小説
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赤月
小さく速く巡る月そのもの。
gléin álmar, rús rúsil.
読み:グレーン アルマル、ルース ルーシル。
| gléin | álmar, | rús | rúsil. |
| 清い | 白月<主格> | 赤い | 赤月<主格> |
「清きは白月、赤きは赤月。」
二つの月を並べて対比する諺。諺では繋辞 és- を落とし、述語の形容詞を先に置くので、「名詞+形容詞」のふつうの語順とは逆になる。白月は秩序と祖先の象徴、赤月は落ち着きのない「下の国の月」とされ、その違いを含ませている。
áurau álmar si rúsil.
読み:アウラウ アルマル シ ルーシル。
| áur-au | álmar | si | rúsil. |
| 昇る-<双数> | 白月<主格> | と | 赤月<主格> |
「白月と赤月が昇る。」
単数の名詞を si で二つ並べると、動詞は双数になる。双数の動詞は人称も性も区別しない。月は星ではないので、二つ並べて双数で受けても禁忌にはならない。二つの月が重なって見える夜は秩序の乱れる夜とされ、人々は出歩かない。
ésa rúsil vel álmarei.
読み:エーサ ルーシル ヴェル アルマレイ。
| és-a | rúsil | vel | álmar-ei. |
| いる-<(軽いものが)> | 赤月<主格> | 日の入り側 | 白月-<与格> |
「赤月は白月の日の入り側にある。」
夜空での月の位置関係を述べる文。月は星ではないので数えてもよいが、指ささずに方向語で言い表すのが礼儀とされる。rúsil は軽性なので、繋辞は és-a になる。
赤月の巡り
赤月の一巡り(約七日半)を単位とした日数の数え方。崖道の言葉で使い、都では嫌われる。
tóro fáron du dáu rúsilaun.
読み:トーロ ファーロン ドゥ ダウ ルーシラウン。
| tór-o | fáron | du | dáu | rúsil-aun. |
| 来る-<(重いものが)> | 荷<主格> | 下手 | 二 | 赤月の巡り-<双数の〜の・〜に> |
「「荷は赤月ふた巡りのあとに上がってくる。」」
崖道の商人や運び人が使う日数の言い方。干潟との取引のために、赤月の一巡り(約七日半)を単位にして日を数える。崖道の言葉では双数が衰えているので、dáu の後ろでも双数ではなく複数与格 -ail を使っている。都の言葉なら du dáu rúsilaun になる。くだけた発音では tóro は tór になる。
mé rimbésa rúsilan, rimbésa álmaran.
読み:メー リンベーサ ルーシラン、リンベーサ アルマラン。
| mé | rimb-és-a | rúsil-an, | rimb-és-a | álmar-an. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 数える-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 赤月の巡り-<対格> | 数える-<〜すべし>-<(軽いものが)> | ひと月-<対格> |
「赤月の巡りで日を数えぬこと、白月の月で数えること。」
都の年長者が、崖道帰りの若者などをたしなめるときに使う、戒めの決まった言い方。当為法で主語を言わないので「人は〜すべし」の意味になり、動詞は軽性の形をとる。禁止の前半は mé で否定する。赤月で日を数えるのは、都では田舎くさい、下の国に染まった習慣とされる。
小さく速く巡る月(約七日半)。干潟の潮を動かす「下の国の月」とされ、宮廷の暦ではほとんど使わない。落ち着きのなさや、故郷を離れることと結びつけられ、赤月の満月のころに生まれた子は「下に引かれる子」と言われる。運び人と崖道の商人は、干潟との取引のためにこの月の巡りで日を数える。都でこの数え方をすると、田舎くさい、あるいは下の国に染まった習慣と見られる。
軽性・子音語幹(②型)。対 rúsilan、属 rúsiles。白月と並べるときは双数で sílarau「二つの月」と言う。
古高原語 *rúsa「赤い」+ sílar「月」が縮まった形とされる。
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