラン。
| ráin-a | tókal | árnel-an, | ráin-a | kel-ár | tókal-an |
| 知る-<(軽いものが)> | きつつき<主格> | 木-<対格> | 知る-<(軽いものが)> | 伐る-<〜する人・主格> | きつつき-<対格> |
「きつつきは木を知り、樵はきつつきを知る。」
樵のあいだの諺。きつつきの叩く音を聞き分けて、木の中が空洞か詰まっているかを知る習わしを言う。tókal は軽性の子音語幹で、対格は tókal-an。前半と後半はどちらも動詞で始まる VSO の文で、同じ形の文を二つ並べる対句になっている。
áura árnel an élvaran.
読み:アウラ アルネル アン エルヴァラン。
| áur-a | árnel | an | élvar-an. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 木<主格> | 上手 | 天-<対格> |
「木は天へ向かって伸びる。」
生えている木は上へ伸びるものなので、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。木が下と上をつなぐ、という考え方を表す格言風の文。an+対格で「上手へ」。
ésa árnel mór téndo.
読み:エーサ アルネル モール テンド。
| és-a | árnel | mór | téndo. |
| いる-<(軽いものが)> | 木<主格> | 大きい | あそこ |
「あそこに大きな木がある。」
存在の文は「és-+主語+場所」の順に言う。立ち木は軽性なので、繋辞は ésa になる。形容詞 mór は軽性・単数・主格で、一致の語尾はつかない。道案内などで日常よく使う言い方。
lúin kéla kelár árnelan, na kéla búl.
読み:ルーイン ケーラ ケラール アルネラン、ナ ケーラ ブール。
| lúin | kél-a | kel-ár | árnel-an, | na | kél-a | búl. |
| とき | 伐る-<(軽いものが)> | 伐る-<〜する人・主格> | 木-<対格> | <〜ない> | 伐る-<(軽いものが)> | 根<対格> |
「樵は木を伐るとき、根は伐らない。」
búl は重性なので、主格と対格が同じ形になる。伐る前の木は立ち木なので、軽性の対格 árnelan をとる。後半の節は主語を言っていないが、動詞の語尾から、前半と同じ樵が主語だとわかる。
dúlo búl árneles du dálor.
読み:ドゥーロ ブール アルネレス ドゥ ダーロル。
| dúl-o | búl | árnel-es | du | dálor. |
| 下る-<(重いものが)> | 根<主格> | 木-<属格> | 下手 | 下の国<対格> |
「木の根は下の国へ向かって下りていく。」
búl は重性の名詞なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。複数にすると母音交替で bǘl になる。根は下へ、梢は上へ伸びるという世界観を述べた文で、森の巫が木を語るときによく出る言い方。
mé kél árnelan sé, ésa bóula fóndel.
読み:メー ケール アルネラン セー、エーサ ボーラ フォンデル。
| mé | kél | árnel-an | sé, | és-a | bóula | fóndel. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 伐る<命令法><あなたが> | 木-<対格> | この<軽性>, | いる-<(軽いものが)> | どんぐりの木<主格> | 古い |
「この木を伐るな。このどんぐりの木は由緒ある古木だ。」
森の村で、年長者が若い樵をたしなめるときの言い方。禁止は mé+命令法(むき出しの語幹 kél)で言うので、下向きの話し方になる。後半では、生えているどんぐりの木が軽性なので、繋辞は ésa になる。fóndel は「古くて由緒ある」というほめる響きの語。
brúumo bóula es árneles.
読み:ブルーモ ボーラ エス アルネレス。
| brúum-o | bóula | es | árnel-es. |
| 落ちる-<(重いものが)> | どんぐり<主格> | から | 木-<属格> |
「どんぐりが木から落ちる。」
村の日常の描写。名詞 bóula は軽性a語幹の形のままだが、木から離れた実はもう昇らないものなので、動詞は重性の -o で一致する。名詞の形と一致が「ちぐはぐ」になる例。es+属格で「〜から」を表す。
dúla lóiva es árneles.
読み:ドゥーラ ロイヴァ エス アルネレス。
| dúl-a | lóiva | es | árnel-es. |
| 下る-<(軽いものが)> | 森の髭<主格> | から | 木-<属格> |
「森の髭が木から垂れ下がっている。」
深い森を描く文。dúl-「下る」は、垂れ下がる様子にも使う。森の髭は生きた木から垂れ下がるものなので軽性に扱い、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。es+属格で「〜から」を表す。
kráila kelár árnelan.
