小説
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書く
文字を書く。
aulisénde aulisár sáindaran.
読み:アウリセンデ アウリサール サインダラン。
| au-lis-énd-e | au-lis-ár | sáindar-an |
| <お〜になる・御〜>-書く-<〜しますように>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人> | 証文-<対格> |
「書記の方に、証文をお書きいただきたく存じます。」
目上の人に頼むときは、命令法ではなく願望法を使う。願望法の後ろでは、3人称単数・軽性の語尾が -e になる。動詞にも名詞にも au- がつく。
gloiréla aulisár es orénos?
読み:グロイレーラ アウリサール エス オレーノス?
| gloir-él-a | au-lis-ár | es | orén-os |
| お越しになる-<〜だろう>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人> | から | 縁-<属格> |
「書記の方は縁からお越しになったのでしょうか。」
目上の人には問いの小辞 ké を使わず、推量法で推し量る形にする。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。強勢が -él- に移るので、語根の ´ は消える。
léisa lisár plánan.
読み:レーサ リサール プラーナン。
| léis-a | lis-ár | plán-an |
| 書く<〜し終えた>-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 帳簿-<対格> |
「書記は帳簿を書き終えた。」
完了相は、語根の母音 i を二重母音 ei に変えて作る(lís- → léis-)。時制がないので、「書き終えた」とも「書き終えている」とも訳せる。紙の帳簿 plána は軽性a語幹で、主格の -a は類推で復元された母音。
lísa lisár virán pélsei kélenoi.
読み:リーサ リサール ヴィラーン ペルセイ ケーレノイ。
| lís-a | lis-ár | vir-án | péls-ei | kél-en-oi |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 言葉-<対格> | 脂の木-<与格> | 伐る-<〜した・〜された>-<重性・与格> |
「書記は伐った脂の木(の札)に字を書く。」
pélsa「脂の木」は、名詞としては軽性の語形(与格 -ei)のまま。けれども伐られた材なので、分詞は重性の与格 -oi で一致する。荷札が重性になるのは、この規則による。
lísa lisár sáindaran senárei.
読み:リーサ リサール サインダラン セナーレイ。
| lís-a | lis-ár | sáindar-an | sen-ár-ei. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 証文-<対格> | 見る-<〜する人>-<与格> |
「書記が目付に証文を書く。」
基本の語順:動詞–主語–目的語–与格(受け手)。lisár は動詞 lís- に -ár「〜する人」がついた語、senár は sén- に -ár がついた語。
ésa lisím sélvanes gléin.
読み:エーサ リシーン セルヴァネス グレーン。
| és-a | lis-ím | sélvan-es | gléin. |
| いる-<(軽いものが)> | 書く-<〜の技・〜さ> | セルヴァン-<属格> | 清い |
「セルヴァンの書法は清い。」
「AはBだ」の文も、繋辞 és- を先頭に置く。順序は「és-–主語–述語」。主語の lisím「書法」が軽性なので、繋辞は -a、述語の形容詞 gléin も軽性・主格の形(語尾なし)になる。
dulísim sáindaran aulisárei.
読み:ドゥリーシン サインダラン アウリサーレイ。
| du-lís-im | sáindar-an | au-lis-ár-ei. |
| <〜させていただく>-書く-<私が> | 証文-<対格> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<与格> |
「書記の方に、証文を書いて差し上げます。」
謙譲の動詞(自分を下げる)と、高めた与格(相手を上げる)を一つの文に並べている。「私が・目上の人に」という上下の関係が、文法にすべて表れる。
tóra senár él te lísim sáindaran élei.
読み:トーラ セナール エール テ リーシン サインダラン エーレイ。
| tór-a | sen-ár | él | te | lís-im | sáindar-an | él-ei. |
| 来る-<(軽いものが)> | 見る-<〜する人> | <3人称単数・軽性> | <関係節> | 書く-<私が> | 証文-<対格> | <3人称単数・軽性>-<与格> |
「私が証文を書いてやる、あの目付が来る。」
与格にあたる部分は、関係節の中で代名詞 élei「その人に」で埋める(再述代名詞)。軽性の「あの」té は関係節の te の前に置けないので、代名詞 él を「あの・例の」の意味で置く。この él は名詞の格に一致する。tóra senár té, lísim sáindaran élei. と、強勢のある té の後ろで区切ると、「あの目付が来る。私はその人に証文を書く」という二つの文になる。書き言葉では te と té は同じ字だが、主節を二つ並べるときはかならず区切りの印を打つ。区切りがなければ関係節と読む。
léisa dóulin lisár plánan.
読み:レーサ ドーリン リサール プラーナン。
| léis-a | dóulin | lis-ár | plán-an. |
| 書く<〜し終えた>-<(軽いものが)> | もう | 書く-<〜する人> | 帳簿-<対格> |
「書記はもう帳簿を書き終えた。」
「もう」dóulin も動詞の直後、主語の前に置く。完了の語根と組むことが多い。
ké líses sáindaran? lísim.
読み:ケー リーセス サインダラン?リーシン。
| ké | lís-es | sáindar-an? | lís-im. |
| <〜か> | 書く-<あなたが> | 証文-<対格> | 書く-<私が> |
「「証文を書くか」「書く」」
答えの形では、問いに出た目的語の枠を空けてよい。
lísa lisár sáindaran si lúuma ausenár.
読み:リーサ リサール サインダラン シ ルーマ アウセナール。
| lís-a | lis-ár | sáindar-an | si | lúum-a | au-sen-ár. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 証文-<対格> | と | ご覧になる-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人> |
「書記が証文を書き、目付殿がご覧になる。」
si で文と文を並べる。二つめの文は、同じ目的語を受けるので目的語の枠を空けてよい(1.2節)。
léisa lisár plánan, duói dúlo fáron du orén.
読み:レーサ リサール プラーナン、ドゥオイ ドゥーロ ファーロン ドゥ オレーン。
| léis-a | lis-ár | plán-an, | duói | dúl-o | fáron | du | orén. |
| 書く<〜し終えた>-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 帳簿-<対格> | それから | 下る-<(重いものが)> | 荷<主格> | 下手 | 縁<対格> |
「書記が帳簿を書き終え、それから荷が縁へ下りていく。」
duói「それの下手で」は、出来事の順序をはっきりさせる。
ké lísa lisár sáindaran, orvél lísa fléilan?
読み:ケー リーサ リサール サインダラン、オルヴェール リーサ フレーラン?
| ké | lís-a | lis-ár | sáindar-an, | orvél | lís-a | fléil-an? |
| <〜か> | 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 証文-<対格> | または | 書く-<(軽いものが)> | 手紙-<対格> |
「書記は証文を書くのか、それとも手紙を書くのか。」
orvél「日の出側か日の入り側か」は選択。問いでは ké を一つめの文にだけ置く。
anórel, léisa lisár plánan.
読み:アノーレル、レーサ リサール プラーナン。
| anórel, | léis-a | lis-ár | plán-an. |
| 昨日 | 書く<〜し終えた>-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 帳簿-<対格> |
「昨日、書記は帳簿を書き終えた。」
時も場面の枠に置ける。文の後ろに置く言い方(léisa lisár plánan anórel)も使う。
na léisim unlóur sáindaran.
読み:ナ レーシン ウンロール サインダラン。
| na | léis-im | unlóur | sáindar-an. |
| <〜ない> | 書く<〜し終えた>-<私が> | まだ | 証文-<対格> |
「私はまだ証文を書き終えていない。」
否定+完了だけなら「書き終えなかった」。「まだ」をはっきり言うときは unlóur を添える。
na léisa unlóur lisár sáindaran.
読み:ナ レーサ ウンロール リサール サインダラン。
| na | léis-a | unlóur | lis-ár | sáindar-an. |
| <〜ない> | 書く<〜し終えた>-<(軽いものが)> | まだ | 書く-<〜する人> | 証文-<対格> |
「書記はまだ証文を書き終えていない。」
相の副詞 unlóur は動詞のすぐ後ろに置き、主語の枠・目的語の枠には数えない。
léisin sáindaran, méirim élan senárei.
読み:レーシン サインダラン、メーリン エーラン セナーレイ。
| léis-in | sáindar-an, | méir-im | él-an | sen-ár-ei. |
| 書く<〜し終えた>-<〜して・〜く> | 証文-<対格> | 与える-<私が> | <3人称単数・軽性>-<対格> | 見る-<〜する人>-<与格> |
「証文を書き終えて、それを目付に渡す。」
完了の語根+-in で「〜し終えて」。主語は後ろの動詞と同じ(私)。 副動詞の句と主節は別の文として数えるので、主節の目的語は代名詞 élan で置く。
vándin fáron, lísa lisár plánan.
読み:ヴァンディン ファーロン、リーサ リサール プラーナン。
| vánd-in | fáron, | lís-a | lis-ár | plán-an. |
| 量る-<〜して・〜く> | 荷<対格> | 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 帳簿-<対格> |
「荷を量りながら、書記は帳簿を書く。」
未完了の語根+-in で「〜しながら」。量るのも書くのも書記。
na lísim dóulin sáindarais.
読み:ナ リーシン ドーリン サインダライス。
| na | lís-im | dóulin | sáindar-ais. |
| <〜ない> | 書く-<私が> | もう | 証文-<〜たちを> |
「もう証文は書かない。」
否定+ふつうの形+dóulin で「もう〜しない」。
lísa lisár plánan, vándin fáron.
読み:リーサ リサール プラーナン、ヴァンディン ファーロン。
| lís-a | lis-ár | plán-an, | vánd-in | fáron. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 帳簿-<対格> | 量る-<〜して・〜く> | 荷<対格> |
「書記は荷を量りながら、帳簿を書く。」
未完了の -in は文の後ろに置くのが基本。読点で区切るので、枠には数えない。
na vándin fáron, lísa lisár plánan.
読み:ナ ヴァンディン ファーロン、リーサ リサール プラーナン。
| na | vánd-in | fáron, | lís-a | lis-ár | plán-an. |
| <〜ない> | 量る-<〜して・〜く> | 荷<対格> | 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 帳簿-<対格> |
「荷を量らずに、書記は帳簿を書く。」
「〜せずに」は -in の動詞の前に na を置く。量らないのも書くのも書記。
lísa lisár plánan gléinin.
読み:リーサ リサール プラーナン グレーニン。
| lís-a | lis-ár | plán-an | gléin-in. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 帳簿-<対格> | 清い-<〜して・〜く> |
「書記は帳簿を清く書く。」
形容詞+-in で副詞「〜く」。
anórel, an kórvoi, léisin sáindaran, méira lisár élan senárei.
読み:アノーレル、アン コルヴォイ、レーシン サインダラン、メーラ リサール エーラン セナーレイ。
| anórel, | an | kórv-oi, | léis-in | sáindar-an, | méir-a | lis-ár | él-an | sen-ár-ei. |
| 昨日 | 上手 | 倉-<与格> | 書く<〜し終えた>-<〜して・〜く> | 証文-<対格> | 与える-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | <3人称単数・軽性>-<対格> | 見る-<〜する人>-<与格> |
「昨日、倉の北側で、証文を書き終えて、書記はそれを目付に渡した。」
場面の枠は「時 → 場所 → -in の句」の順。それぞれ読点で区切る。「それを」は軽性の証文を受けるので élan。
fléira aulisár si tóra faronár.
読み:フレーラ アウリサール シ トーラ ファロナール。
| fléir-a | au-lis-ár | si | tór-a | faron-ár. |
| お出ましになる-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人> | と | 来る-<(軽いものが)> | 荷-<〜する人> |
「書記の方がお出ましになり、運び人も来る。」
目上の人と目下の人は、一つの主語に並べずに二つの文に分けるのが改まった言い方。
sénim plíndo lísen lisáres senáres só.
読み:セーニン プリンド リーセン リサーレス セナーレス ソー。
| sén-im | plíndo | lís-en | lis-ár-es | sen-ár-es | só. |
| 見る-<私が> | 荷札<対格> | 書く-<〜した・〜された> | 書く-<〜する人>-<属格> | 見る-<〜する人>-<属格> | この<重性> |
「私は、書記が書いた目付のこの荷札を見る。」
分詞のすぐ後ろの属格は動作主(書記が書いた)、その次の属格は持ち主(目付の)。
lisáran té, séna senár.
読み:リサーラン テー、セーナ セナール。
| lis-ár-an | té, | sén-a | sen-ár. |
| 書く-<〜する人>-<対格> | あの<軽性> | 見る-<(軽いものが)> | 見る-<〜する人> |
「あの書記をこそ、目付が見る。」
前に出した名詞句が té で終わるときは、té の後ろに区切りを入れる。区切りがないと関係節(te)と読まれる。
sénim lisáran te séna senár.
読み:セーニン リサーラン テ セーナ セナール。
| sén-im | lis-ár-an | te | sén-a | sen-ár. |
| 見る-<私が> | 書く-<〜する人>-<対格> | <関係節> | 見る-<(軽いものが)> | 見る-<〜する人> |
「私は、目付が見る書記を見る。」
残った名詞の格の形(senár は主格)で役割がわかるので、ó は要らない。
lísa sáindaran lisár te séna senár.
読み:リーサ サインダラン リサール テ セーナ セナール。
| lís-a | sáindar-an | lis-ár | te | sén-a | sen-ár. |
| 書く-<(軽いものが)> | 証文-<対格> | 書く-<〜する人・主格> | <関係節> | 見る-<(軽いものが)> | 見る-<〜する人> |
「目付が見る書記が、証文を書く。」
都の言葉。関係節つきの主語は目的語の後ろへ回す。目的語は対格の形でわかる。
lísa lisár te séna senár, sáindaran.
読み:リーサ リサール テ セーナ セナール、サインダラン。
| lís-a | lis-ár | te | sén-a | sen-ár, | sáindar-an. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | <関係節> | 見る-<(軽いものが)> | 見る-<〜する人> | 証文-<対格> |
「目付が見る書記が、証文を書く。」
崖道の言葉。読点で関係節を閉じ、読点の後ろは主節の残りの枠(ここでは目的語)に戻る。
sénim lisáran te séna senáran.
読み:セーニン リサーラン テ セーナ セナーラン。
| sén-im | lis-ár-an | te | sén-a | sen-ár-an. |
| 見る-<私が> | 書く-<〜する人>-<対格> | <関係節> | 見る-<(軽いものが)> | 見る-<〜する人>-<対格> |
「私は、目付を見る書記を見る。」
要の lisáran が対格なのは主節の目的語だから。関係節の中では、残った senáran が対格なので、要が主語だとわかる。
tóra lisár te séna néman.
読み:トーラ リサール テ セーナ ネーマン。
| tór-a | lis-ár | te | sén-a | ném-an. |
| 来る-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | <関係節> | 見る-<(軽いものが)> | <私>-<対格> |
「私を見る書記が来る。」
関係節の中の代名詞の目的語は対格(néman)。
ésa lisár éndra te sénim.
読み:エーサ リサール エンドラ テ セーニン。
| és-a | lis-ár | éndra | te | sén-im. |
| いる-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | 人<主格> | <関係節> | 見る-<私が> |
「書記は、私が見た人だ。」
名詞が述語の文では、関係節のついた名詞句を述語として読む。
éndra te sénim, ésa lisár.
読み:エンドラ テ セーニン、エーサ リサール。
| éndra | te | sén-im, | és-a | lis-ár. |
| 人<主格> | <関係節> | 見る-<私が> | いる-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> |
「私が見た人は、書記だ。」
関係節のついた名詞句を主語にしたいときは、読点で閉じて前に出す。
sénim plánan te léisa lisár te séna senár.
読み:セーニン プラーナン テ レーサ リサール テ セーナ セナール。
| sén-im | plán-an | te | léis-a | lis-ár | te | sén-a | sen-ár. |
| 見る-<私が> | 帳簿-<対格> | <関係節> | 書く<〜し終えた>-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | <関係節> | 見る-<(軽いものが)> | 見る-<〜する人> |
「私は、目付が見る書記が書き終えた帳簿を見る。」
関係節の中の最後の名詞に、さらに関係節がつく。右へ右へと伸ばすのは自然な形。
anórel, sénim plánan te léisa lisár.
読み:アノーレル、セーニン プラーナン テ レーサ リサール。
| anórel, | sén-im | plán-an | te | léis-a | lis-ár. |
| 昨日 | 見る-<私が> | 帳簿-<対格> | <関係節> | 書く<〜し終えた>-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> |
「昨日、私は書記が書き終えた帳簿を見た。」
関係節のある文で、時の語を主節にかけたいときは場面の枠に置く。
lísin þíla endríña lisáis.
読み:リーシン シーラ エンドリーニャ リサイス。
| lís-in | þíl-a | endríña | lis-áis. |
| 書く-<〜して・〜く> | 分かる-<(軽いものが)> | 子ども<主格> | 字-<〜たちを> |
「その子は字が書ける。」
副動詞+þíl-「分かる」で、やり方を知っていて「できる」(能力)。
lís þelán táses séndoi!
読み:リース セラーン ターセス センドイ!
| lís | þel-án | tás-es | sénd-oi! |
| 書く<命令法><あなたが> | 名前-<対格> | <あなた>-<属格> | ここ-<与格> |
「「ここにお前の名を書け。」」
下向きの命令。命令法の2人称単数はむき出しの語幹 lís。目上の人には使えず、目上には願望法3人称(aulisénde …)で頼む。名前を書くことは息を使わないので、名の禁忌には当たらない。
ké líses lisáis? lísim.
