小説
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参る
話し手やその身内が、目上の人のところへ行くことをへりくだって言う。
drénim an dún sórel.
読み:ドレーニン アン ドゥーン ソーレル。
| drén-im | an | dún | sórel. |
| 参る-<私が> | 上手 | 王の丘<対格> | 今日 |
「今日、王の丘へ参ります。」
an+対格で「上手へ」。王の丘へ行くときは、行き先の主が高い方なので、「行く」の謙譲の補充形 drén-「参る」を使う。重性名詞なので、対格は主格と同じ形 dún。
drénim du orén dórel.
読み:ドレーニン ドゥ オレーン ドーレル。
| drén-im | du | orén | dórel. |
| 参る-<私が> | 下手へ・下手で | 縁<対格> | 明日 |
「明日、縁へ参ります。」
du+対格で、下手(南・縁・干潟の方向)への移動を表す。drén- は「行く」の謙譲の補充形。du は動詞 dúl-「下る」や謙譲の接頭辞 du- と同じ語源で、強勢をもたない。
hóu, faronár! dómim, drénim selúin.
読み:ホー、ファロナール!ドーミン、ドレーニン セルーイン。
| hóu, | faronár! | dómim, | drén-im | selúin. |
| おーい | 運び人 | はっ | 参る-<私が> | 今 |
「「おい、運び人!」「はっ、ただいま参ります。」」
二人の発話。呼ばれた目下の者が、目上の人のところへ行くことをへりくだって言う。drén- は gél-「行く」の謙譲の補充形で、規則どおりに du- をつけた形はない。呼びかけは呼格を使わず、職名をそのまま言う。
drénan dubrélai némes an dún sórel.
読み:ドレーナン ドゥブレーライ ネーメス アン ドゥーン ソーレル。
| drén-an | dubrél-ai | ném-es | an | dún | sórel. |
| 参る-<彼らが> | 弟妹-<〜たちが> | <私>-<属格> | 上手 | 丘<対格> | 今日 |
「今日、私の弟たちが丘の上へ参ります。」
話し手自身だけでなく、身内の行き先を目上の人に告げるときにも謙譲の drén- を使う。an+対格で「上手へ」。丘の上は身分の高い家の場所なので、丘へ上がる身内を低めて言う。
lúin dúlo gandér du dálor, drénimor du kéndor orénos.
読み:ルーイン ドゥーロ ガンデール ドゥ ダーロル、ドレーニモル ドゥ ケンドル オレーノス。
| lúin | dúl-o | gandér | du | dálor, | drén-imor | du | kéndor | orén-os. |
| とき | 下る-<(重いものが)> | 硬木<主格> | 下手 | 下の国<対格> | 参る-<我々が> | 下手 | 縁の市<対格> | 縁-<属格> |
「硬木が下の国へ下りるころ、私どもは縁の市へ下って参ります。」
崖道の商人が目上の人に、最初の下ろしのころに市へ出ることを告げる言い方。「行く」の謙譲の補充形 drén- を使う。縁の市は崖の麓にあるので、かならず du で言う。lúin の節は主節の前に置く。
drénim an brándalan.
読み:ドレーニン アン ブランダラン。
| drén-im | an | brándal-an. |
| 参る-<私が> | 上手 | 司-<対格> |
「(丘の上手の)司のもとへ参ります。」
改まった場の、へりくだった言い方。「行く」の謙譲の補充形 drén- を使う。都の役所は丘の上手にあるので、an+対格「上手へ」で言う。
drénimor an aurándo sórel.
読み:ドレーニモル アン アウランド ソーレル。
| drén-imor | an | aurándo | sórel. |
| 参る-<我々が> | 上手 | 社<対格> | 今日 |
「今日、私たちは社へお参りする。」
日常会話の文。社はふつう丘の上や村の北側の高い場所に建っているので、行き先には「上手へ」の an+対格を使う。aurándo は重性o語幹なので、主格と対格が同じ形になる。drén-「参る」は gél-「行く」の謙譲の補充形で、祖先のいる場所へ行くことを低めて言う。
drénimor an ánoran ré embeléndimor aursárais.
読み:ドレーニモル アン アーノラン レー エンベレンディモル アウルサーライス。
| drén-imor | an | ánor-an | ré | embel-énd-imor | aursár-ais. |
| 参る-<我々が> | 上手 | 上手・北-<対格> | <〜と(節)> | 祀る-<〜しますように>-<我々が> | 祖先-<〜たちを> |
「我々は、祖先を祀るために北の高みへ参る。」
北の高みの納骨所へ向かうときの言い方。drén- は「行く」の謙譲の補充形で、聖地に向かう行いを低めて言う。ré+願望法で目的を表す。an ánoran は「上手の北の地へ」で、前置詞と名詞が同じ方向を重ねて表している。
snéimim. drénim an dún.
