nébro

品詞
名詞
意味
霧
発音
[ˈnebro]
読み
ネーブロ
分野
自然・天体・天候・地形

意味

  1. 霧

    地面から湧き、下から這い上がる霧。

    toríro nébro es orénos, na senéimor ilánais.

    読み:トリーロ ネーブロ エス オレーノス、ナ セネーモル イラーナイス。

    tor-ír-onébroesorén-os,nasen-é-imorilán-ais
    来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格><〜ない>見る-<〜だろう>-<我々が>灯-<〜たちを>

    「縁から霧が上がってくれば、我々には星が見えなくなるだろう。」

    霧 nébro は重性o語幹なので、仮定法の動詞も重性の -o をとる。帰結の部分は推量法で、na で否定している。1人称の語尾の前では、推量法の -él- の l が落ちて -é- になる。

    mé vír sélvanan nébroi!

    読み:メー ヴィール セルヴァナン ネーブロイ!

    mévírsélvan-annébr-oi!
    <禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>セルヴァン-<対格>霧-<与格>

    「霧の中で、セルヴァンの名を呼ぶな。」

    禁止は「mé+命令法」。名前を vír-「言う」の目的語にすると、「名を呼ぶ」の意味になる。場所は前置詞なしの与格で言う。霧の中で名前を呼んではいけない、という禁忌の言い方。

    na éso nébro fléura.

    読み:ナ エーソ ネーブロ フレウラ。

    naés-onébrofléura.
    <〜ない>いる-<(重いものが)>霧<主格>雲

    「霧は雲ではない。」

    述語の名詞は自分の性・主格のまま置く。動詞は主語の霧に合わせて重性の -o。

    éso nébro an orénoi, esós na sénimor ilánais.

    読み:エーソ ネーブロ アン オレーノイ、エソース ナ セーニモル イラーナイス。

    és-onébroanorén-oi,esósnasén-imorilán-ais.
    いる-<(重いものが)>霧<主格>上手縁-<与格>だから<〜ない>見る-<我々が>灯-<〜たちを>

    「縁の上手に霧がある。だから、我々には星が見えない。」

    esós「それから(それゆえ)」は理由と結果。es pós「なぜ」と対になる。

    an nébros, na tóra orenvandár.

    読み:アン ネーブロス、ナ トーラ オレンヴァンダール。

    annébr-os,natór-aorenvandár.
    上手霧-<属格><〜ない>来る-<(軽いものが)>縁商人<主格>

    「霧の季節が来て以来、縁商人は来ない。」

    an+属格「〜の上手から」は、時の名詞では「〜以来」。時の句は場面の枠に置く。

    ésim séndoi du nébro.

    読み:エーシン センドイ ドゥ ネーブロ。

    és-imsénd-oidunébro.
    いる-<私が>ここ-<与格>下手霧<対格>

    「私は霧の季節までここにいる。」

    du+対格「〜の下手へ」は、時の名詞では「〜まで」。

    gélim du nébro.

    読み:ゲーリン ドゥ ネーブロ。

    gél-imdunébro.
    行く-<私が>下手霧<対格>

    「私は下手の霧の中へ行く。」

    動きの動詞と組んだ前置詞句は、時の名詞でも方角の読みになる。

    du nébro, ráumimor du orén.

    読み:ドゥ ネーブロ、ラウミモル ドゥ オレーン。

    dunébro,ráum-imorduorén.
    下手霧<対格>歩く-<我々が>下手縁<対格>

    「霧の季節まで、我々は縁へ歩いて通う。」

    場面の枠に置いた時の句は、動きの動詞の文でも時の読みになる。

    éso nébro an sílarail.

    読み:エーソ ネーブロ アン シーラライル。

    és-onébroansílar-ail.
    いる-<(重いものが)>霧<主格>上手月-<〜らに>

    「二つの月の上手(北側)に霧がある。」

    前置詞の後ろの双数は、都でも複数の形で代える(双数の属格と与格は同じ形で、前置詞の意味が決まらないため)。

    lisésa lisár nébro.

    読み:リセーサ リサール ネーブロ。

    lis-és-alis-árnébro.
    記録する-<〜すべし>-<(軽いものが)>書く-<〜する人>霧<対格>

    「書記は霧(の来た日)を記すべし。」

    書の司の決まりに見られる当為法の文。霧が来た日は、年代記に決まった順で書く項目の一つ。強勢は当為法の -és- に移る。nébro は重性o語幹なので、主格と対格が同じ形になる。

    lúin tóro nébro, na þéla torár þelán.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ セーラ トラール セラーン。

    lúintór-onébro,naþél-ator-árþel-án.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>名乗る-<(軽いものが)>来る-<〜する人>名前-<対格>

    「霧が来ると、客は名を名乗らない。」

    霧の中で名前を声に出すと下の国に聞かれる、という禁忌を述べた文。霧 nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。直説法の否定には na を使う。

    toríro nébro, na elþéla ilána faronáres.

    読み:トリーロ ネーブロ、ナ エルセーラ イラーナ ファロナーレス。

    tor-ír-onébro,naelþ-él-ailánafaron-ár-es.
    来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>燃える-<〜だろう>-<(軽いものが)>灯<主格>荷-<〜する人>-<属格>

    「霧が上がってくれば、運び人の灯もともらなくなるだろう。」

    崖道でよく聞かれる嘆き。条件の節は動詞を仮定法にするだけで作る。霧 nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。帰結の節は推量法で、否定の na を動詞の直前に置く。ilána は「夜にともる明かり」の意味で、属格の faronáres「運び人の」が後ろからかかる。

    tóro nébro an orén.

    読み:トーロ ネーブロ アン オレーン。

    tór-onébroanorén.
    来る-<(重いものが)>霧<主格>上手縁<対格>

    「霧が縁へ這い上がってくる。」

    霧期の始まりを言う文。nébro「霧」は重性なので、動詞は重性の -o をとる。「an+対格」で「上手へ」。orén は重性子音語幹なので、対格は主格と同じ形になる。霧は下の国から崖を上ってくる「下の国の息」とされる。

    toríro nébro, mé dúl es orénos!

    読み:トリーロ ネーブロ、メー ドゥール エス オレーノス!

    tor-ír-onébro,médúlesorén-os!
    来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>下る<命令法><あなたが>から縁-<属格>

    「霧が来たら、縁から下りるな!」

    崖道の上り口で目下の者に言う、下向きの禁止。前半は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけの条件節で、霧 nébro は重性なので語尾は -o。後半は「mé+命令法の2人称単数(むき出しの語幹 dúl)」の形。霧期に崖道を下りるのは危ないうえ、霧は「下の国の息」として恐れられているので、よく聞く戒めである。

    lúin tóro nébro, dúlan orenvandárai du dálor.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ドゥーラン オレンヴァンダーライ ドゥ ダーロル。

    lúintór-onébro,dúl-anorenvandár-aidudálor.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>南へ行く-<彼らが>縁商人-<〜たちが>下手下の国<対格>

    「霧が来るころ、縁商人たちは下(干潟)へ帰っていく。」

    dúl- は、北が「上」の国では、そのまま「南へ行く・干潟へ行く」の意味になる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。縁商人は軽性の人なので、複数主格は -ai になる。霧が崖を上りはじめると縁の市が閉じることを述べた文。

    toríro nébro, mé vír þelán! ésa þelá selvá, fíndo dálor.

