dálor

品詞
名詞
意味
下の国
発音
[ˈdalor]
読み
ダーロル
分野
自然・天体・天候・地形

意味

  1. 下の国

    崖の下の大干潟とそこに住む人々の土地。

    dúlo gandér du dálor.

    読み:ドゥーロ ガンデール ドゥ ダーロル。

    dúl-ogandérdudálor
    下る-<(重いものが)>硬木<主格>下手下の国<対格>

    「硬木が下の国へ下りていく。」

    VSO の基本の文。直説法には法の印がないので、語根に人称の語尾が直接つく。主語の gandér は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。du+対格で「下手へ」。dálor も重性なので、主格と対格が同じ形になる。

    dúlo du dálor gandér te kéelan kelárai.

    読み:ドゥーロ ドゥ ダーロル ガンデール テ ケーラン ケラーライ。

    dúl-odudálorgandértekéel-ankel-ár-ai.
    下る-<(重いものが)>下手下の国<対格>硬木<主格><関係節>伐る<〜し終えた>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>

    「樵たちが伐り終えた硬木が、下の国へ下りていく。」

    関係節は名詞の後ろに無強勢の te を置き、すぐ後ろに動詞を続ける。目的語が抜けた穴は空けたままにする。関係節は文の終わり(か読点)まで続くので、du dálor を主節にかけるために、関係節つきの重い主語を文末に回している。dúlo gandér te kéelan kelárai du dálor と言うと、du dálor は関係節の中に入ってしまう。gandér は重性だが、関係節を導くのは te のままで、tó にはならない(tó なら「あの硬木」)。

    duliþíre kelár fáron es orénos, toriþéla dálor.

    読み:ドゥリシーレ ケラール ファーロン エス オレーノス、トリセーラ ダーロル。

    dul-iþ-ír-ekel-árfáronesorén-os,tor-iþ-él-adálor.
    下る-<〜させる>-<もし〜なら>-<(軽いものが)>伐る-<〜する人・主格>荷<対格>から縁-<属格>来る-<〜させる>-<〜だろう>-<(軽いものが)>下の国<対格>

    「樵が縁から荷を落とせば、下の国を呼び寄せることになろう。」

    条件の節は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけで作り、主節の前に置く。帰結の節は推量法。後半では主語を言っていないが、動詞の語尾から、前半と同じ樵が主語だとわかる。崖から物を落としてはいけない、という禁忌の説明。

    tóra sélvan ráimaros es dáloros.

    読み:トーラ セルヴァン ライマロス エス ダーロロス。

    tór-asélvanráimar-osesdálor-os.
    来る-<(軽いものが)>セルヴァン<主格>ライマル-<属格>から下の国-<属格>

    「ライマル家のセルヴァンが下の国から来た。」

    名+家名の属格のフルネーム。名は人なので動詞は軽性の -a で受け、家名は源の名なので重性の属格 -os になる。

    du dálor gandér, sílarau áurau.

    読み:ドゥ ダーロル ガンデール、シーララウ アウラウ。

    dudálorgandér,sílar-auáur-au.
    下手下の国<対格>硬木<主格>月-<双数>昇る-<双数>

    「硬木は下の国へ、二つの月は昇る。」

    詩の一句で、十拍(du-dá-lor-gan-dér-sí-la-rau-áu-rau)。前半では動詞を落とし、後半では主語が動詞の前に出ている。会話の中でこの語順を聞くと、高原の人は「詩句の引用だ」とわかる。

    na dulíþin vúuro fúnel gandér du dálor.

    読み:ナ ドゥリーシン ヴーロ フーネル ガンデール ドゥ ダーロル。

    nadul-íþ-invúur-ofúnelgandérdudálor.
    <〜ない>下る-<〜させる>-<〜して・〜く>届く-<(重いものが)>綱<主格>硬木<対格>下手下の国<対格>

    「綱は硬木を下の国まで下ろせない。」

    否定の na は副動詞の前に置き、二つの動詞をまとめて打ち消す。綱の長さが届かない、という可能の否定。

    dúlo ílmo es fóndaros du dálor.

