ném

品詞
代名詞
意味
私
発音
[ˈnem]
読み
ネン
分野
代名詞・指示詞・疑問詞

意味

  1. 私

    話し手自身を指す1人称単数の代名詞。主語として言うと強調になる。

    ké éso tambór tásei? na éso tambór némei.

    読み:ケー エーソ タンボール ターセイ?ナ エーソ タンボール ネーメイ。

    kéés-otambórtás-ei?naés-otambórném-ei.
    <〜か>いる-<(重いものが)>雑穀<主格><あなた>-<与格><〜ない>いる-<(重いものが)>雑穀<主格><私>-<与格>

    「「お前、雑穀はあるか?」「私には雑穀はない。」」

    二人の発話。所有は「持つ」という動詞ではなく、「ある+持ち主の与格」で言う。動詞は持ち主ではなく、持たれている物 tambór(重性)に一致する。はい・いいえで答える問いは、文のいちばん前の ké で作る。答えは動詞を繰り返すが、動詞が物に一致しているので人称は変わらず、「はい」なら éso、「いいえ」なら na éso となる。ké máines?「食べたか」→ máinim「食べた」のような、人称を変える答え方と比べてほしい。

    ésa endríña ormároi némes.

    読み:エーサ エンドリーニャ オルマーロイ ネーメス。

    és-aendríñaormár-oiném-es.
    いる-<(軽いものが)>子ども<主格>左-<与格><私>-<属格>

    「子どもは私の左にいる。」

    左右は体から見た向きで言い、「〜の左に」は与格の後ろに持ち主の属格を置く。地形の向きは絶対方位で言う。

    éso fáron gróm némei.

    読み:エーソ ファーロン グローン ネーメイ。

    és-ofárongrómném-ei.
    いる-<(重いものが)>荷<主格>重い<私>-<与格>

    「私には重い荷がある。」

    és- の文に裸の与格があるので、存在・所有の文として読み、gróm は荷を飾る。

    éso fáron gróm só némei.

    読み:エーソ ファーロン グローン ソー ネーメイ。

    és-ofárongrómsóném-ei.
    いる-<(重いものが)>荷<主格>重いこの<重性><私>-<与格>

    「私には、この重い荷がある。」

    指示詞 só が名詞句を閉じるので、gróm が名詞句の中にあることがはっきりする。

    éso sáko némei un kórvoi.

    読み:エーソ サーコ ネーメイ ウン コルヴォイ。

    és-osákoném-eiunkórv-oi.
    いる-<(重いものが)>塩<主格><私>-<与格>内に倉-<与格>

    「私には倉の中に塩がある。」

    持ち主は裸の与格、場所は前置詞+与格。語順は「主語→与格→前置詞句」。

    éso fáron némes gróm.

    読み:エーソ ファーロン ネーメス グローン。

    és-ofáronném-esgróm.
    いる-<(重いものが)>荷<主格><私>-<属格>重い

    「私の荷は重い。」

    形容詞が属格より後ろにあるので、名詞句の外にある述語と読む。

    éso fáron gróm némes só.

    読み:エーソ ファーロン グローン ネーメス ソー。

    és-ofárongrómném-essó.
    いる-<(重いものが)>荷<主格>重い<私>-<属格>この<重性>

    「この、私の重い荷がある。」

    名詞・形容詞・属格・指示詞の順の名詞句。指示詞で閉じているので、gróm は名詞を飾る。

    wéiro sáko némei, duói méirim ó endríñei.

    読み:ウェーロ サーコ ネーメイ、ドゥオイ メーリン オー エンドリーニェイ。

    wéir-osákoném-ei,duóiméir-imóendríñ-ei.
    いる<〜し終えた>-<(重いものが)>塩<主格><私>-<与格>それから与える-<私が><3人称単数・重性・対格>子ども-<与格>

    「私は塩を手に入れ、それから子どもにそれをやる。」

    所有の文の文法上の主語は塩なので、-in ではつなげず duói を使う。

    gélimor ném si sélvan si silára du orén.

    読み:ゲーリモル ネーン シ セルヴァン シ シラーラ ドゥ オレーン。

    gél-imornémsisélvansisiláraduorén.
    行く-<我々が><私>とセルヴァン<主格>とシラーラ<主格>下手縁<対格>

    「私とセルヴァンとシラーラは縁へ行く。」

    三つ以上を並べた主語の人称は、1人称>2人称>3人称の順に優先する。「私」が入るので1人称複数。

    tóra lisár te séna néman.

    読み:トーラ リサール テ セーナ ネーマン。

    tór-alis-ártesén-aném-an.
    来る-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格><関係節>見る-<(軽いものが)><私>-<対格>

    「私を見る書記が来る。」

    関係節の中の代名詞の目的語は対格(néman)。

    méir téir sáindarais némei!

    読み:メール テール サインダライス ネーメイ!

    méirtéirsáindar-aisném-ei!
    与える<命令法><あなたが>三証文-<〜たちを><私>-<与格>

    「証文を三通くれ。」

    目下の相手や親しい者に向けた、下向きのくだけた命令。会話では量の名詞を省き、数詞の後ろの名詞を直接複数にする。sáindar は軽性なので、複数対格は -ais。語順は「動詞–目的語–与格」。目上の人には命令法を使わず、願望法で言う。

    áursa ólmar némes sórel.

    読み:アウルサ オルマル ネーメス ソーレル。

    áurs-aólmarném-essórel.
    お昇りになる<〜し終えた>-<(軽いものが)>年長者<主格><私>-<属格>今日

    「私どもの年長者が、今日お昇りになりました。」

    人の死を、魂が上へ昇ることとして高めて言う婉曲表現。二重母音の語根 áur- は、-s- を足した áurs- で完了相を作る。死者の名は一年のあいだ口にしないので、名前ではなく親族の呼び方や立場で指す。

    ésa selvá némes ál.

    読み:エーサ セルヴァー ネーメス アール。

    és-aselváném-esál.
    いる-<(軽いものが)>息<主格><私>-<属格>白い

    「息が白い。」

    凍りの頃によく聞く日常のひとこと(逐語訳は「私の息は白い」)。「AはBだ」の文も繋辞 és- で始める。息は軽性なので、繋辞は -a、形容詞 ál は語尾なしになる。

    séir! na ésa selvá némei.

    読み:セール!ナ エーサ セルヴァー ネーメイ。

    séir!naés-aselváném-ei.
    待つ<命令法><あなたが><〜ない>いる-<(軽いものが)>息<主格><私>-<与格>

    「待ってくれ、息が切れた。」

    坂道や崖道を上るときの、くだけた言い方。所有は「持つ」という動詞を使わず「ある+持ち主の与格」で言うので、「私には息がない」が「息が切れた」の意味になる。動詞は持たれている物 selvá(軽性)に一致する。

    éso pélsa kélen némei.

    読み:エーソ ペルサ ケーレン ネーメイ。

    és-opélsakél-enném-ei.
    いる-<(重いものが)>脂の木の材・荷札<主格>伐る-<〜した・〜された><私>-<与格>

    「私には荷札(伐った脂の木の札)がある。」

    荷札にする脂の木の薄板を言う文。所有は「ある+持ち主の与格」で言う。名詞は軽性の語形 pélsa のままだが、伐った材なので、繋辞は重性の -o をとり、分詞 kélen も重性で一致する。名詞の語尾とまわりの語の性が食い違うのが、この意味の特徴である。

    lísim ném sáindaran.

    読み:リーシン ネーン サインダラン。

    lís-imnémsáindar-an.
    書く-<私が><私>証文-<対格>

    「証文は、この私が書く。」

    主語は動詞の語尾 -im でわかるので、代名詞 ném はふつう言わない。それをわざわざ動詞の後ろに置くと、「ほかでもない私が」という強調になる。

    méir sáindaran sé némei.

    読み:メール サインダラン セー ネーメイ。

    méirsáindar-anséném-ei.
    与える<命令法><あなたが>証文-<対格>この<軽性><私>-<与格>

    「その証文をこっちへよこせ。」

    下向きの命令。語順は動詞–目的語–与格(受け手)で、受け手の「私に」は与格 némei で表す。ném は②型の語尾で格変化する。証文 sáindar は軽性の子音語幹なので、対格は -an、指示詞は軽性の sé になる。

    lúuma ausenár sáindaran némes.

    読み:ルーマ アウセナール サインダラン ネーメス。

    lúum-aau-sen-ársáindar-anném-es.
    ご覧になる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>証文-<対格><私>-<属格>

    「目付殿が私の証文をご覧になる。」

    縁の市で、目付が証文を検めることを高めて言う直説法の文。lúum- は「見る」sén- の尊敬の補充形。名詞の ausenár は補充形を使わず、sén- に -ár と au- をつけて作る。所有者の属格 némes は名詞の後ろに置く。

    ésa lisím némes séuril du lisímei aulisáres.

    読み:エーサ リシーン ネーメス セウリル ドゥ リシーメイ アウリサーレス。

    és-alis-ímném-esséurildulis-ím-eiau-lis-ár-es.
    いる-<(軽いものが)>書く-<〜の技・〜さ><私>-<属格>美しい〜より劣って書く-<〜の技・〜さ>-<与格><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<属格>

    「私の書法は、書記の方の書法の美しさに及びません。」

    自分の書をへりくだって言う文。du+与格で、美しさの程度が劣ることを表す。比べる相手の書法の持ち主は、au- をつけた属格 aulisáres で高める。

    éso fáron némes fláin.

    読み:エーソ ファーロン ネーメス フライン。

    és-ofáronném-esfláin.
    いる-<(重いものが)>荷<主格>私-<属格>軽い

    「私の荷は軽い。」

    「AはBだ」の文で、繋辞 és- を文頭に置いている。荷 fáron は重性なので、繋辞は -o をとる。形容詞 fláin は重性・主格の形で、語尾はつかない。

    pómbar sákul méires némei?

    読み:ポンバル サークル メーレス ネーメイ?

    pómbarsák-ulméir-esném-ei?
    どれほど塩-<〜たちを>与える-<あなたが><私>-<与格>

    「「塩をどれほどくれるんだ?」」

    取引で、対価の量を尋ねる言い方。塩のように数えない物の量を尋ねるときは、名詞を単数のまま置く。帳簿では、ここに青銅の分銅で量った重さの単位を入れる。人を数えることにはならないので、礼の上の差し支えはない。

    ké rímbes néman?

    読み:ケー リンベス ネーマン?

    kérímb-esném-an?
    <〜か>物のように扱う-<あなたが><私>-<対格>

    「お前、俺を物扱いするのか。」

    人を目的語にとると、「数える」は「物のように扱う、軽んじる」という非難の意味になる。2人称と問いの小辞 ké を使っているので、同じ段か下の段の相手に、腹を立てて言う言い方。

    éso tambór némes snír.

