小説
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〜するな
願望法・命令法・当為法の文を否定して禁止を表す。碑文では「〜せぬこと」、目上には「〜なさいませぬよう」の意味になる。
mé duliþésa fáron es orénos.
読み:メー ドゥリセーサ ファーロン エス オレーノス。
| mé | dul-iþ-és-a | fáron | es | orén-os |
| <禁止・願いの打ち消し> | 下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 荷<対格> | から | 縁-<属格> |
「縁から荷を落とさぬこと。」
度量衡の碑の一句。当為法の文は mé で否定する。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の形をとる。強勢は当為法の -és- に移り、-íþ- の強勢は消える。
mé vír sélvanan nébroi!
読み:メー ヴィール セルヴァナン ネーブロイ!
| mé | vír | sélvan-an | nébr-oi! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 言う<命令法><あなたが> | セルヴァン-<対格> | 霧-<与格> |
「霧の中で、セルヴァンの名を呼ぶな。」
禁止は「mé+命令法」。名前を vír-「言う」の目的語にすると、「名を呼ぶ」の意味になる。場所は前置詞なしの与格で言う。霧の中で名前を呼んではいけない、という禁忌の言い方。
selvéna ausenár ré mé duliþésa fáron es orénos.
読み:セルヴェーナ アウセナール レー メー ドゥリセーサ ファーロン エス オレーノス。
| selvén-a | au-sen-ár | ré | mé | dul-iþ-és-a | fáron | es | orén-os. |
| おっしゃる-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人> | <〜と(節)> | <禁止・願いの打ち消し> | 下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 荷<対格> | から | 縁-<属格> |
「目付殿は、「縁から荷を落とさぬこと」とおっしゃる。」
ré は「〜と」の節を導き、その節は主節の後ろに置く。ré の後ろの節は、元の文の法を保つ。ここでは度量衡の碑の一句 mé duliþésa fáron es orénos を、当為法のまま引用している。目付が碑の前で揉め事を裁くときの言い方。
mé þraunésa póin es orénos.
読み:メー スラウネーサ ポイン エス オレーノス。
| mé | þraun-és-a | póin | es | orén-os. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 投げる-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 何か<対格> | から | 崖の際-<属格> |
「崖の際から何も投げ落とさぬこと。」
碑文や法の文体。当為法は mé で否定する。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の形をとる。強勢は当為法の -és- に移る(þraunésa)。崖から物を投げ落とすのは、下の国を呼び寄せる行いとして禁じられている。
áura ilána, mé ombér!
読み:アウラ イラーナ、メー オンベール!
| áur-a | ilána, | mé | ombér! |
| 昇る-<(軽いものが)> | 星<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 指さす<命令法><あなたが> |
「星が昇る。指さすな。」
親が子に言い聞かせる禁止の決まり文句。昇ってくる一つの星を言うので単数の ilána を使う。禁止は「mé+命令法」で言う。星は祖先の炉の火とされ、指さすことは禁忌である。
mé dúl du orén!
読み:メー ドゥール ドゥ オレーン!
| mé | dúl | du | orén! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 下る<命令法><あなたが> | 下手 | 崖の際<対格> |
「崖の際へ近寄るな。」
子どもや新入りの運び人に向けた、強い禁止。禁止は「mé+命令法」で言う。崖の際は南(下手)にあるので、そちらへ向かうことを「下る」と言う。崖から落ちて死ぬことは、魂が下へ引かれる、もっとも恐れられる死とされる。
mé kelésa gandér an loiméi.
読み:メー ケレーサ ガンデール アン ロイメー。
| mé | kel-és-a | gandér | an | loim-éi. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 伐る-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 硬木<対格> | 上手 | 詞-<与格> |
「詞を唱える前に、硬木を伐らぬこと。」
降ろし場の碑や森の司の定めに見える、当為法の禁止。主語を言わないので「人は〜すべし」の意味になり、軽性の形 -a をとる。an+与格は時間の「〜の前に」。生えている硬木も重性なので、対格は主格と同じ gandér になる。
mé vír lúdro! dúla virá gróm du dálor.
読み:メー ヴィール ルードロ!ドゥーラ ヴィラー グローン ドゥ ダーロル。
| mé | vír | lúdro! | dúl-a | virá | gróm | du | dálor. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 言う<命令法><あなたが> | 嘘<対格> | 下る-<(軽いものが)> | 言葉<主格> | 重い | 下手 | 地の底<対格> |
「嘘をつくな。重い言葉は地の底へ沈むぞ。」
親が子をたしなめるときの言い方。lúdro「嘘」は重性o語幹なので、対格は主格と同じ形。言葉は本来軽性で上へ昇るものだが、崩れた言葉は「重く」なって下へ落ちる、という考えを表す。virá は軽性なので、形容詞 gróm は語尾なし、動詞は -a をとる。
mé vír þelán aldáres te áursa!
読み:メー ヴィール セラーン アルダーレス テ アウルサ!
| mé | vír | þel-án | aldár-es | te | áurs-a! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 言う<命令法><あなたが> | 名前-<対格> | 座-<属格> | <関係節> | お昇りになる<〜し終えた>-<(軽いものが)> |
「お昇りになった座のお名を口にするな。」
王の崩御から一年のあいだの禁忌を言う文。この間は座名も声に出さず、aldár te áursa「お昇りになった座」と言う。aldár áuren「高き座」の分詞ではなく、関係節に完了形を入れて区別している。関係節は文の終わりまで続く。
toríro nébro, mé dúl es orénos!
読み:トリーロ ネーブロ、メー ドゥール エス オレーノス!
| tor-ír-o | nébro, | mé | dúl | es | orén-os! |
| 来る-<もし〜なら>-<(重いものが)> | 霧<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 下る<命令法><あなたが> | から | 縁-<属格> |
「霧が来たら、縁から下りるな!」
崖道の上り口で目下の者に言う、下向きの禁止。前半は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけの条件節で、霧 nébro は重性なので語尾は -o。後半は「mé+命令法の2人称単数(むき出しの語幹 dúl)」の形。霧期に崖道を下りるのは危ないうえ、霧は「下の国の息」として恐れられているので、よく聞く戒めである。
dúla faronár es orénos. mé vír þelán éles!
読み:ドゥーラ ファロナール エス オレーノス。メー ヴィール セラーン エーレス!
| dúl-a | faronár | es | orén-os. | mé | vír | þel-án | él-es! |
| 下る-<(軽いものが)> | 運び人<主格> | から | 縁-<属格> | <禁止・願いの打ち消し> | 言う<命令法><あなたが> | 名前-<対格> | <3人称単数・軽性>-<属格> |
「運び人が縁から下りた(落ちて死んだ)。その名を口にするな。」
崖から落ちて死ぬことは、いちばん恐れられる死である。そのため brúum-「落ちる」とは言わず、dúl-「下る」で遠回しに言う。高原語には時制がないので、dúla は文脈によって「下りた」の意味になる。死後一年は死者の名を口にしない禁忌があるので、すぐ後に禁止の文が続く。
toríro nébro, mé vír þelán! ésa þelá selvá, fíndo dálor.
読み:トリーロ ネーブロ、メー ヴィール セラーン!エーサ セラー セルヴァー、フィンド ダーロル。
| tor-ír-o | nébro, | mé | vír | þel-án! | és-a | þelá | selvá, | fínd-o | dálor. |
| 来る-<もし〜なら>-<(重いものが)> | 霧<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 言う<命令法><あなたが> | 名前-<対格> | いる-<(軽いものが)> | 名前<主格> | 息<主格> | 聞く-<(重いものが)> | 下の国<主格> |
「霧が来たら名を呼ぶな。名は息だ、下の国が聞きつける。」
霧期の禁忌を子どもに教える言い方。口に出した名前を selvá「息」としてとらえている。条件の節は動詞を仮定法にするだけで作る。dálor は重性なので、動詞 fínd- は重性の -o をとる。
lúin tóro nébro, mé hál þelán!
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー ハール セラーン!
| lúin | tór-o | nébro, | mé | hál | þel-án! |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 呼ぶ<命令法><あなたが> | 名前-<対格> |
「霧が来たら、名を呼ぶな。」
親が子に言い聞かせる禁止の言い方。霧の中で名前を大声で呼ぶと、下の国にその名を聞かれ、名の主が下へ引かれるとされる。nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。禁止は「mé+命令法」で言う。霧の中で人を呼ぶときは、名前の代わりに té「そこの方」などを使う。
lúin éso nébro, mé þondésa þondán.
読み:ルーイン エーソ ネーブロ、メー ソンデーサ ソンダーン。
| lúin | és-o | nébro, | mé | þond-és-a | þond-án. |
| とき | いる-<(重いものが)> | 霧期<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 誓う-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 誓い-<対格> |
「霧期のあいだは、誓いを立てぬこと。」
法典や碑文に見られる、当為法を使った禁止。主語を言わないので一般の人が主語になり、動詞は軽性の形をとる。霧の夜の誓いは祖先に届かず無効とされる。その信仰を定めとして書いた文。
mé ombér ausenáran!
読み:メー オンベール アウセナーラン!
| mé | ombér | au-sen-ár-an! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 指さす<命令法><あなたが> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>-<対格> |
「目付殿を指さすな!」
親が子どもをたしなめるときの禁止。「mé+命令法」で禁止を表し、mé は強勢をもつ。ombér- は ómbo「指」に -ér- がついた動詞で、命令法2人称単数は語幹そのままになる。目上の人に指を突きつけるのは、星を指さすのと同じ理屈で無礼とされる。目付は目上なので、目的語でも au- をつけたままにする。
mé fleirénde ausenár du orén.
読み:メー フレイレンデ アウセナール ドゥ オレーン。
| mé | fleir-énd-e | au-sen-ár | du | orén. |
| <禁止・願いの打ち消し> | お出ましになる-<〜しますように>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人> | 下手 | 縁<対格> |
「目付殿、縁へはお出ましになりませぬよう。」
目上の人への禁止。命令法は使わず、「mé+願望法3人称」で言う。目の前の相手も、役職名に au- をつけた3人称の主語として扱う。du+対格で「下手へ」。orén は重性なので、主格と対格が同じ形になる。霧期に、霧のあふれる縁の方へ行くのをいさめるときの言い方。
lúin éso nébro, mé vírir þeláis.