    読み:ドゥーロ イルモ エス フォンダロス ドゥ ダーロル。

    dúl-oílmoesfóndar-osdudálor.
    下る-<(重いものが)>水<主格>から源-<属格>下手下の国<対格>

    「水は源から下の国へと下っていく。」

    水は泉で生まれ、段を下るごとに重くなって、最後は崖の下に沈む。この見方を言い表す、教えや詩でよく使われる言い回し。ílmo(水)は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。es+属格は、方向を問わない「〜から」。

    dúlimor es orénos du dálor.

    読み:ドゥーリモル エス オレーノス ドゥ ダーロル。

    dúl-imoresorén-osdudálor.
    下る-<我々が>から縁-<属格>下手下の国<対格>

    「我々は縁から下の国へ下りる。」

    崖道の商人や運び人が、乾風期に市へ下りるときの言い方。出どころは「es+属格」、行き先は「du+対格」で言う。主語は動詞の語尾 -imor でわかるので、代名詞は言わない。

    tóro sáko es dáloros.

    読み:トーロ サーコ エス ダーロロス。

    tór-osákoesdálor-os.
    来る-<(重いものが)>塩<主格>から下の国-<属格>

    「塩は下の国から来る。」

    日常の言い切りの文。塩は干潟から借りた語で、重性に入るので、動詞は重性の -o をとる。塩は「下からの恵み」と呼ばれ、ありがたさと少しの後ろめたさをもって語られる。

    na þílim virán dáloros.

    読み:ナ シーリン ヴィラーン ダーロロス。

    naþíl-imvir-ándálor-os.
    <〜ない>分かる-<私が>言葉-<対格>下の国-<属格>

    「下の国の言葉は分からん。」

    都の人が干潟語について言う、くだけたひとこと。virán dáloros「下の国の言葉」は、「泥の言葉」ほどあからさまな蔑みではないが、距離を置いた言い方。属格は名詞の後ろに置く。

    lúin tóro nébro, dúlan orenvandárai du dálor.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ドゥーラン オレンヴァンダーライ ドゥ ダーロル。

    lúintór-onébro,dúl-anorenvandár-aidudálor.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>南へ行く-<彼らが>縁商人-<〜たちが>下手下の国<対格>

    「霧が来るころ、縁商人たちは下(干潟)へ帰っていく。」

    dúl- は、北が「上」の国では、そのまま「南へ行く・干潟へ行く」の意味になる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。縁商人は軽性の人なので、複数主格は -ai になる。霧が崖を上りはじめると縁の市が閉じることを述べた文。

    toríro nébro, mé vír þelán! ésa þelá selvá, fíndo dálor.

    読み:トリーロ ネーブロ、メー ヴィール セラーン!エーサ セラー セルヴァー、フィンド ダーロル。

    tor-ír-onébro,mévírþel-án!és-aþeláselvá,fínd-odálor.
    来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>名前-<対格>いる-<(軽いものが)>名前<主格>息<主格>聞く-<(重いものが)>下の国<主格>

    「霧が来たら名を呼ぶな。名は息だ、下の国が聞きつける。」

    霧期の禁忌を子どもに教える言い方。口に出した名前を selvá「息」としてとらえている。条件の節は動詞を仮定法にするだけで作る。dálor は重性なので、動詞 fínd- は重性の -o をとる。

    pómbar báronul dulíþan kelárai du dálor?

    読み:ポンバル バーロヌル ドゥリーサン ケラーライ ドゥ ダーロル?

    pómbarbáron-uldul-íþ-ankel-ár-aidudálor?
    いくつ本-<〜たちを>下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>下手下の国<対格>

    「樵たちは下の国へ何本下ろすのか。」

    降ろし場での日常の問い。数を問う pómbar は数詞と同じく名詞の前に置き、量の名詞 báron を複数にする。ここでは目的語なので複数対格 báronul(重性なので主格と同じ形)になる。降ろし場で数えるものは硬木と決まっているので、数えるものの複数属格は省いている。数を問う語句は、目的語の名詞句ごと動詞の前に出る。人を数える問いにはこの形を使わない。

    tóro ó es dáloros.

    読み:トーロ オー エス ダーロロス。

    tór-oóesdálor-os.
    来る-<(重いものが)>あいつ<主格>から下の国-<属格>

    「あいつ、下の国から来やがった。」

    人を重性の代名詞 ó で指し、動詞も重性の -o で一致させた、強い侮蔑の言い方。崖道の運び人などが陰口で使う。主語の代名詞をわざわざ言うのも、相手を突き放す響きを強める。ふつうに言うなら tóra él… と軽性で受ける。

    ké tóro ó es dáloros?