読み:ケー リーセス リサイス?リーシン。
| ké | lís-es | lis-áis? | lís-im. |
| <〜か> | 書く-<あなたが> | 字-<〜たちを> | 書く-<私が> |
「「字は書けるか?」「書ける。」」
二人の発話。はい・いいえの問いは文頭の ké で作る。「はい」にあたる語がないので、答えるときは動詞を自分の人称に変えて繰り返す。lisá「字」は lís- から派生した軽性 a 語幹の名詞。
lisésa lisár sáindarais, ré vandénde senár fáron.
読み:リセーサ リサール サインダライス、レー ヴァンデンデ セナール ファーロン。
| lis-és-a | lis-ár | sáindar-ais, | ré | vand-énd-e | sen-ár | fáron. |
| 書く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 証文-<〜たちを> | <〜と(節)> | 量る-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 見る-<〜する人> | 荷<対格> |
「目付が荷を量れるよう、書記は証文を書くべし。」
市の決まりの文。sáindar は軽性の子音語幹なので、複数対格は -ais になる。ré+願望法で目的「〜するように」を表す。この願望法は丁寧さではなく、そうなってほしいことを表している。
ésa lisár sé dúlen fáir þrénul.
読み:エーサ リサール セー ドゥーレン ファイル スレーヌル。
| és-a | lis-ár | sé | dúl-en | fáir | þrén-ul. |
| いる-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | この<軽性> | 下る-<〜した・〜された> | 四 | 段-<〜たちを> |
「この書記は四段下りの者だ。」
ある人の身分を、第三者に説明する文。身分も「dúlen+数詞+段 þrén の複数対格」で言う。lóur(瀬)ではなく þrén(段)を使っているので、世代ではなく身分の話だとわかる。本人の前でこのように数詞を添えて言うのは、相手の段によっては無作法になる。
aldanéla aulisár aldárei?
読み:アルダネーラ アウリサール アルダーレイ?
| aldan-él-a | au-lis-ár | aldár-ei? |
| おわす-<〜だろう>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人> | 座-<与格> |
「書記の方は、お席においででしょうか。」
目上の人の居場所を尋ねる丁寧な言い方。目上の人については ké を使わず、推量法で推し量る形にする。場所は前置詞なしの与格 aldárei で言う。強勢は推量法の -él- に移る。
funeléra lisár þelán aldáres áurenes.
読み:フネレーラ リサール セラーン アルダーレス アウレネス。
| funelér-a | lis-ár | þel-án | aldár-es | áur-en-es. |
| 書き留める-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 名前-<対格> | 王の位-<属格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格> |
「書記は、高き座の名を書き留める。」
記録の場面の文。属格にすると、分詞も -es で一致して aldáres áurenes「高き座の」となる。王の名は口にできない場合でも、書くことは息を使わないので禁じられない。書くときは上げ書きにする。
ésa lisár sé dúlen fáir þrénul.
読み:エーサ リサール セー ドゥーレン ファイル スレーヌル。
| és-a | lis-ár | sé | dúl-en | fáir | þrén-ul. |
| いる-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | この<軽性> | 〜段・〜瀬下りた-<〜した・〜された> | 四 | 段-<〜たちを> |
「この書記は四段下りの者だ。」
身分の段を言う言い方。分詞 dúlen に数詞と þrén「段」の複数対格(道のりの対格)を続けて、頂からどれだけ下りているかを表す。高原語にはこれにあたる序数がない。分詞は主語 lisár(軽性・単数・主格)に一致するので、語尾がつかない。þrénul を lóurul「瀬を」に替えると、身分ではなく世代の言い方になる。
lísa lisár dáu sáindarau.
読み:リーサ リサール ダウ サインダラウ。
| lís-a | lis-ár | dáu | sáindar-au. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 二 | 証文-<双数> |
「書記は証文を二通書く。」
役所や市の記録の場面。dáu「二」の後ろの名詞は双数になる。双数では主格と対格が同じ形なので、目的語の sáindarau も主格と同じ形をとる。帳簿の中では量の名詞を入れることが多いが、話し言葉ではこのように省く。
áuran slúun sílarar, na tóra lisár.
読み:アウラン スルーン シーララル、ナ トーラ リサール。
| áur-an | slúun | sílar-ar, | na | tór-a | lis-ár. |
| 昇る-<彼らが> | 数えきれぬ | 月-<〜らの> | <〜ない> | 来る-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> |
「数えきれぬほど月が昇ったが、書記は来ない。」
詩や改まった語りの言い方。slúun sílarar「千の月」は数えた結果ではなく、「数えきれないほど長い時が過ぎた」という意味の決まり文句。月は星ではないので、数の言い方をしても禁忌には当たらない。時制がないので、áuran は「昇った」とも訳せる。
lís virá sé, ende.
読み:リース ヴィラー セー、エンデ。
| lís | virá | sé, | ende. |
| 書く<命令法><あなたが> | 文字 | この<軽性> | どうぞ |
「この字を書いてくれ、頼む。」
縁の市の取引言葉。格の語尾が落ちるので、目的語でも対格の virán ではなく virá の形のまま使う。むき出しの語幹 lís に ende を添えると軽い頼みになり、無礼にはならない。
lísa ilanár sílaran ívelan sóndelei.
読み:リーサ イラナール シーララン イーヴェラン ソンデレイ。
| lís-a | ilanár | sílar-an | ível-an | sóndel-ei. |
| 書く-<(軽いものが)> | 星読み<主格> | 暦の月-<対格> | 新しい-<軽性・対格> | 書物-<与格> |
「星読みは新しい月を書物に書き記す。」
暦を司る星の司の記録の言い方。十の灯の昇る日がずれると、星読みが月を一つ足し、それを書き留める。形容詞 ível は sílaran に合わせて、軽性・単数・対格の -an で一致する。
ésa plána lísen orenvandáres.
読み:エーサ プラーナ リーセン オレンヴァンダーレス。
| és-a | plána | lís-en | orenvandár-es. |
| いる-<(軽いものが)> | 帳簿<主格> | 書く-<〜した・〜された> | 縁商人-<属格> |
「帳簿は縁商人の手で書かれている。」
受け身にあたる言い方。「és-+主語+分詞」で結果の状態を表し、誰がしたかは属格で添える。紙の帳簿は軽性なので、繋辞は -a をとり、分詞 lísen も軽性・単数・主格(語尾なし)になる。
ésa virá sé lísen aulisáres.
読み:エーサ ヴィラー セー リーセン アウリサーレス。
| és-a | virá | sé | lís-en | au-lis-ár-es. |
| いる-<(軽いものが)> | 文字<主格> | この<軽性> | 書く-<〜した・〜された> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<属格> |
「この字は書記の方がお書きになったものだ。」
書かれた字も virá で言う。分詞 lísen の後ろの属格が「〜によって」を表し、書き手が目上なので、名詞 lisár に尊敬の接頭辞 au- をつけている。
na gloiréla aulisár sórel.
読み:ナ グロイレーラ アウリサール ソーレル。
| na | gloir-él-a | au-lis-ár | sórel. |
| <〜ない> | お越しになる-<〜だろう>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人> | 今日 |
「書記の方は、今日はお越しにならないでしょう。」
推量法の否定にも na を使う。強勢は推量法の -él- に移るので、語根 glóir- の ´ は消える。glóir- は「来る」の尊敬の補充形で、目上の人の動作を言うときに使う。時を表す sórel は文末に置く。
lísim ném sáindaran.
読み:リーシン ネーン サインダラン。
| lís-im | ném | sáindar-an. |
| 書く-<私が> | <私> | 証文-<対格> |
「証文は、この私が書く。」
主語は動詞の語尾 -im でわかるので、代名詞 ném はふつう言わない。それをわざわざ動詞の後ろに置くと、「ほかでもない私が」という強調になる。
or pó fleiréla aulisár dórel?
読み:オル ポー フレイレーラ アウリサール ドーレル?
| or | pó | fleir-él-a | au-lis-ár | dórel? |
| 日の出側 | 何<対格> | お出ましになる-<〜だろう>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人> | 明日 |
「書記の方は、明日は日の出側のどちらへお出ましになるのでしょうか。」
上向きの問い。目上の人には問いの小辞 ké を使わず、推量法 -él- で推し量る形で尋ねる。方向を決めない「どこへ」はないので、or pó「日の出側の何へ」と前置詞句ごと文頭に出す。推量法の接尾辞が強勢をとるので、語根の ´ は消える。
fléira aulisár du orén.
読み:フレーラ アウリサール ドゥ オレーン。
| fléir-a | au-lis-ár | du | orén. |
| お出ましになる-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人> | 下手 | 縁<対格> |
「書記の方は、縁へお出ましになる。」
目上の人の移動を言い切る文。fléir- 自体が「行く」gél- の尊敬の補充形なので、au- はつけない。主語の aulisár は役職名に au- をつけた高め名詞。du+対格で「下手へ」の意味になる。時制がないので「お出ましになった」とも訳せる。
luuméla aulisár nébro?
読み:ルーメーラ アウリサール ネーブロ?
| luum-él-a | au-lis-ár | nébro? |
| ご覧になる-<〜だろう>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人> | 霧<対格> |
「書記の方は、霧をご覧になったでしょうか。」
推量法を使った上向きの問い。目上の人には問いの小辞 ké を使わず、推量法で推し量る。強勢が -él- に移るので、語根の ´ は消える。霧 nébro は重性o語幹なので、主格と対格が同じ形になる。霧期の始まりを確かめる問いとして使われる。
ésa lisím sé gléin.
読み:エーサ リシーン セー グレーン。
| és-a | lis-ím | sé | gléin. |
| いる-<(軽いものが)> | 書く-<〜の技・〜さ> | この<軽性> | 清い |
「この書法は清い。」
書の出来をほめる言い方。lisím「書法」は軽性なので、指示詞は軽性の sé を名詞の後ろに置く。sé は格では形が変わらない。関係節がないときは、指示詞が名詞句の終わりの目印になる。繋辞 és- が文頭に来て、述語の形容詞 gléin は主語に一致する。
lísa aldár sé sáindaran.
読み:リーサ アルダール セー サインダラン。
| lís-a | aldár | sé | sáindar-an. |
| 書く-<(軽いものが)> | 座<主格> | この<軽性> | 証文-<対格> |
「この座が証文を書く。」
王は自分を「我」と言わず、aldár sé「この座」と3人称で言う。そのため動詞は3人称単数・軽性の -a になる。実際の座は石や木でできていても、aldár は人を指すので軽性で、指示詞も軽性の sé を使う。
mé hél an aulisárei!
読み:メー ヘール アン アウリサーレイ!
| mé | hél | an | au-lis-ár-ei! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 座る<命令法><あなたが> | 上手へ・上手で | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<与格> |
「書記の方の上手の側に座るな。」
作法を教えるときの禁止。an+与格で「〜の上手の側で」という場所を表す。炉や座敷の北側(上手)は上座なので、目上の人より上手に座るのは無礼にあたる。禁止は mé+命令法で言う。
funeléra lisár sóur báronul sáindarei.
読み:フネレーラ リサール ソール バーロヌル サインダレイ。
| funelér-a | lis-ár | sóur | báron-ul | sáindar-ei. |
| 書き留める-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 六 | 本-<〜たちを> | 証文-<与格> |
「書記は証文に「六本」と書き留める。」
証文付けの文。証文や帳簿では品名の欄が数の欄とは別にあるので、数の欄には「数詞+量の名詞」だけを書く。会話では量の名詞を省くことが多いが、帳簿・証文・荷札ではほぼ必ず入れる。sáindar「証文」は軽性の子音語幹なので、与格は -ei になる。
ésa lisím sélvanes séuril an lisímail.
読み:エーサ リシーン セルヴァネス セウリル アン リシーマイル。
| és-a | lis-ím | sélvan-es | séuril | an | lis-ím-ail. |
| いる-<(軽いものが)> | 書く-<〜の技・〜さ> | セルヴァン-<属格> | 美しい | 〜よりまさって | 書く-<〜の技・〜さ>-<〜らに> |
「セルヴァンの書法は、並ぶ書法の中でいちばん美しい。」
書の競い合いで勝ちの書をほめる言い方。an+同じ仲間の複数与格で最上級になる。述語の形容詞 séuril は軽性の主語 lisím に一致し、単数主格なので語尾がない。
mé vandésa fáron du lisímei sáindares.
読み:メー ヴァンデーサ ファーロン ドゥ リシーメイ サインダレス。
| mé | vand-és-a | fáron | du | lis-ím-ei | sáindar-es. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 量る-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 荷<対格> | 〜の後に | 書く-<〜の技・〜さ>-<与格> | 証文-<属格> |
「証文を書いたあとに荷を量らぬこと。」
市の決まりを述べる当為法の文。荷は先に秤で量り、そのあとで証文に書く、という順序を定めている。主語を言わないので「人は〜すべし」という一般の主語になり、軽性の形をとる。du+与格は、an+与格「〜の前に」と対になって使われる。
ésa lisím némes séuril du lisímei aulisáres.
読み:エーサ リシーン ネーメス セウリル ドゥ リシーメイ アウリサーレス。
| és-a | lis-ím | ném-es | séuril | du | lis-ím-ei | au-lis-ár-es. |
| いる-<(軽いものが)> | 書く-<〜の技・〜さ> | <私>-<属格> | 美しい | 〜より劣って | 書く-<〜の技・〜さ>-<与格> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<属格> |
「私の書法は、書記の方の書法の美しさに及びません。」
自分の書をへりくだって言う文。du+与格で、美しさの程度が劣ることを表す。比べる相手の書法の持ち主は、au- をつけた属格 aulisáres で高める。
méirim sáindaran lisárei élei te tóra.
読み:メーリン サインダラン リサーレイ エーレイ テ トーラ。
| méir-im | sáindar-an | lis-ár-ei | él-ei | te | tór-a. |
| 与える-<私が> | 証文-<対格> | 書く-<〜する人>-<与格> | あの-<与格> | <関係節> | 来る-<(軽いものが)> |
「やって来た例の書記に、証文を渡す。」
軽性の指示詞 té は関係節の te の前に置けない。そのため、代わりに él を「あの・例の」の意味で名詞の後ろに置く。この él は指示詞と違って格変化し、ここでは lisárei に合わせて与格の élei になる。関係節の主語は抜けたまま空けておく。
nóurim ré ésa lisár té fláin.
読み:ノーリン レー エーサ リサール テー フライン。
| nóur-im | ré | és-a | lis-ár | té | fláin. |
| 思う-<私が> | <〜と(節)> | いる-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | あの<軽性> | 上品な |
「あの書記は上品だと思う。」
ré は「〜と」の節を導き、その節は主節の後ろに置く。ré の後ろの節も動詞で始まる。指示詞 té は強勢をもち、名詞句の終わりの目印になる。
léunim ré lísa lisár sáindaran.
読み:レウニン レー リーサ リサール サインダラン。
| léun-im | ré | lís-a | lis-ár | sáindar-an. |
| 申す-<私が> | <〜と(節)> | 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 証文-<対格> |
「書記が証文を書いたと申し上げます。」
目上の人への報告。léun- は「言う」の謙譲の補充形。ré の節は主節の後ろに置き、主節と同じく動詞で始まる。時制がないので、lísa は文脈から「書いた」と訳している。
séna lisár sáindaran si fáron.
読み:セーナ リサール サインダラン シ ファーロン。
| sén-a | lis-ár | sáindar-an | si | fáron. |
| 見る-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 証文-<対格> | と | 荷<対格> |
「書記は証文と荷を見る。」
si で目的語を二つ並べた文。並べた語は、それぞれ文の中の役割に合う格をとる(どちらも対格。重性の fáron は主格と同じ形)。動詞は主語の書記に一致するので、双数にはならない。
pá liséla sáindaran?
読み:パー リセーラ サインダラン?
| pá | lis-él-a | sáindar-an? |
| 誰<主格> | 書く-<〜だろう>-<(軽いものが)> | 証文-<対格> |
「誰が証文を書くのだろう?」
独り言のように尋ねる文。疑問詞 pá を文頭に出し、動詞を推量法にして、ためらいや思案を表している。強勢は推量法の -él- に移る。
dulísim duném sáindaran aulisárei.
読み:ドゥリーシン ドゥネーン サインダラン アウリサーレイ。
| du-lís-im | duném | sáindar-an | au-lis-ár-ei. |
| <〜させていただく>-書く-<私が> | 手前 | 証文-<対格> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<与格> |
「書記の方への証文は、手前が書かせていただきます。」
主語の代名詞は動詞の語尾でわかるのでふつうは言わない。それをわざわざ duném と言うことで、「ほかでもない手前が」という強調になる。謙譲の動詞 dulísim とともに使い、目上の人の前で役目を引き受けるときの改まった言い方。
lísan lisárai dáu sáindarau, dulíþan dáun du orén.
