fáron

品詞
名詞
意味
荷
発音
[ˈfaron]
読み
ファーロン
分野
生活・道具・衣食住

意味

  1. 荷

    担いだり吊り下ろしたりして運ぶ荷物。市で量り、帳簿に記す取引の品。

    mé duliþésa fáron es orénos.

    読み:メー ドゥリセーサ ファーロン エス オレーノス。

    médul-iþ-és-afáronesorén-os
    <禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>から縁-<属格>

    「縁から荷を落とさぬこと。」

    度量衡の碑の一句。当為法の文は mé で否定する。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の形をとる。強勢は当為法の -és- に移り、-íþ- の強勢は消える。

    ván fáron, ende.

    読み:ヴァーン ファーロン、エンデ。

    vánfáron,ende
    量る<命令法><あなたが>荷<対格>どうぞ

    「荷を量ってくれ、頼む。」

    縁の市の取引言葉。vánd- をむき出しの語幹で言うと、語末の nd が n に削られて ván になる。ende は願望法の語尾が固まってできた小辞。

    aubandénde ausenár fáron.

    読み:アウバンデンデ アウセナール ファーロン。

    au-band-énd-eau-sen-árfáron
    <お〜になる・御〜>-量る-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>荷<対格>

    「目付殿に、荷をお量りいただきたく存じます。」

    前の例文と同じ用件を、都の手代が改まって言った形。au- と v- がくっついて aub- になる。ausenár は sén-「見る」+-ár「〜する人」に au- がついた語。名詞には補充形を使わない。

    selvéna ausenár ré mé duliþésa fáron es orénos.

    読み:セルヴェーナ アウセナール レー メー ドゥリセーサ ファーロン エス オレーノス。

    selvén-aau-sen-árrémédul-iþ-és-afáronesorén-os.
    おっしゃる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人><〜と(節)><禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>から縁-<属格>

    「目付殿は、「縁から荷を落とさぬこと」とおっしゃる。」

    ré は「〜と」の節を導き、その節は主節の後ろに置く。ré の後ろの節は、元の文の法を保つ。ここでは度量衡の碑の一句 mé duliþésa fáron es orénos を、当為法のまま引用している。目付が碑の前で揉め事を裁くときの言い方。

    duliþíre kelár fáron es orénos, toriþéla dálor.

    読み:ドゥリシーレ ケラール ファーロン エス オレーノス、トリセーラ ダーロル。

    dul-iþ-ír-ekel-árfáronesorén-os,tor-iþ-él-adálor.
    下る-<〜させる>-<もし〜なら>-<(軽いものが)>伐る-<〜する人・主格>荷<対格>から縁-<属格>来る-<〜させる>-<〜だろう>-<(軽いものが)>下の国<対格>

    「樵が縁から荷を落とせば、下の国を呼び寄せることになろう。」

    条件の節は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけで作り、主節の前に置く。帰結の節は推量法。後半では主語を言っていないが、動詞の語尾から、前半と同じ樵が主語だとわかる。崖から物を落としてはいけない、という禁忌の説明。

    ésau éndra si fáron káilau.

    読み:エーサウ エンドラ シ ファーロン カイラウ。

    és-auéndrasifáronkáil-au.
    いる-<双数>人<主格>と荷<主格>乾いた-<双数>

    「人と荷は乾いている。」

    性の違う語を並べたとき、人が含まれれば形容詞は軽性にする。単数が二つなので双数。

    fáron dulíþo ílmo.

    読み:ファーロン ドゥリーソ イルモ。

    fárondul-íþ-oílmo.
    荷<対格>下る-<〜させる>-<(重いものが)>水<主格>

    「荷をこそ、水が下ろす。」

    他動詞の文で前に出した重性の名詞は、既定で目的語として読む。主語の位置にいる ílmo が主語。

    ílmo dulíþo ó fáron.

    読み:イルモ ドゥリーソ オー ファーロン。

    ílmodul-íþ-oófáron.
    水<主格>下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・主格>荷<対格>

    「水こそが、荷を下ろす。」

    前に出した重性の名詞が主語のときは、空いた主語の位置に再述の ó を残す。ó があるので、fáron は目的語に決まる。

    léisa lisár plánan, duói dúlo fáron du orén.

    読み:レーサ リサール プラーナン、ドゥオイ ドゥーロ ファーロン ドゥ オレーン。

    léis-alis-árplán-an,duóidúl-ofáronduorén.
    書く<〜し終えた>-<(軽いものが)>書く-<〜する人>帳簿-<対格>それから下る-<(重いものが)>荷<主格>下手縁<対格>

    「書記が帳簿を書き終え、それから荷が縁へ下りていく。」

    duói「それの下手で」は、出来事の順序をはっきりさせる。

    éso fáron gróm némei.

    読み:エーソ ファーロン グローン ネーメイ。

    és-ofárongrómném-ei.
    いる-<(重いものが)>荷<主格>重い<私>-<与格>

    「私には重い荷がある。」

    és- の文に裸の与格があるので、存在・所有の文として読み、gróm は荷を飾る。

    éso fáron gróm só némei.

    読み:エーソ ファーロン グローン ソー ネーメイ。

    és-ofárongrómsóném-ei.
    いる-<(重いものが)>荷<主格>重いこの<重性><私>-<与格>

    「私には、この重い荷がある。」

    指示詞 só が名詞句を閉じるので、gróm が名詞句の中にあることがはっきりする。

    éso fáron némes gróm.

    読み:エーソ ファーロン ネーメス グローン。

    és-ofáronném-esgróm.
    いる-<(重いものが)>荷<主格><私>-<属格>重い

    「私の荷は重い。」

    形容詞が属格より後ろにあるので、名詞句の外にある述語と読む。

    éso fáron gróm némes só.

    読み:エーソ ファーロン グローン ネーメス ソー。

    és-ofárongrómném-essó.
    いる-<(重いものが)>荷<主格>重い<私>-<属格>この<重性>

    「この、私の重い荷がある。」

    名詞・形容詞・属格・指示詞の順の名詞句。指示詞で閉じているので、gróm は名詞を飾る。

    éso fáron gróm un méndalei.

    読み:エーソ ファーロン グローン ウン メンダレイ。

    és-ofárongrómunméndal-ei.
    いる-<(重いものが)>荷<主格>重い内に中-<与格>

    「重い荷がある(この世にある)。」

    場所を言わない存在文には un méndalei「中の世界に」を添える。くだけた言葉では séndoi「ここに」で代える。

    sán fáronul grómul ín an kórvoi.

    読み:サーン ファーロヌル グロームル イーン アン コルヴォイ。

    sánfáron-ulgróm-ulínankórv-oi.
    いる<彼らが>荷-<〜たちが>重い-<〜たちが>一上手倉-<与格>

    「倉の北側に、重い荷がいくつかある。」

    名詞句の終わりの ín は、複数の名詞句にも使える不定の目印。

    éso ín fáron gróm ín an kórvoi.

    読み:エーソ イーン ファーロン グローン イーン アン コルヴォイ。

    és-oínfárongrómínankórv-oi.
    いる-<(重いものが)>一荷<主格>重い一上手倉-<与格>

    「倉の北側に、重い荷が一つある。」

    名詞の前の ín は数の「一つの」、名詞句の終わりの ín は不定の「ある」。二つ並べてよい。

    vándin fáron, lísa lisár plánan.

    読み:ヴァンディン ファーロン、リーサ リサール プラーナン。

    vánd-infáron,lís-alis-árplán-an.
    量る-<〜して・〜く>荷<対格>書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>帳簿-<対格>

    「荷を量りながら、書記は帳簿を書く。」

    未完了の語根+-in で「〜しながら」。量るのも書くのも書記。

    lísa lisár plánan, vándin fáron.

    読み:リーサ リサール プラーナン、ヴァンディン ファーロン。

    lís-alis-árplán-an,vánd-infáron.
    書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>帳簿-<対格>量る-<〜して・〜く>荷<対格>

    「書記は荷を量りながら、帳簿を書く。」

    未完了の -in は文の後ろに置くのが基本。読点で区切るので、枠には数えない。

    na vándin fáron, lísa lisár plánan.

    読み:ナ ヴァンディン ファーロン、リーサ リサール プラーナン。

    navánd-infáron,lís-alis-árplán-an.
    <〜ない>量る-<〜して・〜く>荷<対格>書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>帳簿-<対格>

    「荷を量らずに、書記は帳簿を書く。」

    「〜せずに」は -in の動詞の前に na を置く。量らないのも書くのも書記。

    fléira aulisár si tóra faronár.

    読み:フレーラ アウリサール シ トーラ ファロナール。

    fléir-aau-lis-ársitór-afaron-ár.
    お出ましになる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>と来る-<(軽いものが)>荷-<〜する人>

    「書記の方がお出ましになり、運び人も来る。」

    目上の人と目下の人は、一つの主語に並べずに二つの文に分けるのが改まった言い方。

    lisésa lisár sáindarais, ré vandénde senár fáron.

    読み:リセーサ リサール サインダライス、レー ヴァンデンデ セナール ファーロン。

    lis-és-alis-ársáindar-ais,révand-énd-esen-árfáron.
    書く-<〜すべし>-<(軽いものが)>書く-<〜する人>証文-<〜たちを><〜と(節)>量る-<〜しますように>-<(軽いものが)>見る-<〜する人>荷<対格>

    「目付が荷を量れるよう、書記は証文を書くべし。」

    市の決まりの文。sáindar は軽性の子音語幹なので、複数対格は -ais になる。ré+願望法で目的「〜するように」を表す。この願望法は丁寧さではなく、そうなってほしいことを表している。

    dúlan dáumbar fáronul du orén.

    読み:ドゥーラン ダウンバル ファーロヌル ドゥ オレーン。

    dúl-andáumbarfáron-ulduorén.
    下る-<彼らが>二十荷-<〜たちが>下手縁<対格>

    「二十の荷が縁へ下りていく。」

    崖道で荷が下ろされていくようすを言う文。dáumbar は dáu(二)と ombár(十)が縮まった不規則な形。三以上の数詞と同じく、後ろの名詞を複数にする。重性名詞の複数は -ul になる。動詞は3人称複数の -an で、複数では性を区別しない。

    léim fáron séndo, ende.

    読み:レーン ファーロン センド、エンデ。

    léimfáronséndo,ende.
    置く<命令法><あなたが>荷<対格>ここどうぞ

    「荷はここに置いてくれ、頼む。」

    縁の市の取引言葉。動詞はむき出しの語幹 léim で、末尾の ende「どうぞ」が添えてある。市は段に乗らない場なので、この形でも無礼にはならない。fáron は重性名詞なので、主格と対格が同じ形になる。

    toríro nébro, na elþéla ilána faronáres.

    読み:トリーロ ネーブロ、ナ エルセーラ イラーナ ファロナーレス。

    tor-ír-onébro,naelþ-él-ailánafaron-ár-es.
    来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>燃える-<〜だろう>-<(軽いものが)>灯<主格>荷-<〜する人>-<属格>

    「霧が上がってくれば、運び人の灯もともらなくなるだろう。」

    崖道でよく聞かれる嘆き。条件の節は動詞を仮定法にするだけで作る。霧 nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。帰結の節は推量法で、否定の na を動詞の直前に置く。ilána は「夜にともる明かり」の意味で、属格の faronáres「運び人の」が後ろからかかる。

    vánda senár téir fáronul.

    読み:ヴァンダ セナール テール ファーロヌル。

    vánd-asen-ártéirfáron-ul.
    量る-<(軽いものが)>見る-<〜する人>三荷-<〜たちを>

    「目付が荷を三つ量る。」

    三以上の数詞の後ろの名詞は複数になる。fáron は重性なので、複数対格は -ul(主格と同じ形)。市の目付は秤と分銅を預かり、荷の重さを量って証文に印を押す。

    dúlau dáu faronárau du orén.

    読み:ドゥーラウ ダウ ファロナーラウ ドゥ オレーン。

    dúl-audáufaron-ár-auduorén.
    下る-<双数>二荷-<〜する人>-<双数>下手縁<対格>

    「二人の運び人が縁へ下りていく。」

    崖道の様子を言う日常の文。dáu の後ろの名詞は双数になる(faronár → faronárau)。主語が双数なので、動詞も双数 -au になる。双数の動詞は人称も性も区別しない。運び人は働き手なので、数詞で数えても失礼にならない。目上の人を指す高め名詞には、dáu も双数もつけられない。

    brúumo pélsa es fáronos.

    読み:ブルーモ ペルサ エス ファーロノス。

    brúum-opélsaesfáron-os.
    落ちる-<(重いものが)>脂の木の材・荷札<主格>から荷-<属格>

    「荷札が荷から落ちた。」

    荷札を主語にした文。名詞は軽性の語形 pélsa のままだが、伐った材を指すので、動詞は3人称単数・重性の -o で一致する。立ち木なら同じ動詞でも brúuma になる。

    ké toréla faronár dórel?

    読み:ケー トレーラ ファロナール ドーレル?

    kétor-él-afaron-árdórel?
    <〜か>来る-<〜だろう>-<(軽いものが)>荷-<〜する人>明日

    「運び人は明日来るだろうか。」

    同輩どうしの問い。時制の語形がないので、確かでない未来のことは推量法で言う。強勢は推量法の -él- に移り、語根の ´ は消える(tóra → toréla)。faronár は fáron「荷」に -ár「〜する人」がついた語。

    vánda senár fáron.

    読み:ヴァンダ セナール ファーロン。

    vánd-asen-árfáron.
    量る-<(軽いものが)>見る-<〜する人>荷<対格>

    「目付が荷を量る。」

    直説法を使った基本の VSO の文。年代記や帳簿の地の文にも使う言い切りの形。直説法には法の印がないので、強勢は語根に残る(vánda)。fáron は重性なので、目的語でも主格と同じ形になる。

    sénim fáron si sáindaran.

    読み:セーニン ファーロン シ サインダラン。

    sén-imfáronsisáindar-an.
    見張る・検める-<私が>荷<対格>と証文-<対格>

    「荷と証文を検めます。」

    市や倉で、荷とその書きつけを突き合わせて確かめるときの言い方。「AとB」は si で並べ、二つとも目的語にする。重性の fáron は対格でも語尾がなく、軽性の sáindar は -an をとる。

    ké éso fáron tásei? na éso.

    読み:ケー エーソ ファーロン ターセイ?ナ エーソ。

    kéés-ofárontás-ei?naés-o.
    <〜か>いる-<(重いものが)>荷<主格><あなた>-<与格><〜ない>いる-<(重いものが)>

    「「お前、荷はあるか?」「いや、ない。」」

    所有の問いと否定の答え。所有は「ある+持ち主の与格」で言い、動詞は持ち主ではなく、持たれている物 fáron(重性)に一致する。そのため答えでも人称は変わらず、na éiso となる。

    sén fáron só!

    読み:セーン ファーロン ソー!

    sénfáronsó!
    見る<命令法><あなたが>荷<対格>この<重性>

    「この荷を見ろ!」

    下向きの命令。命令法の2人称単数は、語幹をむき出しにした sén の形になる。fáron は重性なので、対格でも格語尾がつかず、指示詞も重性の só になる。市の言葉で言うと sén fáron, ende となり、命令の強さは消える。

    méirim grúndo tásei an duliþímei fáronos.

