élþ-

品詞
動詞(自動詞)
意味
燃える
辞書形
élþa
発音
[ˈelθa]
読み
エルサ
分野
基本動作

意味

  1. 燃える

    火が燃える、ものが火に焼かれる。

    lúin élþa ilána, tóra senár.

    読み:ルーイン エルサ イラーナ、トーラ セナール。

    lúinélþ-ailána,tór-asen-ár.
    とき燃える-<(軽いものが)>灯<主格>来る-<(軽いものが)>見る-<〜する人>

    「灯がともると、目付がやって来る。」

    縁の市の夕方の言い方。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。ilána は軽性a語幹なので、動詞 élþa も tóra も軽性の -a をとる。主節も VSO の語順どおり、動詞 tóra が主語 senár の前に来る。

    toríro nébro, na elþéla ilána faronáres.

    読み:トリーロ ネーブロ、ナ エルセーラ イラーナ ファロナーレス。

    tor-ír-onébro,naelþ-él-ailánafaron-ár-es.
    来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>燃える-<〜だろう>-<(軽いものが)>灯<主格>荷-<〜する人>-<属格>

    「霧が上がってくれば、運び人の灯もともらなくなるだろう。」

    崖道でよく聞かれる嘆き。条件の節は動詞を仮定法にするだけで作る。霧 nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。帰結の節は推量法で、否定の na を動詞の直前に置く。ilána は「夜にともる明かり」の意味で、属格の faronáres「運び人の」が後ろからかかる。

    lúin na sénimor gromó éles, elþíþimor fáron éles.

    読み:ルーイン ナ セーニモル グロモー エーレス、エルシーシモル ファーロン エーレス。

    lúinnasén-imorgromóél-es,elþ-íþ-imorfáronél-es.
    とき<〜ない>見る-<我々が>亡骸<対格><3人称単数・軽性>-<属格>燃える-<〜させる>-<我々が>荷<対格><3人称単数・軽性>-<属格>

    「亡骸が見つからないときは、その人の荷を燃やして送る。」

    崖から落ちた者や溺れた者を弔うときの習わしを説明する文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。élþ-「燃える」に使役の -íþ- をつけて「燃やす」にしている。

    élþo gromó, áura selvá.

    読み:エルソ グロモー、アウラ セルヴァー。

    élþ-ogromó,áur-aselvá.
    燃える-<(重いものが)>亡骸<主格>昇る-<(軽いものが)>息<主格>

    「亡骸は燃え、息は昇る。」

    火葬を語る弔いの言い回し。重性の亡骸と軽性の息を並べ、動詞の語尾 -o と -a で、下へ残るものと上へ行くものを対比している。火葬は村の北側の高い場所で行う。

    maníres þérno, elþélo bélo táses.

    読み:マニーレス セルノ、エルセーロ ベーロ ターセス。

    man-ír-esþérno,elþ-él-obélotás-es.
    食べる-<もし〜なら>-<あなたが>毒きのこ<対格>燃える-<〜だろう>-<(重いものが)>腹<主格><あなた>-<属格>

    「毒きのこを食べたら、腹が焼けるぞ。」

    条件の節には接続詞を使わず、仮定法 maníres だけで「もし〜なら」を表す。帰結の節は推量法で、主語の bélo が重性なので -o をとる。雨期にきのこを採るときの戒めの言い方。

    ésa él dulána, na áura selvá éles. elþíþimor fáron éles.

    読み:エーサ エール ドゥラーナ、ナ アウラ セルヴァー エーレス。エルシーシモル ファーロン エーレス。

    és-aéldulána,naáur-aselváél-es.elþ-íþ-imorfáronél-es.
    いる-<(軽いものが)><3人称単数・軽性>落ちてきた者<主格><〜ない>昇る-<(軽いものが)>息<主格><3人称単数・軽性>-<属格>燃える-<〜させる>-<我々が>荷<対格><3人称単数・軽性>-<属格>

    「その人は落ちた者だ。その息は昇らない。だから我々は、その人の荷を燃やす。」

    弔いの場での言い方。崖から落ちて死んだ者は、魂が体と一緒に下へ引かれて昇れなくなるとされ、dulána と呼ばれる。遺体が見つからないときは、持ち物を燃やして魂を上へ送る。dulána は人を指すので、繋辞も代名詞も軽性の形(ésa、él)で受ける。elþ-íþ- は「燃える」の使役で「燃やす」の意味で、直説法では -íþ- に強勢が置かれる。

    élþo fóurel, éso aurándo gléin.