読み:リーサン リサーライ ダウ サインダラウ、ドゥリーサン ダウン ドゥ オレーン。
| lís-an | lis-ár-ai | dáu | sáindar-au, | dul-íþ-an | dáun | du | orén. |
| 書く-<彼らが> | 書く-<〜する人>-<〜たちが> | 二 | 証文-<双数> | 下る-<〜させる>-<彼らが> | ふたつ | 下手 | 縁<対格> |
「書記たちは証文を二通書き、そのふたつを縁へ下ろす。」
後半の dáun は、前半の双数 sáindarau を受けている。dáun には性の区別がないので、軽性のものでも重性のものでも同じ形で受ける。後半では主語を省いているが、動詞の語尾から、前半と同じ書記たちが主語だとわかる。
pón lísa lisár sáindarei?
読み:ポーン リーサ リサール サインダレイ?
| pón | lís-a | lis-ár | sáindar-ei? |
| 何<対格> | 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 証文-<与格> |
「書記は証文に何を書いているのか。」
市や倉で、書記の手もとをのぞきながら仲間に尋ねる文。疑問詞の目的語 pó が動詞の前に出て、その後ろは「動詞–主語–与格」の語順に戻る。pó は重性なので、対格も主格と同じ形になる。書記本人に向かって言うと、ぶしつけに聞こえる。
pórin lisésa virán sé?
読み:ポーリン リセーサ ヴィラーン セー?
| pórin | lis-és-a | vir-án | sé? |
| どのように | 書く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 言葉-<対格> | この<軽性> |
「この言葉はどう書けばよいのか。」
学び舎で字の書き方を尋ねる言い方。主語を言わない当為法は「人は〜すべし」という一般の主語を表し、軽性の形をとる。それで「どう書くべきか」「どう書くものか」の意味になる。疑問詞 pórin は動詞の前に出る。
lís þelán táses sérin.
読み:リース セラーン ターセス セーリン。
| lís | þel-án | tás-es | sérin. |
| 書く<命令法><あなたが> | 名前-<対格> | <あなた>-<属格> | このように |
「自分の名前を、こうやって書いてごらん。」
師が手本を書いて見せながら、子どもに言う言い方。下向きなので命令法の2人称単数(むき出しの語幹)を使う。sérin は様子を表す語として、文の後ろのほうに置く。目的語に格語尾がついているので、市の取引言葉ではなく命令法だとわかる。
ké lísan dalorárai térin?
読み:ケー リーサン ダロラーライ テーリン?
| ké | lís-an | dalor-ár-ai | térin? |
| <〜か> | 書く-<彼らが> | 下の国-<〜する人>-<〜たちが> | そのように |
「下の国の者たちは、ああいうふうに書くのか。」
よそから来た文字の書きぶりを見て尋ねる、はい・いいえの問い。ké は文のいちばん前に置く。térin は、離れたところで見た書き方を指す。答えるときは、動詞を繰り返して lísan か na lísan と言う。
méir fáron térin lísen, ende.
読み:メール ファーロン テーリン リーセン、エンデ。
| méir | fáron | térin | lís-en, | ende. |
| 与える<命令法><あなたが> | 荷 | そのとおりに | 書く-<〜した・〜された> | どうぞ |
「書いたとおりに荷を渡してくれ、頼む。」
縁の市の決まり文句「térin lísen(書いたとおりに)」を使った取引言葉の文。分詞 lísen は、この決まり文句の中では一致の語尾をつけず、形を変えない。帳簿や証文の文面にたがわないことを念押しするときに使う。
meirésa orenvandár gandér térin lísen sáindarei.
読み:メイレーサ オレンヴァンダール ガンデール テーリン リーセン サインダレイ。
| meir-és-a | orenvandár | gandér | térin | lís-en | sáindar-ei. |
| 与える-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 縁商人<主格> | 硬木<対格> | そのとおりに | 書く-<〜した・〜された> | 証文-<与格> |
「縁商人は、証文に書かれたとおりに硬木を渡すべし。」
証文の取り決めの一文。当為法で書かれている。「térin lísen」に与格の sáindarei を添えると、「証文に書かれたとおりに」の意味になる。縁商人は段の外の者だが、文法上は人として軽性で受ける。
plúin gloiréla aulisár?
読み:プルーイン グロイレーラ アウリサール?
| plúin | gloir-él-a | au-lis-ár? |
| いつ | お越しになる-<〜だろう>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人> |
「書記の方はいつお越しになるのでしょうか。」
目上の人の予定を尋ねる、上向きの問い。疑問詞は文頭に残し、動詞は推量法にして推し量る形にする。「来る」には尊敬の補充形 glóir- を使う。強勢は推量法の -él- に移る。目上の人には、ké を使った問いや2人称の問いを避ける。
dulísim sáindaran aurélei.
読み:ドゥリーシン サインダラン アウレーレイ。
| du-lís-im | sáindar-an | aurél-ei. |
| <〜させていただく>-書く-<私が> | 証文-<対格> | あの方-<与格> |
「あの方に証文を書いて差し上げます。」
自分の動作には謙譲の du- をつけ、受け手の aurél は与格 -ei にする。こうして、上下の関係が一つの文の中にそろって表れる。aurél は él と同じく②型の語尾で変化する(aurélan・auréles・aurélei)。高め名詞なので、数詞や双数はつけない。
lísa ínin lisárar þelán míres.
読み:リーサ イーニン リサーラル セラーン ミーレス。
| lís-a | ínin | lis-ár-ar | þel-án | mír-es. |
| 書く-<(軽いものが)> | それぞれ<主格> | 書く-<〜する人>-<〜らの> | 名前-<対格> | 自分-<属格> |
「書記たちは、それぞれ自分の名を書く。」
ínin は、どの集まりの「それぞれ」かを複数属格(lisárar)で後ろに示す。主語は一つずつに分けられているので、動詞は複数ではなく3人称単数・軽性の lísa になる。役所で証文に名を連ねる場面の言い方。
lísa páin þelán míres sáindarei.
読み:リーサ パイン セラーン ミーレス サインダレイ。
| lís-a | páin | þel-án | mír-es | sáindar-ei. |
| 書く-<(軽いものが)> | 誰か<主格> | 名前-<対格> | 自分-<属格> | 証文-<与格> |
「誰かが証文に自分の名を書いていった。」
市の帳場で、書いた人のわからない書き込みを見つけたときの言い方。時制がないので、文脈によって「書いた」とも「書いている」とも訳せる。再帰代名詞 mír の属格 míres は主語の páin を指す。紙の証文 sáindar は軽性の子音語幹なので、与格は -ei になる。
na lísa lisár póin sáindarei sórel.
読み:ナ リーサ リサール ポイン サインダレイ ソーレル。
| na | lís-a | lis-ár | póin | sáindar-ei | sórel. |
| <〜ない> | 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 何も<対格> | 証文-<与格> | 今日 |
「書記は今日、証文に何も書かなかった。」
取引のなかった日の帳場の様子を言う文。語順は動詞–主語–目的語–与格–時で、na は動詞の直前に置く。sórel「今日」のような時の語は文の後ろに回す。
ésa ómbra sáindares lísen.
読み:エーサ オンブラ サインダレス リーセン。
| és-a | ómbra | sáindar-es | lís-en. |
| いる-<(軽いものが)> | すべて<主格> | 証文-<属格> | 書く-<〜した・〜された> |
「証文はすべて書き上がっている。」
単数の ómbra は「まるごと全体」を表し、何の全体かを後ろの属格で示す。ómbra は軽性なので、繋辞は -a をとり、分詞 lísen は軽性・単数・主格で語尾がつかない。掛けの精算の前に証文を確かめるときの言い方。
lísa lisár ín sáindaran.
読み:リーサ リサール イーン サインダラン。
| lís-a | lis-ár | ín | sáindar-an. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 一 | 証文-<対格> |
「書記が証文を一通書く。」
役所での報告。ín「一」の後ろの名詞は単数になり、ここでは目的語なので単数対格 sáindaran になる。帳簿に記すときは量の名詞を入れるが、話し言葉では省いてよい。
lísim sóur sáindarais.
読み:リーシン ソール サインダライス。
| lís-im | sóur | sáindar-ais. |
| 書く-<私が> | 六 | 証文-<〜たちを> |
「証文を六通書く。」
市での商人の会話。sóur「六」の後ろの名詞は複数になる。sáindar は軽性の子音語幹で、複数対格は -ais になる。帳簿では量の名詞を添えるが、会話では省くのがふつう。
lísa lisár ánþa rólanais sóndelar.
読み:リーサ リサール アンサ ローラナイス ソンデラル。
| lís-a | lis-ár | ánþa | rólan-ais | sóndel-ar. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 八 | 巻-<〜たちを> | 書物-<〜らの> |
「書記は書物を八巻書き写す。」
書物は量の名詞 rólan「巻」で数える。数詞は量の名詞にかかり、数えるもの(書物)は複数属格にして後ろに置く。rólan は軽性なので、複数対格は -ais。時制がないので、「書き写している」とも「書き写した」とも訳せる。雨期に書を写す習わしを背景にした文。
lísim sénþar ombrílur.
読み:リーシン センサル オンブリールル。
| lís-im | sénþar | ombríl-ur. |
| 書く-<私が> | 百 | 句-<〜らの> |
「「詩句を百句書き写す。」」
詩は句 ombríl で数える。sénþar は名詞として働くので、ombríl を複数属格でとる。雨期にこもって詩集を写す場面で使う文。
selvána ausenár ré lisésa orenvandár slúun, mé lisésa sélu.
読み:セルヴァーナ アウセナール レー リセーサ オレンヴァンダール スルーン、メー リセーサ セール。
| selván-a | au-sen-ár | ré | lis-és-a | orenvandár | slúun, | mé | lis-és-a | sélu. |
| おっしゃる-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人> | <〜と(節)> | 書く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 縁商人<主格> | 千 | <禁止・願いの打ち消し> | 書く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 泥の千 |
「目付殿は、「縁商人は陸の千で書くべし、泥の千では書かぬこと」とおっしゃる。」
市の目付の裁きを人に伝える言い方。ré の後ろの節は、決まりごとを表す当為法のまま引いている。後半は主語を言っていないが、前半と同じ縁商人のことを言っている。証文の数は高原の数え方で書く、という市の決まりを表す。
lísim dáu lénau sáindarar.
読み:リーシン ダウ レーナウ サインダラル。
| lís-im | dáu | lén-au | sáindar-ar. |
| 書く-<私が> | 二 | 枚-<双数> | 証文-<〜らの> |
「証文を二枚書く。」
量の名詞の使い方。dáu「二」の後ろでは、量の名詞 lén が双数 lénau になる。数えるもの sáindar は複数属格になる。取引では、同じ証文を二枚書いて両方が一枚ずつ持つことが多い。
lísan lisárai slúumbar lénar sáindarar.
読み:リーサン リサーライ スルーンバル レーナル サインダラル。
| lís-an | lis-ár-ai | slúumbar | lén-ar | sáindar-ar. |
| 書く-<彼らが> | 書く-<〜する人>-<〜たちが> | 一万 | 枚-<〜らの> | 証文-<〜らの> |
「書記たちは証文を一万枚書く。」
書の司の仕事の多さを言う、帳簿や報告で使う言い方。slúumbar は slúun・sénþar と同じく名詞として働き、量の名詞 lén「枚」を複数属格でとる。その lén がさらに証文 sáindar を複数属格でとるので、属格が二つ続く。
lísa orenvandár sélu sáindarei.
読み:リーサ オレンヴァンダール セール サインダレイ。
| lís-a | orenvandár | sélu | sáindar-ei. |
| 書く-<(軽いものが)> | 縁商人<主格> | 当てにならない大きな数 | 証文-<与格> |
「縁商人のやつ、証文にいい加減な大きな数を書いている。」
陰口の文。sélu をここで1728の意味にとる必要はなく、「食い違いのありそうな、怪しい大きな数」という意味になる。sélu は干潟からの借用語で重性なので、目的語でも主格と同じ形のまま。
ké lísa lisár fáir lénais sáindarar?
読み:ケー リーサ リサール ファイル レーナイス サインダラル?
| ké | lís-a | lis-ár | fáir | lén-ais | sáindar-ar? |
| <〜か> | 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | 四 | 枚-<〜たちを> | 証文-<〜らの> |
「書記は証文を四枚書くのか。」
同じ段か下の段の相手への問い。lén は軽性の子音語幹で、三以上の数の後ろでは複数になる。ここでは目的語なので、複数対格の lénais になる。数えるもの sáindar は複数属格。目上の人に尋ねるときは、ké を使わず推量法で尋ねる。
lísa lisár téir rólanais sóndelar sórel.
読み:リーサ リサール テール ローラナイス ソンデラル ソーレル。
| lís-a | lis-ár | téir | rólan-ais | sóndel-ar | sórel. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 三 | 巻-<〜たちを> | 書物-<〜らの> | 今日 |
「書記は今日、書物を三巻書く。」
書の司の勤めを述べる直説法の文。時制がないので、「書く」とも「書いた」とも訳せる。量の名詞は「数詞+量の名詞+数えるものの複数属格」の形をとる。数詞 téir の後ろなので rólan は複数になり、目的語なので複数対格 -ais をとる。書物 sóndel は複数属格 sóndelar で後ろに置く。
pómbar rólanais sóndelar lísers?
読み:ポンバル ローラナイス ソンデラル リーセルス?
| pómbar | rólan-ais | sóndel-ar | lís-ers? |
| いくつ | 巻-<〜たちを> | 書物-<〜らの> | 書く-<あなたがたが> |
「お前たちは書物を何巻書くのか。」
学び舎で、書き手たちに書写の量を尋ねる下向きの問い。疑問詞 pómbar を含む名詞句全体が動詞の前に出る。目的語なので量の名詞は複数対格 rólanais になる。書物は人ではないので、数を尋ねても無礼にならない。
rímba lisár dáumbar téir hóumul.
読み:リンバ リサール ダウンバル テール ホームル。
| rímb-a | lis-ár | dáumbar | téir | hóum-ul. |
| 数える-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 二十 | 三 | 世帯-<〜たちを> |
「書記は二十三の世帯(炉)を数えた。」
倉の司の書記が、税のために村を調べたことを述べる文。人を数えることは相手を下げることになるので、人数ではなく「炉」を数える。数詞 dáumbar téir の後ろなので複数。重性の複数対格は -ul。
éso ómbo lisáres fláin.
読み:エーソ オンボ リサーレス フライン。
| és-o | ómbo | lis-ár-es | fláin. |
| いる-<(重いものが)> | 指<主格> | 書く-<〜する人>-<属格> | 軽い |
「書記の指は軽やかだ。」
書法の上手な人をほめる言い方。指は体の部分なので重性で、繋辞も述語の形容詞も重性の形になる。重いはずの体の部分が「軽い」と言われるところに、ほめる響きがある。
lúin glóira aldár áuren, snéiman lisárai.
読み:ルーイン グロイラ アルダール アウレン、スネーマン リサーライ。
| lúin | glóir-a | aldár | áur-en, | snéim-an | lis-ár-ai. |
| とき | お越しになる-<(軽いものが)> | 座<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | 礼をする-<彼らが> | 書く-<〜する人>-<〜たちが> |
「高き座がお越しになると、書記たちは礼をする。」
目上の人に頭を下げて敬意を示す意味。lúin で始まる時の節は主節の前に置く。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。宮廷の作法を記した文の言い方。
dulísim sáindaran anlóurei éulei.
読み:ドゥリーシン サインダラン アンローレイ エウレイ。
| du-lís-im | sáindar-an | anlóur-ei | éul-ei. |
| <〜させていただく>-書く-<私が> | 証文-<対格> | 親-<与格> | 別の流れの-<軽性・与格> |
「義理の親に、証文を書いて差し上げます。」
婚姻の取り決めなどで使う改まった言い方。anlóur éul「別の流れの瀬上」は配偶者の親を指す。謙譲の du- で自分の行いを低めている。形容詞 éul は、修飾する anlóurei に合わせて軽性・与格の -ei をとる。
lísa véiran némes sáindaran.
読み:リーサ ヴェーラン ネーメス サインダラン。
| lís-a | véiran | ném-es | sáindar-an. |
| 書く-<(軽いものが)> | 配偶者 | <私>-<属格> | 証文-<対格> |
「私の連れ合いが証文を書く。」
véiran は人を指すので軽性で、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。夫と妻を区別しない。持ち主は属格にして名詞の後ろに置く。目上の人の配偶者を言うときは、持ち物と同じように尊敬の au- をつける。au- は v- の前で aub- に融合するので、その場合は aubéiran になる。
lísa lisár sáindaran véiranaun.
読み:リーサ リサール サインダラン ヴェーラナウン。
| lís-a | lis-ár | sáindar-an | véiran-aun. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 証文-<対格> | 夫婦-<双数の〜の・〜に> |
「書記が、その夫婦に証文を書く。」
婚姻の証文を、新しい夫婦に宛てて書く場面。双数では属格と与格が同じ形(-aun)になる。ここでは受け手を表す与格として、目的語の後ろに置いている。
aulisénde aulourvirár þelán dulóures némes sáindarei.
読み:アウリセンデ アウロウルヴィラール セラーン ドゥローレス ネーメス サインダレイ。
| au-lis-énd-e | au-lourvirár | þel-án | dulóur-es | ném-es | sáindar-ei. |
| <お〜になる・御〜>-書く-<〜しますように>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-系譜読み | 名前-<対格> | 瀬下-<属格> | <私>-<属格> | 証文-<与格> |
「系譜読みの方に、私の子の名を証文へお書きいただきたく存じます。」
系譜読みは家の年長の女性で、発言力も強い。そのため頼みごとは上向きの話し方でする。命令法の代わりに願望法の3人称を使い、相手は尊敬の au- をつけた役名で呼ぶ。au- は l の前では形を変えない。sáindar は軽性の子音語幹で、与格は -ei になる。
mé lisésa endríña sáindaran.
