vír-

品詞
動詞
意味
言う
辞書形
víra
発音
[ˈvira]
読み
ビーラ
分野
知覚・感情・思考・発話

意味

  1. 言う

    言葉を口に出して言う。

    mé vír sélvanan nébroi!

    読み:メー ヴィール セルヴァナン ネーブロイ!

    mévírsélvan-annébr-oi!
    <禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>セルヴァン-<対格>霧-<与格>

    「霧の中で、セルヴァンの名を呼ぶな。」

    禁止は「mé+命令法」。名前を vír-「言う」の目的語にすると、「名を呼ぶ」の意味になる。場所は前置詞なしの与格で言う。霧の中で名前を呼んではいけない、という禁忌の言い方。

    mé vír lúdro! dúla virá gróm du dálor.

    読み:メー ヴィール ルードロ!ドゥーラ ヴィラー グローン ドゥ ダーロル。

    mévírlúdro!dúl-avirágrómdudálor.
    <禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>嘘<対格>下る-<(軽いものが)>言葉<主格>重い下手地の底<対格>

    「嘘をつくな。重い言葉は地の底へ沈むぞ。」

    親が子をたしなめるときの言い方。lúdro「嘘」は重性o語幹なので、対格は主格と同じ形。言葉は本来軽性で上へ昇るものだが、崩れた言葉は「重く」なって下へ落ちる、という考えを表す。virá は軽性なので、形容詞 gróm は語尾なし、動詞は -a をとる。

    mé vír þelán aldáres te áursa!

    読み:メー ヴィール セラーン アルダーレス テ アウルサ!

    mévírþel-ánaldár-esteáurs-a!
    <禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>名前-<対格>座-<属格><関係節>お昇りになる<〜し終えた>-<(軽いものが)>

    「お昇りになった座のお名を口にするな。」

    王の崩御から一年のあいだの禁忌を言う文。この間は座名も声に出さず、aldár te áursa「お昇りになった座」と言う。aldár áuren「高き座」の分詞ではなく、関係節に完了形を入れて区別している。関係節は文の終わりまで続く。

    dúla faronár es orénos. mé vír þelán éles!

    読み:ドゥーラ ファロナール エス オレーノス。メー ヴィール セラーン エーレス!

    dúl-afaronáresorén-os.mévírþel-ánél-es!
    下る-<(軽いものが)>運び人<主格>から縁-<属格><禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>名前-<対格><3人称単数・軽性>-<属格>

    「運び人が縁から下りた(落ちて死んだ)。その名を口にするな。」

    崖から落ちて死ぬことは、いちばん恐れられる死である。そのため brúum-「落ちる」とは言わず、dúl-「下る」で遠回しに言う。高原語には時制がないので、dúla は文脈によって「下りた」の意味になる。死後一年は死者の名を口にしない禁忌があるので、すぐ後に禁止の文が続く。

    toríro nébro, mé vír þelán! ésa þelá selvá, fíndo dálor.

    読み:トリーロ ネーブロ、メー ヴィール セラーン!エーサ セラー セルヴァー、フィンド ダーロル。

    tor-ír-onébro,mévírþel-án!és-aþeláselvá,fínd-odálor.
    来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>名前-<対格>いる-<(軽いものが)>名前<主格>息<主格>聞く-<(重いものが)>下の国<主格>

    「霧が来たら名を呼ぶな。名は息だ、下の国が聞きつける。」

    霧期の禁忌を子どもに教える言い方。口に出した名前を selvá「息」としてとらえている。条件の節は動詞を仮定法にするだけで作る。dálor は重性なので、動詞 fínd- は重性の -o をとる。

    vírim slúun, na vírim sélu.

    読み:ヴィーリン スルーン、ナ ヴィーリン セール。

    vír-imslúun,navír-imsélu.
    言う-<私が>千<〜ない>言う-<私が>泥の千

    「陸の千と言っているのだ。泥の千とは言っていない。」

    縁の市でよく起こる言い争いの決まった言い方。slúun(1000)と、干潟から借りた sélu(1728)を言い分けている。na は動詞の直前に置くので、後半では動詞 vírim を繰り返す。語をそのまま引いて言うときは、slúun も sélu も格の語尾をつけない。

    pón víres?

    読み:ポーン ヴィーレス?

    pónvír-es?
    何<対格>言う-<あなたが>

    「何と言った?」

    くだけた下向きの問い。疑問詞 pó「何」は重性なので、主格と対格が同じ形になり、動詞の前に出る。2人称を使うので、目上の人には使えない。時制がないので「何と言う」「何と言った」のどちらにもなる。

    vírim ré torélo nébro dórel.

    読み:ヴィーリン レー トレーロ ネーブロ ドーレル。

    vír-imrétor-él-onébrodórel.
    言う-<私が><〜と(節)>来る-<〜だろう>-<(重いものが)>霧<主格>明日

    「明日は霧が来るだろう、と私は言っておく。」

    ré は「〜と」の節を導き、主節の後ろに置く。ré の後ろの節は推量法のまま保たれる。主語の霧 nébro が重性なので、動詞の語尾は -o。

    mé vír térin!

    読み:メー ヴィール テーリン!

    mévírtérin!
    <禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>そのように

    「そんなふうに言うんじゃない!」

    子どもの粗野な言い方を、親がたしなめるときの決まった言い方。禁止は「mé+命令法」で言う。térin は、直前に相手が言った言い方を指す。

    mé vír þelán élaures!

    読み:メー ヴィール セラーン エーラウレス!

    mévírþel-ánélaur-es!
    <禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>名前-<対格>昇りゆく人-<属格>

    「亡くなった方の名を口にしてはならない。」

    喪中に、子どもや目下の者をたしなめる言い方。死後一年は生前の名を声に出せないので、死者は élaur「昇りゆく人」と呼ぶ。禁止は mé+命令法。名前を書くことは禁じられていない。

    vírau dáun ín virán.

    読み:ヴィーラウ ダウン イーン ヴィラーン。

    vír-audáunínvir-án.
    言う-<双数>二人同じ言葉-<対格>

    「二人は同じことを言っている。」

    日常の言い方で、二人の言い分が一致していることを表す。ここでの ín virán は「一つの言葉」ではなく「同じ言葉」の意味。双数の動詞は人称も性も区別しない。

    vír rimbá, ende.

    読み:ヴィール リンバー、エンデ。

    vírrimbá,ende.
    言う<命令法><あなたが>数どうぞ

    「数を言ってくれ。」

    縁の市の取引言葉。格語尾が落ちるので、対格の rimbán ではなく rimbá と言う。値や品の数を聞くとき、ごくふつうに使う。

    vírim sélu lénar sáindarar, na vírim slúun.

    読み:ヴィーリン セール レーナル サインダラル、ナ ヴィーリン スルーン。

    vír-imsélulén-arsáindar-ar,navír-imslúun.
    言う-<私が>泥の千枚-<〜らの>証文-<〜らの><〜ない>言う-<私が>千

    「私が言っているのは泥の千枚の証文だ。陸の千ではない。」

    縁の市で、数の取り違えを防ぐための念押し。sélu も slúun と同じく、量の名詞を複数属格でとる。干潟の数え方の1728枚なのか、高原の1000枚なのかを、二つの語を言い分けてはっきりさせている。

    ké víres dáumbar? vírim, ombár dáu fréimau.

    読み:ケー ヴィーレス ダウンバル?ヴィーリン、オンバール ダウ フレーマウ。

    kévír-esdáumbar?vír-im,ombárdáufréim-au.
    <〜か>言う-<あなたが>二十言う-<私が>十二倍-<双数>

    「「二十と言ったか?」「言った。十の二倍だ。」」

    二人の発話。市で数を確かめ合うやりとり。はい・いいえにあたる語がないので、問いの動詞を自分の人称に変えて繰り返して答える(vírim)。そのあとに念押しの言い換えを添える。掛ける数が dáu なので、fréim は双数の fréimau になる。

    mé vír virán rúgalan, éso hóum!