    読み:エルソ フォーレル、エーソ アウランド グレーン。

    élþ-ofóurel,és-oaurándogléin.
    燃える-<(重いものが)>香の木<主格>いる-<(重いものが)>社<主格>清い

    「香の木がくすぶり、社は清らかである。」

    香として焚かれる香の木は伐られた材なので、動詞は重性の -o で一致する。社 aurándo も重性なので、繋辞は éso になり、形容詞 gléin は重性・主格の形(語尾なし)になる。香の煙は上へ昇るものとして、祀りに欠かせない。

    élþa elþá du aldárei.

    読み:エルサ エルサー ドゥ アルダーレイ。

    élþ-aelþádualdár-ei.
    燃える-<(軽いものが)>火<主格>下手座-<与格>

    「上座の手前で火が燃えている。」

    家の中の日常の文。elþá「火」は élþ- に -á「〜するもの(軽)」がついた語で、軽性なので動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。炉の北側(上手)に上座があるので、炉の火は上座から見て「下手」にあり、du+与格で言う。時制がないので「燃えている」とも「燃えた」とも訳せる。

    lúin élþa virá lísen, áura an élvaran.

    読み:ルーイン エルサ ヴィラー リーセン、アウラ アン エルヴァラン。

    lúinélþ-avirálís-en,áur-aanélvar-an.
    とき燃える-<(軽いものが)>言葉<主格>書く-<〜した・〜された>昇る-<(軽いものが)>上手天-<対格>

    「書かれた言葉は燃えると、天へ昇っていく。」

    願いごとを書いた紙を燃やして祖先に届ける習わしを言う、儀礼の場の文。lísen は virá(軽性・単数・主格)に一致する分詞で、一致の語尾はつかない。後半の主語は省かれているが、動詞の語尾から前半と同じ「言葉」だとわかる。lúin の節は主節の前に置き、an+対格で「上手へ」と言う。

    lúin élþa elþá, dróumimor es houmáres.

    読み:ルーイン エルサ エルサー、ドローミモル エス ホウマーレス。

    lúinélþ-aelþá,dróum-imoreshoumár-es.
    とき燃える-<(軽いものが)>火<主格>悼む-<我々が>から家の主-<属格>

    「火が燃えるあいだ、我らは家の主を悼む。」

    火葬の場での言い方。死後一年は死者の名前を口にしないので、家の主のように立場で言い表す。悼む対象も es+属格で示す。

    lúin tóro nébro, élþa kéira.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、エルサ ケーラ。

    lúintór-onébro,élþ-akéira.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>燃える-<(軽いものが)>蝋燭<主格>

    「霧が来ると、蝋燭がともる。」

    霧期の暮らしを述べる文。霧 nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。蝋燭 kéira は軽性なので、動詞は軽性の -a をとる。lúin の節は主節の前に置く。

    élþa kéira sé.

    読み:エルサ ケーラ セー。

    élþ-akéirasé.
    燃える-<(軽いものが)>蝋燭<主格>この<軽性>

    「この蝋燭が燃えている。」

    目の前の明かりを指して言う文。kéira は軽性なので、動詞は -a、指示詞は軽性の sé になる。指示詞は名詞の後ろに置く。蜜蝋の蝋燭は宮廷の明かりとして使われる。

    élþa elþá hóumos.

    読み:エルサ エルサー ホーモス。

    élþ-aelþáhóum-os.
    燃える-<(軽いものが)>火<主格>炉-<属格>

    「炉の火が燃えている。」

    家の炉を言う、ごくふつうの文。動詞 élþa(語根に強勢)と名詞 elþá(語尾に強勢)は、強勢の位置だけが違う。火は軽性なので、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。hóum「炉」は重性なので、属格は -os になる。

    élþa elþá, kúula houmár tambór.

    読み:エルサ エルサー、クーラ ホウマール タンボール。

    élþ-aelþá,kúul-ahoumártambór.
    燃える-<(軽いものが)>火<主格>煮る-<(軽いものが)>家の主<主格>雑穀<対格>

    「火が燃え、家の主が雑穀を煮ている。」

    日々の炊事を言う文。主節を二つ、接続詞なしで読点で区切って並べている。どちらの節も VSO で、動詞が先に来る。tambór は重性なので、対格は主格と同じ形。

    élþa aurvirá, áura virá an aursárais.

