小説
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〜とき
時を表す節を導き、「〜するとき・〜すると」の意味を表す。
lúin áuran ombára ilánai, dulíþan kelárai gandér.
読み:ルーイン アウラン オンバーラ イラーナイ、ドゥリーサン ケラーライ ガンデール。
| lúin | áur-an | ombára | ilán-ai, | dul-íþ-an | kel-ár-ai | gandér. |
| とき | 昇る-<彼らが> | 十 | 灯-<〜たちが> | 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> |
「十の灯が昇ると、樵たちは硬木を下ろす。」
「〜とき」の節は lúin で始め、ふつう主節の前に置く。ombára ilánai「十の灯」は星座の名前で、古い形の「十」が固まって残ったもの。星を数えているわけではない。
lúin fléira aldár áuren es dúnos, snéiman éndrai.
読み:ルーイン フレーラ アルダール アウレン エス ドゥーノス、スネーマン エンドライ。
| lúin | fléir-a | aldár | áur-en | es | dún-os, | snéim-an | éndr-ai. |
| とき | お出ましになる-<(軽いものが)> | 座<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | から | 王の丘-<属格> | 身をかがめる-<彼らが> | 人-<〜たちが> |
「高き座が王の丘からお出ましになると、人々は身をかがめる。」
都での王の行幸を言う文。単に dún と言っても、文脈から湖都の北の、王の居所がある丘を指す。fléir- は「行く」の尊敬の補充形。lúin の時の節は主節の前に置く。
lúin tóro nébro, na þéla torár þelán.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ セーラ トラール セラーン。
| lúin | tór-o | nébro, | na | þél-a | tor-ár | þel-án. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | <〜ない> | 名乗る-<(軽いものが)> | 来る-<〜する人> | 名前-<対格> |
「霧が来ると、客は名を名乗らない。」
霧の中で名前を声に出すと下の国に聞かれる、という禁忌を述べた文。霧 nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。直説法の否定には na を使う。
lúin áura álmar, émbelimor fóndar némores.
読み:ルーイン アウラ アルマル、エンベリモル フォンダル ネーモレス。
| lúin | áur-a | álmar, | émbel-imor | fóndar | némor-es. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 白月<主格> | 祀る-<我々が> | 源<対格> | <我々>-<属格> |
「白月が昇ると、我々は我らの始祖を祀る。」
白月の満月の夜に祖先を祀る習わしを述べた文。fóndar は重性なので、目的語になっても主格と同じ形のまま。所有者を表す属格 némores は名詞の後ろに置く。lúin の節は主節の前に来る。
lúin élþa ilána, tóra senár.
読み:ルーイン エルサ イラーナ、トーラ セナール。
| lúin | élþ-a | ilána, | tór-a | sen-ár. |
| とき | 燃える-<(軽いものが)> | 灯<主格> | 来る-<(軽いものが)> | 見る-<〜する人> |
「灯がともると、目付がやって来る。」
縁の市の夕方の言い方。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。ilána は軽性a語幹なので、動詞 élþa も tóra も軽性の -a をとる。主節も VSO の語順どおり、動詞 tóra が主語 senár の前に来る。
lúin áura álmar, hóinimor.
読み:ルーイン アウラ アルマル、ホイニモル。
| lúin | áur-a | álmar, | hóin-imor. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 白月<主格> | 帰る-<我々が> |
「白月が昇ったら、帰ろう。」
日常の時の言い方。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。月は軽性なので、動詞は -a をとる。時刻を月や星の昇りで言うのは、高原ではごくふつうのこと。
lúin tóro nébro, dúlan orenvandárai du dálor.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ドゥーラン オレンヴァンダーライ ドゥ ダーロル。
| lúin | tór-o | nébro, | dúl-an | orenvandár-ai | du | dálor. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | 南へ行く-<彼らが> | 縁商人-<〜たちが> | 下手 | 下の国<対格> |
「霧が来るころ、縁商人たちは下(干潟)へ帰っていく。」
dúl- は、北が「上」の国では、そのまま「南へ行く・干潟へ行く」の意味になる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。縁商人は軽性の人なので、複数主格は -ai になる。霧が崖を上りはじめると縁の市が閉じることを述べた文。
lúin brúuma éndra es orénos, dúlau gromó si selvá.
読み:ルーイン ブルーマ エンドラ エス オレーノス、ドゥーラウ グロモー シ セルヴァー。
| lúin | brúum-a | éndra | es | orén-os, | dúl-au | gromó | si | selvá. |
| とき | 落ちる-<(軽いものが)> | 人<主格> | から | 縁-<属格> | 下る-<双数> | 体<主格> | と | 魂<主格> |
「人が縁から落ちると、体も魂もともに下へ引かれていく。」
崖から落ちて死ぬことが恐れられる理由を述べる、教えの文。単数の名詞を si で二つ並べたので、動詞は双数の dúlau になり、性を区別しない。重い体と軽い魂がそろって下るのは、高原の考えではいちばん不吉なことである。
lúin glóira ausenár, luuménde sáindaran sé.
読み:ルーイン グロイラ アウセナール、ルーメンデ サインダラン セー。
| lúin | glóir-a | au-sen-ár, | luum-énd-e | sáindar-an | sé. |
| とき | お越しになる-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人> | ご覧になる-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 証文-<対格> | この<軽性> |
「目付殿がお越しになりましたら、この証文をご覧いただきたく存じます。」
縁の市で、都の手代のような者が改まって言う依頼。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。後半の主語は前半と同じ目付なので、言わずに省いている。命令の代わりに願望法の3人称を使い、lúum-「見る」の尊敬の補充形を使う。
lúin lóima ráuvan loimán, kéla kelár gandér.
読み:ルーイン ロイマ ラウヴァン ロイマーン、ケーラ ケラール ガンデール。
| lúin | lóim-a | ráuvan | loim-án, | kél-a | kel-ár | gandér. |
| とき | 唱える-<(軽いものが)> | 森の巫<主格> | 詞-<対格> | 伐る-<(軽いものが)> | 伐る-<〜する人・主格> | 硬木<対格> |
「森の巫が詞を唱えると、樵は硬木を伐る。」
硬木を伐る作法を述べた文。「〜するとき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。kelár「樵」は kél- に「〜する人」の -ár がついた語。硬木は重性なので、主格と対格が同じ形 gandér になる。詞を唱えずに伐ることは禁忌とされる。
lúin tóro nébro, na sénimor sílaran.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ セーニモル シーララン。
| lúin | tór-o | nébro, | na | sén-imor | sílar-an. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | <〜ない> | 見る-<我々が> | 月-<対格> |
「霧が来ると、月が見えなくなる。」
霧期の不安を言う文。霧 nébro は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。主節は直説法なので、否定には na を使う。
lúin tóro nébro, mé hál þelán!
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー ハール セラーン!
| lúin | tór-o | nébro, | mé | hál | þel-án! |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 呼ぶ<命令法><あなたが> | 名前-<対格> |
「霧が来たら、名を呼ぶな。」
親が子に言い聞かせる禁止の言い方。霧の中で名前を大声で呼ぶと、下の国にその名を聞かれ、名の主が下へ引かれるとされる。nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。禁止は「mé+命令法」で言う。霧の中で人を呼ぶときは、名前の代わりに té「そこの方」などを使う。
lúin na tóro nébro, méirim grúndo.
読み:ルーイン ナ トーロ ネーブロ、メーリン グルンド。
| lúin | na | tór-o | nébro, | méir-im | grúndo. |
| とき | <〜ない> | 来る-<(重いものが)> | 霧期<主格> | 与える-<私が> | 掛け<対格> |
「霧期が来ないうちに、掛けを払います。」
縁の市での、精算の約束の言葉。霧の中で結んだ約束は重んじられないので、精算はかならず霧期の前に済ませる。同じことを市では、決まり文句の an nébroi「霧の前に(期限までに)」で言うことが多い。
lúin éso nébro, mé þondésa þondán.
読み:ルーイン エーソ ネーブロ、メー ソンデーサ ソンダーン。
| lúin | és-o | nébro, | mé | þond-és-a | þond-án. |
| とき | いる-<(重いものが)> | 霧期<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 誓う-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 誓い-<対格> |
「霧期のあいだは、誓いを立てぬこと。」
法典や碑文に見られる、当為法を使った禁止。主語を言わないので一般の人が主語になり、動詞は軽性の形をとる。霧の夜の誓いは祖先に届かず無効とされる。その信仰を定めとして書いた文。
séirim tásan, lúin áura sílar.
読み:セーリン ターサン、ルーイン アウラ シーラル。
| séir-im | tás-an, | lúin | áur-a | sílar. |
| 待つ-<私が> | <あなた>-<対格> | とき | 昇る-<(軽いものが)> | 月<主格> |
「月が昇るころ、お前を待っている。」
同じ段の者どうしの、くだけた言い方。tás は②型の語尾で格変化し、対格は tásan になる。lúin は「〜とき」の節を導き、節の中も動詞で始まる。目上の人には tás を使わず、役職名などを3人称で言う。
lúin éso nébro, mé vírir þeláis.
読み:ルーイン エーソ ネーブロ、メー ヴィーリル セライス。
| lúin | és-o | nébro, | mé | vír-ir | þel-áis. |
| とき | いる-<(重いものが)> | 霧<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 言う-<皆で〜せよ> | 名前-<〜たちを> |
「霧が出ているときは、名を呼んではならぬ。」
霧の中で名前を呼ぶと下の国に聞かれるという禁忌を、年長者が若者たちに言い聞かせる言い方。vír- が名前を目的語にとると「名を呼ぶ・口にする」の意味になる。禁止は mé+命令法で、相手が複数なので命令法の2複 -ir を使う。lúin の節は主節の前に置く。
lúin tóra senár, sénim élan.
読み:ルーイン トーラ セナール、セーニン エーラン。
| lúin | tór-a | sen-ár, | sén-im | él-an. |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 見る-<〜する人> | 見る-<私が> | 彼-<対格> |
「目付が来たとき、私は彼を見かけた。」
日常の会話。主語の代名詞は動詞の語尾でわかるので言わない。目的語の代名詞は省けないので、対格の élan を置く。「〜とき」の節は lúin で始めて、主節の前に置く。時制はないので、文脈によって「見る」とも「見た」とも訳せる。
lúin tóro nébro, mé hál þelán éndrar.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー ハール セラーン エンドラル。
| lúin | tór-o | nébro, | mé | hál | þel-án | éndr-ar. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 呼ぶ<命令法><あなたが> | 名前-<対格> | 人-<〜らの> |
「霧が来たら、人の名を呼ぶな。」
子どもに霧期の禁忌を教えるときの言い方。lúin の節は主節の前に置き、読点で区切る。霧 nébro は重性なので、動詞は -o の形になる。禁止は mé と命令法で言う。
lúin hóines, niléimor muró.
読み:ルーイン ホイネス、ニレーモル ムロー。
| lúin | hóin-es, | nil-é-imor | muró. |
| とき | 帰る-<あなたが> | 飲む-<〜だろう>-<我々が> | 濁り酒<対格> |
「お前が帰ってきたら、濁り酒を飲もう。」
親しい者どうしの別れぎわの言い方。時制がないので、まだ起きていないことも lúin の節では直説法で言える。主節の未来のことは推量法で言う。1人称複数の前では、推量法の -él- の l が落ちる。
lúin áuran ombára ilánai, dúlan kelárai du orén.