    読み:エーソ タンボール ネーメス スニール。

    és-otambórném-essnír.
    いる-<(重いものが)>雑穀<主格><私>-<属格>少ない

    「私の雑穀は少ない。」

    「AはBだ」の文で、繋辞 és- を先頭に置いている。主語 tambór némes「私の雑穀」は重性なので、繋辞は -o をとる。述語の snír は重性・単数・主格で、一致の語尾がつかない。税の取り立ての前後に、蓄えが乏しいことを言う言い方。

    méir déral tambóros némei.

    読み:メール デーラル タンボーロス ネーメイ。

    méirdéraltambór-osném-ei.
    与える<命令法><あなたが>半分<対格>雑穀-<属格><私>-<与格>

    「雑穀の半分を私にくれ。」

    下向きの命令。déral は重性の子音語幹名詞なので、対格は主格と同じ形。何の半分かは属格(tambóros)で後ろに示す。語順は動詞–目的語–与格(受け手)の順。

    na sénim sáindaran sé, éso senó némes múr.

    読み:ナ セーニン サインダラン セー、エーソ セノー ネーメス ムール。

    nasén-imsáindar-ansé,és-osenóném-esmúr.
    <〜ない>見る-<私が>証文-<対格>この<軽性>いる-<(重いものが)>目<主格><私>-<属格>濁った

    「この証文は見えぬ。私の目はかすんでいる。」

    年長の者が細かい字を読めないときの言い方。主節二つを接続詞なしで並べるので、あいだに区切りを入れる。senó は重性なので、繋辞は -o をとり、述語の múr「濁った」にも語尾がつかない。目がよく見えないことを、水と同じ「濁る」で言っている。

    ésau dáu kéulau aurár némei.

    読み:エーサウ ダウ ケウラウ アウラール ネーメイ。

    és-audáukéul-auaur-árném-ei.
    いる-<双数>二頭-<双数>縁鷲-<〜らの><私>-<与格>

    「私には縁鷲が二羽(二頭)いる。」

    所有の文。持ち主は与格 némei で表す。動詞は持たれているもの(kéulau、双数)に一致するので、双数の ésau になる。数詞 dáu の後ろなので、量の名詞は双数 kéulau。数えられる生き物 aurá は、複数属格 aurár で後ろに置く。鷹狩りに使う縁鷲のような生き物も、kéul で数える。

    na ráumim sórel, éso tról némes gráis.

    読み:ナ ラウミン ソーレル、エーソ トロール ネーメス グライス。

    naráum-imsórel,és-otrólném-esgráis.
    <〜ない>歩く-<私が>今日いる-<(重いものが)>足<主格><私>-<属格>悪い

    「今日は歩けない。足が悪いんだ。」

    日常会話の文。高原語には「〜できる」を表す専用の形がないので、直説法の否定で「歩かない・歩けない」の両方を表す。tról は重性の子音語幹名詞で、主格と対格が同じ形。

    éso gromó némes gróm, nóirim.

    読み:エーソ グロモー ネーメス グローン、ノイリン。

    és-ogromóném-esgróm,nóir-im.
    いる-<(重いものが)>体<主格><私>-<属格>重い眠る-<私が>

    「体が重い。もう寝るよ。」

    疲れたときのくだけた言い方。体は重性の名詞で、繋辞も重性の -o をとる。「体が重い」は、肉体を重いものと見る世界観とも重なる。時制がないので、nóirim は文脈によって「これから寝る」の意味になる。

    lúin na glénim, dúlo nóumo némes.

    読み:ルーイン ナ グレーニン、ドゥーロ ノーモ ネーメス。

    lúinnaglén-im,dúl-onóumoném-es.
    とき<〜ない>答える-<私が>下る-<(重いものが)>体面<主格><私>-<属格>

    「答えられなければ、私の面目が潰れる。」

    nóumo dúlo「顔が下りる」は面目を失うという慣用句。敬意や名誉を高さで表す考え方から来ている。詩合わせや問答で返しができないときなどに使う。

    dulíþes nóumo némes un torárail.

    読み:ドゥリーセス ノーモ ネーメス ウン トラーライル。

    dul-íþ-esnóumoném-esuntorár-ail.
    下る-<〜させる>-<あなたが>体面<対格><私>-<属格>内に客-<〜らに>

    「お前は客たちの前で、私の顔をつぶした。」

    相手をとがめる言い方。慣用句 nóumo dúlo の動詞を使役の dulíþ-「下ろす」に変えて、「人の面目を失わせる」の意味にしている。2人称の直説法を使っているので、下向きか、同じ段の相手への言い方になる。

    éso fíndo némes klér.

    読み:エーソ フィンド ネーメス クレール。

    és-ofíndoném-esklér.
    いる-<(重いものが)>耳<主格><私>-<属格>冷たい

    「耳が冷たい。」

    凍りの頃によく聞く、くだけた言い方。「AはBだ」の文も繋辞 és- を先頭に置く。fíndo は体の部分なので重性で、繋辞は重性の -o をとる。述語の形容詞 klér は重性・単数・主格なので語尾がない。

    grómim, fluunéndes rúun némes.

    読み:グローミン、フルーネンデス ルーン ネーメス。

    grómim,fluun-énd-esrúunném-es.
    すまない洗う-<〜しますように>-<あなたが>背<対格><私>-<属格>

    「すまない、背中を洗ってくれないか。」

    同じ段の相手に頼む「並び」の話し方で、願望法の2人称を使う。願望法の -énd- が強勢をとるので、語根 flúun- の強勢記号は消える。決まり文句の grómim を前に置くと、頼みがやわらかくなる。

    ésa sóila némes flúunen sórel.

    読み:エーサ ソイラ ネーメス フルーネン ソーレル。

    és-asóilaném-esflúun-ensórel.
    いる-<(軽いものが)>髪<主格><私>-<属格>洗う-<〜した・〜された>今日

    「今日は髪を洗ってある。」

    日常の文。繋辞 és- が先頭に来て、主語の sóila(軽性・単数・主格)を受けている。持ち主は、属格の代名詞 némes を名詞の後ろに置いて表す。分詞 flúunen は「洗われた(状態にある)」の意味で、軽性・単数・主格なので一致の語尾はつかない。

    éso bélo némes gróm.

    読み:エーソ ベーロ ネーメス グローン。

    és-obéloném-esgróm.
    いる-<(重いものが)>腹<主格><私>-<属格>重い

    「腹が重い(食べすぎた)。」

    日常の言い方。bélo は体の部分なので重性o語幹で、繋辞も重性の -o(éso)をとる。述語の形容詞 gróm も、重性の主語に一致する。

    léunim virán brésos némes.

    読み:レウニン ヴィラーン ブレーソス ネーメス。

    léun-imvir-ánbrés-osném-es.
    申す-<私が>言葉-<対格>胸の内-<属格><私>-<属格>

    「胸の内の言葉を申し上げます。」

    改まった場で本心を打ち明けるときの前置き。léun- は「言う」の謙譲の補充形。属格が二つ続き、virán brésos némes で「私の胸の内の言葉」になる。

    glǘno brés némes.

    読み:グリューノ ブレース ネーメス。

    glǘn-obrésném-es.
    凍る-<(重いものが)>胸<主格><私>-<属格>

    「胸まで冷えこむ。」

    凍りの頃の嘆き。brés は体の部分なので重性で、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。持ち主は名詞の後ろに属格 némes で置く。glǘn- は湖が凍るときにも使う動詞で、体が冷えこむことも言う。

    lúin tóro nébro, éso brés némes gróm.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、エーソ ブレース ネーメス グローン。

    lúintór-onébro,és-obrésném-esgróm.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>いる-<(重いものが)>胸<主格><私>-<属格>重い

    「霧が来ると、胸が重くなる。」

    霧期の不調を語る文。lúin の節は主節の前に置く。霧 nébro も胸 brés も重性なので、どちらの動詞も -o をとる。述語の形容詞 gróm は重性・主格で語尾がつかない。霧は病を運ぶ「下の国の息」とされる。

    glǘno ómbo némes.

    読み:グリューノ オンボ ネーメス。

    glǘn-oómboném-es.
    凍る-<(重いものが)>指<主格><私>-<属格>

    「指がかじかむ。」

    凍りの頃によく聞く嘆き。ómbo は重性o語幹で、主格は語幹末の -o が見えた形。主語が重性の単数なので、動詞は -o をとる。glǘn- は湖が凍るときにも使う動詞で、指が冷えてこわばることも言う。

    mé omberénde ausenár néman.

    読み:メー オンベレンデ アウセナール ネーマン。

    méomber-énd-eau-senárném-an.
    <禁止・願いの打ち消し>名指しする-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-目付<私>-<対格>

    「目付殿、どうか私を名指しなさいませぬよう。」

    上向きの話し方。相手を2人称で呼ばず、ausenár「目付殿」を3人称の主語にする。命令法ではなく願望法を使い、mé で否定して「〜なさいませぬよう」と願う。願望法では3人称単数・軽性の語尾が -e になる。

    lóima lourvirár ráun némores an fóndaros.

    読み:ロイマ ロウルヴィラール ラウン ネーモレス アン フォンダロス。

    lóim-alourvirárráunném-or-esanfóndar-os.
    唱える-<(軽いものが)>系譜読み<主格>流れ<対格>1-<〜ら(古い母音交替)>-<属格>上手源-<属格>

    「系譜読みが、我々の流れを源から唱える。」

    祖先祀りや婚姻の場で、系譜読みが家系を一瀬ずつ唱えることを言う文。ráun は重性の子音語幹なので、主格と対格が同じ形になる。an+属格は「上手から」で、源から下へたどる向きを表す。

    ésa anlóur némes houmár.

    読み:エーサ アンロール ネーメス ホウマール。

    és-aanlóurném-eshoumár.
    いる-<(軽いものが)>親<主格><私>-<属格>家の主

    「私の親は家の主だ。」

    「AはBだ」の文で、繋辞 és- を先頭に置いている。anlóur は人を指すので軽性の子音語幹で、動詞は軽性の -a をとる。父か母かは区別しない。同じ流れの、親と同じ世代の親族(おじ・おばにあたる人)も指せる。

    ésau dulóurau némei.

    読み:エーサウ ドゥローラウ ネーメイ。

    és-audulóur-auném-ei.
    いる-<双数>子-<双数><私>-<与格>

    「私には子が二人いる。」

    所有の文。持ち主を与格で言い、動詞は持たれているほう(子どもたち)に一致する。双数の dulóurau だけで「二人」の意味になるので、数詞はいらない。自分の子は目下なので、数で言ってもかまわない。

    ké ésa brél tásei? ésau brélau némei.

