小説
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呼ぶ
声をかけて人を呼ぶ、呼び寄せる。
lúin tóro nébro, mé hál þelán!
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー ハール セラーン!
| lúin | tór-o | nébro, | mé | hál | þel-án! |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 呼ぶ<命令法><あなたが> | 名前-<対格> |
「霧が来たら、名を呼ぶな。」
親が子に言い聞かせる禁止の言い方。霧の中で名前を大声で呼ぶと、下の国にその名を聞かれ、名の主が下へ引かれるとされる。nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。禁止は「mé+命令法」で言う。霧の中で人を呼ぶときは、名前の代わりに té「そこの方」などを使う。
lúin tóro nébro, mé hál þelán éndrar.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー ハール セラーン エンドラル。
| lúin | tór-o | nébro, | mé | hál | þel-án | éndr-ar. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 呼ぶ<命令法><あなたが> | 名前-<対格> | 人-<〜らの> |
「霧が来たら、人の名を呼ぶな。」
子どもに霧期の禁忌を教えるときの言い方。lúin の節は主節の前に置き、読点で区切る。霧 nébro は重性なので、動詞は -o の形になる。禁止は mé と命令法で言う。
toríro þúumo, mé hál þelán!
読み:トリーロ スーモ、メー ハール セラーン!
| tor-ír-o | þúumo, | mé | hál | þel-án! |
| 来る-<もし〜なら>-<(重いものが)> | 濃霧<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 呼ぶ<命令法><あなたが> | 名前-<対格> |
「濃霧が来たら、名を呼ぶな。」
霧の中で名前を大声で呼ぶと下の国に聞かれる、という禁忌を戒める言い方。条件の節は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけで作る。þúumo は重性なので -o をとる。禁止は mé+命令法。þúumo は、ふつうの霧 nébro より濃く、隣の人も見えない霧を言う。
ké hála húula?
読み:ケー ハーラ フーラ?
| ké | hál-a | húula |
| <〜か> | 呼ぶ-<(軽いものが)> | ふくろう<主格> |
「ふくろうが鳴いているか。」
夜のくだけた場で使う問い。はい・いいえで答える問いなので、文のいちばん前に ké を置く。ふくろうは鳥なので軽性で、動詞は -a をとる。答えるときは動詞を繰り返して、hála「鳴いている」か na hála「鳴いていない」と言う。
lúin hála húula, áura sílar.
読み:ルーイン ハーラ フーラ、アウラ シーラル。
| lúin | hál-a | húula, | áur-a | sílar |
| とき | 呼ぶ-<(軽いものが)> | ふくろう<主格> | 昇る-<(軽いものが)> | 月<主格> |
「ふくろうが呼ぶと、月が昇る。」
ふくろうを夜と星読みの使いとみる考えにもとづく言い習わし。lúin の節は主節の前に置く。月 sílar も軽性なので、主節の動詞も軽性の -a をとる。
mána kelár þérno! hál ráuvanan!
読み:マーナ ケラール セルノ!ハール ラウヴァナン!
| mán-a | kel-ár | þérno! | hál | ráuvan-an! |
| 食べる-<(軽いものが)> | 伐る-<〜する人・主格> | 毒きのこ<対格> | 呼ぶ<命令法><あなたが> | 森の巫-<対格> |
「樵が毒きのこを食べた!森の巫を呼べ!」
急を告げるくだけた言い方。動詞に時制の形がないので、mána だけで「食べた」の意味になる。重性名詞の þérno は、対格でも形が変わらない。命令法の2人称単数は、むき出しの語幹 hál。森の村では、毒や葬送のことは森の巫に任される。
hál faronárais!
読み:ハール ファロナーライス!
| hál | faron-ár-ais! |
| 呼ぶ<命令法><あなたが> | 荷-<〜する人>-<〜たちを> |
「運び人たちを呼べ。」
下向きの命令。語幹 hál- は語末の子音のつながりを削る必要がないので、むき出しの語幹がそのまま命令法2人称単数の形になる。縁の市の取引言葉では、格語尾を落として hál faronár, ende とも言う。
hálim ólmaran, na tóra.
読み:ハーリン オルマラン、ナ トーラ。
| hál-im | ólmar-an, | na | tór-a. |
| 呼ぶ-<私が> | 年長者-<対格> | <〜ない> | 来る-<(軽いものが)> |
「年長者を呼んだのに、来ない。」
日常の言い方。時制がないので、hálim は「呼ぶ」とも「呼んだ」とも訳せる。後半では主語を言っていないが、動詞の軽性の語尾から、呼ばれた年長者が主語だとわかる。名前で呼ぶのではなく、ólmar「年長者」のような呼び名を使うのが礼にかなっている。
éso nébro. lúin hála páin þelán táses, mé glén!
読み:エーソ ネーブロ。ルーイン ハーラ パイン セラーン ターセス、メー グレーン!
| és-o | nébro. | lúin | hál-a | páin | þel-án | tás-es, | mé | glén! |
| いる-<(重いものが)> | 霧<主格> | とき | 呼ぶ-<(軽いものが)> | 誰か<主格> | 名前-<対格> | <あなた>-<属格> | <禁止・願いの打ち消し> | 答える<命令法><あなたが> |
「霧が出ている。誰かがお前の名を呼んでも、答えてはいけない。」
霧の禁忌について、親が子に言い聞かせる言葉。「霧がある」は繋辞 és- で言い、霧 nébro が重性なので語尾は -o。禁止は「mé+命令法」。
ái, dúla hóurna du orén! hálimor ráuvanan.