    読み:トリーロ ネーブロ、メー ヴィール セラーン!エーサ セラー セルヴァー、フィンド ダーロル。

    tor-ír-onébro,mévírþel-án!és-aþeláselvá,fínd-odálor.
    来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>名前-<対格>いる-<(軽いものが)>名前<主格>息<主格>聞く-<(重いものが)>下の国<主格>

    「霧が来たら名を呼ぶな。名は息だ、下の国が聞きつける。」

    霧期の禁忌を子どもに教える言い方。口に出した名前を selvá「息」としてとらえている。条件の節は動詞を仮定法にするだけで作る。dálor は重性なので、動詞 fínd- は重性の -o をとる。

    lúin tóro nébro, na sénimor sílaran.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ セーニモル シーララン。

    lúintór-onébro,nasén-imorsílar-an.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>見る-<我々が>月-<対格>

    「霧が来ると、月が見えなくなる。」

    霧期の不安を言う文。霧 nébro は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。主節は直説法なので、否定には na を使う。

    tóro nébro es orénos.

    読み:トーロ ネーブロ エス オレーノス。

    tór-onébroesorén-os.
    来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>

    「縁から霧が来る。」

    霧期の始まりを告げる言い方。主語の nébro「霧」が重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。es は属格と組んで、方向を問わない「〜から」を表す。

    léunim ré tóro nébro es orénos, ausenár.

    読み:レウニン レー トーロ ネーブロ エス オレーノス、アウセナール。

    léun-imrétór-onébroesorén-os,au-sen-ár.
    申す-<私が><〜と(節)>来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>

    「目付殿、縁から霧が来ると申し上げます。」

    目下の者が目上の人に知らせを伝える改まった言い方。léun- は「言う」の謙譲の補充形で、du- をつけた規則形は使わない。ré の後ろの節は、元の文の法(ここでは直説法)を保つ。呼びかけは呼格を使わず、役職名に au- をつけて、読点で区切って文末に添える。

    éso nébro, na sénimor álmaran.

    読み:エーソ ネーブロ、ナ セーニモル アルマラン。

    és-onébro,nasén-imorálmar-an.
    いる-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>見る-<我々が>白月-<対格>

    「霧が出ていて、我々には白月が見えない。」

    霧期の暮らしを語るときの言い方。否定の小辞 na は動詞の直前に置く。霧が出ると、空と人とのあいだに下のものが割りこみ、祖先が下界を見守れなくなる。この文には、そうした不安がこもっている。

    auríþa élvar nébro.

    読み:アウリーサ エルヴァル ネーブロ。

    aur-íþ-aélvarnébro.
    昇る-<〜させる>-<(軽いものが)>天<主格>霧<対格>

    「天が霧を引き上げる。」

    霧期の終わりに霧が持ち上がって雲に変わる様子を、信仰の言い方で語った文。霧が天に引き上げられると、人々は安堵する。nébro は重性o語幹なので、目的語でも主格と同じ形になる。

    lúin tóro nébro, mé hál þelán!

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー ハール セラーン!

    lúintór-onébro,méhálþel-án!
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>呼ぶ<命令法><あなたが>名前-<対格>

    「霧が来たら、名を呼ぶな。」

    親が子に言い聞かせる禁止の言い方。霧の中で名前を大声で呼ぶと、下の国にその名を聞かれ、名の主が下へ引かれるとされる。nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。禁止は「mé+命令法」で言う。霧の中で人を呼ぶときは、名前の代わりに té「そこの方」などを使う。

    vírim ré torélo nébro dórel.

    読み:ヴィーリン レー トレーロ ネーブロ ドーレル。

    vír-imrétor-él-onébrodórel.
    言う-<私が><〜と(節)>来る-<〜だろう>-<(重いものが)>霧<主格>明日

    「明日は霧が来るだろう、と私は言っておく。」

    ré は「〜と」の節を導き、主節の後ろに置く。ré の後ろの節は推量法のまま保たれる。主語の霧 nébro が重性なので、動詞の語尾は -o。

    lúin éso nébro, mé vírir þeláis.

    読み:ルーイン エーソ ネーブロ、メー ヴィーリル セライス。

    lúinés-onébro,mévír-irþel-áis.
    ときいる-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>言う-<皆で〜せよ>名前-<〜たちを>

    「霧が出ているときは、名を呼んではならぬ。」

    霧の中で名前を呼ぶと下の国に聞かれるという禁忌を、年長者が若者たちに言い聞かせる言い方。vír- が名前を目的語にとると「名を呼ぶ・口にする」の意味になる。禁止は mé+命令法で、相手が複数なので命令法の2複 -ir を使う。lúin の節は主節の前に置く。

    luuméla aulisár nébro?

    読み:ルーメーラ アウリサール ネーブロ?

    luum-él-aau-lis-árnébro?
    ご覧になる-<〜だろう>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>霧<対格>

    「書記の方は、霧をご覧になったでしょうか。」

    推量法を使った上向きの問い。目上の人には問いの小辞 ké を使わず、推量法で推し量る。強勢が -él- に移るので、語根の ´ は消える。霧 nébro は重性o語幹なので、主格と対格が同じ形になる。霧期の始まりを確かめる問いとして使われる。

    lúin tóro nébro, mé hál þelán éndrar.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー ハール セラーン エンドラル。

    lúintór-onébro,méhálþel-ánéndr-ar.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>呼ぶ<命令法><あなたが>名前-<対格>人-<〜らの>

    「霧が来たら、人の名を呼ぶな。」

    子どもに霧期の禁忌を教えるときの言い方。lúin の節は主節の前に置き、読点で区切る。霧 nébro は重性なので、動詞は -o の形になる。禁止は mé と命令法で言う。

    ké sénes nébro? sénim ó.

    読み:ケー セーネス ネーブロ?セーニン オー。

    késén-esnébro?sén-imó.
    <〜か>見る-<あなたが>霧<対格>見る-<私が>それ<対格>

    「「霧が見えるか?」「ああ、見える。」」

    霧期に、縁の肩の見張りどうしで交わす問答。霧 nébro は重性なので、受ける代名詞も重性の ó になる。答えでは動詞 sén- を1人称に変えて繰り返し、目的語を ó で受ける。霧を指して軽性の él を使うことはない。

    na lúuman aursárai séndo, lúin tóro nébro es orénos.

    読み:ナ ルーマン アウルサーライ センド、ルーイン トーロ ネーブロ エス オレーノス。

    nalúum-anaursár-aiséndo,lúintór-onébroesorén-os.
    <〜ない>ご覧になる-<彼らが>祖先-<〜たちが>この世<対格>とき来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>

    「縁から霧が上がってくるとき、祖先はこの世をご覧にならない。」

    霧期を恐れる理由を語る言い方。ここでの séndo は話し手のいる場所ではなく、上(天)と下(干潟・地の底)のあいだにある、人の生きる「中の世界」を指す。祖先には「見る」の尊敬の補充形 lúum- を使う。祖先は数えないので、複数はひとまとまりの「方々」の意味になる。

    lúin tóro nébro, hóinimor telúin.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ホイニモル テルーイン。

    lúintór-onébro,hóin-imortelúin.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>帰る-<我々が>その時

    「霧が来たら、その時に我々は帰る。」

    市を閉じる時期を話す日常の会話。lúin の節で示した時を、主節の telúin がもう一度指している。霧 nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。telúin は、これから先の時にも過ぎた時にも使える。

    lúin tóro nébro, na séno senó dáu sílarau.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ セーノ セノー ダウ シーララウ。

    lúintór-onébro,nasén-osenódáusílar-au.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>見る-<(重いものが)>目<主格>二月-<双数>

    「霧が来れば、目には二つの月も見えない。」

    霧期の不安を言う、言い習わしのような文。senó は sén-「見る」に重性のもの名詞の接辞 -ó がついた語で、重性なので動詞は -o をとる。月は星ではないので、dáu「二」で数えて双数にしてよい。

    dróuma ólmar ré éso nébro bróus sórel.