読み:メー リセーサ エンドリーニャ サインダラン。
| mé | lis-és-a | endríña | sáindar-an. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 書く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 未成年の者<主格> | 証文-<対格> |
「未成年の者は、証文を書いてはならない。」
法典の文体。当為法の否定には mé を使う。ここの endríña は年齢のことではない。成人の儀を終えておらず、成名をもたない者という、法の上での身分を指す。
lísa lisár þeláis houmárar.
読み:リーサ リサール セライス ホウマーラル。
| lís-a | lis-ár | þel-áis | houmár-ar. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | 名前-<〜たちを> | 世帯主-<〜らの> |
「書記は世帯主たちの名を書き記す。」
税の取り立ての記録を述べる文。人は数えずに炉(世帯)を数えるので、役所の記録では世帯主の名を一つずつ書き並べる。名詞句は「名詞+属格」の順で、þeláis houmárar は「名・世帯主たちの」。
lísa orenvandár sáindaran senárei.
読み:リーサ オレンヴァンダール サインダラン セナーレイ。
| lís-a | orenvandár | sáindar-an | sen-ár-ei. |
| 書く-<(軽いものが)> | 縁商人<主格> | 証文-<対格> | 見る-<〜する人>-<与格> |
「縁商人が目付に証文を書く。」
縁の市でよくある場面の文。基本の語順(動詞–主語–目的語–与格)のとおりに並んでいる。縁商人は高原の文字で読み書きができるので、市の目付に出す証文を自分で書く。時制の語形がないので、「書いた」とも訳せる。
nelisénde aulisár tambór só.
読み:ネリセンデ アウリサール タンボール ソー。
| nelis-énd-e | au-lis-ár | tambór | só. |
| 召し上がる-<〜しますように>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人> | 雑穀<対格> | この<重性> |
「書記の方に、この雑穀を召し上がっていただきたく存じます。」
目上の客に食べ物を勧める、上向きの言い方。命令法は使わず、願望法の3人称を使って、目の前の相手を「書記の方は」という主語として扱う。nélis- は mán-「食べる」の尊敬の補充形で、名詞の aulisár にも au- がつく。願望法の3人称単数・軽性の語尾は -e になる。
dutáulim sáindaran es aulisáres.
読み:ドゥタウリン サインダラン エス アウリサーレス。
| du-tául-im | sáindar-an | es | au-lis-ár-es. |
| <〜させていただく>-受け取る-<私が> | 証文-<対格> | から | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<属格> |
「書記の方から証文を頂戴いたします。」
目上の人から物を受け取るときの改まった言い方。自分の行いには謙譲の du- をつけ、出どころの書記には尊敬の au- をつけて、上下の関係を両方とも示している。受け取る相手は es+属格で表す。
héla lisár an kelárei.
読み:ヘーラ リサール アン ケラーレイ。
| hél-a | lis-ár | an | kel-ár-ei. |
| 座る-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 上手 | 伐る-<〜する人>-<与格> |
「書記は樵の上手に座る。」
an+与格で「〜の上手(北側)で」。家でも宮廷でも北側の高い座が上座なので、段の高い書記(四段下り)が樵(八段下り)の上手に座る。
héla lisár senárei.
読み:ヘーラ リサール セナーレイ。
| hél-a | lis-ár | sen-ár-ei. |
| 位に就く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 見る-<〜する人>-<与格> |
「書記が目付の位に就く。」
就く役職は、座る場所と同じように与格で示す。「座る」と「位に就く」が同じ動詞なのは、位を座の高さで考える高原の見方の表れ。時制がないので「就いた」とも訳せる。
héla sélvan lisárei.
読み:ヘーラ セルヴァン リサーレイ。
| hél-a | sélvan | lis-ár-ei. |
| 位に就く-<(軽いものが)> | セルヴァン<主格> | 書く-<〜する人>-<与格> |
「セルヴァンは書記の位に就いた。」
役職に就いたことを知らせる文。就く役職は与格で示す。目下の人や同じ段の人について言う形なので、敬語の接頭辞はつけない。
bróla lisár virán aursárail.
読み:ブローラ リサール ヴィラーン アウルサーライル。
| bról-a | lis-ár | vir-án | aursár-ail. |
| 詩を作る-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 言葉-<対格> | 祖先-<〜らに> |
「書記が祖先に捧げる詩を作る。」
祖先に詩を捧げる習わしを言う文。virá を目的語にとると「詩を作る」の意味になる。捧げる相手は与格で示す。
drenéim an kórvo dórel, ré duliséndim sáindaran.
読み:ドレネーン アン コルヴォ ドーレル、レー ドゥリセンディン サインダラン。
| dren-é-im | an | kórvo | dórel, | ré | du-lis-énd-im | sáindar-an. |
| 伺う-<〜だろう>-<私が> | 上手 | 倉<対格> | 明日 | <〜と(節)> | <〜させていただく>-書く-<〜しますように>-<私が> | 証文-<対格> |
「明日、証文を書かせていただくため、倉へ伺うつもりでございます。」
改まった手紙で、訪ねることを予告する言い方。推量法の -él- は1人称単数の語尾の前で l が落ちて -é- になり、drenéim「伺うつもりでございます」となる。目的は「ré+願望法」で表し、謙譲の du- も添える。
dufaronérim aufáron aulisáres an dún.
読み:ドゥファロネーリン アウファーロン アウリサーレス アン ドゥーン。
| du-faronér-im | au-fáron | au-lis-ár-es | an | dún. |
| <〜させていただく>-運ぶ-<私が> | <お〜になる・御〜>-荷<対格> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<属格> | 上手 | 丘<対格> |
「「書記の方のお荷物を、丘の上まで運ばせていただきます。」」
自分の行いを謙譲の接頭辞 du- で低め、荷の持ち主を au- のついた属格 aulisáres で高めている。f- の前の du- は形が変わらない。an+対格は「上手へ」で、湖都の坂道では丘の上へ向かうことを表す。
mé þór an aulisárei!
読み:メー ソール アン アウリサーレイ!
| mé | þór | an | au-lis-ár-ei! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 立つ<命令法><あなたが> | 上手 | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<与格> |
「書記の方より高い所に立ってはならぬ。」
禁止は mé+命令法で言う。an+与格は文字どおりには「〜の上手に」で、ここでは目上の人より高い位置を指す。目上の人より高い所に立つのは禁忌であり、子どもや目下の者へのしつけの言葉としてよく使われる。
ráumau lisár si senár du orén.
読み:ラウマウ リサール シ セナール ドゥ オレーン。
| ráum-au | lis-ár | si | sen-ár | du | orén. |
| 旅をする-<双数> | 書く-<〜する人・主格> | と | 見る-<〜する人・主格> | 下手 | 縁<対格> |
「書記と目付は、縁へ旅をする。」
単数の名詞二つを si で並べているので、動詞は双数の -au になる。双数の動詞は人称も性も区別しない。都から縁の市まで、何日もかけて下っていく旅を言う。
léimsa brándal ré lisésa senár sáindaran.
読み:レーンサ ブランダル レー リセーサ セナール サインダラン。
| léims-a | brándal | ré | lis-és-a | sen-ár | sáindar-an. |
| 据える<〜し終えた>-<(軽いものが)> | 司<主格> | <〜と(節)> | 書く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 見る-<〜する人・主格> | 証文-<対格> |
「司は、目付が証文を書くべしと定めた。」
léim- を決まりごとに使うと「定める」の意味になる。ré の後ろの節は、定められた中身を当為法のまま保つ。語根が二重母音をもつので、完了相は -s- を足して léims- にする。書かれたものを正しいとする王国らしい決まりの文。
duséiran lisárai aldáran áurenan.
読み:ドゥセーラン リサーライ アルダーラン アウレナン。
| du-séir-an | lis-ár-ai | aldár-an | áur-en-an. |
| <〜させていただく>-控えて待つ-<彼らが> | 書く-<〜する人>-<〜たちが> | 座-<対格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・対格> |
「書記たちは高き座(のお指図)を控えて待つ。」
宮廷の記録の文体。王に仕える者の行いを、王に対して低めて謙譲の duséir- で書く。aldár áuren「高き座」は対格になり、分詞 áuren も軽性・対格の -an で一致する。
lúin élþa virá lísen, áura an élvaran.
読み:ルーイン エルサ ヴィラー リーセン、アウラ アン エルヴァラン。
| lúin | élþ-a | virá | lís-en, | áur-a | an | élvar-an. |
| とき | 燃える-<(軽いものが)> | 言葉<主格> | 書く-<〜した・〜された> | 昇る-<(軽いものが)> | 上手 | 天-<対格> |
「書かれた言葉は燃えると、天へ昇っていく。」
願いごとを書いた紙を燃やして祖先に届ける習わしを言う、儀礼の場の文。lísen は virá(軽性・単数・主格)に一致する分詞で、一致の語尾はつかない。後半の主語は省かれているが、動詞の語尾から前半と同じ「言葉」だとわかる。lúin の節は主節の前に置き、an+対格で「上手へ」と言う。
lúin hóina sílar, lísimor viráis aursárail.
読み:ルーイン ホイナ シーラル、リーシモル ヴィライス アウルサーライル。
| lúin | hóin-a | sílar, | lís-imor | vir-áis | aursár-ail. |
| とき | 巡ってくる-<(軽いものが)> | 月<主格> | 書く-<我々が> | 言葉-<〜たちを> | 祖先-<〜らに> |
「白月がまた巡ってくると、我々は祖先たちに言葉を書く。」
白月の満月の夜に祖先を祀る習わしを言う文。白月が一巡りしてまた満ちることに hóin- を使う。lúin の節は主節の前に置く。受け手の祖先たちは複数与格 -ail で示す。
séira lisár senáran du aldárei.
読み:セーラ リサール セナーラン ドゥ アルダーレイ。
| séir-a | lis-ár | sen-ár-an | du | aldár-ei. |
| 待つ-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 見る-<〜する人>-<対格> | 下手 | 座-<与格> |
「書記は上座の手前で目付を待つ。」
日常の文。待つ相手は対格で示す。senár「目付」は軽性の子音語幹なので、対格は -an になる。du+与格で「〜の下手で」と言い、目上の座より低い位置で待っていることを表す。
duséirim aulisáran.
読み:ドゥセーリン アウリサーラン。
| du-séir-im | au-lis-ár-an. |
| <〜させていただく>-控えて待つ-<私が> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<対格> |
「書記の方を、控えてお待ちしております。」
上向きの改まった言い方。謙譲の du- をつけた duséir- で自分の行いを低め、待つ相手の役職名には尊敬の au- をつけて高める。「私が・目上の人を」という上下の関係が、動詞と名詞の両方に表れる。
ésa þelá aursáres lísen rólanei.
読み:エーサ セラー アウルサーレス リーセン ローラネイ。
| és-a | þelá | aursár-es | lís-en | rólan-ei. |
| いる-<(軽いものが)> | 名前<主格> | 祖先-<属格> | 書く-<〜した・〜された> | 巻-<与格> |
「祖先の名は巻物に書かれている。」
家の習わしを述べる文。「és-+主語+分詞」で結果の状態を表し、受け身にあたる意味になる。書くことは息を使わないので、口にしてはならない名前でも書き留めてよい。場所は前置詞なしの与格で表す。
ésa aurþelá élaures lísen lourvirárar.
読み:エーサ アウルセラー エーラウレス リーセン ロウルヴィラーラル。
| és-a | aurþelá | élaur-es | lís-en | lourvirár-ar. |
| いる-<(軽いものが)> | 昇名<主格> | 昇りゆく人-<属格> | 書く-<〜した・〜された> | 系譜読み-<〜らの> |
「昇りゆかれた方の昇名は、系譜読みたちの手で書き入れられている。」
死後一年の禁忌が明けたあとの状態を述べる文。「és-+主語+分詞」で結果の状態を表し、分詞の後ろの属格が書いた人を示す。昇名が系譜に書き入れられると、それ以後は昇名を口にしてよい。
ésa aunourá aulisáres gléin.
読み:エーサ アウノウラー アウリサーレス グレーン。
| és-a | au-nourá | au-lis-ár-es | gléin. |
| いる-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-思い | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<属格> | 清い |
「書記の方のお考えは筋が通っている。」
目上の人の考えには、持ち物と同じく au- をつけて高める。nourá は軽性なので、繋辞は -a、述語の形容詞 gléin も軽性・主格の形になる。「清い」は考えについて言うと「筋が通っている、濁りがない」の意味になる。
ésa nourá némes ré lísa lisár sáindaran dórel, ausenár.
読み:エーサ ノウラー ネーメス レー リーサ リサール サインダラン ドーレル、アウセナール。
| és-a | nourá | ném-es | ré | lís-a | lis-ár | sáindar-an | dórel, | au-sen-ár. |
| いる-<(軽いものが)> | 思い | <私>-<属格> | <〜と(節)> | 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 証文-<対格> | 明日 | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人> |
「目付殿、私の考えは、明日書記が証文を書く、というものです。」
目上の人に意見を述べるときの言い方。自分の思いには au- をつけない。ré の節で考えの中身を示し、呼びかけの役職名は文の終わりに読点で区切って添える。
néulan lisárai rainiþáran.
読み:ネウラン リサーライ ライニサーラン。
| néul-an | lis-ár-ai | rainiþár-an. |
| 慕う-<彼らが> | 書く-<〜する人>-<〜たちが> | 師-<対格> |
「書記たちは師を慕っている。」
人を目的語にすると「慕う」の意味になる。直説法には法の印がないので、語根に3人称複数の -an が直接つく。lisár は lís-「書く」に -ár「〜する人」がついた語。
gréma lisár ausenáres.
読み:グレーマ リサール アウセナーレス。
| grém-a | lis-ár | au-sen-ár-es. |
| 恐れる-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>-<属格> |
「書記は目付殿をこわがっている。」
grém- は恐れる対象を対格ではなく属格でとる。目上の人を指す名詞には、目的語になっても au- をつけたままにする。
ausailéndan aursárai lisímei sé.
読み:アウサイレンダン アウルサーライ リシーメイ セー。
| au-sail-énd-an | aursár-ai | lis-ím-ei | sé. |
| <お〜になる・御〜>-嘉する-<〜しますように>-<彼らが> | 祖先-<〜たちが> | 書く-<〜の技・〜さ>-<与格> | この<軽性> |
「ご祖先がこの手跡を嘉したまいますように。」
願いを書いた紙を燃やして祖先に届けるときの決まり文句。高い者が主語なので尊敬の au- をつけ、願望法で言う。強勢は -énd- に移る。嘉する対象は与格。
ausáila aldár áuren es lisímes sélvanes.
読み:アウサイラ アルダール アウレン エス リシーメス セルヴァネス。
| au-sáil-a | aldár | áur-en | es | lis-ím-es | sélvan-es. |
| <お〜になる・御〜>-嘉する-<(軽いものが)> | 座<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | から | 書く-<〜の技・〜さ>-<属格> | セルヴァン-<属格> |
「高き座は、セルヴァンの書法を嘉された。」
年代記の地の文に見える直説法の文。時制がないので、過去の出来事も直説法で言う。理由を es+属格で示している。
séirimor órelan sáunan ré liséndimor sáindaran.
読み:セーリモル オーレラン サウナン レー リセンディモル サインダラン。
| séir-imor | órel-an | sáun-an | ré | lis-énd-imor | sáindar-an. |
| 待つ-<我々が> | 日-<対格> | 吉い-<軽性・対格> | <〜と(節)> | 書く-<〜しますように>-<我々が> | 証文-<対格> |
「証文を書くために、我々は吉い日を待つ。」
大事な取り決めを結ぶ日取りについて言う文。この意味の sáun は、日取りや兆しの縁起が良いことを表す。「〜するように」という目的は、ré+願望法で表す。願望法の -énd- は強勢をもつ。
mé lisésa lúdro sáindarei.
読み:メー リセーサ ルードロ サインダレイ。
| mé | lis-és-a | lúdro | sáindar-ei. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 書く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 偽り<対格> | 証文-<与格> |
「証文に偽りを書かぬこと。」
書の司が定めた、証文の書き方の決まりにある一句。書かれた言葉が重んじられる王国では、証文のごまかしは重い罪になる。場所「〜に」は前置詞なしの与格で言う。sáindar「証文」は軽性の子音語幹なので、与格は -ei になる。
dulísim sáindaran ívelan aulisárei.
読み:ドゥリーシン サインダラン イーヴェラン アウリサーレイ。
| du-lís-im | sáindar-an | ível-an | au-lis-ár-ei. |
| <〜させていただく>-書く-<私が> | 証文-<対格> | 新しい-<軽性・対格> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<与格> |
「書記の方に、新しい証文を書いて差し上げます。」
謙譲の du- と、高めた与格の aulisárei を一つの文に並べている。証文を書き直して新しくするときの、改まった言い方。
éso nébro só gráis, na lísimor sáindaran.