    読み:エルサ アウルヴィラー、アウラ ヴィラー アン アウルサーライス。

    élþ-aaurvirá,áur-aviráanaursár-ais.
    燃える-<(軽いものが)>祈りの紙<主格>昇る-<(軽いものが)>言葉<主格>上手祖先-<〜たちを>

    「祈りの紙が燃え、その言葉は祖先のもとへ昇っていく。」

    願いを書いた紙を燃やす習わしを述べる文。紙は言葉を載せて昇るものなので軽性で、動詞は軽性の -a をとる。動詞で始まる節を二つ、読点で区切って並べている。

    ké élþa aurvirá? elþíþir élan elþéi.

    読み:ケー エルサ アウルヴィラー?エルシーシル エーラン エルセー。

    kéélþ-aaurvirá?elþ-íþ-irél-anelþ-éi.
    <〜か>燃える-<(軽いものが)>祈りの紙<主格>燃える-<〜させる>-<皆で〜せよ><3人称単数・軽性>-<対格>火-<与格>

    「祈りの紙は燃えているかい。皆でそれを火にくべて燃やしなさい。」

    家の中で、年長者が年少の者たちに言う下向きの話し方。élþ- に使役の -íþ- をつけると「燃やす」になり、複数への命令の語尾 -ir が続く。代名詞 élan は軽性の aurvirá を受けている。

    elþéla hóurna dórel.

    読み:エルセーラ ホールナ ドーレル。

    elþ-él-ahóurnadórel.
    燃える-<〜だろう>-<(軽いものが)>弔い<主格>明日

    「明日、弔いの火が焚かれるだろう。」

    火葬の予定を知らせる言い方。時制がないので、未来のことは推量法で言う。hóurna は軽性なので、動詞は軽性の -a で一致する。遺体は村の北側の高い所で焼く。

    lúin élþa hóurna, loimésa ráuvan loimáis bróusais.

    読み:ルーイン エルサ ホールナ、ロイメーサ ラウヴァン ロイマイス ブローサイス。

    lúinélþ-ahóurna,loim-és-aráuvanloim-áisbróus-ais.
    とき燃える-<(軽いものが)>弔い<主格>唱える-<〜すべし>-<(軽いものが)>森の巫<主格>詞-<〜たちを>多い-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格>

    「「弔いの火が焚かれるときは、森の巫は多くの詞を唱えるべし。」」

    葬送の作法を定めた書の文。魂を上へ送るために詞を唱える。霧期の火葬では、煙が霧に閉じこめられるので、とくに念入りに唱える。lúin の節は主節の前に置く。詞は軽性なので、形容詞は -ais で一致する。

    ésa nóra sé klér, élþa elþá.

    読み:エーサ ノーラ セー クレール、エルサ エルサー。

    és-anóraséklér,élþ-aelþá.
    いる-<(軽いものが)>夜<主格>この<軽性>冷たい燃える-<(軽いものが)>火<主格>

    「今夜は冷える。火が燃えている。」

    凍りの頃の家の中の会話。nóra sé「この夜」で「今夜」を表す。指示詞は軽性の sé で、格では変化しない。述語の形容詞 klér は主語の nóra に一致する。

    ésa elþíña glünáur.

    読み:エーサ エルシーニャ グリュナウル。

    és-aelþ-íñaglünáur.
    いる-<(軽いものが)>燃える-<小さな・拙い・主格>眩しい

    「火のはねは眩しい。」

    火が跳ねて一瞬光るさまを elþíña で指す用例。述語形容詞 glünáur が軽性単数主格で、名詞 elþíña に一致する。瞬間的な明るさを説明する簡潔な文。

    áura elþíña es elþés.

    読み:アウラ エルシーニャ エス エルセース。

    áur-aelþíñaeselþ-és.
    昇る-<(軽いものが)>火の粉<主格>から燃える-<属格>

    「火から火の粉が上がる。」

    火元から火の粉が散るさま。es と属格の組み合わせで「〜から」。elþés は elþá「火」の属格単数。主語 elþíña が軽性単数なので動詞は -a を受ける。

  2. 灯る

    松明や蝋燭、炉の火が灯っている。星を祖先の炉の火と見るので、詩では星が灯ることにも使う。

    ké élþa elþá du aldárei? élþa.

    読み:ケー エルサ エルサー ドゥ アルダーレイ?エルサ。

    kéélþ-aelþádualdár-ei?élþ-a.
    <〜か>灯る-<(軽いものが)>火<主格>下手座-<与格>灯る-<(軽いものが)>

    「「上座の手前の火は灯っているか?」「灯っている。」」

    二人のやりとり。はい・いいえで答える問いは文頭の ké で作る。「はい」にあたる語はないので、答えでは動詞を繰り返す。動詞は主語の火に一致しているので、答える人の人称に変える必要はない。「いいえ」なら na élþa と言う。

    élþan elþái aursárar élvarei, áurau dáu sílarau.