    読み:ドローマ オルマル レー エーソ ネーブロ ブロース ソーレル。

    dróum-aólmarréés-onébrobróussórel.
    嘆く-<(軽いものが)>年長者<主格><〜と(節)>いる-<(重いものが)>霧<主格>多い今日

    「今日は霧が多い、と年長者は嘆く。」

    ré で始まる「〜と」の節を、主節の後ろに置いた文。霧 nébro は重性なので、繋辞は -o をとる。形容詞 bróus は重性・単数・主格なので、語尾がつかない。ここでは量が多いことを表す。

    toríro nébro, na sénimor nóumo séulines.

    読み:トリーロ ネーブロ、ナ セーニモル ノーモ セウリネス。

    tor-ír-onébro,nasén-imornóumoséulin-es.
    来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>見る-<我々が>顔<対格>友-<属格>

    「霧が上がってくれば、友の顔も見えない。」

    霧期の不安を語る言い方。霧の中では名前を呼べないうえに、顔も見分けられない。条件の節は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけで作る。霧 nébro は重性なので、仮定法の動詞も重性の -o をとる。

    lúin tóro nébro, éso brés némes gróm.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、エーソ ブレース ネーメス グローン。

    lúintór-onébro,és-obrésném-esgróm.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>いる-<(重いものが)>胸<主格><私>-<属格>重い

    「霧が来ると、胸が重くなる。」

    霧期の不調を語る文。lúin の節は主節の前に置く。霧 nébro も胸 brés も重性なので、どちらの動詞も -o をとる。述語の形容詞 gróm は重性・主格で語尾がつかない。霧は病を運ぶ「下の国の息」とされる。

    víra éndra ré tóro nébro es dáloros.

    読み:ヴィーラ エンドラ レー トーロ ネーブロ エス ダーロロス。

    vír-aéndrarétór-onébroesdálor-os.
    言う-<(軽いものが)>世間の人<主格><〜と(節)>来る-<(重いものが)>霧<主格>から下の国-<属格>

    「世の人は、霧は下の国から来ると言う。」

    言い伝えを紹介するときの決まった言い方。éndra を、特定の誰かではない主語として使うと、「世の人」「人は」という意味になる。ré の後ろの節では、主語の霧 nébro が重性なので、動詞は -o をとる。

    selvána aurólmar ré torélo nébro.

    読み:セルヴァーナ アウロルマル レー トレーロ ネーブロ。

    selván-aaur-ólmarrétor-él-onébro.
    おっしゃる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-長老<〜と(節)>来る-<〜だろう>-<(重いものが)>霧<主格>

    「長老の方は、霧が来るだろうとおっしゃる。」

    敬われる長老の言葉を人に伝える言い方。尊敬の接頭辞 au- は母音の前で aur- になる(au-+ólmar → aurólmar)。selván- は「言う」の尊敬の補充形。ré の後ろの節は元の法を保ち、ここでは推量法。霧 nébro は重性なので、動詞は -o をとる。

    lúin éso nébro, ésa þondá glüníño.

    読み:ルーイン エーソ ネーブロ、エーサ ソンダー グリュニーニョ。

    lúinés-onébro,és-aþondáglüníño.
    ときいる-<(重いものが)>霧<主格>いる-<(軽いものが)>誓い<主格>危うい足場

    「霧の出ているときの誓いなど、薄氷のようなものだ。」

    諺めいた言い方。霧期に立てた誓いは祖先に届かず、無効とされる。そのことを、いつ割れるかわからない薄氷にたとえている。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。主語 þondá は軽性なので、繋辞は -a をとる。述語の名詞 glüníño は主語の性に合わせない。

    lúin tóro nébro, éso glünó véinoros múrno.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、エーソ グリュノー ヴェーノロス ムルノ。

    lúintór-onébro,és-oglünóvéinor-osmúrno.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>いる-<(重いものが)>氷<主格>湖-<属格>腐り氷

    「霧が来ると、湖の氷は腐り氷になる。」

    季節の移り変わりを言う、教えさとすような文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。霧 nébro は重性なので、動詞 tór- は -o をとる。名詞句は「名詞–属格」の順に並ぶ(glünó véinoros「湖の氷」)。

    tóro duléumo es orénos, esélo nébro dórel.

    読み:トーロ ドゥレウモ エス オレーノス、エセーロ ネーブロ ドーレル。

    tór-oduléumoesorén-os,es-él-onébrodórel.
    来る-<(重いものが)>下の風<主格>から縁-<属格>いる-<〜だろう>-<(重いものが)>霧<主格>明日

    「縁から下の風が来ている。明日は霧が出るだろう。」

    空模様を読む日常の文。duléumo は重性o語幹なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。後半は存在の文を推量法にしたもので、確かでない明日のことは推量法で言う。霧 nébro も重性なので、esélo の語尾は -o になる。下の風は崖下から這い上がる湿った風で、霧と病を運ぶものとされる。

    lúin tóra aurléuma, auriþéla nébro.

    読み:ルーイン トーラ アウルレウマ、アウリセーラ ネーブロ。

    lúintór-aaurléuma,aur-iþ-él-anébro.
    とき来る-<(軽いものが)>昇る風<主格>昇る-<〜させる>-<〜だろう>-<(軽いものが)>霧<対格>

    「昇る風が吹いてくれば、霧を持ち上げるだろう。」

    霧期の終わりに、農村で雨期の訪れを読む文。霧が持ち上げられて雲に変わると、雨期が始まる。aurléuma は崖下から来るが、崖で押し上げられて雲をつくるので、重性の duléumo とは別の軽性の語になり、動詞も軽性の -a をとる。aur-íþ- は「昇る」の使役で「上げる」の意味。推量法の -él- が強勢を奪うので auriþéla となる。主語は前の節と同じなので、主節では言わない。nébro は重性なので、主格と対格が同じ形になる。

    áura aurléuma es orénos, auríþa nébro an élvaran.

    読み:アウラ アウルレウマ エス オレーノス、アウリーサ ネーブロ アン エルヴァラン。

    áur-aaurléumaesorén-os,aur-íþ-anébroanélvar-an.
    昇る-<(軽いものが)>昇る風<主格>から縁-<属格>昇る-<〜させる>-<(軽いものが)>霧<対格>上手天-<対格>

    「昇る風は縁から昇り、霧を天へと持ち上げる。」

    雨期の天気のしくみを説明する、書物風の文。an+対格で「上手へ」、つまり天のほうへ向かうことを表す。霧は昇る風に天まで引き上げられると、上に属する清い雲に変わると考えられている。地を這う霧(重性)が自分から雲になるわけではなく、昇る風に引き上げられて初めて雲になる、という見方である。

    hél órelei, éso nébro klér.

    読み:ヘール オーレレイ、エーソ ネーブロ クレール。

    hélórel-ei,és-onébroklér.
    座る<命令法><あなたが>日の光-<与格>いる-<(重いものが)>霧<主格>冷たい

    「日なたに座れ。霧が冷たい。」

    家族や目下の者への、くだけた気づかいの言葉。órel の与格 órelei は「日の当たる所で」、つまり日なたの意味になる。hél- の命令法2人称単数は語幹そのままの形。後半の主語 nébro は重性なので、繋辞は éso になり、述語の形容詞 klér は一致の語尾をとらない。

    lúin tóro nébro, na þónda fíñel.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ ソンダ フィーニェル。

    lúintór-onébro,naþónd-afíñel.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>誓う-<(軽いものが)>用心深い者<主格>

    「霧が来たら、用心深い者は誓わない。」

    霧の中で結んだ約束は重んじられない、という考えを踏まえた諺。霧 nébro は重性なので、動詞は -o をとる。主語の fíñel は特定の人ではなく、「用心深い者は誰でも」という一般の人を指す。

    lúin tóro nébro, éso drúmo húmel.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、エーソ ドルーモ フーメル。

    lúintór-onébro,és-odrúmohúmel.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>,いる-<(重いものが)>苔<主格>湿った

    「霧が来ると、苔は湿る。」

    季節による苔の様子を述べる、説明の文。霧 nébro は重性なので、動詞は -o をとる。苔は地面や石を覆うもので重性に属するので、繋辞も重性の éso になる。述語の形容詞 húmel も、重性・単数・主格の形(語尾なし)で一致する。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。

    gélo nébro; sénimor dáu sílarau.

