小説
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嘘
事実でない、偽りの言葉。
mé vír lúdro! dúla virá gróm du dálor.
読み:メー ヴィール ルードロ!ドゥーラ ヴィラー グローン ドゥ ダーロル。
| mé | vír | lúdro! | dúl-a | virá | gróm | du | dálor. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 言う<命令法><あなたが> | 嘘<対格> | 下る-<(軽いものが)> | 言葉<主格> | 重い | 下手 | 地の底<対格> |
「嘘をつくな。重い言葉は地の底へ沈むぞ。」
親が子をたしなめるときの言い方。lúdro「嘘」は重性o語幹なので、対格は主格と同じ形。言葉は本来軽性で上へ昇るものだが、崩れた言葉は「重く」なって下へ落ちる、という考えを表す。virá は軽性なので、形容詞 gróm は語尾なし、動詞は -a をとる。
éso lúdro þérno nourés.
読み:エーソ ルードロ セルノ ノウレース。
| és-o | lúdro | þérno | nour-és. |
| いる-<(重いものが)> | 嘘<主格> | 陰で害する者<主格> | 心-<属格> |
「嘘は、心を蝕む毒きのこである。」
教えの書や戒めの言葉に見られる比喩の言い方。見た目は無害でも内側から人を害する言葉を þérno にたとえる。lúdro「嘘」は重性なので、繋辞は éso。nourés は nourá「心」の属格。
þóndim aursárail ré na vírim lúdro.
読み:ソンディン アウルサーライル レー ナ ヴィーリン ルードロ。
| þónd-im | aursár-ail | ré | na | vír-im | lúdro. |
| 誓う-<私が> | 祖先-<〜らに> | <〜と(節)> | <〜ない> | 言う-<私が> | 嘘<対格> |
「私は祖先に、嘘は言わないと誓う。」
星の見える晴れた夜に立てる誓いの基本の形。誓う相手は与格で示し(aursárail「祖先たちに」)、誓う中身は ré の節で後ろに置く。ré の節は元の文の法をそのまま保つので、ここでは直説法の否定 na vírim になる。時制はないので、「言わない」は文脈から未来のことと読む。
mé vír lúdro!
読み:メー ヴィール ルードロ!
| mé | vír | lúdro! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 言う<命令法><あなたが> | 嘘<対格> |
「嘘を言うな。」
親が子どもを叱るときなどに使う、ごく日常的な禁止の言い方。「mé+命令法」で作る。lúdro は重性o語幹なので、主格と対格が同じ形になる。嘘は「下へ落ちる言葉」とされ、炉の前ではとくに嫌われる。
ké víres lúdro? na vírim lúdro.
読み:ケー ヴィーレス ルードロ?ナ ヴィーリン ルードロ。
| ké | vír-es | lúdro? | na | vír-im | lúdro. |
| <〜か> | 言う-<あなたが> | 嘘<対格> | <〜ない> | 言う-<私が> | 嘘<対格> |
「「嘘をついているのか?」「嘘などついていない。」」
二人の発話。はい・いいえで答える問いは、文頭に ké を置いて作る。高原語には「いいえ」にあたる語がないので、問いの動詞を自分の人称に変えて na をつけ、繰り返して答える。2人称を使っているので、同じ段か下向きの話し方になる。
viríres lúdro, gruunélan aursárai tásei.
読み:ヴィリーレス ルードロ、グルーネーラン アウルサーライ ターセイ。
| vir-ír-es | lúdro, | gruun-él-an | aursár-ai | tás-ei. |
| 言う-<もし〜なら>-<あなたが> | 嘘<対格> | 怒る-<〜だろう>-<彼らが> | 祖先-<〜たちが> | <あなた>-<与格> |
「嘘をつけば、ご先祖様がお前にお怒りになるだろう。」
年長者が子どもを戒めるときの言い方。条件は接続詞を使わず、仮定法で表す。帰結の部分は推量法になる。法の接尾辞 -ír-・-él- は強勢をもつので、語根の ´ は消える(grúun- → gruunélan)。
duhémbrim. léunim lúdro.
読み:ドゥヘンブリン。レウニン ルードロ。
| duhémbrim. | léun-im | lúdro. |
| 恥じ入ります | 申す-<私が> | 嘘<対格> |
「恥じ入ります。偽りを申し上げました。」
宮廷や役所で、目上の人に偽りを詫びるときの言い方。léun- は「言う」の謙譲の補充形。duhémbrim は謙譲の du- と hémbro「恥」から来た決まった形で、自分を低めて詫びる。lúdro は重性o語幹なので、対格も主格と同じ形になる。
vérin na léunim lúdro.
読み:ヴェーリン ナ レウニン ルードロ。
| vérin | na | léun-im | lúdro. |
| まことに | <〜ない> | 申す-<私が> | 嘘<対格> |
「まことに、嘘は申しません。」
目上の人に向けて、自分の言葉が偽りでないことを強く請け合う言い方。文頭の vérin は続く文全体を請け合う副詞で、否定の小辞 na より前に置く。léun- は「言う」の謙譲の補充形。lúdro は重性o語幹で、主格と対格が同じ形。
na víro þurán lúdro
読み:ナ ヴィーロ スラーン ルードロ
| na | vír-o | þurán | lúdro |
| <〜ない> | 言う-<(重いものが)> | 唇<主格> | 嘘<対格> |
「唇は嘘を言わない。」
法や書物の文章に立てそうな、倫理的な格言。na による直説法の否定。þurán も lúdro も重性で、名詞の単数では主格と対格が同形なため、VSO語順が主語と目的語を分ける。
偽り
見せかけ、ごまかし。偽の印や秤の不正にも言う。
þúnda senár lúdro vándos.
読み:スンダ セナール ルードロ ヴァンドス。
| þúnd-a | sen-ár | lúdro | vánd-os. |
| 裁く-<(軽いものが)> | 見る-<〜する人> | 偽り<対格> | 秤-<属格> |
「市の目付は秤の偽りを裁く。」
縁の市で、秤の不正のような揉め事を言うときの言い方。lúdro は口にした嘘だけでなく、秤や印のごまかしにも使う。属格 vándos「秤の」は名詞の後ろに置く。vándo「秤」は強勢が語根にある例外的な o語幹名詞。
mé lisésa lúdro sáindarei.
読み:メー リセーサ ルードロ サインダレイ。
| mé | lis-és-a | lúdro | sáindar-ei. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 書く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 偽り<対格> | 証文-<与格> |
「証文に偽りを書かぬこと。」
書の司が定めた、証文の書き方の決まりにある一句。書かれた言葉が重んじられる王国では、証文のごまかしは重い罪になる。場所「〜に」は前置詞なしの与格で言う。sáindar「証文」は軽性の子音語幹なので、与格は -ei になる。
嘘・偽り。言葉は本来軽く昇るものだが、偽りの言葉は重く、下へ沈むものとして重性に分類される。霧期には嘘が増えると信じられている。「嘘を言う」は vír- lúdro。縁の市の悪口では、干潟語の言葉を lúdro になぞらえることもある。
重性・o語幹(lúdro/lúdros/lúdroi…)。複数 lúdrul。
古高原語 *lúdro から
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