小説
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明日
今日の次の日。
ké dúles sórel? na dúlim, duléim dórel.
読み:ケー ドゥーレス ソーレル?ナ ドゥーリン、ドゥレーン ドーレル。
| ké | dúl-es | sórel? | na | dúl-im, | dul-é-im | dórel. |
| <〜か> | 南へ行く-<あなたが> | 今日 | <〜ない> | 南へ行く-<私が> | 南へ行く-<〜だろう>-<私が> | 明日 |
「「今日は下へ行くのか?」「いや、行かない。明日行くだろう。」」
崖道の商人どうしの、くだけた問いと答え。はい・いいえの問いは文頭の ké で作り、答えは問いの動詞を自分の人称に変えてくり返す。確かでない未来のことは推量法で言う。1人称の語尾の前では推量の -él- の l が落ちて duléim になる。
keléimor gandér dórel.
読み:ケレーモル ガンデール ドーレル。
| kel-é-imor | gandér | dórel. |
| 伐る-<〜だろう>-<我々が> | 硬木<対格> | 明日 |
「明日は硬木を伐ることになるだろう。」
樵どうしの日常会話。時制がないので、未来のことは推量法で言う。1人称の語尾 -imor の前では、推量法の -él- の l が落ちて -é- になる。強勢は推量法の接尾辞に移り、語根の ´ は消える。
ké toréla faronár dórel?
読み:ケー トレーラ ファロナール ドーレル?
| ké | tor-él-a | faron-ár | dórel? |
| <〜か> | 来る-<〜だろう>-<(軽いものが)> | 荷-<〜する人> | 明日 |
「運び人は明日来るだろうか。」
同輩どうしの問い。時制の語形がないので、確かでない未来のことは推量法で言う。強勢は推量法の -él- に移り、語根の ´ は消える(tóra → toréla)。faronár は fáron「荷」に -ár「〜する人」がついた語。
or pó fleiréla aulisár dórel?
読み:オル ポー フレイレーラ アウリサール ドーレル?
| or | pó | fleir-él-a | au-lis-ár | dórel? |
| 日の出側 | 何<対格> | お出ましになる-<〜だろう>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人> | 明日 |
「書記の方は、明日は日の出側のどちらへお出ましになるのでしょうか。」
上向きの問い。目上の人には問いの小辞 ké を使わず、推量法 -él- で推し量る形で尋ねる。方向を決めない「どこへ」はないので、or pó「日の出側の何へ」と前置詞句ごと文頭に出す。推量法の接尾辞が強勢をとるので、語根の ´ は消える。
vírim ré torélo nébro dórel.
読み:ヴィーリン レー トレーロ ネーブロ ドーレル。
| vír-im | ré | tor-él-o | nébro | dórel. |
| 言う-<私が> | <〜と(節)> | 来る-<〜だろう>-<(重いものが)> | 霧<主格> | 明日 |
「明日は霧が来るだろう、と私は言っておく。」
ré は「〜と」の節を導き、主節の後ろに置く。ré の後ろの節は推量法のまま保たれる。主語の霧 nébro が重性なので、動詞の語尾は -o。
drénim du orén dórel.
読み:ドレーニン ドゥ オレーン ドーレル。
| drén-im | du | orén | dórel. |
| 参る-<私が> | 下手へ・下手で | 縁<対格> | 明日 |
「明日、縁へ参ります。」
du+対格で、下手(南・縁・干潟の方向)への移動を表す。drén- は「行く」の謙譲の補充形。du は動詞 dúl-「下る」や謙譲の接頭辞 du- と同じ語源で、強勢をもたない。
aurélan ombára ilánai dórel.
読み:アウレーラン オンバーラ イラーナイ ドーレル。
| aur-él-an | ombára | ilán-ai | dórel. |
| 昇る-<〜だろう>-<彼らが> | 十 | 灯-<〜たちが> | 明日 |
「明日、十の灯が昇るだろう。」
星読みが年の始まりを告げるときの言い方。ombára は星座名の中にだけ残る古い形の「十」で、「そろった・満ちた」という意味を帯びる。格変化はせず、複数の ilánai を前から飾る。ilánai は a語幹 ilána の複数主格で、語根 ilán- に軽性の複数主格の語尾 -ai がついた形。動詞の前に出られる語は限られているので、時を表す dórel は文末に置く。確かでない未来なので推量法を使う。
rimbéla senár sénþar sáindarar dórel.