    読み:ケー エーサ ブレール ターセイ?エーサウ ブレーラウ ネーメイ。

    kéés-abréltás-ei?és-aubrél-auném-ei.
    <〜か>いる-<(軽いものが)>きょうだい<主格><あなた>-<与格>いる-<双数>きょうだい-<双数><私>-<与格>

    「「お前にはきょうだいがいるか?」「きょうだいが二人いる。」」

    二人の発話。所有の動詞は持たれているほうに一致するので、答えでは人称ではなく数が変わり、双数の ésau になる。brél は年の上下を問わない言い方で、上下を言うときは ambrél・dubrél を使う。

    ésa ambrél némes faronár.

    読み:エーサ アンブレール ネーメス ファロナール。

    és-aambrélném-esfaronár.
    いる-<(軽いものが)>兄・姉<主格><私>-<属格>運び人

    「私の兄(姉)は運び人だ。」

    繋辞の文。ambrél は男女を区別せず、同じ流れ・同じ瀬で年上の者を指す。崖道の家族などの日常の言い方。

    kúula anlóur téir lóurul némes tambór.

    読み:クーラ アンロール テール ロールル ネーメス タンボール。

    kúul-aanlóurtéirlóur-ulném-estambór.
    煮る-<(軽いものが)>上の世代の血族<主格>三瀬-<〜たちを><私>-<属格>雑穀<対格>

    「私の曾祖母(曾祖父)が雑穀を煮ている。」

    「三瀬上」で曾祖父母を言う。三以上の数詞の後ろなので、瀬は複数の lóurul になる。どれだけ隔たっているかを表す道のりの対格の句が名詞のすぐ後ろに来て、そのあとに属格が続く。男女は区別しない。

    klóima dulóur némes lisáis es lisáres.

    読み:クロイマ ドゥロール ネーメス リサイス エス リサーレス。

    klóim-adulóurném-eslis-áiseslis-ár-es.
    学ぶ-<(軽いものが)>子<主格><私>-<属格>字-<〜たちを>から書く-<〜する人>-<属格>

    「私の子は書記から字を学んでいる。」

    日常会話の文。誰から学ぶかは「es+属格」(〜から)で言う。時制がないので、「学んでいる」とも「学んだ」とも訳せる。

    lúin tóra dulóur téir lóurul némes, sáilim.

    読み:ルーイン トーラ ドゥロール テール ロールル ネーメス、サイリン。

    lúintór-adulóurtéirlóur-ulném-es,sáil-im.
    とき来る-<(軽いものが)>下の世代の血族<主格>三瀬-<〜たちを><私>-<属格>喜ぶ-<私が>

    「曾孫が来ると、私はうれしい。」

    「三瀬下」で曾孫を言う。三の後ろなので、瀬は複数の lóurul になる。lúin の節は主節の前に置く。主節の主語は動詞の語尾 -im でわかるので、代名詞は言わない。

    lúin hóina ambrél némes, mánimor tambór.

    読み:ルーイン ホイナ アンブレール ネーメス、マーニモル タンボール。

    lúinhóin-aambrélném-es,mán-imortambór.
    とき帰る-<(軽いものが)>兄・姉<主格><私>-<属格>食べる-<我々が>雑穀<対格>

    「兄(姉)が帰ってきたら、みんなで雑穀を食べよう。」

    家の中の会話の文。時を表す lúin の節を前に置いている。主節の動詞は1人称複数の直説法で、時制がないので、これからの予定としても読める。家の中のくだけた言い方なので、mán- を敬語の補充形にしていない。tambór は重性なので、対格でも語尾がつかない。

    tóra ambrél éul némes sórel.

    読み:トーラ アンブレール エウル ネーメス ソーレル。

    tór-aambréléulném-essórel.
    来る-<(軽いものが)>兄・姉別の流れの<私>-<属格>今日

    「今日、義理の兄(姉)が来る。」

    ambrél éul「別の流れの兄・姉」は、配偶者の兄・姉と、兄・姉の配偶者のどちらも指す。自分と同じ家系かどうかを重んじ、どういうつながりで別の流れになったのかは区別しない。名詞句は「名詞–形容詞–属格」の順で、éul は軽性・単数・主格なので語尾がつかない。

    nóira véiran némes.

    読み:ノイラ ヴェーラン ネーメス。

    nóir-avéiranném-es.
    眠る-<(軽いものが)>配偶者<私>-<属格>

    「連れ合いは眠っている。」

    家に来た人への日常の受け答え。véiran は夫にも妻にも使い、性別を区別しない。人を指すので軽性の子音語幹で、動詞は軽性の -a をとる。時制がないので「眠っている」とも「眠った」とも取れる。

    séna dubrél némes gandér.

    読み:セーナ ドゥブレール ネーメス ガンデール。

    sén-adubrélném-esgandér.
    見る-<(軽いものが)>弟・妹<私>-<属格>硬木<対格>

    「私の弟(妹)が硬木を見ている。」

    家の中で使うふつうの文。dubrél は人を指すので軽性の子音語幹になり、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。持ち主の ném「私」は属格にして名詞の後ろに置く。gandér は重性なので、対格でも語尾がつかない。dubrél は弟と妹を区別しない。

    lísa véiran némes sáindaran.

    読み:リーサ ヴェーラン ネーメス サインダラン。

    lís-avéiranném-essáindar-an.
    書く-<(軽いものが)>配偶者<私>-<属格>証文-<対格>

    「私の連れ合いが証文を書く。」

    véiran は人を指すので軽性で、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。夫と妻を区別しない。持ち主は属格にして名詞の後ろに置く。目上の人の配偶者を言うときは、持ち物と同じように尊敬の au- をつける。au- は v- の前で aub- に融合するので、その場合は aubéiran になる。

    aulisénde aulourvirár þelán dulóures némes sáindarei.

    読み:アウリセンデ アウロウルヴィラール セラーン ドゥローレス ネーメス サインダレイ。

    au-lis-énd-eau-lourvirárþel-ándulóur-esném-essáindar-ei.
    <お〜になる・御〜>-書く-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-系譜読み名前-<対格>瀬下-<属格><私>-<属格>証文-<与格>

    「系譜読みの方に、私の子の名を証文へお書きいただきたく存じます。」

    系譜読みは家の年長の女性で、発言力も強い。そのため頼みごとは上向きの話し方でする。命令法の代わりに願望法の3人称を使い、相手は尊敬の au- をつけた役名で呼ぶ。au- は l の前では形を変えない。sáindar は軽性の子音語幹で、与格は -ei になる。

    ésau ambrél dórin si dubrél dórin némei.

    読み:エーサウ アンブレール ドーリン シ ドゥブレール ドーリン ネーメイ。

    és-auambréldórinsidubréldórinném-ei.
    いる-<双数>兄・姉<主格>男<主格>と弟・妹<主格>男<主格><私>-<与格>

    「私には兄と弟が一人ずついる。」

    親族名称は性別を区別しないので、dórin を後ろに添えて「男の」であることを示す。添えた dórin も、親族名称と同じ格になる。単数のものを si で二つ並べたので、動詞は双数の ésau になる。

    ésa dulóur líura némei.

    読み:エーサ ドゥロール リーウラ ネーメイ。

    és-adulóurlíuraném-ei.
    いる-<(軽いものが)>子<主格>女<主格><私>-<与格>

    「私には娘がいる。」

    「瀬下(子)」の dulóur に líura を添えて「娘」とする。所有は「ある+持ち主の与格」で言い、動詞は持たれている者に一致する。

    ésa endríña némei.

    読み:エーサ エンドリーニャ ネーメイ。

    és-aendríñaném-ei.
    いる-<(軽いものが)>子ども<主格><私>-<与格>

    「私には子どもがいる。」

    所有の言い方。高原語には「持つ」という動詞がないので、「ある+持ち主の与格」で言う。動詞は、持たれている endríña(軽性)に一致して ésa になる。

    ésa séulin némes faronár.

    読み:エーサ セウリン ネーメス ファロナール。

    és-aséulinném-esfaronár.
    いる-<(軽いものが)>友<主格><私>-<属格>運び人

    「私の友は運び人だ。」

    日常の会話で人を紹介する文。繋辞 és- を先頭に置き、「és-+主語+述語」の順に並べる。「私の友」は名詞の後ろに属格を置いて séulin némes と言う。séulin はとくに同じ段の者どうしの親しい仲間を指す。

    ésa séulin némes tráumo.

    読み:エーサ セウリン ネーメス トラウモ。

    és-aséulinném-estráumo.
    いる-<(軽いものが)>友<主格><私>-<属格>確かな足場

    「私の友は、渡り氷のように頼れる男だ。」

    人を「確かな足場」にたとえる、ほめ言葉。述語の名詞は重性だが、主語が人なので繋辞は軽性の -a になる。人を重性の一致で受けると侮辱になるので、ここで性を取り違えてはいけない。

    meiréndes ílmo némei.

    読み:メイレンデス イルモ ネーメイ。

    meir-énd-esílmoném-ei.
    与える-<〜しますように>-<あなたが>水<対格><私>-<与格>

    「水を一杯くれないか。」

    同じ段の相手に、願望法の2人称でものを頼む「並び」の言い方。願望法の接尾辞 -énd- に強勢が移るので、語根の ´ は消える。ílmo は重性のo語幹で、主格と対格が同じ形になる。飲み水や使い水を指すふつうの語で、雨水を指すときには使わない。

    éso fóndar ráimaros þéul ráunos némes.

    読み:エーソ フォンダル ライマロス セウル ラウノス ネーメス。

    és-ofóndarráimar-osþéulráun-osném-es.
    いる-<(重いものが)>源<主格>ライマル-<属格>清い始まり<主格>流れ-<属格><私>-<属格>

    「ライマルの源こそ、我が流れの清き始まりである。」

    系譜読みが家系を唱えるときの言い方。系譜を川の流れにたとえ、始祖を「まだ濁っていない湧き水」と言い表している。主語の fóndar が重性なので、繋辞は -o をとる。þéul はここでは比喩の意味で、名詞の述語になっている。

    ésa méula némei, éso nímbo némei.

    読み:エーサ メウラ ネーメイ、エーソ ニンボ ネーメイ。

    és-améulaném-ei,és-onímboném-ei.
    いる-<(軽いものが)>毛山羊<主格><私>-<与格>いる-<(重いものが)>乳<主格><私>-<与格>

    「私には毛山羊がいる。だから乳もある。」

    所有を「ある+持ち主の与格」で言う文を、接続詞なしで二つ並べている。動詞は持ち主ではなく、持たれている物に一致する。軽性の méula を受けると ésa、重性の nímbo を受けると éso になる。

    lúin ésa líndra ível, sáila nourá némes.