読み:エーソ ネーブロ ソー グライス、ナ リーシモル サインダラン。
| és-o | nébro | só | gráis, | na | lís-imor | sáindar-an. |
| いる-<(重いものが)> | 霧<主格> | この<重性> | 不吉な | <〜ない> | 書く-<我々が> | 証文-<対格> |
「この霧は縁起が悪い。我々は証文を書かない。」
霧期には大事な契約を結ばないという習わしを、兆しの言い方で述べている。霧 nébro は重性なので、繋辞は -o をとり、指示詞は só になる。重性・単数・主格の形容詞には語尾がつかない。主節が二つ並ぶので、あいだを読点で区切る。
lísa lisár sáindaran móran.
読み:リーサ リサール サインダラン モーラン。
| lís-a | lis-ár | sáindar-an | mór-an. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 証文-<対格> | 大がかりな-<軽性・対格> |
「書記は、大がかりな取引の証文を書く。」
事業や取引の規模が大きいことを言う用法。形容詞は、軽性の sáindar の対格に一致して -an をとる。
kráila lisár sáindaran ívelan.
読み:クライラ リサール サインダラン イーヴェラン。
| kráil-a | lis-ár | sáindar-an | ível-an. |
| 手に持つ-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 証文-<対格> | 新しい-<軽性・対格> |
「書記は新しい証文を手に取る。」
できたばかりのものについて言う用法。形容詞は、軽性の sáindar の対格に一致して -an をとる。
dupovérim aulisárei ré du pó fleiréla ausenár.
読み:ドゥポヴェーリン アウリサーレイ レー ドゥ ポー フレイレーラ アウセナール。
| du-povér-im | au-lis-ár-ei | ré | du | pó | fleir-él-a | au-sen-ár. |
| <〜させていただく>-問う-<私が> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<与格> | <〜と(節)> | 下手 | 何<対格> | お出ましになる-<〜だろう>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人> |
「書記の方にお尋ねいたします。目付殿は下手のどちらへお出ましになったのでしょうか。」
役所での改まった問い合わせ。謙譲の du- は子音 p の前ではそのままの形でつく。方向を決めない「どこへ」はないので、du pó「下手の何へ」と尋ねる。ré の節の中も推量法にして、遠回しな問いにしている。
auglenénde aulisár virán.
読み:アウグレネンデ アウリサール ヴィラーン。
| au-glen-énd-e | au-lis-ár | vir-án. |
| <お〜になる・御〜>-句を返す-<〜しますように>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人> | 言葉-<対格> |
「書記の方に、返しの句をお詠みいただきたく存じます。」
自分が先に句を詠んだあと、目上の人に返しを願う言い方。尊敬の au- は子音 g の前ではそのままの形でつく。願望法の3単・軽性は -e で終わる。返しの句そのものを、対格の目的語にとっている。
lísa sélvan lisáis séurilais.
読み:リーサ セルヴァン リサイス セウリライス。
| lís-a | sélvan | lis-áis | séuril-ais. |
| 書く-<(軽いものが)> | セルヴァン<主格> | 字-<〜たちを> | 整った-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格> |
「セルヴァンは整った字を書く。」
人の書きぶりをほめる言い方。séuril を書の字に使うと、形が正しく整っていることを表す。lisá「字」は軽性なので、形容詞は軽性・複数・対格の -ais をとる。
mé lisésa lisáis sáindarei húmelei.
読み:メー リセーサ リサイス サインダレイ フーメレイ。
| mé | lis-és-a | lis-áis | sáindar-ei | húmel-ei. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 書く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 字-<〜たちを> | 証文-<与格> | 湿った-<軽性・与格> |
「湿った証文に字を書かぬこと。」
書記の心得として書かれる決まり。当為法の文を mé で否定している。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の形をとる。sáindar「証文」は軽性なので、形容詞も軽性・与格の húmelei で一致する。霧で湿った紙に書くと墨がにじんで下へ流れるとされ、霧期には大事な書きものを避ける。
ésa tendá lisáres rús.
読み:エーサ テンダー リサーレス ルース。
| és-a | tend-á | lis-ár-es | rús. |
| いる-<(軽いものが)> | 織る-<〜するもの(重)> | 書く-<〜する人>-<属格> | 茶色の |
「書記の布は茶色に染めてある。」
樹皮で染めた茶色のこと。染めた色の布は、生成りの布より上の段の人に許される(書記は四段下り)。tendá「織物・布」は ténd-「織る」に -á「〜するもの(軽)」がついた語で、軽性。繋辞 éis- を先頭に置き、述語の形容詞 rús は軽性の主格(語尾なし)で主語に一致する。
lísa lisár þelán aldáres áurenes þáiles sáindarei.
読み:リーサ リサール セラーン アルダーレス アウレネス サイレス サインダレイ。
| lís-a | lis-ár | þel-án | aldár-es | áur-en-es | þáil-es | sáindar-ei. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 名前-<対格> | 座-<属格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格> | 澄み-<属格> | 証文-<与格> |
「書記は証文に「澄みの高き座」の名を書く。」
座名「aldár áuren+称えの語の属格」で、名詞として使った þáil「澄み」が称えの語になっている。座名ごと属格で þelán にかかる。書き言葉では座名を記してよく、上げ書きにする。
ésa aurása aulisáres séuril.
読み:エーサ アウラーサ アウリサーレス セウリル。
| és-a | au-rása | au-lis-ár-es | séuril. |
| いる-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-重ね<主格> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<属格> | 美しい |
「書記の方のお重ねは見事でございます。」
目上の人の衣の重ねを、au- をつけて高めている。r の前なので、au- は形を変えない。持ち主を表す属格 aulisáres にも au- がつく。
lís sáindar, lisár, ende.
読み:リース サインダル、リサール、エンデ。
| lís | sáindar, | lisár, | ende. |
| 書く<命令法><あなたが> | 証文 | 帳付け | どうぞ |
「帳付けさん、証文を書いてくれ、頼む。」
縁の市の取引言葉。動詞はむき出しの語幹で言い、格語尾も落とす(改まった言葉なら対格 sáindaran)。ende を添えるので、命令の形でも無礼には聞こえない。
lísa lisár dulfáron kéndoros orénos.
読み:リーサ リサール ドゥルファーロン ケンドロス オレーノス。
| lís-a | lisár | dulfáron | kéndor-os | orén-os. |
| 書く-<(軽いものが)> | 帳付け<主格> | 下ろし荷<対格> | 縁の市-<属格> | 縁-<属格> |
「帳付けが縁の市の下ろし荷を書きつける。」
商家や市で帳簿をつける者を言う文。帳簿の見開きの片側には下ろし荷を、もう片側には上げ荷を書く。dulfáron は重性で、対格は主格と同じ形。
ké lísa lisár plíndo só?
読み:ケー リーサ リサール プリンド ソー?
| ké | lís-a | lis-ár | plíndo | só? |
| <〜か> | 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 荷札<対格> | この<重性> |
「書記がこの荷札を書くのか。」
はい・いいえで答える問いは、文のいちばん前に ké を置いて作る。荷札は伐った脂の木の板なので重性o語幹で、主格と対格が同じ形の plíndo になる。指示詞も重性の só を使う。動詞は主語の lisár(人なので軽性)に一致して -a をとる。
ké ésa meirtaulá sé lísen?
読み:ケー エーサ メイルタウラー セー リーセン?
| ké | és-a | meirtaulá | sé | lís-en? |
| <〜か> | いる-<(軽いものが)> | 取引<主格> | この<軽性> | 書く-<〜した・〜された> |
「この取引は書き留めてあるか。」
meirtaulá は méir-「与える」と tául-「取る」に -á がついた軽性a語幹の名詞で、語尾に強勢がある。述語の分詞 lísen「書かれた」は、主語に一致して軽性・単数・主格の形(語尾なし)になる。王国では口約束より書きつけが重く、取引は帳簿に一つ一行で書く。
rímba lisár grúndo.
読み:リンバ リサール グルンド。
| rímb-a | lis-ár | grúndo. |
| 数える-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 掛け<対格> |
「書記が掛けを数え合わせる。」
grúndo は重性o語幹なので、対格も主格と同じ形になる。ここでは単数で、掛けの全体をひとまとまりとして言っている。帳面の見開きの片側に下ろし荷を、もう片側に上げ荷を書き、両方を突き合わせて掛けを精算する。
ésa férmal virá lísen.
読み:エーサ フェルマル ヴィラー リーセン。
| és-a | férmal | virá | lís-en. |
| いる-<(軽いものが)> | 法<主格> | 言葉<主格> | 書く-<〜した・〜された> |
「法とは、書かれた言葉である。」
口約束より書きつけを重んじる考え方を表す、格言めいた言い方。繋辞 és- を文頭に置く。férmal は言葉に属するものとして軽性で受ける。分詞 lísen は軽性・単数・主格なので、一致の語尾がつかない。
lísa lisár téir férmalais ívelais.
読み:リーサ リサール テール フェルマライス イーヴェライス。
| lís-a | lis-ár | téir | férmal-ais | ível-ais. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | 三 | 法の条-<〜たちを> | 新しい-<〜たちを> |
「書記は新しい条を三つ書いた。」
年代記や役所の記録に見られる、直説法の簡潔な文。時制を表す語形がないので、「書く」とも「書いた」とも訳せる。三以上の数詞の後ろでは、名詞が複数になる。形容詞 ível は名詞の後ろに置き、軽性・複数・対格で一致する。
lísa lisár aurfáronul sáindarei.
読み:リーサ リサール アウルファーロヌル サインダレイ。
| lís-a | lisár | aurfáron-ul | sáindar-ei. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書記<主格> | 上げ荷-<〜たちを> | 証文-<与格> |
「書記は上げ荷を証文に書きつける。」
縁の市で取引を記録する場面。上げ荷(崖の下から上がってくる荷)は、帳簿や証文に一つずつ書き留める。重性の複数の対格は -ul。証文 sáindar は軽性の子音語幹なので、与格は -ei。
ésa þondá sé lísen sáindarei.
読み:エーサ ソンダー セー リーセン サインダレイ。
| és-a | þondá | sé | lís-en | sáindar-ei. |
| いる-<(軽いものが)> | 約束<主格> | この<軽性> | 書く-<〜した・〜された> | 証文-<与格> |
「この約束は証文に書き留められている。」
取引の約束が文字に残っていることを確かめる言い方。口約束より書きつけが重いとされるので、商いの約束は証文に書かせる。繋辞 és- を文頭に置き、主語 þondá sé の後ろに分詞 lísen「書かれた」を述語として続ける。指示詞 sé は軽性の形。
na vírimor sárvo, lísimor ó.
読み:ナ ヴィーリモル サルヴォ、リーシモル オー。
| na | vír-imor | sárvo, | lís-imor | ó. |
| <〜ない> | 言う-<我々が> | 禁じられた名<対格> | 書く-<我々が> | <3人称単数・重性> |
「禁じられた名は口にしない。書き記すだけだ。」
名前の禁忌について説明する文。名前は息の形そのものとされるので、口にしてはならないが、書くのは息を使わないので禁じられない。sárvo はここで、王の名や喪中の死者の名を遠回しに指している。sárvo が重性なので、受ける代名詞も重性の ó になる。
lúin glóira aurilanár es dúnos, dulísimor plánan.
読み:ルーイン グロイラ アウリラナール エス ドゥーノス、ドゥリーシモル プラーナン。
| lúin | glóir-a | aur-ilanár | es | dún-os, | du-lís-imor | plán-an. |
| とき | お越しになる-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-星読み<主格> | から | 丘-<属格> | <〜させていただく>-書く-<我々が> | 帳簿-<対格> |
「星読みの方が丘からお越しになるときは、我々が帳簿を書かせていただきます。」
目下の者が星読みについて話す改まった文。星読みは四段下りの役人なので、au- をつけて高める。au- は母音の前で aur- になるので、au-ilanár は aurilanár になる。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。主節は謙譲の接頭辞 du- で自分たちの行いを低めている(du-lís-imor)。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。
vándan lisárai meiró tambóros.
読み:ヴァンダン リサーライ メイロー タンボーロス。
| vánd-an | lis-ár-ai | meiró | tambór-os. |
| 量る-<彼らが> | 書く-<〜する人>-<〜たちが> | 税<対格> | 雑穀-<属格> |
「書記たちが雑穀の税を量る。」
乾風期の前半、倉の司が雑穀の税を取り立てる場面の文。meiró は méir-「与える」に重いものを表す -ó がついた語で、もとは「差し出されるもの」の意味。重性o語幹なので、主格と対格が同じ形になる。何の税かは、属格を後ろに置いて表す。
gloirénde aulisár dórelei.
読み:グロイレンデ アウリサール ドーレレイ。
| gloir-énd-e | au-lis-ár | dórel-ei. |
| お越しになる-<〜しますように>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人> | 明日-<与格> |
「書記の方には、明日お越しいただきたく存じます。」
上向きの依頼。目の前の相手にも2人称は使わず、役職名に au- をつけた3人称で言い、命令の代わりに願望法を使う。願望法の3人称単数・軽性の語尾は -e になる。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。
na lísim sáindaran selúin, lísim dulúin.
読み:ナ リーシン サインダラン セルーイン、リーシン ドゥルーイン。
| na | lís-im | sáindar-an | selúin, | lís-im | dulúin. |
| <〜ない> | 書く-<私が> | 証文-<対格> | 今 | 書く-<私が> | のち |
「証文は今は書かない、のちに書く。」
市や帳場での、くだけたやりとり。selúin「今」と dulúin「のちに」を対にしている。どちらも格語尾をつけない副詞として、文の後ろに置く。du-「下手」を含む語で、時の流れの下手、つまり後の時を表す。
lísa lisár sáindaran dulúinei.
読み:リーサ リサール サインダラン ドゥルーイネイ。
| lís-a | lis-ár | sáindar-an | dulúin-ei. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 証文-<対格> | 行く末-<与格> |
「書記は、行く末のために証文を書く。」
改まった文。与格 dulúinei は受け手を表し、「行く末の世に向けて」という意味になる。書かれた言葉は消えずに後の世へ残る、という考えが背景にある。sáindar「証文」は軽性の子音語幹で、対格は -an。
lísa lisár þelán némes un sáindarei.
読み:リーサ リサール セラーン ネーメス ウン サインダレイ。
| lís-a | lis-ár | þel-án | ném-es | un | sáindar-ei. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 名前-<対格> | <私>-<属格> | 内に | 証文-<与格> |
「書記は証文の中に私の名を書く。」
un+与格で「〜の内に」を表す。前置詞なしの与格でも場所は言えるが、un を添えると「その内側に」という意味がはっきりする。un には強勢がない。名前を書くことは息を使わないので、禁忌にならない。
éso nebrálvo trúin, lísir sáindarais.
読み:エーソ ネブラルヴォ トルーイン、リーシル サインダライス。
| és-o | nebrálvo | trúin, | lís-ir | sáindar-ais. |
| いる-<(重いものが)> | 霧期<主格> | 近しい | 書く-<皆で〜せよ> | 証文-<〜たちを> |
「霧期が近い。証文を書いておけ。」
縁の市で、乾風期の終わりに商人たちが言い合う文。trúin は時間の近さを表す。nebrálvo は重性o語幹なので、繋辞は -o になる。霧の約束は重んじられないので、霧期の前に証文を済ませておけ、という含みがある。
lisésa lisár sáindaran un téir ombrénail.
読み:リセーサ リサール サインダラン ウン テール オンブレーナイル。
| lis-és-a | lis-ár | sáindar-an | un | téir | ombrén-ail |
| 書く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 証文-<対格> | 内 | 三 | 十日-<〜らに> |
「書記は三旬のうちに証文を書くべし。」
法典や役所の定めの文体で、当為法を使っている。勤めや期限は十日を単位に数えるので、「三つの十日」でおよそ一か月を表す。三以上の数詞の後ろでは名詞が複数になり、un「〜の内に」と組むので与格をとる。
lúin tóra reinálva, lísan éndrai.
読み:ルーイン トーラ レイナルヴァ、リーサン エンドライ。
| lúin | tór-a | reinálva, | lís-an | éndr-ai |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 雨期<主格> | 書く-<彼らが> | 人-<〜たちが> |
「雨期が来ると、人々は書きものをする。」
雨期は家にこもって書を写し、詩を作る季節とされる。そのことを述べた一般的な文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。reinálva は雨(上から来るもの)に属する季節なので軽性で、動詞は -a で一致する。
lúin éso nebrálvo, mé lisésa sáindaran.
読み:ルーイン エーソ ネブラルヴォ、メー リセーサ サインダラン。
| lúin | és-o | nebrálvo, | mé | lis-és-a | sáindar-an |
| とき | いる-<(重いものが)> | 霧期<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 書く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 証文-<対格> |
「霧期のあいだは、証文を書かぬこと。」
市の決まりや法典の文体。nebrálvo は霧と同じく重性o語幹なので、「霧期である間」の és- は重性の -o(éso)をとる。主節は当為法なので mé で否定する。主語を言わないので「人は」という一般の主語になり、軽性の形 lisésa をとる。
glóiren, aulisár. auelénde aulisár.