読み:リンベーラ セナール センサル サインダラル ドーレル。
| rimb-él-a | sen-ár | sénþar | sáindar-ar | dórel. |
| 数える-<〜だろう>-<(軽いものが)> | 見る-<〜する人> | 百 | 証文-<〜らの> | 明日 |
「目付は明日、百通の証文を数えるだろう。」
sénþar は名詞として働くので、数えるもの(証文)を複数属格でとる。sáindar は軽性なので、複数属格は -ar。未来のことは推量法で言う。強勢が -él- に移るので、語根の強勢は消える。
ké tórau dáu torárau dórel? tórau.
読み:ケー トーラウ ダウ トラーラウ ドーレル?トーラウ。
| ké | tór-au | dáu | torár-au | dórel? | tór-au. |
| <〜か> | 来る-<双数> | 二 | 客-<双数> | 明日 | 来る-<双数> |
「「明日はお客が二人来るのか?」「来る。」」
二人の発話。家の中での打ち合わせ。数詞 dáu「二」の後ろの名詞は双数になり、動詞も双数(人称・性の区別なし)。答えは問いの動詞を繰り返す。客が目上の人なら au- をつけた高め名詞にし、数えずに言う。
ké bruuméla réina dórel?
読み:ケー ブルーメーラ レーナ ドーレル?
| ké | bruum-él-a | réina | dórel? |
| <〜か> | 落ちる-<〜だろう>-<(軽いものが)> | 雨<主格> | 明日 |
「明日は雨が降るだろうか。」
天気を尋ねる日常の問い。未来のことは推量法で言う。強勢は -él- に移るので、語根の ´ は消える。答えるときは bruuméla「降るだろう」か na bruuméla と、動詞を繰り返す。
tóro duléumo es orénos, esélo nébro dórel.
読み:トーロ ドゥレウモ エス オレーノス、エセーロ ネーブロ ドーレル。
| tór-o | duléumo | es | orén-os, | es-él-o | nébro | dórel. |
| 来る-<(重いものが)> | 下の風<主格> | から | 縁-<属格> | いる-<〜だろう>-<(重いものが)> | 霧<主格> | 明日 |
「縁から下の風が来ている。明日は霧が出るだろう。」
空模様を読む日常の文。duléumo は重性o語幹なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。後半は存在の文を推量法にしたもので、確かでない明日のことは推量法で言う。霧 nébro も重性なので、esélo の語尾は -o になる。下の風は崖下から這い上がる湿った風で、霧と病を運ぶものとされる。
ráumimor an þráin dórel.
読み:ラウミモル アン スライン ドーレル。
| ráum-imor | an | þráin | dórel. |
| 歩く-<我々が> | 上手 | 峰<対格> | 明日 |
「明日、我々は峰へ登る。」
高原語の移動の表現では、上るか下るかをかならず言い分ける。峰へ行くときは an+対格「上手へ」を使う。þráin は重性の子音語幹なので、対格は主格と同じ形になる。時制がないので、未来のことは dórel「明日」で示す。
gélan kelárai or véinor dórel.
読み:ゲーラン ケラーライ オル ヴェーノル ドーレル。
| gél-an | kel-ár-ai | or | véinor | dórel. |
| 行く-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 日の出側 | 湖<対格> | 明日 |
「明日、樵たちは日の出側の湖へ行く。」
時制の語形はないので、未来のことでも直説法で言い切れる。確かでなければ推量法 geléla などを使う。東西の移動は or(日の出側)・vel(日の入り側)+対格で表す。véinor は重性で、対格でも形が変わらない。
drenéim an kórvo dórel, ré duliséndim sáindaran.
読み:ドレネーン アン コルヴォ ドーレル、レー ドゥリセンディン サインダラン。
| dren-é-im | an | kórvo | dórel, | ré | du-lis-énd-im | sáindar-an. |
| 伺う-<〜だろう>-<私が> | 上手 | 倉<対格> | 明日 | <〜と(節)> | <〜させていただく>-書く-<〜しますように>-<私が> | 証文-<対格> |
「明日、証文を書かせていただくため、倉へ伺うつもりでございます。」
改まった手紙で、訪ねることを予告する言い方。推量法の -él- は1人称単数の語尾の前で l が落ちて -é- になり、drenéim「伺うつもりでございます」となる。目的は「ré+願望法」で表し、謙譲の du- も添える。
faronerélan faronárai sáko es orénos dórel.