    読み:ルーイン エーサ リンドラ イーヴェル、サイラ ノウラー ネーメス。

    lúinés-alíndraível,sáil-anouráném-es.
    ときいる-<(軽いものが)>金の落葉樹<主格>新しい喜ぶ-<(軽いものが)>心<主格><私>-<属格>

    「新しい年を迎えて、わが心は喜びにあふれます。」

    手紙の冒頭に添える季節の句の型。「金の落葉樹が新しくなるとき」で「新年を迎えるとき」の意味になる。年の始まりと、金の落葉樹が色づく乾風期の初めが重なることから生まれた詩語。

    drénan dubrélai némes an dún sórel.

    読み:ドレーナン ドゥブレーライ ネーメス アン ドゥーン ソーレル。

    drén-andubrél-ainém-esandúnsórel.
    参る-<彼らが>弟妹-<〜たちが><私>-<属格>上手丘<対格>今日

    「今日、私の弟たちが丘の上へ参ります。」

    話し手自身だけでなく、身内の行き先を目上の人に告げるときにも謙譲の drén- を使う。an+対格で「上手へ」。丘の上は身分の高い家の場所なので、丘へ上がる身内を低めて言う。

    brúumo frélo es máros némes.

    読み:ブルーモ フレーロ エス マーロス ネーメス。

    brúum-ofréloesmár-osném-es.
    落ちる-<(重いものが)>魚<主格>から手-<属格><私>-<属格>

    「魚が私の手から落ちた。」

    日常の文。frélo「魚」は重性o語幹なので、動詞は重性の -o をとる。már「手」も重性で、属格は -os。es+属格で「〜から」。所有者の属格 némes は名詞の後ろに置く。

    aufindénde ausenár virán némes.

    読み:アウフィンデンデ アウセナール ヴィラーン ネーメス。

    au-find-énd-eau-sen-árvir-ánném-es.
    <お〜になる・御〜>-聞き入れる-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>言葉-<対格><私>-<属格>

    「目付殿に、私の願いをお聞き入れいただきたく存じます。」

    上向きの話し方で願い出る決まった言い方。命令法は使わず、願望法の3人称にして、目の前にいる相手を役職名の主語として扱う。動詞には尊敬の au- がつき、強勢が -énd- に移るので、語根の ´ は消える。「言葉を聞き入れる」で「願いを容れる」の意味になる。

    ké fíndes virán némes?

    読み:ケー フィンデス ヴィラーン ネーメス?

    kéfínd-esvir-ánném-es?
    <〜か>聞く-<あなたが>言葉-<対格><私>-<属格>

    「俺の声が聞こえるか。」

    日常のくだけた問い。はい・いいえで答える問いなので、文のいちばん前に ké を置き、2人称を使っている(下向きか並びの話し方)。答えるときは動詞を繰り返し、fíndim「聞こえる」/na fíndim「聞こえない」と言う。virá「言葉」は、ここでは相手に届く声や話を指す。

    ésa þelíña némes ráinen ambrélar.

    読み:エーサ セリーニャ ネーメス ライネン アンブレーラル。

    és-aþelíñaném-esráin-enambrél-ar.
    いる-<(軽いものが)>幼名<主格><私>-<属格>知る-<〜した・〜された>兄・姉-<〜らの>

    「私の幼名は、兄や姉たちが知っている。」

    幼名は家族とごく親しい者しか知らない名なので、それを知っていることが近しさのしるしになる。分詞の後ろの属格 ambrélar は「〜によって」の意味。ambrél は同じ流れの年上のきょうだいを指し、男女を区別しない。

    ké þíles virán némes?

    読み:ケー シーレス ヴィラーン ネーメス?

    kéþíl-esvir-ánném-es?
    <〜か>分かる-<あなたが>言葉-<対格><私>-<属格>

    「私の言うことが分かるか。」

    言葉が通じるかを確かめる、日常の問い。所有者は属格の代名詞 némes で表し、名詞の後ろに置く。

    glóuma nourá némes.

    読み:グローマ ノウラー ネーメス。

    glóum-anouráném-es.
    惑う-<(軽いものが)>心<私>-<属格>

    「私の心は乱れている。」

    nourá は軽性なので、動詞は -a で受ける。気持ちが定まらないことを言う、日常の言い方。

    ésa nourá némes ré lísa lisár sáindaran dórel, ausenár.

    読み:エーサ ノウラー ネーメス レー リーサ リサール サインダラン ドーレル、アウセナール。

    és-anouráném-esrélís-alis-ársáindar-andórel,au-sen-ár.
    いる-<(軽いものが)>思い<私>-<属格><〜と(節)>書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>証文-<対格>明日<お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>

    「目付殿、私の考えは、明日書記が証文を書く、というものです。」

    目上の人に意見を述べるときの言い方。自分の思いには au- をつけない。ré の節で考えの中身を示し、呼びかけの役職名は文の終わりに読点で区切って添える。

    grúuna houmár némei.

    読み:グルーナ ホウマール ネーメイ。

    grúun-ahoumárném-ei.
    怒る-<(軽いものが)>家の主<主格><私>-<与格>

    「家の主が私に怒っている。」

    日常の言い方。怒りを向ける相手は与格で示す。主語の houmár は人なので、動詞は軽性の -a をとる。時制がないので、「怒った」とも「怒っている」とも訳せる。

    lúin méira séulin tambór némei, glénim élei méldo.

    読み:ルーイン メーラ セウリン タンボール ネーメイ、グレーニン エーレイ メルド。

    lúinméir-aséulintambórném-ei,glén-imél-eiméldo.
    とき与える-<(軽いものが)>友<主格>雑穀<対格><私>-<与格>返礼する-<私が><3人称単数・軽性>-<与格>蜜<対格>

    「友が私に雑穀をくれると、私はその人に蜜でお返しをする。」

    「返礼する」の意味では、お返しの品を対格に、相手を与格にとる。村の暮らしでよく聞く、くだけた言い方。

    éso hóum fóum némei.

    読み:エーソ ホーン フォーン ネーメイ。

    és-ohóumfóumném-ei.
    いる-<(重いものが)>炉<主格>暖かい<私>-<与格>

    「私のところには暖かい炉がある。」

    所有の言い方で、「ある+持ち主の与格」の形。動詞は、持たれている炉 hóum(重性)に一致して -o をとる。形容詞も重性・主格なので、語尾はつかない。

    ésa ambrél némes krán, na fínda viráis némes.

    読み:エーサ アンブレール ネーメス クラーン、ナ フィンダ ヴィライス ネーメス。

    és-aambrélném-eskrán,nafínd-avir-áisném-es.
    いる-<(軽いものが)>兄姉<主格><私>-<属格>頑固な<〜ない>聞く-<(軽いものが)>言葉-<〜たちを><私>-<属格>

    「兄は頑固で、私の言うことを聞かない。」

    家族についての愚痴。人について言うときは軽性の一致になり、繋辞は éisa をとる。ambrél は年上のきょうだいを指し、性別は区別しない。属格 némes は名詞の後ろに置く。

    ésa séulin némes náum, na grúuna.

    読み:エーサ セウリン ネーメス ナウン、ナ グルーナ。

    és-aséulinném-esnáum,nagrúun-a.
    いる-<(軽いものが)>友<主格><私>-<属格>穏やかな<〜ない>怒る-<(軽いものが)>

    「私の友は穏やかな人で、怒ることがない。」

    人柄を言う日常の文。後半の主語は言っていないが、動詞の語尾 -a から、前半と同じ友が主語だとわかる。時制がないので、習慣としての「怒らない」の意味になる。

    ésa lúsa tambóros némei.

    読み:エーサ ルーサ タンボーロス ネーメイ。

    és-alúsatambór-osném-ei.
    いる-<(軽いものが)>粥<主格>雑穀-<属格><私>-<与格>

    「私には雑穀の粥がある。」

    台所での日常の文。所有は「ある+持ち主の与格」で言う。動詞は持たれている物 lúsa(軽性)に一致して -a になる。材料は属格 tambóros で後ろに添える。tambór は重性なので、属格は -os になる。

    ésau kéira si méldo némei.

    読み:エーサウ ケーラ シ メルド ネーメイ。

    és-aukéirasiméldoném-ei.
    いる-<双数>蜜蝋<主格>と蜜<主格><私>-<与格>

    「私には蜜蝋と蜜がある。」

    商人が手元の品を言う所有の文。所有は「持つ」という動詞を使わず、「ある+持ち主の与格」で言う。単数のもの二つを si で並べたので、動詞は双数 ésau になる。蜜蝋と蜜は、下ろし荷として並んで扱われることが多い。

    brúumo frúm rús es máros némes.

    読み:ブルーモ フルーン ルース エス マーロス ネーメス。

    brúum-ofrúmrúsesmár-osném-es.
    落ちる-<(重いものが)>血<主格>赤いから手-<属格><私>-<属格>

    「私の手から赤い血が落ちる。」

    血 frúm は体に属するものなので重性。動詞は3人称単数・重性の -o をとり、形容詞 rús は重性の主格なので語尾がつかない。樵が手を切ったときのような日常の一言。

    ésa ín rása némei.

    読み:エーサ イーン ラーサ ネーメイ。

    és-aínrásaném-ei.
    いる-<(軽いものが)>一重ね<主格><私>-<与格>

    「私は一重ねの身にすぎません。」

    重ねる衣の枚数が身分の段を表すことから、自分の身分の低さをへりくだって言う言い方。所有を「ある+持ち主の与格」で表している。動詞は持たれている物の rása(軽性)に一致する。ín「一」の後ろなので、名詞は単数になる。

    na ésa síndra némei.

    読み:ナ エーサ シンドラ ネーメイ。

    naés-asíndraném-ei.
    <〜ない>いる-<(軽いものが)>帯<主格><私>-<与格>

    「私は帯を持っていない。」

    所有は「ある+持ち主の与格」で言う。動詞は持たれている物の síndra(軽性)に一致する。否定の小辞 na は動詞の直前に置く。

    hóinim du bóral némes.

    読み:ホイニン ドゥ ボーラル ネーメス。

    hóin-imdubóralném-es.
    帰る-<私が>下手家<対格><私>-<属格>

    「(下手の)自分の家へ帰る。」

    日常の言い方。bóral は重性の子音語幹名詞で、石の土台と伐った材で建てるため重性になる。主格と対格が同じ形。高原語には方向を言わない「〜へ」がないので、家へ帰るときも、家が上手にあれば an、下手にあれば du を使って上下を言い分ける。

    bróla kelár bóral némei.

