小説
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粥
雑穀を煮た日常の粥。
ésa lúsa tambóros némei.
読み:エーサ ルーサ タンボーロス ネーメイ。
| és-a | lúsa | tambór-os | ném-ei. |
| いる-<(軽いものが)> | 粥<主格> | 雑穀-<属格> | <私>-<与格> |
「私には雑穀の粥がある。」
台所での日常の文。所有は「ある+持ち主の与格」で言う。動詞は持たれている物 lúsa(軽性)に一致して -a になる。材料は属格 tambóros で後ろに添える。tambór は重性なので、属格は -os になる。
esénde lúsa sé aurélei.
読み:エセンデ ルーサ セー アウレーレイ。
| es-énd-e | lúsa | sé | aurél-ei. |
| いる-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 粥<主格> | この<軽性> | あの方-<与格> |
「この粥を、どうぞあの方に(お召し上がりくださいませ)。」
目上の人に食事を勧める、遠回しで改まった言い方。「食べよ」とは言わず、所有の構文「ある+持ち主の与格」を願望法にして、「この粥があの方のものとなりますように」と言う。強勢は願望法の -énd- に移る。
ké súles lúsan?
読み:ケー スーレス ルーサン?
| ké | súl-es | lús-an? |
| <〜か> | すする-<あなたが> | 粥-<対格> |
「粥をすすっているのか。」
食卓での日常的な問い。ké ではい・いいえの問いを作る。2人称を使っているので、同じ身分か目下の相手への問い。答えは動詞を繰り返して「súlim」(すすっている)または「na súlim」(すすっていない)。
súlim lúsan.
読み:スーリン ルーサン。
| súl-im | lús-an. |
| すする-<私が> | 粥-<対格> |
「粥をすすっている。」
雨期の食卓での日常の場面。súl- は他動詞で、流質の食物 lúsa を対格で取る。日本語話者は lúsan の対格語尾 -an を聞き落とし、「粥」が目的語だと気づきにくい。
súla endríña lúsan un hóumoi.
読み:スーラ エンドリーニャ ルーサン ウン ホーモイ。
| súl-a | endríña | lús-an | un | hóum-oi. |
| すする-<(軽いものが)> | 子ども<主格> | 粥-<対格> | 内に | 炉-<与格> |
「子どもが炉のそばで粥を吸い上げている。」
椀を口元まで傾けて汁を直接吸い上げる動作(意味2)。un+与格で「〜の内で」を表す。hóum は重性名詞(炉・世帯の量名詞)で、与格は -oi。endríña は指小辞 -íña でできた軽性名詞(子ども)。日本語話者は endríña の ñ を「ニャ」と聞き取れるが、語末の -a を「エ」と聞き、主格だと気づきにくい。
sórel, luséra dórin lúsan.
読み:ソーレル、ルセーラ ドーリン ルーサン。
| sórel, | lus-ér-a | dórin | lús-an. |
| 今日 | 粥-<〜でする>-<(軽いものが)> | 男<主格> | 粥-<対格> |
「今日は男が粥を食べている。」
炉ばたの日常文。場の枠「今日」を動詞前に置き、読点で区切る。主語 dórin は人なので軽性一致となり、動詞は3人称単数軽性の -a をとる。目的語 lúsa は軽性a語幹の対格 lúsan。
sórel foumtáula endríña lúsan
読み:ソーレル フォウンタウラ エンドリーニャ ルーサン
| sórel | foumtául-a | endríña | lús-an |
| 今日 | 温取る-<(軽いものが)> | 子ども<主格> | 粥-<対格> |
「今日は、子どもが温かい粥をすする。」
雨期の食卓など温かい粥の場面での日常の叙述。foumtául- は温かい粥・汁物のような流質食物を目的語にとり、固形の食物や冷たい水には使わない。直説法現在で主語 endríña は軽性なので語尾は -a。
ké foumtáules tás lúsan?
読み:ケー フォウンタウレス タース ルーサン?
| ké | foumtául-es | tás | lús-an |
| <〜か> | 温取る-<あなたが> | <あなた・主格> | 粥-<対格> |
「お前は温かい粥をすするのか。」
日常会話での直接問い。縁の市の取引言葉では foumtául- は使われない。2人称単数の直説法 foumtáules を使っている。
lusérim lúsan sé.
読み:ルセーリン ルーサン セー。
| lusér-im | lús-an | sé. |
| 流質の食事をとる-<私が> | 粥-<対格> | この<軽性> |
「私はこの粥を、流質の食事としていただこう。」
食卓での改まった申し出。くだけた場では mán- や súl- に置き換えられることが多い。名詞 lúsa は軽性a語幹で、対格は lúsan。指示詞 sé は軽性の形。
luséra ilanár lúsan an nébroi.