読み:グロイレン、アウリサール。アウエレンデ アウリサール。
| glóiren, | au-lis-ár. | au-el-énd-e | au-lis-ár. |
| ようこそ | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人> | <お〜になる・御〜>-座る-<〜しますように>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人> |
「ようこそお越しくださいました、書記の方。どうぞお座りください。」
家の主が目上の客を迎えるときの言い方。glóiren は「来る」の尊敬の補充形 glóir- の分詞から固まった語で、目上の客に使う。同じ段か目下の客には tóren を使う。後半は au- と hél-「座る」がくっついて h が落ちた形の願望法で、目の前の客を3人称の主語「書記の方」として扱っている。
dúmarim tambór te auméira aulisár. auríþen.
読み:ドゥーマリン タンボール テ アウメーラ アウリサール。アウリーセン。
| dúmar-im | tambór | te | au-méir-a | au-lis-ár. | auríþen. |
| いただく-<私が> | 雑穀<対格> | <関係節> | <お〜になる・御〜>-与える-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人> | ありがたく |
「書記の方がくださった雑穀を、いただきました。ありがたく。」
贈り物への礼状の結び。用件を書いたあと、最後に auríþen 一語を置いて結ぶのが手紙の決まった形である。関係節 te auméira aulisár では、目的語にあたる部分が空いたままになっている。méir- は補充形のない動詞なので、規則どおり au- をつけて尊敬の形にする。
auríþen, ausenár. dulísim fáron.
読み:アウリーセン、アウセナール。ドゥリーシン ファーロン。
| auríþen, | au-sen-ár. | du-lís-im | fáron. |
| かたじけない | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人> | <〜させていただく>-書く-<私が> | 荷<対格> |
「かたじけない、目付殿。荷を書き留めさせていただきます。」
市の目付に荷を量ってもらったあとの礼。呼びかけに呼格は使わない。役職名に au- をつけ、読点で区切って添える。lís-「書く」に謙譲の du- をつけて、自分の行いを低めている。目上の人への礼として決まった形なので、auríþen の語尾は変わらない。fáron「荷」は重性名詞なので、対格も主格と同じ形になる。
dulísim fáron ausenárei. auríþen.
読み:ドゥリーシン ファーロン アウセナーレイ。アウリーセン。
| du-lís-im | fáron | au-sen-ár-ei. | auríþen. |
| <〜させていただく>-書く-<私が> | 荷<対格> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>-<与格> | ありがたく |
「目付殿に、荷のことを書き記させていただきます。ありがたく。」
目上の人に宛てた手紙の結び。本文の最後に auríþen を一語だけ置いて、感謝を添える。謙譲の動詞 dulísim「書かせていただく」と、高めた与格 ausenárei「目付殿に」を並べているので、書き手と宛先の上下の関係がすべて文法に表れる。
duhémbrim, ausenár. na dulísim fáron.
読み:ドゥヘンブリン、アウセナール。ナ ドゥリーシン ファーロン。
| duhémbrim, | au-sen-ár. | na | du-lís-im | fáron. |
| 恥じ入ります | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人> | <〜ない> | <〜させていただく>-書く-<私が> | 荷<対格> |
「申し訳ございません、目付殿。荷を書き記しておりませんでした。」
市の目付への改まった謝罪。帳簿に荷を書き留めておくのが決まりなのに、それを怠ったことを詫びている。動詞に時制がないので、na dulísim は文脈によって「書いておりません」とも「書いておりませんでした」とも訳せる。直説法の文なので、否定には na を使う。くだけた grómim は目上の人には使わない。
seirénde, ausenár. tóra lisár.
読み:セイレンデ、アウセナール。トーラ リサール。
| seirénde, | au-sen-ár. | tór-a | lis-ár. |
| しばしお待ちを | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人> | 来る-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> |
「しばしお待ちを、目付殿。書記が参りますので。」
目上の人に待ってもらうときの丁寧な言い方。seirénde はもとは séir-「待つ」の願望法3人称単数・軽性(お待ちになりますように)で、相手を3人称で立てる上向きの話し方がそのまま固まった形。定型句なので一語として扱う。
lís sáindaran sé! dómim.
読み:リース サインダラン セー!ドーミン。
| lís | sáindar-an | sé! | dómim. |
| 書く<命令法><あなたが> | 証文-<対格> | この<軽性> | 承りました |
「「この証文を書け。」「承りました。」」
二人の発話。目上の者が下向きの命令法で言いつけ、目下の者が dómim で受ける。dómim はもとは「控える」の謙譲の補充形 dóm- の1人称単数で、「(お言いつけのもとに)控えております」という意味が固まった定型の返事。役所や大家で、命令を受けた者がまず口にする。
ésa lisím sélvanes gléin. vérin.
読み:エーサ リシーン セルヴァネス グレーン。ヴェーリン。
| és-a | lis-ím | sélvan-es | gléin. | vérin. |
| いる-<(軽いものが)> | 書く-<〜の技・〜さ> | セルヴァン-<属格> | 清い | そのとおり |
「「セルヴァンの書法は清い。」「そのとおりだ。」」
相手の評言を正しいと認める返事。高原語には「はい」がなく、問いには動詞を繰り返して答えるが、言い切りの文に同意するときは vérin を使う。lisím「書法」は lísim「私が書く」と強勢の位置だけで区別される。
dómim. dulísim sáindaran aulisárei.
読み:ドーミン。ドゥリーシン サインダラン アウリサーレイ。
| dómim. | du-lís-im | sáindar-an | au-lis-ár-ei. |
| 承りました | <〜させていただく>-書く-<私が> | 証文-<対格> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<与格> |
「承りました。書記の方に証文を書いて差し上げます。」
言いつけを受けたあと、するべきことを謙譲の形で言い直して請け合う、改まった返事。謙譲の動詞と高めた与格を並べて、自分と相手の上下を表している。dómim のあとは、謙譲の接頭辞 du- を使った動詞で続けるのがふつう。
ké ésa lisár? dómim.
読み:ケー エーサ リサール?ドーミン。
| ké | és-a | lis-ár? | dómim. |
| <〜か> | いる-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | はい、ここに |
「「書記はいるか?」「はい、ここに。」」
二人の発話。目上の者が人を探して呼んだとき、呼ばれた本人がそばに控えていることを示す返事。「はい」にあたる語がない高原語で、呼びかけへの返事として固まった形。目上の者が書記を3人称で尋ねても、本人は1人称の dómim で答える。
lísa lisár sáindaran senárei. vérin.
読み:リーサ リサール サインダラン セナーレイ。ヴェーリン。
| lís-a | lis-ár | sáindar-an | sen-ár-ei. | vérin. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 証文-<対格> | 見る-<〜する人>-<与格> | そのとおり |
「「書記が目付に証文を書くのだな。」「そのとおり。」」
市の手順を確かめ合うやりとり。取引の約束は書きつけが重いので、書記が証文を書いて目付に渡す。vérin は、相手が述べた決まりや事実をそのまま認める応答で、身分を問わず使える。
aursáre! lísa endríña virán.
読み:アウルサーレ!リーサ エンドリーニャ ヴィラーン。
| aursáre! | lís-a | endríña | vir-án. |
| おお | 書く-<(軽いものが)> | 子ども<主格> | 言葉-<対格> |
「おお、子どもが字を書いているぞ!」
ほめるときの感嘆。virá を lís-「書く」の目的語にすると「字を書く」の意味になる。書かれた言葉は上へ昇るものとされるので、字を書くことをほめるときに祖先を呼ぶ aursáre はよく合う。
aurainiþénde aulisár lisán sé némei.
読み:アウライニセンデ アウリサール リサーン セー ネーメイ。
| au-rainiþ-énd-e | au-lis-ár | lis-án | sé | ném-ei. |
| <お〜になる・御〜>-教える-<〜しますように>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人> | 字-<対格> | この<軽性> | <私>-<与格> |
「書記の方に、この字をお教えいただきたく存じます。」
目上の人に教えを請う改まった言い方。尊敬の au- を動詞と名詞の両方につけ、願望法の3人称で頼む。強勢は願望法の -énd- に移り、語根の強勢は消える。
lúin tóro nébro, na trálan lisárai sóndelais.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ トラーラン リサーライ ソンデライス。
| lúin | tór-o | nébro, | na | trál-an | lis-ár-ai | sóndel-ais. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | <〜ない> | 写す-<彼らが> | 書く-<〜する人>-<〜たちが> | 書物-<〜たちを> |
「霧が来ると、書記たちは書物を写さない。」
霧の中で書いた字は下へ流れるとされるので、霧期には書物の書き写しを避ける(書物を写すのは雨期の仕事)。否定の小辞 na は動詞の直前に置く。sóndel は巻物も綴じ本も含めた書物全般を指す。
ésa traimlisá lísen lisárar.
読み:エーサ トラインリサー リーセン リサーラル。
| és-a | traimlisá | lís-en | lis-ár-ar. |
| いる-<(軽いものが)> | 年代記<主格> | 書く-<〜した・〜された> | 書く-<〜する人>-<〜らの> |
「年代記は書記たちの手で書かれている。」
受け身にあたる「és-+主語+分詞」の文で、分詞の後ろの属格が「〜によって」を表す。traimlisá は紙に書かれるので軽性で、分詞 lísen は軽性・単数・主格の形(語尾なし)になる。ふつうは、書の司が書き継ぐ王国の年代記を指す。
funeléran lisárai sélvanan.
読み:フネレーラン リサーライ セルヴァナン。
| funelér-an | lis-ár-ai | sélvan-an. |
| 書き留める-<彼らが> | 書く-<〜する人>-<〜たちが> | セルヴァン-<対格> |
「書記たちはセルヴァンの名を書き留める。」
言葉を消えないように字にして留めることを表す動詞。書くことは息を使わないので、口にしてはいけない名前でも書き留めてかまわない。直説法の3人称複数 -an には強勢がないので、強勢は -ér- に残る。
lisésa aldáran áurenan aurlisímei.
読み:リセーサ アルダーラン アウレナン アウルリシーメイ。
| lis-és-a | aldár-an | áur-en-an | aurlisím-ei. |
| 書く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 座-<対格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・対格> | 上げ書き-<与格> |
「「高き座」は上げ書きで書くべし。」
書の作法を教える書物の一句。当為法で主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の -a をとる。分詞 áurenan は aldáran(軽性・単数・対格)に一致する。手段の「〜で」を与格 aurlisímei で言っている。
ésa fírna tásei, lís þelán táses.
読み:エーサ フィルナ ターセイ、リース セラーン ターセス。
| és-a | fírna | tás-ei, | lís | þel-án | tás-es. |
| いる-<(軽いものが)> | 筆<主格> | <あなた>-<与格> | 書く<命令法><あなたが> | 名前-<対格> | <あなた>-<属格> |
「筆はあるだろう、自分の名を書いてごらん。」
師や親が子どもに字を習わせるときの、下向きの言い方。所有は「ある+持ち主の与格」で言い、動詞は持ち主ではなく、持たれている fírna(軽性)に一致する。命令法の2人称単数は語幹そのまま(lís)。二つの節を接続詞なしで並べるので、あいだを読点で区切る。
tóran kloimárai an kloimándo lisárar.
読み:トーラン クロイマーライ アン クロイマンド リサーラル。
| tór-an | kloim-ár-ai | an | kloimándo | lis-ár-ar. |
| 来る-<彼らが> | 学ぶ-<〜する人>-<〜たちが> | 上手 | 学び舎<対格> | 書く-<〜する人>-<〜らの> |
「弟子たちが、上手にある書記たちの学び舎へ上ってくる。」
都の様子を記した書物の文。学び舎は場所名詞 -ándo の語で重性なので、対格は主格と同じ形になる。an+対格で「上手へ」。属格 lisárar「書記たちの」は名詞の後ろに置く。
tóra fléila sé es aulisáres.
読み:トーラ フレーラ セー エス アウリサーレス。
| tór-a | fléila | sé | es | au-lis-ár-es. |
| 来る-<(軽いものが)> | 手紙<主格> | この<軽性> | から | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<属格> |
「この手紙は、書記の方から届いたものでございます。」
目上の人から来た手紙を取り次いで差し出すときの言い方。差出人を役職名に au- をつけた形で言い、es+属格で「〜から」を表す。指示詞 sé は軽性で格変化せず、名詞句の終わりの目印になる。
sén sáindaran sé te lísa lisár!
読み:セーン サインダラン セー テ リーサ リサール!
| sén | sáindar-an | sé | te | lís-a | lis-ár! |
| 見る<命令法><あなたが> | 証文-<対格> | この<軽性> | <関係節> | 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> |
「書記が書いたこの証文を見ろ。」
役所や商家で、目上の者が目下の者に言う命令で、下向きの話し方にあたる。関係節は名詞句のいちばん最後に置く。ti のすぐ後ろには動詞が来る。関係節の目的語にあたる部分(証文)は、何も置かずに空けておく。指示詞 sé「この」は ti の前に置いてよい。sáindar「証文」は軽性の子音語幹の名詞なので、対格は -an になり、指示詞も軽性の sé になる。動詞には時制がないので、lísa は文脈によって「書いた」とも訳せる。
lísa lisár dáumbar ombrílul.
読み:リーサ リサール ダウンバル オンブリールル。
| lís-a | lis-ár | dáumbar | ombríl-ul. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 二十 | 十拍の句-<〜たちを> |
「書記は十拍の句を二十書く。」
雨期に家にこもって詩を作る習わしを述べた文。時制がないので、「書く」とも「書いた」とも訳せる。三以上の数詞の後ろの名詞は複数になる。重性名詞の複数対格は -ul。
lís freimvirá, ende.
読み:リース フレインヴィラー、エンデ。
| lís | freimvirá, | ende. |
| 書く<命令法><あなたが> | 念押し | どうぞ |
「念押しも書いてくれ、頼む。」
縁の市の取引言葉。動詞は語幹をそのまま使い、名詞の格語尾も落ちる(宮廷語なら freimvirán)。証文に数を書かせるとき、言い換えの念押しを添えるよう頼む決まり文句。
ésa sáindar lísen aulisáres.
読み:エーサ サインダル リーセン アウリサーレス。
| és-a | sáindar | lís-en | au-lis-ár-es. |
| されている-<(軽いものが)> | 証文<主格> | 書く-<〜した・〜された> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<属格> |
「証文は書記の方によって書かれている。」
受け身の専用の形がないので、éis-+分詞で結果の状態を表す。分詞の後ろの属格は、その動作をした人を表す。証文 sáindar は軽性なので、分詞 lísen は単数主格の語尾なしの形になる。
ésa rimblisá lísen sáindarei.
読み:エーサ リンブリサー リーセン サインダレイ。
| és-a | rimblisá | lís-en | sáindar-ei. |
| いる-<(軽いものが)> | 数字<主格> | 書く-<〜した・〜された> | 証文-<与格> |
「数字が証文に書いてある。」
証文の数の欄について言う文。rimblisá は軽性a語幹なので、繋辞 és- は3人称単数・軽性の -a をとる。分詞 lísen は軽性・単数・主格なので一致の語尾がつかない。場所は前置詞なしの与格で表す。
trála lisár sóndelan.
読み:トラーラ リサール ソンデラン。
| trál-a | lis-ár | sóndel-an. |
| 写す-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 書物-<対格> |
「書記は書物を写す。」
書の司の仕事を述べる、記録の文体の文。動詞–主語–目的語の基本の語順。
ké ésa lisár?
読み:ケー エーサ リサール?
| ké | és-a | lis-ár? |
| <〜か> | いる-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> |
「書記はいるか?」
はい・いいえで答える問いは、文のいちばん前の ké で作る。目上の人について尋ねるなら、ké を使わずに推量法と aulisár を使う。
féila lisár plánan.
読み:フェーラ リサール プラーナン。
| féil-a | lis-ár | plán-an. |
| 引く<〜し終えた>-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | 帳簿-<対格> |
「書記は帳簿に罫を引き終えた。」
帳簿を目的語にとって「帳簿に罫を引く」。完了語根 féil-。
ésa þailfírna fírna lisáres.
読み:エーサ サイルフィルナ フィルナ リサーレス。
| és-a | þailfírna | fírna | lis-ár-es. |
| いる-<(軽いものが)> | 都の書体<主格> | 筆<主格> | 書く-<〜する人>-<属格> |
「都の書体は、書記の書きぶりだ。」
名詞が述語の文(és- +主語+述語)。都の書体は、書記や宮廷の人の手紙の字として知られる。
lísa lisár kórvino si tambór plíndoi.
読み:リーサ リサール コルヴィノ シ タンボール プリンドイ。
| lís-a | lis-ár | kórvino | si | tambór | plínd-oi. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 移動倉<対格> | と | 雑穀<対格> | 札-<与格> |
「書記が、移動倉と雑穀を、札に書く。」
帳簿や荷札の記録に使う文。plíndoi は与格(書かれる場所)。si は名詞の並列。
lísa lisár símbo monþóros.
読み:リーサ リサール シンボ モンソーロス。
| lís-a | lis-ár | símbo | monþór-os |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 印<対格> | 壁-<属格> |
「書記は壁の印を書く。」
記録・帳簿向き。目的語的名詞句「壁の印」は、中心語 símbo の後ろに属格 monþóros を置く。monþór の単数属格は monþóros。
brúna lisár sáindaran.