    読み:メー ヴィール ヴィラーン ルーガラン、エーソ ホーン!

    mévírvir-ánrúgal-an,és-ohóum!
    <禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>言葉-<対格>粗い-<軽性・対格>いる-<(重いものが)>炉<主格>

    「粗い言葉を言うな。炉の前だぞ。」

    家の中で、親が子をたしなめる言い方。炉の前で粗野な言葉を口にしてはいけない、という禁忌を表す。禁止は「mé+命令法」で言う。後半の éso hóum は「炉がある(のだ)」で、場所を示さない存在文。hóum は重性なので、繋辞は -o をとる。

    víra éndra ré tóro nébro es dáloros.

    読み:ヴィーラ エンドラ レー トーロ ネーブロ エス ダーロロス。

    vír-aéndrarétór-onébroesdálor-os.
    言う-<(軽いものが)>世間の人<主格><〜と(節)>来る-<(重いものが)>霧<主格>から下の国-<属格>

    「世の人は、霧は下の国から来ると言う。」

    言い伝えを紹介するときの決まった言い方。éndra を、特定の誰かではない主語として使うと、「世の人」「人は」という意味になる。ré の後ろの節では、主語の霧 nébro が重性なので、動詞は -o をとる。

    mé vír sérin, findéla éndra.

    読み:メー ヴィール セーリン、フィンデーラ エンドラ。

    mévírsérin,find-él-aéndra.
    <禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>このように聞く-<〜だろう>-<(軽いものが)>他人<主格>

    「そんなことを言うな、人に聞かれるぞ。」

    目下の者や身内をたしなめるときの言い方。後半は推量法で、「誰かが聞くだろう」という意味になる。ここの éndra は特定の人ではなく、不特定の他人を指す。

    víran dalorárai ré brúuma naþrenár es élvares.

    読み:ヴィーラン ダロラーライ レー ブルーマ ナスレナール エス エルヴァレス。

    vír-andalorár-airébrúum-anaþrenáresélvar-es.
    言う-<彼らが>下の国の者-<〜たちが><〜と(節)>落ちる-<(軽いものが)>異邦人<主格>から天-<属格>

    「下の国の者たちは、異邦人が天から落ちてきたと言う。」

    干潟の言い伝えを、高原の人が伝え聞いた形で言う文。ré の節は主節の後ろに置く。高原の世界観では、上から落ちてくる者は流れ星と同じく不吉なものとされるので、この種の話は泥の国の迷信として語られることが多い。es+属格で方向を問わない「〜から」。

    lúin vírim sélu, glǘna senár.

    読み:ルーイン ヴィーリン セール、グリューナ セナール。

    lúinvír-imsélu,glǘn-asen-ár.
    とき言う-<私が>泥の千<対格>冷たく黙る-<(軽いものが)>見る-<〜する人>

    「「泥の千」と口にしたとたん、目付は冷たく黙りこむ。」

    縁の市でのくだけた陰口。sélu は干潟から借りた語なので重性で、主格と対格が同じ形になる。lúin の節は主節の前に置く。主語の senár は人なので、動詞は軽性の -a をとる。

    þóndim aursárail ré na vírim lúdro.

    読み:ソンディン アウルサーライル レー ナ ヴィーリン ルードロ。

    þónd-imaursár-ailrénavír-imlúdro.
    誓う-<私が>祖先-<〜らに><〜と(節)><〜ない>言う-<私が>嘘<対格>

    「私は祖先に、嘘は言わないと誓う。」

    星の見える晴れた夜に立てる誓いの基本の形。誓う相手は与格で示し(aursárail「祖先たちに」)、誓う中身は ré の節で後ろに置く。ré の節は元の文の法をそのまま保つので、ここでは直説法の否定 na vírim になる。時制はないので、「言わない」は文脈から未来のことと読む。

    mé vír lúdro!

    読み:メー ヴィール ルードロ!

    mévírlúdro!
    <禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>嘘<対格>

    「嘘を言うな。」

    親が子どもを叱るときなどに使う、ごく日常的な禁止の言い方。「mé+命令法」で作る。lúdro は重性o語幹なので、主格と対格が同じ形になる。嘘は「下へ落ちる言葉」とされ、炉の前ではとくに嫌われる。

    ké víres lúdro? na vírim lúdro.

    読み:ケー ヴィーレス ルードロ?ナ ヴィーリン ルードロ。

    kévír-eslúdro?navír-imlúdro.
    <〜か>言う-<あなたが>嘘<対格><〜ない>言う-<私が>嘘<対格>

    「「嘘をついているのか?」「嘘などついていない。」」

    二人の発話。はい・いいえで答える問いは、文頭に ké を置いて作る。高原語には「いいえ」にあたる語がないので、問いの動詞を自分の人称に変えて na をつけ、繰り返して答える。2人称を使っているので、同じ段か下向きの話し方になる。

    viríres lúdro, gruunélan aursárai tásei.

    読み:ヴィリーレス ルードロ、グルーネーラン アウルサーライ ターセイ。

    vir-ír-eslúdro,gruun-él-anaursár-aitás-ei.
    言う-<もし〜なら>-<あなたが>嘘<対格>怒る-<〜だろう>-<彼らが>祖先-<〜たちが><あなた>-<与格>

    「嘘をつけば、ご先祖様がお前にお怒りになるだろう。」

    年長者が子どもを戒めるときの言い方。条件は接続詞を使わず、仮定法で表す。帰結の部分は推量法になる。法の接尾辞 -ír-・-él- は強勢をもつので、語根の ´ は消える(grúun- → gruunélan)。

    mé vír viráis gráisais!

    読み:メー ヴィール ヴィライス グライサイス!

    mévírvir-áisgráis-ais!
    <禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>言葉-<〜たちを>悪い-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格>

    「悪い言葉を口にするな。」

    炉の前で粗野な言葉を使ってはいけないという禁忌を、親が子に言い聞かせるときの言い方。禁止は mé+命令法で表す。形容詞は軽性の virá に一致して、複数対格の -ais をとる。

    víra kelár ré éso nébro tó gráis.

    読み:ヴィーラ ケラール レー エーソ ネーブロ トー グライス。

    vír-akel-árréés-onébrotógráis.
    言う-<(軽いものが)>伐る-<〜する人><〜と(節)>いる-<(重いものが)>霧<主格>あの<重性>不吉な

    「樵は、あの霧は不吉だと言う。」

    人から聞いた兆しを伝える言い方。ré の節の中も、動詞で始まる語順を保つ。tó は重性の指示詞「あの」。

    víra senár viráis klérais orenvandárei.

    読み:ヴィーラ セナール ヴィライス クレーライス オレンヴァンダーレイ。

    vír-asen-árvir-áisklér-aisorenvandár-ei.
    言う-<(軽いものが)>見る-<〜する人>言葉-<〜たちを>よそよそしい-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格>縁商人-<与格>

    「目付は縁商人によそよそしい言葉をかける。」

    人の態度が冷ややかなことも klér で表す。この文では言葉を修飾している。語順は動詞–主語–目的語–与格(受け手)の基本どおり。段の外の相手に、改まってはいても打ち解けない話し方をする様子を言う。

    víran faronárai viráis múrais senárei.

    読み:ヴィーラン ファロナーライ ヴィライス ムーライス セナーレイ。

    vír-anfaron-ár-aivir-áismúr-aissen-ár-ei.
    言う-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>言葉-<〜たちを>崩れた-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格>見る-<〜する人>-<与格>

    「運び人たちは目付に崩れた言葉で話す。」

    都の人が、縁の市の取引言葉について言うときの言い方。受け手の目付は与格 senárei で表す。形容詞は軽性・複数・対格の -ais の形で viráis に一致している。

    mé vír virán rúgalan ólmarei!

    読み:メー ヴィール ヴィラーン ルーガラン オルマレイ!

    mévírvir-ánrúgal-anólmar-ei!
    <禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>言葉-<対格>粗野な-<軽性・対格>年長者-<与格>

    「年長者に粗野な言葉を口にするな。」

    家の戒め。禁止は「mé+命令法」で言う。rúgal を言葉に使うと、品のない、粗野な言い方を指す。炉の前で下品な言葉を言ってはならない、という禁忌とも結びついた言い方。

    dróuma ólmar ré víran faronárai viráis rúgalais.