    読み:ブローラ ケラール ボーラル ネーメイ。

    bról-akel-árbóralném-ei.
    作る-<(軽いものが)>伐る-<〜する人>家<対格><私>-<与格>

    「樵が私に家を建ててくれる。」

    VSO の基本の文。bóral は重性の子音語幹名詞で主格と対格が同じ形なので、動詞のすぐ後ろの kelár が主語、その次の bóral が目的語だと語順で決まる。受け手は与格 némei。家は石の土台に柱の木で組み、中心に炉を据える。

    ké ésa dreumá tásei? ésa dreumá némei.

    読み:ケー エーサ ドレウマー ターセイ?エーサ ドレウマー ネーメイ。

    kéés-adreumátás-ei?és-adreumáném-ei.
    <〜か>いる-<(軽いものが)>墨<主格><あなた>-<与格>いる-<(軽いものが)>墨<主格><私>-<与格>

    「「お前、墨は持っているか?」「持っている。」」

    二人の発話。dreumá は dréum「黒い」に軽いものを表す -á がついた語で、強勢が語尾にある。言葉を載せて昇るものなので軽性になり、繋辞は ésa。所有は「és-+物+持ち主の与格」で言い、動詞は持ち主ではなく墨に一致する。

    méir rínelul némei.

    読み:メール リーネルル ネーメイ。

    méirrínel-ulném-ei
    与える<命令法><あなたが>箸-<〜たちを><私>-<与格>

    「箸を取ってくれ。」

    家族や目下の相手に言う、くだけた頼み。命令法の2人称単数は、語幹そのままの形で言う。受け手は与格で、目的語の後ろに置く。同じ段の相手には、願望法で meiréndes rínelul némei. と言う。

    éso kórvo némei, na éso tambór.

    読み:エーソ コルヴォ ネーメイ、ナ エーソ タンボール。

    és-okórvoném-ei,naés-otambór
    いる-<(重いものが)>倉<主格><私>-<与格><〜ない>いる-<(重いものが)>雑穀<主格>

    「倉はあるが、雑穀がない。」

    凶作の年の嘆き。高原語には「持つ」という動詞がないので、所有は「és- + 物 + 持ち主の与格」で言う。kórvo は重性o語幹で、主格と対格が同じ形になる。動詞は持たれている物(倉、雑穀)に一致して -o をとる。

    aurainiþénde aulisár lisáis némei.

    読み:アウライニセンデ アウリサール リサイス ネーメイ。

    au-rainiþ-énd-eau-lisárlis-áisném-ei.
    <お〜になる・御〜>-教える-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-書記字-<〜たちを><私>-<与格>

    「書記の方に、私に字をお教えいただきたく存じます。」

    目上の書記に教えを請う、上向きの願い。動詞にも名詞にも尊敬の au- をつける。教わる人は与格で言う。強勢は願望法の -énd- に移るので、使役の -íþ- の強勢は消える。

    luuménde ausenár plíndo némes.

    読み:ルーメンデ アウセナール プリンド ネーメス。

    luum-énd-eau-sen-árplíndoném-es.
    ご覧になる-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>市の札<対格><私>-<属格>

    「目付殿に、私の市の札をご覧いただきたく存じます。」

    縁商人が市の目付に札を見せるときの、上向きの依頼。命令法を使わず、尊敬の補充形 lúum- の願望法3人称で言い、目の前の相手を ausenár「目付殿」という3人称の主語にする。所有者は属格 némes で名詞の後ろに置く。

    léimim símbo némes sáindarei.

    読み:レーミン シンボ ネーメス サインダレイ。

    léim-imsímboném-essáindar-ei.
    置く-<私が>印<対格><私>-<属格>証文-<与格>

    「証文に私の印を押します。」

    「印を押す」は léim-「置く」に símbo を目的語にとって言う。押す先は与格で表す。帳簿と証文が重んじられる市の取引で、日常的によく聞く言い方。

    áura þondá némes an élvaran.

    読み:アウラ ソンダー ネーメス アン エルヴァラン。

    áur-aþondáném-esanélvar-an.
    昇る-<(軽いものが)>誓い<主格><私>-<属格>上手天-<対格>

    「私の誓いは天へ昇る。」

    星の見える晴れた夜に、改まった誓いを立てるときの言葉。誓いは息なので軽いもので、上へ昇って祖先に届くと考えられている。þondá は軽性なので、動詞は -a で一致する。

    lúin gélim an kreinándo, áura mélna némes an aursárais.

    読み:ルーイン ゲーリン アン クレイナンド、アウラ メルナ ネーメス アン アウルサーライス。

    lúingél-imankreinándo,áur-amélnaném-esanaursár-ais.
    とき行く-<私が>上手納骨所<対格>昇る-<(軽いものが)>詩<主格><私>-<属格>上手祖先-<〜たちを>

    「納骨所へ上るときには、私の詩が祖先の方々のもとへ昇っていく。」

    成人の儀や祖先祀りで聖地に登る人の言葉。移動の動詞 gél- には方向の前置詞をかならず添えるので、an「上手へ」で上りの道だとわかる。詩は息なので軽く、祖先への捧げものとして上へ昇る。祖先は複数対格 -ais で表す。

    dúlan téir tráimelai, na tóra séulin némes.

    読み:ドゥーラン テール トライメライ、ナ トーラ セウリン ネーメス。

    dúl-antéirtráimel-ai,natór-aséulinném-es.
    下る-<彼らが>三年齢・年数-<〜たちが><〜ない>来る-<(軽いものが)>友<主格><私>-<属格>

    「三年が過ぎたが、私の友は来ない。」

    年月が経つことは、川の水が下るのにたとえて dúl-「下る」で言う。時制がないので、「過ぎた」ことは文脈から読みとる。三以上の数詞の後ろでは、名詞は複数になる(tráimelai)。動詞はこの複数の主語に一致して、3人称複数の -an をとる。

    lísa lisár þelán némes un sáindarei.

    読み:リーサ リサール セラーン ネーメス ウン サインダレイ。

    lís-alis-árþel-ánném-esunsáindar-ei.
    書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>名前-<対格><私>-<属格>内に証文-<与格>

    「書記は証文の中に私の名を書く。」

    un+与格で「〜の内に」を表す。前置詞なしの与格でも場所は言えるが、un を添えると「その内側に」という意味がはっきりする。un には強勢がない。名前を書くことは息を使わないので、禁忌にならない。

    fláinim. faronéres fáron némes du orén.

    読み:フライニン。ファロネーレス ファーロン ネーメス ドゥ オレーン。

    fláinim.faron-ér-esfáronném-esduorén.
    助かる荷-<〜でする>-<あなたが>荷<対格><私>-<属格>下手縁<対格>

    「助かったよ。俺の荷を縁まで担いでくれて。」

    運び人どうしの礼。faronér- は名詞 fáron「荷」に -ér- をつけて作った動詞。持ち主は、名詞の後ろに属格 némes を置いて言う。時制がないので、faronéres は「担いだ」とも「担いでくれる」とも訳せる。

    naþíl. vír virnourán némei, ende.

    読み:ナシール。ヴィール ヴィルノウラーン ネーメイ、エンデ。

    naþíl.vírvirnouránném-ei,ende.
    わからん言う<命令法><あなたが>意味<対格><私>-<与格>どうぞ

    「わからん。意味を言ってくれ、頼む。」

    わからないと伝えたうえで、説明を頼む言い方。縁の市の取引言葉らしく、vír-「言う」をむき出しの語幹で使い、ende を添えている。聞き手は与格 némei「私に」で表す。

    hóu! mé hál þelán némes!

    読み:ホー!メー ハール セラーン ネーメス!

    hóu!méhálþel-ánném-es!
    おい<禁止・願いの打ち消し>呼ぶ<命令法><あなたが>名前-<対格><私>-<属格>

    「おい!俺の名を呼ぶな!」

    霧の中で自分の名を呼ばれたときに、たしなめる言い方。禁止は「mé+命令法」。þelá は語尾に強勢のある軽性a語幹なので、対格は þelán になる。霧の中では hóu や té「そこの方」で呼びかけるのが決まりなので、hóu がそのまま禁忌を守った呼びかけになっている。

    ái, tóra séulin némes.

    読み:アイ、トーラ セウリン ネーメス。

    ái,tór-aséulinném-es.
    おや来る-<(軽いものが)>友<主格><私>-<属格>

    「おや、友が来た。」

    ちょっとした驚きを表す日常の言い方。所有者は属格の代名詞 némes で、名詞の後ろに置く。人は軽性なので、動詞は -a をとる。

    meiréndes sóndelan sé némei.

    読み:メイレンデス ソンデラン セー ネーメイ。

    meir-énd-essóndel-anséném-ei.
    与える-<〜しますように>-<あなたが>書物-<対格>この<軽性><私>-<与格>

    「この書物を私に譲ってくれぬか。」

    同じ段の相手への依頼で、願望法の2人称を使う。目下の相手なら命令法 méir、目上の相手なら願望法の3人称にする。sóndel は軽性・子音語幹で、指示詞 sé も軽性の形をとる。

    aurainiþénde aulisár lisán sé némei.

    読み:アウライニセンデ アウリサール リサーン セー ネーメイ。

    au-rainiþ-énd-eau-lis-árlis-ánséném-ei.
    <お〜になる・御〜>-教える-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>字-<対格>この<軽性><私>-<与格>

    「書記の方に、この字をお教えいただきたく存じます。」

    目上の人に教えを請う改まった言い方。尊敬の au- を動詞と名詞の両方につけ、願望法の3人称で頼む。強勢は願望法の -énd- に移り、語根の強勢は消える。

    ésa endríña sé kloimár némes.

    読み:エーサ エンドリーニャ セー クロイマール ネーメス。

    és-aendríñasékloimárném-es
    いる-<(軽いものが)>子ども<主格>この<軽性>弟子<主格><私>-<属格>

    「この子は私の弟子だ。」

    「AはBだ」の文で、繋辞 éis- を文頭に置き、主語・述語の順に並べる。指示詞 sé は主語の名詞句の終わりを示す。述語の kloimár は主語と同じく主格になる。

    na ésa fírna némei.

    読み:ナ エーサ フィルナ ネーメイ。

    naés-afírnaném-ei.
    <〜ない>いる-<(軽いものが)>筆<主格><私>-<与格>

    「私には筆がない。」

    所有の否定。「持つ」という動詞はなく、「ない」は na+存在の動詞+持ち主の与格で言う。動詞は持たれている物 fírna に一致して、軽性の -a をとる。

    éso gromó némes frél

    読み:エーソ グロモー ネーメス フレール

    és-ogromóném-esfrél
    いる-<(重いものが)>体<主格><私>-<属格>寒い

    「私の体は寒い。」

    gromóは重性の体。主語の名詞句はgromó némesで、属格は名詞の後ろに置く。述語のfrélは名詞句の後に置かれる。

    éso houméro só némei.