読み:ファロネレーラン ファロナーライ サーコ エス オレーノス ドーレル。
| faroner-él-an | faron-ár-ai | sáko | es | orén-os | dórel. |
| 運ぶ-<〜だろう>-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 塩<対格> | から | 縁-<属格> | 明日 |
「明日、運び人たちが縁から塩を運んでくるだろう。」
これから先のことは推量法 -él- で言う。強勢は -él- に移り、-ér- の ´ は消える。3人称複数の語尾 -an は性を区別しない。塩 sáko は干潟から来る重性の名詞で、上げ荷の代表である。es+属格で、方向を問わない「〜から」を表す。
plúin hóines? hoinéim dórel.
読み:プルーイン ホイネス?ホイネーン ドーレル。
| plúin | hóin-es? | hoin-é-im | dórel. |
| いつ | 帰る-<あなたが> | 帰る-<〜だろう>-<私が> | 明日 |
「「いつ帰る?」「明日帰るだろう。」」
くだけたやりとり。疑問詞 plúin は動詞の前に出る。時制がないので、これから先のことは推量法で言う。1人称の語尾の前では推量法の -él- の l が落ちて -é- になり、hoinéim となる。
ké ráines ré dúlan faronárai du orén dórel?
読み:ケー ライネス レー ドゥーラン ファロナーライ ドゥ オレーン ドーレル?
| ké | ráin-es | ré | dúl-an | faronár-ai | du | orén | dórel? |
| <〜か> | 知る-<あなたが> | <〜と(節)> | 下る-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | 下手 | 縁<対格> | 明日 |
「運び人たちが明日縁へ下りることを、お前は知っているか。」
知っている内容を ré の節で示す、日常の問い。ké は文のいちばん前に置く。ré の後ろの節も動詞で始まる。下向きか並びの相手に使う言い方。
nóurim ré torélo nébro dórel.
読み:ノーリン レー トレーロ ネーブロ ドーレル。
| nóur-im | ré | tor-él-o | nébro | dórel. |
| 思う-<私が> | <〜と(節)> | 来る-<〜だろう>-<(重いものが)> | 霧<主格> | 明日 |
「明日は霧が来ると思う。」
ré の節で思う内容を示す。確かでない未来なので、節の中は推量法にしている。霧は重性なので -o。
þílim, gélim du orén dórel.
読み:シーリン、ゲーリン ドゥ オレーン ドーレル。
| þíl-im, | gél-im | du | orén | dórel. |
| 了解する-<私が> | 行く-<私が> | 下手 | 縁<対格> | 明日 |
「了解した、明日縁へ下りていく。」
同じ段どうしの頼みに応じる言い方。時制がないので、明日のことも直説法 gélim で言える。gél- は方向をもたない「行く」だが、du で「下手へ」の向きを示す。
ésa nourá némes ré lísa lisár sáindaran dórel, ausenár.
読み:エーサ ノウラー ネーメス レー リーサ リサール サインダラン ドーレル、アウセナール。
| és-a | nourá | ném-es | ré | lís-a | lis-ár | sáindar-an | dórel, | au-sen-ár. |
| いる-<(軽いものが)> | 思い | <私>-<属格> | <〜と(節)> | 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 証文-<対格> | 明日 | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人> |
「目付殿、私の考えは、明日書記が証文を書く、というものです。」
目上の人に意見を述べるときの言い方。自分の思いには au- をつけない。ré の節で考えの中身を示し、呼びかけの役職名は文の終わりに読点で区切って添える。
elþéla hóurna dórel.
読み:エルセーラ ホールナ ドーレル。
| elþ-él-a | hóurna | dórel. |
| 燃える-<〜だろう>-<(軽いものが)> | 弔い<主格> | 明日 |
「明日、弔いの火が焚かれるだろう。」
火葬の予定を知らせる言い方。時制がないので、未来のことは推量法で言う。hóurna は軽性なので、動詞は軽性の -a で一致する。遺体は村の北側の高い所で焼く。
toréla torár dórelei.