    読み:メーリン グルンド ターセイ アン ドゥリシーメイ ファーロノス。

    méir-imgrúndotás-eiandul-iþ-ím-eifáron-os.
    与える-<私が>掛け<対格><あなた>-<与格>〜の前に下る-<〜させる>-<〜の技・〜さ>-<与格>荷-<属格>

    「掛けは、荷を下ろす前にお前に払う。」

    縁の市での約束の言い方。時間は川の流れにたとえられ、早いほうが上手なので、an+与格が「〜の前に」の意味になる。duliþímei は dulíþ-「下ろす」に -ím「〜すること」がついた名詞の与格で、強勢は -ím に移る。同じ組み立ての決まり文句に an nébroi「霧の前に(=期限までに)」がある。

    mé vandésa fáron du lisímei sáindares.

    読み:メー ヴァンデーサ ファーロン ドゥ リシーメイ サインダレス。

    mévand-és-afárondulis-ím-eisáindar-es.
    <禁止・願いの打ち消し>量る-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>〜の後に書く-<〜の技・〜さ>-<与格>証文-<属格>

    「証文を書いたあとに荷を量らぬこと。」

    市の決まりを述べる当為法の文。荷は先に秤で量り、そのあとで証文に書く、という順序を定めている。主語を言わないので「人は〜すべし」という一般の主語になり、軽性の形をとる。du+与格は、an+与格「〜の前に」と対になって使われる。

    na gélimor an dún es fáronos.

    読み:ナ ゲーリモル アン ドゥーン エス ファーロノス。

    nagél-imorandúnesfáron-os.
    <〜ない>行く-<我々が>上手へ・上手で丘<対格>〜のゆえに荷-<属格>

    「荷があるので、我々は丘へは上がらない。」

    es+属格で理由を表す。高原語では理由を「出どころ」と考えるので、es+属格は「〜から」とも「〜のゆえに」とも読め、どちらの意味かは文脈で決まる。否定の小辞 na は動詞の直前に置く。

    hóina éndra te méirim fáron élei.

    読み:ホイナ エンドラ テ メーリン ファーロン エーレイ。

    hóin-aéndrateméir-imfáronél-ei.
    帰る-<(軽いものが)>人<主格><関係節>与える-<私が>荷<対格>彼-<与格>

    「私が荷を渡した人が帰っていく。」

    関係節の中で受け手(与格)にあたる部分は穴のままにできないので、代名詞の与格 élei で埋める(再述代名詞)。人を受けるので軽性の él を使う。関係節は文の終わりまで続く。

    éso fáron só gróm.

    読み:エーソ ファーロン ソー グローン。

    és-ofáronsógróm.
    いる-<(重いものが)>荷<主格>この<重性>重い

    「この荷は重い。」

    運び人がよく口にする日常の文。荷は重性なので、繋辞は -o、指示詞は重性の só になる。指示詞が名詞句の終わりの目印になり、その後ろの gróm が述語だとわかる。

    faronérim fáron fláin.

    読み:ファロネーリン ファーロン フライン。

    faronér-imfáronfláin.
    担ぐ-<私が>荷<対格>軽い

    「私は軽い荷を担ぐ。」

    崖道でよく聞く言い方。荷は重性で主格と対格が同じ形なので、形容詞も重性・対格の形(語尾なし)になる。

    éso fáron némes fláin.

    読み:エーソ ファーロン ネーメス フライン。

    és-ofáronném-esfláin.
    いる-<(重いものが)>荷<主格>私-<属格>軽い

    「私の荷は軽い。」

    「AはBだ」の文で、繋辞 és- を文頭に置いている。荷 fáron は重性なので、繋辞は -o をとる。形容詞 fláin は重性・主格の形で、語尾はつかない。

    nóurim ré éso fáron só gróm.

    読み:ノーリン レー エーソ ファーロン ソー グローン。

    nóur-imréés-ofáronsógróm.
    思う-<私が>といる-<(重いものが)>荷<主格>この<重性>重い

    「この荷は重いと思う。」

    運び人が荷を担ぐ前に言うような日常の文。思った内容の節も ré で導く。節の主語 fáron は重性なので、繋辞は éso、指示詞は só になる。

    léimim fáron séndoi ré luuménde ausenár ó.

    読み:レーミン ファーロン センドイ レー ルーメンデ アウセナール オー。

    léim-imfáronsénd-oiréluum-énd-eau-sen-áró.
    置く-<私が>荷<対格>ここ-<与格>ようにご覧になる-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人><3人称単数・重性>

    「「目付殿がご覧になれるよう、荷をここに置きます。」」

    縁の市で荷を検めてもらうときの言い方。ré と願望法を組み合わせると目的を表す。ここでの願望法は丁寧さではなく、「そうなってほしい」という意味を表す。ó は荷を受ける重性の代名詞で、主格と対格が同じ形。

    séna lisár sáindaran si fáron.

    読み:セーナ リサール サインダラン シ ファーロン。

    sén-alis-ársáindar-ansifáron.
    見る-<(軽いものが)>書く-<〜する人>証文-<対格>と荷<対格>

    「書記は証文と荷を見る。」

    si で目的語を二つ並べた文。並べた語は、それぞれ文の中の役割に合う格をとる(どちらも対格。重性の fáron は主格と同じ形)。動詞は主語の書記に一致するので、双数にはならない。

    pá dulíþa fáron só?

    読み:パー ドゥリーサ ファーロン ソー?

    pádul-íþ-afáronsó?
    誰<主格>下る-<〜させる>-<(軽いものが)>荷<対格>この<重性>

    「この荷は誰が下ろすのだ?」

    降ろし場で荷の担い手を尋ねる言い方。疑問詞 pá を文頭に出している。人を指すので、動詞は軽性の -a をとる。目上の人には問いの形を使わず、推量法で言い換える。

    dúlo fáron némores du orén.

    読み:ドゥーロ ファーロン ネーモレス ドゥ オレーン。

    dúl-ofáronnémor-esduorén.
    下る-<(重いものが)>荷<主格>我々-<属格>下手縁<対格>

    「我々の荷は縁へ下りていく。」

    属格 némores「我々の」は名詞 fáron の後ろに置く。荷 fáron は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。崖道の商人どうしが、荷の段取りを確かめるときの言い方。némor は聞き手を含む場合も含まない場合も同じ形で、どちらなのかは文脈で決まる。

    sén fáron tó!

    読み:セーン ファーロン トー!

    sénfárontó!
    見る<命令法><あなたが>荷<対格>あの<重性>

    「あの荷を見ろ。」

    下向きの命令。命令法の2人称単数は、むき出しの語幹 sén だけで言う。tó は重性の名詞の後ろに置き、格では形が変わらない。荷 fáron は重性なので、主格と対格が同じ形。縁の市で同じ用件を言うときは sén fáron, ende のように ende を添える。

    fáron pól vándes?

    読み:ファーロン ポール ヴァンデス?

    fáronpólvánd-es?
    荷<対格>どの<重性>量る-<あなたが>

    「「どの荷を量っているんだ?」」

    縁の市でよく聞く問い。pél は名詞の後ろに置き、「名詞+pél」をひとまとまりにして文頭に出す。pél は格でも性でも形を変えない。fáron は重性なので、主格と対格が同じ形になる。2人称を使っているので、下向きか並びの話し方。

    méir fáron térin lísen, ende.

    読み:メール ファーロン テーリン リーセン、エンデ。

    méirfárontérinlís-en,ende.
    与える<命令法><あなたが>荷そのとおりに書く-<〜した・〜された>どうぞ

    「書いたとおりに荷を渡してくれ、頼む。」

    縁の市の決まり文句「térin lísen(書いたとおりに)」を使った取引言葉の文。分詞 lísen は、この決まり文句の中では一致の語尾をつけず、形を変えない。帳簿や証文の文面にたがわないことを念押しするときに使う。

    pómbar fáronul dulíþes?

    読み:ポンバル ファーロヌル ドゥリーセス?

    pómbarfáron-uldul-íþ-es?
    いくつ荷-<〜たちを>下る-<〜させる>-<あなたが>

    「お前は荷をいくつ下ろすのか。」

    下向きの問い(2人称を使う)。pómbar は数詞と同じく名詞の前に置き、名詞は複数にする。fáron は重性なので、複数対格は -ul になる。人ではなく物を数える問いなので、無礼にはならない。

    ké dúlo fáron du séndo?

    読み:ケー ドゥーロ ファーロン ドゥ センド?

    kédúl-ofáronduséndo?
    <〜か>下る-<(重いものが)>荷<主格>下手ここ<対格>

    「荷はここへ下りてくるのか。」

    店先で荷の行き先を確かめる、くだけた問い。séndo は重性o語幹の名詞として変化し、主格と対格が同じ形になる。du+対格で「(下手の)ここへ」を表す。動詞は主語の fáron(重性)に一致して dúlo になる。答えは dúlo(来る)か na dúlo(来ない)。

    tóran faronárai es orénos telúin.

    読み:トーラン ファロナーライ エス オレーノス テルーイン。

    tór-anfaron-ár-aiesorén-ostelúin.
    来る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>から縁-<属格>その時

    「その時、運び人たちが縁から上がってきた。」

    昔語りや出来事の報告で、すでに話に出た時を指す言い方。動詞には時制がないので、過去のことだとわかるのは telúin と文脈による。faronár は fáron「荷」に -ár「〜する人」がついた語。

    faronér ín fáron, ende.

    読み:ファロネール イーン ファーロン、エンデ。

    faronérínfáron,ende.
    担ぐ<命令法><あなたが>一荷<対格>どうぞ

    「荷を一つ担いでくれ、頼む。」

    崖道や市で、運び人に仕事を頼むときの言葉。ín の後ろの名詞は単数になる。fáron は重性なので、対格も主格と同じ形。むき出しの語幹+ende は取引言葉の型。

    tóran sóur faronárai es orénos.

    読み:トーラン ソール ファロナーライ エス オレーノス。

    tór-ansóurfaron-ár-aiesorén-os.
    来る-<彼らが>六荷-<〜する人>-<〜たちが>から縁-<属格>

    「運び人が六人、縁から上がってくる。」

    運び人のような目下の者や働き手は、数詞で数えてかまわない。目上の人は数えず、ひとまとまりの複数で言う。三以上の数詞の後ろでは、名詞は複数になる。

    sén fáron selúin, ende.

    読み:セーン ファーロン セルーイン、エンデ。

    sénfáronselúin,ende.
    見る<命令法><あなたが>荷<対格>今どうぞ

    「今すぐ荷を見てくれ、頼む。」

    縁の市の取引言葉。sén- は命令法2人称単数で、語幹がそのまま出る形。selúin を添えると「今すぐ」と急がせる響きになる。ende をつけるので、命令の形でも無礼にはならない。fáron は重性なので、もともと対格の語尾がない。

    faronéran faronárai nél fáronul du orén.

    読み:ファロネーラン ファロナーライ ネール ファーロヌル ドゥ オレーン。

    faron-ér-anfaron-ár-ainélfáron-ulduorén.
    荷-<〜でする>-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>七荷-<〜たちを>下手縁<対格>

    「運び人たちは荷を七つ担いで縁へ下りる。」

    崖道の荷運びを言う文。働き手は数えてもよいが、ここで数えているのは荷のほう。fáron は重性なので、複数対格は -ul で、主格と同じ形になる。

    ésa faronár dúlen réum þrénul.

    読み:エーサ ファロナール ドゥーレン レウン スレーヌル。

    és-afaron-árdúl-enréumþrén-ul.
    いる-<(軽いものが)>荷-<〜する人・主格>下る-<〜した・〜された>九段-<〜たちを>

    「運び人は九段下りの者だ。」

    身分の言い方「dúlen+数詞+þrén の複数対格(道のりの対格)」。réum þrénul「九段」は、いちばん下の段を指す。分詞 dúlen は、主語 faronár(軽性・単数・主格)に一致するので、一致の語尾がつかない。

    pómbar fáronul faronéres? faronérim ombár fáronul.

    読み:ポンバル ファーロヌル ファロネーレス?ファロネーリン オンバール ファーロヌル。

    pómbarfáron-ulfaron-ér-es?faron-ér-imombárfáron-ul.
    いくつ荷-<〜たちを>荷-<〜でする>-<あなたが>荷-<〜でする>-<私が>十荷-<〜たちを>

    「「荷をいくつ担ぐんだ?」「十担ぐ。」」

    二人の発話。疑問の数詞 pómbar は、名詞ごと動詞の前に出る。高原語には「はい」にあたる語がないので、答えは動詞を自分の人称に変えて繰り返し、数を添える。崖道での、くだけたやりとり。

    dúlan nél fáronul du orén.

    読み:ドゥーラン ネール ファーロヌル ドゥ オレーン。

    dúl-annélfáron-ulduorén.
    下る-<彼らが>七荷-<〜たちが>下手縁<対格>

    「七つの荷が縁へ下りていく。」

    nél「七」の後ろの名詞は複数になる。fáron「荷」は重性なので、複数主格は -ul。主語が複数なので、動詞は3人称複数の -an をとる。du+対格で「下手へ」の意味になり、重性の orén は主格と対格が同じ形。

    luuménde ausenár ombár fáronul.

    読み:ルーメンデ アウセナール オンバール ファーロヌル。

    luum-énd-eau-sen-árombárfáron-ul.
    ご覧になる-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>十荷-<〜たちを>

    「目付殿に、十の荷をお検めいただきたく存じます。」

    縁の市で、都の手代が目付に頼むときの改まった言い方。命令の代わりに願望法の3人称を使う。lúum- は「見る」の尊敬の補充形で、強勢が -énd- に移るので語根の ´ は消える。数えているのは目上の人ではなく荷なので、数詞を使ってよい。

    rímba senár fáron.

    読み:リンバ セナール ファーロン。

    rímb-asen-árfáron.
    数える-<(軽いものが)>見る-<〜する人・主格>荷<対格>

    「目付が荷を数える。」

    縁の市の検めを述べる文。直説法なので語幹 rímb- がそのまま残る。命令法で語幹をむき出しにすると、語末の mb が m に削られて rím になる(rím fáron, ende.「荷を数えてくれ、頼む」)。

    vándim pómbarin fáronul.

    読み:ヴァンディン ポンバリン ファーロヌル。

    vánd-impómbarinfáron-ul.
    量る-<私が>いくつか荷-<〜たちを>

    「荷をいくつか量る。」

    pómbarin は数詞と同じく名詞の前に置き、後ろの名詞は複数になる。fáron「荷」は重性なので、複数対格は -ul。縁の市で手代が、途中の進み具合を伝えるときの言い方。帳簿では pómbarin のようなあいまいな数は書かず、かならず数字で書く。

    dulíþan kelárai déral fáronos sórel.