    読み:ケー トーロ オー エス ダーロロス?

    kétór-oóesdálor-os?
    <〜か>来る-<(重いものが)>あいつ<主格>から下の国-<属格>

    「あいつ、下の国から来やがったのか?」

    人を重性の代名詞 ó で指し、動詞も重性の -o で受けた、さげすみの問い。ふつう人は軽性の él で受ける。人を重性で指すのは、相手を「下へ沈んだ者」として扱うことになるので、本人に聞こえれば争いのもとになる。陰口で干潟の人を指すときによく使われる。

    ké lísan dalorárai térin?

    読み:ケー リーサン ダロラーライ テーリン?

    kélís-andalor-ár-aitérin?
    <〜か>書く-<彼らが>下の国-<〜する人>-<〜たちが>そのように

    「下の国の者たちは、ああいうふうに書くのか。」

    よそから来た文字の書きぶりを見て尋ねる、はい・いいえの問い。ké は文のいちばん前に置く。térin は、離れたところで見た書き方を指す。答えるときは、動詞を繰り返して lísan か na lísan と言う。

    dulíþan kelárai gandér du dálor selúin.

    読み:ドゥリーサン ケラーライ ガンデール ドゥ ダーロル セルーイン。

    dul-íþ-ankel-ár-aigandérdudálorselúin.
    下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>硬木<対格>下手下の国<対格>今の世

    「今の世、樵たちは硬木を下の国へ下ろしている。」

    年代記の記事の書きぶり。昔(統一の前)と比べて、今の王の世のならわしを述べている。直説法には時制がないので、selúin が時代を区切る働きをする。gandér は重性なので、主格と対格が同じ形になる。

    toriþélo bélo gróm dálor.

    読み:トリセーロ ベーロ グローン ダーロル。

    tor-iþ-él-obélogrómdálor.
    来る-<〜させる>-<〜だろう>-<(重いものが)>欲<主格>重い下の国<対格>

    「重い腹は下の国を呼び寄せる。」

    欲深さを戒める諺。bélo gróm「重い腹」は食い意地や欲深さを表す決まった言い方で、重いものは下へ沈むという信仰にもとづく。gróm は重性・単数・主格に一致するので、語尾がつかない。

    mé leimésa kréinul du dálor.

    読み:メー レイメーサ クレーヌル ドゥ ダーロル。

    méleim-és-akréin-uldudálor.
    <禁止・願いの打ち消し>置く-<〜すべし>-<(軽いものが)>遺骨-<〜たちを>下手下の国<対格>

    「遺骨を下の国へ置かぬこと。」

    葬送の作法を記した書きものの一句。当為法 -és- は mé で否定し、主語を言わないので一般の人が主語になって軽性の -a をとる。強勢は -és- に移る(léim- → leimésa)。遺骨を谷底や崖の下に埋めることは禁じられている。

    dúlo ráun dúlen du dálor anlúin.

    読み:ドゥーロ ラウン ドゥーレン ドゥ ダーロル アンルーイン。

    dúl-oráundúl-endudáloranlúin.
    下る-<(重いものが)>水の落ちた流れ<主格>下る-<〜した・〜された>下手下の国<対格>昔

    「昔、水の落ちた流れが下の国へと下りていった。」

    約千二百年前の冷害で崖を下りた人々(干潟でいう縁の民)を、年代記や語りで遠回しに言う書き方。ráun dúlen は決まった言い回しで、分詞は規則どおり語根に -en をつけた形。ráun は重性なので、動詞も重性の -o で一致する。人を直接言わずに重性の名詞で言うところに、恥と悲しみがこもる。

    víra éndra ré tóro nébro es dáloros.

    読み:ヴィーラ エンドラ レー トーロ ネーブロ エス ダーロロス。

    vír-aéndrarétór-onébroesdálor-os.
    言う-<(軽いものが)>世間の人<主格><〜と(節)>来る-<(重いものが)>霧<主格>から下の国-<属格>

    「世の人は、霧は下の国から来ると言う。」

    言い伝えを紹介するときの決まった言い方。éndra を、特定の誰かではない主語として使うと、「世の人」「人は」という意味になる。ré の後ろの節では、主語の霧 nébro が重性なので、動詞は -o をとる。

    gléin þéul, múr dálor.

