du

品詞
前置詞
意味
下手
発音
[du]
読み
ズ
分野
時間・空間・方向

意味

  1. 下手へ・下手で

    南・縁・干潟の方向。

    dúlo gandér du dálor.

    読み:ドゥーロ ガンデール ドゥ ダーロル。

    dúl-ogandérdudálor
    下る-<(重いものが)>硬木<主格>下手下の国<対格>

    「硬木が下の国へ下りていく。」

    VSO の基本の文。直説法には法の印がないので、語根に人称の語尾が直接つく。主語の gandér は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。du+対格で「下手へ」。dálor も重性なので、主格と対格が同じ形になる。

    dúlo gandér kélen kelárar só du orén.

    読み:ドゥーロ ガンデール ケーレン ケラーラル ソー ドゥ オレーン。

    dúl-ogandérkél-enkel-ár-arsóduorén.
    下る-<(重いものが)>硬木<主格>伐る-<〜した・〜された>伐る-<〜する人>-<〜らの>この<重性>下手縁<対格>

    「樵たちが伐ったこの硬木が、縁へ下りていく。」

    名詞句の並び順は「名詞–分詞–属格–指示詞」。分詞は重性・単数・主格なので一致の語尾がない。分詞の後ろの属格 kelárar は「樵たちによって」の意味。関係節がないので、重性の指示詞 só が名詞句の終わりの目印になり、du orén は主節にかかる。

    du pó fleiréla ausenár?

    読み:ドゥ ポー フレイレーラ アウセナール?

    dupófleir-él-aau-sen-ár?
    下手何<対格>お出ましになる-<〜だろう>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>

    「目付殿は、下手のどちらへお出ましになるのでしょうか。」

    上向きの問い。ké を使わず推量法で尋ね、相手は役職名+au- の3人称で言う。高原語には方向を決めない「どこへ」がないので、du pó「下手の何へ」と前置詞句ごと文頭に出す。東西なら or pó・vel pó と言う。

    dúlo du dálor gandér te kéelan kelárai.

    読み:ドゥーロ ドゥ ダーロル ガンデール テ ケーラン ケラーライ。

    dúl-odudálorgandértekéel-ankel-ár-ai.
    下る-<(重いものが)>下手下の国<対格>硬木<主格><関係節>伐る<〜し終えた>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>

    「樵たちが伐り終えた硬木が、下の国へ下りていく。」

    関係節は名詞の後ろに無強勢の te を置き、すぐ後ろに動詞を続ける。目的語が抜けた穴は空けたままにする。関係節は文の終わり(か読点)まで続くので、du dálor を主節にかけるために、関係節つきの重い主語を文末に回している。dúlo gandér te kéelan kelárai du dálor と言うと、du dálor は関係節の中に入ってしまう。gandér は重性だが、関係節を導くのは te のままで、tó にはならない(tó なら「あの硬木」)。

    du dálor gandér, sílarau áurau.

    読み:ドゥ ダーロル ガンデール、シーララウ アウラウ。

    dudálorgandér,sílar-auáur-au.
    下手下の国<対格>硬木<主格>月-<双数>昇る-<双数>

    「硬木は下の国へ、二つの月は昇る。」

    詩の一句で、十拍(du-dá-lor-gan-dér-sí-la-rau-áu-rau)。前半では動詞を落とし、後半では主語が動詞の前に出ている。会話の中でこの語順を聞くと、高原の人は「詩句の引用だ」とわかる。

    léisa lisár plánan, duói dúlo fáron du orén.

    読み:レーサ リサール プラーナン、ドゥオイ ドゥーロ ファーロン ドゥ オレーン。

    léis-alis-árplán-an,duóidúl-ofáronduorén.
    書く<〜し終えた>-<(軽いものが)>書く-<〜する人>帳簿-<対格>それから下る-<(重いものが)>荷<主格>下手縁<対格>

    「書記が帳簿を書き終え、それから荷が縁へ下りていく。」

    duói「それの下手で」は、出来事の順序をはっきりさせる。

    gélau némor dáun du orén.

    読み:ゲーラウ ネーモル ダウン ドゥ オレーン。

    gél-aunémordáunduorén.
    行く-<双数><我々>二人下手縁<対格>

    「我ら二人は縁へ行く。」

    双数の動詞は人称を区別しないので、主語の dáun は省けない。人称を言うときは複数の代名詞を前に添える(némor dáun「我ら二人」)。

    ké gélau társ dáun du orén? gélau.

    読み:ケー ゲーラウ タルス ダウン ドゥ オレーン?ゲーラウ。

    kégél-autársdáunduorén?gél-au.
    <〜か>行く-<双数><あなたがた>二人下手縁<対格>行く-<双数>

    「「お前たち二人は縁へ行くのか」「行く」」

    答えの形では、問いに出た語(ここでは主語の társ dáun と行き先)を省ける。双数の動詞は人称で形が変わらないので、答えも gélau のまま。

    ésim séndoi du nébro.

    読み:エーシン センドイ ドゥ ネーブロ。

    és-imsénd-oidunébro.
    いる-<私が>ここ-<与格>下手霧<対格>

    「私は霧の季節までここにいる。」

    du+対格「〜の下手へ」は、時の名詞では「〜まで」。

    na gélim dóulin du orén.

    読み:ナ ゲーリン ドーリン ドゥ オレーン。

    nagél-imdóulinduorén.
    <〜ない>行く-<私が>もう下手縁<対格>

    「私はもう縁へは行かない。」

    否定+dóulin で「もう〜しない」。

    gélim du nébro.

    読み:ゲーリン ドゥ ネーブロ。

    gél-imdunébro.
    行く-<私が>下手霧<対格>

    「私は下手の霧の中へ行く。」

    動きの動詞と組んだ前置詞句は、時の名詞でも方角の読みになる。

    du nébro, ráumimor du orén.

    読み:ドゥ ネーブロ、ラウミモル ドゥ オレーン。

    dunébro,ráum-imorduorén.
    下手霧<対格>歩く-<我々が>下手縁<対格>

    「霧の季節まで、我々は縁へ歩いて通う。」

    場面の枠に置いた時の句は、動きの動詞の文でも時の読みになる。

    gélimor du orén.

    読み:ゲーリモル ドゥ オレーン。

    gél-imorduorén.
    行く-<我々が>下手縁<対格>

    「我ら(二人)は縁へ行く。」

    崖道の言葉。双数を人称つきの複数で受けるので、動詞から人称がわかり、dáun を省ける。

    gélimor ném si sélvan si silára du orén.

    読み:ゲーリモル ネーン シ セルヴァン シ シラーラ ドゥ オレーン。

    gél-imornémsisélvansisiláraduorén.
    行く-<我々が><私>とセルヴァン<主格>とシラーラ<主格>下手縁<対格>

    「私とセルヴァンとシラーラは縁へ行く。」

    三つ以上を並べた主語の人称は、1人称>2人称>3人称の順に優先する。「私」が入るので1人称複数。

    gélers tás si sélvan si silára du orén.

    読み:ゲーレルス タース シ セルヴァン シ シラーラ ドゥ オレーン。

    gél-erstássisélvansisiláraduorén.
    行く-<あなたがたが><あなた>とセルヴァン<主格>とシラーラ<主格>下手縁<対格>

    「お前とセルヴァンとシラーラは縁へ行く。」

    「お前」が入るので2人称複数。

    na dulíþin vúuro fúnel gandér du dálor.

    読み:ナ ドゥリーシン ヴーロ フーネル ガンデール ドゥ ダーロル。

    nadul-íþ-invúur-ofúnelgandérdudálor.
    <〜ない>下る-<〜させる>-<〜して・〜く>届く-<(重いものが)>綱<主格>硬木<対格>下手下の国<対格>

    「綱は硬木を下の国まで下ろせない。」

    否定の na は副動詞の前に置き、二つの動詞をまとめて打ち消す。綱の長さが届かない、という可能の否定。

    dúlo ílmo es fóndaros du dálor.

    読み:ドゥーロ イルモ エス フォンダロス ドゥ ダーロル。

    dúl-oílmoesfóndar-osdudálor.
    下る-<(重いものが)>水<主格>から源-<属格>下手下の国<対格>

    「水は源から下の国へと下っていく。」

    水は泉で生まれ、段を下るごとに重くなって、最後は崖の下に沈む。この見方を言い表す、教えや詩でよく使われる言い回し。ílmo(水)は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。es+属格は、方向を問わない「〜から」。

    dúlan dáumbar fáronul du orén.

    読み:ドゥーラン ダウンバル ファーロヌル ドゥ オレーン。

    dúl-andáumbarfáron-ulduorén.
    下る-<彼らが>二十荷-<〜たちが>下手縁<対格>

    「二十の荷が縁へ下りていく。」

    崖道で荷が下ろされていくようすを言う文。dáumbar は dáu(二)と ombár(十)が縮まった不規則な形。三以上の数詞と同じく、後ろの名詞を複数にする。重性名詞の複数は -ul になる。動詞は3人称複数の -an で、複数では性を区別しない。

    dúlimor es orénos du dálor.

    読み:ドゥーリモル エス オレーノス ドゥ ダーロル。

    dúl-imoresorén-osdudálor.
    下る-<我々が>から縁-<属格>下手下の国<対格>

    「我々は縁から下の国へ下りる。」

    崖道の商人や運び人が、乾風期に市へ下りるときの言い方。出どころは「es+属格」、行き先は「du+対格」で言う。主語は動詞の語尾 -imor でわかるので、代名詞は言わない。

    fléira aldár áuren du orén.

    読み:フレーラ アルダール アウレン ドゥ オレーン。

    fléir-aaldáráur-enduorén.
    お出ましになる-<(軽いものが)>王の位昇る-<〜した・〜された>下手縁<対格>

    「高き座が、縁へお出ましになる。」

    aldár áuren「高き座」は、王の位と今の王をあわせて指す総称で、今の王を指すときはこれだけで足りる。fléir- は「行く」の尊敬の補充形。王が縁の方へ下る行幸の知らせに使われる。

    mé dúl du orén!

    読み:メー ドゥール ドゥ オレーン!

    médúlduorén!
    <禁止・願いの打ち消し>下る<命令法><あなたが>下手崖の際<対格>

    「崖の際へ近寄るな。」

    子どもや新入りの運び人に向けた、強い禁止。禁止は「mé+命令法」で言う。崖の際は南(下手)にあるので、そちらへ向かうことを「下る」と言う。崖から落ちて死ぬことは、魂が下へ引かれる、もっとも恐れられる死とされる。

    dúlo ílmo es þéulos du orén.

    読み:ドゥーロ イルモ エス セウロス ドゥ オレーン。

    dúl-oílmoesþéul-osduorén.
    下る-<(重いものが)>水<主格>から湧き水-<属格>下手縁<対格>

    「水は湧き水から縁へと下っていく。」

    水の流れを言う、ごくふつうの言い切りの文。ílmo「水」は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。es+属格で出どころを、du+対格で行き先を表す。高原の人の考えでは、水は源から生まれて下へ流れていくものなので、この文は自然を述べた文であると同時に、世界観の決まり文句でもある。

    mé vír lúdro! dúla virá gróm du dálor.

    読み:メー ヴィール ルードロ!ドゥーラ ヴィラー グローン ドゥ ダーロル。

    mévírlúdro!dúl-avirágrómdudálor.
    <禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>嘘<対格>下る-<(軽いものが)>言葉<主格>重い下手地の底<対格>

    「嘘をつくな。重い言葉は地の底へ沈むぞ。」

    親が子をたしなめるときの言い方。lúdro「嘘」は重性o語幹なので、対格は主格と同じ形。言葉は本来軽性で上へ昇るものだが、崩れた言葉は「重く」なって下へ落ちる、という考えを表す。virá は軽性なので、形容詞 gróm は語尾なし、動詞は -a をとる。

    lúin tóro nébro, dúlan orenvandárai du dálor.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ドゥーラン オレンヴァンダーライ ドゥ ダーロル。

    lúintór-onébro,dúl-anorenvandár-aidudálor.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>南へ行く-<彼らが>縁商人-<〜たちが>下手下の国<対格>

    「霧が来るころ、縁商人たちは下(干潟)へ帰っていく。」

    dúl- は、北が「上」の国では、そのまま「南へ行く・干潟へ行く」の意味になる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。縁商人は軽性の人なので、複数主格は -ai になる。霧が崖を上りはじめると縁の市が閉じることを述べた文。

    dúlo gromó du dálor, áura selvá.

    読み:ドゥーロ グロモー ドゥ ダーロル、アウラ セルヴァー。

    dúl-ogromódudálor,áur-aselvá.
    下る-<(重いものが)>体<主格>下手地の底<対格>昇る-<(軽いものが)>息<主格>

    「体は地の底へ沈み、息は昇る。」

    弔いのときに森の巫や系譜読みが唱える句。重性の gromó「体」と軽性の selvá「息」が、動詞の語尾 -o/-a でも対になっている。dálor はここでは干潟ではなく、上・中・下の三層の「下」、重いものが沈んでいく地の底を指す。

    dúlau dáu faronárau du orén.