読み:ブルーナ リサール サインダラン。
| brún-a | lis-ár | sáindar-an |
| 背負う-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | 証文-<対格> |
「書記は証文の務めを背負う。」
比喩用法。書かれた約束の責任を負う意。主語lisárは人なので軽性3単。sáindar-anは軽性の子音語幹名詞の対格。
ruunáura lisár sé
読み:ルーナウラ リサール セー
| ruun-áur-a | lis-ár | sé |
| 背-昇-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | この<軽性> |
「この書記は肩をすくめる。」
日常の会話で、人の身振りを述べる文。主語は人なので動詞は軽性一致をとる。背 rúun は複合語に組み込まれ、独立した名詞としては現れない。
funeléra lisár ré éso louríño rúndel ín an orénoi.
読み:フネレーラ リサール レー エーソ ロウリーニョ ルンデル イーン アン オレーノイ。
| funelér-a | lis-ár | ré | és-o | louríño | rúndel | ín | an | orén-oi. |
| 書き留める-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | <〜と(節)> | いる-<(重いものが)> | 小瀬<主格> | 速い | 一 | 上手 | 縁-<与格> |
「書記は「縁の上手に速い小瀬がある」と書き留める。」
書物・記録の場面。ré の後の引用節は存在文。存在文で an orénoi を場所として置くため、名詞句を不定の閉じ ín で閉じてから前置詞句を置く。この閉じがないと、形容詞のすぐ後ろの an+与格は比較として読まれる。形容詞 rúndel は名詞の後ろに置く。
púla lisár plíndo.
読み:プーラ リサール プリンド。
| púl-a | lis-ár | plíndo |
| 軽く叩く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 荷札<対格> |
「書記が荷札を軽く叩く。」
荷札を確かめるときに、指先や手のひらで軽く当てる動作。主語の lisár は人なので軽性で、動詞は3人称単数軽性の -a をとる。荷札 plíndo は重性語で、対格が主格と同形になる。
kekéla lisár dreumán.
読み:ケケーラ リサール ドレウマーン。
| kekél-a | lis-ár | dreum-án. |
| こねる-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 墨-<対格> |
「書記が墨を練る。」
書記が書き仕事のために墨を練る場面。主語 lisár は軽性単数なので、動詞は軽性の3人称単数形 kekéla。墨 dreumá の対格は dreum-án。
vélma lisár plánan sé.
読み:ヴェルマ リサール プラーナン セー。
| vélm-a | lis-ár | plán-an | sé. |
| 開く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | 帳簿-<対格> | この<軽性> |
「書記はこの帳簿を開く。」
帳面・書物を開いて、中に書かれた字を参照する用法。主語 lisár は軽性の行為者名詞なので、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。
lína lisár viráis.
読み:リーナ リサール ヴィライス。
| lín-a | lis-ár | vir-áis. |
| 伸ばす-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | 言葉-<〜たちを> |
「書記は言葉を延ばす。」
言葉・話の長びきを延ばす用法。対象は virá の複数対格 viráis。
lísa kundár plánan
読み:リーサ クンダール プラーナン
| lís-a | kundár | plán-an |
| 書く-<(軽いものが)> | 役人<主格> | 帳簿-<対格> |
「役人が帳簿を書く。」
帳場の帳簿類を記す場面の定型。kundárは行為者名詞の接辞-árで作られた軽性子音語幹で、動詞は軽性・単数主語に一致して3人称単数軽性の-aをとる。
lísa lisár rimblisán filplénoi.
読み:リーサ リサール リンブリサーン フィルプレーノイ。
| lís-a | lis-ár | rimblis-án | filplén-oi. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | 数字-<対格> | 数え盤-<与格> |
「書記は数え盤に数字を書く。」
書記の帳場での場面。裸の与格 filplénoi は、書く先としての盤・作業面を示す。rimblisán は rimblisá の単数対格。
léisim lím sándorul un plánan.
読み:レーシン リーン サンドルル ウン プラーナン。
| léis-im | lím | sándor-ul | un | plán-an. |
| 書く<〜し終えた>-<私が> | 五 | 穂-<〜たちを> | 中に | 帳簿-<対格> |
「帳簿に穂を五つ書き込んだ。」
帳簿の記入文。sándor は脱穀前の穂を数える単位として使うため、分類器なしで数詞と直接組み合わせる。plána は軽性a語幹で、対格語尾 -an が現れる。
kríla lisár sáindaran.
読み:クリーラ リサール サインダラン。
| kríl-a | lis-ár | sáindar-an |
| 離す-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 証文-<対格> |
「書記は証文を離した(請求・義務から離れた)。」
年代記・書面の用法。kríl- は原語形。sáindar は「証文」だが、ここでは証文に結ばれた請求・義務・係わりを表し、関係を断つ比喩用法になる。時制標識はないが、出来事が済みとして語られる場面に向く。
monlína lisár lisáis un plánei
読み:モンリーナ リサール リサイス ウン プラーネイ
| monlín-a | lis-ár | lis-áis | un | plán-ei |
| 並べる-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | 字-<〜たちを> | 内 | 帳簿-<与格> |
「書記は帳簿の中に字を並べる。」
帳簿・書物の中で字を列や行として整える用法。平らな面に整列させる含みがある。
dutorarérim aulisáran.
読み:ドゥトラレーリン アウリサーラン。
| du-torarér-im | au-lis-ár-an. |
| <〜させていただく>-客扱いする-<私が> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-ACC. |
「書記の方を、客としてお迎えいたします。」
礼法上の低い者から高い者への言い方。自分の動作は du- で低め、客人となる人物は au- のついた名詞 aulisár「書記の方」で高める。au-lis-ár-an は「書記の方を」で、au- と -ár のついた名詞に対格 -an がつく。
lúin tóra oráur, lisan lisárai plánan.
読み:ルーイン トーラ オラウル、リサン リサーライ プラーナン。
| lúin | tór-a | oráur, | lís-an | lis-ár-ai | plán-an. |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 夜明け<主格> | 書く-<彼らが> | 書く-<〜する人>-<〜たちが> | 帳簿-<対格> |
「夜明けが来ると、書記たちは帳簿を書く。」
帳場・書記の場面。lisár は lís「書く」+ -ár「〜する人」。目的語 planned は軽性a語幹の対格。
lísa endríña lisáis eelþoplénoi
読み:リーサ エンドリーニャ リサイス エールソプレーノイ
| lís-a | endríña | lis-áis | eelþoplén-oi |
| 書く-<(軽いものが)> | 子<主格> | 字-<〜たちを> | 灰盤-<与格> |
「子どもは灰盤に文字を書く。」
灰面として使う文。与格 eelþoplénoi が、字を付ける灰面を表す。重性子音語幹の与格単数は -oi。日常の習字の場面。
lísa viréla sáindaran.
読み:リーサ ヴィレーラ サインダラン。
| lís-a | viréla | sáindar-an. |
| 書く-<(軽いものが)> | ヴィレラ<主格> | 証文-<対格> |
「ヴィレラは証文を書く。」
書記・帳簿のような場面の平叙。動詞 lís-「書く」の直説法3人称単数・軽性は語尾に法の接尾辞がなく、語根に強勢が残って lísa になる。固有名詞 viréla が主語でも動詞は軽性の語尾 -a で受ける。sáindaran は軽性子音語幹 sáindar の単数対格。
lísa lisár traimlisán anaurímes
読み:リーサ リサール トラインリサーン アナウリーメス
| lís-a | lis-ár | traimlis-án | anaurím-es |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 年代記-<対格> | 上手の高み-<属格> |
「書記は「上手の高み」の年代記を書く。」
公的書物の文。改まった正式名を属格に用いて「上手の高みの年代記」とする。口頭の常談では análor が多く、anaurím は書式語として残る。traimlisá は軽性 a語幹として対格 -án をとる。
lísa lourvirár traumbél lourliséi
読み:リーサ ロウルヴィラール トラウンベール ロウルリセー
| lís-a | lourvirár | traumbél | lourlis-éi |
| 書く-<(軽いものが)> | 系譜読み<主格> | 縁組み<対格> | 系譜巻-<与格> |
「系譜読みは、縁組みを系譜の巻に書く。」
書物の文。traumbél は婚姻による結びつきを表す。lourliséi は lourlisá の与格で、「系譜の巻に」の意味である。
lísa híro plánan
読み:リーサ ヒーロ プラーナン
| lís-a | híro | plán-an |
| 書く-<(軽いものが)> | ヒロ<主格> | 帳簿-<対格> |
「ヒロが帳簿を書く。」
帳場・記録での報告のような文。人を指す名なので、動詞の3人称単数は軽性 -a で受ける。名自身は形を変えない。
lísa lisár téir haláis plánei
読み:リーサ リサール テール ハライス プラーネイ
| lís-a | lisár | téir | halá-is | plán-ei |
| 書く-<(軽いものが)> | 書記<主格> | 三 | 呼び-<〜たちを> | 帳簿-<与格> |
「書記は帳簿に三呼びを書き込む。」
帳簿・記録場面。書記が帳簿に単位を書きつける文。単位句 halá-is を動詞の対象として複数対格にとる。
séulan lisárai dulfáron hóumuls.
読み:セウラン リサーライ ドゥルファーロン ホームルス。
| séul-an | lis-ár-ai | dulfáron | hóum-uls. |
| 散らして配る-<彼らが> | 書く-<〜する人>-<〜たちが> | 下ろし荷<対格> | 炉-<与格・〜ら(古い母音交替)> |
「書記たちが、下ろし荷を各家の炉へ配る。」
倉・市での分配を表す日常用法。dulfáron は下ろし荷という集団的な受詞。hóumuls は与格複数で、各家の世帯を表す。動詞 séulan は主語 lisárai と複数一致している。
mé wáur kláulais aulisáres
読み:メー ワウル クラウライス アウリサーレス
| mé | wáur | klául-ais | au-lis-ár-es |
| <禁止・願いの打ち消し> | まねる<命令法> | 物真似-<〜たちを> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<属格> |
「書記の方の物真似をするな。」
高位者の真似を禁じる、やや口頭の禁制。否定禁止は mé+命令法で、命令法 2 単数は語幹 wáur。kláulais は軽性の複数対格。aulisáres は au-lisár「書記の方」の単数属格。
ké vándes fáron, orvél líses sáindaran?
読み:ケー ヴァンデス ファーロン、オルヴェール リーセス サインダラン?
| ké | vánd-es | fáron, | orvél | lís-es | sáindar-an? |
| <〜か> | 量る-<あなたが> | 荷<対格>, | OR | 書く-<あなたが> | 証文-<対格>? |
「荷を量っているのか、それとも証文を書いているのか。」
縁の市で働き手に仕事の種別を選ぶ問い。orvélが節を並べ、同じ2人称主語は第二節の動詞語尾だけで示す。目的語の枠は空けず、二つ目の節でも名詞を置く。
lís plíndo, orvél na vandéla senár fáron.
読み:リース プリンド、オルヴェール ナ ヴァンデーラ セナール ファーロン。
| lís | plíndo, | orvél | na | vand-él-a | sen-ár | fáron. |
| 書く<命令法><あなたが> | 荷札<対格>, | OR | <〜ない> | 量る-<〜だろう>-<(軽いものが)> | 見る-<〜する人・主格> | 荷<対格> |
「荷札を書け、さもなくば目付は荷を量らないだろう。」
市や帳場でのくだけた命令。命令法は語幹のむき出しの形で、語尾標識がないため書く.IMP.2SGのようにドットで法・人称を示す。orvélが後節の頭に立ち、成り行きを推量法で示す。重性o語幹plíndoは主格と対格が同形なので、対格は無標示として.ACCで注記する。
esós lísim sáindaran sórel.
読み:エソース リーシン サインダラン ソーレル。
| esós | lís-im | sáindar-an | sórel |
| そういうわけで | 書く-<私が> | 証文-<対格> | 今日 |
「そういうわけで、今日証文を書く。」
『なぜ証文を書くのか』(es pós líses sáindaran?)と問われたとき、答えの文頭に置いて、書くという帰結を述べる例。帳簿・書記の場面。答語では目的語を繰り返してもよい。
lísa lisár mirkrilíman kórvos.
読み:リーサ リサール ミルクリリーマン コルヴォス。
| lís-a | lis-ár | mirkril-ím-an | kórv-os. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 分ける-<〜の技・〜さ>-<対格> | 倉-<属格> |
「書記が倉の持ち場割りを書きつける。」
記録・帳場の場面。名詞句は中心語 mirkrilíman の後ろに属格 kórvos を置き、「倉の分ける配分=持ち場割り」とする。lisár は lís-「書く」に行為者接尾辞 -ár を付けた語。mirkrilím は対格 mirkrilíman で直接目的語になる。
orveléima lisár mélnan.
読み:オルヴェレーマ リサール メルナン。
| orveléim-a | lis-ár | méln-an. |
| 語順を入れ替える-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | 詩-<対格> |
「書記は詩の語順を入れ替える。」
書記が詩文を書き改める場での言い方。直接目的語の mélnan は、物理的な巻物そのものではなく、詩文の中の語の並びを指す。詩・句・文などの並びに対して使う。
flínim viráis te na lísa éndra.
読み:フリーニン ヴィライス テ ナ リーサ エンドラ。
| flín-im | vir-áis | te | na | lís-a | éndra. |
| 受け入れがたいと思う-<私が> | 言葉-<〜たちを> | <関係節> | <〜ない> | 書く-<(軽いものが)> | 人<主格> |
「人々が書き残さない言葉は、受け入れがたい。」
帳場や書の文脈で、書き残されない言葉を不当・不自然とみなす言い方。主文の目的語は軽性複合語viráの複対形viráis。関係節はteで導かれ、te句では関係の要となる目的語の空白をそのまま空ける。不定の一般的主語としてéndraを主格に置き、関係節内の動詞lís-aはその軽性の主語に一致する。teは無強勢で、指示詞の強勢あるtéと転写上は区別される。
dukrúnim auloimán aulisáres.
読み:ドゥクルーニン アウロイマーン アウリサーレス。
| du-krún-im | au-loim-án | au-lis-ár-es |
| <〜させていただく>-支える-<私が> | <お〜になる・御〜>-詞-<対格> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<属格> |
「「書記の方の詞を、手前が支えます。」」
書簡・改まった場で、目上の書記の方の詞(公言・決まり文句・申し立て)を追認し、保障する意。敬語では所有者だけでなく所有されるものにも au- を添えるため、`loimán` を `auloimán` とする。動詞には謙譲の接頭辞 du- を添え、所有者名も au- 付き属格 aulisáres にしている。語順は VSO で、主語は語尾 -im から判別される。
lísa lisár plánan amvirés.
読み:リーサ リサール プラーナン アンヴィレース。
| lís-a | lisár | plán-an | amvir-és |
| 書く-<(軽いものが)> | 書記<主格> | 帳簿-<対格> | 高原語-<属格> |
「書記は高原語の帳簿を書いている。」
書記の作業の場面。名詞句は「名詞+属格」の順で、plánan amvirés は「高原語の帳簿」。amvirá の属格は amvirés。
ké líses plánan un þailviréi?
読み:ケー リーセス プラーナン ウン サイルヴィレー?
| ké | lís-es | plán-an | un | þailvir-éi? |
| <〜か> | 書く-<あなたが> | 帳簿-<対格> | 内に | 都の改まった言葉-<与格> |
「帳簿を都の改まった言葉で書くか。」
帳場や書記の日常で、書きぶりの改まりを確かめる文。un+与格で「〜という言語・文体で」と範囲を示す。þailviráは宮廷語と都の標準的な書き言葉を指す。
lísim plíndo só ré éso gandér só krásen.
読み:リーシン プリンド ソー レー エーソ ガンデール ソー クラーセン。
| lís-im | plíndo | só | ré | és-o | gandér | só | krás-en. |
| 書く-<私が> | 札<対格> | この<重性> | <〜と(節)> | いる-<(重いものが)> | 硬木<主格> | この<重性> | 割れあり-<〜した・〜された> |
「私はこの荷札に、この硬木には割れがある、と書き込む。」
帳簿や荷札に、硬木に割れがあることを書き記す場面。主文は第一人称の lísim で、目的語 plíndo só のあとに ré で内容節を置く。内容節は éso gandér só krásen で、krásen が「割れあり」の検めの語として述語になる。
funeléra lisár próunan sé.
読み:フネレーラ リサール プローナン セー。
| funelér-a | lis-ár | próun-an | sé. |
| 書き留める-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 正当な所有者-<対格> | この<軽性> |
「書記がこの正当な所有者を書き留める。」
帳簿・記録の場面。帳簿上の帰属先として、正当な所有者を名指しして記す。próun は人を指すので軽性。単数対格は próunan。指示詞 sé は性を示し、格では変化しない。
wólau lisár si faronár.
読み:ウォーラウ リサール シ ファロナール。
| wól-au | lis-ár | si | faron-ár. |
| 迷う-<双数> | 書く-<〜する人・主格> | と | 荷-<〜する人・主格> |
「書記も荷持ちも決めかねている。」
帳簿や荷の手続きの場などで、判断が定まらない様子。faronár は fáron「荷」+-ár「〜する人」で、荷を扱う人=運び人ほどの意味。単数の名詞が二つ並ぶので、動詞は双数で受ける。
léisa lisár glimó só.
読み:レーサ リサール グリモー ソー。
| léis-a | lis-ár | glimó | só. |
| 書く<〜し終えた>-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | 滲み・染み<対格> | この<重性> |
「書記は、この滲み・染みを記した。」
帳場・書物の場面。荷札・布・紙などの色移りを記録対象として言う言い方。完了相 léis- を用いて、帳簿に書き済んだ事実として述べる。glímó は重性の単数対格で形が変わらず、指示詞 só が名詞句を後から重性で閉じる。
lóima kraselvá lisáres loimán.