読み:スネーミン。ドレーニン アン ドゥーン。
| snéimim. | drén-im | an | dún. |
| 前を失礼します | 参る-<私が> | 上手 | 丘<対格> |
「前を失礼いたします。丘の上へ参ります。」
坂道や石段で、人の前を横切ったり追い越したりするときの言い方。高原では目上の人より上の位置を歩くことが嫌われるので、上り坂で前に出るときにはとくに欠かせない。an+対格で「上手へ」。dún は重性なので、主格と対格が同じ形になる。
drénan kloimárai un krévan, duói léunan mélnan rainiþárei, si na rímba rainiþár virán gráisan.
読み:ドレーナン クロイマーライ ウン クレーヴァン、ドゥオイ レウナン メルナン ライニサーレイ、シ ナ リンバ ライニサール ヴィラーン グライサン。
| drén-an | kloimár-ai | un | kréva-n, | duói | léun-an | méln-an | rainiþár-ei, | si | na | rímb-a | rainiþár | vir-án | gráis-an. |
| 参る-<彼らが> | 弟子-<〜たちが> | 内に | 練習の場-<対格> | それから | 申す-<彼らが> | 詩-<対格> | 師-<与格> | と | <〜ない> | 数える-<(軽いものが)> | 師<主格> | 言葉-<対格> | 悪い-<対格> |
「弟子たちは稽古の場へ参り、それから師に詩を申し上げる。師は言い誤りを数えない。」
宮廷や学び舎での詩の稽古を言った文。弟子の行いは謙譲の補充形で表し、drén-「参る」と léun-「申す」を使っている。un krévan は「稽古の場へ」で、本番ではない場であることを示す。virán gráisan「悪い言葉」は、ここでは無礼な言葉ではなく、言い損なった語を指す。形容詞 gráis は名詞の後ろに置かれ、軽性・対格の -an で一致している。
伺う
役所や館に用事で出向く。改まった手紙では、訪ねることの予告に使う(dreeneim「伺うつもりでございます」)。
drenéim an kórvo dórel, ré duliséndim sáindaran.
読み:ドレネーン アン コルヴォ ドーレル、レー ドゥリセンディン サインダラン。
| dren-é-im | an | kórvo | dórel, | ré | du-lis-énd-im | sáindar-an. |
| 伺う-<〜だろう>-<私が> | 上手 | 倉<対格> | 明日 | <〜と(節)> | <〜させていただく>-書く-<〜しますように>-<私が> | 証文-<対格> |
「明日、証文を書かせていただくため、倉へ伺うつもりでございます。」
改まった手紙で、訪ねることを予告する言い方。推量法の -él- は1人称単数の語尾の前で l が落ちて -é- になり、drenéim「伺うつもりでございます」となる。目的は「ré+願望法」で表し、謙譲の du- も添える。
drénim es orénos, ré luuménde ausenár sáindaran sé.
読み:ドレーニン エス オレーノス、レー ルーメンデ アウセナール サインダラン セー。
| drén-im | es | orén-os, | ré | luum-énd-e | au-sen-ár | sáindar-an | sé. |
| 伺う-<私が> | から | 縁-<属格> | <〜と(節)> | ご覧になる-<〜しますように>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人> | 証文-<対格> | この<軽性> |
「目付殿にこの証文をご覧いただきたく、縁から伺いました。」
役所に用事で出向き、来た目的を述べるときの決まった言い方。時制の形がないので、drénim は「伺う」とも「伺った」とも訳せる。目的を表す ré の節では願望法を使う。その中でも、目上の人は職名に au- をつけた3人称で主語にし、「見る」の尊敬の補充形 lúum- を使う。
「行く」の謙譲の補充形。自分が目上の人のもとへ、または目上の人に関わる場所へ行くことを、へりくだって言う。目上の人の館は丘の上手にあるので、an(上手へ)と組むことが多い。縁商人や崖道の商人が役所に出向くときの決まった言い方でもある。
「行く」gél- の謙譲の補充形。完了語根は dréen-。尊敬の形はなく、尊敬には fléir- を使う。
謙譲の接頭辞 du- と、古い「行く」の語根 *ren- がくっついた形と考えられている。この *ren- は、今の言葉ではほかに使われない。
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