    読み:ドゥーラウ ダウ ファロナーラウ ドゥ オレーン。

    dúl-audáufaron-ár-auduorén.
    下る-<双数>二荷-<〜する人>-<双数>下手縁<対格>

    「二人の運び人が縁へ下りていく。」

    崖道の様子を言う日常の文。dáu の後ろの名詞は双数になる(faronár → faronárau)。主語が双数なので、動詞も双数 -au になる。双数の動詞は人称も性も区別しない。運び人は働き手なので、数詞で数えても失礼にならない。目上の人を指す高め名詞には、dáu も双数もつけられない。

    brúumo ílmo es lóuros du lóur.

    読み:ブルーモ イルモ エス ローロス ドゥ ロール。

    brúum-oílmoeslóur-osdulóur.
    落ちる-<(重いものが)>水<主格>から瀬-<属格>下手瀬<対格>

    「水は瀬から瀬へと落ちていく。」

    川の流れを言い表す文。es+属格で「〜から」、du+対格で「下手の〜へ」を表す。lóur は重性なので、対格は主格と同じ形になる。川の水が段を下るごとに落ちていくという見方は、系譜を瀬で数える考え方のもとになっている。

    dulíþan slúun kelárar gandér du orén.

    読み:ドゥリーサン スルーン ケラーラル ガンデール ドゥ オレーン。

    dul-íþ-anslúunkel-ár-argandérduorén.
    下る-<〜させる>-<彼らが>数えきれぬ伐る-<〜する人>-<〜らの>硬木<対格>下手縁<対格>

    「数えきれぬほどの樵が、硬木を縁へ下ろす。」

    誇張をこめた語りの言い方。この slúun は実際の数ではなく、「数えきれないほど多い」の意味。「slúun+複数属格」が主語になると、動詞は3人称複数で受ける。gandér と orén は重性なので、対格は主格と同じ形になる。du+対格で「下手へ」。

    dúl du þrén só.

    読み:ドゥール ドゥ スレーン ソー。

    dúlduþrénsó.
    下る<命令法><あなたが>下手段<対格>この<重性>

    「この段まで下りてこい。」

    坂道や石段でのくだけた命令。命令法の2人称単数なので、下向きの話し方か、ごく親しい間柄でしか使わない。þrén は重性なので、対格は主格と同じ形になり、指示詞は só を使う。du+対格で「下手へ」。目上の人より高い段に立つのは無礼とされるので、立つ段の高さに気を配る。

    hóinim du sílarei sé.

    読み:ホイニン ドゥ シーラレイ セー。

    hóin-imdusílar-eisé.
    帰る-<私が>下手暦の月-<与格>この<軽性>

    「この月が過ぎたら帰る。」

    暦のひと月の意味で使った例。時間を川の流れとして捉えるので、du+与格「〜の下手で」が「〜の後に」の意味になる。

    mé fleirénde ausenár du orén.

    読み:メー フレイレンデ アウセナール ドゥ オレーン。

    méfleir-énd-eau-sen-árduorén.
    <禁止・願いの打ち消し>お出ましになる-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>下手縁<対格>

    「目付殿、縁へはお出ましになりませぬよう。」

    目上の人への禁止。命令法は使わず、「mé+願望法3人称」で言う。目の前の相手も、役職名に au- をつけた3人称の主語として扱う。du+対格で「下手へ」。orén は重性なので、主格と対格が同じ形になる。霧期に、霧のあふれる縁の方へ行くのをいさめるときの言い方。

    fléira aulisár du orén.

    読み:フレーラ アウリサール ドゥ オレーン。

    fléir-aau-lis-árduorén.
    お出ましになる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>下手縁<対格>

    「書記の方は、縁へお出ましになる。」

    目上の人の移動を言い切る文。fléir- 自体が「行く」gél- の尊敬の補充形なので、au- はつけない。主語の aulisár は役職名に au- をつけた高め名詞。du+対格で「下手へ」の意味になる。時制がないので「お出ましになった」とも訳せる。

    drénim du orén dórel.

    読み:ドレーニン ドゥ オレーン ドーレル。

    drén-imduoréndórel.
    参る-<私が>下手へ・下手で縁<対格>明日

    「明日、縁へ参ります。」

    du+対格で、下手(南・縁・干潟の方向)への移動を表す。drén- は「行く」の謙譲の補充形。du は動詞 dúl-「下る」や謙譲の接頭辞 du- と同じ語源で、強勢をもたない。

    du pó géles?

    読み:ドゥ ポー ゲーレス?

    dupógél-es?
    下手へ・下手で何<対格>行く-<あなたが>

    「下手のどこへ行くのか。」

    行き先を尋ねる、くだけた問い。高原語には方向を決めない「どこへ」がないので、du pó・an pó のように、まず高さを決めて尋ね、前置詞句ごと文頭に出す。2人称を使うので、下向きか同輩どうしの話し方になる。

    pómbar báronul dulíþan kelárai du dálor?

    読み:ポンバル バーロヌル ドゥリーサン ケラーライ ドゥ ダーロル?

    pómbarbáron-uldul-íþ-ankel-ár-aidudálor?
    いくつ本-<〜たちを>下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>下手下の国<対格>

    「樵たちは下の国へ何本下ろすのか。」

    降ろし場での日常の問い。数を問う pómbar は数詞と同じく名詞の前に置き、量の名詞 báron を複数にする。ここでは目的語なので複数対格 báronul(重性なので主格と同じ形)になる。降ろし場で数えるものは硬木と決まっているので、数えるものの複数属格は省いている。数を問う語句は、目的語の名詞句ごと動詞の前に出る。人を数える問いにはこの形を使わない。

    dúlo lóna kélen du orén.

    読み:ドゥーロ ローナ ケーレン ドゥ オレーン。

    dúl-olónakél-enduorén.
    下る-<(重いものが)>柱材<主格>伐る-<〜した・〜された>下手縁<対格>

    「伐った柱材が縁へ下りていく。」

    名詞の lóna は軽性の語形のままだが、伐られた材なので、動詞は重性の -o で一致する。分詞 kélen も重性・主格の形で、語尾はつかない。du+対格で「下手へ」。

    dúlo fáron némores du orén.

    読み:ドゥーロ ファーロン ネーモレス ドゥ オレーン。

    dúl-ofáronnémor-esduorén.
    下る-<(重いものが)>荷<主格>我々-<属格>下手縁<対格>

    「我々の荷は縁へ下りていく。」

    属格 némores「我々の」は名詞 fáron の後ろに置く。荷 fáron は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。崖道の商人どうしが、荷の段取りを確かめるときの言い方。némor は聞き手を含む場合も含まない場合も同じ形で、どちらなのかは文脈で決まる。

    lísan lisárai dáu sáindarau, dulíþan dáun du orén.

    読み:リーサン リサーライ ダウ サインダラウ、ドゥリーサン ダウン ドゥ オレーン。

    lís-anlis-ár-aidáusáindar-au,dul-íþ-andáunduorén.
    書く-<彼らが>書く-<〜する人>-<〜たちが>二証文-<双数>下る-<〜させる>-<彼らが>ふたつ下手縁<対格>

    「書記たちは証文を二通書き、そのふたつを縁へ下ろす。」

    後半の dáun は、前半の双数 sáindarau を受けている。dáun には性の区別がないので、軽性のものでも重性のものでも同じ形で受ける。後半では主語を省いているが、動詞の語尾から、前半と同じ書記たちが主語だとわかる。

    du pó dúles?

    読み:ドゥ ポー ドゥーレス?

    dupódúl-es?
    下手何<対格>下る-<あなたが>

    「下手のどこへ下りていくんだ?」

    方向の前置詞をつけた pó は「どこへ」の意味になる。高原語には方向を決めない「どこへ」がないので、du pó「下手の何へ」のように、高さを決めて尋ねる。前置詞句ごと動詞の前に出る。2人称を使っているので、下向きのくだけた問いになる。

    kéla kelár gandér, dulíþa ó du orén.

    読み:ケーラ ケラール ガンデール、ドゥリーサ オー ドゥ オレーン。

    kél-akel-árgandér,dul-íþ-aóduorén.
    伐る-<(軽いものが)>伐る-<〜する人>硬木<対格>下る-<〜させる>-<(軽いものが)>それ<対格>下手縁<対格>

    「樵は硬木を伐り、それを縁へ下ろす。」

    前の節に出た重性名詞 gandér を、代名詞 ó で受けている。ó は重性なので、主格と対格が同じ形になる。後ろの節では主語を言わないが、動詞の語尾から同じ樵が主語だとわかる。

    lúin áuran ombára ilánai, dúlan kelárai du orén.

    読み:ルーイン アウラン オンバーラ イラーナイ、ドゥーラン ケラーライ ドゥ オレーン。

    lúináur-anombárailán-ai,dúl-ankel-ár-aiduorén.
    とき昇る-<彼らが>十灯-<〜たちが>下る-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>下手縁<対格>

    「十の灯が昇ると、樵たちは縁へ下りていく。」

    「〜とき」の節は lúin で始めて、主節の前に置く。ombára ilánai「十の灯」は年の始まりを告げる星の群れの名前で、ombára は数えた結果ではなく名前の一部。そのため、星を数えることの禁忌には当たらない。ilánai は語根 ilán- に複数主格の語尾 -ai がついた形。

    ké dúlo fáron du séndo?

    読み:ケー ドゥーロ ファーロン ドゥ センド?

    kédúl-ofáronduséndo?
    <〜か>下る-<(重いものが)>荷<主格>下手ここ<対格>

    「荷はここへ下りてくるのか。」

    店先で荷の行き先を確かめる、くだけた問い。séndo は重性o語幹の名詞として変化し、主格と対格が同じ形になる。du+対格で「(下手の)ここへ」を表す。動詞は主語の fáron(重性)に一致して dúlo になる。答えは dúlo(来る)か na dúlo(来ない)。

    fléira ausenár du téndo.

    読み:フレーラ アウセナール ドゥ テンド。

    fléir-aau-sen-árduténdo.
    お出ましになる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>下手あそこ<対格>

    「目付殿はあちら(下手のあそこ)へお出ましになる。」

    離れた場所へ行く目上の人の行き先を教える文。téndo も séndo と同じく重性o語幹で、主格と対格が同じ形になる。du+対格で「下手のあそこへ」と言う。人を指さすのは避けられるので、ふつうは言葉で場所を示す。

    dulíþan kelárai gandér du dálor selúin.

    読み:ドゥリーサン ケラーライ ガンデール ドゥ ダーロル セルーイン。

    dul-íþ-ankel-ár-aigandérdudálorselúin.
    下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>硬木<対格>下手下の国<対格>今の世

    「今の世、樵たちは硬木を下の国へ下ろしている。」

    年代記の記事の書きぶり。昔(統一の前)と比べて、今の王の世のならわしを述べている。直説法には時制がないので、selúin が時代を区切る働きをする。gandér は重性なので、主格と対格が同じ形になる。

    faronéran faronárai nél fáronul du orén.

    読み:ファロネーラン ファロナーライ ネール ファーロヌル ドゥ オレーン。

    faron-ér-anfaron-ár-ainélfáron-ulduorén.
    荷-<〜でする>-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>七荷-<〜たちを>下手縁<対格>

    「運び人たちは荷を七つ担いで縁へ下りる。」

    崖道の荷運びを言う文。働き手は数えてもよいが、ここで数えているのは荷のほう。fáron は重性なので、複数対格は -ul で、主格と同じ形になる。

    dúlan nél fáronul du orén.

    読み:ドゥーラン ネール ファーロヌル ドゥ オレーン。

    dúl-annélfáron-ulduorén.
    下る-<彼らが>七荷-<〜たちが>下手縁<対格>

    「七つの荷が縁へ下りていく。」

    nél「七」の後ろの名詞は複数になる。fáron「荷」は重性なので、複数主格は -ul。主語が複数なので、動詞は3人称複数の -an をとる。du+対格で「下手へ」の意味になり、重性の orén は主格と対格が同じ形。

    gélan faronárai du orén dáu fréimau sórel.

    読み:ゲーラン ファロナーライ ドゥ オレーン ダウ フレーマウ ソーレル。

    gél-anfaronár-aiduoréndáufréim-ausórel.
    行く-<彼らが>運び人-<〜たちが>下手縁<対格>二度回-<双数>今日

    「運び人たちは今日、縁へ二度下りる。」

    崖道の仕事ぶりを述べる日常の文。回数は、数詞と fréim の対格で、動詞を修飾する副詞のように言う(道のりの対格と同じ使い方)。dáu の後ろなので双数の fréimau になる。fréim は軽性の子音語幹として変化する。

    dúlan dulfáronul bróusul du orén sórel.

    読み:ドゥーラン ドゥルファーロヌル ブロースル ドゥ オレーン ソーレル。

    dúl-andulfáron-ulbróus-ulduorénsórel.
    下る-<彼らが>下ろし荷-<〜たちが>多い-<〜たちが>下手縁<対格>今日

    「今日は多くの下ろし荷が縁へ下りていく。」

    乾風期の前半、降ろし場や崖道で聞かれる日常の文。形容詞 bróus は名詞の後ろに置き、名詞の性・数・格に一致する。dulfáron は重性なので、形容詞も重性の複数主格 -ul をとる。動詞は複数の主語に一致して3人称複数 -an になる。

    fléira ausenár du tról orénos.