読み:ルーイン アウラン オンバーラ イラーナイ、ドゥーラン ケラーライ ドゥ オレーン。
| lúin | áur-an | ombára | ilán-ai, | dúl-an | kel-ár-ai | du | orén. |
| とき | 昇る-<彼らが> | 十 | 灯-<〜たちが> | 下る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 下手 | 縁<対格> |
「十の灯が昇ると、樵たちは縁へ下りていく。」
「〜とき」の節は lúin で始めて、主節の前に置く。ombára ilánai「十の灯」は年の始まりを告げる星の群れの名前で、ombára は数えた結果ではなく名前の一部。そのため、星を数えることの禁忌には当たらない。ilánai は語根 ilán- に複数主格の語尾 -ai がついた形。
na lúuman aursárai séndo, lúin tóro nébro es orénos.
読み:ナ ルーマン アウルサーライ センド、ルーイン トーロ ネーブロ エス オレーノス。
| na | lúum-an | aursár-ai | séndo, | lúin | tór-o | nébro | es | orén-os. |
| <〜ない> | ご覧になる-<彼らが> | 祖先-<〜たちが> | この世<対格> | とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | から | 縁-<属格> |
「縁から霧が上がってくるとき、祖先はこの世をご覧にならない。」
霧期を恐れる理由を語る言い方。ここでの séndo は話し手のいる場所ではなく、上(天)と下(干潟・地の底)のあいだにある、人の生きる「中の世界」を指す。祖先には「見る」の尊敬の補充形 lúum- を使う。祖先は数えないので、複数はひとまとまりの「方々」の意味になる。
lúin tóro nébro, hóinimor telúin.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ホイニモル テルーイン。
| lúin | tór-o | nébro, | hóin-imor | telúin. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | 帰る-<我々が> | その時 |
「霧が来たら、その時に我々は帰る。」
市を閉じる時期を話す日常の会話。lúin の節で示した時を、主節の telúin がもう一度指している。霧 nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。telúin は、これから先の時にも過ぎた時にも使える。
lúin glǘno véinor, tóran faronárai snírai séndo.
読み:ルーイン グリューノ ヴェーノル、トーラン ファロナーライ スニーライ センド。
| lúin | glǘn-o | véinor, | tór-an | faronár-ai | snír-ai | séndo. |
| とき | 凍る-<(重いものが)> | 湖<主格> | 来る-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | 少ない-<〜たちが> | ここ |
「湖が凍るころには、ここへ来る運び人は少なくなる。」
lúin の節は主節の前に置く。湖 véinor は地の上の水なので重性で、動詞は -o をとる。主節の主語 faronárai は軽性・複数・主格で、snírai はそれに一致する。運び人のような働き手は数えてよいので、snír で多い少ないを言ってもかまわない。凍りの頃の崖道を言う文。
lúin tóro nébro, na séno senó dáu sílarau.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ セーノ セノー ダウ シーララウ。
| lúin | tór-o | nébro, | na | sén-o | senó | dáu | sílar-au. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | <〜ない> | 見る-<(重いものが)> | 目<主格> | 二 | 月-<双数> |
「霧が来れば、目には二つの月も見えない。」
霧期の不安を言う、言い習わしのような文。senó は sén-「見る」に重性のもの名詞の接辞 -ó がついた語で、重性なので動詞は -o をとる。月は星ではないので、dáu「二」で数えて双数にしてよい。
lúin kélan kelárai gandér, loimésa ráuvan loimán téir fréimais.
読み:ルーイン ケーラン ケラーライ ガンデール、ロイメーサ ラウヴァン ロイマーン テール フレーマイス。
| lúin | kél-an | kel-ár-ai | gandér, | loim-és-a | ráuvan | loim-án | téir | fréim-ais. |
| とき | 伐る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> | 唱える-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 森の巫<主格> | 詞-<対格> | 三 | 度回-<〜たちを> |
「樵たちが硬木を伐るときは、森の巫が詞を三度唱えるべし。」
降ろし場の碑に刻まれるような、儀礼の作法を定める当為法の文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。主節では主語を言っているので、それに一致して3人称単数・軽性になる。強勢は当為法の -és- に移り、語根の ´ は消える。三度は téir fréimais(複数対格)。
lúin na sénimor gromó éles, elþíþimor fáron éles.
読み:ルーイン ナ セーニモル グロモー エーレス、エルシーシモル ファーロン エーレス。
| lúin | na | sén-imor | gromó | él-es, | elþ-íþ-imor | fáron | él-es. |
| とき | <〜ない> | 見る-<我々が> | 亡骸<対格> | <3人称単数・軽性>-<属格> | 燃える-<〜させる>-<我々が> | 荷<対格> | <3人称単数・軽性>-<属格> |
「亡骸が見つからないときは、その人の荷を燃やして送る。」
崖から落ちた者や溺れた者を弔うときの習わしを説明する文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。élþ-「燃える」に使役の -íþ- をつけて「燃やす」にしている。
lúin na glénim, dúlo nóumo némes.
読み:ルーイン ナ グレーニン、ドゥーロ ノーモ ネーメス。
| lúin | na | glén-im, | dúl-o | nóumo | ném-es. |
| とき | <〜ない> | 答える-<私が> | 下る-<(重いものが)> | 体面<主格> | <私>-<属格> |
「答えられなければ、私の面目が潰れる。」
nóumo dúlo「顔が下りる」は面目を失うという慣用句。敬意や名誉を高さで表す考え方から来ている。詩合わせや問答で返しができないときなどに使う。
lúin méira muró torárei, mé krailésa drál.
読み:ルーイン メーラ ムロー トラーレイ、メー クライレーサ ドラール。
| lúin | méir-a | muró | torár-ei, | mé | krail-és-a | drál. |
| とき | 与える-<(軽いものが)> | 濁り酒<対格> | 客-<与格> | <禁止・願いの打ち消し> | 持つ-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 器の首<対格> |
「客に濁り酒を注ぐときは、器の首をつかまぬこと。」
もてなしの作法を述べた文。lúin の節は主節の前に置く。主節は当為法を mé で否定した禁止の形。主語を言わないので「人は」という一般の主語になり、lúin の節の動詞も主節の動詞も軽性の形をとる。
lúin tóro nébro, éso brés némes gróm.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、エーソ ブレース ネーメス グローン。
| lúin | tór-o | nébro, | és-o | brés | ném-es | gróm. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | いる-<(重いものが)> | 胸<主格> | <私>-<属格> | 重い |
「霧が来ると、胸が重くなる。」
霧期の不調を語る文。lúin の節は主節の前に置く。霧 nébro も胸 brés も重性なので、どちらの動詞も -o をとる。述語の形容詞 gróm は重性・主格で語尾がつかない。霧は病を運ぶ「下の国の息」とされる。
lúin glóira aldár áuren, snéiman lisárai.
読み:ルーイン グロイラ アルダール アウレン、スネーマン リサーライ。
| lúin | glóir-a | aldár | áur-en, | snéim-an | lis-ár-ai. |
| とき | お越しになる-<(軽いものが)> | 座<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | 礼をする-<彼らが> | 書く-<〜する人>-<〜たちが> |
「高き座がお越しになると、書記たちは礼をする。」
目上の人に頭を下げて敬意を示す意味。lúin で始まる時の節は主節の前に置く。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。宮廷の作法を記した文の言い方。
lúin áura ilána an álmarei, laméra ilanár.
読み:ルーイン アウラ イラーナ アン アルマレイ、ラメーラ イラナール。
| lúin | áur-a | ilána | an | álmar-ei, | lamér-a | ilanár. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 灯<主格> | 上手 | 白月-<与格> | 掌を差し上げる-<(軽いものが)> | 星読み<主格> |
「白月の上手に灯が昇ると、星読みは掌を差し上げる。」
星の司の記録の文体。星の位置は、an álmarei「白月の上手に」のように、ほかの天体との関係で言う。指さす代わりに掌を差し上げて示す。名前のある一つの星は、単数の ilána で指せる。
lúin tóra dulóur téir lóurul némes, sáilim.
読み:ルーイン トーラ ドゥロール テール ロールル ネーメス、サイリン。
| lúin | tór-a | dulóur | téir | lóur-ul | ném-es, | sáil-im. |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 下の世代の血族<主格> | 三 | 瀬-<〜たちを> | <私>-<属格> | 喜ぶ-<私が> |
「曾孫が来ると、私はうれしい。」
「三瀬下」で曾孫を言う。三の後ろなので、瀬は複数の lóurul になる。lúin の節は主節の前に置く。主節の主語は動詞の語尾 -im でわかるので、代名詞は言わない。
lúin hóina ambrél némes, mánimor tambór.
読み:ルーイン ホイナ アンブレール ネーメス、マーニモル タンボール。
| lúin | hóin-a | ambrél | ném-es, | mán-imor | tambór. |
| とき | 帰る-<(軽いものが)> | 兄・姉<主格> | <私>-<属格> | 食べる-<我々が> | 雑穀<対格> |
「兄(姉)が帰ってきたら、みんなで雑穀を食べよう。」
家の中の会話の文。時を表す lúin の節を前に置いている。主節の動詞は1人称複数の直説法で、時制がないので、これからの予定としても読める。家の中のくだけた言い方なので、mán- を敬語の補充形にしていない。tambór は重性なので、対格でも語尾がつかない。
lúin áura álmar, émbelimor aursárais.
読み:ルーイン アウラ アルマル、エンベリモル アウルサーライス。
| lúin | áur-a | álmar, | émbel-imor | aursár-ais. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 白月 | 祀る-<我々が> | 祖先-<〜たちを> |
「白月が昇ると、私たちは祖先を祀る。」
白月の満月の夜に祖先を祀る習わしを言う文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。aursár は人を指すので軽性の子音語幹で、複数対格は -ais。祖先は「数えない」ものなので、数詞をつけず複数でひとまとまりに言う。
lúin glóira ausenár, duliþéndes gráun.
読み:ルーイン グロイラ アウセナール、ドゥリセンデス グラウン。
| lúin | glóir-a | au-sen-ár, | dul-iþ-énd-es | gráun. |
| とき | お越しになる-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人> | 下る-<〜させる>-<〜しますように>-<あなたが> | 頭部<対格> |
「目付殿がお越しになったら、頭を下げなさいね。」
親が子に作法をやさしく教えるときの言い方。命令法ではなく願望法の2人称を使っているので、口調がやわらかくなる。gráun は重性の子音語幹なので、対格も主格と同じ形になる。強勢は願望法の -énd- に移るので、-íþ- の強勢は消える。命令の相手の頭のことなので、「誰の頭か」は言わない。目上の人の頭は augráun と言う。
lúin áura endríña an þráin, léuna aursárail.
読み:ルーイン アウラ エンドリーニャ アン スライン、レウナ アウルサーライル。
| lúin | áur-a | endríña | an | þráin, | léun-a | aursár-ail. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 未成年の者<主格> | 上手 | 峰<対格> | 申す-<(軽いものが)> | 祖先-<〜らに> |
「未成年の者は峰に登ると、祖先に言葉を申し上げる。」
成人の儀の次第を述べる書き言葉の文。主節では主語を言っていないが、動詞の語尾から、lúin の節と同じ者が主語だとわかる。祖先に向けた言葉なので、謙譲の補充形 léun- を使う。この儀を終えると成名が与えられ、endríña ではなくなる。
lúin ráumimor an dún, ráuma ólmar an némorei.
読み:ルーイン ラウミモル アン ドゥーン、ラウマ オルマル アン ネーモレイ。
| lúin | ráum-imor | an | dún, | ráum-a | ólmar | an | némor-ei. |
| とき | 歩く-<我々が> | 上手 | 丘<対格> | 歩く-<(軽いものが)> | 年長者<主格> | 上手 | <我々>-<与格> |
「丘を上るときは、年長者が我々の上手を歩く。」
坂道の作法を説明する文。坂を上るときは目上の者が先(上の位置)を歩き、下るときは目下の者が先を歩く。lúin の節は主節の前に置く。an+対格の an dún は「丘の上手へ」、an+与格の an némorei は「我々の上手の側で」。
lúin mána houmár, mánimor tambór.