    読み:ドローマ オルマル レー ヴィーラン ファロナーライ ヴィライス ルーガライス。

    dróum-aólmarrévír-anfaron-ár-aivir-áisrúgal-ais.
    嘆く-<(軽いものが)>年長者<主格><〜と(節)>言う-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>言葉-<〜たちを>粗野な-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格>

    「年長者は、運び人たちが粗野な言葉を使うと嘆く。」

    都でよく聞く嘆き。ré の後ろの節も、主節と同じく動詞で始まる。形容詞は軽性・複数・対格の rúgalais の形で viráis に一致している。

    na vírimor sárvo, lísimor ó.

    読み:ナ ヴィーリモル サルヴォ、リーシモル オー。

    navír-imorsárvo,lís-imoró.
    <〜ない>言う-<我々が>禁じられた名<対格>書く-<我々が><3人称単数・重性>

    「禁じられた名は口にしない。書き記すだけだ。」

    名前の禁忌について説明する文。名前は息の形そのものとされるので、口にしてはならないが、書くのは息を使わないので禁じられない。sárvo はここで、王の名や喪中の死者の名を遠回しに指している。sárvo が重性なので、受ける代名詞も重性の ó になる。

    lúin tóro nébro, mé virésa éndran. éso sárvo.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー ヴィレーサ エンドラン。エーソ サルヴォ。

    lúintór-onébro,mévir-és-aéndr-an.és-osárvo.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>言う-<〜すべし>-<(軽いものが)>人-<対格>いる-<(重いものが)>禁忌<主格>

    「霧が来たら、人の名を呼ばぬこと。これは禁忌である。」

    季節の言い習わし。霧の中で名前を呼ぶと、下の国にその名前を聞かれるとされる。霧 nébro は重性なので、動詞は -o をとる。当為法は mé で否定し、主語を言わないときは一般の人が主語になるので、軽性の形をとる。vír-「言う」は人の対格をとると「名を呼ぶ」の意味になる。最後の文は、存在の és- と重性の sárvo で「禁忌である」と言う。

    póþul? vír, ende.

    読み:ポースル?ヴィール、エンデ。

    póþul?vír,ende.
    なんだって言う<命令法><あなたが>どうぞ

    「なんだって? もう一回言ってくれ、頼む。」

    縁の市の取引言葉。むき出しの語幹 vír に ende を添えて、言い直しを頼んでいる。市は段に乗らない場なので、命令法と同じ形でも無礼にはならない。

    naþíl. vír virnourán némei, ende.

    読み:ナシール。ヴィール ヴィルノウラーン ネーメイ、エンデ。

    naþíl.vírvirnouránném-ei,ende.
    わからん言う<命令法><あなたが>意味<対格><私>-<与格>どうぞ

    「わからん。意味を言ってくれ、頼む。」

    わからないと伝えたうえで、説明を頼む言い方。縁の市の取引言葉らしく、vír-「言う」をむき出しの語幹で使い、ende を添えている。聞き手は与格 némei「私に」で表す。

    éira, pón vírim?

    読み:エーラ、ポーン ヴィーリン?

    éira,pónvír-im?
    ええと何<対格>言う-<私が>

    「ええと、何と言えばいいか。」

    言葉に詰まったときの日常の言い方。疑問詞 pó(重性・対格は主格と同じ形)は動詞の前に置く。éira は読点で区切って文の前に置き、文の語順には関わらない。

    vír freimvirá, ende.

    読み:ヴィール フレインヴィラー、エンデ。

    vírfreimvirá,ende.
    言う<命令法><あなたが>言い直しどうぞ

    「言い直してくれ、頼む。」

    縁の市の取引言葉。格語尾が落ちるので、目的語も主格と同じ形のまま置く。動詞はむき出しの語幹 vír で、ende を添える。聞き取れなかった数を言い換えて繰り返すよう頼む言い方。

    na vírin virán, senosálimor.

    読み:ナ ヴィーリン ヴィラーン、セノサーリモル。

    navír-invir-án,senosál-imor.
    <〜ない>言う-<〜して・〜く>言葉-<対格>目合わせ-<我々が>

    「私たちは、ひとことも言わず、目を合わせる(無言で合意する)。」

    意味2。副動詞 -in に na をつけた否定形で「言わずに」と前置し、本句の「目合わせる」が無言の合意を示す。主語は本句の -imor が示す一人称複数。virán は virá「言葉」の単数対格。

    virsnáles tás si na víres virán

    読み:ヴィルスナーレス タース シ ナ ヴィーレス ヴィラーン

    virsnál-estássinavír-esvir-án
    口をとがらせる-<あなたが><あなた・主格>CONN<〜ない>言う-<あなたが>言葉-<対格>

    「あなたは口をとがらせ、ひとことも言わない。」

    「言葉を閉じる」意を、物を言わない述語節で明示する文。主語を繰り返さず、同じ聞き手への否定節も人称語尾 -es を保つ。na は文ではなく動詞の直前に来る。

    na víro þurán lúdro

    読み:ナ ヴィーロ スラーン ルードロ

    navír-oþuránlúdro
    <〜ない>言う-<(重いものが)>唇<主格>嘘<対格>

    「唇は嘘を言わない。」

    法や書物の文章に立てそうな、倫理的な格言。na による直説法の否定。þurán も lúdro も重性で、名詞の単数では主格と対格が同形なため、VSO語順が主語と目的語を分ける。

    mé vír frúm, vír samonþóvo.

    読み:メー ヴィール フルーン、ヴィール サモンソーヴォ。

    mévírfrúm,vírsamonþóvo.
    <禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>血<対格>言う<命令法><あなたが>皮影<対格>

    「血とは言わず、皮影と言え。」

    samonþóvo の婉曲的意味「皮影」を使うよう指示する文。禁止には mé と命令法、肯定には語幹の命令形を用いる。

    mé vír selvíñan nébroi!

    読み:メー ヴィール セルヴィーニャン ネーブロイ!

    mévírselvíñ-annébr-oi!
    <禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>セルヴィーニャ-<対格>霧-<与格>

    「霧の中で、セルヴィーニャの名を呼ぶな!」

    家庭の禁止表現。mé に動詞の命令法(むき出しの語幹)を続ける。vír に固有名を対格で取ると「その名を呼ぶ」意になる。nébroi は前置詞なしの与格で「霧の中で」。selvíña は指小 a 語幹として対格 -an を取り selvíñan になる。霧では名を大声で呼ばない禁忌を前提にした、親しい家族間の下向きの言い方。

    mé vír raumvirán té

    読み:メー ヴィール ラウンヴィラーン テー

    mévírraumvir-ánté
    <禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>噂-<対格>あの<軽性>

    「あの噂を言うな。」

    日常の叱責・制止。他動詞 vír- の直接目的語には対格が必要で、軽性 a 語幹の単数対格は -án になる。指示詞 té は「いま話題になっている、例の」という限定を表す。

    víra endríña hueníñan

    読み:ヴィーラ エンドリーニャ フエニーニャン

    vír-aendríñahueníñ-an
    言う-<(軽いものが)>子ども<主格>つぶやき-<対格>

    「子どもがつぶやきを口にする。」

    日常会話。子どもが、言葉になりかけの小さな声を漏らす場面。hueníña は軽性 a 語幹の見出しで、対格は語幹 hueníñ に語尾 -an を付けた hueníñ-an として取る。

    vír amvirán ende.