    読み:フレーラ アウセナール ドゥ トロール オレーノス。

    fléir-aau-sen-árdutrólorén-os.
    お出ましになる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>下手麓<対格>縁-<属格>

    「目付殿は縁の麓へお出ましになる。」

    tról orénos「縁の麓」は、崖の下、縁の市の立つあたりを指す。du+対格で「下手へ」。fléir- は「行く」の尊敬の補充形。

    dúlan faronárai du múndo orénos.

    読み:ドゥーラン ファロナーライ ドゥ ムンド オレーノス。

    dúl-anfaronár-aidumúndoorén-os.
    下る-<彼らが>運び人-<〜たちが>下手出口<対格>縁-<属格>

    「運び人たちは縁の口へ下りていく。」

    múndo orénos「縁の口」は、崖道が崖の麓に開く下の口を指す。縁の市はここに立つ。du+対格で「下手へ」。属格の orénos は名詞の後ろに置く。

    snéimim du autról aldáres áurenes.

    読み:スネーミン ドゥ アウトロール アルダーレス アウレネス。

    snéim-imduau-trólaldár-esáur-en-es.
    身をかがめる-<私が>下手<お〜になる・御〜>-足<対格>座-<属格>昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格>

    「高き座の御足もとへ、身をかがめ奉ります。」

    宮廷で王の前に出るときの儀礼の言い方。du+対格で「下手へ」を表し、相手より低いほうへ身を下げることを言葉にしている。目上の人の体の部分なので au- をつける。分詞 áurenes は軽性の aldáres に一致する。

    dúlimor du tról orénos.

    読み:ドゥーリモル ドゥ トロール オレーノス。

    dúl-imordutrólorén-os.
    下る-<我々が>下手麓<対格>縁-<属格>

    「我々は縁の麓へ下りる。」

    崖道を下りるときの言い方。tról は崖や山の麓のほか、立っている木や柱など高いものの根もとにも使う。du+対格で「下手へ」。tról は重性なので、対格は主格と同じ形になる。

    mé leimésa kréinul du dálor.

    読み:メー レイメーサ クレーヌル ドゥ ダーロル。

    méleim-és-akréin-uldudálor.
    <禁止・願いの打ち消し>置く-<〜すべし>-<(軽いものが)>遺骨-<〜たちを>下手下の国<対格>

    「遺骨を下の国へ置かぬこと。」

    葬送の作法を記した書きものの一句。当為法 -és- は mé で否定し、主語を言わないので一般の人が主語になって軽性の -a をとる。強勢は -és- に移る(léim- → leimésa)。遺骨を谷底や崖の下に埋めることは禁じられている。

    léima faronár klóno du ausenárei.

    読み:レーマ ファロナール クローノ ドゥ アウセナーレイ。

    léim-afaronárklónoduau-sen-ár-ei.
    置く-<(軽いものが)>運び人<主格>膝<対格>下手<お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>-<与格>

    「運び人は目付殿の下手で膝をつく。」

    目上の人の前で頭を低くする作法の描写。「膝をつく」は léim-「置く」+膝の対格 klóno で言う。klóno は重性o語幹なので、対格は主格と同じ形。du+与格「〜の下手で」は、相手より低い位置に身を置くことを表す。目付は役職名に au- をつけて高める。

    dúlo ráun dúlen du dálor anlúin.

    読み:ドゥーロ ラウン ドゥーレン ドゥ ダーロル アンルーイン。

    dúl-oráundúl-endudáloranlúin.
    下る-<(重いものが)>水の落ちた流れ<主格>下る-<〜した・〜された>下手下の国<対格>昔

    「昔、水の落ちた流れが下の国へと下りていった。」

    約千二百年前の冷害で崖を下りた人々(干潟でいう縁の民)を、年代記や語りで遠回しに言う書き方。ráun dúlen は決まった言い回しで、分詞は規則どおり語根に -en をつけた形。ráun は重性なので、動詞も重性の -o で一致する。人を直接言わずに重性の名詞で言うところに、恥と悲しみがこもる。

    duliþésa gráun du augráun aldáres áurenes.

    読み:ドゥリセーサ グラウン ドゥ アウグラウン アルダーレス アウレネス。

    dul-iþ-és-agráunduau-gráunaldár-esáur-en-es.
    下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>頭部<対格>下手<お〜になる・御〜>-頭部<対格>座-<属格>昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格>

    「頭は、高き座の御頭より下へ下げるべし。」

    宮廷の礼法書にある決まりの文。当為法で主語を言わないので、「人は〜すべし」という一般の人が主語になり、軽性の形をとる。「du+対格」は「〜の下手へ」で、ここでは「〜より低く」の意味になる。目上の人の頭には au- をつけて augráun と言うが、名詞の性は重性のままなので、対格に語尾はつかない。

    faronéran faronárai fáronul du orén.

    読み:ファロネーラン ファロナーライ ファーロヌル ドゥ オレーン。

    faronér-anfaronár-aifáron-ulduorén.
    担ぐ-<彼らが>運び人-<〜たちが>荷-<〜たちを>下手縁<対格>

    「運び人たちが荷を担いで縁へ下っていく。」

    乾風期の崖道のありふれた光景を言う文。faronár は軽性の子音語幹なので、複数主格は -ai。fáron「荷」は重性なので、複数対格は -ul。du+対格で下手(南)への方向を表す。縁の orén は重性なので、主格と対格が同じ形になる。

    plúin hoinéles? du álmarei sé.

    読み:プルーイン ホイネーレス?ドゥ アルマレイ セー。

    plúinhoin-él-es?duálmar-eisé.
    いつ帰る-<〜だろう>-<あなたが>下手ひと月-<与格>この<軽性>

    「「いつ帰るつもりだ。」「この月が明けたら。」」

    二人の発話。未来の予定は推量法で尋ねる。答えは動詞を省いた前置詞句だけで言う。時間は川の流れとみるので、du+与格「〜の下手で」は「〜の後に」の意味になる。du álmarei sé は「この月の後に」、つまり翌月のこと。

    tóro fáron du dáu rúsilaun.

    読み:トーロ ファーロン ドゥ ダウ ルーシラウン。

    tór-ofárondudáurúsil-aun.
    来る-<(重いものが)>荷<主格>下手二赤月の巡り-<双数の〜の・〜に>

    「「荷は赤月ふた巡りのあとに上がってくる。」」

    崖道の商人や運び人が使う日数の言い方。干潟との取引のために、赤月の一巡り(約七日半)を単位にして日を数える。崖道の言葉では双数が衰えているので、dáu の後ろでも双数ではなく複数与格 -ail を使っている。都の言葉なら du dáu rúsilaun になる。くだけた発音では tóro は tór になる。

    raumíre endríña glüníñoi, bruuméla du ílmo.

    読み:ラウミーレ エンドリーニャ グリュニーニョイ、ブルーメーラ ドゥ イルモ。

    raum-ír-eendríñaglüníñ-oi,bruum-él-aduílmo.
    歩く-<もし〜なら>-<(軽いものが)>子ども<主格>薄氷-<与格>落ちる-<〜だろう>-<(軽いものが)>下手水<対格>

    「「子どもが薄氷の上を歩けば、水に落ちるだろう。」」

    凍りの頃の事故を戒める文。条件の節は動詞を仮定法にするだけで作り、帰結の節は推量法で言う。水に落ちることは「下へ引かれる」恐ろしい出来事とされるので、du + 対格「下手へ」を使う。主語は人なので、動詞は軽性の形をとる。

    dúlo rúndo du véinor.

    読み:ドゥーロ ルンド ドゥ ヴェーノル。

    dúl-orúndoduvéinor.
    下る-<(重いものが)>走り水<主格>下手湖<対格>

    「走り水が湖へ流れ下る。」

    北の高みから下りてきた沢が、湖盆の湖に注ぐようすを言う。走り水 rúndo も湖 véinor も重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。du+対格で「下手へ」を表す。véinor は重性の子音語幹なので、対格にも語尾がつかない。

    lúin brúuma réina, ésa fléura du aursárail.

    読み:ルーイン ブルーマ レーナ、エーサ フレウラ ドゥ アウルサーライル。

    lúinbrúum-aréina,és-afléuraduaursár-ail.
    とき落ちる-<(軽いものが)>雨<主格>いる-<(軽いものが)>天の屋根<主格>下手祖先-<〜らに>

    「雨が降るときも、天の屋根は祖先の方々の下にある。」

    雨期に星が見えなくても不安に思わなくてよい、と説くときの決まった言い方。du+与格で「〜の下手に」。天の屋根が祖先の下にあるということは、祖先は屋根の上にいて、変わらず下界を聞いているということになる。

    an éndrail snélo, du aursárail fléura.

    読み:アン エンドライル スネーロ、ドゥ アウルサーライル フレウラ。

    anéndr-ailsnélo,duaursár-ailfléura.
    上手人-<〜らに>屋根<主格>下手祖先-<〜らに>天の屋根<主格>

    「人の上には家の屋根、祖先の下には天の屋根。」

    雨期の詩合わせでよく引かれる、動詞のない詩句。an と du、家の屋根(重性の snélo)と天の屋根(軽性の fléura)を対にしている。人は家の屋根の下に、祖先は天の屋根の上にいる、という縦の並びを詠んでいる。

    brúuma réina sórel, mé gél du orén!

    読み:ブルーマ レーナ ソーレル、メー ゲール ドゥ オレーン!

    brúum-aréinasórel,mégélduorén!
    落ちる-<(軽いものが)>雨<主格>今日<禁止・願いの打ち消し>行く<命令法><あなたが>下手縁<対格>

    「今日は雨だ。縁へは行くな。」

    雨で崖道が滑るときに、目下の者や家の者に言う注意。雨は上から来るものなので軽性で、動詞は -a をとる。禁止は mé+命令法で、命令法の2人称単数はむき出しの語幹 gél になる。

    lúin tóro duléumo, mé gélir du orén.

    読み:ルーイン トーロ ドゥレウモ、メー ゲーリル ドゥ オレーン。

    lúintór-oduléumo,mégél-irduorén.
    とき来る-<(重いものが)>下の風<主格><禁止・願いの打ち消し>行く-<皆で〜せよ>下手縁<対格>

    「下の風が吹いてきたら、皆、縁のほうへ行ってはならん。」

    年長者が子どもたちに言い聞かせるような禁止の文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。主節は「mé+命令法・2人称複数(-ir)」で、目下の者への下向きの話し方になる。du+対格で「下手へ」。下の風が来る方向へ行けば、湿った重い空気に引かれると考えられている。

    lúin áura órel, gélimor du orén.

    読み:ルーイン アウラ オーレル、ゲーリモル ドゥ オレーン。

    lúináur-aórel,gél-imorduorén.
    とき昇る-<(軽いものが)>日<主格>行く-<我々が>下手縁<対格>

    「日が昇ったら、縁へ下りていこう。」

    旅立ちの段取りを言う日常の文。lúin「〜とき」の節は主節の前に置く。órel は天体なので軽性で、動詞は -a で一致する。行き先が南の縁なので du+対格で言い、重性の orén は主格と同じ形になる。

    lúin glǘno véinor, tóran dráunai du véinor.

    読み:ルーイン グリューノ ヴェーノル、トーラン ドラウナイ ドゥ ヴェーノル。

    lúinglǘn-ovéinor,tór-andráun-aiduvéinor.
    とき凍る-<(重いものが)>湖<主格>来る-<彼らが>狼-<〜たちが>下手湖<対格>

    「湖が凍ると、狼たちが湖へ下りてくる。」

    湖畔の村で凍りの頃について言う文。lúin の節は主節の前に置く。dráun は軽性の子音語幹で、複数主格は dráunai。du+対格で「下手へ」。véinor は重性なので、主格と対格が同じ形になる。

    mé gélir du véinor, ésa gúrnal téndoi.

    読み:メー ゲーリル ドゥ ヴェーノル、エーサ グルナル テンドイ。

    mégél-irduvéinor,és-agúrnalténd-oi.
    <禁止・願いの打ち消し>行く-<皆で〜せよ>下手湖<対格>いる-<(軽いものが)>熊<主格>あそこ-<与格>

    「「湖へ下りていくな。あそこには熊がいる。」」

    森の村の年長者が若者たちに言う注意。禁止は「mé+命令法」で言い、相手が複数なので命令法の -ir を使う。後ろの節は存在文で、主語の gúrnal が軽性・単数なので ésa になる。

    faronéran faronárai árnelan só du orén.

    読み:ファロネーラン ファロナーライ アルネラン ソー ドゥ オレーン。

    faron-ér-anfaron-ár-aiárnel-ansóduorén.
    荷-<〜でする>-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>木-<対格>この<重性>下手縁<対格>

    「運び人たちがこの材木を縁へ担いでいく。」

    faronér-「担ぐ」は fáron「荷」に、名詞から動詞を作る -ér- をつけた語。faronár「運び人」は同じ語に -ár「〜する人」をつけた語。伐られた木なので、名詞は軽性の対格 árnelan のまま、指示詞は重性の só で一致させる。名詞の語尾と一致の性が食い違うのは、伐った木の決まった扱い方。

    dúlo búl árneles du dálor.