    読み:ゲーロ ネーブロ、セーニモル ダウ シーララウ。

    gél-onébro;sén-imordáusílar-au.
    去る-<(重いものが)>霧<主格>見る-<我々が>二月-<双数>

    「霧が去った。二つの月が見える。」

    霧期の途中で霧が晴れたときの、安堵の言葉。nébro「霧」は重性なので、動詞は重性の -o をとる。月は星ではないので、数詞 dáu をつけて双数で言ってよい。

    lúin tóro nébro, ráuman faronárai du orén.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ラウマン ファロナーライ ドゥ オレーン。

    lúintór-onébro,ráum-anfaron-ár-aiduorén.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>歩く-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下手縁<対格>

    「霧が来ると、運び人たちは縁のほうへ歩いていく。」

    lúin の節を主節の前に置いている。霧 nébro は重性o語幹なので、動詞は -o をとる。行き先は du+対格「下手へ」で言う。高原語の移動の言い方では、上るのか下るのかをかならず言い分ける。

    lúin tóro nébro, hóinan faronárai es orénos.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ホイナン ファロナーライ エス オレーノス。

    lúintór-onébro,hóin-anfaron-ár-aiesorén-os.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>帰る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>から縁-<属格>

    「霧が来ると、運び人たちは縁から帰っていく。」

    縁の市の季節の終わりを言う文。nébro「霧」は重性なので、tóro は重性の -o をとる。市は霧の前に閉じるので、崖道の人々は霧を合図に故郷へ帰る。

    nóurim ré torélo nébro dórel.

    読み:ノーリン レー トレーロ ネーブロ ドーレル。

    nóur-imrétor-él-onébrodórel.
    思う-<私が><〜と(節)>来る-<〜だろう>-<(重いものが)>霧<主格>明日

    「明日は霧が来ると思う。」

    ré の節で思う内容を示す。確かでない未来なので、節の中は推量法にしている。霧は重性なので -o。

    lúin éso nébro, mé þondésa þondán.

    読み:ルーイン エーソ ネーブロ、メー ソンデーサ ソンダーン。

    lúinés-onébro,méþond-és-aþond-án.
    ときいる-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>誓う-<〜すべし>-<(軽いものが)>誓い-<対格>

    「霧が出ているときには、誓いを立てぬこと。」

    言い伝えや法典に出てくる禁止の言い方。霧の夜の誓いは祖先に届かず無効だ、という信仰を表している。前半は lúin「〜とき」の節で、主語の霧 nébro が重性なので、繋辞は és-o になる。後半は当為法の文で、mé で否定する。主語を言わないので「人は」という一般の主語になり、軽性の -a をとる。強勢は -és- に移るので、語根の ´ は消える。目的語の þondá「誓い」は、þónd- に -á がついた派生名詞。

    éso nébro só gráis, na lísimor sáindaran.

    読み:エーソ ネーブロ ソー グライス、ナ リーシモル サインダラン。

    és-onébrosógráis,nalís-imorsáindar-an.
    いる-<(重いものが)>霧<主格>この<重性>不吉な<〜ない>書く-<我々が>証文-<対格>

    「この霧は縁起が悪い。我々は証文を書かない。」

    霧期には大事な契約を結ばないという習わしを、兆しの言い方で述べている。霧 nébro は重性なので、繋辞は -o をとり、指示詞は só になる。重性・単数・主格の形容詞には語尾がつかない。主節が二つ並ぶので、あいだを読点で区切る。

    víra kelár ré éso nébro tó gráis.

    読み:ヴィーラ ケラール レー エーソ ネーブロ トー グライス。

    vír-akel-árréés-onébrotógráis.
    言う-<(軽いものが)>伐る-<〜する人><〜と(節)>いる-<(重いものが)>霧<主格>あの<重性>不吉な

    「樵は、あの霧は不吉だと言う。」

    人から聞いた兆しを伝える言い方。ré の節の中も、動詞で始まる語順を保つ。tó は重性の指示詞「あの」。

    lúin véilso múrno, tóro nébro es orénos.

    読み:ルーイン ヴェールソ ムルノ、トーロ ネーブロ エス オレーノス。

    lúinvéils-omúrno,tór-onébroesorén-os.
    とき流れ去る<〜し終えた>-<(重いものが)>腐り氷<主格>来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>

    「腐り氷が流れ去ってしまうと、縁から霧が上がってくる。」

    湖畔の村に伝わる季節の言い習わし。完了相の véils- で「すっかり流れ去った」ことを表す。múrno も nébro も重性なので、二つの動詞はどちらも -o をとる。lúin の節は主節の前に置く。

    povéra endríña ólmarei ré es pós tóro nébro.

    読み:ポヴェーラ エンドリーニャ オルマレイ レー エス ポース トーロ ネーブロ。

    povér-aendríñaólmar-eiréespóstór-onébro.
    問う-<(軽いものが)>子ども<主格>年長者-<与格><〜と(節)>から何<属格>来る-<(重いものが)>霧<主格>

    「子どもは年長者に、霧はなぜ来るのかと尋ねる。」

    尋ねる相手は与格で示し、尋ねる内容は ré の節で言う。es pós は「どこから」と「なぜ」の両方の意味になる。ré の節の中でも、疑問詞は動詞の前に出る。

    mé véil grúndo! torélo nébro.

    読み:メー ヴェール グルンド!トレーロ ネーブロ。

    mévéilgrúndo!tor-él-onébro.
    <禁止・願いの打ち消し>忘れる<命令法><あなたが>掛け<対格>来る-<〜だろう>-<(重いものが)>霧<主格>

    「掛けを忘れるなよ。もうすぐ霧が来るぞ。」

    縁の市で商人どうしが交わす念押し。禁止は「mé+命令法」で、命令法2単はむき出しの語幹 véil。grúndo は重性o語幹なので、対格も主格と同じ形。後半は推量法で、主語の霧 nébro が重性なので語尾は -o。霧が来る前に精算する、という市の習わしを踏まえている。

    éso nébro. lúin hála páin þelán táses, mé glén!

    読み:エーソ ネーブロ。ルーイン ハーラ パイン セラーン ターセス、メー グレーン!

    és-onébro.lúinhál-apáinþel-ántás-es,méglén!
    いる-<(重いものが)>霧<主格>とき呼ぶ-<(軽いものが)>誰か<主格>名前-<対格><あなた>-<属格><禁止・願いの打ち消し>答える<命令法><あなたが>

    「霧が出ている。誰かがお前の名を呼んでも、答えてはいけない。」

    霧の禁忌について、親が子に言い聞かせる言葉。「霧がある」は繋辞 és- で言い、霧 nébro が重性なので語尾は -o。禁止は「mé+命令法」。

    klér nébro, fóum þovríl.

    読み:クレール ネーブロ、フォーン ソヴリール。

    klérnébro,fóumþovríl.
    冷たい霧<主格>暖かい茶<主格>

    「霧は冷たく、茶は温かい。」

    霧期に茶をすすめたり飲んだりするときに言う決まり文句。諺や詩と同じ語順なので、és- を省き、形容詞の述語を先に置いている。ふつうの名詞句は「名詞+形容詞」の順なので、形容詞が先頭に来ると格言だとわかる。

    lúin tóro nébro, élþa kéira.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、エルサ ケーラ。

    lúintór-onébro,élþ-akéira.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>燃える-<(軽いものが)>蝋燭<主格>

    「霧が来ると、蝋燭がともる。」

    霧期の暮らしを述べる文。霧 nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。蝋燭 kéira は軽性なので、動詞は軽性の -a をとる。lúin の節は主節の前に置く。

    tóro nébro kéum es orénos.