読み:ルーイン マーナ ホウマール、マーニモル タンボール。
| lúin | mán-a | houmár, | mán-imor | tambór. |
| とき | 食べる-<(軽いものが)> | 家の主<主格> | 食べる-<我々が> | 雑穀<対格> |
「家の主が箸をつけてから、我々は雑穀を食べる。」
家の中の食事の作法を言う文。年長の者、家の主が先に箸をつける。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。houmár は人を指すので軽性で、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。tambór は重性なので、対格も主格と同じ形。
lúin áura álmar, émbelimor aursárais.
読み:ルーイン アウラ アルマル、エンベリモル アウルサーライス。
| lúin | áur-a | álmar, | émbel-imor | aursár-ais. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 白月<主格> | 祀る-<我々が> | 祖先-<〜たちを> |
「白月が昇ると、我々は祖先を祀る。」
家々の祖先祀りを説明する文。白月は見守る祖先のまなざしの象徴とされ、満ちた夜に祖先を祀る。lúin の節は主節の前に置く。月は軽性なので、動詞は -a で受ける。
lúin vírim sélu, glǘna senár.
読み:ルーイン ヴィーリン セール、グリューナ セナール。
| lúin | vír-im | sélu, | glǘn-a | sen-ár. |
| とき | 言う-<私が> | 泥の千<対格> | 冷たく黙る-<(軽いものが)> | 見る-<〜する人> |
「「泥の千」と口にしたとたん、目付は冷たく黙りこむ。」
縁の市でのくだけた陰口。sélu は干潟から借りた語なので重性で、主格と対格が同じ形になる。lúin の節は主節の前に置く。主語の senár は人なので、動詞は軽性の -a をとる。
lúin éso nébro, ésa þondá glüníño.
読み:ルーイン エーソ ネーブロ、エーサ ソンダー グリュニーニョ。
| lúin | és-o | nébro, | és-a | þondá | glüníño. |
| とき | いる-<(重いものが)> | 霧<主格> | いる-<(軽いものが)> | 誓い<主格> | 危うい足場 |
「霧の出ているときの誓いなど、薄氷のようなものだ。」
諺めいた言い方。霧期に立てた誓いは祖先に届かず、無効とされる。そのことを、いつ割れるかわからない薄氷にたとえている。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。主語 þondá は軽性なので、繋辞は -a をとる。述語の名詞 glüníño は主語の性に合わせない。
lúin tóro nébro, éso glünó véinoros múrno.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、エーソ グリュノー ヴェーノロス ムルノ。
| lúin | tór-o | nébro, | és-o | glünó | véinor-os | múrno. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | いる-<(重いものが)> | 氷<主格> | 湖-<属格> | 腐り氷 |
「霧が来ると、湖の氷は腐り氷になる。」
季節の移り変わりを言う、教えさとすような文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。霧 nébro は重性なので、動詞 tór- は -o をとる。名詞句は「名詞–属格」の順に並ぶ(glünó véinoros「湖の氷」)。
lúin brúuma réina, éso rúndo múr.
読み:ルーイン ブルーマ レーナ、エーソ ルンド ムール。
| lúin | brúum-a | réina, | és-o | rúndo | múr. |
| とき | 落ちる-<(軽いものが)> | 雨<主格> | いる-<(重いものが)> | 走り水<主格> | 濁った |
「雨が降ると、走り水は濁る。」
lúin で始まる「〜とき」の節を、主節の前に置いた文。雨 réina は軽性で、地を走る水 rúndo は重性なので、二つの節で動詞の語尾が -a と -o に分かれる。雨期に谷の流れが増水して濁るようすを言う。
lúin brúuma réina, ésa fléura du aursárail.
読み:ルーイン ブルーマ レーナ、エーサ フレウラ ドゥ アウルサーライル。
| lúin | brúum-a | réina, | és-a | fléura | du | aursár-ail. |
| とき | 落ちる-<(軽いものが)> | 雨<主格> | いる-<(軽いものが)> | 天の屋根<主格> | 下手 | 祖先-<〜らに> |
「雨が降るときも、天の屋根は祖先の方々の下にある。」
雨期に星が見えなくても不安に思わなくてよい、と説くときの決まった言い方。du+与格で「〜の下手に」。天の屋根が祖先の下にあるということは、祖先は屋根の上にいて、変わらず下界を聞いているということになる。
lúin brúuma sírna, glǘno véinor.
読み:ルーイン ブルーマ シルナ、グリューノ ヴェーノル。
| lúin | brúum-a | sírna, | glǘn-o | véinor. |
| とき | 落ちる-<(軽いものが)> | 霜<主格> | 凍る-<(重いものが)> | 湖<主格> |
「霜が降りるようになると、湖が凍る。」
湖畔の村で季節の移り変わりを言う決まった言い方。従属節の主語 sírna は軽性なので動詞は -a をとり、主節の主語 véinor(地の上の水)は重性なので動詞は -o をとる。性の対比が、一つの文の中に出ている。
lúin tóro duléumo, mé gélir du orén.
読み:ルーイン トーロ ドゥレウモ、メー ゲーリル ドゥ オレーン。
| lúin | tór-o | duléumo, | mé | gél-ir | du | orén. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 下の風<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 行く-<皆で〜せよ> | 下手 | 縁<対格> |
「下の風が吹いてきたら、皆、縁のほうへ行ってはならん。」
年長者が子どもたちに言い聞かせるような禁止の文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。主節は「mé+命令法・2人称複数(-ir)」で、目下の者への下向きの話し方になる。du+対格で「下手へ」。下の風が来る方向へ行けば、湿った重い空気に引かれると考えられている。
lúin tóra aurléuma, auriþéla nébro.
読み:ルーイン トーラ アウルレウマ、アウリセーラ ネーブロ。
| lúin | tór-a | aurléuma, | aur-iþ-él-a | nébro. |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 昇る風<主格> | 昇る-<〜させる>-<〜だろう>-<(軽いものが)> | 霧<対格> |
「昇る風が吹いてくれば、霧を持ち上げるだろう。」
霧期の終わりに、農村で雨期の訪れを読む文。霧が持ち上げられて雲に変わると、雨期が始まる。aurléuma は崖下から来るが、崖で押し上げられて雲をつくるので、重性の duléumo とは別の軽性の語になり、動詞も軽性の -a をとる。aur-íþ- は「昇る」の使役で「上げる」の意味。推量法の -él- が強勢を奪うので auriþéla となる。主語は前の節と同じなので、主節では言わない。nébro は重性なので、主格と対格が同じ形になる。
lúin áura órel, gélimor du orén.
読み:ルーイン アウラ オーレル、ゲーリモル ドゥ オレーン。
| lúin | áur-a | órel, | gél-imor | du | orén. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 日<主格> | 行く-<我々が> | 下手 | 縁<対格> |
「日が昇ったら、縁へ下りていこう。」
旅立ちの段取りを言う日常の文。lúin「〜とき」の節は主節の前に置く。órel は天体なので軽性で、動詞は -a で一致する。行き先が南の縁なので du+対格で言い、重性の orén は主格と同じ形になる。
lúin glǘno véinor, tóran dráunai du véinor.
読み:ルーイン グリューノ ヴェーノル、トーラン ドラウナイ ドゥ ヴェーノル。
| lúin | glǘn-o | véinor, | tór-an | dráun-ai | du | véinor. |
| とき | 凍る-<(重いものが)> | 湖<主格> | 来る-<彼らが> | 狼-<〜たちが> | 下手 | 湖<対格> |
「湖が凍ると、狼たちが湖へ下りてくる。」
湖畔の村で凍りの頃について言う文。lúin の節は主節の前に置く。dráun は軽性の子音語幹で、複数主格は dráunai。du+対格で「下手へ」。véinor は重性なので、主格と対格が同じ形になる。
lúin tóro nébro, na þónda fíñel.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ ソンダ フィーニェル。
| lúin | tór-o | nébro, | na | þónd-a | fíñel. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | <〜ない> | 誓う-<(軽いものが)> | 用心深い者<主格> |
「霧が来たら、用心深い者は誓わない。」
霧の中で結んだ約束は重んじられない、という考えを踏まえた諺。霧 nébro は重性なので、動詞は -o をとる。主語の fíñel は特定の人ではなく、「用心深い者は誰でも」という一般の人を指す。
lúin hála húula, áura sílar.
読み:ルーイン ハーラ フーラ、アウラ シーラル。
| lúin | hál-a | húula, | áur-a | sílar |
| とき | 呼ぶ-<(軽いものが)> | ふくろう<主格> | 昇る-<(軽いものが)> | 月<主格> |
「ふくろうが呼ぶと、月が昇る。」
ふくろうを夜と星読みの使いとみる考えにもとづく言い習わし。lúin の節は主節の前に置く。月 sílar も軽性なので、主節の動詞も軽性の -a をとる。
lúin kéla kelár árnelan, na kéla búl.
読み:ルーイン ケーラ ケラール アルネラン、ナ ケーラ ブール。
| lúin | kél-a | kel-ár | árnel-an, | na | kél-a | búl. |
| とき | 伐る-<(軽いものが)> | 伐る-<〜する人・主格> | 木-<対格> | <〜ない> | 伐る-<(軽いものが)> | 根<対格> |
「樵は木を伐るとき、根は伐らない。」
búl は重性なので、主格と対格が同じ形になる。伐る前の木は立ち木なので、軽性の対格 árnelan をとる。後半の節は主語を言っていないが、動詞の語尾から、前半と同じ樵が主語だとわかる。
lúin ésa líndra ível, sáila nourá némes.
読み:ルーイン エーサ リンドラ イーヴェル、サイラ ノウラー ネーメス。
| lúin | és-a | líndra | ível, | sáil-a | nourá | ném-es. |
| とき | いる-<(軽いものが)> | 金の落葉樹<主格> | 新しい | 喜ぶ-<(軽いものが)> | 心<主格> | <私>-<属格> |
「新しい年を迎えて、わが心は喜びにあふれます。」
手紙の冒頭に添える季節の句の型。「金の落葉樹が新しくなるとき」で「新年を迎えるとき」の意味になる。年の始まりと、金の落葉樹が色づく乾風期の初めが重なることから生まれた詩語。
lúin na éso tambór némorei, éso bóula kúulen tambór némores.
読み:ルーイン ナ エーソ タンボール ネーモレイ、エーソ ボーラ クーレン タンボール ネーモレス。
| lúin | na | és-o | tambór | némor-ei, | és-o | bóula | kúul-en | tambór | némor-es. |
| とき | <〜ない> | いる-<(重いものが)> | 雑穀<主格> | <我々>-<与格>, | いる-<(重いものが)> | どんぐり<主格> | 煮る-<〜した・〜された> | 雑穀<主格> | <我々>-<属格> |
「雑穀がないときには、煮たどんぐりが我々の雑穀になる。」
凶作の年の暮らしを語る文。どんぐりは飢えの年の食べ物でもある。所有は「ある+持ち主の与格」で言い、動詞は持たれている物の tambór(重性)に一致する。lúin の節の中では、na が動詞の直前に来る。落ちた実を煮たどんぐりは重性で扱うので、繋辞は éso、分詞 kúulen は重性・単数・主格の形(語尾なし)になる。
lúin tóro nébro, éso drúmo húmel.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、エーソ ドルーモ フーメル。
| lúin | tór-o | nébro, | és-o | drúmo | húmel. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格>, | いる-<(重いものが)> | 苔<主格> | 湿った |
「霧が来ると、苔は湿る。」
季節による苔の様子を述べる、説明の文。霧 nébro は重性なので、動詞は -o をとる。苔は地面や石を覆うもので重性に属するので、繋辞も重性の éso になる。述語の形容詞 húmel も、重性・単数・主格の形(語尾なし)で一致する。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。
lúin hóinan faronárai, manélan.