    読み:ドゥーロ ブール アルネレス ドゥ ダーロル。

    dúl-obúlárnel-esdudálor.
    下る-<(重いものが)>根<主格>木-<属格>下手下の国<対格>

    「木の根は下の国へ向かって下りていく。」

    búl は重性の名詞なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。複数にすると母音交替で bǘl になる。根は下へ、梢は上へ伸びるという世界観を述べた文で、森の巫が木を語るときによく出る言い方。

    du pó géles? gélim du orén.

    読み:ドゥ ポー ゲーレス?ゲーリン ドゥ オレーン。

    dupógél-es?gél-imduorén.
    下手何<対格>行く-<あなたが>行く-<私が>下手縁<対格>

    「「下手のどこへ行く?」「縁へ行く。」」

    二人の発話。高原語には方向を決めない「どこへ」がないので、du pó「下手のどこへ」と前置詞句ごと文頭に出して尋ねる。行き先は前置詞+対格で表す。2人称を使っているので、同輩か目下の相手への問い。

    du pó ráumes?

    読み:ドゥ ポー ラウメス?

    dupóráum-es?
    下手何<対格>歩く-<あなたが>

    「下手のどこへ歩いていくのか。」

    方向を決めない「どこへ」はないので、du pó「下手の何へ」を前置詞句ごと文頭に出す。2人称を使っているので、下向きか並びのくだけた問いになる。目上の人には推量法と役職名を使う。

    lúin tóro nébro, ráuman faronárai du orén.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ラウマン ファロナーライ ドゥ オレーン。

    lúintór-onébro,ráum-anfaron-ár-aiduorén.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>歩く-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下手縁<対格>

    「霧が来ると、運び人たちは縁のほうへ歩いていく。」

    lúin の節を主節の前に置いている。霧 nébro は重性o語幹なので、動詞は -o をとる。行き先は du+対格「下手へ」で言う。高原語の移動の言い方では、上るのか下るのかをかならず言い分ける。

    ráumau lisár si senár du orén.

    読み:ラウマウ リサール シ セナール ドゥ オレーン。

    ráum-aulis-ársisen-árduorén.
    旅をする-<双数>書く-<〜する人・主格>と見る-<〜する人・主格>下手縁<対格>

    「書記と目付は、縁へ旅をする。」

    単数の名詞二つを si で並べているので、動詞は双数の -au になる。双数の動詞は人称も性も区別しない。都から縁の市まで、何日もかけて下っていく旅を言う。

    léimsan aursárai sárvo ré mé duliþésa fáron du dálor.

    読み:レーンサン アウルサーライ サルヴォ レー メー ドゥリセーサ ファーロン ドゥ ダーロル。

    léims-anaursár-aisárvorémédul-iþ-és-afárondudálor.
    据える<〜し終えた>-<彼らが>祖先-<〜たちが>禁忌<対格><〜と(節)><禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>下手下の国<対格>

    「祖先たちは、下の国へ荷を落としてはならぬという禁忌を定めた。」

    ré の後ろの節は当為法を保ち、mé で否定している。主語を言わない当為法は「人は〜すべし」の意味で、軽性の -a をとる。強勢は -és- に移る。崖から物を落としてはいけない、という禁忌のいわれを語る文。

    élþa elþá du aldárei.

    読み:エルサ エルサー ドゥ アルダーレイ。

    élþ-aelþádualdár-ei.
    燃える-<(軽いものが)>火<主格>下手座-<与格>

    「上座の手前で火が燃えている。」

    家の中の日常の文。elþá「火」は élþ- に -á「〜するもの(軽)」がついた語で、軽性なので動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。炉の北側(上手)に上座があるので、炉の火は上座から見て「下手」にあり、du+与格で言う。時制がないので「燃えている」とも「燃えた」とも訳せる。

    ké élþa elþá du aldárei? élþa.

    読み:ケー エルサ エルサー ドゥ アルダーレイ?エルサ。

    kéélþ-aelþádualdár-ei?élþ-a.
    <〜か>灯る-<(軽いものが)>火<主格>下手座-<与格>灯る-<(軽いものが)>

    「「上座の手前の火は灯っているか?」「灯っている。」」

    二人のやりとり。はい・いいえで答える問いは文頭の ké で作る。「はい」にあたる語はないので、答えでは動詞を繰り返す。動詞は主語の火に一致しているので、答える人の人称に変える必要はない。「いいえ」なら na élþa と言う。

    séira lisár senáran du aldárei.

    読み:セーラ リサール セナーラン ドゥ アルダーレイ。

    séir-alis-ársen-ár-andualdár-ei.
    待つ-<(軽いものが)>書く-<〜する人>見る-<〜する人>-<対格>下手座-<与格>

    「書記は上座の手前で目付を待つ。」

    日常の文。待つ相手は対格で示す。senár「目付」は軽性の子音語幹なので、対格は -an になる。du+与格で「〜の下手で」と言い、目上の座より低い位置で待っていることを表す。

    ké ráines ré dúlan faronárai du orén dórel?

    読み:ケー ライネス レー ドゥーラン ファロナーライ ドゥ オレーン ドーレル?

    kéráin-esrédúl-anfaronár-aiduoréndórel?
    <〜か>知る-<あなたが><〜と(節)>下る-<彼らが>運び人-<〜たちが>下手縁<対格>明日

    「運び人たちが明日縁へ下りることを、お前は知っているか。」

    知っている内容を ré の節で示す、日常の問い。ké は文のいちばん前に置く。ré の後ろの節も動詞で始まる。下向きか並びの相手に使う言い方。

    glóumim, na ráinim du pó gélim.

    読み:グローミン、ナ ライニン ドゥ ポー ゲーリン。

    glóum-im,naráin-imdupógél-im.
    惑う-<私が><〜ない>知る-<私が>下手何<対格>行く-<私が>

    「迷ってしまった、下手のどこへ行けばいいのか分からない。」

    道に迷ったときの言い方。「どこへ」は方向を決めて du pó のように言うしかない。

    þílim, gélim du orén dórel.

    読み:シーリン、ゲーリン ドゥ オレーン ドーレル。

    þíl-im,gél-imduoréndórel.
    了解する-<私が>行く-<私が>下手縁<対格>明日

    「了解した、明日縁へ下りていく。」

    同じ段どうしの頼みに応じる言い方。時制がないので、明日のことも直説法 gélim で言える。gél- は方向をもたない「行く」だが、du で「下手へ」の向きを示す。

    glóumo rúndo du dálor.

    読み:グローモ ルンド ドゥ ダーロル。

    glóum-orúndodudálor.
    濁る-<(重いものが)>走り水<主格>下手下の国<対格>

    「走り水は下の国へ向かって濁っていく。」

    水は下へ流れるほど濁って重くなる、という見方を表す古い言い方。水は重性なので、動詞は -o をとる。du+対格で「下手へ」。

    lúin grúuno duléumo, mé gélir du orén.

    読み:ルーイン グルーノ ドゥレウモ、メー ゲーリル ドゥ オレーン。

    lúingrúun-oduléumo,mégél-irduorén.
    ときうなる-<(重いものが)>下の風<主格><禁止・願いの打ち消し>行く-<皆で〜せよ>下手縁<対格>

    「下の風がうなるときは、皆、縁のほうへ行くな。」

    崖の上の番人や運び人の間での戒め。duléumo「下の風」は重性o語幹なので、動詞は重性の -o をとる。軽性の léuma「風」なら grúuna になる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。禁止は「mé+命令法・複数」。

    véilo ílmo du dálor.

    読み:ヴェーロ イルモ ドゥ ダーロル。

    véil-oílmodudálor.
    流れ去る-<(重いものが)>水<主格>下手下の国<対格>

    「水は下の国へ流れ去る。」

    古い言い回しで、物事の移ろいを言う諺。「流れ去る」の意味では自動詞として使い、主語の ílmo(重性)に合わせて3単・重性の -o をとる。日常の会話では、この意味はほとんど使わない。

    lúin áura órun ál, dúlimor du orén.

    読み:ルーイン アウラ オールン アール、ドゥーリモル ドゥ オレーン。

    lúináur-aórunál,dúl-imorduorén.
    とき昇る-<(軽いものが)>日の出<主格>明るい下る-<我々が>下手縁<対格>

    「明るい夜明けが来たら、我々は縁へ下りる。」

    夜明けの明るさを言う文。lúin で始まる時の節は主節の前に置き、節の中も動詞で始まる。崖道へ下りていく旅の段取りを言う、日常的な言い方。

    mé ráum du dún dréum!

    読み:メー ラウン ドゥ ドゥーン ドレウン!

    méráumdudúndréum!
    <禁止・願いの打ち消し>歩く<命令法><あなたが>下手丘<対格>暗い

    「暗い丘を下りていくな!」

    禁止は「mé+命令法」で言う。du+対格で「下手へ」。丘 dún は重性なので、対格も主格と同じ形になり、形容詞にも語尾がつかない。

    dúlo gandér káil du ílmo.

    読み:ドゥーロ ガンデール カイル ドゥ イルモ。

    dúl-ogandérkáilduílmo.
    下る-<(重いものが)>硬木<主格>乾いた下手水<対格>

    「乾かした硬木でも水の底へ沈む。」

    硬木の性質を言う、樵や森の司の言い方。káil は乾かし終えた材についても使う。du+対格で「下手へ」、つまり水の中へ沈むことを表す。硬木が「下へ行きたがる木」とされるのは、この性質のためである。

    dúla kéira du orén.

    読み:ドゥーラ ケーラ ドゥ オレーン。

    dúl-akéiraduorén.
    下る-<(軽いものが)>蜜蝋<主格>下手縁<対格>

    「蜜蝋が縁へ下りていく。」

    交易の品としての蜜蝋が、下ろし荷として崖道を下っていく様子を述べる文。この意味の kéira は、蝋燭の形になっていない材料の蝋を指す。du+対格で「下手へ」の意味になる。

    dulíþan faronárai kumbórul du orén.

    読み:ドゥリーサン ファロナーライ クンボールル ドゥ オレーン。

    dul-íþ-anfaron-ár-aikumbór-ulduorén.
    下る-<〜させる>-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>青銅器-<〜たちを>下手縁<対格>

    「運び人たちが青銅器を縁へ下ろしていく。」

    下ろし荷の品目としての kumbór。器の一つ一つを指すときは、重性の複数 kumbórul(主格・対格が同じ形)を使う。使役の -íþ- は、後ろに強勢をもつ接辞がないので、自分で強勢をとる。

    hóinim du bóral némes.

    読み:ホイニン ドゥ ボーラル ネーメス。

    hóin-imdubóralném-es.
    帰る-<私が>下手家<対格><私>-<属格>

    「(下手の)自分の家へ帰る。」

    日常の言い方。bóral は重性の子音語幹名詞で、石の土台と伐った材で建てるため重性になる。主格と対格が同じ形。高原語には方向を言わない「〜へ」がないので、家へ帰るときも、家が上手にあれば an、下手にあれば du を使って上下を言い分ける。

    dúlo trúndo gandéros du dálor.

    読み:ドゥーロ トルンド ガンデーロス ドゥ ダーロル。

    dúl-otrúndogandér-osdudálor
    下る-<(重いものが)>杭<主格>硬木-<属格>下手下の国<対格>

    「硬木の杭が下の国へ下りていく。」

    trúndo は重性o語幹の名詞。材料は属格で後ろに添えて trúndo gandéros「硬木の杭」と言う。硬木の杭が崖の下へ下りるのは、木が向かうべき場所へ帰ることだとされている。

    dúlo pelsó du orén.

    読み:ドゥーロ ペルソー ドゥ オレーン。

    dúl-opelsóduorén
    下る-<(重いものが)>樹脂<主格>下手縁<対格>

    「樹脂が縁へと下りていく。」

    乾風期に、下ろし荷として樹脂が崖の下へ運ばれることを言う文。樹脂は重性なので、動詞は -o をとる。du+対格で「下手へ」。orén も重性なので、対格は主格と同じ形になる。

    dúlo trúndo du dálor.

    読み:ドゥーロ トルンド ドゥ ダーロル。

    dúl-otrúndodudálor
    下る-<(重いものが)>杭<主格>下手下の国<対格>

    「杭が下の国へ下りていく。」

    杭は干潟の泥に打ちこまれるために、崖の下へ下ろされる。trúndo は重性o語幹なので、動詞は -o をとる。du+対格で「下手へ」。下の国 dálor も重性で、対格は主格と同じ形になる。

    gélim du kéndor.

    読み:ゲーリン ドゥ ケンドル。

    gél-imdukéndor.
    行く-<私が>下手市<対格>

    「(坂を下って)市へ行く。」

    湖都では市場が丘の下の湖のほとりにあるので、市へ行くときは du「下手へ」で言う。高原語には方向を決めない「〜へ」がない。kéndor は重性の子音語幹なので、対格は主格と同じ形になる。

    lúin dúlo gandér du dálor, drénimor du kéndor orénos.