    読み:エーソ ホウメーロ ソー ネーメイ。

    és-ohoumérosóném-ei.
    いる-<(重いものが)>袋<主格>この<重性><私>-<与格>

    「私にはこの袋がある。」

    日常会話の所有文。houméro は重性o語幹の単数で、主格と対格が同形。存在動詞 éso は、形態素としては és-o と分け、主語 houméro に一致して重性の語尾 -o をとる。持ち主は裸の与格で示す。

    na veunkrúnim, na éso fáron némei.

    読み:ナ ヴェウンクルーニン、ナ エーソ ファーロン ネーメイ。

    naveunkrún-im,naés-ofáronném-ei.
    <〜ない>負担を負う-<私が><〜ない>いる-<(重いものが)>荷<主格><私>-<与格>

    「私は背負わない。私には荷がない。」

    改まった場での婉曲な断り。直説法の否定は動詞の直前に na を置く。すくめりの動作を伴い、「私には荷がない=背負うものではない」と距離を置く。

    lúin háles þelán némes, þréelim.

    読み:ルーイン ハーレス セラーン ネーメス、スレーリン。

    lúinhál-esþel-ánném-es,þréel-im
    when呼ぶ-<あなたが>名前-<対格><私>-<属格>振り返る<〜し終えた>-<私が>

    「あなたが私の名を呼ぶと、私は振り向いた。」

    lúin 節では動詞が節頭に来る。主語は人称語尾に含み、所有は名詞 þelán の後ろに属格 ném-es を置く。主節の完了相 þréel- は動詞の完了形で、名詞の呼称ではない。

    éso louríño mór némei.

    読み:エーソ ロウリーニョ モール ネーメイ。

    és-olouríñomórném-ei.
    いる-<(重いものが)>皺<主格>深い<私>-DAT.

    「私には深い皺がある。」

    日常会話。存在文で、持ち主を裸の与格 némei で示す。対象 louríño は重性単数なので存在動詞は és-o。形容詞 mór は、この比喩では皺の深さを含む。

    snémbim þúlo némes

    読み:スネンビン スーロ ネーメス

    snémb-imþúloném-es
    こする-<私が>鼻<対格><私>-<属格>

    「私は鼻をこする。」

    身体動作を表す日常文。重性o語幹 þúlo は対格も主格と同形で、語を切らずに書く。所有の人称代名詞 némes は名詞句の後ろに置く。動きが伴う場面では婉曲せず þúlo を使う。

    éso dulíño némes múl

    読み:エーソ ドゥリーニョ ネーメス ムール

    és-odulíñoném-esmúl
    いる-<(重いものが)>ひげ<主格><私>-<属格>厚い

    「私のひげは厚い」

    顔の毛の直接呼称 dulsóila に対して、下へ流れ落ちる水のイメージを持つ婉曲呼称。存在・繋辞 éso は重性の主語に一致する。持ち主は属格 némes で表す。述語形容詞 múl は主語の重性単数に一致し、主格では無語尾。日常会話や書簡で、自分のひげを述べる場面に使える。

    ái, mombrúumo brés némes.

    読み:アイ、モンブルーモ ブレース ネーメス。

    ái,mombrúum-obrésném-es.
    おや,石落ちる-<(重いものが)>胸<主格><私>-<属格>

    「おや、胸がすっとした(ほっとした)。」

    くだけた日常の独白・短い応答。主語は「私の胸」。体の部分名詞は文法上重性なので、動詞は3人称単数・重性の-oで受ける。直接「安堵した」と言わず、身体から重みが落ちる感覚として述べる婉曲表現。改まった場では使わない。

    houmþálo némei.

    読み:ホウンサーロ ネーメイ。

    houm-þál-oném-ei.
    炉-止まる-<(重いものが)>私-<与格>

    「炉が冷えます(=私は腹が空く)。」

    家庭生活での婉曲な日常表現。houmþál- は「炉」を語中に取り込み、経験者・持ち主は与格で示す。取り込まれた炉は重性なので、動詞は重性3人称単数接尾辞 -o をとる。

    houmþálo dóulin némei.

    読み:ホウンサーロ ドーリン ネーメイ。

    houmþál-odóulinném-ei.
    炉が冷える-<(重いものが)>もう私-<与格>

    「炉が冷えました(=私はもう腹が空きました)。」

    食事を始める頃に使える定型。houmþál- は houm「炉」+þál-「止まる」の複合動詞として一語で受け、炉が止まって食事の支度が整った/腹が空いた合図を表す。相の副詞 dóulin は動詞の直後に置く。

    ái! senkráno senó némes.

    読み:アイ!センクラーノ セノー ネーメス。

    ái!senkrán-osenóném-es.
    おや!目が止まる-<(重いものが)>目<主格><私>-<属格>

    「おや!私の目が、思わず見開かれた。」

    驚きの感嘆詞 ái を添えた日常の言い方。身体部位の所有は名詞に属格代名詞を後接する。主語が単数の目なので、動詞は重性3SG.HV。両目を指す文脈では双数の主語形も取りうる。

    ké vráno snóimo némes

    読み:ケー ヴラーノ スノイモ ネーメス

    kévrán-osnóimoném-es
    <〜か>硬直する-<(重いものが)>肩<主格><私>-<属格>

    「私の肩はこわばっていますか。」

    日常の体の訴え。身体部分を示すsnóimoは重性として、動詞は3人称単数重性の-oで受ける。所有は、主格の身体名詞の後ろに1人称属格を置く。

    ésa virá némes navánden

    読み:エーサ ヴィラー ネーメス ナヴァンデン

    és-aviráném-esna-vánd-en
    いる-<(軽いものが)>言葉<主格><私>-<属格><〜ない>-量る-<〜した・〜された>

    「私の言葉は取るに足らぬ。」

    礼の場や会釈の場で、自分の申し述べをへりくだる言い方。virá は軽性a語幹の単数主格。形容詞は主語に一致して無標識。

    éso auró némei.

    読み:エーソ アウロー ネーメイ。

    és-oauróném-ei.
    いる-<(重いものが)>薬<主格><私>-<与格>

    「私には薬がある。」

    日常の所有の言い方。持つを表す動詞は使わず、存在動詞 és- と持ち主の与格で表す。主語の auró は重性 o語幹なので、動詞は3人称単数・重性の -o で一致する。

    éso snuló némei.

    読み:エーソ スヌロー ネーメイ。

    és-osnulóném-ei
    いる-<(重いものが)>たこ<主格><私>-<与格>

    「私にはたこがある。」

    存在・所有を表す日常文。身体にできた痕も、持ち主を裸の与格で置いて表す。snuló は重性o語幹で、単数主格と対格は同型。

    éso heló némes krém.

    読み:エーソ ヘロー ネーメス クレーン。

    és-ohelóném-eskrém.
    居る-<(重いものが)>尻<主格><私>-<属格>痛い

    「私の尻は痛い。」

    日常の身体感覚を直接述べる文。heló は重性o語幹の単数で、主格と対格は同形。所有は名詞に属格 némes を後置し、krém は名詞句の外にある述語形容詞として主語に一致する。

    na éso þrón némei

    読み:ナ エーソ スローン ネーメイ

    naés-oþrónném-ei
    <〜ない>いる-<(重いものが)>矢<主格>私-<与格>

    「私には矢がない。」

    日常会話。存在・所有は「存在動詞+主語+持ち主の与格」の形で言う。持たれている þrón が重性なので、存在動詞は3人称単数・重性の éso をとる。否定は直説法なので na を使う。

    éso frumó némes gráis.

    読み:エーソ フルモー ネーメス グライス。

    és-ofrumóném-esgráis.
    いる-<(重いものが)>傷<主格><私>-<属格>悪い

    「私の傷は悪い。」

    日常の自己申告。名詞句「frumó némes(私の傷)」が主語で、存在・繋辞の語根 és- に3人称単数・重性の語尾 -o が付いて éso になる。形容詞 gráis は重性単数主格では無標識のまま置かれる。

    éso þurán káil némei

    読み:エーソ スラーン カイル ネーメイ

    és-oþuránkáilném-ei
    いる-<(重いものが)>唇<主格>乾いた<私>-<与格>

    「私には唇が乾いている。」

    日常的な身体の状態を言う文。þurán は上唇・下唇を含む口まわりの肉縁をひと続きの部位として指すため、ここでの単数は唇全体を指す。重性名詞で、存在文の持ち主は与格 ném-ei に置く。述語の káil は主語に一致して重性単数の形をとる。

    wápim krǘmul némes

    読み:ワーピン クリュームル ネーメス

    wáp-imkrǘm-ulném-es
    清める-<私が>歯-<〜たちを><私>-<属格>

    「私は歯をみがく。」

    日常の身じたくの話。wáp- は歯を小枝や布で清めるための専用語。所有は名詞句内の属格 ném-es で表す。krǘm-ul は重性o語幹の複数(主格・対格同形)。

    marwéino fúnel só némei.

    読み:マルウェーノ フーネル ソー ネーメイ。

    marwéin-ofúnelsóném-ei.
    手になじむ-<(重いものが)>綱<主格>この<重性><私>-<与格>

    「この綱は、私には手に馴染んでいる。」

    日常の会話。与格némeiは経験者・使用者を表す。fúnel「綱」は重性。

    éso samonþóvo klónoi némes.

    読み:エーソ サモンソーヴォ クローノイ ネーメス。

    és-osamonþóvoklón-oiném-es.
    いる-<(重いものが)>あざ<主格>膝-<与格><私>-<属格>

    「私の膝にあざがある。」

    日常会話で用いられる存在文。体部位を与格に置き、持ち主を属格代名詞で後置する。samonþóvo は皮膚を破っていない痕を中性に指す語で、開いた傷には使わない。

    gromvíres néman!

    読み:グロンヴィーレス ネーマン!

    gromvír-esném-an!
    人を重として呼ぶ-<あなたが><私>-<対格>

    「「お前は私を重だと言い立てるのか!」」

    口論でよく聞く直接的な罵倒。gromvír- は人を目的語にとる他動詞で、ここでは1人称単数の対格 néman を受ける。動詞は主語(二人称)に一致する。重性の代名詞を明示しなくても、人を重扱いに呼ぶという語感で使える。

    mirkrílim tambór némes.

    読み:ミルクリーリン タンボール ネーメス。

    mirkríl-imtambórném-es.
    分ける-<私が>雑穀<対格><私>-<属格>

    「私は自分の雑穀を分ける。」

    家庭で自分の持ち分をいくつかの分量に分ける基本的な用法。重性名詞 tambór は主格と対格が同形。所有は名詞の後に人称代名詞の属格を置いて表す。

    mirkrílim tambór némes es kórvos.