読み:ルーイン ホイナン ファロナーライ、マネーラン。
| lúin | hóin-an | faronár-ai, | man-él-an. |
| とき | 帰る-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | 食事をとる-<〜だろう>-<彼らが> |
「運び人たちが戻ったら、食事にするだろう。」
lúin で始まる時の節を主節の前に置いている。主節は推量法で、これから先のことを言う。推量法の -él- には強勢があり、語根の強勢を奪う(mán- → manélan)。主節の主語は、語尾から時の節と同じ運び人たちだとわかるので言わない。
lúin nélisa ausenár muró, dumaréimor muró.
読み:ルーイン ネーリサ アウセナール ムロー、ドゥマレーモル ムロー。
| lúin | nélis-a | au-sen-ár | muró, | dumar-é-imor | muró. |
| とき | お飲みになる-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人> | 濁り酒<対格> | 頂戴して飲む-<〜だろう>-<我々が> | 濁り酒<対格> |
「目付殿が濁り酒をお飲みになったら、私どもも頂戴いたしましょう。」
尊敬の nélis- と謙譲の dúmar- を一つの文に並べて、飲む順の上下を示している。段の高い者が先に口をつけるという食事の作法にかなった言い方。推量法の -él- は、1人称の語尾の前で l が落ちて -é- になる(dumaréimor)。
lúin glóira ausenár, þóran faronárai.
読み:ルーイン グロイラ アウセナール、ソーラン ファロナーライ。
| lúin | glóir-a | au-sen-ár, | þór-an | faron-ár-ai. |
| とき | お越しになる-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人> | 立つ-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> |
「目付殿がお越しになると、運び人たちは立ち上がる。」
lúin で始まる「〜とき」の節を主節の前に置いている。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。þór- は「立っている」状態と「立ち上がる」動作の両方を表し、時制がないので、どちらの意味かは文脈で決まる。
lúin tóro nébro, ráuman faronárai du orén.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ラウマン ファロナーライ ドゥ オレーン。
| lúin | tór-o | nébro, | ráum-an | faron-ár-ai | du | orén. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | 歩く-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 下手 | 縁<対格> |
「霧が来ると、運び人たちは縁のほうへ歩いていく。」
lúin の節を主節の前に置いている。霧 nébro は重性o語幹なので、動詞は -o をとる。行き先は du+対格「下手へ」で言う。高原語の移動の言い方では、上るのか下るのかをかならず言い分ける。
lúin ráumsan faronárai téir lóurul, hélan.
読み:ルーイン ラウンサン ファロナーライ テール ロールル、ヘーラン。
| lúin | ráums-an | faron-ár-ai | téir | lóur-ul, | hél-an. |
| とき | 旅をする<〜し終えた>-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 三 | 瀬-<〜たちを> | 座る-<彼らが> |
「瀬を三つたどり終えると、運び人たちは腰を下ろす。」
ráum- の語根は二重母音をもつので、完了相は -s- を足して ráums- にする。téir lóurul は、どれだけの道のりをたどったかを表す道のりの対格で、téir「三」の後ろの重性名詞は複数 -ul になる。川沿いの道を、瀬をひとつずつ数えながら進む言い方。
lúin áurau sílarau, fluunésa kumbór.
読み:ルーイン アウラウ シーララウ、フルーネーサ クンボール。
| lúin | áur-au | sílar-au, | fluun-és-a | kumbór. |
| とき | 昇る-<双数> | 月-<双数> | 清める-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 青銅<対格> |
「二つの月が昇るときには、青銅を清めるべし。」
作法書や詞に見られる当為法の文。強勢は -és- に移り、語根の ´ は消える。主語を言わないので「人は〜すべし」の意味で、軽性の -a をとる。月は星ではないので双数で言える。二つの月が重なる夜は秩序が乱れる夜とされ、祀りの器を清める。
lúin émbelimor aursárais, flúunimor nóumo.
読み:ルーイン エンベリモル アウルサーライス、フルーニモル ノーモ。
| lúin | émbel-imor | aursár-ais, | flúun-imor | nóumo. |
| とき | 祀る-<我々が> | 祖先-<〜たちを> | 清める-<我々が> | 顔<対格> |
「祖先を祀るとき、我々は顔を清める。」
lúin の節を主節の前に置いている。祀りのための清めは、ふつう軒で集めた雨水で行う。体の部分 nóumo「顔」は重性o語幹なので、対格も同じ形になる。
lúin tóro nébro, hóinan faronárai es orénos.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ホイナン ファロナーライ エス オレーノス。
| lúin | tór-o | nébro, | hóin-an | faron-ár-ai | es | orén-os. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | 帰る-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | から | 縁-<属格> |
「霧が来ると、運び人たちは縁から帰っていく。」
縁の市の季節の終わりを言う文。nébro「霧」は重性なので、tóro は重性の -o をとる。市は霧の前に閉じるので、崖道の人々は霧を合図に故郷へ帰る。
lúin élþa virá lísen, áura an élvaran.
読み:ルーイン エルサ ヴィラー リーセン、アウラ アン エルヴァラン。
| lúin | élþ-a | virá | lís-en, | áur-a | an | élvar-an. |
| とき | 燃える-<(軽いものが)> | 言葉<主格> | 書く-<〜した・〜された> | 昇る-<(軽いものが)> | 上手 | 天-<対格> |
「書かれた言葉は燃えると、天へ昇っていく。」
願いごとを書いた紙を燃やして祖先に届ける習わしを言う、儀礼の場の文。lísen は virá(軽性・単数・主格)に一致する分詞で、一致の語尾はつかない。後半の主語は省かれているが、動詞の語尾から前半と同じ「言葉」だとわかる。lúin の節は主節の前に置き、an+対格で「上手へ」と言う。
lúin hóina sílar, lísimor viráis aursárail.
読み:ルーイン ホイナ シーラル、リーシモル ヴィライス アウルサーライル。
| lúin | hóin-a | sílar, | lís-imor | vir-áis | aursár-ail. |
| とき | 巡ってくる-<(軽いものが)> | 月<主格> | 書く-<我々が> | 言葉-<〜たちを> | 祖先-<〜らに> |
「白月がまた巡ってくると、我々は祖先たちに言葉を書く。」
白月の満月の夜に祖先を祀る習わしを言う文。白月が一巡りしてまた満ちることに hóin- を使う。lúin の節は主節の前に置く。受け手の祖先たちは複数与格 -ail で示す。
lúin pándan viráis éles, áura þelá éles.
読み:ルーイン パンダン ヴィライス エーレス、アウラ セラー エーレス。
| lúin | pánd-an | vir-áis | él-es, | áur-a | þelá | él-es. |
| とき | 刷る-<彼らが> | 言葉-<〜たちを> | <3人称単数・軽性>-<属格> | 昇る-<(軽いものが)> | 名声<主格> | <3人称単数・軽性>-<属格> |
「その人の言葉が版木で刷られると、その人の名声は高まる。」
詩合わせで勝った詩が刷られて広まることを言う文。「名が昇る」は、名声が高まるという意味の決まった言い方。前半の pándan は主語を言わない3人称複数で、「人々が刷る」という受け身に近い意味になる。
lúin áura álmar, ésa aurþelá aursáres lóimen.
読み:ルーイン アウラ アルマル、エーサ アウルセラー アウルサーレス ロイメン。
| lúin | áur-a | álmar, | és-a | aurþelá | aursár-es | lóim-en. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 白月<主格> | いる-<(軽いものが)> | 昇名<主格> | 祖先-<属格> | 唱える-<〜した・〜された> |
「白月が昇ると、祖先の昇名が唱えられる。」
祖先祀りの場面。生前の名前は二度と声に出さないので、祖先を口にするときはかならず昇名を使う。時を表す lúin の節は、ふつう主節の前に置く。後半は「és-+主語+分詞」で、受け身にあたる意味を表している。
lúin glǘno véinor, þílo ílmo véinoros.
読み:ルーイン グリューノ ヴェーノル、シーロ イルモ ヴェーノロス。
| lúin | glǘn-o | véinor, | þíl-o | ílmo | véinor-os. |
| とき | 凍る-<(重いものが)> | 湖<主格> | 澄む-<(重いものが)> | 水<主格> | 湖-<属格> |
「湖が凍るころ、湖の水は底まで澄む。」
湖畔で言われる古い言い方。lúin の節は主節の前に置く。「澄む」の意味では自動詞として使い、目的語をとらない。
lúin vóila endríña lisáis fóndelais, glóuma.
読み:ルーイン ヴォイラ エンドリーニャ リサイス フォンデライス、グローマ。
| lúin | vóil-a | endríña | lis-áis | fóndel-ais, | glóum-a. |
| とき | 読む-<(軽いものが)> | 子ども<主格> | 字-<〜たちを> | 古い-<〜たちを> | 惑う-<(軽いものが)> |
「子どもは古い字を読むと戸惑う。」
主節の主語は、lúin の節の主語と同じなので言わない。軽性の動詞の語尾 -a で受けている。
lúin sénim álmaran, nóurim tásan.
読み:ルーイン セーニン アルマラン、ノーリン ターサン。
| lúin | sén-im | álmar-an, | nóur-im | tás-an. |
| とき | 見る-<私が> | 白月-<対格> | 思い慕う-<私が> | <あなた>-<対格> |
「白月を見るたびに、あなたを想う。」
人を対格にとると「思い慕う」の意味になる。手紙や詩によく出る言い方。2人称の tás は、親しい間柄でだけ使う。
lúin nóiran kelárai, nóura ólmar.
読み:ルーイン ノイラン ケラーライ、ノーラ オルマル。
| lúin | nóir-an | kel-ár-ai, | nóur-a | ólmar. |
| とき | 眠る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 思案する-<(軽いものが)> | 年長者<主格> |
「樵たちが眠ると、年長者は思いにふける。」
「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。nóur- はここでは、ひとりで静かに考えこむことを表す。
lúin áura sílar, nóurimor aursárais.
読み:ルーイン アウラ シーラル、ノーリモル アウルサーライス。
| lúin | áur-a | sílar, | nóur-imor | aursár-ais. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 月<主格> | 思い慕う-<我々が> | 祖先-<〜たちを> |
「月が昇るとき、我々は祖先を偲ぶ。」
祖先祀りの場の言い方。白月は見守る祖先のまなざしの象徴とされ、満月の夜には祖先を祀る。
lúin élþa elþá, dróumimor es houmáres.
読み:ルーイン エルサ エルサー、ドローミモル エス ホウマーレス。
| lúin | élþ-a | elþá, | dróum-imor | es | houmár-es. |
| とき | 燃える-<(軽いものが)> | 火<主格> | 悼む-<我々が> | から | 家の主-<属格> |
「火が燃えるあいだ、我らは家の主を悼む。」
火葬の場での言い方。死後一年は死者の名前を口にしないので、家の主のように立場で言い表す。悼む対象も es+属格で示す。
lúin sénan éndrai sílarau, gréman aursárar.
読み:ルーイン セーナン エンドライ シーララウ、グレーマン アウルサーラル。
| lúin | sén-an | éndr-ai | sílar-au, | grém-an | aursár-ar. |
| とき | 見る-<彼らが> | 人-<〜たちが> | 月-<双数> | 畏れる-<彼らが> | 祖先-<〜らの> |
「人は二つの月を仰ぐとき、祖先を畏れかしこむ。」
lúin の節は主節の前に置く。月は星ではないので双数で言える。後半の主節では主語を言っていないが、動詞の語尾から前半と同じ人々だとわかる。畏れる対象は属格でとる。
lúin grúuno duléumo, mé gélir du orén.