    読み:エルサン エルサイ アウルサーラル エルヴァレイ、アウラウ ダウ シーララウ。

    élþ-anelþ-áiaursár-arélvar-ei,áur-audáusílar-au.
    灯る-<彼らが>火-<〜たちが>祖先-<〜らの>天-<与格>昇る-<双数>二月-<双数>

    「天に祖先たちの火が灯り、二つの月が昇る。」

    詩の言い回し。星を祖先の炉の火と見る考え方から、星を「祖先たちの火」と言い換え、élþ-「灯る」を使っている。星を数えない言い方なので禁忌には当たらない。月は星ではないので、数詞 dáu をつけて双数で言える。

解説

火が燃えることを表す。火や煙は軽いもので、上へ昇るものとされる。願いごとを書いた紙を燃やすと言葉が煙となって祖先に届く、と信じられており、宮廷でも村でもこの語がよく使われる。火葬の煙がまっすぐ高く昇ることは吉とされる。燃やす行為は使役形 elþíþ- で言う。

そのほかの用例

léimim fáron húmel elþéi.

読み:レーミン ファーロン フーメル エルセー。

léim-imfáronhúmelelþ-éi.
置く-<私が>荷<対格>湿った火-<与格>

「湿った荷を火のそばに置く。」

霧期の家の中のふつうの言い方。fáron「荷」は重性なので、形容詞は語尾のない húmel のままになる。与格の elþéi は場所を表し、「火のところに」の意味になる。

dulilána endríña elþán sé.

読み:ドゥリラーナ エンドリーニャ エルサーン セー。

dulilán-aendríñaelþ-ánsé.
消す-<(軽いものが)>子ども<主格>火-<対格>この<軽性>

「子どもはこの火を消している。」

炉場や家庭での日常文。人の子は軽性なので、3単の語尾は -a。

þalíþa andaulóura elþán hóumos.

読み:サリーサ アンダウローラ エルサーン ホーモス。

þal-íþ-aandaulóuraelþ-ánhóum-os.
止まる-<〜させる>-<(軽いものが)>祖母<主格>火-<対格>炉-<属格>

「祖母は炉の火を消す。」

家庭の日常。人間は軽性なので、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。elþá は軽性a語幹で単数対格 elþán。名詞句 elþán hóumos は「炉の火」。

ké breséres elþés?

読み:ケー ブレセーレス エルセース?

kébres-ér-eselþ-és?
<〜か>胸-<〜でする>-<あなたが>火-<属格>

「火に驚いたのか。」

友人や子どもへのくだけた問い。文頭に疑問小辞 ké を置く。二人称の語尾 -es だけなら主語の代名詞を省ける。原因は裸の属格 elþés で示す。目上の相手には ké と二人称ではなく、推量法を使う。

slévim elþán.

読み:スレーヴィン エルサーン。

slév-imelþ-án.
守る-<私が>火-ACC.

「私は火を守る。」

家庭・炉端の日常表現。主語は語尾 -im からわかるので代名詞を添えない。火 elþá は軽いものに数えられ、目的語では -án を取る。火そのものを保持するのではなく、災いから無事に保つ意で使う。

houméran endríñai elþán

読み:ホウメーラン エンドリーニャイ エルサーン

houmér-anendríñ-aielþ-án
囲む-<彼らが>子ども-<〜たちが>火-<対格>

「子どもたちが火を囲む。」

日常場面。elþá「火」は軽性a語幹で、単数対格は elþán。主語 endríñai は「子どもたち」の複数主格。

houmnílau andaulóura si brél elþán.

読み:ホウンニーラウ アンダウローラ シ ブレール エルサーン。

houmníl-auandaulóurasibrélelþ-án.
炉を(火を)続ける-<双数>祖母<主格>と兄弟<主格>火-<対格>

「祖母と兄弟は炉を続ける。」

二つの単数名詞を si で並べると、動詞は双数になる。brél はきょうだいの総称。家庭の炉維持の日常語で、改まった場では使わない。

文法

完了語根は éelþ-。使役形は elþíþ-「燃やす」。命令法2単では語末の þ が s になり、éls! となる。

語源

古高原語から受け継いだ語。名詞 elþá「火」(複数 elþái)は、この語根に「〜するもの(軽性)」の -á をつけた語である。

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