    読み:ミルクリーリン タンボール ネーメス エス コルヴォス。

    mirkríl-imtambórném-eseskórv-os.
    自分の分を切り出す-<私が>雑穀<対格><私>-<属格>から倉-<属格>

    「私は倉から自分の分の雑穀を切り出す。」

    共同の物から自らの取り分を区別する意味。es+属格で切り出す元を示す。共同の倉のような蓄えからの分前の場として自然。所有の属格は名詞の後ろに置く。

    sán ombaklónul kránul némei.

    読み:サーン オンバクローヌル クラーヌル ネーメイ。

    sánombaklón-ulkrán-ulném-ei
    いる<彼らが>指の節-<〜たちが>硬い-<〜たちが><私>-<与格>

    「私には硬い指の節がある。」

    身体部分の所有を表す日常文。存在動詞 sán は持たれている複数名詞に一致し、持ち主は与格 némei で示す。形容詞 krán も重性複数名詞と一致して -ul をとる。

    éso pálvo némes krém.

    読み:エーソ パルヴォ ネーメス クレーン。

    és-opálvoném-eskrém
    いる-<(重いものが)>踵<主格><私>-<属格>痛い

    「私の踵は痛い。」

    日常会話。踵は重性o語幹の単数で、主格と対格が同形。存在・繋辞 éso は主語の重性単数に一致して -o をとる。所有者は名詞の後ろに1人称単数属格を置く。述語形容詞 krém は重性単数の主語に対して語尾を変えない。

    ném silóur.

    読み:ネーン シロール。

    némsilóur
    <私>同じく

    「私も同じだ。」

    相手の発話を受けて、代名詞と silóur だけで応じる短い答え。動詞は繰り返さない。

    éso daumár némes mór.

    読み:エーソ ダウマール ネーメス モール。

    és-odaumárném-esmór
    いる-<(重いものが)>両腕の幅<主格><私>-<属格>大きい

    「私の両腕幅は大きい。」

    単位としてではなく、両腕を広げた幅そのものを表す用法。所有者は名詞の後ろの属格 ném-es で示す。daumár は重性名詞として éso を受ける。

    éso plúrno némes snír.

    読み:エーソ プルルノ ネーメス スニール。

    és-oplúrnoném-essnír.
    いる-<(重いものが)>小袋<主格><私>-<属格>少ない

    「わが懐中は乏しい。」

    書物の格言調。plúrno は「懐中・随身の備え」を指す。存在の文で、名詞句 plúrno ném-es が主語、snír が述語になる。

    klénim anssenó némes.

    読み:クレーニン アンスセノー ネーメス。

    klén-imanssenóném-es.
    拭く-<私が>眉<対格>私-<属格>

    「私は自分の眉を拭う。」

    日常生活の身仕度の文。他動詞 klén- の目的語として、重性o語幹の anssenó をそのまま置く。所有は名詞の後ろに 1人称単数属格 némes を置いて表す。

    wála virá némes

    読み:ワーラ ヴィラー ネーメス

    wál-aviráném-es
    変わる-<(軽いものが)>言葉<主格><私>-<属格>

    「私の言葉が変わる。」

    自分の話しぶりや用語が変わったことに気づく、日常の観察報告。主語の virá は軽性a語幹なので、動詞は3人称単数軽性の -a をとる。所有は名詞の後ろに属格を置く。

    éso sindrasímbo krúmoi némes.

    読み:エーソ シンドラシンボ クルーモイ ネーメス。

    és-osindrasímbokrúm-oiném-es.
    いる-<(重いものが)>役札<主格>腰-<与格><私>-<属格>

    「私には腰に役札がある。」

    日常文。存在の文は動詞és-が主語に一致し、重性o語幹のsindrasímboは単数名詞。身体部位に属するものを示すときは、与格の身体部位krúm-oiに、属格の人称代名詞ném-esを後置する。腰に役札を下げていて、現在役にあることを示す場面。

    gélim un dravénan némes

    読み:ゲーリン ウン ドラヴェーナン ネーメス

    gél-imundravén-anném-es
    行く-<私が>内に氏族の谷-<対格><私>-<属格>

    「私はわが森の中へ行く。」

    森の氏族の用法で、dravéna は単に木々の土地ではなく、氏族が代々住んできた谷筋そのものを指す。dravénan némes は「私の森」であり、そのまま「私の氏族の地・わが谷」を意味する。前置詞 un と対格は「〜の中へ」を表す。

    wéinsa andaulóura némes ilánan.

    読み:ウェーンサ アンダウローラ ネーメス イラーナン。

    wéins-aandaulóuraném-esilán-an.
    なる<〜し終えた>-<(軽いものが)>祖母<主格><私>-<属格>灯-<対格>

    「私の祖母は星になった。」

    一年の忌明けを終えた家での、くだけた言い方。一年の間は élaur と言い、「星になった」と言ってはいけない。

    auríþim mardrál némes.

    読み:アウリーシン マルドラール ネーメス。

    aur-íþ-immardrálném-es.
    昇る-<〜させる>-<私が>手首<対格><私>-<属格>

    「私は自分の手首を上げる。」

    作法書や身振りの説明で、所作を一人称で示す文。使役 áuríþ- を用いて、手首を上へ向ける動きを表す。重性名詞 mardrál は対格标示を持たず、主語が一人称なので語尾 -im で示し、代名詞は省く。

    éso mardrál némes klér.

    読み:エーソ マルドラール ネーメス クレール。

    és-omardrálném-esklér.
    いる-<(重いものが)>手首<主格><私>-<属格>冷たい

    「私の手首は冷たい。」

    日常会話で身体の状態を述べる文。éso(és-o)は存在・述語の動詞 és-「いる」に 3 人称単数・重性の語尾 -o がついた形。主語名詞句「mardrál némes(私の手首)」が重性なので、動詞は 3 人称単数・重性になる。属格 ném-es は名詞の後ろに置かれ、述語の形容詞 klér は名詞句の外に置かれる。

    éso fáron némei, salóur na ésa faronár.

    読み:エーソ ファーロン ネーメイ、サロール ナ エーサ ファロナール。

    és-ofáronném-ei,salóurnaés-afaron-ár.
    いる-<(重いものが)>荷<主格><私>-<与格>ところが<〜ない>いる-<(軽いものが)>荷-<〜する人・主格>

    「荷はある。ところが、運び人がいない。」

    市でのやりとり。荷があるのに、それを担ぎ上げる運び人がいない、商いとして当然の取り合いが成り立たない展開を示す。「ところが」の用法。fáron は重性なので存在動詞 éso、faronár は人を指す軽性なので存在動詞 és-a。faron-ár は fáron「荷」+-ár「〜する人」。salóur は後文の頭、否定の na より前に置く。

    éso sáko némei, salóur na éso vandó.

    読み:エーソ サーコ ネーメイ、サロール ナ エーソ ヴァンドー。

    és-osákoném-ei,salóurnaés-ovandó.
    いる-<(重いものが)>塩<主格><私>-<与格>ところが<〜ない>いる-<(重いものが)>分銅<主格>

    「塩はある。ところが、分銅がない。」

    市や倉での計測・取引の場面。塩があるのに、重さを確かめる基準としての青銅の分銅がない。sáko, vandó は重性なので存在動詞 éso。salóur は後文の頭、na より前に置く。

    ésa endríña ormároi némes.

    読み:エーサ エンドリーニャ オルマーロイ ネーメス。

    és-aendríñaormár-oiném-es.
    いる-<(軽いものが)>子ども<主格>左-<与格><私>-<属格>

    「子どもは私の左側にいる。」

    日常会話の場面。存在・所在は存在動詞の与格句で表し、左側は与格 ormároi で「左に」と言う。持ち主は名詞句の後位の属格 némes で表す。

    kráilim élan velmároi némes

    読み:クライリン エーラン ヴェルマーロイ ネーメス

    kráil-imél-anvelmár-oiném-es
    手に持つ-<私が><3人称単数・軽性>-<対格>右-<与格><私>-<属格>

    「私はそれを右手で持つ。」

    身体部位を手段・位置として表すときは与格 velmároi を使う。所有の némes は与格名詞句の後置。

    ésa endríña velmároi némes

    読み:エーサ エンドリーニャ ヴェルマーロイ ネーメス

    és-aendríñavelmár-oiném-es
    いる-<(軽いものが)>子<主格>右-<与格><私>-<属格>

    「子どもは私の右にいる。」

    日常の位置。存在の ésa は主語 endríña が軽性なので軽性の語尾。

    éso frumó gáuloi némes.

    読み:エーソ フルモー ガウロイ ネーメス。

    és-ofrumógául-oiném-es.
    いる-<(重いものが)>傷<主格>脛-<与格><私>-<属格>

    「私の脛に傷がある。」

    日常の身体に関する文。gáulは重性の身体名詞で、体部に傷・不調があることを言う際、体部に与格単数、所有者をその直後に属格で添える。存在の動詞és-は主語であるfrumó(傷)の重性単数に一致し、gáuloiは主語ではない。

    ké prénda líura némes ráun gléinaros?

    読み:ケー プレンダ リーウラ ネーメス ラウン グレーナロス?

    képrénd-alíuraném-esráungléinar-os?
    <〜か>移る-<(軽いものが)>女<主格><私>-<属格>流れ<対格>グレイナル-<属格>

    「娘はグレイナルの流れへ嫁いだのか。」

    日常の会話を想定した是非問い。意味2では、家系を「流れ」と言い、結婚して配偶者側の家系へ入ることを prénd- で表す。目的語として置く「流れ」は移り先を示す道のりの対格で、家系名は属格で名詞句に後続する。

    méir monsnembán némei, ende.

    読み:メール モンスネンバーン ネーメイ、エンデ。

    méirmonsnemb-ánném-ei,ende.
    与える<命令法><あなたが>写し-<対格><私>-<与格>どうぞ

    「写しを、私に、頼む。」

    手渡して欲しいものを求める日常会話。命令法は語幹 méir を用い、受取手は与格で表す。文末の ende で要求を柔らかくする。

    ké tóra berunvríma némes?

    読み:ケー トーラ ベルンヴリーマ ネーメス?

    kétór-aberunvrímaném-es?
    <〜か>来る-<(軽いものが)>道連れ<主格><私>-<属格>

    「私の道連れが来たのか。」

    日常会話でのはい/いいえの問い。所有は「持つ」動詞を使わず、被所有名詞の後ろに属格を置く。答えでは肯定なら tóra、否定なら na tóra のように動詞を繰り返す。

    próso fáron néman, esós trolþálim.

    読み:プローソ ファーロン ネーマン、エソース トロルサーリン。

    prós-ofáronném-an,esóstrolþál-im.
    押す-<(重いものが)>荷<主格><私>-<対格>だから踏ん張る-<私が>

    「荷が私を押すので、私は踏ん張る。」

    荷は重性なので prós- は 3人称単数・重性の -o を受ける。一人称代名詞の対格は néman と書き、形態素境界は ném-an と書く。esós は直前の出来事を理由として後続の節を導く。荷の力を受け止める意味では、圧力に耐える場そのものが想定される。

    láma ólmar klóno némes.