読み:ルーイン グルーノ ドゥレウモ、メー ゲーリル ドゥ オレーン。
| lúin | grúun-o | duléumo, | mé | gél-ir | du | orén. |
| とき | うなる-<(重いものが)> | 下の風<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 行く-<皆で〜せよ> | 下手 | 縁<対格> |
「下の風がうなるときは、皆、縁のほうへ行くな。」
崖の上の番人や運び人の間での戒め。duléumo「下の風」は重性o語幹なので、動詞は重性の -o をとる。軽性の léuma「風」なら grúuna になる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。禁止は「mé+命令法・複数」。
lúin gléna ólmar ombríl sáun, sáilimor.
読み:ルーイン グレーナ オルマル オンブリール サウン、サイリモル。
| lúin | glén-a | ólmar | ombríl | sáun, | sáil-imor. |
| とき | 答える-<(軽いものが)> | 年長者<主格> | 句<対格> | 吉い<重性><対格> | 喜ぶ-<我々が> |
「「年長の方が吉い句を返すと、我々は喜ぶ。」」
詩の挨拶で、目下の者が先に詠み、目上の者がうまく句を返したときのことを言う文。返しの句がうまく続くと、その出会いは吉とされる。sáun は軽性・対格の ombrílan に一致して sáunan になる。
lúin éso nébro, mé þondésa þondán.
読み:ルーイン エーソ ネーブロ、メー ソンデーサ ソンダーン。
| lúin | és-o | nébro, | mé | þond-és-a | þond-án. |
| とき | いる-<(重いものが)> | 霧<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 誓う-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 誓い-<対格> |
「霧が出ているときには、誓いを立てぬこと。」
言い伝えや法典に出てくる禁止の言い方。霧の夜の誓いは祖先に届かず無効だ、という信仰を表している。前半は lúin「〜とき」の節で、主語の霧 nébro が重性なので、繋辞は és-o になる。後半は当為法の文で、mé で否定する。主語を言わないので「人は」という一般の主語になり、軽性の -a をとる。強勢は -és- に移るので、語根の ´ は消える。目的語の þondá「誓い」は、þónd- に -á がついた派生名詞。
lúin véilso múrno, tóro nébro es orénos.
読み:ルーイン ヴェールソ ムルノ、トーロ ネーブロ エス オレーノス。
| lúin | véils-o | múrno, | tór-o | nébro | es | orén-os. |
| とき | 流れ去る<〜し終えた>-<(重いものが)> | 腐り氷<主格> | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | から | 縁-<属格> |
「腐り氷が流れ去ってしまうと、縁から霧が上がってくる。」
湖畔の村に伝わる季節の言い習わし。完了相の véils- で「すっかり流れ去った」ことを表す。múrno も nébro も重性なので、二つの動詞はどちらも -o をとる。lúin の節は主節の前に置く。
lúin méira séulin tambór némei, glénim élei méldo.
読み:ルーイン メーラ セウリン タンボール ネーメイ、グレーニン エーレイ メルド。
| lúin | méir-a | séulin | tambór | ném-ei, | glén-im | él-ei | méldo. |
| とき | 与える-<(軽いものが)> | 友<主格> | 雑穀<対格> | <私>-<与格> | 返礼する-<私が> | <3人称単数・軽性>-<与格> | 蜜<対格> |
「友が私に雑穀をくれると、私はその人に蜜でお返しをする。」
「返礼する」の意味では、お返しの品を対格に、相手を与格にとる。村の暮らしでよく聞く、くだけた言い方。
lúin kélan kelárai gandér, lóima ráuvan loimán.
読み:ルーイン ケーラン ケラーライ ガンデール、ロイマ ラウヴァン ロイマーン。
| lúin | kél-an | kel-ár-ai | gandér, | lóim-a | ráuvan | loim-án. |
| とき | 伐る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> | 唱える-<(軽いものが)> | 森の巫<主格> | 詞-<対格> |
「樵たちが硬木を伐るとき、森の巫が詞を唱える。」
硬木を伐るときの儀礼を説明する文。loimá「詞」は lóim- に -á「〜するもの」がついた派生語で、動詞の目的語に同じ語根の名詞をとっている。
lúin áura sílar, ansénan aursárais.
読み:ルーイン アウラ シーラル、アンセーナン アウルサーライス。
| lúin | áur-a | sílar, | ansén-an | aursár-ais. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 月<主格> | 思い出す-<彼らが> | 祖先-<〜たちを> |
「月が昇ると、人々は祖先を思い出す。」
祖先祀りの習わしを述べる文。月 sílar は軽性なので、動詞は3単・軽性の -a。主節の主語を言わない3人称複数 ansénan は、「人々は」という一般の主語を表す。
éso nébro. lúin hála páin þelán táses, mé glén!
読み:エーソ ネーブロ。ルーイン ハーラ パイン セラーン ターセス、メー グレーン!
| és-o | nébro. | lúin | hál-a | páin | þel-án | tás-es, | mé | glén! |
| いる-<(重いものが)> | 霧<主格> | とき | 呼ぶ-<(軽いものが)> | 誰か<主格> | 名前-<対格> | <あなた>-<属格> | <禁止・願いの打ち消し> | 答える<命令法><あなたが> |
「霧が出ている。誰かがお前の名を呼んでも、答えてはいけない。」
霧の禁忌について、親が子に言い聞かせる言葉。「霧がある」は繋辞 és- で言い、霧 nébro が重性なので語尾は -o。禁止は「mé+命令法」。
lúin lóima endríña virán, glenésa ólmar.
読み:ルーイン ロイマ エンドリーニャ ヴィラーン、グレネーサ オルマル。
| lúin | lóim-a | endríña | vir-án, | glen-és-a | ólmar. |
| とき | 詠む-<(軽いものが)> | 子ども<主格> | 言葉-<対格> | 句を返す-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 年長者<主格> |
「子どもが句を詠んだら、年長者が句を返すべし。」
詩の挨拶の作法を述べる文。目下の者が先に詠み、目上の者が返す。「句を返す」の意味では、目的語を言わずに使うことが多い。virá「言葉」は、詠む動詞の目的語になると「句」の意味になる。
lúin áura órun ál, dúlimor du orén.
読み:ルーイン アウラ オールン アール、ドゥーリモル ドゥ オレーン。
| lúin | áur-a | órun | ál, | dúl-imor | du | orén. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 日の出<主格> | 明るい | 下る-<我々が> | 下手 | 縁<対格> |
「明るい夜明けが来たら、我々は縁へ下りる。」
夜明けの明るさを言う文。lúin で始まる時の節は主節の前に置き、節の中も動詞で始まる。崖道へ下りていく旅の段取りを言う、日常的な言い方。
lúin áura sílar ál, sénimor dún.
読み:ルーイン アウラ シーラル アール、セーニモル ドゥーン。
| lúin | áur-a | sílar | ál, | sén-imor | dún. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 月<主格> | 明るい | 見る-<我々が> | 丘<対格> |
「明るい月が昇ると、我々には丘が見える。」
月明かりについて言うとき、ál は「明るい」の意味になる。月は軽性なので、動詞は -a をとる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。dún は重性なので、対格も主格と同じ形。
lúin ésa sílar dréum, na sénim póin.
読み:ルーイン エーサ シーラル ドレウン、ナ セーニン ポイン。
| lúin | és-a | sílar | dréum, | na | sén-im | póin. |
| とき | いる-<(軽いものが)> | 月<主格> | 暗い | <〜ない> | 見る-<私が> | 何か |
「月が暗いときは、何も見えない。」
光がなくて暗いことを言う文。月は軽性なので、繋辞は -a をとり、形容詞は語尾なしで一致する。否定の小辞 na は動詞の直前に置く。
lúin tóro nébro, élþa kéira.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、エルサ ケーラ。
| lúin | tór-o | nébro, | élþ-a | kéira. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | 燃える-<(軽いものが)> | 蝋燭<主格> |
「霧が来ると、蝋燭がともる。」
霧期の暮らしを述べる文。霧 nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。蝋燭 kéira は軽性なので、動詞は軽性の -a をとる。lúin の節は主節の前に置く。
lúin ésa élvar þáil, sénimor sílarau.
読み:ルーイン エーサ エルヴァル サイル、セーニモル シーララウ。
| lúin | és-a | élvar | þáil, | sén-imor | sílar-au. |
| とき | いる-<(軽いものが)> | 天<主格> | 晴れた | 見る-<我々が> | 月-<双数> |
「空が晴れると、我々には二つの月が見える。」
lúin で始まる時の節を主節の前に置いている。雲も霧もない空を言う用法で、乾風期の夜によく使う。月は星ではないので、双数で言ってよい。
lúin ésa élvar þáil, þondésa.
読み:ルーイン エーサ エルヴァル サイル、ソンデーサ。
| lúin | és-a | élvar | þáil, | þond-és-a. |
| とき | いる-<(軽いものが)> | 天<主格> | 晴れた | 誓う-<〜すべし>-<(軽いものが)> |
「誓いは、空の晴れたときに立てるべし。」
主語のない当為法は「人は〜すべし」という一般の主語を表し、軽性の形をとる。祖先が見ている、星の見える晴れた夜の誓いだけが重いとされ、霧の夜の誓いは無効とされる。
lúin tóro nébro, kúulan ólmarai.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、クーラン オルマライ。
| lúin | tór-o | nébro, | kúul-an | ólmar-ai. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | 煮出す-<彼らが> | 年長者-<〜たちが> |
「霧が来るころになると、年長者たちは(影の木の葉を)煮出す。」
霧の季節に葉を煮出して茶にする習わしを述べた文。煮出す物は文脈でわかるので、言っていない。lúin の節は主節の前に置く。霧 nébro は重性なので、節の動詞は -o をとる。
lúin ésa snélo élvares dréum, lúuman aursárai némoran.
読み:ルーイン エーサ スネーロ エルヴァレス ドレウン、ルーマン アウルサーライ ネーモラン。
| lúin | és-a | snélo | élvar-es | dréum, | lúum-an | aurs-ár-ai | némor-an. |
| とき | いる-<(軽いものが)> | 天の屋根<主格> | 天-<属格> | 黒い | ご覧になる-<彼らが> | 昇る<〜し終えた>-<〜する人>-<〜たちが> | <我々>-<対格> |
「天の屋根が黒いときも、祖先は我々をご覧になっている。」
雨期に星が見えなくても不安がらない理由を説く、信仰の言い方。雲は上の層に属するので、祖先は屋根の上から変わらず下界を見ていると考えられている。snélo は重性の語形だが、この意味では一致が軽性になる(ésa)。lúum- は「見る」の尊敬の補充形。
lúin éso nébro, ténda ambrél.
読み:ルーイン エーソ ネーブロ、テンダ アンブレール。
| lúin | és-o | nébro, | ténd-a | ambrél |
| とき | いる-<(重いものが)> | 霧<主格> | 織る-<(軽いものが)> | 姉<主格> |
「霧が出ているあいだ、姉は機を織る。」
霧期には外仕事が減り、家の中で機を織る。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。霧 nébro は重性なので繋辞は -o をとり、姉 ambrél は人なので軽性で、織る動詞は -a をとる。ここでは目的語を言わず、「機を織る」という行い自体を表している。
lúin áura sílar, téndimor viráis.
読み:ルーイン アウラ シーラル、テンディモル ヴィライス。
| lúin | áur-a | sílar, | ténd-imor | vir-áis |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 月<主格> | 句を編む-<我々が> | 言葉-<〜たちを> |
「月が昇ると、私たちは詩句を編む。」
月の出を題にして詩を作る習わしを言う文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。月 sílar は軽性の子音語幹なので、動詞は -a をとる。詩句 virá の複数対格は viráis。
lúin táula ólmar rínelul, mánimor.