    読み:トーロ ネーブロ ケウン エス オレーノス。

    tór-onébrokéumesorén-os.
    来る-<(重いものが)>霧<主格>灰色のから縁-<属格>

    「縁から灰色の霧が上がってくる。」

    霧 nébro は下に属するものなので重性で、動詞は -o、形容詞は語尾なしになる。霧期の始まりを告げる言い方で、縁の市が閉じる合図にもなる。

    néulimor þáilan élvares, grémimor nébros.

    読み:ネウリモル サイラン エルヴァレス、グレーミモル ネーブロス。

    néul-imorþáil-anélvar-es,grém-imornébr-os.
    好む-<我々が>澄み-<対格>天-<属格>恐れる-<我々が>霧-<属格>

    「「我々は空の澄みを好み、霧を恐れる。」」

    þáil を名詞として使い、軽性の対格 -an をつけている。二つの主節を読点で区切って並べた文。澄んだ空と霧を、上と下の対として語る高原らしい言い方。

    lúin tóro nébro, kúulan ólmarai.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、クーラン オルマライ。

    lúintór-onébro,kúul-anólmar-ai.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>煮出す-<彼らが>年長者-<〜たちが>

    「霧が来るころになると、年長者たちは(影の木の葉を)煮出す。」

    霧の季節に葉を煮出して茶にする習わしを述べた文。煮出す物は文脈でわかるので、言っていない。lúin の節は主節の前に置く。霧 nébro は重性なので、節の動詞は -o をとる。

    lúin éso nébro, ténda ambrél.

    読み:ルーイン エーソ ネーブロ、テンダ アンブレール。

    lúinés-onébro,ténd-aambrél
    ときいる-<(重いものが)>霧<主格>織る-<(軽いものが)>姉<主格>

    「霧が出ているあいだ、姉は機を織る。」

    霧期には外仕事が減り、家の中で機を織る。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。霧 nébro は重性なので繋辞は -o をとり、姉 ambrél は人なので軽性で、織る動詞は -a をとる。ここでは目的語を言わず、「機を織る」という行い自体を表している。

    sénan senárai nébro orénos.

    読み:セーナン セナーライ ネーブロ オレーノス。

    sén-ansenár-ainébroorén-os.
    見る-<彼らが>番人-<〜たちが>霧<対格>縁-<属格>

    「番人たちは縁の霧を見張っている。」

    縁の肩の番人を言う文。この意味では九段下りの者を指すので、au- をつけた高め形にはしない。番人は人なので複数で言ってよく、複数主格は -ai になる。nébro は重性で、対格は主格と同じ形。

    lúin tóro nébro, mé leimésa símbo sáindarei.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー レイメーサ シンボ サインダレイ。

    lúintór-onébro,méleim-és-asímbosáindar-ei.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>置く-<〜すべし>-<(軽いものが)>印<対格>証文-<与格>

    「霧が来たら、証文に印を押さぬこと。」

    法典や碑文に見られる当為法の禁止。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の -a をとる。強勢は -és- に移り、語根の ´ は消える。前半は lúin「〜とき」の節で、霧 nébro は重性なので動詞は -o をとる。霧の中で結んだ約束は「霧の約束」として重んじられない、という禁忌を表している。

    toríro nébro, na eséla meirtaulá gléin.

    読み:トリーロ ネーブロ、ナ エセーラ メイルタウラー グレーン。

    tor-ír-onébro,naes-él-ameirtaulágléin.
    来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>いる-<〜だろう>-<(軽いものが)>取引<主格>清い

    「霧が来てから結んだ取引は、清いものとはされまい。」

    条件の節は接続詞を使わず、仮定法だけで作る。霧 nébro は重性なので -o をとる。帰結の節は推量法で、na で否定する。主語の meirtaulá は軽性なので -a をとる。霧の中で結んだ約束は重んじられないので、精算は霧の前に済ませる。

    lúin tóro nébro es orénos, kráilim gleinó.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ エス オレーノス、クライリン グレイノー。

    lúintór-onébroesorén-os,kráil-imgleinó.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>手に持つ-<私が>護符<対格>

    「縁から霧が上がってくると、私は護符を握りしめる。」

    霧期の暮らしを語る文。霧 nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。gleinó は重性の o語幹で、主格と対格が同じ形になる。

    lúin éso nébro, na áura þondá, na fíndan aursárai élan.

    読み:ルーイン エーソ ネーブロ、ナ アウラ ソンダー、ナ フィンダン アウルサーライ エーラン。

    lúinés-onébro,naáur-aþondá,nafínd-anaursár-aiél-an.
    ときいる-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>昇る-<(軽いものが)>誓い<主格><〜ない>聞く-<彼らが>祖先-<〜たちが><3人称単数・軽性>-<対格>

    「霧が出ているときには、誓いは昇らない。祖先にはそれが聞こえない。」

    霧の夜に立てた誓いは無効だという教えを述べる文。霧 nébro は重性なので éso、þondá は軽性なので動詞は -a で一致する。後半では、その誓いを軽性の代名詞の対格 élan で受けている。

    lúin éso nébro, na ésa þondá gléin.

    読み:ルーイン エーソ ネーブロ、ナ エーサ ソンダー グレーン。

    lúinés-onébro,naés-aþondágléin.
    ときいる-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>いる-<(軽いものが)>約束<主格>清い

    「霧の出ているときの約束は、清い約束ではない(当てにならない)。」

    霧期に結んだ約束は重んじられないことを言う、日常の言い方。lúin の節は主節の前に置く。後半は繋辞の文で、na で否定する。þondá は軽性なので、繋辞は -a で一致する。

    lúin tóro nébro, mé virésa éndran. éso sárvo.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー ヴィレーサ エンドラン。エーソ サルヴォ。

    lúintór-onébro,mévir-és-aéndr-an.és-osárvo.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>言う-<〜すべし>-<(軽いものが)>人-<対格>いる-<(重いものが)>禁忌<主格>

    「霧が来たら、人の名を呼ばぬこと。これは禁忌である。」

    季節の言い習わし。霧の中で名前を呼ぶと、下の国にその名前を聞かれるとされる。霧 nébro は重性なので、動詞は -o をとる。当為法は mé で否定し、主語を言わないときは一般の人が主語になるので、軽性の形をとる。vír-「言う」は人の対格をとると「名を呼ぶ」の意味になる。最後の文は、存在の és- と重性の sárvo で「禁忌である」と言う。

    tóro nébro or dún.

    読み:トーロ ネーブロ オル ドゥーン。

    tór-onébroordún.
    来る-<(重いものが)>霧<主格>日の出側丘<対格>

    「霧が丘の日の出側へやって来る。」

    ものの動きを方角で言う文。or+対格で、目印になるものの日の出側(東側)へ向かうことを表す。or は órun「日の出」から来た語で、強勢がなく、次の語に寄りかかって発音される。主語の nébro「霧」は重性なので、動詞は重性の -o をとる。

    torélo nébro es orénos dulúin.

    読み:トレーロ ネーブロ エス オレーノス ドゥルーイン。

    tor-él-onébroesorén-osdulúin.
    来る-<〜だろう>-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>のち

    「のちに、縁から霧が上がってくるだろう。」

    乾風期の終わりの、季節の移り変わりを言う文。霧 nébro は重性なので、推量法の動詞も3人称単数・重性の -o をとる(torélo)。副詞の dulúin は動詞の前に出さず、文末に置く。

    na tóro nébro es ánores.