    読み:ヴィール アンヴィラーン エンデ。

    víramvir-ánende
    言う<命令法><あなたが>きちんとした言葉づかい-<対格>どうぞ

    「きちんとした言葉づかいで言え、頼む。」

    市でのたしなめ。命令法 vír に目的語 amvirán を置き、縁の市で多用する ende を添える。この用法では amvirá が「正しく整った言葉づかい」を指す。

    noumovírau némor dáun

    読み:ノウモヴィーラウ ネーモル ダウン

    noumo-vír-aunémordáun
    顔-言う-<双数><我々>二人<主格>

    「我ら二人は顔で通じ合う。」

    夫婦、きょうだい、旧知など、身内の二人が声に出さず意を合わせる場面。主語は双数短语 némor dáun「我ら二人」。双数動詞 -au は人称を表さないため、双数主語は省略しない。

    noumovíran aursárai, na víran aursárai

    読み:ノウモヴィーラン アウルサーライ、ナ ヴィーラン アウルサーライ

    noumo-vír-anaursár-ai,navír-anaursár-ai
    顔-言う-<彼らが>祖先-<〜たちが><〜ない>言う-<彼らが>祖先-<〜たちが>

    「祖先たちは顔で通じ合い、口には語らない。」

    儀礼・系譜の読み上げなどで祖先どうしの通じを述べる、改まった定型句。主語 aursárai「祖先たち」が複数なので動詞は3複の -an をとる。第二節で vír-「言う」の否定を並べ、無言の合図が発語と同格に扱われることを示す。

    noumovíra endríña sé

    読み:ノウモヴィーラ エンドリーニャ セー

    noumo-vír-aendríñasé
    顔-言う-<(軽いものが)>子<主格>この<軽性>

    「この子は顔で伝える。」

    家庭や親しい者どうしの日常の場面。noumovír- は「顔が言う(無言で伝える)」の自動詞で、文の主語は顔そのものではなく、顔で通じる人物にとる。主語 endríña は軽性なので、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。指示詞 sé は名詞句の末尾に置かれる。

    víra ólmar ré þrunésa dulsóilan.

    読み:ヴィーラ オルマル レー スルネーサ ドゥルソイラン。

    vír-aólmarréþrun-és-adulsóil-an.
    言う-<(軽いものが)>年長者<主格><〜と(節)>削る-<〜すべし>-<(軽いものが)>下髪-<対格>

    「年長者は「顎毛は剃るべきだ」と言う。」

    作法・戒めを述べる文。当為法 þrunésa は主語を明示しないとき、一般の人を主語として軽性の形をとる。

    lúin na vírim þelán, núnim

    読み:ルーイン ナ ヴィーリン セラーン、ヌーニン

    lúinnavír-imþel-án,nún-im
    とき<〜ない>言う-<私が>名-<対格>目を閉じる-<私が>

    「その名を口にしないとき、私は目を閉じる。」

    弔いや深い悲しみの場面。亡き者の名を唱えない禁忌や、悼みの中で言葉を控える動作として núnim が用いられる。lúin は主節に先行する時の節を導く。

    lúin víra ólmar élan, núnim

    読み:ルーイン ヴィーラ オルマル エーラン、ヌーニン

    lúinvír-aólmarél-an,nún-im
    とき言う-<(軽いものが)>年長者<主格><3人称単数・軽性>-<対格>目を伏せる-<私が>

    「年長者がそれを仰るとき、私は目を伏せる。」

    日常の敬意の場面。目上者の前で静かにまぶたを下ろす作法。núnim 自体は謙譲の接頭辞を持たないが、動作が敬意を表す。vír- は他動詞なので、目的語の代名詞 él に対格語尾 -an を付けた él-an を補う。

  2. (名を)呼ぶ

    名前を目的語にとって、その名を口にする・呼ぶ。名前の禁忌の言い方に使う。

    lúin éso nébro, mé vírir þeláis.

    読み:ルーイン エーソ ネーブロ、メー ヴィーリル セライス。

    lúinés-onébro,mévír-irþel-áis.
    ときいる-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>言う-<皆で〜せよ>名前-<〜たちを>

    「霧が出ているときは、名を呼んではならぬ。」

    霧の中で名前を呼ぶと下の国に聞かれるという禁忌を、年長者が若者たちに言い聞かせる言い方。vír- が名前を目的語にとると「名を呼ぶ・口にする」の意味になる。禁止は mé+命令法で、相手が複数なので命令法の2複 -ir を使う。lúin の節は主節の前に置く。

    na vírimor þelán aldáres áurenes.

    読み:ナ ヴィーリモル セラーン アルダーレス アウレネス。

    navír-imorþel-ánaldár-esáur-en-es.
    <〜ない>言う-<我々が>名前-<対格>座-<属格>昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格>

    「我々は高き座の御名を口にしない。」

    王の個人名は即位と崩御のときに一度ずつしか唱えないという決まりを述べた文。na は直説法の動詞の直前に置く。分詞 áuren は座 aldár に一致して、軽性の属格 -es をとる。書くことは息を使わないので、この禁忌には当たらない。

解説

言葉を口に出すことを表す他動詞。完了の語根は補充形 þóul-。名前を目的語にとると「名を呼ぶ・口にする」の意味になり、霧の中で名を呼ぶことや死後一年の名を口にすることなど、名前の禁忌の言い方に使う(mé vír sélvanan nébroi!「霧の中でセルヴァンの名を呼ぶな」)。目上の人には尊敬の補充形 selvén-、自分には謙譲の補充形 léun- を使う。名詞 virá「言葉」はこの語根から派生した。

そのほかの用例

lísa lisár virán pélsei kélenoi.

読み:リーサ リサール ヴィラーン ペルセイ ケーレノイ。

lís-alis-árvir-ánpéls-eikél-en-oi
書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>言葉-<対格>脂の木-<与格>伐る-<〜した・〜された>-<重性・与格>

「書記は伐った脂の木(の札)に字を書く。」

pélsa「脂の木」は、名詞としては軽性の語形(与格 -ei)のまま。けれども伐られた材なので、分詞は重性の与格 -oi で一致する。荷札が重性になるのは、この規則による。

léunim dáu viríñau.

読み:レウニン ダウ ヴィリーニャウ。

léun-imdáuvir-íñ-au
申す-<私が>二言葉-<小さな・拙い>-<双数>

「拙い句を二つ、申し上げます。」

詩の挨拶で、目下の者が先に詠むときの前置き。léun- は「言う」の謙譲の補充形。指小辞 -íña はへりくだった「拙い」の意味を表し、a語幹として双数の -au をとる。

na þílim virán dáloros.

読み:ナ シーリン ヴィラーン ダーロロス。

naþíl-imvir-ándálor-os.
<〜ない>分かる-<私が>言葉-<対格>下の国-<属格>

「下の国の言葉は分からん。」

都の人が干潟語について言う、くだけたひとこと。virán dáloros「下の国の言葉」は、「泥の言葉」ほどあからさまな蔑みではないが、距離を置いた言い方。属格は名詞の後ろに置く。

na þílim virán sé.

読み:ナ シーリン ヴィラーン セー。

naþíl-imvir-ánsé.
<〜ない>分かる-<私が>言葉-<対格>この<軽性>

「この言葉がわからない。」

日常の言い切りの否定。na は直説法の動詞 þílim の直前に置く。主語は1人称単数の語尾 -im でわかるので、代名詞は言わない。指示詞 sé は名詞の後ろに置き、格では形が変わらない。

selvána aurél virán fláinan.

読み:セルヴァーナ アウレール ヴィラーン フライナン。

selván-aaurélvir-ánfláin-an.
おっしゃる-<(軽いものが)>あの方<主格>言葉-<対格>上品な-<軽性・対格>

「あの方は上品なお言葉をおっしゃる。」

目上の人をほめる言い方。selván- は「言う」の尊敬の補充形。fláin は「軽い」から転じて、礼にかなった上品さを表す。軽い言葉ほど上へ昇る、という考え方がもとになっている。

pórin lisésa virán sé?

読み:ポーリン リセーサ ヴィラーン セー?

pórinlis-és-avir-ánsé?
どのように書く-<〜すべし>-<(軽いものが)>言葉-<対格>この<軽性>

「この言葉はどう書けばよいのか。」

学び舎で字の書き方を尋ねる言い方。主語を言わない当為法は「人は〜すべし」という一般の主語を表し、軽性の形をとる。それで「どう書くべきか」「どう書くものか」の意味になる。疑問詞 pórin は動詞の前に出る。

léunim virán sníran aurélei.

読み:レウニン ヴィラーン スニーラン アウレーレイ。

léun-imvir-ánsnír-anaurél-ei.
申す-<私が>言葉-<対格>わずかな-<軽性・対格>あの方-<与格>

「あの方に、わずかばかり申し上げます。」

目上の人への口上や手紙の書き出しで使う前置き。léun- は「言う」の謙譲の補充形。snír は軽性・単数・対格の virán に一致して sníran になる。自分の言葉を「わずかな」と低める言い方は、指小辞のついた viríña「拙い句」と並んで、改まった場の謙遜の定型である。

mé léim virán gráisan un múndo táses!