読み:ルーイン タウラ オルマル リーネルル、マーニモル。
| lúin | tául-a | ólmar | rínel-ul, | mán-imor |
| とき | 取る-<(軽いものが)> | 年長者<主格> | 箸-<〜たちを> | 食べる-<我々が> |
「年長の者が箸を取ってから、私たちは食べる。」
年長の者が先に箸をつけるという、食事の作法を述べた文。箸は伐った木などで作った道具なので重性で、複数対格は -ul になる。ひと組の箸は双数でも言えるが、ここでは複数で言っている。
lúin dúlo gandér du dálor, drénimor du kéndor orénos.
読み:ルーイン ドゥーロ ガンデール ドゥ ダーロル、ドレーニモル ドゥ ケンドル オレーノス。
| lúin | dúl-o | gandér | du | dálor, | drén-imor | du | kéndor | orén-os. |
| とき | 下る-<(重いものが)> | 硬木<主格> | 下手 | 下の国<対格> | 参る-<我々が> | 下手 | 縁の市<対格> | 縁-<属格> |
「硬木が下の国へ下りるころ、私どもは縁の市へ下って参ります。」
崖道の商人が目上の人に、最初の下ろしのころに市へ出ることを告げる言い方。「行く」の謙譲の補充形 drén- を使う。縁の市は崖の麓にあるので、かならず du で言う。lúin の節は主節の前に置く。
lúin tóro nébro, mé leimésa símbo sáindarei.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー レイメーサ シンボ サインダレイ。
| lúin | tór-o | nébro, | mé | leim-és-a | símbo | sáindar-ei. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 置く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 印<対格> | 証文-<与格> |
「霧が来たら、証文に印を押さぬこと。」
法典や碑文に見られる当為法の禁止。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の -a をとる。強勢は -és- に移り、語根の ´ は消える。前半は lúin「〜とき」の節で、霧 nébro は重性なので動詞は -o をとる。霧の中で結んだ約束は「霧の約束」として重んじられない、という禁忌を表している。
lúin áura álmar, embeléimor aursárais.
読み:ルーイン アウラ アルマル、エンベレーモル アウルサーライス。
| lúin | áur-a | álmar, | embel-é-imor | aursár-ais. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 白月<主格> | 祀る-<〜だろう>-<我々が> | 祖先-<〜たちを> |
「白月が昇ったら、我々は祖先を祀ろう。」
満月の夜に祖先を祀る習わしについての、家の中の会話。lúin の節は主節の前に置く。推量法の -él- は、1人称の語尾 -imor の前で l が落ちて -é- になる。強勢が接尾辞に移るので、語根の ´ は消える。
lúin tóro nébro es orénos, kráilim gleinó.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ エス オレーノス、クライリン グレイノー。
| lúin | tór-o | nébro | es | orén-os, | kráil-im | gleinó. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | から | 縁-<属格> | 手に持つ-<私が> | 護符<対格> |
「縁から霧が上がってくると、私は護符を握りしめる。」
霧期の暮らしを語る文。霧 nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。gleinó は重性の o語幹で、主格と対格が同じ形になる。
lúin hóinan faronárai, émbelan virán aursárail.
読み:ルーイン ホイナン ファロナーライ、エンベラン ヴィラーン アウルサーライル。
| lúin | hóin-an | faron-ár-ai, | émbel-an | vir-án | aursár-ail. |
| とき | 帰る-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 捧げる-<彼らが> | 言葉-<対格> | 祖先-<〜らに> |
「運び人たちは帰ってくると、祖先に言葉を捧げる。」
崖道から戻った者が、改まった言葉を祖先に捧げる習わしを説明する文。後半の主語は前半と同じなので言わない。
lúin kélan kelárai gandér, áura aurvirá ráuvanes.
読み:ルーイン ケーラン ケラーライ ガンデール、アウラ アウルヴィラー ラウヴァネス。
| lúin | kél-an | kel-ár-ai | gandér, | áur-a | aurvirá | ráuvan-es. |
| とき | 伐る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> | 昇る-<(軽いものが)> | 祈り<主格> | 森の巫-<属格> |
「樵たちが硬木を伐るとき、森の巫の祈りが昇る。」
硬木を伐るときの儀式を述べる文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。属格 ráuvanes は名詞の後ろに置く。
lúin éso nébro, na áura þondá, na fíndan aursárai élan.
読み:ルーイン エーソ ネーブロ、ナ アウラ ソンダー、ナ フィンダン アウルサーライ エーラン。
| lúin | és-o | nébro, | na | áur-a | þondá, | na | fínd-an | aursár-ai | él-an. |
| とき | いる-<(重いものが)> | 霧<主格> | <〜ない> | 昇る-<(軽いものが)> | 誓い<主格> | <〜ない> | 聞く-<彼らが> | 祖先-<〜たちが> | <3人称単数・軽性>-<対格> |
「霧が出ているときには、誓いは昇らない。祖先にはそれが聞こえない。」
霧の夜に立てた誓いは無効だという教えを述べる文。霧 nébro は重性なので éso、þondá は軽性なので動詞は -a で一致する。後半では、その誓いを軽性の代名詞の対格 élan で受けている。
lúin éso nébro, na ésa þondá gléin.
読み:ルーイン エーソ ネーブロ、ナ エーサ ソンダー グレーン。
| lúin | és-o | nébro, | na | és-a | þondá | gléin. |
| とき | いる-<(重いものが)> | 霧<主格> | <〜ない> | いる-<(軽いものが)> | 約束<主格> | 清い |
「霧の出ているときの約束は、清い約束ではない(当てにならない)。」
霧期に結んだ約束は重んじられないことを言う、日常の言い方。lúin の節は主節の前に置く。後半は繋辞の文で、na で否定する。þondá は軽性なので、繋辞は -a で一致する。
lúin élþa hóurna, loimésa ráuvan loimáis bróusais.
読み:ルーイン エルサ ホールナ、ロイメーサ ラウヴァン ロイマイス ブローサイス。
| lúin | élþ-a | hóurna, | loim-és-a | ráuvan | loim-áis | bróus-ais. |
| とき | 燃える-<(軽いものが)> | 弔い<主格> | 唱える-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 森の巫<主格> | 詞-<〜たちを> | 多い-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格> |
「「弔いの火が焚かれるときは、森の巫は多くの詞を唱えるべし。」」
葬送の作法を定めた書の文。魂を上へ送るために詞を唱える。霧期の火葬では、煙が霧に閉じこめられるので、とくに念入りに唱える。lúin の節は主節の前に置く。詞は軽性なので、形容詞は -ais で一致する。
lúin gélim an kreinándo, áura mélna némes an aursárais.
読み:ルーイン ゲーリン アン クレイナンド、アウラ メルナ ネーメス アン アウルサーライス。
| lúin | gél-im | an | kreinándo, | áur-a | mélna | ném-es | an | aursár-ais. |
| とき | 行く-<私が> | 上手 | 納骨所<対格> | 昇る-<(軽いものが)> | 詩<主格> | <私>-<属格> | 上手 | 祖先-<〜たちを> |
「納骨所へ上るときには、私の詩が祖先の方々のもとへ昇っていく。」
成人の儀や祖先祀りで聖地に登る人の言葉。移動の動詞 gél- には方向の前置詞をかならず添えるので、an「上手へ」で上りの道だとわかる。詩は息なので軽く、祖先への捧げものとして上へ昇る。祖先は複数対格 -ais で表す。
lúin kélan kelárai gandér, áura loimá ráuvanes.
読み:ルーイン ケーラン ケラーライ ガンデール、アウラ ロイマー ラウヴァネス。
| lúin | kél-an | kel-ár-ai | gandér, | áur-a | loimá | ráuvan-es. |
| とき | 伐る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> | 昇る-<(軽いものが)> | 詞<主格> | 森の巫-<属格> |
「樵たちが硬木を伐るときには、森の巫の詞が立ちのぼる。」
硬木を伐る作法を述べた文。詞は息なので、煙のように上へ昇るものとされ、動詞 áur-「昇る」の主語になる。loimá は軽性なので、動詞は軽性の -a をとる。硬木 gandér は重性なので、主格と対格が同じ形になる。
lúin rímba ilanár, ésa ilanrimbá lóimen.
読み:ルーイン リンバ イラナール、エーサ イランリンバー ロイメン。
| lúin | rímb-a | ilanár, | és-a | ilanrimbá | lóim-en. |
| とき | 数える-<(軽いものが)> | 星読み<主格> | いる-<(軽いものが)> | 灯の数え<主格> | 唱える-<〜した・〜された> |
「星読みが数えるときには、灯の数えが唱えられる。」
星の司の観測の作法を説明した文。星を数えることが許されるのは星読みだけで、そのときもふつうの数詞は使わず、灯の数えという古い数え方で唱える。後ろの節は「és-+主語+分詞」の形で、受け身にあたる。
lúin tóro nébro, mé virésa éndran. éso sárvo.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー ヴィレーサ エンドラン。エーソ サルヴォ。
| lúin | tór-o | nébro, | mé | vir-és-a | éndr-an. | és-o | sárvo. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 言う-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 人-<対格> | いる-<(重いものが)> | 禁忌<主格> |
「霧が来たら、人の名を呼ばぬこと。これは禁忌である。」
季節の言い習わし。霧の中で名前を呼ぶと、下の国にその名前を聞かれるとされる。霧 nébro は重性なので、動詞は -o をとる。当為法は mé で否定し、主語を言わないときは一般の人が主語になるので、軽性の形をとる。vír-「言う」は人の対格をとると「名を呼ぶ」の意味になる。最後の文は、存在の és- と重性の sárvo で「禁忌である」と言う。
lúin glóira aurilanár es dúnos, dulísimor plánan.
読み:ルーイン グロイラ アウリラナール エス ドゥーノス、ドゥリーシモル プラーナン。
| lúin | glóir-a | aur-ilanár | es | dún-os, | du-lís-imor | plán-an. |
| とき | お越しになる-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-星読み<主格> | から | 丘-<属格> | <〜させていただく>-書く-<我々が> | 帳簿-<対格> |
「星読みの方が丘からお越しになるときは、我々が帳簿を書かせていただきます。」
目下の者が星読みについて話す改まった文。星読みは四段下りの役人なので、au- をつけて高める。au- は母音の前で aur- になるので、au-ilanár は aurilanár になる。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。主節は謙譲の接頭辞 du- で自分たちの行いを低めている(du-lís-imor)。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。
lúin áura álmar or dún, émbelan ólmarai aursárais.
読み:ルーイン アウラ アルマル オル ドゥーン、エンベラン オルマライ アウルサーライス。
| lúin | áur-a | álmar | or | dún, | émbel-an | ólmar-ai | aursár-ais. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 白月<主格> | 日の出側 | 丘<対格> | 祀る-<彼らが> | 年長者-<〜たちが> | 祖先-<〜たちを> |
「白月が丘の日の出側に昇ると、年長者たちは祖先を祀る。」
天体の位置を言う決まった言い方。星や月は指さしてはいけないので、よく知られた目印と方向の前置詞で位置を示す。or+対格で「〜の日の出側へ」を表す。lúin で始まる時の節は主節の前に置く。
lúin tóra vélun, hóinan kelárai an dún.
読み:ルーイン トーラ ヴェールン、ホイナン ケラーライ アン ドゥーン。
| lúin | tór-a | vélun, | hóin-an | kel-ár-ai | an | dún. |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 日の入り<主格> | 帰る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 上手 | 丘<対格> |
「日が沈むと、樵たちは丘の上へ帰っていく。」
vélun は軽性の子音語幹として変化する。lúin の節は主節の前に置く。「日の入りが来る」という言い方で「夕方になる」を表す。日常の語り口の文。
lúin tóro nébro, na sénimor álmaran un élvarei.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ セーニモル アルマラン ウン エルヴァレイ。
| lúin | tór-o | nébro, | na | sén-imor | álmar-an | un | élvar-ei. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | <〜ない> | 見る-<我々が> | 白月-<対格> | 内に | 天-<与格> |
「霧が来ると、天の内に白月が見えなくなる。」
霧期を言う文。un+与格で、天という広がりの内側にあることを表す。霧は下から割りこむ帳なので、天にあるものが見えなくなる。
lúin éso nébro trúin, mé hál þelán!