読み:クライラ ケラール アルネラン。
| kráil-a | kel-ár | árnel-an. |
| つかんで離さない-<(軽いものが)> | 伐る-<〜する人> | 木-<対格> |
「樵が木にしがみついている。」
しがみつく対象を対格の目的語にとる。生えている木 árnel は軽性の子音語幹なので、対格は -an になる。
kéla houmár árnelais, ré esénde lúsa élei.
読み:ケーラ ホウマール アルネライス、レー エセンデ ルーサ エーレイ。
| kél-a | houmár | árnel-ais, | ré | es-énd-e | lúsa | él-ei. |
| 伐る-<(軽いものが)> | 家の主<主格> | 木-<〜たちを> | <〜と(節)> | いる-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 日々の糧<主格> | <3人称単数・軽性>-<与格> |
「家の主は、粥に困らぬよう木を伐る。」
「ré+願望法」は目的を表す。所有は「ある+持ち主の与格」で言うので、「その人に粥がある」が「暮らしに困らない」という意味になる。élei は家の主を指す。ここでの lúsa は、日々の食い扶持を広く指している。
ámbelai árnelai, sílarau áurau.
読み:アンベライ アルネライ、シーララウ アウラウ。
| ámbel-ai | árnel-ai, | sílar-au | áur-au. |
| 金色の-<軽性・〜ら(古い母音交替)・主格> | 木-<〜たちが> | 月-<双数> | 昇る-<双数> |
「金色なるは木々、昇りゆくは二つの月。」
詩の一句。前半は繋辞を落として形容詞を先に置く、格言・詩の語順。後半は主語が動詞の前に出ている。乾風期の初めに木々の葉が金色に変わり、澄んだ夜空に月が昇るさまを詠む。生えている木 árnel は軽性なので、複数主格は -ai。
éso drúmo véril árnelei.
読み:エーソ ドルーモ ヴェーリル アルネレイ。
| és-o | drúmo | véril | árnel-ei. |
| いる-<(重いものが)> | 苔<主格> | 青緑の | 木-<与格> |
「木に青緑の苔が生えている。」
存在の文で、「éis-+主語+場所の与格」の形。苔 drúmo は重性o語幹なので、動詞は重性の éiso、形容詞は重性の主格(語尾なし)になる。生えている木 árnel は軽性なので、与格は -ei。高原語では青と緑を一語で言うので、苔の色も湖の色も véril で表す。
þóro kéumo kéum an árnelei.
読み:ソーロ ケウモ ケウン アン アルネレイ。
| þór-o | kéumo | kéum | an | árnel-ei. |
| 立つ-<(重いものが)> | 碑<主格> | 灰色の | 上手 | 木-<与格> |
「木の上手(北側)に灰色の碑が立っている。」
碑は灰色の硬い石で作られる。an+与格で「〜の上手の側で」、つまり北側を表す。kéumo「碑」と kéum「灰色の」は音が似ているが別の語で、碑は重性o語幹。
ké éso só fírna? na éso. na éso só póin sal árnelei.
読み:ケー エーソ ソー フィルナ?ナ エーソ。ナ エーソ ソー ポイン サル アルネレイ。
| ké | és-o | só | fírna? | na | és-o. | na | és-o | só | póin | sal | árnel-ei. |
| <〜か> | いる-<(重いものが)> | この<重性> | 筆 | <〜ない> | いる-<(重いものが)> | <〜ない> | いる-<(重いものが)> | この<重性> | 何か | 外 | 木-<与格> |
「「これはペン(書く道具)ですか?」 「いいえ。これはただの木の棒です」」
直訳は「これは筆か?」「(筆では)ない。これは木の外の何ものでもない」。辞書の語だけで訳せたので、仮置きの語はありません。既存の用例と照らし合わせましたが、食い違いは見つからなかったので、元の訳のまま返します。 1. 「ペン」:辞書の fírna(筆)を使いました。「書く道具」の意味にちょうど合います。 2. 「これ」:指示詞 só を単独で「これ」として使いました(定型句 póso「これは何だ」と同じ使い方)。重性の só にしたのは、指している物が伐った木の切れ端だからです。伐った木は荷札と同じく重性で受けます(既存の sén gandér só と同じ)。繋辞も só に合わせて重性の éso にしました。述語の fírna は軽性の名詞ですが、述語の名詞は自分の性・主格のまま置くので、形は変えていません(既存の na éso nébro fléura と同じ組み立て)。 3. 問いの形:目上かどうか分からない相手へのふつうの問いとして、文頭に ké を置きました(既存の ké éso fóndar só gléin? と同じ形)。目上の人に聞くなら、ké を使わず推量法で尋ねます。 4. 「いいえ」:高原語には「はい」「いいえ」にあたる語がありません。そこで問いの動詞を繰り返して na をつけ、na éso としました。動詞は物に一致しているので、人称は変わりません(既存の「na éso tambór némei」と同じ)。 5. 「ただの木の棒」は言い換えました。「棒」にあたる語はないので、árnel(木・材木)で「木切れ」の意味にしました。「ただの」にあたる語もないので、na … póin sal árnelei「木の外の何ものでもない」と否定で言い換えました。前置詞 sal(〜の外に)がとる格は決まっていません。ほかの前置詞が「その場にあること」を与格で言うのにならって、与格にしました。 6. 性の決め方:árnel は生えている木と同じ軽性の子音語幹とみて、与格を -ei にしました。名詞の形は伐っても軽性のままで、一致だけが重性になります。póin(何か)は疑問詞 pó にならって重性とし、主語 só と同じく、繋辞は重性の éso にしました。
toríþa ráuvan kelárais un krévan, salóur na kélan kelárai árnelan.