    読み:ルーイン ドゥーロ ガンデール ドゥ ダーロル、ドレーニモル ドゥ ケンドル オレーノス。

    lúindúl-ogandérdudálor,drén-imordukéndororén-os.
    とき下る-<(重いものが)>硬木<主格>下手下の国<対格>参る-<我々が>下手縁の市<対格>縁-<属格>

    「硬木が下の国へ下りるころ、私どもは縁の市へ下って参ります。」

    崖道の商人が目上の人に、最初の下ろしのころに市へ出ることを告げる言い方。「行く」の謙譲の補充形 drén- を使う。縁の市は崖の麓にあるので、かならず du で言う。lúin の節は主節の前に置く。

    dúlan dulfáronul du orén.

    読み:ドゥーラン ドゥルファーロヌル ドゥ オレーン。

    dúl-andulfáron-ulduorén.
    下る-<彼らが>下ろし荷-<〜たちが>下手縁<対格>

    「下ろし荷が縁へ下りていく。」

    dulfáron は fáron「荷」と同じく重性の子音語幹で、複数主格は dulfáronul になる。3人称複数の動詞は性を区別しない。乾風期の前半、硬木・地金・紙などの下ろし荷が崖道を下りる。

    ái, dúla hóurna du orén! hálimor ráuvanan.

    読み:アイ、ドゥーラ ホールナ ドゥ オレーン!ハーリモル ラウヴァナン。

    ái,dúl-ahóurnaduorén!hál-imorráuvan-an.
    おや下る-<(軽いものが)>送りの煙<主格>下手縁<対格>呼ぶ-<我々が>森の巫-<対格>

    「おや、送りの煙が縁のほうへ下りていく!森の巫を呼ぼう。」

    風で煙が南(下)へ流れたときの驚きの声。これは不吉なこととされ、魂を上へ引き上げる詞を唱えてもらうために祭司を呼ぶ。du+対格で「下手へ」。

    gélim du orén sórelei.

    読み:ゲーリン ドゥ オレーン ソーレレイ。

    gél-imduorénsórel-ei.
    行く-<私が>下手縁<対格>今日-<与格>

    「今日、私は縁へ下りていく。」

    日常の会話。「今日」のようにその事柄が起こる日は、場所と同じく与格(-ei)で言う。時を表す語句は動詞の前に出さず、文の後ろに置く。du+対格で「下手へ」。縁は南(下手)にあるので、行き先は du で言う。

    dúlan faronárai du dúror.

    読み:ドゥーラン ファロナーライ ドゥ ドゥーロル。

    dúl-anfaronár-aidudúror.
    下る-<彼らが>運び人-<〜たちが>下手下手・南<対格>

    「運び人たちは南の縁へと下りていく。」

    dúror は重性の子音語幹で、主格と対格が同じ形になる。du+対格で「下手へ」。高原では南は低い土地なので、崖道を下る動きと南へ向かう動きが同じ言い方になる。

    dúlim du dúror.

    読み:ドゥーリン ドゥ ドゥーロル。

    dúl-imdudúror.
    下る-<私が>下手下座<対格>

    「私は下座へ下がります。」

    目上の人の前で、自分から下座に移るときの言い方。du+対格で「下手へ」を表す。dúror は重性なので、主格と対格が同じ形になる。炉の南側の低い座が下座。

    mé duliþésa ólmaran du dúror.

    読み:メー ドゥリセーサ オルマラン ドゥ ドゥーロル。

    médul-iþ-és-aólmar-andudúror.
    <禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>年長者-<対格>下手下座<対格>

    「年長者を下座へ下げてはならない。」

    作法の書に見られる当為法の文。当為法は mé で否定する。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の -a をとる。強勢は -és- に移る。

    dúlo gandér es méndales du dálor.

    読み:ドゥーロ ガンデール エス メンダレス ドゥ ダーロル。

    dúl-ogandéresméndal-esdudálor.
    下る-<(重いものが)>硬木<主格>から中の世界-<属格>下手下の国<対格>

    「「硬木は中の世界を離れ、下の国へと下りていく。」」

    最初の下ろしの作法を語る文。硬木が下の国の杭になることを、木の「成就」とみる考え方を映している。

    ésa dalorár sal þrénuls, na ésa du þrénuls.

    読み:エーサ ダロラール サル スレーヌルス、ナ エーサ ドゥ スレーヌルス。

    és-adalorársalþrén-uls,naés-aduþrén-uls.
    いる-<(軽いものが)>下の国の者<主格>〜の枠の外に段-<〜らに><〜ない>いる-<(軽いものが)>下手段-<〜らに>

    「下の国の者は段の外にいるのであって、段の下にいるのではない。」

    宮廷の礼法家がよく口にする言い方。干潟の人は身分が低いのではなく、「階段に乗っていない」と考えられていることを、sal「〜の外に」と du「〜の下手に」を並べて対比している。þrén「段」は重性なので、複数与格は -uls になる。人を指す dalorár は軽性で受ける。

    tórim du ombrénei sé.

    読み:トーリン ドゥ オンブレーネイ セー。

    tór-imduombrén-eisé
    来る-<私が>下手十日-<与格>この<軽性>

    「この十日が過ぎてから来る。」

    市や役所で日取りを約束するときの言い方。時間を川の流れとみて、「du+与格」(〜の下手で)で「〜の後に」を表す。ombrén は軽性の子音語幹として変化する(与格 -ei)。指示詞 sé は格で形が変わらない。

    lúin ésa reinálva, na dúlan faronárai du dálor.

    読み:ルーイン エーサ レイナルヴァ、ナ ドゥーラン ファロナーライ ドゥ ダーロル。

    lúinés-areinálva,nadúl-anfaron-ár-aidudálor
    ときいる-<(軽いものが)>雨期<主格><〜ない>下る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下手下の国<対格>

    「雨期のあいだは、運び人は下の国へ下りない。」

    雨期には崖道が滑りやすく、閉じられることを述べた文。「雨期である間」は lúin+és- で言う。否定の na は動詞の直前に置く。faronár は「荷」に行為者の -ár をつけた語で、軽性なので複数主格は -ai になる。

    lúin tóra kailálva, dúlan faronárai du dálor.

    読み:ルーイン トーラ カイラルヴァ、ドゥーラン ファロナーライ ドゥ ダーロル。

    lúintór-akailálva,dúl-anfaron-ár-aidudálor
    とき来る-<(軽いものが)>乾風期<主格>下る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下手下の国<対格>

    「乾風期が来ると、運び人たちは下の国へ下りていく。」

    乾風期に崖道が開き、縁の市へ荷が運ばれることを述べた文。前の雨期の例文とちょうど裏返しの内容になる。kailálva は軽性なので、動詞は -a で一致する。dálor は重性なので、対格も主格と同じ形になる。

    lúin ésa kailálva, dulíþan kelárai gandér du dálor.

    読み:ルーイン エーサ カイラルヴァ、ドゥリーサン ケラーライ ガンデール ドゥ ダーロル。

    lúinés-akailálva,dul-íþ-ankel-ár-aigandérdudálor
    ときいる-<(軽いものが)>乾風期<主格>下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>硬木<対格>下手下の国<対格>

    「乾風期のあいだ、樵たちは硬木を下の国へ下ろす。」

    乾風期が硬木の伐り出しと吊り下ろしの季節であることを述べた文。gandér と dálor は重性なので、主格と対格が同じ形になる。使役の -íþ- は、後ろに強勢をもつ接辞がないので、自分で強勢をとる。

    lúin tóra þailúin, dúlan faronárai du orén.

    読み:ルーイン トーラ サイルーイン、ドゥーラン ファロナーライ ドゥ オレーン。

    lúintór-aþailúin,dúl-anfaronár-aiduorén.
    とき来る-<(軽いものが)>澄みの頃<主格>下る-<彼らが>運び人-<〜たちが>下手縁<対格>

    「澄みの頃が来ると、運び人たちが縁へ下りていく。」

    「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。þailúin は節の主語で、動詞は軽性の tóra で受ける。崖道がいちばんにぎわい、縁の市が盛りを迎える時期を言う、決まった言い回し。

    fláinim. faronéres fáron némes du orén.

    読み:フライニン。ファロネーレス ファーロン ネーメス ドゥ オレーン。

    fláinim.faron-ér-esfáronném-esduorén.
    助かる荷-<〜でする>-<あなたが>荷<対格><私>-<属格>下手縁<対格>

    「助かったよ。俺の荷を縁まで担いでくれて。」

    運び人どうしの礼。faronér- は名詞 fáron「荷」に -ér- をつけて作った動詞。持ち主は、名詞の後ろに属格 némes を置いて言う。時制がないので、faronéres は「担いだ」とも「担いでくれる」とも訳せる。

    grómim sórel. na gélim du orén.

    読み:グローミン ソーレル。ナ ゲーリン ドゥ オレーン。

    grómimsórel.nagél-imduorén.
    体が重い今日<〜ない>行く-<私が>下手縁<対格>

    「今日は体が重い。縁へは下りないよ。」

    疲れやだるさを言う、文字どおりの言い方。時を表す sórel は文の後ろに置く。du+対格で「下手へ」となり、gél-「行く」に方向を決めた前置詞を添えている。

    hóu! ké dúles du orén?

    読み:ホー!ケー ドゥーレス ドゥ オレーン?

    hóu!kédúl-esduorén?
    おーい<〜か>下る-<あなたが>下手縁<対格>

    「おーい!縁へ下りるのか?」

    谷の向こうや坂の下にいる相手に、大声で行き先を確かめる言い方。はい・いいえの問いは文のいちばん前に ké を置くが、間投詞 hóu はさらにその前に、独立した叫びとして置く。目上の人には使わない、くだけた呼びかけ。

    ké dúlimor du orén dórel? éun.

    読み:ケー ドゥーリモル ドゥ オレーン ドーレル?エウン。

    kédúl-imorduoréndórel?éun.
    <〜か>下る-<我々が>下手縁<対格>明日うん

    「「明日、縁へ下りるか?」「うん。」」

    運び人どうしのくだけたやりとり。時を表す語 dórel は文の後ろに置く。éun だけで答えるのは仲間内や目下への返事で、改まった場では動詞を繰り返すか、目上の人には dómim を使う。

    lúin tóro nébro, dúla lisá du dálor.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ドゥーラ リサー ドゥ ダーロル。

    lúintór-onébro,dúl-alisádudálor.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>下る-<(軽いものが)>字<主格>下手下の国<対格>

    「「霧が来ると、字は下の国へ流れ落ちる。」」

    霧の中で書いた字は墨がにじんで下へ流れる、という言い伝えを述べた文。霧期に大事な書きものを避ける理由になる。霧 nébro は重性なので動詞は -o、字 lisá は軽性なので -a をとる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。

    kórvino an kórvo, fáron du orén.

    読み:コルヴィノ アン コルヴォ、ファーロン ドゥ オレーン。

    kórvinoankórvo,fáronduorén.
    受け入れられるべきもの<主格>上手倉<対格>荷<主格>下手縁<対格>

    「受け入れられるべきものは倉の上手へ、荷は縁の下手へ。」

    詩の語順(動詞を落とし、主語を動詞の前に出す)。an+対格「上手へ」、du+対格「下手へ」。比喩的に「納まるべきもの」と「運ばれるべきもの」の対比。

    ombrélo fáron, duói dúlimor du dulándo.

    読み:オンブレーロ ファーロン、ドゥオイ ドゥーリモル ドゥ ドゥランド。

    ombrél-ofáron,duóidúl-imordudulándo.
    足りる-<(重いものが)>荷<主格>それから下る-<我々が>下手ドゥランド<対格>

    「荷はそろってる。じゃあ、ドゥランドまで下ろう。」

    運び人のくだけた言葉。duói「それから」は出来事の順序。dúl-imor「下る-1PL」は崖道の言葉で双数の代わりに複数で受ける形。くだけた話し方では語末の母音が落ち ombrélo → ombrél となる(語末が子音の dúl-imor は脱落しない)。

    krávan faronárai du orén.

    読み:クラーヴァン ファロナーライ ドゥ オレーン。

    kráv-anfaron-ár-aiduorén
    叫ぶ-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下手縁<対格>

    「「運び人たちが縁へ向けて叫ぶ。」」

    縁や降ろし場で、荷の動きを知らせる合図として叫ぶ描写。主語が複数名なので直説法複数 -an。faronár の複数は faronárai。du+対格は縁の市・崖下への方向を示す。

    hóinim du nórlo só.

    読み:ホイニン ドゥ ノルロ ソー。

    hóin-imdunórlosó.
    帰る-<私が>下手寝床<対格>この<重性>

    「私はこの寝床へ戻る。」

    日常動作。寝床は家の中でも地面にいちばん近い低い所なので、低い所への移動を表す du で取る。重性名詞の単数対格は主格と同形。

    géla vándar es snáuros só du orén.

    読み:ゲーラ ヴァンダル エス スナウロス ソー ドゥ オレーン。

    gél-avándaressnáur-ossóduorén.
    行く-<(軽いものが)>商人<主格>から町-<属格>この<重性>下手縁<対格>

    「商人はこの町を下って縁へ行く。」

    移動の動詞 gél- に、起点の es+属格、下向きの方向の du+対格を続ける。商人は人なので動詞の一致は軽性 -a。snáur の属格は重性 -os。du orén は「下手へ、縁へ」の定型句。

    mé vól ílmo du þúlno!