読み:ルーイン エーソ ネーブロ トルーイン、メー ハール セラーン!
| lúin | és-o | nébro | trúin, | mé | hál | þel-án! |
| とき | いる-<(重いものが)> | 霧<主格> | 近い | <禁止・願いの打ち消し> | 呼ぶ<命令法><あなたが> | 名前-<対格> |
「霧が近いときは、名前を呼ぶな。」
親が子に言い聞かせる、禁忌の言い方。霧の中で名を呼ぶと下の国に聞かれる、という信仰による。nébro「霧」は重性なので、繋辞は éiso になる。禁止は「mé+命令法」で言う。
lúin tóra nóra, sénimor dáu sílarau.
読み:ルーイン トーラ ノーラ、セーニモル ダウ シーララウ。
| lúin | tór-a | nóra, | sén-imor | dáu | sílar-au. |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 夜<主格> | 見る-<我々が> | 二 | 月-<双数> |
「夜が来れば、我々は二つの月を見る。」
乾風期の澄んだ夜を言う日常の文。nóra は軽性a語幹で、強勢は語根にあり、動詞は軽性の -a をとる。月は星ではないので、dáu「二」と双数 sílarau で数えてよい。
tór, lúin tóra nóra! séirim tásan.
読み:トール、ルーイン トーラ ノーラ!セーリン ターサン。
| tór, | lúin | tór-a | nóra! | séir-im | tás-an. |
| 来る<命令法><あなたが> | とき | 来る-<(軽いものが)> | 夜分<主格> | 待つ-<私が> | <あなた>-<対格> |
「晩になったら来い。待っているぞ。」
親しい目下の相手への、くだけた誘い。lúin tóra nóra「夜分が来るとき」で「晩になったら」を表す。命令法の2人称単数は語幹そのままの tór。
lúin tóra reinálva, lísan éndrai.
読み:ルーイン トーラ レイナルヴァ、リーサン エンドライ。
| lúin | tór-a | reinálva, | lís-an | éndr-ai |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 雨期<主格> | 書く-<彼らが> | 人-<〜たちが> |
「雨期が来ると、人々は書きものをする。」
雨期は家にこもって書を写し、詩を作る季節とされる。そのことを述べた一般的な文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。reinálva は雨(上から来るもの)に属する季節なので軽性で、動詞は -a で一致する。
lúin ésa reinálva, na dúlan faronárai du dálor.
読み:ルーイン エーサ レイナルヴァ、ナ ドゥーラン ファロナーライ ドゥ ダーロル。
| lúin | és-a | reinálva, | na | dúl-an | faron-ár-ai | du | dálor |
| とき | いる-<(軽いものが)> | 雨期<主格> | <〜ない> | 下る-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 下手 | 下の国<対格> |
「雨期のあいだは、運び人は下の国へ下りない。」
雨期には崖道が滑りやすく、閉じられることを述べた文。「雨期である間」は lúin+és- で言う。否定の na は動詞の直前に置く。faronár は「荷」に行為者の -ár をつけた語で、軽性なので複数主格は -ai になる。
lúin tóra kailálva, dúlan faronárai du dálor.
読み:ルーイン トーラ カイラルヴァ、ドゥーラン ファロナーライ ドゥ ダーロル。
| lúin | tór-a | kailálva, | dúl-an | faron-ár-ai | du | dálor |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 乾風期<主格> | 下る-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 下手 | 下の国<対格> |
「乾風期が来ると、運び人たちは下の国へ下りていく。」
乾風期に崖道が開き、縁の市へ荷が運ばれることを述べた文。前の雨期の例文とちょうど裏返しの内容になる。kailálva は軽性なので、動詞は -a で一致する。dálor は重性なので、対格も主格と同じ形になる。
lúin ésa kailálva, dulíþan kelárai gandér du dálor.
読み:ルーイン エーサ カイラルヴァ、ドゥリーサン ケラーライ ガンデール ドゥ ダーロル。
| lúin | és-a | kailálva, | dul-íþ-an | kel-ár-ai | gandér | du | dálor |
| とき | いる-<(軽いものが)> | 乾風期<主格> | 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> | 下手 | 下の国<対格> |
「乾風期のあいだ、樵たちは硬木を下の国へ下ろす。」
乾風期が硬木の伐り出しと吊り下ろしの季節であることを述べた文。gandér と dálor は重性なので、主格と対格が同じ形になる。使役の -íþ- は、後ろに強勢をもつ接辞がないので、自分で強勢をとる。
lúin éso nebrálvo, mé lisésa sáindaran.
読み:ルーイン エーソ ネブラルヴォ、メー リセーサ サインダラン。
| lúin | és-o | nebrálvo, | mé | lis-és-a | sáindar-an |
| とき | いる-<(重いものが)> | 霧期<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 書く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 証文-<対格> |
「霧期のあいだは、証文を書かぬこと。」
市の決まりや法典の文体。nebrálvo は霧と同じく重性o語幹なので、「霧期である間」の és- は重性の -o(éso)をとる。主節は当為法なので mé で否定する。主語を言わないので「人は」という一般の主語になり、軽性の形 lisésa をとる。
lúin tóra þailúin, dúlan faronárai du orén.
読み:ルーイン トーラ サイルーイン、ドゥーラン ファロナーライ ドゥ オレーン。
| lúin | tór-a | þailúin, | dúl-an | faronár-ai | du | orén. |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 澄みの頃<主格> | 下る-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | 下手 | 縁<対格> |
「澄みの頃が来ると、運び人たちが縁へ下りていく。」
「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。þailúin は節の主語で、動詞は軽性の tóra で受ける。崖道がいちばんにぎわい、縁の市が盛りを迎える時期を言う、決まった言い回し。
lúin dulíþim fáron, fláinim.
読み:ルーイン ドゥリーシン ファーロン、フライニン。
| lúin | dul-íþ-im | fáron, | fláinim. |
| とき | 下る-<〜させる>-<私が> | 荷<対格> | 軽くなった |
「荷を下ろしたら、肩が軽くなった。」
「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。dulíþ- は dúl-「下る」に使役の -íþ- をつけた「下ろす」で、後ろに強勢をもつ接辞がないので、-íþ- が強勢をとる。
lúin tóro nébro es orénos, grómim.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ エス オレーノス、グローミン。
| lúin | tór-o | nébro | es | orén-os, | grómim. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | から | 縁-<属格> | 体が重い |
「縁から霧が上がってくると、体がだるくなる。」
霧期には病が流行り、体が重くなると言われる。それを言うときの決まった言い方。霧 nébro は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。
lúin tóro nébro, dúla lisá du dálor.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ドゥーラ リサー ドゥ ダーロル。
| lúin | tór-o | nébro, | dúl-a | lisá | du | dálor. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | 下る-<(軽いものが)> | 字<主格> | 下手 | 下の国<対格> |
「「霧が来ると、字は下の国へ流れ落ちる。」」
霧の中で書いた字は墨がにじんで下へ流れる、という言い伝えを述べた文。霧期に大事な書きものを避ける理由になる。霧 nébro は重性なので動詞は -o、字 lisá は軽性なので -a をとる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。
lúin tóro nébro, na trálan lisárai sóndelais.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ トラーラン リサーライ ソンデライス。
| lúin | tór-o | nébro, | na | trál-an | lis-ár-ai | sóndel-ais. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | <〜ない> | 写す-<彼らが> | 書く-<〜する人>-<〜たちが> | 書物-<〜たちを> |
「霧が来ると、書記たちは書物を写さない。」
霧の中で書いた字は下へ流れるとされるので、霧期には書物の書き写しを避ける(書物を写すのは雨期の仕事)。否定の小辞 na は動詞の直前に置く。sóndel は巻物も綴じ本も含めた書物全般を指す。
lúin éso nébro, na ésa lourlisá trálen.
読み:ルーイン エーソ ネーブロ、ナ エーサ ロウルリサー トラーレン。
| lúin | és-o | nébro, | na | és-a | lourlisá | trál-en. |
| とき | いる-<(重いものが)> | 霧<主格> | <〜ない> | いる-<(軽いものが)> | 系譜の巻<主格> | 写す-<〜した・〜された> |
「霧の出ているあいだは、系譜の巻を写さない。」
霧期の書きものの慣わしを言う文。霧の中で書いた字は、墨がにじんで下へ流れるとされる。lúin の節では、動詞が重性の霧 nébro に一致して -o をとる。主節は「éis-+主語+分詞」で結果の状態を言う、受け身にあたる形で、na で否定している。
lúin tíla tilár pandán, lóima loimán.
読み:ルーイン ティーラ ティラール パンダーン、ロイマ ロイマーン。
| lúin | tíl-a | til-ár | pand-án, | lóim-a | loim-án. |
| とき | 彫る-<(軽いものが)> | 彫る-<〜する人> | 版木-<対格> | 唱える-<(軽いものが)> | 詞-<対格> |
「彫り師は版木を彫るとき、詞を唱える。」
彫り師が彫りはじめに、版の木へ「言葉を載せて運んでほしい」と願う短い詞を唱える習わし。lúin で始まる「〜とき」の節は、主節の前に置く。後半の主節では主語を言わないが、動詞の語尾から、前半と同じ彫り師が主語だとわかる。
lúin tóra saréna mélnes, mé véil virán!
読み:ルーイン トーラ サレーナ メルネス、メー ヴェール ヴィラーン!
| lúin | tór-a | saréna | méln-es, | mé | véil | vir-án! |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 本番<主格> | 詩-<属格> | <禁止・願いの打ち消し> | 忘れる<命令法><あなたが> | 言葉-<対格> |
「詩合わせで正式の詠みの番が来たら、句を忘れるなよ。」
詩合わせの前に、目上の者が目下の者に言う励ましの言葉。saréna mélnes「詩の本番」は、勝ち負けの判定にかかる正式の詠みを指し、その前の下詠みと区別する。lúin 節では saréna が主語になり、軽性なので動詞は -a で受ける。禁止は mé +命令法の言い方で、2人称単数なので下向きの話し方になる。
lúin vréna faronár, géla endríña.
読み:ルーイン ヴレーナ ファロナール、ゲーラ エンドリーニャ。
| lúin | vrén-a | faronár, | gél-a | endríña |
| とき | うなずく-<(軽いものが)> | 運び人<主格> | 行く-<(軽いものが)> | 子ども<主格> |
「運び人がうなずくと、子どもは行く。」
lúin で時節を作る。無言のうなずきが、子どもに出かける合図になっている。
lúin þóra faronár, þréuna.
読み:ルーイン ソーラ ファロナール、スレウナ。
| lúin | þór-a | faronár, | þréun-a |
| とき | 立つ-<(軽いものが)> | 運び人<主格> | よろける-<(軽いものが)> |
「運び人が立ち上がると、よろける。」
時間の節は lúin で導き、主節の前に置く。主節の主語は同一主語として省略。立ち上がり直後のふらつきを述べる、日常的な描写の文。
lúin þrílo már, mé vandésa fáron.
読み:ルーイン スリーロ マール、メー ヴァンデーサ ファーロン。
| lúin | þríl-o | már, | mé | vand-és-a | fáron. |
| とき | 震える-<(重いものが)> | 手<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 量る-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 荷<対格> |
「手が震えるときは、荷を量ってはならない。」
帳場や作法書に見る規則。時節 lúin 節は主節の前に置ける。手のみが一時的に震える(意味2)。主節は主語を言わない当為法なので軽性形 vandésa。
lúin háles þelán némes, þréelim.
