hál-

品詞
動詞(他動詞)
意味
呼ぶ
発音
[ˈhal]
読み
ハル
分野
知覚・感情・思考・発話

意味

  1. 呼ぶ

    声をかけて人を呼ぶ、呼び寄せる。

    lúin tóro nébro, mé hál þelán!

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー ハール セラーン!

    lúintór-onébro,méhálþel-án!
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>呼ぶ<命令法><あなたが>名前-<対格>

    「霧が来たら、名を呼ぶな。」

    親が子に言い聞かせる禁止の言い方。霧の中で名前を大声で呼ぶと、下の国にその名を聞かれ、名の主が下へ引かれるとされる。nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。禁止は「mé+命令法」で言う。霧の中で人を呼ぶときは、名前の代わりに té「そこの方」などを使う。

    lúin tóro nébro, mé hál þelán éndrar.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー ハール セラーン エンドラル。

    lúintór-onébro,méhálþel-ánéndr-ar.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>呼ぶ<命令法><あなたが>名前-<対格>人-<〜らの>

    「霧が来たら、人の名を呼ぶな。」

    子どもに霧期の禁忌を教えるときの言い方。lúin の節は主節の前に置き、読点で区切る。霧 nébro は重性なので、動詞は -o の形になる。禁止は mé と命令法で言う。

    toríro þúumo, mé hál þelán!

    読み:トリーロ スーモ、メー ハール セラーン!

    tor-ír-oþúumo,méhálþel-án!
    来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>濃霧<主格><禁止・願いの打ち消し>呼ぶ<命令法><あなたが>名前-<対格>

    「濃霧が来たら、名を呼ぶな。」

    霧の中で名前を大声で呼ぶと下の国に聞かれる、という禁忌を戒める言い方。条件の節は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけで作る。þúumo は重性なので -o をとる。禁止は mé+命令法。þúumo は、ふつうの霧 nébro より濃く、隣の人も見えない霧を言う。

    ké hála húula?

    読み:ケー ハーラ フーラ?

    kéhál-ahúula
    <〜か>呼ぶ-<(軽いものが)>ふくろう<主格>

    「ふくろうが鳴いているか。」

    夜のくだけた場で使う問い。はい・いいえで答える問いなので、文のいちばん前に ké を置く。ふくろうは鳥なので軽性で、動詞は -a をとる。答えるときは動詞を繰り返して、hála「鳴いている」か na hála「鳴いていない」と言う。

    lúin hála húula, áura sílar.

    読み:ルーイン ハーラ フーラ、アウラ シーラル。

    lúinhál-ahúula,áur-asílar
    とき呼ぶ-<(軽いものが)>ふくろう<主格>昇る-<(軽いものが)>月<主格>

    「ふくろうが呼ぶと、月が昇る。」

    ふくろうを夜と星読みの使いとみる考えにもとづく言い習わし。lúin の節は主節の前に置く。月 sílar も軽性なので、主節の動詞も軽性の -a をとる。

    mána kelár þérno! hál ráuvanan!

    読み:マーナ ケラール セルノ!ハール ラウヴァナン!

    mán-akel-árþérno!hálráuvan-an!
    食べる-<(軽いものが)>伐る-<〜する人・主格>毒きのこ<対格>呼ぶ<命令法><あなたが>森の巫-<対格>

    「樵が毒きのこを食べた!森の巫を呼べ!」

    急を告げるくだけた言い方。動詞に時制の形がないので、mána だけで「食べた」の意味になる。重性名詞の þérno は、対格でも形が変わらない。命令法の2人称単数は、むき出しの語幹 hál。森の村では、毒や葬送のことは森の巫に任される。

    hál faronárais!

    読み:ハール ファロナーライス!

    hálfaron-ár-ais!
    呼ぶ<命令法><あなたが>荷-<〜する人>-<〜たちを>

    「運び人たちを呼べ。」

    下向きの命令。語幹 hál- は語末の子音のつながりを削る必要がないので、むき出しの語幹がそのまま命令法2人称単数の形になる。縁の市の取引言葉では、格語尾を落として hál faronár, ende とも言う。

    hálim ólmaran, na tóra.

    読み:ハーリン オルマラン、ナ トーラ。

    hál-imólmar-an,natór-a.
    呼ぶ-<私が>年長者-<対格><〜ない>来る-<(軽いものが)>

    「年長者を呼んだのに、来ない。」

    日常の言い方。時制がないので、hálim は「呼ぶ」とも「呼んだ」とも訳せる。後半では主語を言っていないが、動詞の軽性の語尾から、呼ばれた年長者が主語だとわかる。名前で呼ぶのではなく、ólmar「年長者」のような呼び名を使うのが礼にかなっている。

    éso nébro. lúin hála páin þelán táses, mé glén!

    読み:エーソ ネーブロ。ルーイン ハーラ パイン セラーン ターセス、メー グレーン!

    és-onébro.lúinhál-apáinþel-ántás-es,méglén!
    いる-<(重いものが)>霧<主格>とき呼ぶ-<(軽いものが)>誰か<主格>名前-<対格><あなた>-<属格><禁止・願いの打ち消し>答える<命令法><あなたが>

    「霧が出ている。誰かがお前の名を呼んでも、答えてはいけない。」

    霧の禁忌について、親が子に言い聞かせる言葉。「霧がある」は繋辞 és- で言い、霧 nébro が重性なので語尾は -o。禁止は「mé+命令法」。

    ái, dúla hóurna du orén! hálimor ráuvanan.