    読み:メー ヴォール イルモ ドゥ スルノ!

    mévólílmoduþúlno
    <禁止・願いの打ち消し>注ぐ<命令法><あなたが>水<対格>下手床<対格>

    「床へ水を注ぐな。」

    家屋や倉でよく使われる禁令。mé は命令法を打ち消す。vól は語根のみで2人称単数の命令法を表す。注ぎ向かう先は du+対格で「下手へ」を表し、重性o語幹 þúlno の対格単数は主格と同形 þúlno となる。

    mé trún du klivó, endríña!

    読み:メー トルーン ドゥ クリヴォー、エンドリーニャ!

    métrúnduklivó,endríña!
    <禁止・願いの打ち消し>転がる<命令法><あなたが>下手斜面<対格>子<主格>

    「斜面を転げ落ちるな、子ども!」

    子どもへの禁止。命令法の 2人称単数は語幹がむき出しになり trún となる。þréun- が一度つまずいて倒れるのに対し、trún- は何度も回転しながら下へ行く含みがある。縁や崖道のくだけた言葉では直説法 trúna の語末母音が落ちて trún ともなり、命令形と同形に見える。

    géla vróunda du orén.

    読み:ゲーラ ヴローンダ ドゥ オレーン。

    gél-avróundaduorén.
    行く-<(軽いものが)>人ごみ<主格>下手縁<対格>

    「人ごみが縁の方へ向かう。」

    人ごみそのものを移動する集合として述べる日常文。du+対格は方向「下手へ・縁へ」を示す。動詞は軽性の3人称単数語尾 -a をとる。

    brúna faronár trenó du orén

    読み:ブルーナ ファロナール トレノー ドゥ オレーン

    brún-afaron-ártrenóduorén
    背負う-<(軽いものが)>荷-<〜する人・主格>編み籠<対格>下手縁<対格>

    「運び人が編み籠を背負って縁へ下りていく。」

    作業場面の文。faronárは軽性なので動詞は3SG.LT。見出し形trenóを単数対格として使う。数詞を使うと複数形になるため、ここでは単数のまま。

    nanóirim du oráuran.

    読み:ナノイリン ドゥ オラウラン。

    nanóir-imduoráur-an.
    眠れない-<私が>下手夜明け-<対格>

    「私は夜明けまで眠れない(一晩醒めている)。」

    日常の独白。第一人称は語尾 -im で示し、主語代名詞は省略する。du に軽性子音語幹の対格 oráuran を受けた句を後続させ、「夜明けまで」という時間終点を表す。眠りに入れないまま朝を待つ状態を指す。

    na gélim du gólvo, salóur gélim du drúnor.

    読み:ナ ゲーリン ドゥ ゴルヴォ、サロール ゲーリン ドゥ ドルーノル。

    nagél-imdugólvosalóurgél-imdudrúnor
    <〜ない>行く-<私が>下手旧道<対格>しかし行く-<私が>下手崖道<対格>

    「旧道へは行かない、それではなく崖道へ行く。」

    場面:道案内・日常会話。salóurは後続の文の頭に立つ逆接。同一主語は動詞の人称語尾が示すので二度目に主語代名詞を添えない。duと組む重性名詞は主格と対格が同形だが、前置詞句として旧道.ACC・崖道.ACCに読む。

    lúin tóra oráur, gélan faronárai du orén.

    読み:ルーイン トーラ オラウル、ゲーラン ファロナーライ ドゥ オレーン。

    lúintór-aoráur,gél-anfaron-ár-aiduorén.
    とき来る-<(軽いものが)>夜明け<主格>行く-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下手縁<対格>

    「夜明けが来ると、運び人たちは縁へ下る。」

    運搬作業の場面。lúin 節は主節の前に置く。gélan は gél-「行く」+3複数 -an。faronárai は faron「荷」+ -ár「〜する人」+軽性複数主格 -ai。

    dúlo lourílmo du dálor.

    読み:ドゥーロ ロウリルモ ドゥ ダーロル。

    dúl-olourílmodudálor.
    下る-<(重いものが)>滝<主格>下手下の国<対格>

    「滝が下の国へ下りていく。」

    地図・川筋・書物的な語り。lourílmo を流れの一部としてとらえ、その流れが川筋に沿って下流へ向かう様子を表す。重性主語なので動詞語尾は -o。du+対格で「下手へ」。

    plúna houmár faronáran du orén.

    読み:プルーナ ホウマール ファロナーラン ドゥ オレーン。

    plún-ahoumárfaronár-anduorén.
    使いに出す-<(軽いものが)>家の主<主格>運び人-<対格>下手縁<対格>

    「家の主は運び人を縁へ使いに出す。」

    家庭・職場での日常の文。段の低い運び人を、所定の用向きに遣る言い方。やや直截だが、この範囲では普通に使える。

    wéro ílmo du tórvo.

    読み:ウェーロ イルモ ドゥ トルヴォ。

    wér-oílmodutórvo
    滴る-<(重いものが)>水<主格>下手梁<対格>

    「梁に水が滴る。」

    動詞 wér- は重性の主語 ílmo に一致して 3人称単数重性語尾 -o をとる。水が落ちていく着点は、方向の前置詞 du と重性 o語幹 tórvo の単数対格で示す。重性 o語幹では単数主格と対格が同形で、見出し形 tórvo のまま対格に使える。

    géla sílan du orén

    読み:ゲーラ シーラン ドゥ オレーン

    gél-asílanduorén
    行く-<(軽いものが)>シラン<主格>下手縁<対格>

    「シランは縁へ行く。」

    道順や予定を語る日常の発話。主語の固有名詞 sílan は主格で形を変えない。動詞 géla は軽性の3人称単数語尾。du orén は方向の前置詞 du と対格による「縁へ」。

    ké sórel, géles du meulvéinor?

    読み:ケー ソーレル、ゲーレス ドゥ メウルヴェーノル?

    késórel,gél-esdumeulvéinor?
    <〜か>今日行く-<あなたが>下手メウルヴェイノル<対格>

    「今日、メウルヴェイノルへ行くのか。」

    日常会話向けの疑問文。時節語 sórel を場面の枠に置いている。du と組む meulvéinor は目的地を表し、重性名詞の対格は無標の単独形になる。

    anórel, tóro fáron du meulvéinor.

    読み:アノーレル、トーロ ファーロン ドゥ メウルヴェーノル。

    anórel,tór-ofárondumeulvéinor.
    昨日来る-<(重いものが)>荷<主格>下手メウルヴェイノル<対格>

    「昨日、荷がメウルヴェイノルへ来た。」

    年代記や帳簿のような記録文。時節語 anórel を場面の枠に置いている。主語 fáron が重性なので、動詞は3人称単数・重性の語尾 -o を取る。

    lúin áurau sílarau, gélau némor dáun du krambóra.

    読み:ルーイン アウラウ シーララウ、ゲーラウ ネーモル ダウン ドゥ クランボーラ。

    lúináur-ausílar-au,gél-aunémordáundukrambóra.
    とき昇る-<双数>月-<双数>行く-<双数><我々>二人下手クランボーラ<対格>

    「二つの月が昇ると、我ら二人はクランボーラへ下っていく。」

    道筋や季節を記す書物的な文。lúin 節は読点で主節と区切る。双数の動詞 áurau・gélau は人称を表さないが、主節の némor が加わって話し手を含む二人であることがわかる。du + 対格で下手・南方向への動きを示す。krambóra は固有名詞として、対格でも語尾が立たない。

    na gélim du fleuróra.

    読み:ナ ゲーリン ドゥ フレウローラ。

    nagél-imdufleuróra.
    <〜ない>行く-<私が>下手フレウローラ<対格>

    「私はフレウローラへ下りない。」

    崩れた古い岩棚を指して、行き先を断るくだけた日常語。古地名 fleuróra は重性の固有名詞として扱い、du「下手へ」と組む対格は主格と同形。否定の na は直説法の動詞の前に置く。

    dúlo alfilrúndo du orén.

    読み:ドゥーロ アルフィルルンド ドゥ オレーン。

    dúl-oalfilrúndoduorén.
    下る-<(重いものが)>白糸川<主格>下手縁<対格>

    「白糸川は縁へ下る。」

    VSOの基本語順。河川名 alfilrúndo は地上の水なので重性o語幹で、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。du+対格で「下手へ/縁へ」。地誌や帳簿の定型のような地文。

    géla fleuréla du orén.

    読み:ゲーラ フレウレーラ ドゥ オレーン。

    gél-afleuréladuorén
    行く-<(軽いものが)>フレウレラ<主格>下手縁<対格>

    「フレウレラは縁へ行く。」

    日常の会話で使われる文。基本語順はVSO。fleurélaは軽性の人名なので、動詞は3人称単数・軽性の -a で受ける。du+対格で「下手へ」、orén は「縁」。

    du nebroþaló, na rímba vándar grúndo.

    読み:ドゥ ネブロサロー、ナ リンバ ヴァンダル グルンド。

    dunebroþaló,narímb-avándargrúndo.
    下手霧明け<対格><〜ない>数える-<(軽いものが)>商人<主格>掛け<対格>

    「霧明けまでは、商人は掛け勘定を数えない。」

    帳簿・市の記述で、霧明けを期限として、それまで掛け勘定を数えないことを言う文。du+対格は時間上の「〜まで」を表す。nebroþalóは重性名詞で、単数主格・対格は同形。主語のvándarは軽性なので動詞は3人称単数軽性の-aをとり、grúndoは重性名詞の単数対格で無標識。

    esós gélim du orén sórel.

    読み:エソース ゲーリン ドゥ オレーン ソーレル。

    esósgél-imduorénsórel
    そういうわけで行く-<私が>下手縁<対格>今日

    「そういうわけで、今日縁へ行く。」

    『なぜ縁へ行くのか』(es pós géles du orén?)と問われたとき、答えの文頭に置いて、行くという帰結を述べる例。下向き・並びの会話で使う。答語では問いに出た補語を省略できるが、ここでは行き先を残している。

    duláu du sirnóra!

    読み:ドゥラウ ドゥ シルノーラ!

    dul-áudusirnóra
    下る-<命令法・双数>下手Sirnóra<対格>

    「二人でシルノーラへ降りていけ!」

    旧道を降りるときの日常的な指示。命令法双数 -áu は二人に対して使う。前置詞 du が対格を支配し、旧地名 sirnóra は格標識を持たないまま対格的に解釈される。

    troltáulin pǘlmo, ráumim du orén.

    読み:トロルタウリン ピュルモ、ラウミン ドゥ オレーン。

    troltául-inpǘlmo,ráum-imduorén.
    履く-<〜して・〜く>草鞋<対格>歩く-<私が>下手縁<対格>

    「草鞋を履いて、私は縁の方へ歩いていく。」

    日常の場面。副動詞接尾辞 -in により、同一主語のまま「草鞋を履いている」状態を背景として示す。主節は ráumim「私は歩く」。du は「下手へ」を表す前置詞で、orén「縁」は重性名詞のため単数の対格は主格と同形となる。

    géla berunvríma sé du orén.

    読み:ゲーラ ベルンヴリーマ セー ドゥ オレーン。

    gél-aberunvrímaséduorén.
    行く-<(軽いものが)>道連れ<主格>この<軽性>下手縁<対格>

    「この道連れは縁へ行く。」

    道行き・縁往来での日常的な言い方。名詞句は名詞+指示詞の順。berunvríma は行程を共有する人を含む語として軽性扱いとなり、動詞は軽性の3人称単数語尾 -a をとる。

    géla berunvríma du orén.

    読み:ゲーラ ベルンヴリーマ ドゥ オレーン。

    gél-aberunvrímaduorén.
    行く-<(軽いものが)>旅の伴<主格>下手縁<対格>

    「旅の伴は縁へ行く。」

    普通文。軽性単数の名詞を主語に取る。

    dúlan faronárai bérun du dálor.

    読み:ドゥーラン ファロナーライ ベールン ドゥ ダーロル。

    dúl-anfaron-ár-aibérundudálor
    下る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>道のり<対格>下手下の国<対格>

    「運び人たちは道のり(道筋)を下りて下の国へ行く。」

    移動動詞と組む道のり用法。重性名詞 bérun は対格接語を持たず、主格と同形のまま道のりを表す。複数主語 faronárai は軽性行為者名詞 faronár の複数主格。

    féla faronár fúnel du orén.

    読み:フェーラ ファロナール フーネル ドゥ オレーン。

    fél-afaronárfúnelduorén
    引く-<(軽いものが)>運び人<主格>綱<対格>下手縁<対格>

    「運び人が綱を縁の方へ引く。」

    崖道の日常。運び人 faronár は人を指すので軽性、動詞は 3 人称単数・軽性 -a。fúnel も orén も重性で、単数対格は主格と同じ。du orén は「下手へ、縁へ」の方向句。fél- は本来の krémb- に代えて、縁・崖道でよく使う。

    áumel, gélim du orén.