    読み:グレーン セウル、ムール ダーロル。

    gléinþéul,múrdálor.
    清い清い始まり<主格>濁った下の国<主格>

    「清きは始まり、濁れるは下の国。」

    格言・詩句の形。繋辞を落とし、述語の形容詞を先に置いている。源に近いものほど清く、下るほど濁るという、川と系譜の見方を一句にまとめたもの。会話に引くと、形容詞が先頭に来る語順から格言だとわかる。

    an élvares réina, es dáloros sáko.

    読み:アン エルヴァレス レーナ、エス ダーロロス サーコ。

    anélvar-esréina,esdálor-ossáko.
    上手天-<属格>上からの恵み<主格>から下の国-<属格>塩<主格>

    「上からは雨の恵み、下からは塩。」

    動詞のない諺。天からの恵み(軽性の réina)と、下の国から来る塩(重性の sáko)を対にしている。塩をありがたがりながらも少し後ろめたく思う、という気持ちを表す。an+属格は「上手から」の意味になる。

    fíndim duléumo gráis es dáloros.

    読み:フィンディン ドゥレウモ グライス エス ダーロロス。

    fínd-imduléumográisesdálor-os.
    聞く-<私が>不穏な気配<対格>悪いから下の国-<属格>

    「下の国のほうから、よからぬ気配が聞こえてくる。」

    比喩の意味の用例で、病のはやりや悪い噂が崖下から伝わってくることを言う。duléumo は重性なので、主格と対格が同じ形になり、動詞のすぐ後ろの語順で目的語だとわかる。形容詞 gráis も重性・単数・対格に一致するので語尾はつかない。風の「気配」を聞きとるという言い方なので、fínd-「聞く」と組むことが多い。

    dúlo búl árneles du dálor.

    読み:ドゥーロ ブール アルネレス ドゥ ダーロル。

    dúl-obúlárnel-esdudálor.
    下る-<(重いものが)>根<主格>木-<属格>下手下の国<対格>

    「木の根は下の国へ向かって下りていく。」

    búl は重性の名詞なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。複数にすると母音交替で bǘl になる。根は下へ、梢は上へ伸びるという世界観を述べた文で、森の巫が木を語るときによく出る言い方。

    léimsan aursárai sárvo ré mé duliþésa fáron du dálor.

    読み:レーンサン アウルサーライ サルヴォ レー メー ドゥリセーサ ファーロン ドゥ ダーロル。

    léims-anaursár-aisárvorémédul-iþ-és-afárondudálor.
    据える<〜し終えた>-<彼らが>祖先-<〜たちが>禁忌<対格><〜と(節)><禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>下手下の国<対格>

    「祖先たちは、下の国へ荷を落としてはならぬという禁忌を定めた。」

    ré の後ろの節は当為法を保ち、mé で否定している。主語を言わない当為法は「人は〜すべし」の意味で、軽性の -a をとる。強勢は -és- に移る。崖から物を落としてはいけない、という禁忌のいわれを語る文。

    hálimor slúun dalorárar sélu.

    読み:ハーリモル スルーン ダロラーラル セール。

    hál-imorslúundalor-ár-arsélu.
    呼ぶ-<我々が>千<対格>下の国-<〜する人>-<〜らの>泥の千<対格>

    「我々は下の国の者たちの千を「セル(泥の千)」と呼ぶ。」

    縁の市で、二つの「千」を言い分けることを説明する文。二つ目の対格 sélu は干潟語から借りた語なので重性で、対格も主格と同じ形になる。からかいの響きを帯びた呼び方である。

    glóumo rúndo du dálor.

    読み:グローモ ルンド ドゥ ダーロル。

    glóum-orúndodudálor.
    濁る-<(重いものが)>走り水<主格>下手下の国<対格>

    「走り水は下の国へ向かって濁っていく。」

    水は下へ流れるほど濁って重くなる、という見方を表す古い言い方。水は重性なので、動詞は -o をとる。du+対格で「下手へ」。

    mé grém dáloros!