    読み:アイ、ドゥーラ ホールナ ドゥ オレーン!ハーリモル ラウヴァナン。

    ái,dúl-ahóurnaduorén!hál-imorráuvan-an.
    おや下る-<(軽いものが)>送りの煙<主格>下手縁<対格>呼ぶ-<我々が>森の巫-<対格>

    「おや、送りの煙が縁のほうへ下りていく!森の巫を呼ぼう。」

    風で煙が南(下)へ流れたときの驚きの声。これは不吉なこととされ、魂を上へ引き上げる詞を唱えてもらうために祭司を呼ぶ。du+対格で「下手へ」。

    lúin éso nébro trúin, mé hál þelán!

    読み:ルーイン エーソ ネーブロ トルーイン、メー ハール セラーン!

    lúinés-onébrotrúin,méhálþel-án!
    ときいる-<(重いものが)>霧<主格>近い<禁止・願いの打ち消し>呼ぶ<命令法><あなたが>名前-<対格>

    「霧が近いときは、名前を呼ぶな。」

    親が子に言い聞かせる、禁忌の言い方。霧の中で名を呼ぶと下の国に聞かれる、という信仰による。nébro「霧」は重性なので、繋辞は éiso になる。禁止は「mé+命令法」で言う。

    hóu! mé hál þelán némes!

    読み:ホー!メー ハール セラーン ネーメス!

    hóu!méhálþel-ánném-es!
    おい<禁止・願いの打ち消し>呼ぶ<命令法><あなたが>名前-<対格><私>-<属格>

    「おい!俺の名を呼ぶな!」

    霧の中で自分の名を呼ばれたときに、たしなめる言い方。禁止は「mé+命令法」。þelá は語尾に強勢のある軽性a語幹なので、対格は þelán になる。霧の中では hóu や té「そこの方」で呼びかけるのが決まりなので、hóu がそのまま禁忌を守った呼びかけになっている。

    lúin háles þelán némes, þréelim.

    読み:ルーイン ハーレス セラーン ネーメス、スレーリン。

    lúinhál-esþel-ánném-es,þréel-im
    when呼ぶ-<あなたが>名前-<対格><私>-<属格>振り返る<〜し終えた>-<私が>

    「あなたが私の名を呼ぶと、私は振り向いた。」

    lúin 節では動詞が節頭に来る。主語は人称語尾に含み、所有は名詞 þelán の後ろに属格 ném-es を置く。主節の完了相 þréel- は動詞の完了形で、名詞の呼称ではない。

    lúin háles þelán némes, nóumaurim.

    読み:ルーイン ハーレス セラーン ネーメス、ノーマウリン。

    lúinhál-esþel-ánném-es,nóumaur-im
    とき呼ぶ-<あなたが>名前-<対格><私>-<属格>照れる-<私が>

    「あなたが私の名前を呼ぶと、私は照れる。」

    日常会話。lúin節が主節に先行する。þelá「名前」の対格 þelán に、所有の属格 némes を後置して「私の名前」を作る。主節は1人称語尾 -im によって主語を省略できる。

  2. 〜と呼ぶ

    二つの対格をとって、あるものを特定の名で呼ぶ。

    hálimor slúun dalorárar sélu.

    読み:ハーリモル スルーン ダロラーラル セール。

    hál-imorslúundalor-ár-arsélu.
    呼ぶ-<我々が>千<対格>下の国-<〜する人>-<〜らの>泥の千<対格>

    「我々は下の国の者たちの千を「セル(泥の千)」と呼ぶ。」

    縁の市で、二つの「千」を言い分けることを説明する文。二つ目の対格 sélu は干潟語から借りた語なので重性で、対格も主格と同じ形になる。からかいの響きを帯びた呼び方である。

    hálimor aursáran nadúlenan fóndar.

    読み:ハーリモル アウルサーラン ナドゥーレナン フォンダル。

    hál-imoraursár-anna-dúl-en-anfóndar.
    呼ぶ-<我々が>祖先-<対格><〜ない>-下る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>源<対格>

    「我々は、下りぬ祖先を「源」と呼ぶ。」

    二つの対格をとる用法。一つ目の対格が呼ばれるもの、二つ目の対格がその呼び名を表す。fóndar は重性なので、対格も主格と同じ形になる。分詞 nadúlenan は aursáran(軽性・単数・対格)に一致している。家系を川の流れとみる世界観で、始祖のことを説明するときの言い方。

解説

声をかけて人を呼ぶ、呼び寄せる、また「AをBと呼ぶ」ことを表す。名前を口にすることを言う vír-+名前とは違い、hál- は相手に向けて声を張る行為に重点がある。霧の中で名を呼ぶ禁忌は、ふつう mé hál…! の形で言われる。「AをBと呼ぶ」は、呼ぶ相手と呼び名の両方を対格でとる。

文法

完了語根 háil-。二重対格をとれる(hála kelárai aurán aldáres…「樵たちはその鷲を座の〜と呼ぶ」)。尊敬は au- のあとで h が落ちて auál-、謙譲 duhál-。

語源

古高原語 *hál- から

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