読み:トリーサ ラウヴァン ケラーライス ウン クレーヴァン、サロール ナ ケーラン ケラーライ アルネラン。
| tor-íþ-a | ráuvan | kel-ár-ais | un | kréva-n, | salóur | na | kél-an | kel-ár-ai | árnel-an. |
| 来る-<〜させる>-<(軽いものが)> | 森の巫<主格> | 伐る-<〜する人>-<〜たちを> | 内に | 練習の場-<対格> | しかし | <〜ない> | 伐る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 木-<対格> |
「森の巫は樵たちを稽古の場へ呼び寄せるが、樵たちは木を伐らない。」
un と対格を組み合わせると「〜の中へ」の意味になり、un krévan は「稽古の場へ」となる。伐り出しの詞を稽古で唱えても本番の儀式にはならず、樵はそこでは斧を入れない。そのことを言った文である。使役の toríþ-「呼び寄せる」は、後ろに強勢のある接辞がないので、-íþ- が強勢をとる。逆接の salóur は二つめの文の頭に置く。立っている木 árnel は軽性なので、対格は -an になる。
þróumo árnel.
読み:スローモ アルネル。
| þróum-o | árnel. |
| 死ぬ<〜し終えた>-<(重いものが)> | 木<主格> |
「木が枯れた。」
木が枯れたという文。立ち枯れてもはや昇らないものとして、動詞は重性の一致 -o をとる。
材木
伐られた木。名詞の形は同じだが、一致は重性になる。
éso árnel kélen gróm.
読み:エーソ アルネル ケーレン グローン。
| és-o | árnel | kél-en | gróm. |
| いる-<(重いものが)> | 木<主格> | 伐る-<〜した・〜された> | 重い |
「伐った木は重い。」
材木を主語にした繋辞文。根を断たれた木はもう昇らないものとされるので、繋辞は重性の éso をとる。分詞 kélen と形容詞 gróm も重性・単数・主格の形で、語尾はつかない。
faronéran faronárai árnelan só du orén.
読み:ファロネーラン ファロナーライ アルネラン ソー ドゥ オレーン。
| faron-ér-an | faron-ár-ai | árnel-an | só | du | orén. |
| 荷-<〜でする>-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 木-<対格> | この<重性> | 下手 | 縁<対格> |
「運び人たちがこの材木を縁へ担いでいく。」
faronér-「担ぐ」は fáron「荷」に、名詞から動詞を作る -ér- をつけた語。faronár「運び人」は同じ語に -ár「〜する人」をつけた語。伐られた木なので、名詞は軽性の対格 árnelan のまま、指示詞は重性の só で一致させる。名詞の語尾と一致の性が食い違うのは、伐った木の決まった扱い方。
木を表すいちばん一般的な語。根を下に、梢を上に伸ばして、下と上をつなぐものとされる。古い大木には氏族の祖先の気配が宿ると考えられている。生えているあいだは軽性で一致するが、伐られて材木になると、名詞の形はそのままで、受ける分詞や動詞が重性の形になる。
軽性・子音語幹(②型)。対 árnelan、属 árneles、複 árnelai。伐った材を指すときは一致が重性になる(árnel kélen「伐られた木」の分詞は重性)。
古高原語から受け継いだ語。
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