読み:ルセーラ イラナール ルーサン アン ネーブロイ。
| lusér-a | ilanár | lús-an | an | nébr-oi. |
| 流質の食事をとる-<(軽いものが)> | 星読み<主格> | 粥-<対格> | 上手 | 霧-<与格> |
「星読みは、霧の前に粥という流質の食事をとる。」
作法書や記録のような文。動詞が文頭に立ち、主語の ilanár は人間なので動詞は軽性3単 -a が付く。an nébroi は「霧の前に」の前置詞句で、ここでは時を示す。
foumtáulim lúsan sórel
読み:フォウンタウリン ルーサン ソーレル
| foumtául-im | lús-an | sórel |
| いただく-<私が> | 粥-<対格> | 今日 |
「私は今日、粥をいただく。」
雨期や霧期の食卓で、温かい粥を口にする際の改まった言い回し。 foumtául- は温かい流質食物を摂ることに限られ、冷たい水や固形食物には使わない。 foumtáulim は第一人称単数の直説法。 lúsa は軽性の語で、格語尾が付く際は語幹を lús とし、対格は lús-an になる。
gléla endríña lúsan es kúulos.
読み:グレーラ エンドリーニャ ルーサン エス クーロス。
| glél-a | endríña | lús-an | es | kúul-os |
| よそう-<(軽いものが)> | 子ども<主格> | 粥-<対格> | から | 鍋-<属格> |
「子どもが鍋から粥をよそう。」
日常の記述文。gléla は 3人称単数・軽性の直説法で、主語 endríña は人なので軽性。出所は前置詞句 es kúulos(kúulo の単数属格)で表す。glél は社会的な配給や抽象的な「与える」ではなく、匙で食物を別の器に移す動作そのものを指す。
glél lúsan!
読み:グレール ルーサン!
| glél | lús-an |
| よそう<命令法><あなたが> | 粥-<対格> |
「粥をよそえ。」
くだけた日常の命令。命令法2人称単数は語幹そのまま glél。目的語 lúsan は対格。glél 自体には上下の含みはないが、命令法そのものは下向きの場面で使うのが普通。
日々の糧
『粥に困らぬ』のように、日々の暮らし向き・食い扶持を広く指す。
na esíro fáron, na eséla lúsa faronárei.
読み:ナ エシーロ ファーロン、ナ エセーラ ルーサ ファロナーレイ。
| na | es-ír-o | fáron, | na | es-él-a | lúsa | faronár-ei. |
| <〜ない> | いる-<もし〜なら>-<(重いものが)> | 荷<主格> | <〜ない> | いる-<〜だろう>-<(軽いものが)> | 日々の糧<主格> | 運び人-<与格> |
「荷がなければ、運び人に日々の糧はなかろう。」
崖道の暮らしを言う、決まった言い方。条件の部分は、接続詞を使わずに仮定法だけで作る。荷 fáron が重性なので、動詞は -o をとる。帰結の部分は推量法で、lúsa(軽性)に一致して -a になる。lúsa は「食い扶持」の意味。
kéla houmár árnelais, ré esénde lúsa élei.
読み:ケーラ ホウマール アルネライス、レー エセンデ ルーサ エーレイ。
| kél-a | houmár | árnel-ais, | ré | es-énd-e | lúsa | él-ei. |
| 伐る-<(軽いものが)> | 家の主<主格> | 木-<〜たちを> | <〜と(節)> | いる-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 日々の糧<主格> | <3人称単数・軽性>-<与格> |
「家の主は、粥に困らぬよう木を伐る。」
「ré+願望法」は目的を表す。所有は「ある+持ち主の与格」で言うので、「その人に粥がある」が「暮らしに困らない」という意味になる。élei は家の主を指す。ここでの lúsa は、日々の食い扶持を広く指している。
雑穀を水で煮た粥。高原でもっとも普通の食べ物で、朝夕の炉で炊かれる。雑穀の種類ごとに粥の炊き方が決まっている。塩けはごく薄く、もてなしの席では別の小皿に塩をひとつまみ添える。穀物(tambór)は重性なのに、粥は軽性に属する。話し手は『炉にかけた粥は湯気になって昇るから』と説明するが、冷めた粥でも一致は軽性のままで、文法上は固定した古い区分である。
軽性・a語幹(語根に強勢)。対 lúsan、属 lúses、与 lúsei、複 lúsai。
古高原語 *lúsa から。語末の母音は s の後ろなので古い脱落に当たらず残った。干潟語の lusá(粥)はこの語の古い借用と言われることがある。
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