小説
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湧き水
泉から湧き出た水。
dúlo ílmo es þéulos du orén.
読み:ドゥーロ イルモ エス セウロス ドゥ オレーン。
| dúl-o | ílmo | es | þéul-os | du | orén. |
| 下る-<(重いものが)> | 水<主格> | から | 湧き水-<属格> | 下手 | 縁<対格> |
「水は湧き水から縁へと下っていく。」
水の流れを言う、ごくふつうの言い切りの文。ílmo「水」は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。es+属格で出どころを、du+対格で行き先を表す。高原の人の考えでは、水は源から生まれて下へ流れていくものなので、この文は自然を述べた文であると同時に、世界観の決まり文句でもある。
éso þéul gléin.
読み:エーソ セウル グレーン。
| és-o | þéul | gléin. |
| いる-<(重いものが)> | 湧き水<主格> | 清い |
「湧き水は清い。」
「AはBだ」の文で、繋辞 és- を文頭に置く。地を流れる水は重性なので、繋辞は -o をとり、形容詞は重性・主格の形(語尾なし)になる。
éso þéul só gléin.
読み:エーソ セウル ソー グレーン。
| és-o | þéul | só | gléin. |
| いる-<(重いものが)> | 湧き水<主格> | この<重性> | 清い |
「この湧き水は清い。」
繋辞 éis- を先頭に置いた「AはBだ」の文。þéul は重性なので、繋辞は -o、指示詞は重性の só になる。述語の形容詞 gléin は、重性・主格の形(語尾なし)で一致している。泉の水が清いことは、日常でもよく話題にされる。
táulimor þéul es fóndaros.
読み:タウリモル セウル エス フォンダロス。
| tául-imor | þéul | es | fóndar-os. |
| 取る-<我々が> | 湧き水<対格> | から | 源-<属格> |
「我々は源から湧き水を汲む。」
村の日常の言い方。「水を汲む」は tául-「取る」で言う。þéul は重性の子音語幹で、対格にも語尾がつかない。湧き出る泉の水は、いちばん澄んだ水とされる。
mé tául rúndo! tául þéul.
読み:メー タウル ルンド!タウル セウル。
| mé | tául | rúndo! | tául | þéul. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 取る<命令法><あなたが> | 走り水<対格> | 取る<命令法><あなたが> | 湧き水<対格> |
「走り水を汲むな。湧き水を汲め。」
目下の者への言いつけ。禁止は「mé+命令法」で言い、命令法の2人称単数は語幹そのままの形になる。谷を走る速い水は濁りやすく、泉から湧く水は清いとされるので、汲む水を言い分けている。rúndo はo語幹で、対格は主格と同じ形になる。
þílo þéul, áura selvá.
読み:シーロ セウル、アウラ セルヴァー。
| þíl-o | þéul, | áur-a | selvá. |
| 澄む-<(重いものが)> | 湧き水<主格> | 昇る-<(軽いものが)> | 息 |
「湧き水は澄み、息は昇る。」
詩の言い方。水は重性なので動詞は -o、息は軽性なので -a で受ける。重性と軽性の対を並べた句。
nílim ílmo klér es þéulos.
読み:ニーリン イルモ クレール エス セウロス。
| níl-im | ílmo | klér | es | þéul-os. |
| 飲む-<私が> | 水<対格> | 冷たい | から | 湧き水-<属格> |
「私は湧き水の冷たい水を飲む。」
日常の文。地上を流れる水 ílmo は重性なので、主格と対格が同じ形になり、形容詞も語尾がつかない。es+属格で「〜から」と出どころを表す。
éso þéul só þáil.
読み:エーソ セウル ソー サイル。
| és-o | þéul | só | þáil. |
| いる-<(重いものが)> | 湧き水<主格> | この<重性> | 澄んだ |
「この湧き水は澄んでいる。」
地を流れる水は重性なので、繋辞は éiso、指示詞は só になる。水の濁りのなさを言う、いちばん基本の用法。
清い始まり
源に近い、まだ濁っていないものの比喩。詩や系譜の唱えで使う。
éso fóndar ráimaros þéul ráunos némes.
読み:エーソ フォンダル ライマロス セウル ラウノス ネーメス。
| és-o | fóndar | ráimar-os | þéul | ráun-os | ném-es. |
| いる-<(重いものが)> | 源<主格> | ライマル-<属格> | 清い始まり<主格> | 流れ-<属格> | <私>-<属格> |
「ライマルの源こそ、我が流れの清き始まりである。」
系譜読みが家系を唱えるときの言い方。系譜を川の流れにたとえ、始祖を「まだ濁っていない湧き水」と言い表している。主語の fóndar が重性なので、繋辞は -o をとる。þéul はここでは比喩の意味で、名詞の述語になっている。
gléin þéul, múr dálor.
読み:グレーン セウル、ムール ダーロル。
| gléin | þéul, | múr | dálor. |
| 清い | 清い始まり<主格> | 濁った | 下の国<主格> |
「清きは始まり、濁れるは下の国。」
格言・詩句の形。繋辞を落とし、述語の形容詞を先に置いている。源に近いものほど清く、下るほど濁るという、川と系譜の見方を一句にまとめたもの。会話に引くと、形容詞が先頭に来る語順から格言だとわかる。
泉から湧き出たばかりの水。水の段階のうちでもっとも澄んでいて、川の流れの始まりにあたる。系譜を川にたとえる見方から、家の源(始祖)に近い清らかなものの比喩としても使う。
þeultáula endríña ílmo es þéulos.
読み:セウルタウラ エンドリーニャ イルモ エス セウロス。
| þeultául-a | endríña | ílmo | es | þéul-os. |
| 汲む-<(軽いものが)> | 子ども<主格> | 水<対格> | から | 湧水-<属格> |
「子どもが湧水から水を汲む。」
日常の動作を記述する文。主語は人(軽性)なので動詞は軽性の単数語尾 -a をとる。目的語の ílmo(水)は重性だが、動詞は主語と一致するため形は変わらない。出所を表す前置詞 es に属格 þéulos を組み、「湧水から」という起点を示す。
þeultáulim ílmo es þéulos selúin.
読み:セウルタウリン イルモ エス セウロス セルーイン。
| þeultául-im | ílmo | es | þéul-os | selúin. |
| 汲む-<私が> | 水<対格> | から | 湧水-<属格> | 今 |
「私は今、湧水から水を汲んでいる。」
1人称単数の直説法。話し手が自ら動作を行う日常の場面。selúin(今)は時の副詞として節の末尾に置かれる。複合動詞だが文法上は単一語として -im を直接とるため、縁の町の取引言葉や初学者の会話でも活用形が明確で伝達しやすい。
重性・子音語幹(③型)。属 þéulos、複 þéulul。
古高原語 *þéula から。主格の *-a は古い脱落で消えた。
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