読み:トレーラ トラール ドーレレイ。
| tor-él-a | tor-ár | dórel-ei. |
| 来る-<〜だろう>-<(軽いものが)> | 来る-<〜する人> | 明日-<与格> |
「客は明日来るだろう。」
高原語には時制がないので、まだ起きていない明日のことは推量法(-él-)で言うのがふつう。強勢は -él- に移る。torár「客」は tór-「来る」に -ár「〜する人」がついた語。
gloirénde aulisár dórelei.
読み:グロイレンデ アウリサール ドーレレイ。
| gloir-énd-e | au-lis-ár | dórel-ei. |
| お越しになる-<〜しますように>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人> | 明日-<与格> |
「書記の方には、明日お越しいただきたく存じます。」
上向きの依頼。目の前の相手にも2人称は使わず、役職名に au- をつけた3人称で言い、命令の代わりに願望法を使う。願望法の3人称単数・軽性の語尾は -e になる。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。
aurénde, séulin! séirim séndoi dórel.
読み:アウレンデ、セウリン!セーリン センドイ ドーレル。
| aurénde, | séulin! | séir-im | sénd-oi | dórel. |
| さようなら | 友 | 待つ-<私が> | ここ-<与格> | 明日 |
「「さようなら、友よ。明日ここで待っている。」」
親しい者どうしの別れ際。別れの aurénde にも「相手の息が無事に昇るように」という願いがこもるが、日常ではただの「さようなら」として使う。séir- は直説法で、時制がないので、「明日待つ」という未来の予定もこの形で言える。
ké dúlimor du orén dórel? éun.
読み:ケー ドゥーリモル ドゥ オレーン ドーレル?エウン。
| ké | dúl-imor | du | orén | dórel? | éun. |
| <〜か> | 下る-<我々が> | 下手 | 縁<対格> | 明日 | うん |
「「明日、縁へ下りるか?」「うん。」」
運び人どうしのくだけたやりとり。時を表す語 dórel は文の後ろに置く。éun だけで答えるのは仲間内や目下への返事で、改まった場では動詞を繰り返すか、目上の人には dómim を使う。
dórel, sarénei, méirim sáindaran senárei.
読み:ドーレル、サレーネイ、メーリン サインダラン セナーレイ。
| dórel, | sarén-ei, | méir-im | sáindar-an | sen-ár-ei. |
| 明日 | 本番-<与格> | 与える-<私が> | 証文-<対格> | 見る-<〜する人>-<与格> |
「明日、本番で、私は目付に証文を渡す。」
縁の市で、目付の前に正式に証文を差し出す場面を言う。場面の枠は「時→場所」の順に並べ、時の dórel を先に置く。sarénei は場面の枠に入れ、動詞の後ろの与格は受け手の senárei 一つだけにする(裸の与格は一つまで)。
wála sílar dórel
読み:ワーラ シーラル ドーレル
| wál-a | sílar | dórel |
| 変わる-<(軽いものが)> | 月<主格> | 明日 |
「明日、月が替わる。」
暦の月が次の月へ移る「替わる」の用法。主語の sílar は軽性なので、動詞は3人称単数軽性の -a をとる。時語の dórel は文末に置ける。
dórel, éso unlóur slóvo torárei.
読み:ドーレル、エーソ ウンロール スローヴォ トラーレイ。
| dórel, | és-o | unlóur | slóvo | torár-ei |
| 明日 | 存在-<(重いものが)> | まだ | 取り置き分<主格> | 客-<与格> |
「明日の分も、客の取り置き分がまだある。」
予定者分を示す文。場面の枠として dórel を前に置き、主節では unlóur が動詞の直後に残置を添える。éso は és-o、slóvo は重性単数の主格。
明日。「下手の日」の意味である。時間の流れの下手にある、これから来る日を指す。確かでない未来のことなので、dórel と言う文の動詞は、ふつう推量法になる(gloiréla aulisár dórel「書記の方は明日お越しになるでしょう」)。
軽性・子音語幹(②型)。多くは無変化の副詞として使う。
du「下手」と órel「日」が縮まった不規則な形(*du-órel → dórel)。anórel と違って、前置詞の母音が残っていない。
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