小説
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下の国の者
干潟に住む人。
víran dalorárai ré brúuma naþrenár es élvares.
読み:ヴィーラン ダロラーライ レー ブルーマ ナスレナール エス エルヴァレス。
| vír-an | dalorár-ai | ré | brúum-a | naþrenár | es | élvar-es. |
| 言う-<彼らが> | 下の国の者-<〜たちが> | <〜と(節)> | 落ちる-<(軽いものが)> | 異邦人<主格> | から | 天-<属格> |
「下の国の者たちは、異邦人が天から落ちてきたと言う。」
干潟の言い伝えを、高原の人が伝え聞いた形で言う文。ré の節は主節の後ろに置く。高原の世界観では、上から落ちてくる者は流れ星と同じく不吉なものとされるので、この種の話は泥の国の迷信として語られることが多い。es+属格で方向を問わない「〜から」。
ké éses dalorár?
読み:ケー エーセス ダロラール?
| ké | és-es | dalorár? |
| <〜か> | いる-<あなたが> | 下の国の者<主格> |
「お前は下の国の者か。」
縁の市や崖道で、見慣れない者の素性を尋ねるくだけた問い。ké を文頭に置き、繋辞 és- の2人称単数を使っているので、下向きか並びの話し方になる。dalorár は述語の名詞で、ふつうの軽性・単数・主格の形。人を指す語なので、この意味では軽性で受けるのが正しい。
ésa dalorár naþrenár.
読み:エーサ ダロラール ナスレナール。
| és-a | dalorár | naþrenár. |
| いる-<(軽いものが)> | 下の国の者<主格> | 段の外の者<主格> |
「下の国の者は段の外の者である。」
礼法の書や法典の注釈に見られる、総称を言う文。dalorár を人として扱っているので、繋辞は3人称単数・軽性の -a になる。干潟の人は身分が低いのではなく、「階段に乗っていない」という考え方を言い表している。
na néulan brándalai virán dalorárar.
読み:ナ ネウラン ブランダライ ヴィラーン ダロラーラル。
| na | néul-an | brándal-ai | vir-án | dalorár-ar. |
| <〜ない> | 好む-<彼らが> | 諸司-<〜たちが> | 言葉-<対格> | 下の国の者-<〜らの> |
「宮廷のお役人たちは、下の国の者の言葉を好まない。」
運び人や崖道の商人の、くだけた陰口。au- をつけずに brándalai と言うのは、相手のいない場での遠慮のない言い方。否定の na は動詞の直前に置く。
na ráina dalorár sárvo némores.
読み:ナ ライナ ダロラール サルヴォ ネーモレス。
| na | ráin-a | dalorár | sárvo | némor-es. |
| <〜ない> | 知る-<(軽いものが)> | 下の国の者<主格> | 禁忌<対格> | <我々>-<属格> |
「下の国の者は、我々の禁忌を知らない。」
干潟の人について、高原の人が言う決まり文句。どこか見下す響きがある。sárvo は重性o語幹なので、主格と対格が同じ形になる。ここでは単数で「禁忌というもの」を総称している。「我々の」は代名詞 némor の属格 némores で表し、名詞の後ろに置く。
ésa dalorár sal þrénuls, na ésa du þrénuls.
読み:エーサ ダロラール サル スレーヌルス、ナ エーサ ドゥ スレーヌルス。
| és-a | dalorár | sal | þrén-uls, | na | és-a | du | þrén-uls. |
| いる-<(軽いものが)> | 下の国の者<主格> | 〜の枠の外に | 段-<〜らに> | <〜ない> | いる-<(軽いものが)> | 下手 | 段-<〜らに> |
「下の国の者は段の外にいるのであって、段の下にいるのではない。」
宮廷の礼法家がよく口にする言い方。干潟の人は身分が低いのではなく、「階段に乗っていない」と考えられていることを、sal「〜の外に」と du「〜の下手に」を並べて対比している。þrén「段」は重性なので、複数与格は -uls になる。人を指す dalorár は軽性で受ける。
泥の者(蔑称)
重性の一致で受けて、干潟の人を重く汚れた者として見下す言い方。
tóro dalorár tó es orénos.
読み:トーロ ダロラール トー エス オレーノス。
| tór-o | dalorár | tó | es | orén-os. |
| 来る-<(重いものが)> | 泥の者<主格> | あの<重性> | から | 縁-<属格> |
「あの泥の者が縁から上がってくるぞ。」
陰口やからかいの言い方。dalorár そのものは軽性の語形のままだが、動詞を重性の -o(tóro)で、指示詞を重性の tó で受けている。人を重性で一致させることで、相手を石や泥のような「重いもの」として見下す。軽性で受ける tóra dalorár té なら、ただの「あの下の国の者が来る」になる。
éso dalorár só gróm.
読み:エーソ ダロラール ソー グローン。
| és-o | dalorár | só | gróm. |
| いる-<(重いものが)> | 泥の者<主格> | この<重性> | 重い |
「この泥の者は重い(粗野な奴だ)。」
あからさまな侮辱。繋辞 éso と指示詞 só が重性の一致になっていて、述語の gróm「重い」も重性・単数・主格の形(語尾なし)で受けている。人について「重い」と言うと、粗野で上へ昇れない者という意味になる。改まった場では口にしない。
崖の下の干潟(下の国)に住む人。文法上は人なので軽性で一致させるのが正しいが、陰口ではわざと重性の一致(動詞の -o、分詞の -os など)で受け、「泥の者」と見下す。naþrenár が身分の上での位置づけを言う改まった語なのに対し、dalorár は住む土地で言う日常の語である。
名詞(軽性・子音語幹、-ár に強勢)。対 daloráran、複 dalorárai
dálor「下の国」+ -ár「〜する人」。
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