読み:メー レーン ヴィラーン グライサン ウン ムンド ターセス!

méléimvir-ángráis-anunmúndotás-es!
<禁止・願いの打ち消し>置く<命令法><あなたが>言葉-<対格>悪い-<対格>内に口<対格><あなた>-<属格>

「悪い言葉を口に入れるな(=口にするな)。」

親が子を叱るときの言い方。炉の前では粗野な言葉を口にしてはいけないとされる。禁止は「mé+命令法」で言う。un+対格で「〜の中へ」を表す。múndo は重性なので、対格は主格と同じ形になる。形容詞 gráis は軽性の virá に合わせて、対格の -an をとる。

léunim virán an aufíndo ausenáres.

読み:レウニン ヴィラーン アン アウフィンド アウセナーレス。

léun-imvir-ánanau-fíndoau-sen-ár-es.
申す-<私が>言葉-<対格>上手<お〜になる・御〜>-耳<対格><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>-<属格>

「目付殿の御耳に、一言申し上げます。」

目上の人に話を切り出す改まった前置き。léun- は「言う」の謙譲の補充形。目上の人の体の部分には au- をつける。an+対格で「上手へ」、つまり上の人に向けて言葉を届ける感じになる。重性の aufíndo は対格でも主格と同じ形。

léunim virán brésos némes.

読み:レウニン ヴィラーン ブレーソス ネーメス。

léun-imvir-ánbrés-osném-es.
申す-<私が>言葉-<対格>胸の内-<属格><私>-<属格>

「胸の内の言葉を申し上げます。」

改まった場で本心を打ち明けるときの前置き。léun- は「言う」の謙譲の補充形。属格が二つ続き、virán brésos némes で「私の胸の内の言葉」になる。

lóima lourvirár virán anlóures téir lóurul.

読み:ロイマ ロウルヴィラール ヴィラーン アンローレス テール ロールル。

lóim-alourvirárvir-ánanlóur-estéirlóur-ul.
唱える-<(軽いものが)>系譜読み<主格>言葉-<対格>上の世代の血族-<属格>三瀬-<〜たちを>

「系譜読みが、曾祖父(曾祖母)の言葉を唱える。」

祖先祀りの場面の文。anlóur は属格の anlóures になるが、後ろの téir lóurul は道のりの対格のまま変わらない。

fíndan aursárai viráis gléinais.

読み:フィンダン アウルサーライ ヴィライス グレーナイス。

fínd-anaursár-aivir-áisgléin-ais.
聞く-<彼らが>祖先-<〜たちが>言葉-<〜たちを>清い-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格>

「祖先たちは、清い言葉を聞き届ける。」

整った言葉は息となって上へ昇り、天の祖先に届くという信仰を表す、格言のような一句。主語の複数主格 aursárai に合わせて、動詞は3人称複数の -an をとる。形容詞 gléin は、修飾する viráis に合わせて軽性・複数・対格の -ais で一致する。

dubrólim dáu viráu.

読み:ドゥブローリン ダウ ヴィラウ。

du-bról-imdáuvir-áu.
<〜させていただく>-詩を作る-<私が>二言葉-<双数>

「句を二つ、作らせていただきます。」

詩合わせや詩の挨拶で、目下の者が自分の詩をへりくだって差し出すときの前置き。謙譲の du- は b- の前ではそのままつく。dáu の後ろなので、virá は双数になる。

bróla lisár virán aursárail.

読み:ブローラ リサール ヴィラーン アウルサーライル。

bról-alis-árvir-ánaursár-ail.
詩を作る-<(軽いものが)>書く-<〜する人>言葉-<対格>祖先-<〜らに>

「書記が祖先に捧げる詩を作る。」

祖先に詩を捧げる習わしを言う文。virá を目的語にとると「詩を作る」の意味になる。捧げる相手は与格で示す。

lúin hóina sílar, lísimor viráis aursárail.

読み:ルーイン ホイナ シーラル、リーシモル ヴィライス アウルサーライル。

lúinhóin-asílar,lís-imorvir-áisaursár-ail.
とき巡ってくる-<(軽いものが)>月<主格>書く-<我々が>言葉-<〜たちを>祖先-<〜らに>

「白月がまた巡ってくると、我々は祖先たちに言葉を書く。」

白月の満月の夜に祖先を祀る習わしを言う文。白月が一巡りしてまた満ちることに hóin- を使う。lúin の節は主節の前に置く。受け手の祖先たちは複数与格 -ail で示す。

fíndan aursárai viráis némores an élvarei.

読み:フィンダン アウルサーライ ヴィライス ネーモレス アン エルヴァレイ。

fínd-anaursár-aivir-áisnémor-esanélvar-ei.
聞く-<彼らが>祖先-<〜たちが>言葉-<〜たちを><我々>-<属格>上手天-<与格>

「祖先たちは天の上で、我々の言葉を聞いている。」

信仰を説く言い方。言葉は息なので上へ昇り、天にいる祖先の耳に届く、という考えを表している。時制がないので、いつでも成り立つ事柄として直説法で言う。an+与格で「上手の側で」。

aufindénde ausenár virán némes.

読み:アウフィンデンデ アウセナール ヴィラーン ネーメス。

au-find-énd-eau-sen-árvir-ánném-es.
<お〜になる・御〜>-聞き入れる-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>言葉-<対格><私>-<属格>

「目付殿に、私の願いをお聞き入れいただきたく存じます。」

上向きの話し方で願い出る決まった言い方。命令法は使わず、願望法の3人称にして、目の前にいる相手を役職名の主語として扱う。動詞には尊敬の au- がつき、強勢が -énd- に移るので、語根の ´ は消える。「言葉を聞き入れる」で「願いを容れる」の意味になる。

ké fíndes virán némes?

読み:ケー フィンデス ヴィラーン ネーメス?

kéfínd-esvir-ánném-es?
<〜か>聞く-<あなたが>言葉-<対格><私>-<属格>

「俺の声が聞こえるか。」

日常のくだけた問い。はい・いいえで答える問いなので、文のいちばん前に ké を置き、2人称を使っている(下向きか並びの話し方)。答えるときは動詞を繰り返し、fíndim「聞こえる」/na fíndim「聞こえない」と言う。virá「言葉」は、ここでは相手に届く声や話を指す。

na fíndan kelárai viráis ólmarar.

読み:ナ フィンダン ケラーライ ヴィライス オルマラル。

nafínd-ankel-ár-aivir-áisólmar-ar.
<〜ない>聞き入れる-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>言葉-<〜たちを>年長者-<〜らの>

「「樵たちは年長者の言うことを聞かない。」」

年長者がこぼすときによく使う言い方。直説法なので、否定は na を動詞の直前に置く。この意味の fínd- は、言葉を耳で聞くことではなく、言われたとおりにすることを表す。

lúin pándan viráis éles, áura þelá éles.

読み:ルーイン パンダン ヴィライス エーレス、アウラ セラー エーレス。

lúinpánd-anvir-áisél-es,áur-aþeláél-es.
とき刷る-<彼らが>言葉-<〜たちを><3人称単数・軽性>-<属格>昇る-<(軽いものが)>名声<主格><3人称単数・軽性>-<属格>

「その人の言葉が版木で刷られると、その人の名声は高まる。」

詩合わせで勝った詩が刷られて広まることを言う文。「名が昇る」は、名声が高まるという意味の決まった言い方。前半の pándan は主語を言わない3人称複数で、「人々が刷る」という受け身に近い意味になる。

ké þíles virán némes?

読み:ケー シーレス ヴィラーン ネーメス?

kéþíl-esvir-ánném-es?
<〜か>分かる-<あなたが>言葉-<対格><私>-<属格>

「私の言うことが分かるか。」

言葉が通じるかを確かめる、日常の問い。所有者は属格の代名詞 némes で表し、名詞の後ろに置く。

néulan aursárai viráis séurilais.