    読み:アウメル、ゲーリン ドゥ オレーン。

    áumel,gél-imduorén.
    朝行く-<私が>下手縁<対格>

    「朝、私は縁へ行く。」

    場面枠に置かれた独立の時間名詞。動詞は未完了の直説法で、主語の代名詞は省略。du は「下手へ」を表し、orén は重性単数で対格が主格と同型。

    ké ráuman faronárai drúnoroi es orénos du kéndor?

    読み:ケー ラウマン ファロナーライ ドルーノロイ エス オレーノス ドゥ ケンドル?

    kéráum-anfaron-ár-aidrúnor-oiesorén-osdukéndor?
    <〜か>歩く-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>縁の石段道-<与格>から縁-<属格>下手市<対格>

    「運び人たちは、縁の石段道を、縁から市まで歩いているのか。」

    日常の問いかけ。faronárai は faronár の複数。drúnor は重性子音語幹として与格単数 drúnoroi を取る。 ráum-「歩く」は道・経路を裸の与格で取るため un は用いない。 es orénos du kéndor が両端を指定することで、縁の石段道をひと続きの区間として指す用法を示す。

  2. 〜の後に

    与格と組んで時間の後を表す。du nébroi「霧の後に」。

    hóinimor du duliþímei.

    読み:ホイニモル ドゥ ドゥリシーメイ。

    hóin-imordudul-iþ-ím-ei.
    帰る-<我々が>〜の後に下る-<〜させる>-<〜の技・〜さ>-<与格>

    「下ろしが済んだら帰ろう。」

    du+与格で「〜の下手で」、つまり時間の「〜の後に」を表す。時間を源から流れ下る川と見るので、遅いほうが下手になる。動詞に時制がないので、文脈によって「帰る」「帰った」「帰ろう」のどれにも訳せる。

    mé vandésa fáron du lisímei sáindares.

    読み:メー ヴァンデーサ ファーロン ドゥ リシーメイ サインダレス。

    mévand-és-afárondulis-ím-eisáindar-es.
    <禁止・願いの打ち消し>量る-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>〜の後に書く-<〜の技・〜さ>-<与格>証文-<属格>

    「証文を書いたあとに荷を量らぬこと。」

    市の決まりを述べる当為法の文。荷は先に秤で量り、そのあとで証文に書く、という順序を定めている。主語を言わないので「人は〜すべし」という一般の主語になり、軽性の形をとる。du+与格は、an+与格「〜の前に」と対になって使われる。

  3. 〜より劣って

    与格と組んだ比較。改まった言い方では、軽い性質を du で比べて重さを遠回しに言う。

    éso gandér fláin du kelárei.

    読み:エーソ ガンデール フライン ドゥ ケラーレイ。

    és-ogandérfláindukel-ár-ei.
    いる-<(重いものが)>硬木<主格>軽い〜より劣って伐る-<〜する人>-<与格>

    「硬木は軽さでは樵に及ばない(樵より重い)。」

    du+与格で、性質の程度が劣ることを表す。下向きの性質を an で比べると皮肉に響くので、改まった話し方では反対の軽い性質を du で比べて言い換える。意味は gróm an kelárei と同じになる。

    ésa lisím némes séuril du lisímei aulisáres.

    読み:エーサ リシーン ネーメス セウリル ドゥ リシーメイ アウリサーレス。

    és-alis-ímném-esséurildulis-ím-eiau-lis-ár-es.
    いる-<(軽いものが)>書く-<〜の技・〜さ><私>-<属格>美しい〜より劣って書く-<〜の技・〜さ>-<与格><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<属格>

    「私の書法は、書記の方の書法の美しさに及びません。」

    自分の書をへりくだって言う文。du+与格で、美しさの程度が劣ることを表す。比べる相手の書法の持ち主は、au- をつけた属格 aulisáres で高める。

解説

「下手(南)」の方向を表す前置詞。対格なら「下手へ」、与格なら「下手で」。時間では与格と組んで「〜の後に」、比較では「〜より(その性質が)劣って」を表す。南の縁と干潟の方向を指すので、下の国へ向かう語でもある。

そのほかの用例

duþélim sélvanan, an fóndaros ráimaros dúlenan dáumbar téir lóurul, dúlenan fáir þrénul.

読み:ドゥセーリン セルヴァナン、アン フォンダロス ライマロス ドゥーレナン ダウンバル テール ロールル、ドゥーレナン ファイル スレーヌル。

du-þél-imsélvan-an,anfóndar-osráimar-osdúl-en-andáumbartéirlóur-ul,dúl-en-anfáirþrén-ul
<〜させていただく>-名乗る-<私が>セルヴァン-<対格>上手源-<属格>ライマル-<属格>下る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>二十三瀬-<〜たちを>下る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>四段-<〜たちを>

「ライマルの源から二十三瀬下りた、四段下りの者、セルヴァンと名乗らせていただきます。」

改まった場での名乗り。固有名も小文字で書く。分詞 dúlenan は二度とも、名前の sélvanan(軽性・単数・対格)に一致している。lóurul と þrénul は道のりの対格。瀬と段は語が違うので、どちらが世代でどちらが身分かがすぐにわかる。

dulísim sáindaran aulisárei.

読み:ドゥリーシン サインダラン アウリサーレイ。

du-lís-imsáindar-anau-lis-ár-ei.
<〜させていただく>-書く-<私が>証文-<対格><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<与格>

「書記の方に、証文を書いて差し上げます。」

謙譲の動詞(自分を下げる)と、高めた与格(相手を上げる)を一つの文に並べている。「私が・目上の人に」という上下の関係が、文法にすべて表れる。

dulísim duném sáindaran aulisárei.

読み:ドゥリーシン ドゥネーン サインダラン アウリサーレイ。

du-lís-imdunémsáindar-anau-lis-ár-ei.
<〜させていただく>-書く-<私が>手前証文-<対格><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<与格>

「書記の方への証文は、手前が書かせていただきます。」

主語の代名詞は動詞の語尾でわかるのでふつうは言わない。それをわざわざ duném と言うことで、「ほかでもない手前が」という強調になる。謙譲の動詞 dulísim とともに使い、目上の人の前で役目を引き受けるときの改まった言い方。

dulísim sáindaran aurélei.

読み:ドゥリーシン サインダラン アウレーレイ。

du-lís-imsáindar-anaurél-ei.
<〜させていただく>-書く-<私が>証文-<対格>あの方-<与格>

「あの方に証文を書いて差し上げます。」

自分の動作には謙譲の du- をつけ、受け手の aurél は与格 -ei にする。こうして、上下の関係が一つの文の中にそろって表れる。aurél は él と同じく②型の語尾で変化する(aurélan・auréles・aurélei)。高め名詞なので、数詞や双数はつけない。

duméirim sáko snír autorárei.

読み:ドゥメーリン サーコ スニール アウトラーレイ。

du-méir-imsákosnírau-torár-ei.
<〜させていただく>-与える-<私が>塩<対格>わずかな<お〜になる・御〜>-客-<与格>

「お客様に、わずかばかりの塩を差し上げます。」

客をもてなすとき、小皿の塩を出しながら言う決まった言い方。謙譲の du- は m- の前でそのままの形になる。sáko は干潟から借りた重性名詞なので、対格は主格と同じ形で、形容詞 snír にも語尾がつかない。最高の礼である塩をわざと「わずかな」と言うのは、差し出す物を控えめに言う謙遜である。

dulísim sáindaran anlóurei éulei.

読み:ドゥリーシン サインダラン アンローレイ エウレイ。

du-lís-imsáindar-ananlóur-eiéul-ei.
<〜させていただく>-書く-<私が>証文-<対格>親-<与格>別の流れの-<軽性・与格>

「義理の親に、証文を書いて差し上げます。」

婚姻の取り決めなどで使う改まった言い方。anlóur éul「別の流れの瀬上」は配偶者の親を指す。謙譲の du- で自分の行いを低めている。形容詞 éul は、修飾する anlóurei に合わせて軽性・与格の -ei をとる。

dutáulim sáindaran es aulisáres.

読み:ドゥタウリン サインダラン エス アウリサーレス。

du-tául-imsáindar-anesau-lis-ár-es.
<〜させていただく>-受け取る-<私が>証文-<対格>から<お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<属格>

「書記の方から証文を頂戴いたします。」

目上の人から物を受け取るときの改まった言い方。自分の行いには謙譲の du- をつけ、出どころの書記には尊敬の au- をつけて、上下の関係を両方とも示している。受け取る相手は es+属格で表す。

dubrólim dáu viráu.

読み:ドゥブローリン ダウ ヴィラウ。

du-bról-imdáuvir-áu.
<〜させていただく>-詩を作る-<私が>二言葉-<双数>

「句を二つ、作らせていただきます。」

詩合わせや詩の挨拶で、目下の者が自分の詩をへりくだって差し出すときの前置き。謙譲の du- は b- の前ではそのままつく。dáu の後ろなので、virá は双数になる。

drenéim an kórvo dórel, ré duliséndim sáindaran.

読み:ドレネーン アン コルヴォ ドーレル、レー ドゥリセンディン サインダラン。

dren-é-imankórvodórel,rédu-lis-énd-imsáindar-an.
伺う-<〜だろう>-<私が>上手倉<対格>明日<〜と(節)><〜させていただく>-書く-<〜しますように>-<私が>証文-<対格>

「明日、証文を書かせていただくため、倉へ伺うつもりでございます。」

改まった手紙で、訪ねることを予告する言い方。推量法の -él- は1人称単数の語尾の前で l が落ちて -é- になり、drenéim「伺うつもりでございます」となる。目的は「ré+願望法」で表し、謙譲の du- も添える。

dufaronérim aufáron aulisáres an dún.

読み:ドゥファロネーリン アウファーロン アウリサーレス アン ドゥーン。

du-faronér-imau-fáronau-lis-ár-esandún.
<〜させていただく>-運ぶ-<私が><お〜になる・御〜>-荷<対格><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<属格>上手丘<対格>

「「書記の方のお荷物を、丘の上まで運ばせていただきます。」」

自分の行いを謙譲の接頭辞 du- で低め、荷の持ち主を au- のついた属格 aulisáres で高めている。f- の前の du- は形が変わらない。an+対格は「上手へ」で、湖都の坂道では丘の上へ向かうことを表す。

duséiran lisárai aldáran áurenan.

読み:ドゥセーラン リサーライ アルダーラン アウレナン。

du-séir-anlis-ár-aialdár-anáur-en-an.
<〜させていただく>-控えて待つ-<彼らが>書く-<〜する人>-<〜たちが>座-<対格>昇る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>

「書記たちは高き座(のお指図)を控えて待つ。」

宮廷の記録の文体。王に仕える者の行いを、王に対して低めて謙譲の duséir- で書く。aldár áuren「高き座」は対格になり、分詞 áuren も軽性・対格の -an で一致する。

duséirim aulisáran.

読み:ドゥセーリン アウリサーラン。

du-séir-imau-lis-ár-an.
<〜させていただく>-控えて待つ-<私が><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<対格>

「書記の方を、控えてお待ちしております。」

上向きの改まった言い方。謙譲の du- をつけた duséir- で自分の行いを低め、待つ相手の役職名には尊敬の au- をつけて高める。「私が・目上の人を」という上下の関係が、動詞と名詞の両方に表れる。

na duráinim, ausenár.

読み:ナ ドゥライニン、アウセナール。

nadu-ráin-im,au-sen-ár.
<〜ない><〜させていただく>-知る-<私が><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>

「存じません、目付殿。」

目上の人に問われて答える謙譲の言い方。du- は子音の前なので du のまま。「いいえ」にあたる語はないので、問いの動詞を自分の人称にして na で否定する。呼びかけは役職名を読点で区切り、文末に添える。

dunóurim ré fleiréla ausenár du orén.

読み:ドゥノーリン レー フレイレーラ アウセナール ドゥ オレーン。

du-nóur-imréfleir-él-aau-sen-árduorén.
<〜させていただく>-思う-<私が><〜と(節)>お出ましになる-<〜だろう>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>下手縁<対格>

「目付殿は縁へお出ましになるかと存じます。」

謙譲の du- で自分の考えを低め、目上の人の動きを推量法でやわらげて言う。

dunéulimor aldáran áurenan.

読み:ドゥネウリモル アルダーラン アウレナン。

du-néul-imoraldár-anáur-en-an.
<〜させていただく>-慕う-<我々が>座-<対格>昇る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>

「我らは高き座をお慕い申し上げる。」

改まった場での言い方。自分たちの行いなので謙譲の du- をつける。分詞 áuren は、目的語の aldár(軽性・単数・対格)に一致して -an をとる。

duþélim sélvanan, an fóndaros móros ráimaros dúlenan téir lóurul.