読み:ルーイン エーソ ネーブロ、メー ヴィーリル セライス。
| lúin | és-o | nébro, | mé | vír-ir | þel-áis. |
| とき | いる-<(重いものが)> | 霧<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 言う-<皆で〜せよ> | 名前-<〜たちを> |
「霧が出ているときは、名を呼んではならぬ。」
霧の中で名前を呼ぶと下の国に聞かれるという禁忌を、年長者が若者たちに言い聞かせる言い方。vír- が名前を目的語にとると「名を呼ぶ・口にする」の意味になる。禁止は mé+命令法で、相手が複数なので命令法の2複 -ir を使う。lúin の節は主節の前に置く。
mé hél an aulisárei!
読み:メー ヘール アン アウリサーレイ!
| mé | hél | an | au-lis-ár-ei! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 座る<命令法><あなたが> | 上手へ・上手で | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<与格> |
「書記の方の上手の側に座るな。」
作法を教えるときの禁止。an+与格で「〜の上手の側で」という場所を表す。炉や座敷の北側(上手)は上座なので、目上の人より上手に座るのは無礼にあたる。禁止は mé+命令法で言う。
mé þraunésa póin es orénos.
読み:メー スラウネーサ ポイン エス オレーノス。
| mé | þraun-és-a | póin | es | orén-os. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 投げる-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 何か<対格> | 〜から | 縁-<属格> |
「縁から物を投げ落とさぬこと。」
碑文に刻まれる型の禁止の文。当為法の -és- が強勢をとるので、語根 þráun- の強勢は消える。崖の縁から物を投げ落とすことは、決められた降ろし場の作法の外では禁忌とされる。
mé vandésa fáron du lisímei sáindares.
読み:メー ヴァンデーサ ファーロン ドゥ リシーメイ サインダレス。
| mé | vand-és-a | fáron | du | lis-ím-ei | sáindar-es. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 量る-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 荷<対格> | 〜の後に | 書く-<〜の技・〜さ>-<与格> | 証文-<属格> |
「証文を書いたあとに荷を量らぬこと。」
市の決まりを述べる当為法の文。荷は先に秤で量り、そのあとで証文に書く、という順序を定めている。主語を言わないので「人は〜すべし」という一般の主語になり、軽性の形をとる。du+与格は、an+与格「〜の前に」と対になって使われる。
lúin tóro nébro, mé hál þelán éndrar.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー ハール セラーン エンドラル。
| lúin | tór-o | nébro, | mé | hál | þel-án | éndr-ar. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 呼ぶ<命令法><あなたが> | 名前-<対格> | 人-<〜らの> |
「霧が来たら、人の名を呼ぶな。」
子どもに霧期の禁忌を教えるときの言い方。lúin の節は主節の前に置き、読点で区切る。霧 nébro は重性なので、動詞は -o の形になる。禁止は mé と命令法で言う。
mé vír térin!
読み:メー ヴィール テーリン!
| mé | vír | térin! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 言う<命令法><あなたが> | そのように |
「そんなふうに言うんじゃない!」
子どもの粗野な言い方を、親がたしなめるときの決まった言い方。禁止は「mé+命令法」で言う。térin は、直前に相手が言った言い方を指す。
mé vír þelán élaures!
読み:メー ヴィール セラーン エーラウレス!
| mé | vír | þel-án | élaur-es! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 言う<命令法><あなたが> | 名前-<対格> | 昇りゆく人-<属格> |
「亡くなった方の名を口にしてはならない。」
喪中に、子どもや目下の者をたしなめる言い方。死後一年は生前の名を声に出せないので、死者は élaur「昇りゆく人」と呼ぶ。禁止は mé+命令法。名前を書くことは禁じられていない。
selvána ausenár ré lisésa orenvandár slúun, mé lisésa sélu.
読み:セルヴァーナ アウセナール レー リセーサ オレンヴァンダール スルーン、メー リセーサ セール。
| selván-a | au-sen-ár | ré | lis-és-a | orenvandár | slúun, | mé | lis-és-a | sélu. |
| おっしゃる-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人> | <〜と(節)> | 書く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 縁商人<主格> | 千 | <禁止・願いの打ち消し> | 書く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 泥の千 |
「目付殿は、「縁商人は陸の千で書くべし、泥の千では書かぬこと」とおっしゃる。」
市の目付の裁きを人に伝える言い方。ré の後ろの節は、決まりごとを表す当為法のまま引いている。後半は主語を言っていないが、前半と同じ縁商人のことを言っている。証文の数は高原の数え方で書く、という市の決まりを表す。
mé rimbésa ausenárais!
読み:メー リンベーサ アウセナーライス!
| mé | rimb-és-a | au-sen-ár-ais! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 数える-<〜すべし>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>-<〜たちを> |
「目付の方々を数えてはならぬ。」
目上の人を数で数えることを戒める言い方。数えることは相手を物のように扱い、「下げる」行いとされる。当為法で主語を言わないので「人は〜すべし」という一般の主語になり、軽性の形をとる。強勢は -és- に移る。同じ理屈で、星を数えることも禁じられる。
mé vír virán rúgalan, éso hóum!
読み:メー ヴィール ヴィラーン ルーガラン、エーソ ホーン!
| mé | vír | vir-án | rúgal-an, | és-o | hóum! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 言う<命令法><あなたが> | 言葉-<対格> | 粗い-<軽性・対格> | いる-<(重いものが)> | 炉<主格> |
「粗い言葉を言うな。炉の前だぞ。」
家の中で、親が子をたしなめる言い方。炉の前で粗野な言葉を口にしてはいけない、という禁忌を表す。禁止は「mé+命令法」で言う。後半の éso hóum は「炉がある(のだ)」で、場所を示さない存在文。hóum は重性なので、繋辞は -o をとる。
mé léim virán gráisan un múndo táses!
読み:メー レーン ヴィラーン グライサン ウン ムンド ターセス!
| mé | léim | vir-án | gráis-an | un | múndo | tás-es! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 置く<命令法><あなたが> | 言葉-<対格> | 悪い-<対格> | 内に | 口<対格> | <あなた>-<属格> |
「悪い言葉を口に入れるな(=口にするな)。」
親が子を叱るときの言い方。炉の前では粗野な言葉を口にしてはいけないとされる。禁止は「mé+命令法」で言う。un+対格で「〜の中へ」を表す。múndo は重性なので、対格は主格と同じ形になる。形容詞 gráis は軽性の virá に合わせて、対格の -an をとる。
mé leimésa fáron un múndo orénos.
読み:メー レイメーサ ファーロン ウン ムンド オレーノス。
| mé | leim-és-a | fáron | un | múndo | orén-os. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 置く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 荷<対格> | 内に | 出口<対格> | 縁-<属格> |
「縁の口の中へ荷を置かぬこと。」
市の決まりを刻んだ碑文の文体。道の口をふさがないための決まり。当為法は mé で否定する。主語を言わないので「人は」という一般の主語になり、軽性の形をとる。強勢は当為法の -és- に移る。un+対格で「〜の中へ」。
lúin méira muró torárei, mé krailésa drál.
読み:ルーイン メーラ ムロー トラーレイ、メー クライレーサ ドラール。
| lúin | méir-a | muró | torár-ei, | mé | krail-és-a | drál. |
| とき | 与える-<(軽いものが)> | 濁り酒<対格> | 客-<与格> | <禁止・願いの打ち消し> | 持つ-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 器の首<対格> |
「客に濁り酒を注ぐときは、器の首をつかまぬこと。」
もてなしの作法を述べた文。lúin の節は主節の前に置く。主節は当為法を mé で否定した禁止の形。主語を言わないので「人は」という一般の主語になり、lúin の節の動詞も主節の動詞も軽性の形をとる。
mé leimésa kréinul du dálor.
読み:メー レイメーサ クレーヌル ドゥ ダーロル。
| mé | leim-és-a | kréin-ul | du | dálor. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 置く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 遺骨-<〜たちを> | 下手 | 下の国<対格> |
「遺骨を下の国へ置かぬこと。」
葬送の作法を記した書きものの一句。当為法 -és- は mé で否定し、主語を言わないので一般の人が主語になって軽性の -a をとる。強勢は -és- に移る(léim- → leimésa)。遺骨を谷底や崖の下に埋めることは禁じられている。
mé vrín éndran!
読み:メー ヴリーン エンドラン!
| mé | vrín | éndr-an! |
| <禁止・願いの打ち消し> | またぐ<命令法><あなたが> | 人-<対格> |
「人をまたぐな!」
人をまたぐのは「その人の上に立つ」ことになるので、強い無礼とされる。禁止は mé+命令法で言う。親が子をたしなめるときによく使う。
mé vrinésa houmáran.
読み:メー ヴリネーサ ホウマーラン。
| mé | vrin-és-a | houmár-an. |
| <禁止・願いの打ち消し> | ないがしろにする-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 家の主-<対格> |
「家の主をないがしろにせぬこと。」
家の決まりを書いた戒めの文。当為法で主語を言わないので、「人は〜すべし」という一般の主語になり、軽性の形をとる。当為法の否定には mé を使う。
mé omberénde ausenár néman.
読み:メー オンベレンデ アウセナール ネーマン。
| mé | omber-énd-e | au-senár | ném-an. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 名指しする-<〜しますように>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-目付 | <私>-<対格> |
「目付殿、どうか私を名指しなさいませぬよう。」
上向きの話し方。相手を2人称で呼ばず、ausenár「目付殿」を3人称の主語にする。命令法ではなく願望法を使い、mé で否定して「〜なさいませぬよう」と願う。願望法では3人称単数・軽性の語尾が -e になる。
áura ilána, mé ombér, lamér.