    読み:メー グレーン ダーロロス!

    mégrémdálor-os!
    <禁止・願いの打ち消し>恐れる<命令法><あなたが>下の国-<属格>

    「下の国をこわがるな。」

    禁止は mé+命令法で言う。命令法の2人称単数は語幹そのまま。下向きの話し方で、崖道の年長者が若い者を励ますときなどに使う。

    véilo ílmo du dálor.

    読み:ヴェーロ イルモ ドゥ ダーロル。

    véil-oílmodudálor.
    流れ去る-<(重いものが)>水<主格>下手下の国<対格>

    「水は下の国へ流れ去る。」

    古い言い回しで、物事の移ろいを言う諺。「流れ去る」の意味では自動詞として使い、主語の ílmo(重性)に合わせて3単・重性の -o をとる。日常の会話では、この意味はほとんど使わない。

    tóro sáko es dáloros.

    読み:トーロ サーコ エス ダーロロス。

    tór-osákoesdálor-os.
    来る-<(重いものが)>塩<主格>から下の国-<属格>

    「塩は下の国から来る。」

    sáko は干潟から借りた語で、重性o語幹に属する。そのため動詞は3人称単数・重性の tóro になる。塩は「下からの恵み」と呼ばれ、ありがたさと少しの後ろめたさをもって語られる。

    dúlo trúndo gandéros du dálor.

    読み:ドゥーロ トルンド ガンデーロス ドゥ ダーロル。

    dúl-otrúndogandér-osdudálor
    下る-<(重いものが)>杭<主格>硬木-<属格>下手下の国<対格>

    「硬木の杭が下の国へ下りていく。」

    trúndo は重性o語幹の名詞。材料は属格で後ろに添えて trúndo gandéros「硬木の杭」と言う。硬木の杭が崖の下へ下りるのは、木が向かうべき場所へ帰ることだとされている。

    dúlo trúndo du dálor.

    読み:ドゥーロ トルンド ドゥ ダーロル。

    dúl-otrúndodudálor
    下る-<(重いものが)>杭<主格>下手下の国<対格>

    「杭が下の国へ下りていく。」

    杭は干潟の泥に打ちこまれるために、崖の下へ下ろされる。trúndo は重性o語幹なので、動詞は -o をとる。du+対格で「下手へ」。下の国 dálor も重性で、対格は主格と同じ形になる。

    lúin dúlo gandér du dálor, drénimor du kéndor orénos.

    読み:ルーイン ドゥーロ ガンデール ドゥ ダーロル、ドレーニモル ドゥ ケンドル オレーノス。

    lúindúl-ogandérdudálor,drén-imordukéndororén-os.
    とき下る-<(重いものが)>硬木<主格>下手下の国<対格>参る-<我々が>下手縁の市<対格>縁-<属格>

    「硬木が下の国へ下りるころ、私どもは縁の市へ下って参ります。」

    崖道の商人が目上の人に、最初の下ろしのころに市へ出ることを告げる言い方。「行く」の謙譲の補充形 drén- を使う。縁の市は崖の麓にあるので、かならず du で言う。lúin の節は主節の前に置く。

    dúlo gandér es méndales du dálor.

    読み:ドゥーロ ガンデール エス メンダレス ドゥ ダーロル。

    dúl-ogandéresméndal-esdudálor.
    下る-<(重いものが)>硬木<主格>から中の世界-<属格>下手下の国<対格>

    「「硬木は中の世界を離れ、下の国へと下りていく。」」

    最初の下ろしの作法を語る文。硬木が下の国の杭になることを、木の「成就」とみる考え方を映している。

    tóra faronár un dáloros.

    読み:トーラ ファロナール ウン ダーロロス。

    tór-afaronárundálor-os.
    来る-<(軽いものが)>運び人<主格>中へ・中から下の国-<属格>

    「運び人が下の国の奥から上がってくる。」

    un+属格で「〜の中から」を表す。方向を問わない es+属格と違い、包まれた内側から出てくることを言う。

    na sénimor dálor, éso lóuvan.

    読み:ナ セーニモル ダーロル、エーソ ローヴァン。

    nasén-imordálor,és-olóuvan.
    <〜ない>見る-<我々が>下の国<対格>いる-<(重いものが)>遠い

    「下の国は我々には見えない。遠いのだ。」

    縁の肩で崖下を見下ろしながら言う文。後半は主語を言っていないが、動詞の重性の語尾 -o から、主語は dálor だとわかる。重性の dálor は、主格も対格も同じ形になる。

    tóra torár es dáloros lóuvanos.