読み:ドゥセーリン セルヴァナン、アン フォンダロス モーロス ライマロス ドゥーレナン テール ロールル。

du-þél-imsélvan-an,anfóndar-osmór-osráimar-osdúl-en-antéirlóur-ul.
<〜させていただく>-名乗る-<私が>セルヴァン-<対格>上手源-<属格>偉大な-<重性・属格>ライマル-<属格>下る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>三瀬-<〜たちを>

「偉大なるライマルの源から三瀬下りた、セルヴァンと名乗らせていただきます。」

改まった場での名乗り。名詞句の中は「名詞–形容詞–属格」の順に並び、形容詞は重性の fóndar に合わせて属格 -os になる。mór を家や氏族に使うと、その勢いが大きいことを誇る言い方になる。目上の人自身を mór と言うことはしない。

dulísim sáindaran ívelan aulisárei.

読み:ドゥリーシン サインダラン イーヴェラン アウリサーレイ。

du-lís-imsáindar-anível-anau-lis-ár-ei.
<〜させていただく>-書く-<私が>証文-<対格>新しい-<軽性・対格><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<与格>

「書記の方に、新しい証文を書いて差し上げます。」

謙譲の du- と、高めた与格の aulisárei を一つの文に並べている。証文を書き直して新しくするときの、改まった言い方。

dupovérim aulisárei ré du pó fleiréla ausenár.

読み:ドゥポヴェーリン アウリサーレイ レー ドゥ ポー フレイレーラ アウセナール。

du-povér-imau-lis-ár-eirédupófleir-él-aau-sen-ár.
<〜させていただく>-問う-<私が><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<与格><〜と(節)>下手何<対格>お出ましになる-<〜だろう>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>

「書記の方にお尋ねいたします。目付殿は下手のどちらへお出ましになったのでしょうか。」

役所での改まった問い合わせ。謙譲の du- は子音 p の前ではそのままの形でつく。方向を決めない「どこへ」はないので、du pó「下手の何へ」と尋ねる。ré の節の中も推量法にして、遠回しな問いにしている。

duglénim ausenárei tambór só.

読み:ドゥグレーニン アウセナーレイ タンボール ソー。

du-glén-imau-sen-ár-eitambórsó.
<〜させていただく>-返礼する-<私が><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>-<与格>雑穀<対格>この<重性>

「目付殿に、お返しとしてこの雑穀を差し上げます。」

もてなしを受けたあとの改まった返礼の言葉。謙譲の du- で自分の行いを低め、相手には au- のついた与格を使って、上下の関係を文法に表している。tambór は重性なので、対格も主格と同じ形で、指示詞も重性の só になる。

dukúulim autorárei.

読み:ドゥクーリン アウトラーレイ。

du-kúul-imau-tor-ár-ei.
<〜させていただく>-煮出す-<私が><お〜になる・御〜>-来る-<〜する人>-<与格>

「お客様に、お茶を煮出して差し上げます。」

客をもてなすときの改まった言い方。謙譲の du- で自分の行いを低め、与格の受け手 torár「来る人」には au- をつけて高めている。煮出す物は場面でわかるので、言っていない。du- には強勢がないので、強勢は語根 kúul- に残る。

duténdim ín virán.

読み:ドゥテンディン イーン ヴィラーン。

du-ténd-imínvir-án
<〜させていただく>-句を編む-<私が>一言葉-<対格>

「一句、編ませていただきます。」

詩の挨拶や詩合わせで、目下の者が先に詠むときの前置き。ténd- を詩句に使うのは、「言葉を布のように整えて組む」という比喩による。謙譲の du- は、t- の前ではそのままの形でつく。ín「一」の後ろの名詞は単数になる。

lúin glóira aurilanár es dúnos, dulísimor plánan.

読み:ルーイン グロイラ アウリラナール エス ドゥーノス、ドゥリーシモル プラーナン。

lúinglóir-aaur-ilanáresdún-os,du-lís-imorplán-an.
ときお越しになる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-星読み<主格>から丘-<属格><〜させていただく>-書く-<我々が>帳簿-<対格>

「星読みの方が丘からお越しになるときは、我々が帳簿を書かせていただきます。」

目下の者が星読みについて話す改まった文。星読みは四段下りの役人なので、au- をつけて高める。au- は母音の前で aur- になるので、au-ilanár は aurilanár になる。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。主節は謙譲の接頭辞 du- で自分たちの行いを低めている(du-lís-imor)。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。

duméiran kelárai meiró pelsós aldárei áurenei.

読み:ドゥメーラン ケラーライ メイロー ペルソース アルダーレイ アウレネイ。

du-méir-ankel-ár-aimeirópels-ósaldár-eiáur-en-ei.
<〜させていただく>-与える-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>貢ぎ物<対格>樹脂-<属格>座-<与格>昇る-<〜した・〜された>-<軽性・与格>

「樵たちは、高き座に樹脂の貢ぎ物を献上する。」

森の氏族が王に産物を納めることを述べる文。差し出す側を低める謙譲の du- を動詞につけ、受け手の「高き座」は与格で表す。分詞 áurenei は aldárei(軽性・単数・与格)に一致する。同じ meiró でも、受け手が王なら「貢ぎ物」、倉なら「税」と訳し分ける。

glóiren! duméirim sáko autorárei.

読み:グロイレン!ドゥメーリン サーコ アウトラーレイ。

glóiren!du-méir-imsákoau-torár-ei.
ようこそ<〜させていただく>-与える-<私が>塩<対格><お〜になる・御〜>-客-<与格>

「ようこそ。お客人に塩を差し上げます。」

客に小皿の塩をひとつまみ出す、最高のもてなしのときの言い方。謙譲の du- をつけた動詞と、au- で高めた与格の「お客人に」を並べ、自分と相手の上下を文法の上でも示す。sáko「塩」は重性なので、対格も主格と同じ形になる。

auríþen, ausenár. dulísim fáron.

読み:アウリーセン、アウセナール。ドゥリーシン ファーロン。

auríþen,au-sen-ár.du-lís-imfáron.
かたじけない<お〜になる・御〜>-見る-<〜する人><〜させていただく>-書く-<私が>荷<対格>

「かたじけない、目付殿。荷を書き留めさせていただきます。」

市の目付に荷を量ってもらったあとの礼。呼びかけに呼格は使わない。役職名に au- をつけ、読点で区切って添える。lís-「書く」に謙譲の du- をつけて、自分の行いを低めている。目上の人への礼として決まった形なので、auríþen の語尾は変わらない。fáron「荷」は重性名詞なので、対格も主格と同じ形になる。

dulísim fáron ausenárei. auríþen.

読み:ドゥリーシン ファーロン アウセナーレイ。アウリーセン。

du-lís-imfáronau-sen-ár-ei.auríþen.
<〜させていただく>-書く-<私が>荷<対格><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>-<与格>ありがたく

「目付殿に、荷のことを書き記させていただきます。ありがたく。」

目上の人に宛てた手紙の結び。本文の最後に auríþen を一語だけ置いて、感謝を添える。謙譲の動詞 dulísim「書かせていただく」と、高めた与格 ausenárei「目付殿に」を並べているので、書き手と宛先の上下の関係がすべて文法に表れる。

duhémbrim, ausenár. na dulísim fáron.

読み:ドゥヘンブリン、アウセナール。ナ ドゥリーシン ファーロン。

duhémbrim,au-sen-ár.nadu-lís-imfáron.
恥じ入ります<お〜になる・御〜>-見る-<〜する人><〜ない><〜させていただく>-書く-<私が>荷<対格>

「申し訳ございません、目付殿。荷を書き記しておりませんでした。」

市の目付への改まった謝罪。帳簿に荷を書き留めておくのが決まりなのに、それを怠ったことを詫びている。動詞に時制がないので、na dulísim は文脈によって「書いておりません」とも「書いておりませんでした」とも訳せる。直説法の文なので、否定には na を使う。くだけた grómim は目上の人には使わない。

dómim. dulísim sáindaran aulisárei.

読み:ドーミン。ドゥリーシン サインダラン アウリサーレイ。

dómim.du-lís-imsáindar-anau-lis-ár-ei.
承りました<〜させていただく>-書く-<私が>証文-<対格><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<与格>

「承りました。書記の方に証文を書いて差し上げます。」

言いつけを受けたあと、するべきことを謙譲の形で言い直して請け合う、改まった返事。謙譲の動詞と高めた与格を並べて、自分と相手の上下を表している。dómim のあとは、謙譲の接頭辞 du- を使った動詞で続けるのがふつう。

éira, duþélim sélvanan.

読み:エーラ、ドゥセーリン セルヴァナン。

éira,du-þél-imsélvan-an.
ええと<〜させていただく>-名乗る-<私が>セルヴァン-<対格>

「ええと……セルヴァンと名乗らせていただきます。」

改まった名乗りで言いよどんだ例。改まった場で éira をはさむのは、言葉が整っていないしるしとして嫌われ、教養が足りないと見られやすい。du- は謙譲の接頭辞、名乗る名前は対格に置く。

duméirim kórviño ólmarei.

読み:ドゥメーリン コルヴィニョ オルマレイ。

du-méir-imkórviñoólmar-ei.
<〜させていただく>-与える-<私が>箱(小倉)<対格>年長者-<与格>

「年長者に箱を差し上げる。」

改まった・丁重な場。du-で自分を低め、受け手を与格で表す。

dunárim houmdulún

読み:ドゥナーリン ホウンドゥルーン

du-nár-imhoumdulún
<〜させていただく>-しのぐ-<私が>端境期<対格>

「私は(へりくだって)端境期をしのぎます。」

改まった場での申し立て。接頭辞 du- が話し手を低める。houmdulún は炉の底が空く端境期を指す重性名詞で、対格単数は同形。不快感そのものではなく、空腹・乏しさといった困難な状況を意味2で受ける。

dutorarérim aulisáran.

読み:ドゥトラレーリン アウリサーラン。

du-torarér-imau-lis-ár-an.
<〜させていただく>-客扱いする-<私が><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-ACC.

「書記の方を、客としてお迎えいたします。」

礼法上の低い者から高い者への言い方。自分の動作は du- で低め、客人となる人物は au- のついた名詞 aulisár「書記の方」で高める。au-lis-ár-an は「書記の方を」で、au- と -ár のついた名詞に対格 -an がつく。

duþélim sílanan

読み:ドゥセーリン シーラナン

du-þél-imsílan-an
<〜させていただく>-名乗る-<私が>シラン-<対格>

「シランと名乗らせていただきます。」

成人儀礼や改まった自己紹介での名乗り。謙譲接頭辞 du- を付けた þél-「名乗る」で、自己の行いを低める。固有名 sílan は目的語として対格 -an を受ける。動詞の人称語尾 -im が一人称主語を示すため、主語代名詞は不要。

duþélim sílanan gléinaros

読み:ドゥセーリン シーラナン グレーナロス

du-þél-imsílan-angléinar-os
<〜させていただく>-名乗る-<私が>シラン-<対格>グレイナル-<属格>

「グレイナル家のシランと名乗らせていただきます。」

改まった名乗り。duþél- は þél-「名乗る」に謙譲の du- がついた形。個人名 sílan を対格 sílanan とし、家名 gléinar を属格 gléinaros で添える。人を指す個人名が主語になるときの動詞の一致は軽性になるが、家名そのものは重性の属格形をとる。

dukrúnim auloimán aulisáres.

読み:ドゥクルーニン アウロイマーン アウリサーレス。

du-krún-imau-loim-ánau-lis-ár-es
<〜させていただく>-支える-<私が><お〜になる・御〜>-詞-<対格><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<属格>

「「書記の方の詞を、手前が支えます。」」

書簡・改まった場で、目上の書記の方の詞(公言・決まり文句・申し立て)を追認し、保障する意。敬語では所有者だけでなく所有されるものにも au- を添えるため、`loimán` を `auloimán` とする。動詞には謙譲の接頭辞 du- を添え、所有者名も au- 付き属格 aulisáres にしている。語順は VSO で、主語は語尾 -im から判別される。

duþélim sélvanan, an fóndaros gléinaros dúlenan fáir þrénul.

読み:ドゥセーリン セルヴァナン、アン フォンダロス グレーナロス ドゥーレナン ファイル スレーヌル。

du-þél-imsélvan-an,anfóndar-osgléinar-osdúlen-anfáirþrén-ul.
<〜させていただく>-名乗る-<私が>セルヴァン-<対格>上手源-<属格>グレイナル-<属格>下りた-<対格>四段-<〜たちを>

「グレイナルの源から四段下った者、セルヴァンと名乗らせていただきます。」

改まった名乗り定型。duþél- は謙譲の「名乗らせていただく」で、名前を対格で受ける。dúlen-an は見出し語 dúlen に軽性対格単数の接辞 -an を付けた形で、sélvanan に一致して後置修飾する。þrénul は「何段下りたか」を表す道のりの対格。

duslélim snélan ausenárei

読み:ドゥスレーリン スネーラン アウセナーレイ

du-slél-imsnél-anau-sen-ár-ei
<〜させていただく>-広げる-<私が>布-<対格><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>-<与格>

「目付殿に布を広げて差し上げます。」

改まった場面で、相手の前に布を平に広げて提示する意。動詞に謙譲接頭辞 du-、受取人に高めた目付の与格 ausenárei を用いている。

文法

前置詞(無強勢)。対格・与格と組む。du dálor「下の国へ」、du pó「下手のどこへ」。

語源

dul-「下る」、謙譲の接頭辞 du- と同じ源。

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