読み:アイ、ドゥーラ ホールナ ドゥ オレーン!ハーリモル ラウヴァナン。
| ái, | dúl-a | hóurna | du | orén! | hál-imor | ráuvan-an. |
| おや | 下る-<(軽いものが)> | 送りの煙<主格> | 下手 | 縁<対格> | 呼ぶ-<我々が> | 森の巫-<対格> |
「おや、送りの煙が縁のほうへ下りていく!森の巫を呼ぼう。」
風で煙が南(下)へ流れたときの驚きの声。これは不吉なこととされ、魂を上へ引き上げる詞を唱えてもらうために祭司を呼ぶ。du+対格で「下手へ」。
lúin éso nébro trúin, mé hál þelán!
読み:ルーイン エーソ ネーブロ トルーイン、メー ハール セラーン!
| lúin | és-o | nébro | trúin, | mé | hál | þel-án! |
| とき | いる-<(重いものが)> | 霧<主格> | 近い | <禁止・願いの打ち消し> | 呼ぶ<命令法><あなたが> | 名前-<対格> |
「霧が近いときは、名前を呼ぶな。」
親が子に言い聞かせる、禁忌の言い方。霧の中で名を呼ぶと下の国に聞かれる、という信仰による。nébro「霧」は重性なので、繋辞は éiso になる。禁止は「mé+命令法」で言う。
hóu! mé hál þelán némes!
読み:ホー!メー ハール セラーン ネーメス!
| hóu! | mé | hál | þel-án | ném-es! |
| おい | <禁止・願いの打ち消し> | 呼ぶ<命令法><あなたが> | 名前-<対格> | <私>-<属格> |
「おい!俺の名を呼ぶな!」
霧の中で自分の名を呼ばれたときに、たしなめる言い方。禁止は「mé+命令法」。þelá は語尾に強勢のある軽性a語幹なので、対格は þelán になる。霧の中では hóu や té「そこの方」で呼びかけるのが決まりなので、hóu がそのまま禁忌を守った呼びかけになっている。
lúin háles þelán némes, þréelim.
読み:ルーイン ハーレス セラーン ネーメス、スレーリン。
| lúin | hál-es | þel-án | ném-es, | þréel-im |
| when | 呼ぶ-<あなたが> | 名前-<対格> | <私>-<属格> | 振り返る<〜し終えた>-<私が> |
「あなたが私の名を呼ぶと、私は振り向いた。」
lúin 節では動詞が節頭に来る。主語は人称語尾に含み、所有は名詞 þelán の後ろに属格 ném-es を置く。主節の完了相 þréel- は動詞の完了形で、名詞の呼称ではない。
lúin háles þelán némes, nóumaurim.
読み:ルーイン ハーレス セラーン ネーメス、ノーマウリン。
| lúin | hál-es | þel-án | ném-es, | nóumaur-im |
| とき | 呼ぶ-<あなたが> | 名前-<対格> | <私>-<属格> | 照れる-<私が> |
「あなたが私の名前を呼ぶと、私は照れる。」
日常会話。lúin節が主節に先行する。þelá「名前」の対格 þelán に、所有の属格 némes を後置して「私の名前」を作る。主節は1人称語尾 -im によって主語を省略できる。
〜と呼ぶ
二つの対格をとって、あるものを特定の名で呼ぶ。
hálimor slúun dalorárar sélu.
読み:ハーリモル スルーン ダロラーラル セール。
| hál-imor | slúun | dalor-ár-ar | sélu. |
| 呼ぶ-<我々が> | 千<対格> | 下の国-<〜する人>-<〜らの> | 泥の千<対格> |
「我々は下の国の者たちの千を「セル(泥の千)」と呼ぶ。」
縁の市で、二つの「千」を言い分けることを説明する文。二つ目の対格 sélu は干潟語から借りた語なので重性で、対格も主格と同じ形になる。からかいの響きを帯びた呼び方である。
hálimor aursáran nadúlenan fóndar.
読み:ハーリモル アウルサーラン ナドゥーレナン フォンダル。
| hál-imor | aursár-an | na-dúl-en-an | fóndar. |
| 呼ぶ-<我々が> | 祖先-<対格> | <〜ない>-下る-<〜した・〜された>-<軽性・対格> | 源<対格> |
「我々は、下りぬ祖先を「源」と呼ぶ。」
二つの対格をとる用法。一つ目の対格が呼ばれるもの、二つ目の対格がその呼び名を表す。fóndar は重性なので、対格も主格と同じ形になる。分詞 nadúlenan は aursáran(軽性・単数・対格)に一致している。家系を川の流れとみる世界観で、始祖のことを説明するときの言い方。
声をかけて人を呼ぶ、呼び寄せる、また「AをBと呼ぶ」ことを表す。名前を口にすることを言う vír-+名前とは違い、hál- は相手に向けて声を張る行為に重点がある。霧の中で名を呼ぶ禁忌は、ふつう mé hál…! の形で言われる。「AをBと呼ぶ」は、呼ぶ相手と呼び名の両方を対格でとる。
完了語根 háil-。二重対格をとれる(hála kelárai aurán aldáres…「樵たちはその鷲を座の〜と呼ぶ」)。尊敬は au- のあとで h が落ちて auál-、謙譲 duhál-。
古高原語 *hál- から
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