読み:アウラ イラーナ、メー オンベール、ラメール。
| áur-a | ilána, | mé | ombér, | lamér. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 灯<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 指さす<命令法><あなたが> | 掌を差し上げる<命令法><あなたが> |
「星が昇る。指さすな、掌を差し上げよ。」
星を指さすのは禁忌なので、手のひらを上に向けて目の高さより上へ差し上げ、視線で方向を示すよう子どもに教える言い方。ilána は軽性なので、動詞は -a をとる。lamér- は lámo「掌」に -ér- がついてできた動詞で、命令形は語幹そのままの lamér。
mé vrín dubrélan táses!
読み:メー ヴリーン ドゥブレーラン ターセス!
| mé | vrín | dubrél-an | tás-es! |
| <禁止・願いの打ち消し> | またぐ<命令法><あなたが> | 弟・妹-<対格> | <あなた>-<属格> |
「弟(妹)をまたぐな。」
親が年上の子をしかるときの決まった言い方。人をまたぐのは、その人の上に立つことになるので強い無礼とされ、相手がきょうだいでも許されない。禁止は「mé+命令法」。語幹 vrín- には削る子音のつながりがないので、命令形は語幹のまま。
mé mán tambór éul!
読み:メー マーン タンボール エウル!
| mé | mán | tambór | éul! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 食べる<命令法><あなたが> | 雑穀<対格> | よその家の |
「よその家の雑穀を食べるな。」
子どもに言い聞かせる日常の禁止。親族名称以外の名詞に添えると、éul は「自分の家の流れに属さない、よその家の」の意味になる。tambór は重性なので主格と対格が同じ形で、éul も重性・対格の語尾なしの形で一致する。
mé vír sérin, findéla éndra.
読み:メー ヴィール セーリン、フィンデーラ エンドラ。
| mé | vír | sérin, | find-él-a | éndra. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 言う<命令法><あなたが> | このように | 聞く-<〜だろう>-<(軽いものが)> | 他人<主格> |
「そんなことを言うな、人に聞かれるぞ。」
目下の者や身内をたしなめるときの言い方。後半は推量法で、「誰かが聞くだろう」という意味になる。ここの éndra は特定の人ではなく、不特定の他人を指す。
mé lisésa endríña sáindaran.
読み:メー リセーサ エンドリーニャ サインダラン。
| mé | lis-és-a | endríña | sáindar-an. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 書く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 未成年の者<主格> | 証文-<対格> |
「未成年の者は、証文を書いてはならない。」
法典の文体。当為法の否定には mé を使う。ここの endríña は年齢のことではない。成人の儀を終えておらず、成名をもたない者という、法の上での身分を指す。
mé mán an ólmarei!
読み:メー マーン アン オルマレイ!
| mé | mán | an | ólmar-ei! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 食べる<命令法><あなたが> | 上手 | 年長者-<与格> |
「年長者より先に食べるな。」
食事のとき、親が子どもをたしなめる言い方。年長の者、段の高い者が先に箸をつけるのが作法である。禁止は mé+命令法。an+与格は、時の上では「〜の前に」の意味になる。
mé rimbésa rúsilan, rimbésa álmaran.
読み:メー リンベーサ ルーシラン、リンベーサ アルマラン。
| mé | rimb-és-a | rúsil-an, | rimb-és-a | álmar-an. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 数える-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 赤月の巡り-<対格> | 数える-<〜すべし>-<(軽いものが)> | ひと月-<対格> |
「赤月の巡りで日を数えぬこと、白月の月で数えること。」
都の年長者が、崖道帰りの若者などをたしなめるときに使う、戒めの決まった言い方。当為法で主語を言わないので「人は〜すべし」の意味になり、動詞は軽性の形をとる。禁止の前半は mé で否定する。赤月で日を数えるのは、都では田舎くさい、下の国に染まった習慣とされる。
mé ráum glüníñoi!
読み:メー ラウン グリュニーニョイ!
| mé | ráum | glüníñ-oi! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 歩く<命令法><あなたが> | 薄氷-<与格> |
「「薄氷の上を歩くな!」」
親が子に言う、ありふれた禁止の言い方。禁止は mé + 命令法で言う。glüníño は道のりの対格で、「どこを歩くか」を表す。重性o語幹なので、主格と対格が同じ形になる。
éso glünó véinoros múrno, mé ráumir!
読み:エーソ グリュノー ヴェーノロス ムルノ、メー ラウミル!
| és-o | glünó | véinor-os | múrno, | mé | ráum-ir! |
| いる-<(重いものが)> | 氷<主格> | 湖-<属格> | 腐り氷 | <禁止・願いの打ち消し> | 歩く-<皆で〜せよ> |
「湖の氷は腐っている、皆、乗るな!」
霧期に湖畔の村で交わされる警告。前半は繋辞の文で、múrno は述語の名詞。後半は複数の相手への禁止で、mé + 命令法・複数 -ir を使う。主節を接続詞なしで二つ並べるので、間に区切りを入れる。
mé tául rúndo! tául þéul.
読み:メー タウル ルンド!タウル セウル。
| mé | tául | rúndo! | tául | þéul. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 取る<命令法><あなたが> | 走り水<対格> | 取る<命令法><あなたが> | 湧き水<対格> |
「走り水を汲むな。湧き水を汲め。」
目下の者への言いつけ。禁止は「mé+命令法」で言い、命令法の2人称単数は語幹そのままの形になる。谷を走る速い水は濁りやすく、泉から湧く水は清いとされるので、汲む水を言い分けている。rúndo はo語幹で、対格は主格と同じ形になる。
brúuma réina sórel, mé gél du orén!
読み:ブルーマ レーナ ソーレル、メー ゲール ドゥ オレーン!
| brúum-a | réina | sórel, | mé | gél | du | orén! |
| 落ちる-<(軽いものが)> | 雨<主格> | 今日 | <禁止・願いの打ち消し> | 行く<命令法><あなたが> | 下手 | 縁<対格> |
「今日は雨だ。縁へは行くな。」
雨で崖道が滑るときに、目下の者や家の者に言う注意。雨は上から来るものなので軽性で、動詞は -a をとる。禁止は mé+命令法で、命令法の2人称単数はむき出しの語幹 gél になる。
mé mán, endríña! na ésa hílva tambór.
読み:メー マーン、エンドリーニャ!ナ エーサ ヒルヴァ タンボール。
| mé | mán, | endríña! | na | és-a | hílva | tambór. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 食べる<命令法><あなたが> | 子ども | <〜ない> | いる-<(軽いものが)> | 雪<主格> | 雑穀 |
「食べちゃだめよ、坊や。雪はごはんじゃないの。」
大人が子どもをたしなめる、ごく日常的な言い方。日常では呼格を使わず、呼びかけの語を読点で区切って添える。「AはBではない」は na+繋辞で言い、繋辞は主語の hílva(軽性)に一致する。
lúin tóro duléumo, mé gélir du orén.
読み:ルーイン トーロ ドゥレウモ、メー ゲーリル ドゥ オレーン。
| lúin | tór-o | duléumo, | mé | gél-ir | du | orén. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 下の風<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 行く-<皆で〜せよ> | 下手 | 縁<対格> |
「下の風が吹いてきたら、皆、縁のほうへ行ってはならん。」
年長者が子どもたちに言い聞かせるような禁止の文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。主節は「mé+命令法・2人称複数(-ir)」で、目下の者への下向きの話し方になる。du+対格で「下手へ」。下の風が来る方向へ行けば、湿った重い空気に引かれると考えられている。
dúla dulána, mé ombérir!
読み:ドゥーラ ドゥラーナ、メー オンベーリル!
| dúl-a | dulána, | mé | ombér-ir! |
| 下る-<(軽いものが)> | 流れ星<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 指さす-<皆で〜せよ> |
「流れ星だ。皆、指をさすな!」
夜空を見上げた場面での、日常の叫び。流れ星は上から何かが下りてくるしるしとして警戒され、星を指さすことも禁忌とされる。そのため、流れ星を見た人はまず指さしを止めさせる。禁止は「mé+命令法」。dulána は星を指す語なので、数詞や双数をつけて数えることはしない。
mé taulésa hérvanan.
読み:メー タウレーサ ヘルヴァナン。
| mé | taul-és-a | hérvan-an. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 取る-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 大鹿-<対格> |
「大鹿を獲らぬこと。」
法典や王の森の触れ書きに見られる当為法の文。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の -a をとる。当為法の -és- が強勢を奪うので、語根 tául- の ´ は消える。軽性の子音語幹の対格は -an になる。
toríro þúumo, mé hál þelán!
読み:トリーロ スーモ、メー ハール セラーン!
| tor-ír-o | þúumo, | mé | hál | þel-án! |
| 来る-<もし〜なら>-<(重いものが)> | 濃霧<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 呼ぶ<命令法><あなたが> | 名前-<対格> |
「濃霧が来たら、名を呼ぶな。」
霧の中で名前を大声で呼ぶと下の国に聞かれる、という禁忌を戒める言い方。条件の節は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけで作る。þúumo は重性なので -o をとる。禁止は mé+命令法。þúumo は、ふつうの霧 nébro より濃く、隣の人も見えない霧を言う。
mé gélir du véinor, ésa gúrnal téndoi.
読み:メー ゲーリル ドゥ ヴェーノル、エーサ グルナル テンドイ。
| mé | gél-ir | du | véinor, | és-a | gúrnal | ténd-oi. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 行く-<皆で〜せよ> | 下手 | 湖<対格> | いる-<(軽いものが)> | 熊<主格> | あそこ-<与格> |
「「湖へ下りていくな。あそこには熊がいる。」」
森の村の年長者が若者たちに言う注意。禁止は「mé+命令法」で言い、相手が複数なので命令法の -ir を使う。後ろの節は存在文で、主語の gúrnal が軽性・単数なので ésa になる。
mé tául méldo, gruunéla zímbra.
読み:メー タウル メルド、グルーネーラ ジンブラ。
| mé | tául | méldo, | gruun-él-a | zímbra |
| <禁止・願いの打ち消し> | 取る<命令法><あなたが> | 蜜<対格> | 怒る-<〜だろう>-<(軽いものが)> | 蜜蜂<主格> |
「蜜を取るな、蜂が怒るぞ。」
子どもや仲間に向けたくだけた禁止。禁止は「mé+命令法」で言う。後半は推量法で「〜だろう」を表す。推量法の -él- に強勢が移るので、語根の長母音 uu の ´ は消える。
tilésa lisáis flaindélei, mé tilésa gandér.
