fél-

品詞
動詞(他動詞)
意味
引く・曳く(泥の言葉)
発音
[ˈfel]
読み
フェール(e は「エ」に、語末の l は「ル」と母音を足して聞こえる。全体で「フェール」。屈折した形で言えば フェールア・フェールレス)
分野
基本動作

意味

  1. 引く・曳く

    綱・荷・橇を引き寄せる・曳く。縁・崖道の言葉で使う、高原語本来の krémb- と同じ動作を指す借用語。

    fél fáron, ende.

    読み:フェール ファーロン、エンデ。

    félfáronende
    引く<命令法><あなたが>荷<対格>どうぞ

    「荷を引き、頼む。」

    縁の市の取引言葉。命令法はむき出しの語幹。重性名詞 fáron は単数主格と対格が同じで、市で格語尾が落ちても外形は変わらない。ende は本来の願望語尾が固まった定型。fél- 自体が干潟語由来の語で、宮廷では使われない。

    féla faronár fúnel du orén.

    読み:フェーラ ファロナール フーネル ドゥ オレーン。

    fél-afaronárfúnelduorén
    引く-<(軽いものが)>運び人<主格>綱<対格>下手縁<対格>

    「運び人が綱を縁の方へ引く。」

    崖道の日常。運び人 faronár は人を指すので軽性、動詞は 3 人称単数・軽性 -a。fúnel も orén も重性で、単数対格は主格と同じ。du orén は「下手へ、縁へ」の方向句。fél- は本来の krémb- に代えて、縁・崖道でよく使う。

  2. (干潟語の原義)網を引き寄せる・潮を引き戻す

    干潟の漁業や潮の操作に使う意味。借用の源の意味で、高原語ではこの意味では使わないが、縁の人々の口には干潟の習わしとともに残っている。

    félo krúndo ílmo.

    読み:フェーロ クルンド イルモ。

    fél-okrúndoílmo
    潮を引き戻す-<(重いものが)>泥<主格>水<対格>

    「潮泥が水を引く(潮が引く)。」

    干潟語原義の「潮を引き戻す」に対応する言い方。krúndo は「泥」だが、fél と組むと潮が引き込む泥を指し、潮が引く意になる。krúndo・ílmo とも重性で、動詞は 3 人称単数・重性 -o。宮廷では使われないが、縁の肩や縁では潮の動きを語る語として残る。

解説

干潟語 fëlë「引く・曳く(網を引き寄せる、潮を引き戻す)」から借用した他動詞。干潟で網を引き寄せる、潮を堰き止める、杭を泥に引き込むといった動作を表した語が、縁商人と運び人のあいだの交易で使われ、凍りの頃の崖道や縁の肩の言葉に入った。都の人の耳には「泥の言葉」(沈んだ言葉)に聞こえ、改まった場や宮廷では使わない。運び人や崖道の商人は、綱を引く・荷を曳くときにこの語を使うこともあり、krémb-(高原語本来の「引く」)との使い分けは、話し手の出自と場で決まる。縁の市の取引言葉では、格語尾が落ちたむき出しの形で飛び交う(fél fáron, ende「荷を引き、頼む」)。

そのほかの用例

féila lisár plánan.

読み:フェーラ リサール プラーナン。

féil-alis-árplán-an.
引く<〜し終えた>-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格>帳簿-<対格>

「書記は帳簿に罫を引き終えた。」

帳簿を目的語にとって「帳簿に罫を引く」。完了語根 féil-。

文法

他動詞。干潟語からの借用語。六つの法と人称語尾は高原語の規則どおりつける。完了相は語根の母音 e→ei で féil-(引き終えた)。

語源

干潟語 fëlë「引く・曳く(網を引き寄せる、潮を引き戻す)」からの借用。ë→e の置き換え、声門閉鎖の脱落、干潟語の高音節に強勢を置く高原語の規則を経て高原語の型に入った。統一期以後(約二百年前)の交易で入った新しい借用の層。

語幹の異形

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