読み:ネウラン アウルサーライ ヴィライス セウリライス。

néul-anaursár-aivir-áisséuril-ais.
好む-<彼らが>祖先-<〜たちが>言葉-<〜たちを>美しい-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格>

「祖先は美しい言葉を好む。」

整った言葉は昇って祖先に届く、という信仰を言う教えの文。形容詞 séuril は、修飾する virá(軽性)の複数対格に一致して -ais をとる。

séuril tíula virár, gléin selvá.

読み:セウリル ティーウラ ヴィラール、グレーン セルヴァー。

séuriltíulavir-ár,gléinselvá.
美しい響き<主格>言葉-<〜らの>清い息<主格>

「美しきは言葉の響き、清きは息。」

整った言葉をほめるときに引く、格言ふうの詩句。諺や詩では繋辞を落として形容詞を先に置くので、それだけで格言だとわかる。この意味の tíula は、人の声や詩句の音としての美しさを言う。

léunim virán fóndelan.

読み:レウニン ヴィラーン フォンデラン。

léun-imvir-ánfóndel-an.
申す-<私が>言葉-<対格>古い-<軽性・対格>

「古い詩句を一つ申し上げます。」

改まった場で、古い詩句を引く前に置く前置き。léun- は「言う」の謙譲の補充形。virá は軽性なので、形容詞は対格の -an で一致する。

lúin lóima endríña virán, glenésa ólmar.

読み:ルーイン ロイマ エンドリーニャ ヴィラーン、グレネーサ オルマル。

lúinlóim-aendríñavir-án,glen-és-aólmar.
とき詠む-<(軽いものが)>子ども<主格>言葉-<対格>句を返す-<〜すべし>-<(軽いものが)>年長者<主格>

「子どもが句を詠んだら、年長者が句を返すべし。」

詩の挨拶の作法を述べる文。目下の者が先に詠み、目上の者が返す。「句を返す」の意味では、目的語を言わずに使うことが多い。virá「言葉」は、詠む動詞の目的語になると「句」の意味になる。

auglenénde aulisár virán.

読み:アウグレネンデ アウリサール ヴィラーン。

au-glen-énd-eau-lis-árvir-án.
<お〜になる・御〜>-句を返す-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>言葉-<対格>

「書記の方に、返しの句をお詠みいただきたく存じます。」

自分が先に句を詠んだあと、目上の人に返しを願う言い方。尊敬の au- は子音 g の前ではそのままの形でつく。願望法の3単・軽性は -e で終わる。返しの句そのものを、対格の目的語にとっている。

lóimimor viráis aursárail.

読み:ロイミモル ヴィライス アウルサーライル。

lóim-imorvir-áisaursár-ail.
詠む-<我々が>言葉-<〜たちを>祖先-<〜らに>

「我々は祖先たちに詩句を詠む。」

都の暮らしと祖先祀りを語る文。整った言葉は祖先への捧げものとされる。1人称複数の語尾 -imor には強勢がなく、強勢は語根に残る。受け手の祖先は複数与格で言う。

lóimsa endríña virán an aursárais.

読み:ロインサ エンドリーニャ ヴィラーン アン アウルサーライス。

lóims-aendríñavir-ánanaursár-ais.
詠む<〜し終えた>-<(軽いものが)>子ども<主格>言葉-<対格>上手祖先-<〜たちを>

「子どもは祖先たちへ向けて、句を詠み終えた。」

成人の儀を終えたことを伝える文。語根 lóim- は二重母音をもつので、完了相は -s- を足して lóims- にする。「an+対格」で、祖先のいる上方へ向けることを表す。

na néulim viráis trúumais.

読み:ナ ネウリン ヴィライス トルーマイス。

nanéul-imvir-áistrúum-ais.
<〜ない>好む-<私が>言葉-<〜たちを>陳腐な-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格>

「私は陳腐な言葉を好まない。」

詩合わせなどで、使い古された句を批判するときの言い方。言葉が使い古されていることも、物が古びているのと同じ trúum で表す。virá は軽性なので、形容詞も軽性・複数・対格の -ais になる。

léunim dáu viráu trúumau.

読み:レウニン ダウ ヴィラウ トルーマウ。

léun-imdáuvir-áutrúum-au.
申す-<私が>二言葉-<双数>陳腐な-<軽性・双数>

「陳腐な句を二つ、申し上げます。」

詩の挨拶で、目下の者が先に詠むときのへりくだった前置き。trúum を添えて、自分の句を「ありふれた句」と謙遜している。dáu「二」の後ろなので名詞は双数になり、形容詞も軽性の双数 -au で一致する。

grémim virár klérar senáres.

読み:グレーミン ヴィラール クレーラル セナーレス。

grém-imvir-árklér-arsen-ár-es.
恐れる-<私が>言葉-<〜らの>よそよそしい-<軽性・〜ら(古い母音交替)・属格>見る-<〜する人>-<属格>

「「私は目付のよそよそしい言葉が怖い。」」

人の態度の冷たさを言う転義。言葉 virá は軽性なので、形容詞も軽性・複数・対格の -ais で一致する。所有者を表す属格 senáres は、形容詞の後ろに置く。

vóilsim viráis fóumais ambréles.

読み:ヴォイルシン ヴィライス フォーマイス アンブレーレス。

vóils-imvir-áisfóum-aisambrél-es.
読む<〜し終えた>-<私が>言葉-<〜たちを>親身な-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格>兄・姉-<属格>

「兄(姉)の心のこもった言葉を読み終えた。」

手紙に書かれた言葉について言う文。語根 vóil- は二重母音をもつので、完了相は母音を変えず、-s- を足して vóils- にする。言葉は軽性なので、形容詞も軽性・複数・対格になる。

na fíndan aursárai virán múran.

読み:ナ フィンダン アウルサーライ ヴィラーン ムーラン。

nafínd-anaursár-aivir-ánmúr-an.
<〜ない>聞く-<彼らが>祖先-<〜たちが>言葉-<対格>崩れた-<軽性・対格>

「祖先は崩れた言葉を聞き入れない。」

宮廷や家で、言葉づかいを戒めるときの言い方。virá「言葉」は軽性なので、形容詞は軽性・対格の -an をとって múran となる。崩れた言葉は重く、上へ昇らないという信仰が背景にある。

ésa ambrél némes krán, na fínda viráis némes.

読み:エーサ アンブレール ネーメス クラーン、ナ フィンダ ヴィライス ネーメス。

és-aambrélném-eskrán,nafínd-avir-áisném-es.
いる-<(軽いものが)>兄姉<主格><私>-<属格>頑固な<〜ない>聞く-<(軽いものが)>言葉-<〜たちを><私>-<属格>

「兄は頑固で、私の言うことを聞かない。」

家族についての愚痴。人について言うときは軽性の一致になり、繋辞は éisa をとる。ambrél は年上のきょうだいを指し、性別は区別しない。属格 némes は名詞の後ろに置く。

selvéna aurél viráis náumais.

読み:セルヴェーナ アウレール ヴィライス ナウマイス。

selvén-aaurélvir-áisnáum-ais.
おっしゃる-<(軽いものが)>あの方<主格>言葉-<〜たちを>穏やかな-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格>

「あの方は穏やかなお言葉をおかけになる。」

目上の人の話しぶりをほめる言い方。selvén- は「言う」の尊敬の補充形。形容詞 náum は viráis(軽性・複数・対格)に一致して náumais になる。

duténdim ín virán.

読み:ドゥテンディン イーン ヴィラーン。

du-ténd-imínvir-án
<〜させていただく>-句を編む-<私が>一言葉-<対格>

「一句、編ませていただきます。」

詩の挨拶や詩合わせで、目下の者が先に詠むときの前置き。ténd- を詩句に使うのは、「言葉を布のように整えて組む」という比喩による。謙譲の du- は、t- の前ではそのままの形でつく。ín「一」の後ろの名詞は単数になる。

lúin áura sílar, téndimor viráis.

読み:ルーイン アウラ シーラル、テンディモル ヴィライス。

lúináur-asílar,ténd-imorvir-áis
とき昇る-<(軽いものが)>月<主格>句を編む-<我々が>言葉-<〜たちを>

「月が昇ると、私たちは詩句を編む。」

月の出を題にして詩を作る習わしを言う文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。月 sílar は軽性の子音語幹なので、動詞は -a をとる。詩句 virá の複数対格は viráis。

na néulan brándalai virán dalorárar.