    読み:ナ トーロ ネーブロ エス アーノレス。

    natór-onébroesánor-es.
    <〜ない>来る-<(重いものが)>霧<主格>から上手・北-<属格>

    「霧は北から来ることはない。」

    ánor は軽性の子音語幹として変化する(属格 ánores)。霧は下の国の息で、崖の下(南)から這い上がってくるものとされるので、北(上手)から来ることはない。主語の nébro は重性なので、動詞は -o をとる。

    lúin tóro nébro, na sénimor álmaran un élvarei.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ セーニモル アルマラン ウン エルヴァレイ。

    lúintór-onébro,nasén-imorálmar-anunélvar-ei.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>見る-<我々が>白月-<対格>内に天-<与格>

    「霧が来ると、天の内に白月が見えなくなる。」

    霧期を言う文。un+与格で、天という広がりの内側にあることを表す。霧は下から割りこむ帳なので、天にあるものが見えなくなる。

    lúin éso nébro trúin, mé hál þelán!

    読み:ルーイン エーソ ネーブロ トルーイン、メー ハール セラーン!

    lúinés-onébrotrúin,méhálþel-án!
    ときいる-<(重いものが)>霧<主格>近い<禁止・願いの打ち消し>呼ぶ<命令法><あなたが>名前-<対格>

    「霧が近いときは、名前を呼ぶな。」

    親が子に言い聞かせる、禁忌の言い方。霧の中で名を呼ぶと下の国に聞かれる、という信仰による。nébro「霧」は重性なので、繋辞は éiso になる。禁止は「mé+命令法」で言う。

    na tóro nébro, éso nebrálvo lóuvan.

    読み:ナ トーロ ネーブロ、エーソ ネブラルヴォ ローヴァン。

    natór-onébro,és-onebrálvolóuvan.
    <〜ない>来る-<(重いものが)>霧<主格>いる-<(重いものが)>霧期<主格>隔たった

    「霧は来ない。霧期はまだ遠い。」

    乾風期の縁の肩での会話。lóuvan は時間の隔たりを表す。nébro と nebrálvo は下から湧く霧にかかわる語なので重性で、動詞も重性の -o をとる。

    lúin tóro nébro es orénos, grómim.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ エス オレーノス、グローミン。

    lúintór-onébroesorén-os,grómim.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>体が重い

    「縁から霧が上がってくると、体がだるくなる。」

    霧期には病が流行り、体が重くなると言われる。それを言うときの決まった言い方。霧 nébro は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。

    póþul? tóro nébro es orénos?

    読み:ポースル?トーロ ネーブロ エス オレーノス?

    póþul?tór-onébroesorén-os?
    なんだって(意外)来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>

    「なんだって? 縁から霧が上がってくるだと?」

    思いがけない知らせに驚いて、相手の文をそのまま問いの調子で繰り返している。nébro「霧」は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。霧が来ると市は閉じ、精算は霧の前に済ませなければならないので、霧の知らせは商人にとって一大事である。

    ái, tóro nébro es orénos.

    読み:アイ、トーロ ネーブロ エス オレーノス。

    ái,tór-onébroesorén-os.
    おや来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>

    「おや、縁から霧が上がってくる。」

    思いがけないことに気づいたときの軽い声。霧 nébro は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。霧期の初めによく聞かれる言い方。

    aursáre! tóro nébro es orénos.

    読み:アウルサーレ!トーロ ネーブロ エス オレーノス。

    aursáre!tór-onébroesorén-os.
    ああ来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>

    「ああ、ご先祖よ!縁から霧が上がってくる。」

    霧期の初めの不安の声。霧は「下の国の息」で、祖先と人とのあいだに割りこむものとされる。nébro は重性o語幹なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。

    lúin tóro nébro, dúla lisá du dálor.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ドゥーラ リサー ドゥ ダーロル。

    lúintór-onébro,dúl-alisádudálor.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>下る-<(軽いものが)>字<主格>下手下の国<対格>

    「「霧が来ると、字は下の国へ流れ落ちる。」」

    霧の中で書いた字は墨がにじんで下へ流れる、という言い伝えを述べた文。霧期に大事な書きものを避ける理由になる。霧 nébro は重性なので動詞は -o、字 lisá は軽性なので -a をとる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。

    lúin tóro nébro, na trálan lisárai sóndelais.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ トラーラン リサーライ ソンデライス。

    lúintór-onébro,natrál-anlis-ár-aisóndel-ais.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>写す-<彼らが>書く-<〜する人>-<〜たちが>書物-<〜たちを>

    「霧が来ると、書記たちは書物を写さない。」

    霧の中で書いた字は下へ流れるとされるので、霧期には書物の書き写しを避ける(書物を写すのは雨期の仕事)。否定の小辞 na は動詞の直前に置く。sóndel は巻物も綴じ本も含めた書物全般を指す。

    lúin éso nébro, na ésa lourlisá trálen.

    読み:ルーイン エーソ ネーブロ、ナ エーサ ロウルリサー トラーレン。

    lúinés-onébro,naés-alourlisátrál-en.
    ときいる-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>いる-<(軽いものが)>系譜の巻<主格>写す-<〜した・〜された>

    「霧の出ているあいだは、系譜の巻を写さない。」

    霧期の書きものの慣わしを言う文。霧の中で書いた字は、墨がにじんで下へ流れるとされる。lúin の節では、動詞が重性の霧 nébro に一致して -o をとる。主節は「éis-+主語+分詞」で結果の状態を言う、受け身にあたる形で、na で否定している。

    selvéna aurél ré tóro nébro.

    読み:セルヴェーナ アウレール レー トーロ ネーブロ。

    selvén-aaurélrétór-onébro.
    おっしゃる-<(軽いものが)>あの方<〜と(節)>来る-<(重いものが)>霧<主格>

    「あの方は、霧が来るとおっしゃる。」

    selvén- は「言う」の尊敬の補充形。言った内容は ré の節で主節の後ろに置き、その節も動詞で始める。節の中の動詞は、霧 nébro に合わせて重性の -o になる。

    krélo sáko an nébroi.

    読み:クレーロ サーコ アン ネーブロイ。

    krél-osákoannébr-oi
    足りる-<(重いものが)>塩<主格>上手霧-<与格>

    「塩は霧の前に足りている。」

    縁の市や倉の司の帳場で、塩の在庫が霧期(季節の変わり目)まで十分かを確認する改まった言い方。an+与格の時読みで「〜の前に」。an nébroi「霧の前に」は市の決まり文句で、「期限までに」の意味も帯びる。主語の sáko「塩」は重性o語幹なので、動詞は -o。干潟から来る塩はすべて重性に入る。

    ombréla meirtaulá an nébroi.

    読み:オンブレーラ メイルタウラー アン ネーブロイ。

    ombrél-ameirtauláannébr-oi.
    足りる-<(軽いものが)>取引<主格>上手霧-<与格>

    「取引は霧の前に済んでいる。」

    縁の市の精算が完了したとき、市の目付が告げる宣告。an nébroi は時の読み(「霧の前に」)で、縁の市の決まり文句「期限までに」に当たる。meirtaulá「取引」は軽性a語幹なので動詞は軽性の3単 -a。改まった場での正式な一言で、ふだんの会話ではやや硬く聞こえる。

    nébroi, fíndim kíl.

    読み:ネーブロイ、フィンディン キール。

    nébr-oi,fínd-imkíl.
    霧-<与格>聞く-<私が>口笛<対格>

    「霧の中では、口笛が聞こえる。」

    霧の中や見通しの悪い場所で、人の位置を伝える合図としての用法。nébr-oiは霧の与格で「霧の中で」。fíndimは1人称主語を動詞語尾で示す。kílは重性子音語幹で、主格・対格同形のため対格もkíl。

    nébroi, selvatáula endríña selván.

