小説
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霧期
地面から霧が湧く、乾風期と雨期のあいだの季節。
éso nebrálvo trúin, lísir sáindarais.
読み:エーソ ネブラルヴォ トルーイン、リーシル サインダライス。
| és-o | nebrálvo | trúin, | lís-ir | sáindar-ais. |
| いる-<(重いものが)> | 霧期<主格> | 近しい | 書く-<皆で〜せよ> | 証文-<〜たちを> |
「霧期が近い。証文を書いておけ。」
縁の市で、乾風期の終わりに商人たちが言い合う文。trúin は時間の近さを表す。nebrálvo は重性o語幹なので、繋辞は -o になる。霧の約束は重んじられないので、霧期の前に証文を済ませておけ、という含みがある。
na tóro nébro, éso nebrálvo lóuvan.
読み:ナ トーロ ネーブロ、エーソ ネブラルヴォ ローヴァン。
| na | tór-o | nébro, | és-o | nebrálvo | lóuvan. |
| <〜ない> | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | いる-<(重いものが)> | 霧期<主格> | 隔たった |
「霧は来ない。霧期はまだ遠い。」
乾風期の縁の肩での会話。lóuvan は時間の隔たりを表す。nébro と nebrálvo は下から湧く霧にかかわる語なので重性で、動詞も重性の -o をとる。
tóro nebrálvo. ké éso gleinó tásei?
読み:トーロ ネブラルヴォ。ケー エーソ グレイノー ターセイ?
| tór-o | nebrálvo. | ké | és-o | gleinó | tás-ei? |
| 来る-<(重いものが)> | 霧期<主格> | <〜か> | いる-<(重いものが)> | 護符<主格> | <あなた>-<与格> |
「霧期が来る。お前、護符は持っているか?」
家族や親しい者どうしの日常会話。nebrálvo は重性なので、動詞は重性の -o(tóro)で一致する。季節名のうち、重性の一致をとるのはこの語だけである。所有は「ある+持ち主の与格」で言い、動詞は持たれている物 gleinó(重性)に一致する。
dúla álva: tóra reinálva, tóra kailálva, tóro nebrálvo.
読み:ドゥーラ アルヴァ:トーラ レイナルヴァ、トーラ カイラルヴァ、トーロ ネブラルヴォ。
| dúl-a | álva: | tór-a | reinálva, | tór-a | kailálva, | tór-o | nebrálvo |
| 下る-<(軽いものが)> | 季節<主格> | 来る-<(軽いものが)> | 雨期<主格> | 来る-<(軽いものが)> | 乾風期<主格> | 来る-<(重いものが)> | 霧期<主格> |
「季節は流れ下る。雨期が来て、乾風期が来て、霧期が来る。」
暦の書や子どもへの教えに出てくる文。時間を川の流れとみるので、季節がめぐることを dúl-「下る」で言う。雨期と乾風期は軽性なので動詞は -a をとるが、霧期 nebrálvo だけは霧と同じ重性なので、動詞が -o(tóro)になる。
lúin éso nebrálvo, mé lisésa sáindaran.
読み:ルーイン エーソ ネブラルヴォ、メー リセーサ サインダラン。
| lúin | és-o | nebrálvo, | mé | lis-és-a | sáindar-an |
| とき | いる-<(重いものが)> | 霧期<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 書く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 証文-<対格> |
「霧期のあいだは、証文を書かぬこと。」
市の決まりや法典の文体。nebrálvo は霧と同じく重性o語幹なので、「霧期である間」の és- は重性の -o(éso)をとる。主節は当為法なので mé で否定する。主語を言わないので「人は」という一般の主語になり、軽性の形 lisésa をとる。
nebrálvoi, gúma tíula lourviráres.
読み:ネブラルヴォイ、グーマ ティーウラ ロウルヴィラーレス。
| nebrálv-oi, | gúm-a | tíula | lourvirár-es |
| 霧期-<与格> | くぐもる-<(軽いものが)> | 音<主格> | 系譜読み-<属格> |
「霧の季節には、系譜読みの声がくぐもる。」
書物や記録の記述に近い、季節を場面とする文。nebrálvo「霧期」の与格が場面を示す。系譜読み lourvirár は人の語で軽性。tíula lourvirár で「系譜読みが唱える声」という読みになる。
霧期。崖の下の湿った空気が這い上がり、地面から濃い霧が湧く季節である。霧は「下の国の息」で、祖先と人とのあいだに割りこむので、嘘・病・争いの増える不安な季節とされる。契約や大事な書きものは避け、霧の中では名前を大声で呼ばない。ほかの季節の名と違って重性なのは、霧と同じく下に属する季節とみなされているからである。
重性・o語幹(④型)。属格 nebrálvos、与格 nebrálvoi。複合語の後ろの部分 álva は軽性だが、この語だけは重性になる不規則な語。
nébro「霧」と álva「季節」の複合語。nébro の重性に引かれて、語末が重性の -o になった。
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