    読み:ドゥリーサン ケラーライ デーラル ファーロノス ソーレル。

    dul-íþ-ankel-ár-aidéralfáron-ossórel.
    下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>半分<対格>荷-<属格>今日

    「今日、樵たちは荷の半分を下ろす。」

    何の半分かは属格(fáronos)で後ろに示す。dulíþ- は dúl-「下る」の使役で「下ろす」。直説法なので -íþ- が強勢をとる。sórel のような時の語は文末に置く。降ろし場で、その日の吊り下ろしの段取りを言う文。

    lúin na sénimor gromó éles, elþíþimor fáron éles.

    読み:ルーイン ナ セーニモル グロモー エーレス、エルシーシモル ファーロン エーレス。

    lúinnasén-imorgromóél-es,elþ-íþ-imorfáronél-es.
    とき<〜ない>見る-<我々が>亡骸<対格><3人称単数・軽性>-<属格>燃える-<〜させる>-<我々が>荷<対格><3人称単数・軽性>-<属格>

    「亡骸が見つからないときは、その人の荷を燃やして送る。」

    崖から落ちた者や溺れた者を弔うときの習わしを説明する文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。élþ-「燃える」に使役の -íþ- をつけて「燃やす」にしている。

    mé leimésa fáron un múndo orénos.

    読み:メー レイメーサ ファーロン ウン ムンド オレーノス。

    méleim-és-afáronunmúndoorén-os.
    <禁止・願いの打ち消し>置く-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>内に出口<対格>縁-<属格>

    「縁の口の中へ荷を置かぬこと。」

    市の決まりを刻んだ碑文の文体。道の口をふさがないための決まり。当為法は mé で否定する。主語を言わないので「人は」という一般の主語になり、軽性の形をとる。強勢は当為法の -és- に移る。un+対格で「〜の中へ」。

    dulíþa faronár fáron es rúunos.

    読み:ドゥリーサ ファロナール ファーロン エス ルーノス。

    dul-íþ-afaronárfáronesrúun-os.
    下る-<〜させる>-<(軽いものが)>運び人<主格>荷<対格>から背-<属格>

    「運び人が背から荷を下ろす。」

    崖道の運び人の仕事を述べた文。rúun は重性の子音語幹で、属格は rúunos。es+属格で「〜から」を表す。使役の dulíþ-「下ろす」は、後ろに強勢をもつ接辞がないので、-íþ- が強勢をとる。

    snéima faronár, faronéra fáron.

    読み:スネーマ ファロナール、ファロネーラ ファーロン。

    snéim-afaronár,faronér-afáron.
    身をかがめる-<(軽いものが)>運び人<主格>担ぐ-<(軽いものが)>荷<対格>

    「運び人は身をかがめて荷を担ぐ。」

    体の動きとしての「かがむ」。二つ目の節では主語を言わないが、動詞の語尾から前の節と同じ運び人だとわかる。額に帯をかけて背の荷を支える担ぎ方を描いている。

    pón ombéres? ombérim fáron só.

    読み:ポーン オンベーレス?オンベーリン ファーロン ソー。

    pónombér-es?ombér-imfáronsó.
    何<対格>指さす-<あなたが>指さす-<私が>荷<対格>この<重性>

    「「何を指さしている?」「この荷を指さしている。」」

    二人の発話。高原語には「はい」がないので、問いの動詞を自分の人称に変えて答える。ombér- は ómbo「指」に -ér- がついてできた動詞。物を指さすのは禁忌に当たらない。

    ombéra senár faronáran ré dulíþa fáron es orénos.

    読み:オンベーラ セナール ファロナーラン レー ドゥリーサ ファーロン エス オレーノス。

    ombér-asenárfaronár-anrédul-íþ-afáronesorén-os.
    名指しする-<(軽いものが)>目付<主格>運び人-<対格><〜と(節)>下る-<〜させる>-<(軽いものが)>荷<対格>から縁-<属格>

    「目付は、縁から荷を落としたと運び人を名指しで咎める。」

    人を名指しして咎める意味。ré の後ろの節で、何を咎めたかを言う。縁の市の目付が揉め事を裁く場面の言い方。

    faronéran faronárai fáronul du orén.

    読み:ファロネーラン ファロナーライ ファーロヌル ドゥ オレーン。

    faronér-anfaronár-aifáron-ulduorén.
    担ぐ-<彼らが>運び人-<〜たちが>荷-<〜たちを>下手縁<対格>

    「運び人たちが荷を担いで縁へ下っていく。」

    乾風期の崖道のありふれた光景を言う文。faronár は軽性の子音語幹なので、複数主格は -ai。fáron「荷」は重性なので、複数対格は -ul。du+対格で下手(南)への方向を表す。縁の orén は重性なので、主格と対格が同じ形になる。

    tóro fáron du dáu rúsilaun.

    読み:トーロ ファーロン ドゥ ダウ ルーシラウン。

    tór-ofárondudáurúsil-aun.
    来る-<(重いものが)>荷<主格>下手二赤月の巡り-<双数の〜の・〜に>

    「「荷は赤月ふた巡りのあとに上がってくる。」」

    崖道の商人や運び人が使う日数の言い方。干潟との取引のために、赤月の一巡り(約七日半)を単位にして日を数える。崖道の言葉では双数が衰えているので、dáu の後ろでも双数ではなく複数与格 -ail を使っている。都の言葉なら du dáu rúsilaun になる。くだけた発音では tóro は tór になる。

    na méirim fáron, ésa sáindar sé múrno.

    読み:ナ メーリン ファーロン、エーサ サインダル セー ムルノ。

    naméir-imfáron,és-asáindarsémúrno.
    <〜ない>与える-<私が>荷<対格>いる-<(軽いものが)>証文<主格>この<軽性>当てにならぬもの

    「荷は渡さない、この証文は腐り氷だ。」

    縁の市で取引を断るときの言い方。na は直説法の動詞の直前に置く。証文を tráumo「渡り氷」と請け合われたのに対して、múrno と言い返すことが多い。

    léunim ré tóro duléumo es faronárar, ausenár.

    読み:レウニン レー トーロ ドゥレウモ エス ファロナーラル、アウセナール。

    léun-imrétór-oduléumoesfaron-ár-ar,au-sen-ár.
    申す-<私が><〜と(節)>来る-<(重いものが)>不穏な気配<主格>から荷-<〜する人>-<〜らの><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>

    「目付殿、運び人たちのあいだから不穏な気配が立ちのぼっていると申し上げます。」

    役人に報告する改まった文。léun- は「言う」の謙譲の補充形。「〜と」の節は ré で導き、主節の後ろに置く。呼びかけは呼格を使わず、役職名を文の終わりに読点で区切って添える。ここでの duléumo は風そのものではなく、身分の低い者たちのあいだに広がる不満や噂を指す。下から上がってくる悪いものとして言い表す比喩である。

    ésa él dulána, na áura selvá éles. elþíþimor fáron éles.

    読み:エーサ エール ドゥラーナ、ナ アウラ セルヴァー エーレス。エルシーシモル ファーロン エーレス。

    és-aéldulána,naáur-aselváél-es.elþ-íþ-imorfáronél-es.
    いる-<(軽いものが)><3人称単数・軽性>落ちてきた者<主格><〜ない>昇る-<(軽いものが)>息<主格><3人称単数・軽性>-<属格>燃える-<〜させる>-<我々が>荷<対格><3人称単数・軽性>-<属格>

    「その人は落ちた者だ。その息は昇らない。だから我々は、その人の荷を燃やす。」

    弔いの場での言い方。崖から落ちて死んだ者は、魂が体と一緒に下へ引かれて昇れなくなるとされ、dulána と呼ばれる。遺体が見つからないときは、持ち物を燃やして魂を上へ送る。dulána は人を指すので、繋辞も代名詞も軽性の形(ésa、él)で受ける。elþ-íþ- は「燃える」の使役で「燃やす」の意味で、直説法では -íþ- に強勢が置かれる。

    faronéra gúrnal té gandér si fáron.

    読み:ファロネーラ グルナル テー ガンデール シ ファーロン。

    faronér-agúrnaltégandérsifáron.
    担ぐ-<(軽いものが)>力の強いもの<主格>あの<軽性>硬木<対格>と荷<対格>

    「あの力持ちは、硬木も荷もいっしょに担ぐ。」

    運び人どうしで、大げさにほめたり冷やかしたりするときの言い方。gúrnal té の té は強勢のある指示詞で、後ろに動詞が来ないので、関係節の te ではない。si で目的語を二つ並べている。

    faronéran faronárai árnelan só du orén.

    読み:ファロネーラン ファロナーライ アルネラン ソー ドゥ オレーン。

    faron-ér-anfaron-ár-aiárnel-ansóduorén.
    荷-<〜でする>-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>木-<対格>この<重性>下手縁<対格>

    「運び人たちがこの材木を縁へ担いでいく。」

    faronér-「担ぐ」は fáron「荷」に、名詞から動詞を作る -ér- をつけた語。faronár「運び人」は同じ語に -ár「〜する人」をつけた語。伐られた木なので、名詞は軽性の対格 árnelan のまま、指示詞は重性の só で一致させる。名詞の語尾と一致の性が食い違うのは、伐った木の決まった扱い方。

    tául fáron, ende.

    読み:タウル ファーロン、エンデ。

    táulfáron,ende.
    取る<命令法><あなたが>荷どうぞ

    「荷を取ってくれ、頼む。」

    縁の市の取引言葉。動詞は語幹をむき出しで使い(命令法2単と同じ形)、格語尾は落ち、ende を添える。市は段に乗らない場なので、この形でも無礼にはならない。

    aukráila ausenár fáron.

    読み:アウクライラ アウセナール ファーロン。

    au-kráil-aau-sen-árfáron.
    <お〜になる・御〜>-手に持つ-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>荷<対格>

    「目付殿は荷を手にお持ちだ。」

    目上の人の動作を言うので、動詞にも役職名にも尊敬の au- をつける。荷 fáron は重性なので、対格に語尾がつかず、主格と同じ形になる。

    faronér fáron, ende.

    読み:ファロネール ファーロン、エンデ。

    faronérfáron,ende.
    担ぐ<命令法><あなたが>荷どうぞ

    「荷を担いでくれ、頼む。」

    縁の市の取引言葉。動詞はむき出しの語幹 faronér で言い、そのあとに固まった小辞 ende を添える。語幹は r で終わるので、語末の子音を削る必要はない。市は段に乗らない場なので、命令法と同じ形を使っても無礼にはならない。

    faronerélan faronárai sáko es orénos dórel.

    読み:ファロネレーラン ファロナーライ サーコ エス オレーノス ドーレル。

    faroner-él-anfaron-ár-aisákoesorén-osdórel.
    運ぶ-<〜だろう>-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>塩<対格>から縁-<属格>明日

    「明日、運び人たちが縁から塩を運んでくるだろう。」

    これから先のことは推量法 -él- で言う。強勢は -él- に移り、-ér- の ´ は消える。3人称複数の語尾 -an は性を区別しない。塩 sáko は干潟から来る重性の名詞で、上げ荷の代表である。es+属格で、方向を問わない「〜から」を表す。

    dufaronérim aufáron aulisáres an dún.

    読み:ドゥファロネーリン アウファーロン アウリサーレス アン ドゥーン。

    du-faronér-imau-fáronau-lis-ár-esandún.
    <〜させていただく>-運ぶ-<私が><お〜になる・御〜>-荷<対格><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<属格>上手丘<対格>

    「「書記の方のお荷物を、丘の上まで運ばせていただきます。」」

    自分の行いを謙譲の接頭辞 du- で低め、荷の持ち主を au- のついた属格 aulisáres で高めている。f- の前の du- は形が変わらない。an+対格は「上手へ」で、湖都の坂道では丘の上へ向かうことを表す。

    lúin glóira ausenár, þóran faronárai.

    読み:ルーイン グロイラ アウセナール、ソーラン ファロナーライ。

    lúinglóir-aau-sen-ár,þór-anfaron-ár-ai.
    ときお越しになる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>立つ-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>

    「目付殿がお越しになると、運び人たちは立ち上がる。」

    lúin で始まる「〜とき」の節を主節の前に置いている。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。þór- は「立っている」状態と「立ち上がる」動作の両方を表し、時制がないので、どちらの意味かは文脈で決まる。

    léim fáron séndo, ende.

    読み:レーン ファーロン センド、エンデ。

    léimfáronséndo,ende.
    置く<命令法><あなたが>荷ここどうぞ

    「荷はここに置いてくれ、頼む。」

    縁の市の取引言葉。動詞はむき出しの語幹 léim で言い、ende を添える。séndo「ここ」は格変化をしない場所の語。荷解きの場でよく聞かれる言い方である。

    faronéra faronár fáron só.

    読み:ファロネーラ ファロナール ファーロン ソー。

    faronér-afaron-árfáronsó.
    担ぐ-<(軽いものが)>荷-<〜する人・主格>荷<対格>この<重性>

    「運び人がこの荷を担ぐ。」

    faronér- は fáron「荷」に、名詞から動詞を作る -ér- がついた語で、強勢は -ér- にある。主語の faronár「運び人」は人なので軽性で、動詞は -a をとる。fáron は重性なので主格と対格が同じ形で、VSO の位置から目的語だとわかる。指示詞も重性の só で一致している。

    lúin tóro nébro, ráuman faronárai du orén.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ラウマン ファロナーライ ドゥ オレーン。

    lúintór-onébro,ráum-anfaron-ár-aiduorén.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>歩く-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下手縁<対格>

    「霧が来ると、運び人たちは縁のほうへ歩いていく。」

    lúin の節を主節の前に置いている。霧 nébro は重性o語幹なので、動詞は -o をとる。行き先は du+対格「下手へ」で言う。高原語の移動の言い方では、上るのか下るのかをかならず言い分ける。

    lúin ráumsan faronárai téir lóurul, hélan.

    読み:ルーイン ラウンサン ファロナーライ テール ロールル、ヘーラン。

    lúinráums-anfaron-ár-aitéirlóur-ul,hél-an.
    とき旅をする<〜し終えた>-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>三瀬-<〜たちを>座る-<彼らが>

    「瀬を三つたどり終えると、運び人たちは腰を下ろす。」

    ráum- の語根は二重母音をもつので、完了相は -s- を足して ráums- にする。téir lóurul は、どれだけの道のりをたどったかを表す道のりの対格で、téir「三」の後ろの重性名詞は複数 -ul になる。川沿いの道を、瀬をひとつずつ数えながら進む言い方。

    léimsan aursárai sárvo ré mé duliþésa fáron du dálor.

    読み:レーンサン アウルサーライ サルヴォ レー メー ドゥリセーサ ファーロン ドゥ ダーロル。

    léims-anaursár-aisárvorémédul-iþ-és-afárondudálor.
    据える<〜し終えた>-<彼らが>祖先-<〜たちが>禁忌<対格><〜と(節)><禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>下手下の国<対格>

    「祖先たちは、下の国へ荷を落としてはならぬという禁忌を定めた。」

    ré の後ろの節は当為法を保ち、mé で否定している。主語を言わない当為法は「人は〜すべし」の意味で、軽性の -a をとる。強勢は -és- に移る。崖から物を落としてはいけない、という禁忌のいわれを語る文。

    bruumíro fáron es orénos, droumélan faronárai.