    読み:ネーブロイ、セルヴァタウラ エンドリーニャ セルヴァーン。

    nébr-oi,selvatául-aendríñaselv-án
    霧-<与格>聞き取る-<(軽いものが)>子<主格>息-<対格>

    「霧の中では、子どもが息づかいを聞き取る。」

    霧の中の描写。主語 endríña は人を指す軽性で、動詞は3人称単数軽性 -a と一致する。

    króiro nébro orénoi.

    読み:クロイロ ネーブロ オレーノイ。

    króir-onébroorén-oi.
    近づく-<(重いものが)>霧<主格>縁-<与格>

    「霧が縁へ近づいてくる。」

    意味1。近づき先は裸の与格で取る。主語 nébro は重性o語幹なので、動詞は3人称単数・重性の語尾 -o をとる。縁付近で霧が迫るさまを言う日常の文。

    glíma snóur un nébroi.

    読み:グリーマ スノール ウン ネーブロイ。

    glím-asnóurunnébr-oi.
    滲む-<(軽いものが)>輪郭<主格>内に霧-<与格>

    「輪郭が霧の中で滲む。」

    霧期に物の境界が薄れて区別が曖昧になることを述べる文。 snóur「輪郭・姿の輪」は形を指す語として軽性とし、glíma を受ける。 nébro は重性o語幹で、与格は nébr-oi。

    glíma filá un nébroi.

    読み:グリーマ フィラー ウン ネーブロイ。

    glím-afiláunnébr-oi.
    滲む-<(軽いものが)>線<主格>内に霧-<与格>

    「線が霧の中で滲む。」

    霧で見ている物の線がぼやける日常の表現。un+与格は「〜の中で」。

    na pláinim es nébros.

    読み:ナ プライニン エス ネーブロス。

    napláin-imesnébr-os
    <〜ない>気づく-<私が>から霧-<属格>

    「私は霧に気づかなかった。」

    独立した完了相語尾 -s は立てない。時制を表す語形がないため、未完了の直説法の否定でも文脈によって過去の出来事を表す。pláin は es+属格を伴う。nébro の属格は nébros。

    sén báwal só un nébroi!

    読み:セーン バーワル ソー ウン ネーブロイ!

    sénbáwalsóunnébr-oi!
    見る<命令法><あなたが>身振り<対格>この<重性>内に霧-<与格>

    「霧の中で、この身振りを見ろ。」

    崖道や縁の市で、声が届かない・声を出せない場に使われる実務的な合図を示す名詞。báwal は干潟語からの借用で重性。単数対格は主格と同形。指示詞 só は名詞句の終わりに置く。un+与格で「〜の中で」。

    górno dún nébroi.

    読み:ゴルノ ドゥーン ネーブロイ。

    górn-odúnnébr-oi
    消える-<(重いものが)>丘<主格>霧-<与格>

    「丘は霧の中に消える。」

    霧によって丘の輪郭が薄れ、視界から失われる、意図を含まない自動詞の用法。主語 dún は重性子音語幹なので、動詞は重性単数の górn-o をとる。霧の中の場所は前置詞なしの与格 nébr-oi で表す。霧の中で遠景が消える描写には、澄みが薄れて輪郭が湿り気に溶かされるような不吉な含みが出ることがある。

    snelíþa anlóur endríñan es nébros.

    読み:スネリーサ アンロール エンドリーニャン エス ネーブロス。

    snelíþ-aanlóurendríñ-anesnébr-os.
    隠す-<(軽いものが)>親<主格>子-<対格>から霧-<属格>

    「親が霧から子どもを隠す。」

    家族・養育の場面。人避けだけでなく、害から守るため対象を覆い隠す意で使う。`es`+属格は、害・視線・原因からの起点を表す。

    lúin éso nébro húmel, éso gromsámon klér.

    読み:ルーイン エーソ ネーブロ フーメル、エーソ グロンサーモン クレール。

    lúinés-onébrohúmel,és-ogromsámonklér
    ときいる-<(重いものが)>霧<主格>湿った,いる-<(重いものが)>皮膚感<主格>冷たい

    「霧が湿ると、肌触りは冷たい。」

    霧期の触れ感。この文では皮膚表面で受ける感じの意味であり、gloss 上は「皮膚感」と出す。gromsámon も nébro も重性なので、いずれも 3単・重性の éso で受ける。

    mé vír selvíñan nébroi!

    読み:メー ヴィール セルヴィーニャン ネーブロイ!

    mévírselvíñ-annébr-oi!
    <禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>セルヴィーニャ-<対格>霧-<与格>

    「霧の中で、セルヴィーニャの名を呼ぶな!」

    家庭の禁止表現。mé に動詞の命令法(むき出しの語幹)を続ける。vír に固有名を対格で取ると「その名を呼ぶ」意になる。nébroi は前置詞なしの与格で「霧の中で」。selvíña は指小 a 語幹として対格 -an を取り selvíñan になる。霧では名を大声で呼ばない禁忌を前提にした、親しい家族間の下向きの言い方。

    ké fíndes halán es nébros

    読み:ケー フィンデス ハラーン エス ネーブロス

    kéfínd-eshalá-nesnébr-os
    <〜か>聞く-<あなたが>呼び-<対格>から霧-<属格>

    「霧の中から呼びを聞くか。」

    日常で声の聞こえを尋ねる文。呼び声を fínd-「聞く」の直接目的語に取る。halá に単数対格 -n が接して halán となる。前置詞 es は方向を問わない出所を表し、属格と組む。

    vrunkríla éndra fúnel an nébroi

    読み:ヴルンクリーラ エンドラ フーネル アン ネーブロイ

    vrunkríl-aéndrafúnelannébr-oi
    ほどく-<(軽いものが)>人<主格>綱<対格>上手霧-<与格>

    「人は霧の前に綱をほどく。」

    主語 éndra は軽性単数なので動詞は3人称単数軽性の語尾 -a をとる。前置句 an nébroi は「霧の前に」という時間の句。

    auríþo nebroauró nébro an élvaran.

    読み:アウリーソ ネブロアウロー ネーブロ アン エルヴァラン。

    aur-íþ-onebroaurónébroanélvar-an
    昇る-<〜させる>-<(重いものが)>霧上げ<主格>霧<対格>上手天-<対格>

    「霧上げが霧を天へ持ち上げる。」

    儀礼・詩の語り。nebroauró を自然現象の行為者として重性単数主格で使う。nébro の対格は主格と同形。方向は an+対格。

    éso nébro bún.

    読み:エーソ ネーブロ ブーン。

    és-onébrobún.
    いる-<(重いものが)>霧<主格>深い

    「霧が深い。」

    暦文・儀礼文のような簡潔な事実記述。nébro は重性o語幹で、存在・繋辞は -o に一致する。霧の奥行きは、天を経ず下から湧くものとして警戒されるため、人ではなく状況だけを述べる言い切りが使われる。

    éso nébro só wáim.

    読み:エーソ ネーブロ ソー ワイン。

    és-onébrosówáim
    いる-<(重いものが)>霧<主格>この<重性>侮れない

    「この霧は侮れない。」

    警告的な判断文。指示詞 só を後置した重性単数の主語 nébro に対して、述語形容詞 wáim は主格単数無語尾となる。

    luséra ilanár lúsan an nébroi.

    読み:ルセーラ イラナール ルーサン アン ネーブロイ。

    lusér-ailanárlús-anannébr-oi.
    流質の食事をとる-<(軽いものが)>星読み<主格>粥-<対格>上手霧-<与格>

    「星読みは、霧の前に粥という流質の食事をとる。」

    作法書や記録のような文。動詞が文頭に立ち、主語の ilanár は人間なので動詞は軽性3単 -a が付く。an nébroi は「霧の前に」の前置詞句で、ここでは時を示す。

    dulþól selván nébroi!