読み:ティレーサ リサイス フラインデーレイ、メー ティレーサ ガンデール。
| til-és-a | lis-áis | flaindél-ei, | mé | til-és-a | gandér. |
| 彫る-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 字-<〜たちを> | 版の木-<与格>, | <禁止・願いの打ち消し> | 彫る-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 硬木<対格> |
「字は版の木に彫るべし。硬木は彫らぬこと。」
彫り師の作法を説く教えの言葉で、法典や碑文と同じ当為法を使う。主語を言わないので「人は〜すべし」の意味になり、動詞は軽性の -a をとる。flaindél は軽性の子音語幹なので与格は -ei。後半の gandér は重性なので、主格と対格が同じ形のまま目的語になる。言葉は上へ昇るもので、版の木はそれを載せる木、硬木は下へ行く木なので彫らない、という考えを述べた文。
mé kél árnelan sé, ésa bóula fóndel.
読み:メー ケール アルネラン セー、エーサ ボーラ フォンデル。
| mé | kél | árnel-an | sé, | és-a | bóula | fóndel. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 伐る<命令法><あなたが> | 木-<対格> | この<軽性>, | いる-<(軽いものが)> | どんぐりの木<主格> | 古い |
「この木を伐るな。このどんぐりの木は由緒ある古木だ。」
森の村で、年長者が若い樵をたしなめるときの言い方。禁止は mé+命令法(むき出しの語幹 kél)で言うので、下向きの話し方になる。後半では、生えているどんぐりの木が軽性なので、繋辞は ésa になる。fóndel は「古くて由緒ある」というほめる響きの語。
mé mán sóumbo só!
読み:メー マーン ソーンボ ソー!
| mé | mán | sóumbo | só! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 食べる<命令法><あなたが> | きのこ<対格> | この<重性> |
「このきのこを食べるな!」
禁止は「mé+命令法」で言う。2人称単数の命令法は語尾のない語幹 mán だけの形。sóumbo は重性o語幹なので対格も sóumbo のままで、指示詞も重性の só になる。きのこの見分けは年長者の知恵で、子どもに向けた下向きの禁止として、日常でよく使う言い方。
mé níl ílmo múr!
読み:メー ニール イルモ ムール!
| mé | níl | ílmo | múr! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 飲む<命令法><あなたが> | 水<対格> | 濁った |
「濁った水を飲むな!」
禁止は「mé+命令法」。形容詞 múr は名詞の後ろに置き、重性・単数・対格の ílmo に一致するが、語尾はつかない。濁った水は重く病を運ぶものとされ、とくに霧期によく言われる戒め。
mé hél an ólmarei!
読み:メー ヘール アン オルマレイ!
| mé | hél | an | ólmar-ei! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 座る<命令法><あなたが> | 上手 | 年長者-<与格> |
「年長者より上手に座るな。」
子どもや目下の者をたしなめるときの禁止の言い方で、mé+命令法の形。an+与格は「〜の上手で」を表す。目上の人より高いところ、北側の座に座るのは無礼とされる。
na ráinim ré éso sóumbo. mé mán ó!
読み:ナ ライニン レー エーソ ソーンボ。メー マーン オー!
| na | ráin-im | ré | és-o | sóumbo. | mé | mán | ó! |
| <〜ない> | 知る-<私が> | <〜と(節)> | いる-<(重いものが)> | 食べられるきのこ<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 食べる<命令法><あなたが> | <3人称単数・重性> |
「食べられるきのこかどうか、わからない。食べるな!」
年長者が目下の者に注意するときの言い方。ré で「〜と」の節を導く。禁止は「mé+命令法」で言い、mán- の2人称単数命令形はむき出しの語幹 mán。重性の代名詞 ó は主格と対格が同じ形。
gloumiþéla náuvra tásan; mé mán!
読み:グロウミセーラ ナウヴラ ターサン、メー マーン!
| gloum-iþ-él-a | náuvra | tás-an; | mé | mán! |
| 惑う-<〜させる>-<〜だろう>-<(軽いものが)> | 酔いきのこ<主格> | <あなた>-<対格> | <禁止・願いの打ち消し> | 食べる<命令法><あなたが> |
「酔いきのこはお前を惑わすぞ。食べるな!」
目下の者や子どもへの注意。gloum-「惑う」に使役の -íþ- がついて「惑わせる」になる。結果の予告は推量法で言い、強勢は -él- に移る。náuvra は軽性なので、動詞は -a をとる。きのこのうちで náuvra だけが軽性なのは、食べた者を浮わつかせるものと見なされるからだと説明されることがある。
mé þór an aulisárei!
読み:メー ソール アン アウリサーレイ!
| mé | þór | an | au-lis-ár-ei! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 立つ<命令法><あなたが> | 上手 | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<与格> |
「書記の方より高い所に立ってはならぬ。」
禁止は mé+命令法で言う。an+与格は文字どおりには「〜の上手に」で、ここでは目上の人より高い位置を指す。目上の人より高い所に立つのは禁忌であり、子どもや目下の者へのしつけの言葉としてよく使われる。
léimsan aursárai sárvo ré mé duliþésa fáron du dálor.
読み:レーンサン アウルサーライ サルヴォ レー メー ドゥリセーサ ファーロン ドゥ ダーロル。
| léims-an | aursár-ai | sárvo | ré | mé | dul-iþ-és-a | fáron | du | dálor. |
| 据える<〜し終えた>-<彼らが> | 祖先-<〜たちが> | 禁忌<対格> | <〜と(節)> | <禁止・願いの打ち消し> | 下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 荷<対格> | 下手 | 下の国<対格> |
「祖先たちは、下の国へ荷を落としてはならぬという禁忌を定めた。」
ré の後ろの節は当為法を保ち、mé で否定している。主語を言わない当為法は「人は〜すべし」の意味で、軽性の -a をとる。強勢は -és- に移る。崖から物を落としてはいけない、という禁忌のいわれを語る文。
mé þraunésa póin es orénos.
読み:メー スラウネーサ ポイン エス オレーノス。
| mé | þraun-és-a | póin | es | orén-os. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 投げ捨てる-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 何か<対格> | から | 縁-<属格> |
「縁から何ものも投げ捨てぬこと。」
碑文や決まりごとの文体。当為法 -és- で「〜すべし」、mé で否定して禁止になる。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の形をとる。崖から物を投げ落とすのは禁忌なので、崖について þráun- を使うと、この「投げ捨てる」の意味になる。
bruumíre kelár, mé grúun.
読み:ブルーミーレ ケラール、メー グルーン。
| bruum-ír-e | kel-ár, | mé | grúun. |
| 転ぶ-<もし〜なら>-<(軽いものが)> | 伐る-<〜する人・主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 怒る<命令法><あなたが> |
「樵が転んでも、怒るな。」
凍った坂道や森の道での日常の文。条件の節は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけで作る。仮定法の3人称単数・軽性は -e で終わる(bruumíre)。人は軽性なので、樵には軽性の形を使う。禁止は「mé+命令法」で、grúun はむき出しの語幹。
mé þráun gandér, kelár.
読み:メー スラウン ガンデール、ケラール。
| mé | þráun | gandér, | kel-ár. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 投げる<命令法><あなたが> | 硬木<対格> | 伐る-<〜する人> |
「硬木を投げるな、樵よ。」
下向きの禁止。「mé+命令法」で言い、命令法の2人称単数はむき出しの語幹 þráun になる。呼びかけは呼格を使わず、役職を文の終わりに読点で区切って添える。硬木は儀式を経て扱う木なので、乱暴に扱うことが戒められる。
mé dulénde þelá némores!
読み:メー ドゥレンデ セラー ネーモレス!
| mé | dul-énd-e | þelá | némor-es! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 下る-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 名声<主格> | <我々>-<属格> |
「我が家の名が落ちることのないように。」
家の年長者が若い者を戒めるときの言い方。「名が下る」は評判が落ちるという意味で、「名が昇る」の反対にあたる。願望法の文なので mé で否定する。強勢は願望法の -énd- に移る。
mé grém dáloros!
読み:メー グレーン ダーロロス!
| mé | grém | dálor-os! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 恐れる<命令法><あなたが> | 下の国-<属格> |
「下の国をこわがるな。」
禁止は mé+命令法で言う。命令法の2人称単数は語幹そのまま。下向きの話し方で、崖道の年長者が若い者を励ますときなどに使う。
mé vír lúdro!
読み:メー ヴィール ルードロ!
| mé | vír | lúdro! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 言う<命令法><あなたが> | 嘘<対格> |
「嘘を言うな。」
親が子どもを叱るときなどに使う、ごく日常的な禁止の言い方。「mé+命令法」で作る。lúdro は重性o語幹なので、主格と対格が同じ形になる。嘘は「下へ落ちる言葉」とされ、炉の前ではとくに嫌われる。
lúin grúuno duléumo, mé gélir du orén.
読み:ルーイン グルーノ ドゥレウモ、メー ゲーリル ドゥ オレーン。
| lúin | grúun-o | duléumo, | mé | gél-ir | du | orén. |
| とき | うなる-<(重いものが)> | 下の風<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 行く-<皆で〜せよ> | 下手 | 縁<対格> |
「下の風がうなるときは、皆、縁のほうへ行くな。」
崖の上の番人や運び人の間での戒め。duléumo「下の風」は重性o語幹なので、動詞は重性の -o をとる。軽性の léuma「風」なら grúuna になる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。禁止は「mé+命令法・複数」。
lúin éso nébro, mé þondésa þondán.