    読み:ブルーミーロ ファーロン エス オレーノス、ドロウメーラン ファロナーライ。

    bruum-ír-ofáronesorén-os,droum-él-anfaron-ár-ai.
    落ちる-<もし〜なら>-<(重いものが)>荷<主格>から縁-<属格>嘆く-<〜だろう>-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>

    「縁から荷が落ちれば、運び人たちは嘆くだろう。」

    条件の節は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけで作る。仮定法の -ír- が強勢をとるので、語根の ´ は消えて bruumíro になる。崖から物が落ちることは忌まれるので、崖道の人々は口にするのを嫌う言い方でもある。

    lúin tóro nébro, hóinan faronárai es orénos.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ホイナン ファロナーライ エス オレーノス。

    lúintór-onébro,hóin-anfaron-ár-aiesorén-os.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>帰る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>から縁-<属格>

    「霧が来ると、運び人たちは縁から帰っていく。」

    縁の市の季節の終わりを言う文。nébro「霧」は重性なので、tóro は重性の -o をとる。市は霧の前に閉じるので、崖道の人々は霧を合図に故郷へ帰る。

    hál faronárais!

    読み:ハール ファロナーライス!

    hálfaron-ár-ais!
    呼ぶ<命令法><あなたが>荷-<〜する人>-<〜たちを>

    「運び人たちを呼べ。」

    下向きの命令。語幹 hál- は語末の子音のつながりを削る必要がないので、むき出しの語幹がそのまま命令法2人称単数の形になる。縁の市の取引言葉では、格語尾を落として hál faronár, ende とも言う。

    dróuma faronár es fáronos grómos.

    読み:ドローマ ファロナール エス ファーロノス グローモス。

    dróum-afaronáresfáron-osgróm-os.
    嘆く-<(軽いものが)>運び人<主格>から荷-<属格>重い-<重性・属格>

    「運び人は荷が重いと嘆く。」

    嘆きの対象は es+属格で示す。形容詞 gróm は、fáron(重性)の属格に一致して -os をとる。崖道の運び人のぼやき。

    tául fáron mór, ende.

    読み:タウル ファーロン モール、エンデ。

    táulfáronmór,ende.
    取る<命令法><あなたが>荷<対格>大きいどうぞ

    「大きいほうの荷を取ってくれ、頼む。」

    縁の市の取引言葉。動詞はむき出しの語幹で言い、ende を添える。fáron は重性なので、対格でも形は変わらない。形容詞にも語尾はつかない。

    sén fáron pír, ende.

    読み:セーン ファーロン ピール、エンデ。

    sénfáronpír,ende.
    見る<命令法><あなたが>荷<対格>小さいどうぞ

    「小さい荷を見てくれ、頼む。」

    縁の市の取引言葉。動詞はむき出しの語幹で言い、ende を添える。荷 fáron は重性なので、それにかかる形容詞は、対格でも語尾がつかない。

    ké véilses fáron? na véilsim.

    読み:ケー ヴェールセス ファーロン?ナ ヴェールシン。

    kévéils-esfáron?navéils-im.
    <〜か>忘れる<〜し終えた>-<あなたが>荷<対格><〜ない>忘れる<〜し終えた>-<私が>

    「「荷を忘れてきたのか?」「忘れてない。」」

    二人の発話。語根 véil- は二重母音をもつので、完了相は -s- を足して véils- にする。はい・いいえで答える問いには、問いの動詞を自分の人称に変えて繰り返して答える。2人称を使っているので、くだけた話し方か下向きの話し方。

    povéra senár faronárei ré pá dulíþa fáron só.

    読み:ポヴェーラ セナール ファロナーレイ レー パー ドゥリーサ ファーロン ソー。

    povér-asen-árfaronár-eirépádul-íþ-afáronsó.
    取り調べる-<(軽いものが)>見る-<〜する人>運び人-<与格><〜と(節)>誰<主格>下る-<〜させる>-<(軽いものが)>荷<対格>この<重性>

    「「目付は運び人を取り調べ、誰がこの荷を下ろしたのかと問いただす。」」

    「取り調べる」の意味では、調べられる人を対格の目的語にとる。ré の節の中では、疑問詞 pá「誰」が動詞の前に出ている。重性の指示詞 só は、名詞 fáron の後ろに置く。

    poverésa senár fáronul te dúlan es orénos.

    読み:ポヴェレーサ セナール ファーロヌル テ ドゥーラン エス オレーノス。

    pover-és-asen-árfáron-ultedúl-anesorén-os.
    取り調べる-<〜すべし>-<(軽いものが)>見る-<〜する人>荷-<〜たちを><関係節>下る-<彼らが>から縁-<属格>

    「目付は、縁から下りてくる荷を検めるべし。」

    市の決まりを記した碑文の文体。当為法の -és- が強勢をとるので、語根の強勢は消える。主語の senár(軽性)を明示しているので、動詞は3単・軽性。fáronul は重性の複数対格で、関係節 te dúlan es orénos がこれを修飾する。

    víran faronárai viráis múrais senárei.

    読み:ヴィーラン ファロナーライ ヴィライス ムーライス セナーレイ。

    vír-anfaron-ár-aivir-áismúr-aissen-ár-ei.
    言う-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>言葉-<〜たちを>崩れた-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格>見る-<〜する人>-<与格>

    「運び人たちは目付に崩れた言葉で話す。」

    都の人が、縁の市の取引言葉について言うときの言い方。受け手の目付は与格 senárei で表す。形容詞は軽性・複数・対格の -ais の形で viráis に一致している。

    léimim fáron húmel elþéi.

    読み:レーミン ファーロン フーメル エルセー。

    léim-imfáronhúmelelþ-éi.
    置く-<私が>荷<対格>湿った火-<与格>

    「湿った荷を火のそばに置く。」

    霧期の家の中のふつうの言い方。fáron「荷」は重性なので、形容詞は語尾のない húmel のままになる。与格の elþéi は場所を表し、「火のところに」の意味になる。

    dróuma ólmar ré víran faronárai viráis rúgalais.

    読み:ドローマ オルマル レー ヴィーラン ファロナーライ ヴィライス ルーガライス。

    dróum-aólmarrévír-anfaron-ár-aivir-áisrúgal-ais.
    嘆く-<(軽いものが)>年長者<主格><〜と(節)>言う-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>言葉-<〜たちを>粗野な-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格>

    「年長者は、運び人たちが粗野な言葉を使うと嘆く。」

    都でよく聞く嘆き。ré の後ろの節も、主節と同じく動詞で始まる。形容詞は軽性・複数・対格の rúgalais の形で viráis に一致している。

    na esíro fáron, na eséla lúsa faronárei.

    読み:ナ エシーロ ファーロン、ナ エセーラ ルーサ ファロナーレイ。

    naes-ír-ofáron,naes-él-alúsafaronár-ei.
    <〜ない>いる-<もし〜なら>-<(重いものが)>荷<主格><〜ない>いる-<〜だろう>-<(軽いものが)>日々の糧<主格>運び人-<与格>

    「荷がなければ、運び人に日々の糧はなかろう。」

    崖道の暮らしを言う、決まった言い方。条件の部分は、接続詞を使わずに仮定法だけで作る。荷 fáron が重性なので、動詞は -o をとる。帰結の部分は推量法で、lúsa(軽性)に一致して -a になる。lúsa は「食い扶持」の意味。

    esésa tendá faronárar kéum.

    読み:エセーサ テンダー ファロナーラル ケウン。

    es-és-atend-áfaron-ár-arkéum.
    いる-<〜すべし>-<(軽いものが)>織る-<〜するもの(重)>荷-<〜する人>-<〜らの>生成りの

    「運び人の布は生成りたるべし。」

    法典や決まりの書きぶりで、当為法を使う。強勢は -és- に移る。下の段の人は染めていない生成りか灰色の衣を着る、という衣の作法を述べた文。

    dulíþan faronárai kumbórul du orén.

    読み:ドゥリーサン ファロナーライ クンボールル ドゥ オレーン。

    dul-íþ-anfaron-ár-aikumbór-ulduorén.
    下る-<〜させる>-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>青銅器-<〜たちを>下手縁<対格>

    「運び人たちが青銅器を縁へ下ろしていく。」

    下ろし荷の品目としての kumbór。器の一つ一つを指すときは、重性の複数 kumbórul(主格・対格が同じ形)を使う。使役の -íþ- は、後ろに強勢をもつ接辞がないので、自分で強勢をとる。

    léim plíndo fáron, ende.

    読み:レーン プリンド ファーロン、エンデ。

    léimplíndofáron,ende.
    置く<命令法><あなたが>荷札荷どうぞ

    「荷札を荷につけてくれ、頼む。」

    縁の市の取引言葉。動詞はむき出しの語幹(命令法2単と同じ形)で、格語尾が落ちるので、改まった言葉なら与格 fáronoi になる「荷に」も fáron のままで言う。文末に ende を添えて頼む。荷札を「つける」は léim-「置く」で表す。

    lúin hóinan faronárai, émbelan virán aursárail.

    読み:ルーイン ホイナン ファロナーライ、エンベラン ヴィラーン アウルサーライル。

    lúinhóin-anfaron-ár-ai,émbel-anvir-ánaursár-ail.
    とき帰る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>捧げる-<彼らが>言葉-<対格>祖先-<〜らに>

    「運び人たちは帰ってくると、祖先に言葉を捧げる。」

    崖道から戻った者が、改まった言葉を祖先に捧げる習わしを説明する文。後半の主語は前半と同じなので言わない。

    þúnda senár grúndo faronárar.

    読み:スンダ セナール グルンド ファロナーラル。

    þúnd-asen-árgrúndofaron-ár-ar.
    裁く-<(軽いものが)>見る-<〜する人・主格>掛け<対格>荷-<〜する人>-<〜らの>

    「目付は運び人たちの掛けをめぐる揉め事を裁く。」

    縁の市の慣行を述べる文。grúndo「掛け」は重性の o語幹なので、対格も主格と同じ形になる。属格 faronárar は名詞の後ろに置く。

    sén fáron sórel, ende.

    読み:セーン ファーロン ソーレル、エンデ。

    sénfáronsórel,ende.
    見る<命令法><あなたが>荷今日どうぞ

    「今日のうちに荷を見てくれ、頼む。」

    縁の市の取引言葉。格語尾が落ちるので、都の言葉なら与格 sórelei となるところを、むき出しの sórel で言う。動詞もむき出しの語幹 sén で、ende を添える。市の場では、命令法と同じ形でも無礼にはならない。

    vándir fáron an vélunei!

    読み:ヴァンディル ファーロン アン ヴェールネイ!

    vánd-irfáronanvélun-ei!
    量る-<皆で〜せよ>荷<対格>上手日の入り-<与格>

    「日が沈む前に荷を量れ。」

    縁の市で、働き手たちに指図する命令(命令法の2人称複数)。時間は川の流れとして言い表すので、an+与格「日の入りの上手で」が「日の入りの前に」という意味になる。

    faronér fáron só sal kórvo!

    読み:ファロネール ファーロン ソー サル コルヴォ!

    faronérfáronsósalkórvo!
    担ぐ<命令法><あなたが>荷<対格>この<重性>〜の外に倉<対格>

    「この荷を倉の外へ担ぎ出せ。」

    運び人に向けた、下向きの命令。sal が対格と組むと「〜の外へ」という移動の向きを表す。kórvo は重性o語幹なので、対格も主格と同じ形になる。faronér- は名詞 fáron「荷」に -ér- がついてできた動詞で、命令法の2人称単数では語幹がそのまま出る。

    lúin ésa reinálva, na dúlan faronárai du dálor.

    読み:ルーイン エーサ レイナルヴァ、ナ ドゥーラン ファロナーライ ドゥ ダーロル。

    lúinés-areinálva,nadúl-anfaron-ár-aidudálor
    ときいる-<(軽いものが)>雨期<主格><〜ない>下る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下手下の国<対格>

    「雨期のあいだは、運び人は下の国へ下りない。」

    雨期には崖道が滑りやすく、閉じられることを述べた文。「雨期である間」は lúin+és- で言う。否定の na は動詞の直前に置く。faronár は「荷」に行為者の -ár をつけた語で、軽性なので複数主格は -ai になる。

    lúin tóra kailálva, dúlan faronárai du dálor.

    読み:ルーイン トーラ カイラルヴァ、ドゥーラン ファロナーライ ドゥ ダーロル。

    lúintór-akailálva,dúl-anfaron-ár-aidudálor
    とき来る-<(軽いものが)>乾風期<主格>下る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下手下の国<対格>

    「乾風期が来ると、運び人たちは下の国へ下りていく。」

    乾風期に崖道が開き、縁の市へ荷が運ばれることを述べた文。前の雨期の例文とちょうど裏返しの内容になる。kailálva は軽性なので、動詞は -a で一致する。dálor は重性なので、対格も主格と同じ形になる。

    fláinim. faronéres fáron némes du orén.

    読み:フライニン。ファロネーレス ファーロン ネーメス ドゥ オレーン。

    fláinim.faron-ér-esfáronném-esduorén.
    助かる荷-<〜でする>-<あなたが>荷<対格><私>-<属格>下手縁<対格>

    「助かったよ。俺の荷を縁まで担いでくれて。」

    運び人どうしの礼。faronér- は名詞 fáron「荷」に -ér- をつけて作った動詞。持ち主は、名詞の後ろに属格 némes を置いて言う。時制がないので、faronéres は「担いだ」とも「担いでくれる」とも訳せる。

    léimim fáron séndoi. fláinim.

    読み:レーミン ファーロン センドイ。フライニン。

    léim-imfáronsénd-oi.fláinim.
    置く-<私が>荷<対格>ここ-<与格>軽くなった

    「「ここに荷を置くぞ。ああ、軽くなった。」」

    背負った荷を下ろしたときの、文字どおりの言い方。感謝の fláinim は、この「肩が軽くなった」という言い方から広がったとされる。重い荷を下ろすことは、信仰の上でも「軽くなる」ことと結びついている。

    lúin dulíþim fáron, fláinim.

    読み:ルーイン ドゥリーシン ファーロン、フライニン。

    lúindul-íþ-imfáron,fláinim.
    とき下る-<〜させる>-<私が>荷<対格>軽くなった

    「荷を下ろしたら、肩が軽くなった。」

    「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。dulíþ- は dúl-「下る」に使役の -íþ- をつけた「下ろす」で、後ろに強勢をもつ接辞がないので、-íþ- が強勢をとる。

    nagróm. éso fáron fláin.

    読み:ナグローン。エーソ ファーロン フライン。

    nagróm.és-ofáronfláin.
    どういたしましている-<(重いものが)>荷<主格>軽い

    「どういたしまして。荷は軽かったよ。」

    荷を担いでもらった礼への返事。「重くない」の nagróm に「荷は軽い」と重ねて、相手の気づかいを打ち消している。荷 fáron は重性なので、繋辞は -o、述語の形容詞 fláin は重性・主格の形(語尾なし)になる。

    auríþen, ausenár. dulísim fáron.