    読み:トーラ トラール エス ダーロロス ローヴァノス。

    tór-atoráresdálor-oslóuvan-os.
    来る-<(軽いものが)>客<主格>から下の国-<属格>遠い-<重性・属格>

    「遠い下の国から客が来た。」

    日常の知らせ。es+属格で「〜から」を表す。形容詞 lóuvan は、名詞の後ろで dáloros(重性・単数・属格)に一致して lóuvanos になる。時制の語形がないので、「来た」とも「来る」とも訳せる。

    lúin ésa reinálva, na dúlan faronárai du dálor.

    読み:ルーイン エーサ レイナルヴァ、ナ ドゥーラン ファロナーライ ドゥ ダーロル。

    lúinés-areinálva,nadúl-anfaron-ár-aidudálor
    ときいる-<(軽いものが)>雨期<主格><〜ない>下る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下手下の国<対格>

    「雨期のあいだは、運び人は下の国へ下りない。」

    雨期には崖道が滑りやすく、閉じられることを述べた文。「雨期である間」は lúin+és- で言う。否定の na は動詞の直前に置く。faronár は「荷」に行為者の -ár をつけた語で、軽性なので複数主格は -ai になる。

    lúin tóra kailálva, dúlan faronárai du dálor.

    読み:ルーイン トーラ カイラルヴァ、ドゥーラン ファロナーライ ドゥ ダーロル。

    lúintór-akailálva,dúl-anfaron-ár-aidudálor
    とき来る-<(軽いものが)>乾風期<主格>下る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下手下の国<対格>

    「乾風期が来ると、運び人たちは下の国へ下りていく。」

    乾風期に崖道が開き、縁の市へ荷が運ばれることを述べた文。前の雨期の例文とちょうど裏返しの内容になる。kailálva は軽性なので、動詞は -a で一致する。dálor は重性なので、対格も主格と同じ形になる。

    lúin ésa kailálva, dulíþan kelárai gandér du dálor.

    読み:ルーイン エーサ カイラルヴァ、ドゥリーサン ケラーライ ガンデール ドゥ ダーロル。

    lúinés-akailálva,dul-íþ-ankel-ár-aigandérdudálor
    ときいる-<(軽いものが)>乾風期<主格>下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>硬木<対格>下手下の国<対格>

    「乾風期のあいだ、樵たちは硬木を下の国へ下ろす。」

    乾風期が硬木の伐り出しと吊り下ろしの季節であることを述べた文。gandér と dálor は重性なので、主格と対格が同じ形になる。使役の -íþ- は、後ろに強勢をもつ接辞がないので、自分で強勢をとる。

    póso? sáko es dáloros.

    読み:ポーソ?サーコ エス ダーロロス。

    póso?sákoesdálor-os.
    これは何だ塩<主格>から下の国-<属格>

    「これは何だ? 下の国から来た塩だよ。」

    二人の発話。市で品物を手に取って尋ね、相手が名詞句だけで答えている。póso は疑問詞 pó「何」と重性の指示詞 só「この」が縮まってできた定型の問いで、一語として扱う。品物はたいてい重性なので só の形で固まった。答えは動詞を省いた名詞句だけ。

    lúin tóro nébro, dúla lisá du dálor.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ドゥーラ リサー ドゥ ダーロル。

    lúintór-onébro,dúl-alisádudálor.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>下る-<(軽いものが)>字<主格>下手下の国<対格>

    「「霧が来ると、字は下の国へ流れ落ちる。」」

    霧の中で書いた字は墨がにじんで下へ流れる、という言い伝えを述べた文。霧期に大事な書きものを避ける理由になる。霧 nébro は重性なので動詞は -o、字 lisá は軽性なので -a をとる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。

    ésim dalorár.

    読み:エーシン ダロラール。

    és-imdalor-ár.
    である-<私が>下の国-<〜する人>

    「私は下の国の者だ。」

    名詞を述語にする繋辞の文。主語は動詞の語尾 -im でわかるので、代名詞は言わない。dalorár は dálor に -ár がついた語で、干潟の人を指す。

    dulpovéra ráuvan dálor.