読み:ルーイン エーソ ネーブロ、メー ソンデーサ ソンダーン。
| lúin | és-o | nébro, | mé | þond-és-a | þond-án. |
| とき | いる-<(重いものが)> | 霧<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 誓う-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 誓い-<対格> |
「霧が出ているときには、誓いを立てぬこと。」
言い伝えや法典に出てくる禁止の言い方。霧の夜の誓いは祖先に届かず無効だ、という信仰を表している。前半は lúin「〜とき」の節で、主語の霧 nébro が重性なので、繋辞は és-o になる。後半は当為法の文で、mé で否定する。主語を言わないので「人は」という一般の主語になり、軽性の -a をとる。強勢は -és- に移るので、語根の ´ は消える。目的語の þondá「誓い」は、þónd- に -á がついた派生名詞。
mé lisésa lúdro sáindarei.
読み:メー リセーサ ルードロ サインダレイ。
| mé | lis-és-a | lúdro | sáindar-ei. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 書く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 偽り<対格> | 証文-<与格> |
「証文に偽りを書かぬこと。」
書の司が定めた、証文の書き方の決まりにある一句。書かれた言葉が重んじられる王国では、証文のごまかしは重い罪になる。場所「〜に」は前置詞なしの与格で言う。sáindar「証文」は軽性の子音語幹なので、与格は -ei になる。
mé mán sóumbo pír só!
読み:メー マーン ソーンボ ピール ソー!
| mé | mán | sóumbo | pír | só! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 食べる<命令法><あなたが> | きのこ<対格> | 小さい | この<重性> |
「この小さなきのこを食べるな。」
雨期のきのこ採りで、年長者が若い者に注意する言い方。名詞句は「名詞–形容詞–指示詞」の順で、重性の指示詞 só が名詞句の終わりを示す。
mé vír viráis gráisais!
読み:メー ヴィール ヴィライス グライサイス!
| mé | vír | vir-áis | gráis-ais! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 言う<命令法><あなたが> | 言葉-<〜たちを> | 悪い-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格> |
「悪い言葉を口にするな。」
炉の前で粗野な言葉を使ってはいけないという禁忌を、親が子に言い聞かせるときの言い方。禁止は mé+命令法で表す。形容詞は軽性の virá に一致して、複数対格の -ais をとる。
mé véil grúndo! torélo nébro.
読み:メー ヴェール グルンド!トレーロ ネーブロ。
| mé | véil | grúndo! | tor-él-o | nébro. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 忘れる<命令法><あなたが> | 掛け<対格> | 来る-<〜だろう>-<(重いものが)> | 霧<主格> |
「掛けを忘れるなよ。もうすぐ霧が来るぞ。」
縁の市で商人どうしが交わす念押し。禁止は「mé+命令法」で、命令法2単はむき出しの語幹 véil。grúndo は重性o語幹なので、対格も主格と同じ形。後半は推量法で、主語の霧 nébro が重性なので語尾は -o。霧が来る前に精算する、という市の習わしを踏まえている。
éso nébro. lúin hála páin þelán táses, mé glén!
読み:エーソ ネーブロ。ルーイン ハーラ パイン セラーン ターセス、メー グレーン!
| és-o | nébro. | lúin | hál-a | páin | þel-án | tás-es, | mé | glén! |
| いる-<(重いものが)> | 霧<主格> | とき | 呼ぶ-<(軽いものが)> | 誰か<主格> | 名前-<対格> | <あなた>-<属格> | <禁止・願いの打ち消し> | 答える<命令法><あなたが> |
「霧が出ている。誰かがお前の名を呼んでも、答えてはいけない。」
霧の禁忌について、親が子に言い聞かせる言葉。「霧がある」は繋辞 és- で言い、霧 nébro が重性なので語尾は -o。禁止は「mé+命令法」。
mé kráil kumbór fóum, endríña!
読み:メー クライル クンボール フォーン、エンドリーニャ!
| mé | kráil | kumbór | fóum, | endríña! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 手に持つ<命令法><あなたが> | 青銅<対格> | 暖かい | 子ども |
「熱い青銅を手に持つな、子どもよ!」
火や鋳たばかりの金属について言うときは、fóum は「熱い」の意味になる。禁止は mé+命令法で表す。呼びかけは呼格を使わず、文の終わりに読点で区切って添える。
mé ráum du dún dréum!
読み:メー ラウン ドゥ ドゥーン ドレウン!
| mé | ráum | du | dún | dréum! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 歩く<命令法><あなたが> | 下手 | 丘<対格> | 暗い |
「暗い丘を下りていくな!」
禁止は「mé+命令法」で言う。du+対格で「下手へ」。丘 dún は重性なので、対格も主格と同じ形になり、形容詞にも語尾がつかない。
mé níl ílmo múr!
読み:メー ニール イルモ ムール!
| mé | níl | ílmo | múr! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 飲む<命令法><あなたが> | 水<対格> | 濁った |
「濁った水を飲むな。」
親が子どもに言う日常の禁止。mé+命令法で禁止を表す。ílmo「水」は重性o語幹なので、対格も ílmo のまま。形容詞 múr も重性・単数・対格で一致し、語尾はつかない。
mé lisésa lisáis sáindarei húmelei.
読み:メー リセーサ リサイス サインダレイ フーメレイ。
| mé | lis-és-a | lis-áis | sáindar-ei | húmel-ei. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 書く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 字-<〜たちを> | 証文-<与格> | 湿った-<軽性・与格> |
「湿った証文に字を書かぬこと。」
書記の心得として書かれる決まり。当為法の文を mé で否定している。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の形をとる。sáindar「証文」は軽性なので、形容詞も軽性・与格の húmelei で一致する。霧で湿った紙に書くと墨がにじんで下へ流れるとされ、霧期には大事な書きものを避ける。
mé vír virán rúgalan ólmarei!
読み:メー ヴィール ヴィラーン ルーガラン オルマレイ!
| mé | vír | vir-án | rúgal-an | ólmar-ei! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 言う<命令法><あなたが> | 言葉-<対格> | 粗野な-<軽性・対格> | 年長者-<与格> |
「年長者に粗野な言葉を口にするな。」
家の戒め。禁止は「mé+命令法」で言う。rúgal を言葉に使うと、品のない、粗野な言い方を指す。炉の前で下品な言葉を言ってはならない、という禁忌とも結びついた言い方。
glüníro fúnel, mé duliþésa gandér.
読み:グリュニーロ フーネル、メー ドゥリセーサ ガンデール。
| glün-ír-o | fúnel, | mé | dul-iþ-és-a | gandér. |
| 凍る-<もし〜なら>-<(重いものが)> | 綱<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 硬木<対格> |
「綱が凍ったなら、硬木を下ろさぬこと。」
降ろし場の決まりを書いた碑文の文体。条件の節は接続詞なしに、動詞を仮定法にするだけで作る。綱は重性なので仮定法の語尾は -íro。後半は当為法の禁止で、主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の形をとる。凍りの頃に吊り下ろしが止まるのは、この決まりによる。
lúin tóro nébro, mé leimésa símbo sáindarei.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー レイメーサ シンボ サインダレイ。
| lúin | tór-o | nébro, | mé | leim-és-a | símbo | sáindar-ei. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 置く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 印<対格> | 証文-<与格> |
「霧が来たら、証文に印を押さぬこと。」
法典や碑文に見られる当為法の禁止。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の -a をとる。強勢は -és- に移り、語根の ´ は消える。前半は lúin「〜とき」の節で、霧 nébro は重性なので動詞は -o をとる。霧の中で結んだ約束は「霧の約束」として重んじられない、という禁忌を表している。
mé véil gleinó, endríña.
読み:メー ヴェール グレイノー、エンドリーニャ。
| mé | véil | gleinó, | endríña. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 忘れる<命令法><あなたが> | 護符<対格> | 子ども |
「護符を忘れるんじゃないよ、坊や。」
出かける子に親が言う、日常の禁止の言い方。禁止は「mé+命令法」で表す。日常では呼格を使わないので、呼びかけの語は読点で区切って文末に添える。
mé vrinésa gleinó.
読み:メー ヴリネーサ グレイノー。
| mé | vrin-és-a | gleinó. |
| <禁止・願いの打ち消し> | またぐ-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 境石<対格> |
「境石をまたがぬこと。」
境の札や碑に書かれる決まりの文体。当為法で主語を言わないときは一般の人が主語になり、軽性の形をとる。当為法の文は mé で否定する。
mé rimbéndes, endríña! rímban ilanárai.
読み:メー リンベンデス、エンドリーニャ!リンバン イラナーライ。
| mé | rimb-énd-es, | endríña! | rímb-an | ilanár-ai. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 数える-<〜しますように>-<あなたが> | 子ども | 数える-<彼らが> | 星読み-<〜たちが> |
「数えてはいけませんよ。数えるのは星読みたちです。」
星を数えようとする子を、親がたしなめるときの言い方。命令法の代わりに「mé+願望法2人称」を使った、やわらかい禁止になっている。強勢は願望法の -énd- に移る。呼びかけの endríña は読点で区切る。後ろの文は ilanárai が主語で、「数えてよいのは星読みたちだけだ」という対比を表す。何を数えるかは言わなくても文脈でわかる。
lúin tóro nébro, mé virésa éndran. éso sárvo.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー ヴィレーサ エンドラン。エーソ サルヴォ。
| lúin | tór-o | nébro, | mé | vir-és-a | éndr-an. | és-o | sárvo. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 言う-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 人-<対格> | いる-<(重いものが)> | 禁忌<主格> |
「霧が来たら、人の名を呼ばぬこと。これは禁忌である。」
季節の言い習わし。霧の中で名前を呼ぶと、下の国にその名前を聞かれるとされる。霧 nébro は重性なので、動詞は -o をとる。当為法は mé で否定し、主語を言わないときは一般の人が主語になるので、軽性の形をとる。vír-「言う」は人の対格をとると「名を呼ぶ」の意味になる。最後の文は、存在の és- と重性の sárvo で「禁忌である」と言う。
mé hél ánorei!
読み:メー ヘール アーノレイ!
| mé | hél | ánor-ei! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 座る<命令法><あなたが> | 上座-<与格> |
「上座に座ってはいけない。」
家の中で年長者が子どもをたしなめる禁止。「mé+命令法」の形。炉の北側の一段高い座は、家の主と年長者の場所とされる。
mé duliþésa ólmaran du dúror.