    読み:アウリーセン、アウセナール。ドゥリーシン ファーロン。

    auríþen,au-sen-ár.du-lís-imfáron.
    かたじけない<お〜になる・御〜>-見る-<〜する人><〜させていただく>-書く-<私が>荷<対格>

    「かたじけない、目付殿。荷を書き留めさせていただきます。」

    市の目付に荷を量ってもらったあとの礼。呼びかけに呼格は使わない。役職名に au- をつけ、読点で区切って添える。lís-「書く」に謙譲の du- をつけて、自分の行いを低めている。目上の人への礼として決まった形なので、auríþen の語尾は変わらない。fáron「荷」は重性名詞なので、対格も主格と同じ形になる。

    dulísim fáron ausenárei. auríþen.

    読み:ドゥリーシン ファーロン アウセナーレイ。アウリーセン。

    du-lís-imfáronau-sen-ár-ei.auríþen.
    <〜させていただく>-書く-<私が>荷<対格><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>-<与格>ありがたく

    「目付殿に、荷のことを書き記させていただきます。ありがたく。」

    目上の人に宛てた手紙の結び。本文の最後に auríþen を一語だけ置いて、感謝を添える。謙譲の動詞 dulísim「書かせていただく」と、高めた与格 ausenárei「目付殿に」を並べているので、書き手と宛先の上下の関係がすべて文法に表れる。

    duhémbrim, ausenár. na dulísim fáron.

    読み:ドゥヘンブリン、アウセナール。ナ ドゥリーシン ファーロン。

    duhémbrim,au-sen-ár.nadu-lís-imfáron.
    恥じ入ります<お〜になる・御〜>-見る-<〜する人><〜ない><〜させていただく>-書く-<私が>荷<対格>

    「申し訳ございません、目付殿。荷を書き記しておりませんでした。」

    市の目付への改まった謝罪。帳簿に荷を書き留めておくのが決まりなのに、それを怠ったことを詫びている。動詞に時制がないので、na dulísim は文脈によって「書いておりません」とも「書いておりませんでした」とも訳せる。直説法の文なので、否定には na を使う。くだけた grómim は目上の人には使わない。

    snéimim! faronérim fáron gróm.

    読み:スネーミン!ファロネーリン ファーロン グローン。

    snéimim!faron-ér-imfárongróm.
    前を失礼します荷-<〜でする>-<私が>荷<対格>重い

    「前を失礼!重い荷を担いでるんで。」

    狭い崖道や市の人混みで、荷を担いだ運び人が人の前を通るときの言い方。くだけた場でも snéimim の形は崩れない。faronér-「担ぐ」は fáron「荷」に -ér- がついてできた動詞。形容詞 gróm は重性・単数・対格の名詞 fáron に一致するが、語尾はつかない。

    seirénde, ende. vándim fáron.

    読み:セイレンデ、エンデ。ヴァンディン ファーロン。

    seirénde,ende.vánd-imfáron.
    しばしお待ちをどうぞ量る-<私が>荷<対格>

    「ちょっと待ってくれ、頼む。いま荷を量るから。」

    縁の市で使う言い方。取引言葉では敬語の語形がほとんど落ちるが、seirénde は ende と同じく願望法の決まり文句として残り、軽い「ちょっと待って」の意味で使われる。ende を重ねて、さらに頼みの調子を加えている。

    hóu! séir, faronár.

    読み:ホー!セール、ファロナール。

    hóu!séir,faron-ár.
    おーい待つ<命令法><あなたが>荷-<〜する人>

    「おーい!待て、運び人。」

    崖道や市で、離れた所にいる運び人を呼び止める言い方。hóu は文頭で独立して叫ぶ。呼びかけの相手は呼格を使わず、役職や職の名を文末に読点で区切って添える。下向きの話し方なので命令法のむき出しの語幹 séir を使う。

    faronér fáron só, ende. nés, éso ó gróm.

    読み:ファロネール ファーロン ソー、エンデ。ネース、エーソ オー グローン。

    faronérfáronsó,ende.nés,és-oógróm.
    担ぐ<命令法><あなたが>荷<対格>この<重性>どうぞいや・だめだいる-<(重いものが)><3人称単数・重性>重い

    「「この荷を担いでくれ、頼む。」「いや、そいつは重い。」」

    縁の市で、運び人が荷の担ぎを断るやりとり。nés は市の取引言葉の短い断りの返事で、都の改まった言葉では使わない。断ったあとに理由を添えることが多い。繋辞の文は「éis-+主語+述語」の順で、重性の代名詞 ó を受けて動詞は -o、形容詞 gróm も重性・主格の形になる。

    aursáre! brúumsa faronár es orénos.

    読み:アウルサーレ!ブルーンサ ファロナール エス オレーノス。

    aursáre!brúums-afaron-áresorén-os.
    ああ落ちる<〜し終えた>-<(軽いものが)>荷-<〜する人>から縁-<属格>

    「ああ、ご先祖よ、運び人が縁から落ちてしまった。」

    凶事を聞いたときの言い方。崖から落ちて死ぬことは、魂が下へ引かれるとして最も恐れられる死に方で、このような知らせには aursáre を添えることが多い。brúum- の語根は長母音なので、完了相は -s- を足して brúums- になる。

    dáloro! brúumso fáron.

    読み:ダーロロ!ブルーンソ ファーロン。

    dáloro!brúums-ofáron.
    ちくしょう落ちる<〜し終えた>-<(重いものが)>荷<主格>

    「ちくしょう!荷が落ちやがった。」

    dálor「下の国」の重性呼格から来た卑語。「下の国よ」と呼ぶことが悪態になる。崖道の運び人の言葉に多く、炉の前や目上の人の前では口にしてはならない。fáron は重性なので、動詞は -o をとる。

    vóila faronár símbo gandéros, na vóila lisáis.

    読み:ヴォイラ ファロナール シンボ ガンデーロス、ナ ヴォイラ リサイス。

    vóil-afaron-ársímbogandér-os,navóil-alis-áis.
    見分ける-<(軽いものが)>荷-<〜する人>印<対格>硬木-<属格><〜ない>読む-<(軽いものが)>字-<〜たちを>

    「運び人は硬木の焼印は見分けるが、字は読めない。」

    同じ vóil- が、前半では焼印の形を見分ける意味で、後半では文字を読む意味で使われている。丸太の木口の焼印は何百本にも同じ形で押されているので、文字を知らない者もその形を覚える。

    dáloro, véilsim fáron.

    読み:ダーロロ、ヴェールシン ファーロン。

    dáloro,véils-imfáron.
    ちくしょう忘れる<〜し終えた>-<私が>荷<対格>

    「ちくしょう、荷を忘れちまった。」

    自分へのいらだちを表す悪態。véil- の語根は二重母音なので、完了相は -s- を足して véils- になる。fáron は重性なので、対格も主格と同じ形。都の人は、この語を口にすると言葉が下へ落ちると考えて避ける。

    tóra es orénos faronár te faronéra fáron.

    読み:トーラ エス オレーノス ファロナール テ ファロネーラ ファーロン。

    tór-aesorén-osfaron-ártefaron-ér-afáron.
    来る-<(軽いものが)>から縁-<属格>荷-<〜する人><関係節>荷-<〜でする>-<(軽いものが)>荷<対格>

    「荷を担いだ運び人が、縁から上がってくる。」

    崖道や縁の市でよく聞く、見たままを言う文。関係節の主語にあたる部分(運び人)は空けておく。関係節は文の終わりか読点まで続く。そのため、関係節のついた重い主語を文末に回し、前置詞句 es orénos を主語より前に出している。主語の後ろに es orénos を置くと、関係節の中の語と受けとられてしまう。

    éso fáron senárei.

    読み:エーソ ファーロン セナーレイ。

    és-ofáronsen-ár-ei.
    いる-<(重いものが)>荷<主格>見る-<〜する人>-<与格>

    「目付には荷がある。」

    所有は「ある+持ち主の与格」で言う。動詞は持ち主ではなく、持たれている物 fáron(重性)に一致して -o をとる。

    selvéna ausenár ré vandésa fáron.

    読み:セルヴェーナ アウセナール レー ヴァンデーサ ファーロン。

    selvén-aau-sen-árrévand-és-afáron.
    おっしゃる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人><〜と(節)>量る-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>

    「目付殿は、荷を量るべしとおっしゃる。」

    縁の市で、目付の言葉を伝える文。ré の節の中は、もとの当為法のまま引用している。当為法で主語を言わないときは一般の人が主語になり、軽性の形をとる。

    mé þráun fáron es orénos, murár!

    読み:メー スラウン ファーロン エス オレーノス、ムラール!

    méþráunfáronesorén-os,mur-ár!
    <禁止・願いの打ち消し>投げる<命令法><あなたが>荷<対格>から縁-<属格>濁った-<〜する人>

    「縁から荷を投げるな、このぼんくら!」

    崖の上の降ろし場や崖道で、年長の者が目下の者をどなりつけるときの言い方。禁止は「mé+命令法」で言い、命令法の2人称単数は語幹のまま(þráun)。murár は呼びかけなので、文の終わりに読点で区切って主格のまま添える。崖から物を投げ落とすのは禁忌なので、ここではただの不注意ではなく、「下の国を呼び寄せかねない愚かさ」をとがめる響きがある。

    ésa faronár té murár.

    読み:エーサ ファロナール テー ムラール。

    és-afaron-ártémur-ár.
    いる-<(軽いものが)>荷-<〜する人>あの<軽性>濁った-<〜する人>

    「あの運び人は間抜けだ。」

    本人のいない所での陰口。「és-+主語+述語の名詞」の文で、述語の murár は軽性の主格のまま置く。繋辞は主語の運び人(人なので軽性)に合わせて -a をとる。これを重性の éso で受けると、人を「泥の者」扱いすることになり、ずっと強い侮辱になる。指示詞 té の後ろに動詞が来ていないので、関係節の te とは紛れない。

    anórel, níla faronár té muró bróus, esós ésa él murár sórel.

    読み:アノーレル、ニーラ ファロナール テー ムロー ブロース、エソース エーサ エール ムラール ソーレル。

    anórel,níl-afaron-ártémuróbróus,esósés-aélmur-ársórel.
    昨日飲む-<(軽いものが)>荷-<〜する人>あの<軽性>濁り酒<対格>多いだからいる-<(軽いものが)><3人称単数・軽性>濁った-<〜する人>今日

    「昨日、あの運び人は濁り酒をしこたま飲んだ。だから今日のあいつは、まるで酔いどれだ。」

    崖道の宿などで交わす、くだけた噂話。muró「濁り酒」と murár の音が近いことを使った当てこすりで、ここでは「酔ってぼんやりしている者」の意味になる。時の語 anórel は場面の枠に置いて読点で区切る。esós「だから」は二つめの文の頭に置く。主語の代名詞 él をわざわざ言っているので、「あいつときたら」という強調の響きがある。

    éso fáron só kórvino só.

    読み:エーソ ファーロン ソー コルヴィノ ソー。

    és-ofáronsókórvinosó.
    いる-<(重いものが)>荷<主格>この<重性>受け入れられるべきもの<主格>この<重性>

    「この荷は、受け入れられるべきものだ。」

    比喩的用法。「運搬桶」が「倉に納めるべき品・運ぶべき責任」を指す。コピュラ文で述語の名詞は自分の性・主格のまま。fáron は重性なので指示詞 só。

    kórvino an kórvo, fáron du orén.

    読み:コルヴィノ アン コルヴォ、ファーロン ドゥ オレーン。

    kórvinoankórvo,fáronduorén.
    受け入れられるべきもの<主格>上手倉<対格>荷<主格>下手縁<対格>

    「受け入れられるべきものは倉の上手へ、荷は縁の下手へ。」

    詩の語順(動詞を落とし、主語を動詞の前に出す)。an+対格「上手へ」、du+対格「下手へ」。比喩的に「納まるべきもの」と「運ばれるべきもの」の対比。

    ombrélo fáron, duói dúlimor du dulándo.

    読み:オンブレーロ ファーロン、ドゥオイ ドゥーリモル ドゥ ドゥランド。

    ombrél-ofáron,duóidúl-imordudulándo.
    足りる-<(重いものが)>荷<主格>それから下る-<我々が>下手ドゥランド<対格>

    「荷はそろってる。じゃあ、ドゥランドまで下ろう。」

    運び人のくだけた言葉。duói「それから」は出来事の順序。dúl-imor「下る-1PL」は崖道の言葉で双数の代わりに複数で受ける形。くだけた話し方では語末の母音が落ち ombrélo → ombrél となる(語末が子音の dúl-imor は脱落しない)。

    vróelo fáron un kórvoi.

    読み:ヴローエロ ファーロン ウン コルヴォイ。

    vróel-ofáronunkórv-oi.
    ずれる-<(重いものが)>荷<主格>内に倉-<与格>

    「倉の中で荷がずれている。」

    un+与格で「〜の中で」。荷は重性なので動詞は3人称単数・重性の語尾を取る。

    krún fáron, ende.

    読み:クルーン ファーロン、エンデ。

    krúnfáron,ende.
    支える<命令法><あなたが>荷<対格>どうぞ

    「荷を支えてくれ、頼む。」

    荷役での依頼。命令法2単は語幹がそのまま語末に立つ。重性の荷は対格無標。endeは、依頼・頼みとして固まった小辞。市や降ろし場でよく使われる簡潔な言い方。

    krávan faronárai du orén.

    読み:クラーヴァン ファロナーライ ドゥ オレーン。

    kráv-anfaron-ár-aiduorén
    叫ぶ-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下手縁<対格>

    「「運び人たちが縁へ向けて叫ぶ。」」

    縁や降ろし場で、荷の動きを知らせる合図として叫ぶ描写。主語が複数名なので直説法複数 -an。faronár の複数は faronárai。du+対格は縁の市・崖下への方向を示す。

    krávir, faronárai!

    読み:クラーヴィル、ファロナーライ!

    kráv-ir,faron-ár-ai
    叫ぶ-<皆で〜せよ>荷-<〜する人>-<〜たちが>

    「「叫べ、運び人たち!」」

    励ましとしての命令。凍りの頃の崖道で仲間へ気合いを送る場面。日常では呼格を使わず、呼びかけとして主格複数を句末に置く。

    lúin þrílo már, mé vandésa fáron.

    読み:ルーイン スリーロ マール、メー ヴァンデーサ ファーロン。

    lúinþríl-omár,mévand-és-afáron.
    とき震える-<(重いものが)>手<主格><禁止・願いの打ち消し>量る-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>

    「手が震えるときは、荷を量ってはならない。」

    帳場や作法書に見る規則。時節 lúin 節は主節の前に置ける。手のみが一時的に震える(意味2)。主節は主語を言わない当為法なので軽性形 vandésa。

    brúnan faronárai dulfáron.

    読み:ブルーナン ファロナーライ ドゥルファーロン。

    brún-anfaron-ár-aidulfáron
    背負う-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下ろし荷<対格>

    「運び人たちは下ろし荷を背負う。」

    縁の市での仕事の描写。faronárは人なので、動詞は性を区別しない3複。dulfáronは「下ろし荷」を表す重性名詞で、対格も主格と同形。

    na veunkrúnim, na éso fáron némei.