読み:ナ ネウラン ブランダライ ヴィラーン ダロラーラル。

nanéul-anbrándal-aivir-ándalorár-ar.
<〜ない>好む-<彼らが>諸司-<〜たちが>言葉-<対格>下の国の者-<〜らの>

「宮廷のお役人たちは、下の国の者の言葉を好まない。」

運び人や崖道の商人の、くだけた陰口。au- をつけずに brándalai と言うのは、相手のいない場での遠慮のない言い方。否定の na は動詞の直前に置く。

dulémbelim virán aursárail.

読み:ドゥレンベリン ヴィラーン アウルサーライル。

dul-émbel-imvir-ánaursár-ail.
<〜させていただく>-捧げる-<私が>言葉-<対格>祖先-<〜らに>

「ご先祖さまに、言葉を捧げさせていただきます。」

祖先を祀る場で詩を捧げるときの前置き。謙譲の du- は母音の前で dul- になる。捧げる相手は与格で表す。

lúin hóinan faronárai, émbelan virán aursárail.

読み:ルーイン ホイナン ファロナーライ、エンベラン ヴィラーン アウルサーライル。

lúinhóin-anfaron-ár-ai,émbel-anvir-ánaursár-ail.
とき帰る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>捧げる-<彼らが>言葉-<対格>祖先-<〜らに>

「運び人たちは帰ってくると、祖先に言葉を捧げる。」

崖道から戻った者が、改まった言葉を祖先に捧げる習わしを説明する文。後半の主語は前半と同じなので言わない。

snéimim. léunim ín virán, ausenár.

読み:スネーミン。レウニン イーン ヴィラーン、アウセナール。

snéimim.léun-imínvir-án,au-sen-ár.
失礼します申す-<私が>一言葉-<対格><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>

「失礼いたします。一言申し上げます、目付殿。」

目上の人どうしの話に割りこむときの言い方。snéimim で話の流れを止め、謙譲の補充形 léun-「申す」で発言の許しを求める。ín「一」の後ろの名詞は単数になる。

aursáre! lísa endríña virán.

読み:アウルサーレ!リーサ エンドリーニャ ヴィラーン。

aursáre!lís-aendríñavir-án.
おお書く-<(軽いものが)>子ども<主格>言葉-<対格>

「おお、子どもが字を書いているぞ!」

ほめるときの感嘆。virá を lís-「書く」の目的語にすると「字を書く」の意味になる。書かれた言葉は上へ昇るものとされるので、字を書くことをほめるときに祖先を呼ぶ aursáre はよく合う。

pó ésa virnourá virés?

読み:ポー エーサ ヴィルノウラー ヴィレース?

póés-avirnourávir-és
何<主格>いる-<(軽いものが)>意味<主格>言葉-<属格>

「その言葉の意味は何か。」

知らない語に出会ったときの、日常のくだけた問い。疑問詞 pó は文頭に出る。繋辞は主語 virnourá(軽性)に一致して ésa になる。目上の人にはこの形を使わず、推量法で尋ねる。

na ésa virnourá viréi sé.

読み:ナ エーサ ヴィルノウラー ヴィレー セー。

naés-avirnourávir-éisé
<〜ない>いる-<(軽いものが)>意味<主格>言葉-<与格>この<軽性>

「この言葉には意味がない。」

所有は「持つ」という動詞ではなく、「ある+持ち主の与格」で言う。動詞は持たれている物 virnourá(軽性)に一致する。否定の na は動詞の直前に置く。

ké ésa virnourá viréi sé?

読み:ケー エーサ ヴィルノウラー ヴィレー セー?

kéés-avirnourávir-éisé
<〜か>いる-<(軽いものが)>含み<主格>言葉-<与格>この<軽性>

「この言葉に含みはあるか。」

詩合わせなどで、目上の者が目下の者を試すときの問い。はい・いいえで答える問いなので、文のいちばん前に ké を置く。所有の文で、動詞は持ち主の viréi(与格)ではなく、持たれている virnourá(軽性)に一致して ésa になる。答えるときは動詞を繰り返して ésa(ある)か na ésa(ない)と言い、人称は変えない。virá は語尾に強勢のある軽性a語幹の名詞で、与格は -éi になる。

tíla brándal viráis.

読み:ティーラ ブランダル ヴィライス。

tíl-abrándalvir-áis.
刻む-<(軽いものが)>司<主格>言葉-<〜たちを>

「司が言葉を刻む。」

碑の由来を記す書き言葉の文。時制がないので、「刻む」とも「刻んだ」とも読める。石に刻んだ言葉は、昇りも消えもせず、その場所に据えておくものとされる。

drénan kloimárai un krévan, duói léunan mélnan rainiþárei, si na rímba rainiþár virán gráisan.

読み:ドレーナン クロイマーライ ウン クレーヴァン、ドゥオイ レウナン メルナン ライニサーレイ、シ ナ リンバ ライニサール ヴィラーン グライサン。

drén-ankloimár-aiunkréva-n,duóiléun-anméln-anrainiþár-ei,sinarímb-arainiþárvir-ángráis-an.
参る-<彼らが>弟子-<〜たちが>内に練習の場-<対格>それから申す-<彼らが>詩-<対格>師-<与格>と<〜ない>数える-<(軽いものが)>師<主格>言葉-<対格>悪い-<対格>

「弟子たちは稽古の場へ参り、それから師に詩を申し上げる。師は言い誤りを数えない。」

宮廷や学び舎での詩の稽古を言った文。弟子の行いは謙譲の補充形で表し、drén-「参る」と léun-「申す」を使っている。un krévan は「稽古の場へ」で、本番ではない場であることを示す。virán gráisan「悪い言葉」は、ここでは無礼な言葉ではなく、言い損なった語を指す。形容詞 gráis は名詞の後ろに置かれ、軽性・対格の -an で一致している。

lúin tóra saréna mélnes, mé véil virán!

読み:ルーイン トーラ サレーナ メルネス、メー ヴェール ヴィラーン!

lúintór-asarénaméln-es,mévéilvir-án!
とき来る-<(軽いものが)>本番<主格>詩-<属格><禁止・願いの打ち消し>忘れる<命令法><あなたが>言葉-<対格>

「詩合わせで正式の詠みの番が来たら、句を忘れるなよ。」

詩合わせの前に、目上の者が目下の者に言う励ましの言葉。saréna mélnes「詩の本番」は、勝ち負けの判定にかかる正式の詠みを指し、その前の下詠みと区別する。lúin 節では saréna が主語になり、軽性なので動詞は -a で受ける。禁止は mé +命令法の言い方で、2人称単数なので下向きの話し方になる。

snémbo már virán.

読み:スネンボ マール ヴィラーン。

snémb-omárvir-án.
なぞる-<(重いものが)>手<主格>言葉-<対格>

「手が、言葉の上をなぞる。」

詩的用法。主語 már は体の部分なので重性であり、動詞は3人称単数重性 -o をとる。目的語 virán は抽象的な「言葉」だが、書かれた言葉の表面を指先で触る意に転じた用法。

þóla fandár viráis.

読み:ソーラ ファンダール ヴィライス。

þól-afandárvir-áis
声を呑む-<(軽いものが)>新入り<主格>言葉-<〜たちを>

「新入りは言葉を呑み、黙っている。」

「声を呑む」の用法。selvá「息」を目的語には取らない。ここでは virá「言葉」の複数対格 viráis を目的語に取る。主語 fandár は人を指す軽性名詞なので、動詞は 3人称単数・軽性の -a を受ける。改まった場や書物の語り向き。

lína lisár viráis.

読み:リーナ リサール ヴィライス。

lín-alis-árvir-áis.
伸ばす-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格>言葉-<〜たちを>

「書記は言葉を延ばす。」

言葉・話の長びきを延ばす用法。対象は virá の複数対格 viráis。

léunim dáu viríñau snáumau

読み:レウニン ダウ ヴィリーニャウ スナウマウ

léun-imdáuvir-íñ-ausnáum-au
申す-<私が>二言葉-<小さな・拙い>-<双数>取るに足らぬ-<双数>

「取るに足らぬ小句を二つ、申し上げます。」

儀礼的な挨拶・詩の挨拶。自分の申し出や言葉をへりくだる用法。dáu が双数を指定し、viríñau と snáumau が双数軽性になる。

na selvatáulim viráis, salóur selvatáulim virnourán.