読み:メー ドゥリセーサ オルマラン ドゥ ドゥーロル。
| mé | dul-iþ-és-a | ólmar-an | du | dúror. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 年長者-<対格> | 下手 | 下座<対格> |
「年長者を下座へ下げてはならない。」
作法の書に見られる当為法の文。当為法は mé で否定する。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の -a をとる。強勢は -és- に移る。
lúin éso nébro trúin, mé hál þelán!
読み:ルーイン エーソ ネーブロ トルーイン、メー ハール セラーン!
| lúin | és-o | nébro | trúin, | mé | hál | þel-án! |
| とき | いる-<(重いものが)> | 霧<主格> | 近い | <禁止・願いの打ち消し> | 呼ぶ<命令法><あなたが> | 名前-<対格> |
「霧が近いときは、名前を呼ぶな。」
親が子に言い聞かせる、禁忌の言い方。霧の中で名を呼ぶと下の国に聞かれる、という信仰による。nébro「霧」は重性なので、繋辞は éiso になる。禁止は「mé+命令法」で言う。
lúin éso nebrálvo, mé lisésa sáindaran.
読み:ルーイン エーソ ネブラルヴォ、メー リセーサ サインダラン。
| lúin | és-o | nebrálvo, | mé | lis-és-a | sáindar-an |
| とき | いる-<(重いものが)> | 霧期<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 書く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 証文-<対格> |
「霧期のあいだは、証文を書かぬこと。」
市の決まりや法典の文体。nebrálvo は霧と同じく重性o語幹なので、「霧期である間」の és- は重性の -o(éso)をとる。主節は当為法なので mé で否定する。主語を言わないので「人は」という一般の主語になり、軽性の形 lisésa をとる。
mé duliþésa gandér glünlúinei.
読み:メー ドゥリセーサ ガンデール グリュンルーイネイ。
| mé | dul-iþ-és-a | gandér | glünlúin-ei. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 硬木<対格> | 凍りの頃-<与格> |
「凍りの頃には、硬木を下ろさぬこと。」
降ろし場の決まりを述べる、碑文や触れ書きの文体。当為法なので mé で否定し、主語を言わずに一般の人を主語にしている(軽性の形)。凍りの頃は綱が凍って危ないので、吊り下ろしが止まる。
nagróm. mé grém, endríña.
読み:ナグローン。メー グレーン、エンドリーニャ。
| nagróm. | mé | grém, | endríña. |
| 気にするな | <禁止・願いの打ち消し> | 恐れる<命令法><あなたが> | 子ども |
「気にするな。怖がらなくていい、坊や。」
器を割った子どもなどをなだめる言い方。禁止は mé+命令法で言い、命令法の2人称単数は、語幹をそのまま使う。目下の者への下向きの話し方である。
hóu! mé hál þelán némes!
読み:ホー!メー ハール セラーン ネーメス!
| hóu! | mé | hál | þel-án | ném-es! |
| おい | <禁止・願いの打ち消し> | 呼ぶ<命令法><あなたが> | 名前-<対格> | <私>-<属格> |
「おい!俺の名を呼ぶな!」
霧の中で自分の名を呼ばれたときに、たしなめる言い方。禁止は「mé+命令法」。þelá は語尾に強勢のある軽性a語幹なので、対格は þelán になる。霧の中では hóu や té「そこの方」で呼びかけるのが決まりなので、hóu がそのまま禁忌を守った呼びかけになっている。
na ésa fírna dunémes séuril, mé augruunénde aurél.
読み:ナ エーサ フィルナ ドゥネーメス セウリル、メー アウグルーネンデ アウレール。
| na | és-a | fírna | duném-es | séuril, | mé | au-gruun-énd-e | aurél. |
| <〜ない> | いる-<(軽いものが)> | 書きぶり<主格> | 手前-<属格> | 美しい | <禁止・願いの打ち消し> | <お〜になる・御〜>-怒る-<〜しますように>-<(軽いものが)> | あの方 |
「手前の書きぶりは拙うございますが、どうかお気を悪くなさいませぬよう。」
目上の人へ送る手紙の結びの決まり文句。前半では自分の書きぶりをへりくだる。後半は上向きの話し方なので2人称を使わず、相手を aurél「あの方」と3人称で言い、動詞に尊敬の au- をつける。禁止の mé は願望法と組み、強勢は願望法の -énd- に移る。
mé gelésa naþrenár an kéumo.
読み:メー ゲレーサ ナスレナール アン ケウモ。
| mé | gel-és-a | naþrenár | an | kéumo. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 行く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 段の外の者<主格> | 上手 | 境の石<対格> |
「段の外の者は、境の石より上手へ行かぬこと。」
社の境などに据えた石の決まりを、当為法で記した文。当為法の -és- は強勢をもつので、語根の強勢が移って gelésa になる。an+対格で「上手へ」を表す。重性の kéumo は、対格も主格と同じ形。
mé tíl gandér!
読み:メー ティール ガンデール!
| mé | tíl | gandér! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 彫る<命令法><あなたが> | 硬木<対格> |
「硬木を彫るな。」
硬木に文字を彫ることを禁じる言い方で、年長者が若い者を戒めるときに使う。禁止は「mé+命令法」で言う。tíl- は語末に削られる子音のつながりがないので、命令形も tíl のまま。重性名詞 gandér は、主格と対格が同じ形になる。
mé veilésa kloimár krévan fírnes.
読み:メー ヴェイレーサ クロイマール クレーヴァン フィルネス。
| mé | veil-és-a | kloimár | kréva-n | fírn-es. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 忘れる-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 弟子<主格> | 練習-<対格> | 筆-<属格> |
「弟子は筆の練習を怠ってはならない。」
学び舎の心得書きの文体。当為法の文なので、否定には mé を使う。当為法の -és- が強勢をとるため、語根 véil- の強勢は消えて veilésa になる。何の練習かは、属格 fírnes を後ろに置いて krévan fírnes「筆の練習を」と示す。véil-「忘れる」をこのように使うと「おろそかにする」の意味になる。
lúin tóra saréna mélnes, mé véil virán!
読み:ルーイン トーラ サレーナ メルネス、メー ヴェール ヴィラーン!
| lúin | tór-a | saréna | méln-es, | mé | véil | vir-án! |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 本番<主格> | 詩-<属格> | <禁止・願いの打ち消し> | 忘れる<命令法><あなたが> | 言葉-<対格> |
「詩合わせで正式の詠みの番が来たら、句を忘れるなよ。」
詩合わせの前に、目上の者が目下の者に言う励ましの言葉。saréna mélnes「詩の本番」は、勝ち負けの判定にかかる正式の詠みを指し、その前の下詠みと区別する。lúin 節では saréna が主語になり、軽性なので動詞は -a で受ける。禁止は mé +命令法の言い方で、2人称単数なので下向きの話し方になる。
mé þráun fáron es orénos, murár!
読み:メー スラウン ファーロン エス オレーノス、ムラール!
| mé | þráun | fáron | es | orén-os, | mur-ár! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 投げる<命令法><あなたが> | 荷<対格> | から | 縁-<属格> | 濁った-<〜する人> |
「縁から荷を投げるな、このぼんくら!」
崖の上の降ろし場や崖道で、年長の者が目下の者をどなりつけるときの言い方。禁止は「mé+命令法」で言い、命令法の2人称単数は語幹のまま(þráun)。murár は呼びかけなので、文の終わりに読点で区切って主格のまま添える。崖から物を投げ落とすのは禁忌なので、ここではただの不注意ではなく、「下の国を呼び寄せかねない愚かさ」をとがめる響きがある。
mé níl dóulin muró, murár!
読み:メー ニール ドーリン ムロー、ムラール!
| mé | níl | dóulin | muró, | mur-ár! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 飲む<命令法><あなたが> | もう | 濁り酒<対格> | 濁った-<〜する人> |
「もう濁り酒は飲むな、この酔っぱらいめ!」
縁や崖道の炉ばたで、家の者が酔った身内をたしなめる言い方。相の副詞 dóulin「もう」は動詞のすぐ後ろに置き、否定と組んで「もう〜しない」の意味になる。muró と murár を並べた語呂合わせが面白がられ、決まり文句のようにも使われる。都の改まった言葉では、この当てこすりの使い方はしない。
mé þraunésa dulilmó es orénos.
読み:メー スラウネーサ ドゥリルモー エス オレーノス。
| mé | þraun-és-a | dulilmó | es | orén-os. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 投げる-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 下汲み桶<対格> | から | 縁-GEN. |
「縁から桶を落とさぬこと。」
崖道の碑文・禁忌の文。当為法は主語を言わないので一般の「人」(軽性)が主語になり、動詞は軽性の -a。mé(働きかけの否定)で当為法を否定。重性の目的語は主格・対格が同じ形(dulilmó)。es+属格で「〜から」。度量衡の碑の「縁から荷を落とさぬこと」と同じ構造。
mé krúel!
読み:メー クルーエル!
| mé | krúel! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 動く<命令法><あなたが> |
「動くな!」
崖縁で用いる定型命令。命令法の否定では mé を動詞の前に置く。安全上の合図として「今の位置から動かさないこと」を命じる。
mé vróel, faronár!
読み:メー ヴローエル、ファロナール!
| mé | vróel, | faronár! |
| <禁止・願いの打ち消し> | ずれる<命令法><あなたが> | 運び人<主格> |
「運び人よ、今の位置から体をずらすな。」
命令法2単は裸の語幹。句末の faronár は呼称。vróel! は「体をずらすな」の意味で、崖道や降ろし場の安全語として使う。
mé gromér!
読み:メー グロメール!
| mé | gromér! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 体を動かす<命令法><あなたが> |
「体を動かすな。」
命令法 gromér に禁止の mé を添えた安全指示。崖道や綱場で、体勢を崩すことを禁じる定型として使う。命令法の単独形 gromér! も警告として働く。
hóu, mé þréun.