    読み:ナ ヴェウンクルーニン、ナ エーソ ファーロン ネーメイ。

    naveunkrún-im,naés-ofáronném-ei.
    <〜ない>負担を負う-<私が><〜ない>いる-<(重いものが)>荷<主格><私>-<与格>

    「私は背負わない。私には荷がない。」

    改まった場での婉曲な断り。直説法の否定は動詞の直前に na を置く。すくめりの動作を伴い、「私には荷がない=背負うものではない」と距離を置く。

    tóra faronár, martórin.

    読み:トーラ ファロナール、マルトーリン。

    tór-afaron-ár,martór-in.
    来る-<(軽いものが)>荷-<〜する人>手招き-<〜して・〜く>

    「「運び人が、手招きしながら来る。」」

    場面の描写に使う。未完了の副動詞 -in は主文と同じ主語の同時動作を表し、読点で区けて文末に置く。faronár は fáron「荷」+ -ár による人・軽性の名詞で、動詞 tóra は軽性の 3 人称単数で受ける。

    kráila faronár grémo

    読み:クライラ ファロナール グレーモ

    kráil-afaron-árgrémo
    持つ-<(軽いものが)>荷-<〜する人・主格>帽子<対格>

    「運び人が帽子を手に持つ。」

    叙述文。動詞 kráil- は「手に持つ」。主語 faronár は人なので軽性、動詞は3人称単数・軽性 -a をとる。faron-ár は荷を表す faron と行為者接辞 -ár から「運び人」を成す。

    vrúelo fáron.

    読み:ヴルーエロ ファーロン。

    vrúel-ofáron.
    懸かる-<(重いものが)>荷<主格>

    「荷が懸かる。」

    綱場で荷が輪や鉤に捕まり、宙に浮いて動かない状態を述べる基本的な自動詞用法。主語 fáron は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。

    lúin léimim fáron, kruntiúlo marfúnel.

    読み:ルーイン レーミン ファーロン、クルンティウーロ マルフーネル。

    lúinléim-imfáron,kruntiúl-omarfúnel.
    とき置く-<私が>荷<対格>支えが軋む-<(重いものが)>腕木<主格>

    「「荷を置くと、腕木が軋む。」」

    荷を受け止めるときの通常の作動音を示す日常表現。kruntiúl-の自然な主語は腕木・綱・橋脚などの支えで、ここではmarfúnelが重性・単数の主語。

    lúin kruntiúlo marfúnel, þalíþa funelár fáron.

    読み:ルーイン クルンティウーロ マルフーネル、サリーサ フネラール ファーロン。

    lúinkruntiúl-omarfúnel,þal-íþ-afunelárfáron.
    とき支えが軋む-<(重いものが)>腕木<主格>止まる-<〜させる>-<(軽いものが)>綱番<主格>荷<対格>

    「「腕木が軋むと、綱番は荷を止める。」」

    現場の定型的操作。þal-「止まる」に使役接尾辞-íþ-が付いたþalíþ-「止める」を用いる。主語funelárは軽性・単数、目的語fáronは重性・単数で対格が主格と同形。

    trúno fáron sáunin un kéndoroi.

    読み:トルーノ ファーロン サウニン ウン ケンドロイ。

    trún-ofáronsáun-inunkéndor-oi.
    転がる-<(重いものが)>荷<主格>良い-<〜して・〜く>内に市-<与格>

    「荷が市の中でうまく回る。」

    市や取引の場で、商いが順調に進むことを「荷がうまく転がる」と言って表す。形容詞 sáun に -in をつけて「よく・うまく」の意の副詞を作る。un+与格で「〜の中で」。

    funelkráila fáron funelárei

    読み:フネルクライラ ファーロン フネラーレイ

    funelkráil-afáronfunelár-ei
    綱に持つ-<(軽いものが)>荷<対格>綱番-<与格>

    「綱番が荷を綱に引き受けている。」

    縁の肩で、荷の引き受けを言う言い方。動詞 funelkráil- では引き受け手 funelár は主格ではなく与格 funelárei で示す。語彙パターンの語順に従い、対象 fáron が引き受け手 funelárei に先立つ。目的語 fáron は重性名詞で、対格は無標識。

    sórel, brúna faronár ruunkréin.

    読み:ソーレル、ブルーナ ファロナール ルーンクレーン。

    sórel,brún-afaron-árruunkréin.
    今日背負う-<(軽いものが)>荷-<〜する人・主格>背負い枠<対格>

    「今日、運び人は背負い枠を背負っている。」

    ふだんの仕事の場面を述べる文。主語 faronár は人なので軽性扱いとなり、動詞は3人称単数・軽性の -a を受ける。brún- は「背負う」の意だが、直接目的語に置いた ruunkréin は、担がれた荷ではなく、背負い枠そのものであることを示す。

    vélma faronár filduló só.

    読み:ヴェルマ ファロナール フィルドゥロー ソー。

    vélm-afaron-árfildulósó.
    開く-<(軽いものが)>荷-<〜する人・主格>刻み通路<対格>この<重性>

    「運び人がこの刻み通路を開く。」

    落石・倒木・雪などで通れなくなった通路を、人が通り抜けられるようにする用法。主語 faronár は軽性。filduló は重性名詞で、対格は無標識。

    tául ruunó fáronos!

    読み:タウル ルーノー ファーロノス!

    táulruunófáron-os
    取る<命令法><あなたが>後ろ<対格>荷-<属格>

    「「荷の後部を持て。」」

    担ぎ荷の荷口と反対側の後端を指す用法。命令法では直接目的語の格標示がつかない。

    plóura faronár vól.

    読み:プローラ ファロナール ヴォール。

    plóur-afaron-árvól
    見下ろす-<(軽いものが)>荷-<〜する人・主格>地面<対格>

    「運び人が地面を見下ろす。」

    日常の基本文。崖縁や高い道から下の地面に視線を落とし、足元や危険の有無を確かめる場面を想定する。主語 faron-ár は人を含み軽性なので、動詞は軽性の3人称単数 -a をとる。目的語 vól は重性だが、重性名詞の主格と対格は同形で、VSO語順によって目的語として解釈される。

    tóra faronár es drúnoros.

    読み:トーラ ファロナール エス ドルーノロス。

    tór-afaron-áresdrúnor-os.
    来る-<(軽いものが)>荷-<〜する人>から崖道-<属格>

    「運び人が崖道から来る。」

    縁の市へ荷を上げる場面。esは方向を問わない「〜から」で、重性名詞drúnorの属格drúnorosと組む。faronárは人なので動詞は軽性3単-a。

    snúmpim fáron fúneloi

    読み:スヌンピン ファーロン フーネロイ

    snúmp-imfáronfúnel-oi
    締める-<私が>荷<対格>綱-<与格>

    「私は綱で荷を締める。」

    日常の荷仕事での発話。道具・材料を示すために裸の与格を用いる。

    éso fáron só navánden

    読み:エーソ ファーロン ソー ナヴァンデン

    és-ofáronsóna-vánd-en
    いる-<(重いものが)>荷<主格>この<重性><〜ない>-量る-<〜した・〜された>

    「この荷は取るに足らぬ。」

    縁の市で品物を値踏みする日常の場面。形容詞は主語の重性単数主格と一致し、語尾を添えない。実際の品物に直接向けると切り捨てが強い。

    vándim fáron króndeloi.

    読み:ヴァンディン ファーロン クロンデロイ。

    vánd-imfáronkróndel-oi
    量る-<私が>荷<対格>石の定め-<与格>

    「私は石の定めのところで荷を量る。」

    作業の日常文。主語は動詞語尾で示す。króndeloi は重性子音語幹の与格単数で、場・場所を示す。荷を量る行為が石に据えられた規則に従うことを表す。

    vándan kundárai fáron

    読み:ヴァンダン クンダーライ ファーロン

    vánd-ankundár-aifáron
    量る-<彼らが>役人-<〜たちが>荷<対格>

    「役人たちが荷を量る。」

    縁の市や降ろし場の帳場で、度量の手当て・荷の検めを記す文。複数主語でも人を数詞で直接数えず、名詞の複数形で受ける。荷を量るのは帳場の勤め人の仕事として描かれる。

    brúna faronár trenó du orén

    読み:ブルーナ ファロナール トレノー ドゥ オレーン

    brún-afaron-ártrenóduorén
    背負う-<(軽いものが)>荷-<〜する人・主格>編み籠<対格>下手縁<対格>

    「運び人が編み籠を背負って縁へ下りていく。」

    作業場面の文。faronárは軽性なので動詞は3SG.LT。見出し形trenóを単数対格として使う。数詞を使うと複数形になるため、ここでは単数のまま。

    ké vándes fáron þílin?

    読み:ケー ヴァンデス ファーロン シーリン?

    kévánd-esfáronþílin?
    <〜か>量る-<あなたが>荷わざと

    「わざと荷を量るのか。」

    対等か目下の相手への問い。ké を文頭に置き、主語の人称は動詞語尾に含める。目的語 fáron は重性名詞で対格同形。

    ésa rundelvirá faronárar.

    読み:エーサ ルンデルヴィラー ファロナーラル。

    és-arundelviráfaron-ár-ar.
    いる-<(軽いものが)>早口<主格>荷-<〜する人>-<〜らの>

    「運び人たちの「早口」がある。」

    faronárar「運び人たちの」を属格で添える。rundelviráは見出し形のまま。

    mé krándir fáron!

    読み:メー クランディル ファーロン!

    mékránd-irfáron!
    <禁止・願いの打ち消し>奪う-<皆で〜せよ>荷<対格>

    「荷を奪うな!」

    複数・目下への直接的な禁止。直説法の否定 na を使うのではなく、願い・命令・当為を打ち消す mé を動詞の前に置く。命令法の複数形は -ir。

    un drúnoroi, krándan faronárai dulfáronul

    読み:ウン ドルーノロイ、クランダン ファロナーライ ドゥルファーロヌル

    undrúnor-oi,kránd-anfaron-ár-aidulfáron-ul
    内に道-<与格>奪う-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下ろし荷-<〜たちを>

    「崖道で、運び人たちが下ろし荷を掠め取る。」

    道での争いや混乱に乗じて、荷を取り合う場面。un+与格の場所句を動詞の前に置くと、そこで起きた出来事として述べる。運び人は faron「荷」+-ár「〜する人」で表し、複数主格は faronárai。下ろし荷 dulfáron は重性複数名詞で、主格と対格が同形。

    ván snór fáronos, ende.

    読み:ヴァーン スノール ファーロノス、エンデ。

    vánsnórfáron-os,ende.
    量る<命令法><あなたが>幅荷-<属格>どうぞ

    「荷の幅を量ってくれ、頼む。」

    荷検めや取引きでの日常的な依頼。snórは測られる寸法そのものとして直接の目的語に取る。重性名詞のため、対格は主格と形が同じ。

    krínau fúnel si fáron.

    読み:クリーナウ フーネル シ ファーロン。

    krín-aufúnelsifáron.
    固めて動かない-<双数>綱<主格>と荷<主格>

    「綱と荷は、揺れずに張ったままだ。」

    状態を簡潔に記した記録向きの文。単数の名詞二つを si で並べると、動詞は双数になる。krín- の意味2で、綱や荷が風に振られず、同じ位置に保たれている状態を表す。

    táula faronár monplén.

    読み:タウラ ファロナール モンプレーン。

    tául-afaron-ármonplén
    取る-<(軽いものが)>荷-<〜する人・主格>石瓦<対格>

    「運び人が石瓦を取る。」

    日常の作業場面での用法。人物を主語にすると動詞は軽性の 3人称単数 -a を受ける。重性名詞の単数対格は主格と同形であるため、語順が主語と目的語の手がかりになる。

    snǘla faronár fúnel

    読み:スニューラ ファロナール フーネル

    snǘl-afaron-árfúnel
    扱う-<(軽いものが)>荷-<〜する人・主格>綱<対格>

    「運び人は綱を扱う。」

    日常の作業の記述。VSOで主語が先。faronár は軽性単数なので動詞は軽性3単、fúnel は重性で対格標識がない。

    éso fáron bulkráilen funelíños.

    読み:エーソ ファーロン ブルクライレン フネリーニョス。

    és-ofáronbulkráil-enfunelíñ-os
    いる-<(重いものが)>荷<主格>くくる-<〜した・〜された>留め紐-<属格>

    「荷は留め紐でくくられている。」

    荷札や帳簿の注記のような書文。繋辞と分詞が荷と重性で一致し、手段を表す名詞は分詞に属格で付く。

    mé duliþésa fáron es kráumos só

    読み:メー ドゥリセーサ ファーロン エス クラウモス ソー

    médul-iþ-és-afároneskráum-ossó
    <禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>から露岩-<属格>この<重性>

    「この崖壁から荷を落とすな。」

    碑文や市の禁令のような改まった禁止表現。当為法が無主語のまま使われている。es+属格で「〜から」。ここでの kráum は、崩れやすい崖壁・崖縁を指している。

    lúin tóra oráur, gélan faronárai du orén.

    読み:ルーイン トーラ オラウル、ゲーラン ファロナーライ ドゥ オレーン。

    lúintór-aoráur,gél-anfaron-ár-aiduorén.
    とき来る-<(軽いものが)>夜明け<主格>行く-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下手縁<対格>

    「夜明けが来ると、運び人たちは縁へ下る。」

    運搬作業の場面。lúin 節は主節の前に置く。gélan は gél-「行く」+3複数 -an。faronárai は faron「荷」+ -ár「〜する人」+軽性複数主格 -ai。

    guníþa vándar fáron.

    読み:グニーサ ヴァンダル ファーロン。

    gun-íþ-avándarfáron
    集まる-<〜させる>-<(軽いものが)>商人<主格>荷<対格>

    「商人は荷を集める。」

    使い役語形guníþ-により、人や物を一つにまとめる意を作る。vándar「商人」は人を指す軽性語なので、動詞は3人称単数軽性の-a。

    plúnim fáron orenvandárei.

    読み:プルーニン ファーロン オレンヴァンダーレイ。

    plún-imfáronorenvandár-ei.
    使いに出す-<私が>荷<対格>縁商人-<与格>

    「私は縁商人に荷を届けてやる。」

    物の受け渡しに使う日常文。物を送る場合、人づかいで届ける意味に傾く。縁商人への用向きとして自然。

    funeltréna faronár fúnel.

    読み:フネルトレーナ ファロナール フーネル。

    funeltrén-afaron-árfúnel.
    綱を手繰る-<(軽いものが)>荷-<〜する人・主格>綱<対格>

    「運び人が綱を手繰る。」

    日常の労働の場での平叙文。主語 faronár は人を表すため軽性で、動詞は軽性3単語尾 -a をとる。対象 fúnel は重性で、対格が主格と同形になる。

    funeltrénan faronárai fúnel gléinin.

    読み:フネルトレーナン ファロナーライ フーネル グレーニン。

    funeltrén-anfaron-ár-aifúnelgléin-in.
    綱を手繰る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>綱<対格>清い-ADV

    「運び人たちは綱を整えながら手繰る。」

    作法書や手引のような常態文。主語が複数なので動詞は3複語尾 -an。gléinin が整える様子を表し、意味2として読む。

    duhéla faronár.