    読み:ラーマ オルマル クローノ ネーメス。

    lám-aólmarklónoném-es.
    掌でさする-<(軽いものが)>年長者<主格>膝<対格><私>-<属格>

    「年長者が私の膝を掌でさする。」

    世話・手当ての場面として自然な言い方。目的語は膝。膝は重性o語幹で、目的語も主格と同形。所有は名詞に後置した代名詞の属格で示す。

    láma séulin néman.

    読み:ラーマ セウリン ネーマン。

    lám-aséulinném-an.
    慰める-<(軽いものが)>友<主格><私>-<対格>

    「友が私を慰める。」

    人同士の慰めを言う言い方。第一人称目的語は ném-an(néman)を使う。主語の友は人なので、動詞は軽性の3人称単数 -a で受ける。

    sórel, éso dulilmó gróm némei.

    読み:ソーレル、エーソ ドゥリルモー グローン ネーメイ。

    sórel,és-odulilmógrómném-ei.
    今日いる-<(重いものが)>下からの恵み<主格>重い<私>-<与格>

    「今日は、私には重い下からの恵みがある。」

    日常のつぶやき。動詞の後ろに裸の与格があるので存在・所有の文。「gróm」は与格より前にあるので主語名詞を修飾する。「dulilmó」は蓋無しの器そのものではなく、下から届く重く有難いものを指す詩語的用法。

    éso dóulin sáko némei

    読み:エーソ ドーリン サーコ ネーメイ

    és-odóulinsákoném-ei
    いる-<(重いものが)>もう塩<主格><私>-<与格>

    「私にはもう塩がある。」

    所有を「いる+持ち主の与格」で表す未完了の存在文。dóulin は動詞の直後、主語の前に置かれ、持ち物がある状態がすでに続いていることを表す。日常の台所や帳場でよく用いられる語調。

    ké sénes seiraldáran némes?

    読み:ケー セーネス セイラルダーラン ネーメス?

    késén-esseiraldár-anném-es
    <〜か>見る-<あなたが>待席-<対格><私>-<属格>

    「私の待席が見えるか。」

    日常会話で、目の前や見覚えの席を確かめる問い。ké が文頭に立つ。seiraldár は軽性単数で、目的語には -an が付く。所有表現は、対格の seiraldáran の後ろに 1 人称属格 némes を置く。

    méir gáir némei ende

    読み:メール ガイル ネーメイ エンデ

    méirgáirném-eiende
    与える<命令法><あなたが>錐<対格><私>-<与格>どうぞ

    「私に錐を渡してくれ、頼む。」

    命令法。贈与の受け手は与格で示す。 ende は依頼の定型語で、命令法と共によく使われる。

    múndauro múndo némes.

    読み:ムンダウロ ムンド ネーメス。

    múndaur-omúndoném-es.
    口がわずかに開く-<(重いものが)>口<主格><私>-<属格>

    「私の口がわずかに開く。」

    笑いには至らず、口角が上がって口がわずかに開く表情の変化のみを表す。身体部位を主語にとり、所有者は名詞句の後に属格で置く。主語の口が重性なので、動詞は3人称単数・重性の語尾 -o を受ける。自分自身の顔の変化について述べる場面。

    bóndim klónou némes si táulim fáron.

    読み:ボンディン クローノウ ネーメス シ タウリン ファーロン。

    bónd-imklón-ouném-essitául-imfáron
    曲げる-<私が>膝-<双数・対格><私>-<属格>と取る-<私が>荷<対格>

    「私は膝を曲げて、荷物を取る。」

    日常の荷上げの場面。膝 klóno は体部語として重性で、二つの膝を指す双数 klónou を直接目的語に取る。所有は名詞の後ろに人称代名詞の属格 némes を置く。si で二つの述語を並列し、主語は動詞の人称語尾だけで示す。

    wóla unlóur nourá némes.

    読み:ウォーラ ウンロール ノウラー ネーメス。

    wól-aunlóurnouráném-es.
    迷う-<(軽いものが)>まだ心<主格><私>-<属格>

    「私の心はまだ決めかねている。」

    相談・決断の場で、自分の心中に迷いがあることを述べる言い回し。unlóur は肯定文では「まだ〜している」という意味になり、動詞の直後・主語の前に置く。

    na þrílo gromó némes.

    読み:ナ スリーロ グロモー ネーメス。

    naþríl-ogromóném-es.
    <〜ない>震える-<(重いものが)>体<主格><私>-<属格>

    「私(の体)は震えていない。」

    日常の否定応答。主語は体全体を表す重性の gromó で、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。身体部位の領有者は名詞の後ろに属格で置き、1人称単数属格は ném-es と分節される。na は否定・推量・仮定法の前。この語は内発的な震えで、外力で揺れる krúel- とは区別される。

    lúin háles þelán némes, nóumaurim.

    読み:ルーイン ハーレス セラーン ネーメス、ノーマウリン。

    lúinhál-esþel-ánném-es,nóumaur-im
    とき呼ぶ-<あなたが>名前-<対格><私>-<属格>照れる-<私が>

    「あなたが私の名前を呼ぶと、私は照れる。」

    日常会話。lúin節が主節に先行する。þelá「名前」の対格 þelán に、所有の属格 némes を後置して「私の名前」を作る。主節は1人称語尾 -im によって主語を省略できる。

    ésa endríña némes bresáur.

    読み:エーサ エンドリーニャ ネーメス ブレサウル。

    és-aendríñaném-esbresáur
    いる-<(軽いものが)>子<主格><私>-<属格>胸が張る

    「私の子は得意だ。」

    日常の家庭や知人どうしの会話。主語 endríña「子ども」は軽性なので、述語の bresáur は軽性単数の無標形になる。

    slél snélan ném-ei ende

    読み:スレール スネーラン ネーメイ エンデ

    slélsnél-anném-eiende
    広げる<命令法><あなたが>布-<対格><私>-<与格>どうぞ

    「布を広げて、私に見せてくれ。」

    市や店での依頼。命令法と依頼の小辞 ende を組み合わせ、布を自分のほうへ平に広げて差し出させる意を示す。与格 némei が受取人・提示先を表す。

    glünlúin, ésa dralsnéla némes fóum

    読み:グリュンルーイン、エーサ ドラルスネーラ ネーメス フォーン

    glünlúin,és-adralsnélaném-esfóum
    凍りの頃いる-<(軽いものが)>首布<主格>私-<属格>暖かい

    「凍りの頃、私の首布は暖かい。」

    凍りの頃の実用的な外出装具について述べる日常の文。時間名詞 glünlúin を場面の枠として動詞前に置いた。dralsnéla は軽性 a 語幹扱いで、単数主格の語尾は -a。所有は名詞の直後の属格で表す。

    na ésa dralsnéla némes grémo

    読み:ナ エーサ ドラルスネーラ ネーメス グレーモ

    naés-adralsnélaném-esgrémo
    <〜ない>いる-<(軽いものが)>首巻き<主格>私-<属格>帽子<主格>

    「私の首巻きは帽子ではない。」

    頭を覆う帽子 grémo と区別し、頭巾ではなく首巻きであることを明確にする否定の文。否定のコピュラ文では na を動詞前に置く。述語名詞 grémo は主格のまま置く。

    klénim seníño ném-es.

    読み:クレーニン セニーニョ ネーメス。

    klén-imseníñoném-es
    拭く-<私が>拙い涙<対格><私>-<属格>

    「私の拙い涙を拭います。」

    自分が泣いてしまったことをへりくだり、涙を拙い涙と呼んで拭く日常の場面。seníño は重性o語幹の単数で、対格も無標。持ち主は名詞の後ろに1人称属格を置く。

    dúlo seníño ném-es.

    読み:ドゥーロ セニーニョ ネーメス。

    dúl-oseníñoném-es
    下る-<(重いものが)>拙い涙<主格><私>-<属格>

    「私の拙い涙が流れます。」

    自分の涙をへりくだり、それが下りていくとする書き言葉・独白。主語が重性o語幹の単数なので、動詞は3人称単数・重性。所有は名詞の後ろに1人称属格を置く。

    sán trǘl némes múelul sórel

    読み:サーン トリュール ネーメス ムーエルル ソーレル

    sántrǘlném-esmúel-ulsórel
    いる<彼らが>足<〜ら(古い母音交替)><私>-<属格>遅い-<〜ら(古い母音交替)>今日

    「私の足は今日は遅い。」

    歩行・作業の速度についていう日常の言い方。身体部位は重性。tról は母音交替による複数 trǘl をもつが、グロスでは非連結変化のため足.PLと一形態素として扱う。複数主語の属性述語には存在動詞の3人称複数 sán を用い、形容詞は主格複数 -ul にする。所有は名詞句の属格で表し、持主の与格にはしない。

    dulilánim tromó némes

    読み:ドゥリラーニン トロモー ネーメス

    dulilán-imtromóném-es
    痕を消す-<私が>足跡<対格><私>-<属格>

    「私は自分の足跡を消す。」

    日常会話的な文。痕を消す用法では、灯や火を目的語にとる本来の用法と異なり、足跡・印などの痕跡を目的語に取る。主語の代名詞は語尾に含み、目的語の持ち主を後置の属格で示す。

    éso kloníño némes krém.

    読み:エーソ クロニーニョ ネーメス クレーン。

    és-okloníñoném-eskrém.
    いる-<(重いものが)>肘<主格><私>-<属格>痛い

    「私の肘は痛い。」

    日常の体の状態。身体部位の所属は名詞の後ろの属格で表す。形容詞 krém は主語句の後に述語として置かれる。重性名詞の単数主格は無語尾。

    éso krúmo némes gróm.

    読み:エーソ クルーモ ネーメス グローン。

    és-okrúmoném-esgróm.
    いる-<(重いものが)>腰<主格><私>-<属格>重い

    「私の腰は重い。」

    日常の体訴。krúmo は肉体の部位として重性語であり、存在文の動詞 éso- は重性の語尾 -o を受ける。所有者は名詞句内の属格 ném-es で表し、述語 gróm はその後に置かれる。

解説

1人称単数の人称代名詞。②型の語尾で格変化する(対 néman、属 némes、与 némei)。主語は動詞の語尾でわかるのでふつう言わず、わざわざ言うと「ほかでもない私が」という強調になる。「持つ」という動詞がないため、所有の言い方では与格 némei が持ち主を表す(éso fáron némei「私には荷がある」)。

文法

人称代名詞(1人称単数)。対 néman、属 némes、与 némei。複数は némor。

語源

古高原語 *ném から

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