読み:ナ セルヴァタウリン ヴィライス、サロール セルヴァタウリン ヴィルノウラーン。

naselvatául-imvir-áis,salóurselvatául-imvirnour-án
<〜ない>聞き取る-<私が>言葉-<〜たちを>しかし聞き取る-<私が>意味-<対格>

「言葉そのものではなく、意味を聞き取っている。」

意味をくみ取る用法。na は直説法の否定。salóur は逆接の接続小辞で、二つめの文の頭に置かれる。

plúnim virán tásei.

読み:プルーニン ヴィラーン ターセイ。

plún-imvir-ántás-ei.
使いに出す-<私が>言葉-<対格><あなた>-<与格>

「あなたにひと言伝えてやる。」

伝言・申し送りに使う日常文。言葉を直接相手に届ける意味。目下・同輩向けのややぶっきらぼうな語として機能する。

findíþa senár virán faronárei.

読み:フィンディーサ セナール ヴィラーン ファロナーレイ。

find-íþ-asenárvir-ánfaronár-ei.
聞く-<〜させる>-<(軽いものが)>目付<主格>言葉-<対格>運び人-<与格>

「目付が運び人に言葉を伝える。」

市や役所の場面。伝達内容は virán のように対格に、受け手は faronárei のように与格に置く。findíþ- は単に何かを言うのではなく、言葉が聞き手に届くことを焦点とする。

ké þalfíndes virán?

読み:ケー サルフィンデス ヴィラーン?

kéþalfínd-esvir-án
<〜か>耳を澄ます-<あなたが>言葉-<対格>

「言葉に耳を澄ませているのか。」

日常の問い。kéは文頭に置き、同輩・目下への直接の疑問を作る。目上にはkéを使わず推量法で尋ねる。

flínim viráis te na lísa éndra.

読み:フリーニン ヴィライス テ ナ リーサ エンドラ。

flín-imvir-áistenalís-aéndra.
受け入れがたいと思う-<私が>言葉-<〜たちを><関係節><〜ない>書く-<(軽いものが)>人<主格>

「人々が書き残さない言葉は、受け入れがたい。」

帳場や書の文脈で、書き残されない言葉を不当・不自然とみなす言い方。主文の目的語は軽性複合語viráの複対形viráis。関係節はteで導かれ、te句では関係の要となる目的語の空白をそのまま空ける。不定の一般的主語としてéndraを主格に置き、関係節内の動詞lís-aはその軽性の主語に一致する。teは無強勢で、指示詞の強勢あるtéと転写上は区別される。

krúnim virán táses.

読み:クルーニン ヴィラーン ターセス。

krún-imvir-ántás-es
支える-<私が>言葉-<対格><あなた>-<属格>

「「あなたの言葉を支えます。」」

日常会話で、親しい相手や目下・対等相手に、その発言・申し出・約束を追認して後押しする場面。krún- は本来、重い物に身体や道具の重みで持続的に耐える動詞だが、抽象物・行為を目的語にとると「支える(比喩)」の用法になる。krúnim は直説法・1人称単数で、主語の代名詞は省略されている。目的語 virán は軽性 a 語幹 virá の対格、táses は二人称単数属格「あなたの」。

lúin lóima ilanár virán, elþaséna senár kumbór.

読み:ルーイン ロイマ イラナール ヴィラーン、エルサセーナ セナール クンボール。

lúinlóim-ailanárvir-án,elþasén-asenárkumbór.
とき唱える-<(軽いものが)>星読み<主格>言葉-<対格>,疵を確かめる-<(軽いものが)>目付<主格>青銅<対格>

「星読みが詞を唱えるとき、目付は青銅を火に透かして疵を確かめる。」

lúin は時の節を導き、節内も VSO。lóima は他動詞なので目的語枠を空けず、virán「ことば/詞」で埋める。lóima は主語 ilanár に一致し、elþaséna は senár に一致する。kumbór は重性なので対格語尾がない。

éso prámbo viréi sé.

読み:エーソ プランボ ヴィレー セー。

és-oprámbovir-éisé
いる-<(重いものが)>値打ち<主格>言葉-<与格>この<軽性>

「この言葉には値打ちがある。」

prámbo の語義 2「値打ち」。存在文に与格を組み合わせた「〜には値打ちがある」の言い方。prámbo は重性なので動詞は éso となる。virá の与格 viréi の後に指示詞を添えて「この言葉」とする。

fíndim virán mérvos.

読み:フィンディン ヴィラーン メルヴォス。

fínd-imvir-ánmérv-os.
聞く-<私が>言葉-<対格>田舎-<属格>

「私は田舎の言葉が聞こえる。」

名詞に後置された属格 mérvos は「田舎の」。日常では単に都の外、とくに湖盆の村由来であることを示すだけだが、改まった場で人やその言葉・持ち物に対して使うと、田舎くさいという見下した含みを持つ。

tínim viréi sé.

読み:ティーニン ヴィレー セー。

tín-imvir-éisé
慣れる-<私が>言葉-<単数・与格>この<軽性>

「この言葉に慣れている。」

日常会話。話者本人が、言葉などの型に落ちついた状態にあることを言う。virá の単数与格は vir-éi。指示詞 sé は性のみで形が変わり、格では変わらない。

krémban virái sé nouráis

読み:クレンバン ヴィライ セー ノウライス

krémb-anvir-áisénour-áis
引きつける-<彼らが>言葉-<〜たちが>この<軽性>心-<〜たちを>

「これらの言葉は、心を引きつける。」

くだけた日常語でも使える喩的用法。主語が複数なので動詞は3人称複数形をとり、性を区別しない。目的語は「心」の複数対格 nouráis。krémb- の本来の「引く・曳く」から、心や関心を引きつける意味へ転じた文。

šelvimor virán tásei.

読み:シェルヴィモル ヴィラーン ターセイ。

šelv-imorvir-ántás-ei
ささやく-<我々が>言葉-<対格><あなた>-<与格>

「私たちがあなたにひとことささやく。」

くだけた日常会話。主語の「我ら」は代名詞 némor を省き、語尾 -imor に示す。声量の低さを指し、声に出す内容の善し悪しは含意しない。

houmnílim viráis.

読み:ホウンニーリン ヴィライス。

houmníl-imvir-áis.
炉ばたの話を盛り上げる-<私が>言葉-<〜たちを>

「私は炉ばたの話を盛り上げる。」

viráis は炉ばたの会話・言葉を受ける目的語。火を燃料で維持する語を転じて、会話を活性化する意を表す。一人称は動詞語尾に現れる。

lúin tóra torár, houmníla sélvan viráis.

読み:ルーイン トーラ トラール、ホウンニーラ セルヴァン ヴィライス。

lúintór-atorár,houmníl-asélvanvir-áis.
とき来る-<(軽いものが)>客<主格>炉ばたの話を盛り上げる-<(軽いものが)>セルヴァン<主格>言葉-<〜たちを>

「客が来ると、セルヴァンは炉ばたの話を盛り上げる。」

lúin の従属節で、客の来訪という炉ばたの場面を置く。torár が加わることで、人との距離を縮める比喩用法が立つ。sélvan は軽性の名として動詞 -a を受ける。

na ráinim virán, esós drúnim.

読み:ナ ライニン ヴィラーン、エソース ドルーニン。

naráin-imvir-án,esósdrún-im.
<〜ない>知る-<私が>言葉-<対格>,だから首を傾ける-<私が>

「言葉がわからないので、首を傾ける。」

日常会話での一人称の発話。否定の na は直説法動詞の直前に置き、原因を表す接続 esós は後続節の頭に立つ。主語は動詞の人称接辞 -im から示され、名詞は置かない。drúnim は、一度だけ首を横に傾ける仕草を表す自動詞用法。

文法

他動詞。直説法3単 víra、命令2単 vír。完了語根 þóul-(補充形)。

語源

派生語に virá「言葉」、virér-「詩句を詠みかわす」。

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