    読み:ドゥヘーラ ファロナール。

    duhél-afaron-ár.
    謝る-<(軽いものが)>荷-<〜する人・主格>

    「運び人が謝る。」

    日常の場面で、荷を扱う者が相手に向けて姿勢を低め、非を認める意。faronár は faron-(荷)+-ár(人)からなる軽性名詞なので、動詞は軽性3人称単数語尾 -a。

    pláinan faronárai es nourés senáres.

    読み:プライナン ファロナーライ エス ノウレース セナーレス。

    pláin-anfaron-ár-aiesnour-éssen-ár-es
    気づく-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>から心-<属格>見る-<〜する人>-<属格>

    「運び人たちは目付の心中を察する。」

    nourán は対格なので pláin- に合わない。es nourés とし、属格の従属語を後置して es nourés senáres とする。faronárai は既知の語と接辞 -ár, -ai で作られる。

    vrunþála faronár fáron.

    読み:ヴルンサーラ ファロナール ファーロン。

    vrunþál-afaron-árfáron.
    結ぶ-<(軽いものが)>荷-<〜する人・主格>荷<対格>

    「運び人が荷を結ぶ。」

    実務場面。faronár は「荷」の意味の語幹 faron に行為者接辞 -ár が付いた語で、軽性。人を指す主語なので動詞は3人称単数・軽性 -a をとる。荷の結び目を留める意。

    dukráil fáron es faronáres, ende.

    読み:ドゥクライル ファーロン エス ファロナーレス、エンデ。

    dukráilfáronesfaron-ár-es,ende.
    代って取る<命令法><あなたが>荷<対格>から荷-<〜する人>-<属格>どうぞ

    「運び人から荷を代って取っていただけますか。」

    縁での荷の受け渡しで、今荷を差し出している人から代わりに受け取るように頼む定型。荷主には es+属格を添える。命令法2単は根語そのもので、語末がやわらかい子音 l であるこの語では dukráil の形になる。

    ké dukráilim fáron es táses?

    読み:ケー ドゥクライリン ファーロン エス ターセス?

    kédukráil-imfáronestás-es?
    <〜か>代って取る-<私が>荷<対格>から<あなた>-<属格>

    「荷をあなたから代って取ろうか。」

    荷を差し出している相手に対して、荷を自分の側へ取り寄せて手伝おうとする申し出。直説法1単に疑問の小辞 ké を添えた問いかけの形。語義2では、荷を受け取る動作そのものより、押しつけがましくなく世話を焼く含みが強い。荷主には es+属格を添える。

    snelíþim fáron un kórvoi.

    読み:スネリーシン ファーロン ウン コルヴォイ。

    snelíþ-imfáronunkórv-oi.
    隠す-<私が>荷<対格>内に倉-<与格>

    「私は荷を倉の中に隠す。」

    荷や道具を、人目に触れない場所に納める日常の場面。`un`+与格で「〜の中に」を表す。単に置いておく動作より、隠して保護・帳じりとする含みが強い。

    anórel, tóro fáron du meulvéinor.

    読み:アノーレル、トーロ ファーロン ドゥ メウルヴェーノル。

    anórel,tór-ofárondumeulvéinor.
    昨日来る-<(重いものが)>荷<主格>下手メウルヴェイノル<対格>

    「昨日、荷がメウルヴェイノルへ来た。」

    年代記や帳簿のような記録文。時節語 anórel を場面の枠に置いている。主語 fáron が重性なので、動詞は3人称単数・重性の語尾 -o を取る。

    glünóroi, brúna krailár fáron.

    読み:グリュノーロイ、ブルーナ クライラール ファーロン。

    glünór-oi,brún-akrail-árfáron.
    グリュノーラ-<与格>背負う-<(軽いものが)>手に持つ-<〜する人・主格>荷<対格>

    「グリュノーラでは、組の長が荷を背負う。」

    glünóroi は *-óra をもつ古い場所名 glünóra の与格で、場面指定の場所として文頭に置ける。krailár は軽性の行為者名詞なので動詞は 3 単数軽性の -a で受ける。fáron は重性で主格と対格が同形だが、VSO の語順により目的語と読む。

    ké tóra faronár sé es dulóros?

    読み:ケー トーラ ファロナール セー エス ドゥローロス?

    kétór-afaron-árséesdulór-os?
    <〜か>来る-<(軽いものが)>荷-<〜する人・主格>この<軽性>からドゥローラ-<属格>

    「この運び人は、ドゥローラから来たのか。」

    道場や宿での確認の文。疑問小辞 ké は文頭に置く。faron-ár は「荷に携わる人」の意。固有名詞 dulóra は重性o語幹の名詞として扱い、es の後に属格 dulóros をとる。指示詞 sé は faronár を修飾する軽性形。

    vándim fáron só silóur.

    読み:ヴァンディン ファーロン ソー シロール。

    vánd-imfáronsósilóur
    量る-<私が>荷<対格>この<重性>も

    「私はこの荷も量る。」

    目的語名詞句の末尾に置いた例。指示詞 só は重性荷に合わせる。取り立ては指示詞の後ろに置かれ、名詞句そのものの格は変わらない。

    tiuléra faronár torárei.

    読み:ティウレーラ ファロナール トラーレイ。

    tiulér-afaron-ártorár-ei.
    声を上げる-<(軽いものが)>荷-<〜する人>客-DAT.

    「運び人が客に声を届ける。」

    離れた相手へ、大きな声で注意や応答を届ける用法。宛先は与格に取る。声が届く距離での呼びかけを tiulér- で表すと、音量と遠達性が焦点になる。

    mé saléim fáron sal kórvoi!

    読み:メー サレーン ファーロン サル コルヴォイ!

    mésaléimfáronsalkórv-oi
    <禁止・願いの打ち消し>外に据える<命令法>荷<対格>外に倉-<与格>

    「荷を倉の外に置くんじゃない。」

    日常の禁止。禁止の mé は命令法と組む。saléim- のむき出し語幹は語末の m を残して saléim となる。sal + 与格 kórvoi で「倉の外に」。倉場や縁の市での手順を教える文として使う。

    wáura endríña kláulan faronáres

    読み:ワウラ エンドリーニャ クラウラン ファロナーレス

    wáur-aendríñaklául-anfaron-ár-es
    まねる-<(軽いものが)>子ども<主格>物真似-<対格>荷-<〜する人>-<属格>

    「子どもが運び人の物真似をする。」

    日常場面での特定人物の癖の真似。目的語 kláulan を名詞句として取り、対象を属格 faronáres で後に修飾する。動詞は主語 endríña に一致して軽性 3 単数。faron-ár は「運び人」。

    vrunkrílim fúnel fáronos

    読み:ヴルンクリーリン フーネル ファーロノス

    vrunkríl-imfúnelfáron-os
    ほどく-<私が>綱<対格>荷-<属格>

    「私は荷の綱を解く。」

    一人称単数は語尾 -im が主語を表すので代名詞は省略する。名詞句は中心語 fúnel に属格 fáronos を後置する。荷の縄をほどく行為。

    éso fáron némei, salóur na ésa faronár.

    読み:エーソ ファーロン ネーメイ、サロール ナ エーサ ファロナール。

    és-ofáronném-ei,salóurnaés-afaron-ár.
    いる-<(重いものが)>荷<主格><私>-<与格>ところが<〜ない>いる-<(軽いものが)>荷-<〜する人・主格>

    「荷はある。ところが、運び人がいない。」

    市でのやりとり。荷があるのに、それを担ぎ上げる運び人がいない、商いとして当然の取り合いが成り立たない展開を示す。「ところが」の用法。fáron は重性なので存在動詞 éso、faronár は人を指す軽性なので存在動詞 és-a。faron-ár は fáron「荷」+-ár「〜する人」。salóur は後文の頭、否定の na より前に置く。

    éso fáron gróm, esós éso tromsnór nalóun.

    読み:エーソ ファーロン グローン、エソース エーソ トロンスノール ナローン。

    és-ofárongróm,esósés-otromsnórnalóun.
    いる-<(重いものが)>荷<主格>重い,だからいる-<(重いものが)>歩幅<主格>短い

    「荷が重いので、歩幅は短い。」

    荷場での日常の言い方。荷の重さを見積もる場で、足から足の間隔が短くなることを言う。身分の「段」ではなく、歩幅を意味するtromsnórの直義。

    na vándim tromsnórul faronárar, salóur vándim fáron.

    読み:ナ ヴァンディン トロンスノールル ファロナーラル、サロール ヴァンディン ファーロン。

    navánd-imtromsnór-ulfaronár-ar,salóurvánd-imfáron.
    <〜ない>量る-<私が>歩幅-<〜たちを>運び人-<〜らの>,しかし量る-<私が>荷<対格>

    「運び人たちの歩幅は量らず、荷を量る。」

    帳場や書面の作法を示す文。人の歩みを直接量るのではなく、荷の重さを見積もる。salóurは流れを変える逆接。tromsnórulは重性子音語幹の複数対格で主格と同形、faronárarは運び人の複数属格。

    ké vándes fáron, orvél líses sáindaran?

    読み:ケー ヴァンデス ファーロン、オルヴェール リーセス サインダラン?

    kévánd-esfáron,orvéllís-essáindar-an?
    <〜か>量る-<あなたが>荷<対格>,OR書く-<あなたが>証文-<対格>?

    「荷を量っているのか、それとも証文を書いているのか。」

    縁の市で働き手に仕事の種別を選ぶ問い。orvélが節を並べ、同じ2人称主語は第二節の動詞語尾だけで示す。目的語の枠は空けず、二つ目の節でも名詞を置く。

    lís plíndo, orvél na vandéla senár fáron.

    読み:リース プリンド、オルヴェール ナ ヴァンデーラ セナール ファーロン。

    lísplíndo,orvélnavand-él-asen-árfáron.
    書く<命令法><あなたが>荷札<対格>,OR<〜ない>量る-<〜だろう>-<(軽いものが)>見る-<〜する人・主格>荷<対格>

    「荷札を書け、さもなくば目付は荷を量らないだろう。」

    市や帳場でのくだけた命令。命令法は語幹のむき出しの形で、語尾標識がないため書く.IMP.2SGのようにドットで法・人称を示す。orvélが後節の頭に立ち、成り行きを推量法で示す。重性o語幹plíndoは主格と対格が同形なので、対格は無標示として.ACCで注記する。

    brólan faronárai helándo.

    読み:ブローラン ファロナーライ ヘランド。

    bról-anfaron-ár-aihelándo.
    作る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>休み場<対格>

    「運び人たちは休み場を作る。」

    道路整備や作業の場面。重性名詞 helándo は主格と対格が同型だが、VSO の語順により目的語として読める。faronárai は faron「荷」+-ár「〜する人」+複数主格。

    lúin krúelo fáron, trolþála faronár.

    読み:ルーイン クルーエロ ファーロン、トロルサーラ ファロナール。

    lúinkrúel-ofáron,trolþál-afaron-ár.
    とき動く-<(重いものが)>荷<主格>踏ん張る-<(軽いものが)>荷-<〜する人>

    「荷が揺れると、運び人が踏ん張る。」

    lúin で導く時節も動詞が節の先頭。荷 fáron は重性なので krúelo。主語 faronár は人を表す語で軽性なので、動詞は 3人称単数・軽性の -a を受ける。

    próso fáron néman, esós trolþálim.

    読み:プローソ ファーロン ネーマン、エソース トロルサーリン。

    prós-ofáronném-an,esóstrolþál-im.
    押す-<(重いものが)>荷<主格><私>-<対格>だから踏ん張る-<私が>

    「荷が私を押すので、私は踏ん張る。」

    荷は重性なので prós- は 3人称単数・重性の -o を受ける。一人称代名詞の対格は néman と書き、形態素境界は ném-an と書く。esós は直前の出来事を理由として後続の節を導く。荷の力を受け止める意味では、圧力に耐える場そのものが想定される。

    vrúna faronár fúnel fáronoi.

    読み:ヴルーナ ファロナール フーネル ファーロノイ。

    vrún-afaronárfúnelfáron-oi.
    巻く-<(軽いものが)>運び人<主格>綱<対格>荷-<与格>

    「運び人が荷に綱を巻きつける。」

    通常の叙述。主語 faronár は軽性なので動詞は -a。直接目的語 fúnel は重性のため無標識、巻きつける先 fáronoi は与格語尾 -oi を受ける。

    ké elþasénes tás fáron só?

    読み:ケー エルサセーネス タース ファーロン ソー?

    kéelþasén-estásfáronsó?
    <〜か>火に透かして見る-<あなたが><あなた・主格>荷<対格>この<重性>

    「あなたはこの荷を火に透かして見るか。」

    日常会話の単純疑問。ké を動詞の前に置く。主語 tás は動詞の直後に置く。fáron は重性なので対格語尾がつかず、指示詞 só は重形で一致する。時制は語形に表れない。

    funeléra lisár ré elþaséna senár fáron.

    読み:フネレーラ リサール レー エルサセーナ セナール ファーロン。

    funelér-alisárréelþasén-asenárfáron.
    書き留める-<(軽いものが)>書記<主格><〜と(節)>火に透かして見る-<(軽いものが)>目付<主格>荷<対格>

    「書記が、目付が荷を火に透かして見た、と書き留めた。」

    funelér- の補文を ré で受ける書物・記録文体。主節では funeléra が lisár に一致し、ré 節では elþaséna が senár に一致する。時制は語形に表れず、記録としての過去は文脈で読む。

    na éso dóulin fáron un kórvoi

    読み:ナ エーソ ドーリン ファーロン ウン コルヴォイ

    naés-odóulinfáronunkórv-oi
    <〜ない>いる-<(重いものが)>もはや荷<主格>内に倉-<与格>

    「倉の中にはもはや荷がない。」

    na と dóulin が組む否定の存在文。na は動詞の前に置かれ、dóulin は「その事柄のところを時の流れが通り過ぎた」という取り返しのかからない含みを添える。un+与格 kórvoi で倉の中の場所を示す。帳場・倉の記録などで用いられる語調。

    éso fáron gróm salván.

    読み:エーソ ファーロン グローン サルヴァーン。

    és-ofárongrómsalván.
    いる-<(重いものが)>荷<主格>重い〜すぎる

    「荷は重すぎる。」

    日常の言い回し。不変化の小辞 salván を形容詞 gróm の後ろに置く。重性単数主格では形容詞に格語尾がつかず、salván も変わらない。

    éso fáron vánden salván.

    読み:エーソ ファーロン ヴァンデン サルヴァーン。

    és-ofáronvánd-ensalván.
    いる-<(重いものが)>荷<主格>量る-<〜した・〜された>秤を越えて

    「荷は規定の分銅を越えて量られている。」

    市の目付や倉の司の記録的な言い方。vánden salván で「量り越されている」。原句 sal vándoi を縮めた度量衡の感覚が残る。

    dúlan faronárai bérun du dálor.