読み:ホー、メー スレウン。
| hóu, | mé | þréun |
| おい | <禁止・願いの打ち消し> | よろける<命令法><あなたが> |
「おい、よろけるな。」
くだけた警告。禁止は mé+命令法で、命令法の2単は語幹のみ。不随意の動作を禁じる物言いなので、目上や改まった場では避けられる。
lúin þrílo már, mé vandésa fáron.
読み:ルーイン スリーロ マール、メー ヴァンデーサ ファーロン。
| lúin | þríl-o | már, | mé | vand-és-a | fáron. |
| とき | 震える-<(重いものが)> | 手<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 量る-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 荷<対格> |
「手が震えるときは、荷を量ってはならない。」
帳場や作法書に見る規則。時節 lúin 節は主節の前に置ける。手のみが一時的に震える(意味2)。主節は主語を言わない当為法なので軽性形 vandésa。
mé marlín þróvo
読み:メー マルリーン スローヴォ
| mé | marlín | þróvo |
| <禁止・願いの打ち消し> | 触る<命令法><あなたが> | 熾火<対格> |
「熾火に触れるな。」
くだけた禁止。否定の mé +命令法のむき出し語幹。重性名詞は主格と対格が同形なので、目的語も þróvo のまま。
mé bresdulésa an aldáran.
読み:メー ブレスドゥレーサ アン アルダーラン。
| mé | bresdul-és-a | an | aldár-an. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 胸を下げる-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 上手 | 座-<対格> |
「高き座へ向かって胸を下げてはならない。」
礼法・書物の定型。主語を置かず、当為法で一般の行いを禁じる。否定に mé を使う。an aldár-an は方向の前置詞句で、aldár「座」に対格 -an がついた形。動詞 bresdul-「胸を下げる」を使うことで、単に近づくのではなく、高座に無遠慮に寄るのを戒める表現になる。
mé vól ílmo du þúlno!
読み:メー ヴォール イルモ ドゥ スルノ!
| mé | vól | ílmo | du | þúlno |
| <禁止・願いの打ち消し> | 注ぐ<命令法><あなたが> | 水<対格> | 下手 | 床<対格> |
「床へ水を注ぐな。」
家屋や倉でよく使われる禁令。mé は命令法を打ち消す。vól は語根のみで2人称単数の命令法を表す。注ぎ向かう先は du+対格で「下手へ」を表し、重性o語幹 þúlno の対格単数は主格と同形 þúlno となる。
mé þrákir un aurándoi!
読み:メー スラーキル ウン アウランドイ!
| mé | þrak-ir | un | auránd-oi! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 舌打ちする-<皆で〜せよ> | 内に | 社-<与格> |
「社の中では、舌打ちをしてはならない。」
祀りや社の場での禁止表現。命令法の2複語尾 -ir を用いて、複数人に発された制約を示す。無言でも尖った音は「沈む」ものとして嫌われ、改まった詞や朗唱の間では避ける。
mé snúm!
読み:メー スヌーン!
| mé | snúm! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 鼻を鳴らす<命令法><あなたが> |
「鼻を鳴らすな。」
禁止は mé + 命令法。命令法の 2 人称単数はむき出しの語幹で、語根末の m は語末に立つ。
mé marpúl sáko!
読み:メー マルプール サーコ!
| mé | marpúl | sáko! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 払いのける<命令法><あなたが> | 塩<対格> |
「塩を払い落とすな。」
命令法を打ち消す禁止表現。市では塩を粗末に払い捨てないよう戒める定型として使う。
mé þrús!
読み:メー スルース!
| mé | þrús! |
| <禁止・願いの打ち消し> | くすくす笑う<命令法><あなたが> |
「くすくす笑うな!」
目下の者への禁止。否定語 mé+命令法2単で、命令法の2単は接尾辞をもたないむき出しの語幹 þrús となる。主語は語尾から読めるため代名詞は不要だが、tás を置くと「お前が」という強調になる。改まった場面では笑い声そのものが「息が沈む」行為として避けられるため、この動詞とその禁止はくだけた場面に向く。
mé dulilán ilánan!
読み:メー ドゥリラーン イラーナン!
| mé | dulilán | ilán-an! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 消す<命令法><あなたが> | 灯-<対格> |
「灯を消すな。」
親しい相手への強い禁止。mé に命令法単数のむき出しの語幹を続ける。禁止語 mé は強勢をもつ。
mé snél senorén, endríña!
読み:メー スネール セノレーン、エンドリーニャ!
| mé | snél | senorén, | endríña! |
| <禁止・願いの打ち消し> | しかめる<命令法><あなたが> | 眉<対格> | 子<主格> |
「子どもよ、眉をしかめるな。」
くだけた日常の禁止の言葉。mé に命令法 2 単の裸の語幹 snél を続ける。呼びかけの endríña は文末の語句として添える。重性子音語幹の単数対格は主格と同形で、格語尾をつけない。
mé trún du klivó, endríña!
読み:メー トルーン ドゥ クリヴォー、エンドリーニャ!
| mé | trún | du | klivó, | endríña! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 転がる<命令法><あなたが> | 下手 | 斜面<対格> | 子<主格> |
「斜面を転げ落ちるな、子ども!」
子どもへの禁止。命令法の 2人称単数は語幹がむき出しになり trún となる。þréun- が一度つまずいて倒れるのに対し、trún- は何度も回転しながら下へ行く含みがある。縁や崖道のくだけた言葉では直説法 trúna の語末母音が落ちて trún ともなり、命令形と同形に見える。
mé selvaþréun!
読み:メー セルヴァスレウン!
| mé | selvaþréun! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 慌てる |
「慌てるな。」
日常の禁止表現。命令法の語幹のむき出し形に禁止の mé を添える。命令法をそのまま使うのは、相手が目下または同等とされる場面に限られる。
mé virsnálir társ
読み:メー ヴィルスナーリル タルス
| mé | virsnál-ir | társ |
| <禁止・願いの打ち消し> | 口をとがらせる-<皆で〜せよ> | <あなたがた・主格> |
「あなたたちは口をとがらせるな。」
複数への禁止。命令法第二人称複数は語幹に -ir をつける。na ではなく mé を使う。改まった場では、口をとがらせたままでは「言葉が昇らない」状態とされて好ましくない。
mé þandésa þám un aurándoi.
読み:メー サンデーサ サーン ウン アウランドイ。
| mé | þand-és-a | þám | un | auránd-oi. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 打つ-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 釘<対格> | 内に | 社-<与格> |
「社の中で釘を打ち込んではならない。」
法文・碑文の禁止表現。当為法に mé を添える。主語を言わない一般の主語なので動詞は軽性形 þandésa。aurándo は重性o語幹で、与格は aurándoi。祭祀・聖域の細部に関する決まりとして読める。
mé duliþésa ruunkréinul es drúnoros.
読み:メー ドゥリセーサ ルーンクレーヌル エス ドルーノロス。
| mé | dul-iþ-és-a | ruunkréin-ul | es | drúnor-os. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 背負い枠-<〜たちを> | から | 崖道-<属格> |
「崖道から背負い枠を落としてはならない。」
記録や法文で使う当為法。主語を言わない当為法は、軽性の単数形になる。背負い枠の複数直接目的語は、重性名詞の複数語尾 -ul を受けた ruunkréinul となる。ここでは、荷そのものの墜落ではなく、運び人の道具である背負い枠を崖道から落としていけないという規則として書かれている。
mé krándir fáron!
読み:メー クランディル ファーロン!
| mé | kránd-ir | fáron! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 奪う-<皆で〜せよ> | 荷<対格> |
「荷を奪うな!」
複数・目下への直接的な禁止。直説法の否定 na を使うのではなく、願い・命令・当為を打ち消す mé を動詞の前に置く。命令法の複数形は -ir。
mé þráun krailílmo es orénos.
読み:メー スラウン クライリルモ エス オレーノス。
| mé | þráun | krailílmo | es | orén-os |
| <禁止・願いの打ち消し> | 投げる<命令法><あなたが> | 水袋<対格> | から | 縁-<属格> |
「縁から水袋を投げ落とすな。」
縁の縁から物を投げ落とすことを禁じる作法・禁忌の場面。禁止は mé に命令法を続ける。動詞 þráun-「投げる」の2人称単数命令法は語幹のまま þráun。出どころは前置詞 es と属格で表す。
mé tróm berunglǘn!
読み:メー トローン ベルングリューン!
| mé | tróm | berunglǘn! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 踏む<命令法><あなたが> | 道氷<対格> |
「道氷を踏むな。」
注意書き・禁止の定型。mé+命令法で、対象に1人称/2人称の語尾はつかず、むき出しの語幹 tróm を使う。重性名詞の対格は主格と同形で、直接目的語が語順で示される。道そのものが凍った状態(意味1)の道氷への警告として使う。
mé sindér!
読み:メー シンデール!
| mé | sindér |
| <禁止・願いの打ち消し> | 泣く<命令法><あなたが> |
「泣くな。」
mé + 命令法(語幹そのまま)で、目下への直接的な禁止を表す。
mé duliþésa fáron es kráumos só
読み:メー ドゥリセーサ ファーロン エス クラウモス ソー
| mé | dul-iþ-és-a | fáron | es | kráum-os | só |
| <禁止・願いの打ち消し> | 下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 荷<対格> | から | 露岩-<属格> | この<重性> |
「この崖壁から荷を落とすな。」
碑文や市の禁令のような改まった禁止表現。当為法が無主語のまま使われている。es+属格で「〜から」。ここでの kráum は、崩れやすい崖壁・崖縁を指している。
mé slún tromándoi.
読み:メー スルーン トロマンドイ。
| mé | slún | trománd-oi. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 滑る<命令法><あなたが> | 踏み場-<与格> |
「踏み場では滑るな。」
禁止は mé+命令法。命令法2人称単数は語幹 slún のむき出し形。tromándoi は場所・注意点を示す与格。標札や法規の文のような簡潔な禁制文。
mé tróm prúumo!
読み:メー トローン プルーモ!
| mé | tróm | prúumo! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 踏む<命令法><あなたが> | 水たまり<対格> |
「水たまりを踏んではいけない。」
日常の戒め。mé に命令法単数を添えて禁止する。重性名詞の単数対格は主格と同形で、prúumo のままとなる。
mé vír frúm, vír samonþóvo.