読み:ロイマ クラセルヴァー リサーレス ロイマーン。
| lóim-a | kraselvá | lis-ár-es | loim-án. |
| 唱える-<(軽いものが)> | 裂けた声<主格> | 書く-<〜する人>-<属格> | 詞-<対格> |
「書記の裂けた声が詞を唱える。」
祭祀や書物の場の描写。主語は「裂けた声」で、その前に属格を置いて「書記の裂けた声」を作る。主語が軽性単数なので動詞は -a。
sléla lisár plánan
読み:スレーラ リサール プラーナン
| slél-a | lis-ár | plán-an |
| 広げる-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | 帳簿-<対格> |
「書記が帳簿を広げる。」
帳場や役所で帳簿を開いて机に広げる場面。布に限らず、書類や帳簿を平に扱う意でこの語が使える。
lísa lisár ré éso puló tó múel
読み:リーサ リサール レー エーソ プロー トー ムーエル
| lís-a | lis-ár | ré | és-o | puló | tó | múel |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | <〜と(節)> | いる-<(重いものが)> | 拍<主格> | あの<重性> | 遅い |
「書記は、あの拍は遅いと書いている。」
書物・手習い・韻律論の場面。補文は ré で導し、元の文の法と語形をそのまま保つ。引用節の中でも形容詞述語は存在動詞+主語+形容詞の形になる。あの.HV は重性の指示詞 tó。
na dulilána lisár símbo sáindares
読み:ナ ドゥリラーナ リサール シンボ サインダレス
| na | dulilán-a | lis-ár | símbo | sáindar-es |
| <〜ない> | 痕を消す-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | 印<対格> | 証文-<属格> |
「書記は証文の印を消さない」
記録・書物の文。否定の na を動詞の前に置く。主語は書記で、主語が軽性なので動詞は3人称単数軽性の -a で一致する。目的語の印が証文に属することを後置の属格で示す。
kréima lisár plánan endríñei.
読み:クレーマ リサール プラーナン エンドリーニェイ。
| kréim-a | lis-ár | plán-an | endríñ-ei. |
| 説明する-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | 帳簿-<対格> | 子ども-<与格> |
「書記は子どもに帳簿について説明する。」
日常の帳場・学びの場面での用い方。受け手は与格で表す。帳簿そのものを内容の焦点として目的語にとる。
áumel, lísa lisár plánan.
読み:アウメル、リーサ リサール プラーナン。
| áumel, | lís-a | lis-ár | plán-an. |
| 朝 | 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | 帳簿-<対格> |
「朝、書記が帳簿を書く。」
帳簿・書記の日常業務としての朝。基本語順は動詞–主語–目的語。lisár は行為者名詞、plána は軽性a語幹名詞で対格が -an。
funeléra lisár kloníño sáves.
読み:フネレーラ リサール クロニーニョ サーヴェス。
| funelér-a | lis-ár | kloníño | sáv-es. |
| 書き留める-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 小さな継ぎ目<対格> | 匙-<属格> |
「書記は匙の小さな継ぎ目を書き留める。」
帳簿・記録の文体。動詞–主語–目的語。目的語 kloníño は重性で、対格が主格と同形。所属を示す sáves は名詞の後ろの属格で、語根に強勢を保つ。
éso þéum lísen.
読み:エーソ セウン リーセン。
| és-o | þéum | lís-en. |
| いる-<(重いものが)> | 色づき<主格> | 書く-<〜した・〜された> |
「色づきは書き留められている。」
記録・帳簿の文。存在・状態を表す éso は主語 þéumo が重性なので3人称単数・重性語尾 -o。分詞 lísen は重性単数主格で無標。þéumo は þéum-o と分離する。
記録する
帳簿・年代記・系譜などに書き留める。
lisésa lisár nébro.
読み:リセーサ リサール ネーブロ。
| lis-és-a | lis-ár | nébro. |
| 記録する-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 霧<対格> |
「書記は霧(の来た日)を記すべし。」
書の司の決まりに見られる当為法の文。霧が来た日は、年代記に決まった順で書く項目の一つ。強勢は当為法の -és- に移る。nébro は重性o語幹なので、主格と対格が同じ形になる。
lísim gandér kélen kelárar.
読み:リーシン ガンデール ケーレン ケラーラル。
| lís-im | gandér | kél-en | kel-ár-ar. |
| 記録する-<私が> | 硬木<対格> | 伐る-<〜した・〜された> | 伐る-<〜する人>-<〜らの> |
「樵たちが伐った硬木を(帳簿に)記録する。」
市の帳付けの文。分詞 kélen は名詞の後ろに置き、その後ろの属格 kelárar は「樵たちによって」の意味になる。gandér は重性なので、対格でも語尾がつかない。
文字を書く他動詞。紙に書く、木札に墨で書く、帳簿や年代記に記録する、のすべてに使う。書かれた言葉は息を使わないので、口にしてはならない名前でも書くことは許される。法も約束も書いたものが正しいとされる国なので、「記録する」「証文にする」という重みのある語である。
klóima dulóur némes lisáis es lisáres.
読み:クロイマ ドゥロール ネーメス リサイス エス リサーレス。
| klóim-a | dulóur | ném-es | lis-áis | es | lis-ár-es. |
| 学ぶ-<(軽いものが)> | 子<主格> | <私>-<属格> | 字-<〜たちを> | から | 書く-<〜する人>-<属格> |
「私の子は書記から字を学んでいる。」
日常会話の文。誰から学ぶかは「es+属格」(〜から)で言う。時制がないので、「学んでいる」とも「学んだ」とも訳せる。
na vóila naþrenár té lisáis némores.
読み:ナ ヴォイラ ナスレナール テー リサイス ネーモレス。
| na | vóil-a | naþrenár | té | lis-áis | némor-es. |
| <〜ない> | 読む-<(軽いものが)> | 異邦人<主格> | あの<軽性> | 字-<〜たちを> | <我々>-<属格> |
「あの異邦人は我々の字を読めない。」
日常の会話。時制も「できる」の語形もないので、「読まない」と「読めない」は文脈で決まる。na は動詞の直前に置く。名詞句は「名詞+指示詞」「名詞+属格」の順。
tilésa lisáis flaindélei, mé tilésa gandér.
読み:ティレーサ リサイス フラインデーレイ、メー ティレーサ ガンデール。
| til-és-a | lis-áis | flaindél-ei, | mé | til-és-a | gandér. |
| 彫る-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 字-<〜たちを> | 版の木-<与格>, | <禁止・願いの打ち消し> | 彫る-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 硬木<対格> |
「字は版の木に彫るべし。硬木は彫らぬこと。」
彫り師の作法を説く教えの言葉で、法典や碑文と同じ当為法を使う。主語を言わないので「人は〜すべし」の意味になり、動詞は軽性の -a をとる。flaindél は軽性の子音語幹なので与格は -ei。後半の gandér は重性なので、主格と対格が同じ形のまま目的語になる。言葉は上へ昇るもので、版の木はそれを載せる木、硬木は下へ行く木なので彫らない、という考えを述べた文。
lúin vóila endríña lisáis fóndelais, glóuma.
読み:ルーイン ヴォイラ エンドリーニャ リサイス フォンデライス、グローマ。
| lúin | vóil-a | endríña | lis-áis | fóndel-ais, | glóum-a. |
| とき | 読む-<(軽いものが)> | 子ども<主格> | 字-<〜たちを> | 古い-<〜たちを> | 惑う-<(軽いものが)> |
「子どもは古い字を読むと戸惑う。」
主節の主語は、lúin の節の主語と同じなので言わない。軽性の動詞の語尾 -a で受けている。
na pánda pandá rúgal lisáis séurilais.
読み:ナ パンダ パンダー ルーガル リサイス セウリライス。
| na | pánd-a | pand-á | rúgal | lis-áis | séuril-ais. |
| <〜ない> | 刷る-<(軽いものが)> | 刷る-<〜するもの(重)・主格> | 粗い | 字-<〜たちを> | 整った-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格> |
「粗い版木では、整った字は刷れない。」
彫り師の仲間で言われる言い回しで、作りの雑な版木を戒める。pandá「版木」は版の木で作られ、伐ったあとも軽性なので、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。
tílim lisáis flaindélei náumei.
読み:ティーリン リサイス フラインデーレイ ナウメイ。
| tíl-im | lis-áis | flaindél-ei | náum-ei. |
| 彫る-<私が> | 字-<〜たちを> | 版の木-<与格> | 柔らかい-<軽性・与格> |
「柔らかな版の木に字を彫る。」
彫り師の仕事を言う文。版の木は伐って寝かせたあとも軽性のままなので、形容詞は軽性の与格 -ei で一致する。伐った脂の木なら重性の -oi で一致するので、その違いが比べどころになる。
aurainiþénde aulisár lisáis némei.
読み:アウライニセンデ アウリサール リサイス ネーメイ。
| au-rainiþ-énd-e | au-lisár | lis-áis | ném-ei. |
| <お〜になる・御〜>-教える-<〜しますように>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-書記 | 字-<〜たちを> | <私>-<与格> |
「書記の方に、私に字をお教えいただきたく存じます。」
目上の書記に教えを請う、上向きの願い。動詞にも名詞にも尊敬の au- をつける。教わる人は与格で言う。強勢は願望法の -énd- に移るので、使役の -íþ- の強勢は消える。
na ráina faronár lisáis, ráina símbo.
読み:ナ ライナ ファロナール リサイス、ライナ シンボ。
| na | ráin-a | faronár | lis-áis, | ráin-a | símbo. |
| <〜ない> | 知る-<(軽いものが)> | 運び人<主格> | 字-<〜たちを> | 知る-<(軽いものが)> | 焼印<対格> |
「運び人は字を知らないが、焼印なら知っている。」
後半の文は、主語が前半と同じなので省いている。símbo は重性o語幹なので、対格も主格と同じ形になる。ここでは単数で「焼印というもの」を総称している。同じ形の焼印が何百本もの丸太に押されているので、字の読めない者もまず焼印の形を覚える。
póso? na vóilim lisáis.
読み:ポーソ?ナ ヴォイリン リサイス。
| póso? | na | vóil-im | lis-áis. |
| これは何だ | <〜ない> | 読む-<私が> | 字-<〜たちを> |
「これは何だ? 字が読めないんだ。」
字の書かれた荷札や木札を示して尋ねる言い方。下向きかくだけた場で使う問いで、目上の人には使わない。高原語には「〜できる」を表す専用の形がないので、「字を読まない」で「読めない」の意味を表す。
ké vóiles lisáis?
読み:ケー ヴォイレス リサイス?
| ké | vóil-es | lis-áis? |
| <〜か> | 読む-<あなたが> | 字-<〜たちを> |
「お前は字が読めるか。」
はい・いいえで答える下向きの問い。「〜できる」にあたる専用の形はなく、直説法で「字を読むか」と尋ねて読み書きの力を問う。答えは動詞を繰り返して vóilim、または na vóilim と言う。
vóila faronár símbo gandéros, na vóila lisáis.
読み:ヴォイラ ファロナール シンボ ガンデーロス、ナ ヴォイラ リサイス。
| vóil-a | faron-ár | símbo | gandér-os, | na | vóil-a | lis-áis. |
| 見分ける-<(軽いものが)> | 荷-<〜する人> | 印<対格> | 硬木-<属格> | <〜ない> | 読む-<(軽いものが)> | 字-<〜たちを> |
「運び人は硬木の焼印は見分けるが、字は読めない。」
同じ vóil- が、前半では焼印の形を見分ける意味で、後半では文字を読む意味で使われている。丸太の木口の焼印は何百本にも同じ形で押されているので、文字を知らない者もその形を覚える。
rainíþa rainiþár lisáis kloimárei.
読み:ライニーサ ライニサール リサイス クロイマーレイ。
| rainíþ-a | rainiþ-ár | lis-áis | kloim-ár-ei. |
| 教える-<(軽いものが)> | 教える-<〜する人> | 字-<〜たちを> | 学ぶ-<〜する人>-<与格> |
「師は弟子に字を教える。」
rainíþ- は ráin-「知る」に使役の -íþ- がついた語で、「知らせる」から「教える」になった。行為者名詞 rainiþár「師」は同じ語根から作られている。教わる人は与格で表す。
klóimim lisáis es rainiþáres.
読み:クロイミン リサイス エス ライニサーレス。
| klóim-im | lis-áis | es | rainiþár-es |
| 学ぶ-<私が> | 字-<〜たちを> | から | 師-<属格> |
「私は師から字を学んでいる。」
日常の会話で、自分が習っていることを言う文。主語は動詞の語尾 -im でわかるので言わない。「誰から学ぶか」は es+属格(〜から)で言う。時制がないので、「学んでいる」とも「学んだ」とも訳せる。
rainíþa rainiþár lisáis kloimárail.
読み:ライニーサ ライニサール リサイス クロイマーライル。
| rainíþ-a | rainiþár | lis-áis | kloimár-ail |
| 教える-<(軽いものが)> | 師<主格> | 字-<〜たちを> | 弟子-<〜らに> |
「師は弟子たちに字を教える。」
基本の語順「動詞–主語–目的語–与格」の文。rainiþár は rainíþ-「教える」に -ár「〜する人」がついた語で、強勢は -ár に移る。教わる人は与格で表す。
kloimésa endríña lisáis rainiþárei.
読み:クロイメーサ エンドリーニャ リサイス ライニサーレイ。
| kloim-és-a | endríña | lis-áis | rainiþár-ei |
| 学ぶ-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 子ども<主格> | 字-<〜たちを> | 師-<与格> |
「子は師のもとで字を学ぶべし。」
学び舎の心得として書かれる当為法の文。当為法の -és- は強勢をもつので、語根 klóim- の強勢は消えて kloimésa となる。学ぶ場所(師のもと)は前置詞なしの与格で言う。
aurainiþénde aurainiþár lisáis dunémei.
読み:アウライニセンデ アウライニサール リサイス ドゥネーメイ。
| au-rainiþ-énd-e | au-rainiþár | lis-áis | duném-ei |
| <お〜になる・御〜>-教える-<〜しますように>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-師<主格> | 字-<〜たちを> | 手前-<与格> |
「師の方に、手前に字をお教えいただきたく存じます。」
弟子が師に願い出るときの上向きの言い方。命令法ではなく願望法の3人称を使い、目の前の師を3人称の主語 aurainiþár として扱う。動詞にも名詞にも尊敬の au- がつき、r で始まる語なので au- はそのままの形でつく。自分は謙譲の代名詞 duném の与格で言う。
trál lisáis rainiþáres!
読み:トラール リサイス ライニサーレス!
| trál | lis-áis | rain-iþ-ár-es! |
| 手本をなぞる<命令法><あなたが> | 字-<〜たちを> | 知る-<〜させる>-<〜する人>-<属格> |
「師の字をなぞれ。」
書の稽古で、師が弟子に言う下向きの命令。rainiþár「師」は ráin-「知る」に使役の -íþ- と「〜する人」の -ár がついた語で、ここでは属格「師の」。
trálan kloimárai lisáis.
読み:トラーラン クロイマーライ リサイス。
| trál-an | kloim-ár-ai | lis-áis. |
| 手本をなぞる-<彼らが> | 学ぶ-<〜する人>-<〜たちが> | 字-<〜たちを> |
「弟子たちは手本の字をなぞる。」
弟子 kloimár は軽性なので、複数主格は -ai。主語が複数なので、動詞は3人称複数の -an をとる。
orveléimim brúndul lisés.
読み:オルヴェレーミン ブルンドゥル リセース。
| orveléim-im | brúnd-ul | lis-és |
| 並べ替える-<私が> | 塊-<〜たちを> | 字-<属格・単数> |
「私は字の塊(活字)を並べる。」
意味2。orveléim- と結ぶと brúndul は活字を指す。lisés は「字の」の単数属格で、通例の定型 brúndo lisés として、ただの塊と言い分ける。
orveléim lisáis!
読み:オルヴェレーン リサイス!
| orveléim | lis-áis! |
| 組み替える<命令法><あなたが> | 字-<〜たちを> |
「字を組み替えろ!」
活字作業の現場で使う下向きの命令法。orveléim- の命令法 2 人称単数は語幹そのまま。組み替える対象を直接目的語にとる。
orveléimin lisáis, pándim.
読み:オルヴェレーミン リサイス、パンディン。
| orveléim-in | lis-áis, | pánd-im. |
| 組み替える<〜し終えた>-<〜して・〜く> | 字-<〜たちを> | 刷る-<私が> |
「字を組み替え終えて、刷る。」
版組みの手順を表す定型。副動詞の orveléimin は、主節の pándim と同一の主語を持つ完了副動詞である。目的語の lisáis は活字・駒・字札などの複数対格。
他動詞。直説法3単 lísa(軽)/líso(重)、1単 lísim。推量 liséla、願望 lisénde、当為 lisésa、仮定 lisíre。命令 lís/lisáu/lísir。完了語根 léis-。分詞 lísen「書かれた」。尊敬 aulís-、謙譲 dulís-。くだけた話し方の lís は命令形と同じ形になる。
派生語に lisár「書記」、lisím「書法」。
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