    読み:ドゥルポヴェーラ ラウヴァン ダーロル。

    dulpovér-aráuvandálor.
    下手を問うように見下ろす-<(軽いものが)>森の巫<主格>下の国<対格>

    「森の巫が、下の国を下手を問うように見下ろす。」

    儀礼や祀りの場での言い方。下界へまっすぐ見下ろす禁忌を避け、下にあるものに配慮しながら、問いかけるような視線で気配を探る含みがある。dálor は重性で、対格も同名。

    dúlo lourílmo du dálor.

    読み:ドゥーロ ロウリルモ ドゥ ダーロル。

    dúl-olourílmodudálor.
    下る-<(重いものが)>滝<主格>下手下の国<対格>

    「滝が下の国へ下りていく。」

    地図・川筋・書物的な語り。lourílmo を流れの一部としてとらえ、その流れが川筋に沿って下流へ向かう様子を表す。重性主語なので動詞語尾は -o。du+対格で「下手へ」。

    dúlan faronárai bérun du dálor.

    読み:ドゥーラン ファロナーライ ベールン ドゥ ダーロル。

    dúl-anfaron-ár-aibérundudálor
    下る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>道のり<対格>下手下の国<対格>

    「運び人たちは道のり(道筋)を下りて下の国へ行く。」

    移動動詞と組む道のり用法。重性名詞 bérun は対格接語を持たず、主格と同形のまま道のりを表す。複数主語 faronárai は軽性行為者名詞 faronár の複数主格。

  2. 地の底

    上・中・下の三層のうちの「下」。重いものが沈んでいく場所。

    mé vír lúdro! dúla virá gróm du dálor.

    読み:メー ヴィール ルードロ!ドゥーラ ヴィラー グローン ドゥ ダーロル。

    mévírlúdro!dúl-avirágrómdudálor.
    <禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>嘘<対格>下る-<(軽いものが)>言葉<主格>重い下手地の底<対格>

    「嘘をつくな。重い言葉は地の底へ沈むぞ。」

    親が子をたしなめるときの言い方。lúdro「嘘」は重性o語幹なので、対格は主格と同じ形。言葉は本来軽性で上へ昇るものだが、崩れた言葉は「重く」なって下へ落ちる、という考えを表す。virá は軽性なので、形容詞 gróm は語尾なし、動詞は -a をとる。

    dúlo gromó du dálor, áura selvá.

    読み:ドゥーロ グロモー ドゥ ダーロル、アウラ セルヴァー。

    dúl-ogromódudálor,áur-aselvá.
    下る-<(重いものが)>体<主格>下手地の底<対格>昇る-<(軽いものが)>息<主格>

    「体は地の底へ沈み、息は昇る。」

    弔いのときに森の巫や系譜読みが唱える句。重性の gromó「体」と軽性の selvá「息」が、動詞の語尾 -o/-a でも対になっている。dálor はここでは干潟ではなく、上・中・下の三層の「下」、重いものが沈んでいく地の底を指す。

解説

崖の下にある国、つまり大干潟とその土地全体を指す語。湿って重く、古く濁ったものがたまる「世界の底」というとらえ方がこもり、地の底の意味にも広がる。悪の国ではなく、重いものが最後に行き着く場所という意味である。

そのほかの用例

ké tóres es dáloros, orvél tóres es orénos?

読み:ケー トーレス エス ダーロロス、オルヴェール トーレス エス オレーノス?

kétór-esesdálor-os,orvéltór-esesorén-os?
<〜か>来る-<あなたが>から下国-<属格>,OR来る-<あなたが>から縁-<属格>?

「下の国から来たのか、それとも縁から来たのか。」

道中や再会で相手の出所を二者択一で問う日常句。kéは最初の節にのみ置き、orvélは二つ目の節の頭に置く。2人称は動詞語尾に現れるため、主語代名詞は繰り返さない。

文法

重性・子音語幹。主格・対格 dálor、属 dáloros、与 dáloroi。du dálor「下の国へ」、es dáloros「下の国から」。

語源

古高原語 *dálora。強勢のある音節と語末の音節のあいだにもう一つ音節があるので、古い脱落の条件には合わない。gandér・tambór など重性名詞の多くにならい、類推で語末の母音を落とした例外である。綴りは〈dalora〉。

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