読み:メー ヴィール フルーン、ヴィール サモンソーヴォ。
| mé | vír | frúm, | vír | samonþóvo. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 言う<命令法><あなたが> | 血<対格> | 言う<命令法><あなたが> | 皮影<対格> |
「血とは言わず、皮影と言え。」
samonþóvo の婉曲的意味「皮影」を使うよう指示する文。禁止には mé と命令法、肯定には語幹の命令形を用いる。
mé tróm dulþárno!
読み:メー トローン ドゥルサルノ!
| mé | tróm | dulþárno |
| <禁止・願いの打ち消し> | 踏む<命令法><あなたが> | 裾<対格> |
「裾を踏んではいけない!」
日常会話。母や年長者が、子どもの衣の裾を踏まないよう短く戒める場面。禁止の mé が命令法のむき出しの語幹 tróm に直接かかる。重性名詞の単数対格は主格と同形で、語尾には出ない。
mé gromvirésa aursárais.
読み:メー グロンヴィレーサ アウルサーライス。
| mé | gromvir-és-a | aursár-ais. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 人を重として呼ぶ-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 祖先-<〜たちを> |
「「祖先たちを重として呼んではならない。」」
法典・儀礼の禁止定。mé + 当為法は、主語を言わないかぎり一般の人が主語として表され、法文では「〜してはならない」と解される。語根に -és- が付くと強勢が移るので、gromvír- の語根の ´ は消える。祖先は人籍であり、これを重扱いに呼ぶことは禁じられる。
mé vír selvíñan nébroi!
読み:メー ヴィール セルヴィーニャン ネーブロイ!
| mé | vír | selvíñ-an | nébr-oi! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 言う<命令法><あなたが> | セルヴィーニャ-<対格> | 霧-<与格> |
「霧の中で、セルヴィーニャの名を呼ぶな!」
家庭の禁止表現。mé に動詞の命令法(むき出しの語幹)を続ける。vír に固有名を対格で取ると「その名を呼ぶ」意になる。nébroi は前置詞なしの与格で「霧の中で」。selvíña は指小 a 語幹として対格 -an を取り selvíñan になる。霧では名を大声で呼ばない禁忌を前提にした、親しい家族間の下向きの言い方。
mé saléim fáron sal kórvoi!
読み:メー サレーン ファーロン サル コルヴォイ!
| mé | saléim | fáron | sal | kórv-oi |
| <禁止・願いの打ち消し> | 外に据える<命令法> | 荷<対格> | 外に | 倉-<与格> |
「荷を倉の外に置くんじゃない。」
日常の禁止。禁止の mé は命令法と組む。saléim- のむき出し語幹は語末の m を残して saléim となる。sal + 与格 kórvoi で「倉の外に」。倉場や縁の市での手順を教える文として使う。
mé bíl!
読み:メー ビール!
| mé | bíl! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 割りこむ<命令法><あなたが> |
「割り込むな。」
命令法の禁止。話合いや作業列に無遠慮に割って入ろうとする者へのくだけた制止。
mé wáur kláulais aulisáres
読み:メー ワウル クラウライス アウリサーレス
| mé | wáur | klául-ais | au-lis-ár-es |
| <禁止・願いの打ち消し> | まねる<命令法> | 物真似-<〜たちを> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<属格> |
「書記の方の物真似をするな。」
高位者の真似を禁じる、やや口頭の禁制。否定禁止は mé+命令法で、命令法 2 単数は語幹 wáur。kláulais は軽性の複数対格。aulisáres は au-lisár「書記の方」の単数属格。
mé þuláur!
読み:メー スラウル!
| mé | þuláur |
| <禁止・願いの打ち消し> | 得意がる<命令法><あなたが> |
「得意がるな。」
炉ばたで若者や子どもをたしなめる禁止の定型。命令法は語幹のみ。実物の鼻を指しながら言うと、たしなめが一段強まる。
mé þulaurésa torárei
読み:メー スラウレーサ トラーレイ
| mé | þulaur-és-a | torár-ei |
| <禁止・願いの打ち消し> | 得意がる-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 客-<与格> |
「客に対して偉そうにしてはならない。」
作法書のような無主語の当為法。人は軽性なので -és-a。mé と組んで規範的な禁止を表す。torárei は態度の向かう先。当為接尾辞が強勢を取り、語幹の元の強勢は消える。
mé kún póin ói!
読み:メー クーン ポイン オイ!
| mé | kún | póin | ói! |
| <禁止・願いの打ち消し> | する<命令法><あなたが> | 何か | <3人称単数・重性・与格>! |
「それに手を出すな。」
禁止は mé+命令法。ó-i ではなく、与格代名詞 ói を語として用いる。
mé vír raumvirán té
読み:メー ヴィール ラウンヴィラーン テー
| mé | vír | raumvir-án | té |
| <禁止・願いの打ち消し> | 言う<命令法><あなたが> | 噂-<対格> | あの<軽性> |
「あの噂を言うな。」
日常の叱責・制止。他動詞 vír- の直接目的語には対格が必要で、軽性 a 語幹の単数対格は -án になる。指示詞 té は「いま話題になっている、例の」という限定を表す。
mé véil puló só!
読み:メー ヴェール プロー ソー!
| mé | véil | puló | só |
| <禁止・願いの打ち消し> | 忘れる<命令法><あなたが> | 拍子<対格> | この<重性> |
「この拍子を忘れるな。」
作業歌や刻みの場で、拍が乱れそうになった仲間へかけるくだけた指示。禁止は mé +命令法 2人称で表す。命令法の 2人称は語幹 véil をそのまま使う。puló は目的語だが、重性単数では格語尾がつかず主格と同形になる。
mé wéin brúndo!
読み:メー ウェーン ブルンド!
| mé | wéin | brúndo! |
| <禁止・願いの打ち消し> | なる<命令法><あなたが> | でくの坊<対格> |
「でくの坊になるな。」
禁止の罵倒。mé+命令法。wéin- の命令法2単は語幹 wéin のまま。補格 brúndo は対格で、「でくの坊」の意味。
mé plár filduló, ende
読み:メー プラール フィルドゥロー、エンデ
| mé | plár | filduló, | ende |
| <禁止・願いの打ち消し> | 割る<命令法> | 刻み通路<対格> | どうぞ |
「刻み通路を割らないでください。」
くだけた指示・依頼。mé+命令法で禁止を表す。plár は他動詞「割る」。filduló は目的語で対格だが、重性o語幹では対格が主格と同形。ende は市井の定型として添えられる。
mé wól un nébroi!
読み:メー ウォール ウン ネーブロイ!
| mé | wól | un | nébr-oi! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 迷う<命令法><あなたが> | 中に | 霧-<与格> |
「霧の中で迷うな。」
禁止の定型。命令法の下向き語形なので、目下の人やくだけた場で使う。
mé snál snelíño só!
読み:メー スナール スネリーニョ ソー!
| mé | snál | snelíño | só! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 閉じる<命令法><あなたが> | 蓋<対格> | この<重性> |
「この蓋を閉めるな!」
炉ばたで、木蓋をすぐ閉めないよう命じるくだけた禁止文。禁止は mé +命令法。snelíño は重性o語幹なので、指示詞は só を使う。
mé tróm fáron!
読み:メー トローン ファーロン!
| mé | tróm | fáron! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 踏む(踏みしめる)<命令法><あなたが> | 荷<対格> |
「荷を踏むな。」
荷置場や降ろし場で、年長が年下に向けて言う日常の戒め。禁止は mé を命令法の語幹 tróm に添えて作る。荷は重性子音語幹で、単数対格は主格と同形。命令法で主語に人称語尾がない文では、直後に置かれた名詞を目的語として読む。
mé kréul!
読み:メー クレウル!
| mé | kréul! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 首を振る<命令法><あなたが> |
「首を振ってはいけませんよ。」
くだけた日常の禁止。禁止は mé+命令法で、命令法2人称単数は語幹をそのまま語末に置く。身振りをやめさせる言い方。
mé ombér selmán!
読み:メー オンベール セルマーン!
| mé | ombér | selm-án! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 指さす<命令法><あなたが> | 太陽-<対格> |
「太陽を指さすな。」
太陽をじかに指さすのは粗末な振る舞いとされるため、子どもや身内に注意する際によく言う文。禁止は否定小辞 mé を動詞の前に置き、命令法の動詞を続ける。目的語の selmán は、軽性a語幹の語根 selm- に単数対格の語尾 -án を付けた形で、形態素境界は selm-án と切る。
mé kún snóimo!
読み:メー クーン スノイモ!
| mé | kún | snóimo |
| <禁止・願いの打ち消し> | する<命令法><あなたが> | 肩越し見<対格> |
「肩越しに見るな!」
禁止の法を用いた命令文。禁止小辞《mé》のあとに命令法の語幹が来る。命令法単数では語末子音のつながりが簡略化し、《kúnd-》は《kún》になる。《肩越し見》は禁止の対象となる動作。
mé tróm krúndo!
読み:メー トローン クルンド!
| mé | tróm | krúndo |
| <禁止・願いの打ち消し> | 踏む<命令法><あなたが> | 泥地<対格> |
「ぬかるみを踏むな。」
禁止の用法で、否定の mé と命令法の語幹 tróm を使う。重性の krúndo は主格単数と対格単数が同形だが、ここでは踏まれる地面としての「泥地」を示す。
人に働きかける文を否定する小辞で、禁止を表す。願望法・命令法・当為法の動詞の直前に置く。無強勢の na と違って強勢をもち、強い禁止の響きがある。碑文の mé duliþésa…「〜せぬこと」や、子どもを叱る mé vír…!「〜と言うな」など、高原でもっとも身近な禁止の形。目上の人には mé+願望法で「〜なさいませぬよう」と言う。事柄の否定には na を使う。
否定の小辞。無強勢の na と違って強勢をもつ。動詞の直前に置く。目上の人には mé+願望法で「〜なさいませぬよう」。
古高原語 *mé から
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