    読み:ドゥーラン ファロナーライ ベールン ドゥ ダーロル。

    dúl-anfaron-ár-aibérundudálor
    下る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>道のり<対格>下手下の国<対格>

    「運び人たちは道のり(道筋)を下りて下の国へ行く。」

    移動動詞と組む道のり用法。重性名詞 bérun は対格接語を持たず、主格と同形のまま道のりを表す。複数主語 faronárai は軽性行為者名詞 faronár の複数主格。

    hoinkráilim fáron es máros ós.

    読み:ホインクライリン ファーロン エス マーロス オース。

    hoinkráil-imfáronesmár-osós
    手受け-<私が>荷<対格>から手-<属格><3人称単数・重性・属格>

    「私は彼の手の荷を受け取る。」

    日常の実務的な場面。手受け義で荷を目的語に取る。es が支配する属格句で出所を表す。所属は possessum と possessors を属格で示す。3人称重性単数属格の代名詞は語全体の形 ós として扱い、ó-s と分割しない。

    na ésa faronár sé próun.

    読み:ナ エーサ ファロナール セー プローン。

    naés-afaron-ársépróun.
    <〜ない>いる-<(軽いものが)>荷-<〜する人・主格>この<軽性>正当な所有者<主格>

    「この運び人は正当な所有者ではない。」

    荷をめぐる日常的な紛争の場面。運び人は荷を担いでいるだけで、法的には正当な所有者ではないことを言い表す。否定は直説法の動詞の前に na を置く。

    gláko fáron un trǘlmoi

    読み:グラーコ ファーロン ウン トリュルモイ

    glák-ofáronuntrǘlm-oi
    一点で止まる-<(重いものが)>荷<主格>内に裂け目-<与格>

    「荷が裂け目の中で一点で止まる。」

    VSO。un+与格で「〜の中で」。主語 fáron は重性なので動詞は 3人称単数・重性の gláko を取る。

    prálan fáronul si fróumul.

    読み:プラーラン ファーロヌル シ フロームル。

    prál-anfáron-ulsifróum-ul.
    ぶつかる-<彼らが>荷-<〜たちが>と荷車-<〜たちが>

    「荷と荷車とがぶつかり合った。」

    荷や運び道具のように動きやすい物を並べ、双方の接触として述べる。文脈によって、荷積みの場や通路での偶然の触れ合いを示す。

    fél fáron, ende.

    読み:フェール ファーロン、エンデ。

    félfáronende
    引く<命令法><あなたが>荷<対格>どうぞ

    「荷を引き、頼む。」

    縁の市の取引言葉。命令法はむき出しの語幹。重性名詞 fáron は単数主格と対格が同じで、市で格語尾が落ちても外形は変わらない。ende は本来の願望語尾が固まった定型。fél- 自体が干潟語由来の語で、宮廷では使われない。

    bóndim klónou némes si táulim fáron.

    読み:ボンディン クローノウ ネーメス シ タウリン ファーロン。

    bónd-imklón-ouném-essitául-imfáron
    曲げる-<私が>膝-<双数・対格><私>-<属格>と取る-<私が>荷<対格>

    「私は膝を曲げて、荷物を取る。」

    日常の荷上げの場面。膝 klóno は体部語として重性で、二つの膝を指す双数 klónou を直接目的語に取る。所有は名詞の後ろに人称代名詞の属格 némes を置く。si で二つの述語を並列し、主語は動詞の人称語尾だけで示す。

    éso prámbo fáronos só núl

    読み:エーソ プランボ ファーロノス ソー ヌール

    és-oprámbofáron-ossónúl
    いる-<(重いものが)>値<主格>荷-<属格>この<重性>低い

    「この荷の値は低い。」

    prámbo fáronos で「荷の値」。fáronos は fáron の重性単数属格。指示詞 só が名詞句を閉じ、その後の núl は述語形容詞として主語に一致する。ここでは値という程度の低さを表す。

    wólau lisár si faronár.

    読み:ウォーラウ リサール シ ファロナール。

    wól-aulis-ársifaron-ár.
    迷う-<双数>書く-<〜する人・主格>と荷-<〜する人・主格>

    「書記も荷持ちも決めかねている。」

    帳簿や荷の手続きの場などで、判断が定まらない様子。faronár は fáron「荷」+-ár「〜する人」で、荷を扱う人=運び人ほどの意味。単数の名詞が二つ並ぶので、動詞は双数で受ける。

    flóra senár fáron faronárei.

    読み:フローラ セナール ファーロン ファロナーレイ。

    flór-asen-árfáronfaron-ár-ei.
    任じる-<(軽いものが)>見る-<〜する人・主格>荷<対格>荷-<〜する人>-<与格>

    「目付が荷を運び人に割り当てる。」

    任じる用法。受け手 faronárei「運び人に」が与格。目的語 fáron「荷」は重性の単数で、対格の語尾が overt に立たない。基本語順は V-S-O-IO。

    flóran faronárai prámbo.

    読み:フローラン ファロナーライ プランボ。

    flór-anfaron-ár-aiprámbo.
    取り決める-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>値<対格>

    「運び人たちが値をとり決める。」

    prámbo「値」は重性語で、単数の目的語には対格語尾が overt に立たない。複数主体 faronárai に応じて動詞は -an。値決めを段取りとして確定させる用法。

    klonéro fáron só faronáran.

    読み:クロネーロ ファーロン ソー ファロナーラン。

    klon-ér-ofáronsófaron-ár-an.
    膝-<〜でする>-<(重いものが)>荷<主格>この<重性>荷-<〜する人>-<対格>

    「荷が運び人の膝を抜く(運び人をよろめかせる)。」

    市や道での日常で使える他動詞用法。主語「荷」が重性なので動詞は3人称単数・重性の語尾 -o をとる。目的語「運び人」は軽性子音語幹名詞の対格 -an をとる。

    bréuna vándar grúndul faronárei

    読み:ブレウナ ヴァンダル グルンドゥル ファロナーレイ

    bréun-avándargrúnd-ulfaron-ár-ei
    積む-<(軽いものが)>商人<主格>掛け-<〜たちを>荷-<〜する人>-<与格>

    「商人は運び人に借りを積む。」

    市や仕事の場面で、荷を扱う商人が運び人に債務負担を負わせる文。受け手 faronárei は faronár の与格。主語 vándar は人・軽性なので動詞も軽性の bréuna。比喩用法では、grúndo の「掛け・借り」を重さのある負担として積み重ねる。

    mé tróm fáron!

    読み:メー トローン ファーロン!

    métrómfáron!
    <禁止・願いの打ち消し>踏む(踏みしめる)<命令法><あなたが>荷<対格>

    「荷を踏むな。」

    荷置場や降ろし場で、年長が年下に向けて言う日常の戒め。禁止は mé を命令法の語幹 tróm に添えて作る。荷は重性子音語幹で、単数対格は主格と同形。命令法で主語に人称語尾がない文では、直後に置かれた名詞を目的語として読む。

    tróma endríña fáron.

    読み:トローマ エンドリーニャ ファーロン。

    tróm-aendríñafáron.
    踏む(踏みしめる)-<(軽いものが)>子<主格>荷<対格>

    「子どもが荷を踏んでいる。」

    荷置場での日常の一文。子どもが荷を踏んでいる事実を、完了相ではなく未完了で述べている。主語 endríña は軽性なので、動詞は軽性の三人称単数 -a。目的語 fáron は重性子音語幹で、単数対格は主格と同形だが、VSOの語順から目的語として読む。

    lírerim fáron.

    読み:リーレリン ファーロン。

    lírer-imfáron
    縫う-<私が>荷<対格>

    「私は荷を縫い留める。」

    布限らず、糸で物を結んで繋す一般用法。荷の口や束を糸で綴じることを表す。直説法1人称単数。

    krémera faronár fáron krélvoi

    読み:クレーメラ ファロナール ファーロン クレルヴォイ

    krémer-afaronárfáronkrélv-oi
    環に掛ける-<(軽いものが)>運び人<主格>荷<対格>鉤-<与格>

    「運び人が荷を鉤に掛ける。」

    krémer-の他動詞用法。荷を目的語にとる。荷は重性なので対格語尾がなく、fáronの形のまま。主語のfaronárは人なので軽性となり、動詞は3人称単数・軽性の-aをとる。

    krémer fáron krélvoi, ende

    読み:クレーメル ファーロン クレルヴォイ、エンデ

    krémerfáronkrélv-oi,ende
    環に掛ける<命令法><あなたが>荷<対格>鉤-<与格>どうぞ

    「荷を鉤に掛けてくれ、頼む。」

    現場での指示。命令法・2人称単数は語幹形krémerを用いる。依頼の定型endeを添えている。掛かり先の与格はkrélv-oi。

    tromráum, faronérin fáron!

    読み:トロンラウン、ファロネーリン ファーロン!

    tromráum,faronér-infáron!
    急ぐ<命令法><あなたが>担ぐ-<〜して・〜く>荷<対格>

    「荷を担いで、急げ。」

    縁や崖道で聞こえる口語的な促し。命令法 2 人称単数は語幹のみで、tromráum の語末 m はそのまま保たれる。副動詞 faronérin fáron は主語を共有する同時動作を表し、荷は faronér- の目的語。

    ké kréves fáron?

    読み:ケー クレーヴェス ファーロン?

    kékrév-esfáron?
    <〜か>引き受け人となる-<あなたが>荷<対格>

    「荷の引き受け人になるのか。」

    引き受け人の相談や手続きの場で、荷について相手の意思を確かめる日常の問い。krév- は荷が物理的に手渡されることではなく、引き渡すまでの安全と管理の責任を引き受ける法的・社会的行為を指す用法。ké を用いた 2 人称の直接疑問は、同等または下向きの場面で使う。fáron は重性子音語幹で、主格と対格が同形。動詞 kréves が 2 人称なので、 fáron は目的語として読む。

    un funelándo tóran fáronul.

    読み:ウン フネランド トーラン ファーロヌル。

    unfunelándotór-anfáron-ul.
    中に綱場<対格>来る-<彼らが>荷-<〜たちが>

    「荷が綱場へ入ってくる。」

    在庫・入荷の記録。un+対格で「〜の中へ」。見出し語 funelando がそのまま形態素として現れる。

    krún fáron só krúmoi, ende.

    読み:クルーン ファーロン ソー クルーモイ、エンデ。

    krúnfáronsókrúm-oi,ende.
    支える<命令法><あなたが>荷<対格>この<重性>腰-<与格>どうぞ

    「この荷を腰で支えてください。」

    荷の受け渡しや運び作業での手順指示。対象 fáron só に次いで、荷を支える位置としての腰を krúm-oi の与格に取る。与格接辞は -oi。裸語幹の命令に ende を添えて、依頼の形にしている。

    krúno snóimo fúnelos fáron.

    読み:クルーノ スノイモ フーネロス ファーロン。

    krún-osnóimofúnel-osfáron
    支える-<(重いものが)>荷受け<主格>綱-<属格>荷<対格>

    「綱の荷受けが荷を支える。」

    《荷受け》は荷や綱が乗る受け部を指す用法。《綱》の単数属格を後置し、受け部が誰・何のものであるかを示す。主語は重性で、動詞語尾は HV。

    éso fáron snóimoi fúnelos.

    読み:エーソ ファーロン スノイモイ フーネロス。

    és-ofáronsnóim-oifúnel-os
    いる-<(重いものが)>荷<主格>荷受け-<与格>綱-<属格>

    「綱の荷受けに荷が乗っている。」

    存在文。《荷》が主語で、与格《荷受け》が所在を示す。o語幹の与格は語尾 -oi で表す。《荷受け》に《綱》の属格が後置し、綱が乗る受け部であることを明示する。

    éso fáron snóimoi kórvos.

    読み:エーソ ファーロン スノイモイ コルヴォス。

    és-ofáronsnóim-oikórv-os
    いる-<(重いものが)>荷<主格>物肩-<与格>倉-<属格>

    「倉の物肩に荷がある。」

    《倉》の単数属格を後置し、倉の張り出した肩部に荷があるという実務的な所在を示す。存在の主語《荷》は重性。o語幹の与格は語尾 -oi で表す。

    ké ráuman faronárai drúnoroi es orénos du kéndor?

    読み:ケー ラウマン ファロナーライ ドルーノロイ エス オレーノス ドゥ ケンドル?

    kéráum-anfaron-ár-aidrúnor-oiesorén-osdukéndor?
    <〜か>歩く-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>縁の石段道-<与格>から縁-<属格>下手市<対格>

    「運び人たちは、縁の石段道を、縁から市まで歩いているのか。」

    日常の問いかけ。faronárai は faronár の複数。drúnor は重性子音語幹として与格単数 drúnoroi を取る。 ráum-「歩く」は道・経路を裸の与格で取るため un は用いない。 es orénos du kéndor が両端を指定することで、縁の石段道をひと続きの区間として指す用法を示す。

  2. 担ぎ(重さの単位)

    重さの単位。十分銅(約30キログラム)。運び人一人が担ぐ荷の重さから。統一前は分銅と関わりなく使われた古い単位で、倉の司が十分銅に定めた。

    éso sáko só téir fáronul.

    読み:エーソ サーコ ソー テール ファーロヌル。

    és-osákosótéirfáron-ul.
    いる-<(重いものが)>塩<主格>この<重性>三担ぎ-<〜たちが>

    「この塩は三担ぎある。」

    重量単位としての用法。物の重さを担ぎ数で表す日常の言い方。一担ぎは約三十キログラム。数詞は単位名詞の前に置き、三以上の数詞には重性名詞 fáron の複数形 fáronul を取る。主語 sáko は単数のため、動詞は3人称単数・重性の -o を受ける。

    rímbim ombár fáronul.

    読み:リンビン オンバール ファーロヌル。

    rímb-imombárfáron-ul.
    数える-<私が>十担ぎ-<〜たちを>

    「十担ぎを数える。」

    帳簿や仕分けで単位を数える場面。数詞 ombár は「十」で、重性名詞 fáron の複数(主格・対格) fáronul に掛かる。動詞 rímb- は1人称単数。

解説

運ぶための荷物。人が担ぐ荷、吊り下ろされる荷、市で量られる荷のすべてに使う。高原から崖の下へ行く荷は「下ろし荷」、上がってくる荷は「上げ荷」と呼ぶ。度量衡の碑の決まり mé duliþésa fáron es orénos「縁から荷を落とさぬこと」でよく知られている。

そのほかの用例

púlan faronárai krúndo.

読み:プーラン ファロナーライ クルンド。

púl-anfaron-ár-aikrúndo.
軽く叩く-<彼らが>運ぶ-<〜する人>-<〜たちが>荷担ぎ歌<対格>

「運び人たちは荷担ぎ歌(の拍子)を軽く打つ。」

荷運びの拍子に軽く打つ用法。目的語の krúndo は重性o語幹の単数対格で、主格 krúndo と同形である。軽性の対格語尾 -án を添えるのは誤り。ここでは歌そのものより、その歌に付随する拍子を受ける比喩的用法。主体 faronárai は複数軽性なので、動詞は性を区別しない3人称複数 -an をとる。

文法

重性・子音語幹。主格・対格 fáron、属 fáronos、与 fáronoi、複 fáronul。

語源

古高原語 *fárona。古い脱落で語末の母音が落ちた。

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