    読み:ドゥルソール セルヴァーン ネーブロイ!

    dulþólselv-ánnébr-oi!
    息を伏せ殺す<命令法><あなたが>息-<対格>霧-<与格>

    「霧の中では、息を伏せ殺せ。」

    霧の中で気配を断つよう命じる、一人称への日常の命令文。命令の二人称単数はむき出しの語幹で言う。場所としての霧は前置詞を伴わない与格で表す。

    dulþóla éndra selván nébroi.

    読み:ドゥルソーラ エンドラ セルヴァーン ネーブロイ。

    dulþól-aéndraselv-ánnébr-oi.
    息を伏せ殺す-<(軽いものが)>人<主格>息-<対格>霧-<与格>

    「人は霧の中で息を伏せ殺す。」

    習俗や一般の行為について記す直説法。総称的な主語「人」を軽性の単数として受け、無時制で習慣的な行為を表す。目的語の「息」と場所の与格が文の後半に続く。

    un nébroi, gúma tíula.

    読み:ウン ネーブロイ、グーマ ティーウラ。

    unnébr-oi,gúm-atíula
    内に霧-<与格>くぐもる-<(軽いものが)>音<主格>

    「霧のなかでは、音がくぐもる。」

    日常の霧中の状況で使う文。場所の与格に un を添える。主体は tíula「音」。音は軽性なので、動詞は3人称単数・軽性の -a になる。

    lúin tór-o nébro es orénos, gúma tíula.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ エス オレーノス、グーマ ティーウラ。

    lúintór-onébroesorén-os,gúm-atíula
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>くぐもる-<(軽いものが)>音<主格>

    「縁から霧が上がってくると、音がくぐもる。」

    縁や崖道の日常語としての場面。主節・従属節ともに動詞を先頭にする。霧 nébro は重性なので、来るの動詞は3人称単数・重性の -o になる。es は属格と組んで「〜から」。

    un nébroi, gúma tíula faronáres.

    読み:ウン ネーブロイ、グーマ ティーウラ ファロナーレス。

    unnébr-oi,gúm-atíulafaronár-es
    内に霧-<与格>くぐもる-<(軽いものが)>音<主格>運び人-<属格>

    「霧のなかでは、運び人の声がくぐもる。」

    tíula に属格を添えた名詞句で、人に関わる音=声として読む。運び人 faronár は人の語なので軽性。動詞は主語の tíula に一致して軽性の3人称単数になる。

    éso nébro ráuvoi.

    読み:エーソ ネーブロ ラウヴォイ。

    és-onébroráuv-oi.
    いる-<(重いものが)>霧<主格>森の帯-<与格>

    「森の帯に霧がある。」

    日常の天候についての話。存在文の場所を裸の与格 ráuvoi で表す。「森の帯」という地域を指す用法。

    un nébroi, éso raumvirá tó múr.

    読み:ウン ネーブロイ、エーソ ラウンヴィラー トー ムール。

    unnébr-oi,és-oraumvirátómúr.
    内に霧-<与格>いる-<(重いものが)>噂<主格>あの<重性>濁った

    「霧の中では、あの陰口は濁っている。」

    霧期を背景にした日常的な評。un nébroi は「霧の中」と場を限定する。重性一致により、霧が下の国から湧くものとされる含みが重なり、múr は内容の根も葉なさにも転じている。

    wólers un nébroi.

    読み:ウォーレルス ウン ネーブロイ。

    wól-ersunnébr-oi.
    迷う-<あなたがたが>中に霧-<与格>

    「あなたたちは霧の中で迷っている。」

    道案内・旅の場面で、視界が悪くなり一本の道が見えなくなった状態を述べる言い方。二人称複数語尾だけで主語がわかるため、代名詞は通常省く。

    mé wól un nébroi!

    読み:メー ウォール ウン ネーブロイ!

    méwólunnébr-oi!
    <禁止・願いの打ち消し>迷う<命令法><あなたが>中に霧-<与格>

    「霧の中で迷うな。」

    禁止の定型。命令法の下向き語形なので、目下の人やくだけた場で使う。

    aursáre, kreinéro gromó nébroi.

    読み:アウルサーレ、クレイネーロ グロモー ネーブロイ。

    aursáre,kreinér-ogromónébr-oi.
    おお震える(骨が鳴る)-<(重いものが)>体<主格>霧-<与格>

    「ああ、ご先祖よ、霧の中で体が骨まで震える。」

    古い歌や詞の一節のような語調。aursáre はご先祖への嘆き。VSO の語順で動詞が先に立ち、主語 gromó と場所の与格 nébroi が後に続く。宮廷ではやや下向きの語だが、古い詞では骨の震えを直接言う。

    sénim líran nébros.

    読み:セーニン リーラン ネーブロス。

    sén-imlír-annébr-os.
    見る-<私が>糸-<対格>霧-<属格>

    「私は霧の細い筋を見る。」

    líra を比喩的に「細い一本の筋」として使う文。名詞句では頭部名詞が格標志(対格 -an)を受け、その後に属格 nébros が置かれる。「霧の細い筋」は、霧の切れ目のように細い線を糸にたとえた言い方。

    éso mélvo nébroi.

    読み:エーソ メルヴォ ネーブロイ。

    és-omélvonébr-oi
    いる-<(重いものが)>戸<主格>霧-<与格>

    「霧の中に戸がある。」

    所在を示す存在文。存在の és- が重性主語 mélvo に一致し、裸与格 nébr-oi が「霧の中に」という場所を表す。

    éso nébro snóimoi orénos.

    読み:エーソ ネーブロ スノイモイ オレーノス。

    és-onébrosnóim-oiorén-os
    いる-<(重いものが)>霧<主格>物肩-<与格>縁-<属格>

    「縁の物肩に霧がかかっている。」

    《物肩》は崖や丘・屋根など、上の面と下の面の境にある張り出した部分を表す。縁の属格を後置して、霧が所在する物肩を示す。o語幹の与格は語尾 -oi で表す。

  2. 霧期

    霧の季節。an nébroi「霧の前に(期限までに)」、du nébroi「霧の後に」。

    lúin na tóro nébro, méirim grúndo.

    読み:ルーイン ナ トーロ ネーブロ、メーリン グルンド。

    lúinnatór-onébro,méir-imgrúndo.
    とき<〜ない>来る-<(重いものが)>霧期<主格>与える-<私が>掛け<対格>

    「霧期が来ないうちに、掛けを払います。」

    縁の市での、精算の約束の言葉。霧の中で結んだ約束は重んじられないので、精算はかならず霧期の前に済ませる。同じことを市では、決まり文句の an nébroi「霧の前に(期限までに)」で言うことが多い。

    lúin éso nébro, mé þondésa þondán.

    読み:ルーイン エーソ ネーブロ、メー ソンデーサ ソンダーン。

    lúinés-onébro,méþond-és-aþond-án.
    ときいる-<(重いものが)>霧期<主格><禁止・願いの打ち消し>誓う-<〜すべし>-<(軽いものが)>誓い-<対格>

    「霧期のあいだは、誓いを立てぬこと。」

    法典や碑文に見られる、当為法を使った禁止。主語を言わないので一般の人が主語になり、動詞は軽性の形をとる。霧の夜の誓いは祖先に届かず無効とされる。その信仰を定めとして書いた文。

解説

地面を這って下から湧く霧。霧期に崖の下から上がってきて、縁の肩や谷を埋める。「下の国の息」と呼ばれ、祖先と人とのあいだに割りこむ不吉なものとされる。雲とは別のもので、雲は軽性、霧は重性である。霧の中で名前を呼ぶこと、契約を結ぶことは忌まれ、an nébroi「霧の前に」は「期限までに」の決まり文句になっている。

文法

重性・o語幹。主格・対格 nébro、属 nébros、与 nébroi、双 nébrou、複 nébrul。

語源

重性の古い接辞 *-o- が語幹の末尾として残った語。

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