読み:ルーイン ハーレス セラーン ネーメス、スレーリン。
| lúin | hál-es | þel-án | ném-es, | þréel-im |
| when | 呼ぶ-<あなたが> | 名前-<対格> | <私>-<属格> | 振り返る<〜し終えた>-<私が> |
「あなたが私の名を呼ぶと、私は振り向いた。」
lúin 節では動詞が節頭に来る。主語は人称語尾に含み、所有は名詞 þelán の後ろに属格 ném-es を置く。主節の完了相 þréel- は動詞の完了形で、名詞の呼称ではない。
lúin lóima ilanár, krailhóuma endríña.
読み:ルーイン ロイマ イラナール、クライルホーマ エンドリーニャ。
| lúin | lóim-a | ilanár, | krailhóum-a | endríña. |
| とき | 唱える-<(軽いものが)> | 星読み<主格>, | 掴まる-<(軽いものが)> | 子ども<主格> |
「星読みが唱えると、子どもは掴まる(語りにのめり込む)。」
比喩・くだけた用法。炉ばただけでなく、星読みの語りに子どもがのめり込んで動けなくなる。捕まる対象は文法上は表れず、状況から補う。
lúin martórim, tóra endríña.
読み:ルーイン マルトーリン、トーラ エンドリーニャ。
| lúin | martór-im, | tór-a | endríña. |
| とき | 手招き-<私が> | 来る-<(軽いものが)> | 子ども<主格> |
「「私が手招きすると、子どもが来る。」」
身振りの約束を説明する日常文。lúin の時節は主節の前に置ける。節内は VSO で、主語代名詞は語尾で示す。主節の主語 endríña は軽性の人を指す。
lúin léimim fáron, kruntiúlo marfúnel.
読み:ルーイン レーミン ファーロン、クルンティウーロ マルフーネル。
| lúin | léim-im | fáron, | kruntiúl-o | marfúnel. |
| とき | 置く-<私が> | 荷<対格> | 支えが軋む-<(重いものが)> | 腕木<主格> |
「「荷を置くと、腕木が軋む。」」
荷を受け止めるときの通常の作動音を示す日常表現。kruntiúl-の自然な主語は腕木・綱・橋脚などの支えで、ここではmarfúnelが重性・単数の主語。
lúin kruntiúlo marfúnel, þalíþa funelár fáron.
読み:ルーイン クルンティウーロ マルフーネル、サリーサ フネラール ファーロン。
| lúin | kruntiúl-o | marfúnel, | þal-íþ-a | funelár | fáron. |
| とき | 支えが軋む-<(重いものが)> | 腕木<主格> | 止まる-<〜させる>-<(軽いものが)> | 綱番<主格> | 荷<対格> |
「「腕木が軋むと、綱番は荷を止める。」」
現場の定型的操作。þal-「止まる」に使役接尾辞-íþ-が付いたþalíþ-「止める」を用いる。主語funelárは軽性・単数、目的語fáronは重性・単数で対格が主格と同形。
lúin áuran ombára ilánai, þrínan éndrai.
読み:ルーイン アウラン オンバーラ イラーナイ、スリーナン エンドライ。
| lúin | áur-an | ombára | ilán-ai, | þrín-an | éndr-ai. |
| とき | 昇る-<彼らが> | 十 | 灯-<〜たちが> | 目を覚ます-<彼らが> | 人-<〜たちが> |
「十の灯が昇ると、人々は目を覚ます。」
暦や儀礼の詞に似た書面の文。lúin 節は主節の前に置く。ombára ilánai は「十の灯」という星座名で、古い形 ombára が名前にだけ残っている。「十の灯」は通常の星の数えではなく、星を数えている意味にはならない。3複数の動詞は性を区別しない。
lúin áuran ombára ilánai, seláura ólmar.
読み:ルーイン アウラン オンバーラ イラーナイ、セラウラ オルマル。
| lúin | áur-an | ombára | ilán-ai, | seláur-a | ólmar |
| とき | 昇る-<彼らが> | 十 | 灯-<〜たちが> | 目覚める-<(軽いものが)> | 年長者<主格> |
「十の灯が昇ると、年長者は目を覚ます。」
書物・年代記向けの描写。lúin による時節節が主節の前に置かれる。áuran ombára ilánai は「十の灯が昇る」という星座名に基づく定型表現。主節の seláura は主語 ólmar に一致して軽性 3 人称単数。
lúin fǘro ílmo, kúulimor tambór.
読み:ルーイン フューロ イルモ、クーリモル タンボール。
| lúin | fǘr-o | ílmo, | kúul-imor | tambór |
| とき | 沸く-<(重いものが)> | 水<主格> | 煮る-<我々が> | 雑穀<対格> |
「水が沸くと、我らは雑穀を煮る。」
日常の炊事。時間節を lúin で導き、主節を続ける。主語「我ら」は動詞語尾に含み、名詞では繰り返さない。重性名詞 tambór の対格は主格と同形。
lúin héla éndra, éso heló klér.
読み:ルーイン ヘーラ エンドラ、エーソ ヘロー クレール。
| lúin | hél-a | éndra, | és-o | heló | klér. |
| とき | 座る-<(軽いものが)> | 人<主格> | 居る-<(重いものが)> | 尻<主格> | 冷たい |
「人が座ると、尻は冷たい。」
暮らしの心得や書物のような場面を想定した文。lúin で「〜とき」節を導き、節内も動詞を先頭に置いた VSO とする。heló は重性単数の主語で、klér はそれに一致して単数主格形のまま。
lúin tóra oráur, lisan lisárai plánan.
読み:ルーイン トーラ オラウル、リサン リサーライ プラーナン。
| lúin | tór-a | oráur, | lís-an | lis-ár-ai | plán-an. |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 夜明け<主格> | 書く-<彼らが> | 書く-<〜する人>-<〜たちが> | 帳簿-<対格> |
「夜明けが来ると、書記たちは帳簿を書く。」
帳場・書記の場面。lisár は lís「書く」+ -ár「〜する人」。目的語 planned は軽性a語幹の対格。
lúin tóra oráur, gélan faronárai du orén.
読み:ルーイン トーラ オラウル、ゲーラン ファロナーライ ドゥ オレーン。
| lúin | tór-a | oráur, | gél-an | faron-ár-ai | du | orén. |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 夜明け<主格> | 行く-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 下手 | 縁<対格> |
「夜明けが来ると、運び人たちは縁へ下る。」
運搬作業の場面。lúin 節は主節の前に置く。gélan は gél-「行く」+3複数 -an。faronárai は faron「荷」+ -ár「〜する人」+軽性複数主格 -ai。
lúin tóra loimá, þalfínda ólmar loimán.
読み:ルーイン トーラ ロイマー、サルフィンダ オルマル ロイマーン。
| lúin | tór-a | loim-á, | þalfínd-a | ólmar | loim-án |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 詞-<主格> | 耳を澄ます-<(軽いものが)> | 年長者<主格> | 詞-<対格> |
「詞が来るとき、年長者は詞に耳を澄ます。」
祀りの詞の場面。時節はlúinで導き、主節に先立つ。主節動詞は年長者に一致して軽性3単。語り詞の継ぎ目で、次の音を受けるために静止して聞く意。
lúin éso nébro húmel, éso gromsámon klér.
読み:ルーイン エーソ ネーブロ フーメル、エーソ グロンサーモン クレール。
| lúin | és-o | nébro | húmel, | és-o | gromsámon | klér |
| とき | いる-<(重いものが)> | 霧<主格> | 湿った, | いる-<(重いものが)> | 皮膚感<主格> | 冷たい |
「霧が湿ると、肌触りは冷たい。」
霧期の触れ感。この文では皮膚表面で受ける感じの意味であり、gloss 上は「皮膚感」と出す。gromsámon も nébro も重性なので、いずれも 3単・重性の éso で受ける。
lúin áurau sílarau, gélau némor dáun du krambóra.
読み:ルーイン アウラウ シーララウ、ゲーラウ ネーモル ダウン ドゥ クランボーラ。
| lúin | áur-au | sílar-au, | gél-au | némor | dáun | du | krambóra. |
| とき | 昇る-<双数> | 月-<双数> | 行く-<双数> | <我々> | 二人 | 下手 | クランボーラ<対格> |
「二つの月が昇ると、我ら二人はクランボーラへ下っていく。」
道筋や季節を記す書物的な文。lúin 節は読点で主節と区切る。双数の動詞 áurau・gélau は人称を表さないが、主節の némor が加わって話し手を含む二人であることがわかる。du + 対格で下手・南方向への動きを示す。krambóra は固有名詞として、対格でも語尾が立たない。
lúin tóra reinálva, snáula lénþa.
読み:ルーイン トーラ レイナルヴァ、スナウラ レンサ。
| lúin | tór-a | reinálva, | snául-a | lénþa. |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 雨期<主格> | 生える-<(軽いものが)> | 若菜<主格> |
「雨期が来ると、若菜が生える。」
暦や書物の記述向きの文。lúin で「〜すると」と時節の到来を導く。reinálva「雨期」を主語に置き、雨を「上から来るもの」として軽性の形 tór-a で受ける。若菜 lénþa は単数の総称として扱う。自動詞 snául-「生える」は主語 lénþa に一致し、3人称単数・軽性の snául-a となる。
lúin méirim, tóra páil pír.
読み:ルーイン メーリン、トーラ パイル ピール。
| lúin | méir-im, | tór-a | páil | pír |
| とき | 与える-<私が>, | 来る-<(軽いものが)> | 間違い<主格> | 小さい<主格> |
「私が差し出すときに、小さなうっかりが起こる。」
受け渡しの場面の定型。時を表す lúin 節が主節の前に来る。主節の主語が軽性の páil なので、動詞は軽性の 3人称単数 tóra を取る。主語に後置する形容詞 pír は主格のまま。
lúin krúelo fáron, trolþála faronár.
読み:ルーイン クルーエロ ファーロン、トロルサーラ ファロナール。
| lúin | krúel-o | fáron, | trolþál-a | faron-ár. |
| とき | 動く-<(重いものが)> | 荷<主格> | 踏ん張る-<(軽いものが)> | 荷-<〜する人> |
「荷が揺れると、運び人が踏ん張る。」
lúin で導く時節も動詞が節の先頭。荷 fáron は重性なので krúelo。主語 faronár は人を表す語で軽性なので、動詞は 3人称単数・軽性の -a を受ける。
lúin tór-o nébro es orénos, gúma tíula.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ エス オレーノス、グーマ ティーウラ。
| lúin | tór-o | nébro | es | orén-os, | gúm-a | tíula |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | から | 縁-<属格> | くぐもる-<(軽いものが)> | 音<主格> |
「縁から霧が上がってくると、音がくぐもる。」
縁や崖道の日常語としての場面。主節・従属節ともに動詞を先頭にする。霧 nébro は重性なので、来るの動詞は3人称単数・重性の -o になる。es は属格と組んで「〜から」。
lúin lóima ilanár virán, elþaséna senár kumbór.
読み:ルーイン ロイマ イラナール ヴィラーン、エルサセーナ セナール クンボール。
| lúin | lóim-a | ilanár | vir-án, | elþasén-a | senár | kumbór. |
| とき | 唱える-<(軽いものが)> | 星読み<主格> | 言葉-<対格>, | 疵を確かめる-<(軽いものが)> | 目付<主格> | 青銅<対格> |
「星読みが詞を唱えるとき、目付は青銅を火に透かして疵を確かめる。」
lúin は時の節を導き、節内も VSO。lóima は他動詞なので目的語枠を空けず、virán「ことば/詞」で埋める。lóima は主語 ilanár に一致し、elþaséna は senár に一致する。kumbór は重性なので対格語尾がない。
lúin glǘno glünó, krása lóna.
読み:ルーイン グリューノ グリュノー、クラーサ ローナ。
| lúin | glǘn-o | glünó, | krás-a | lóna. |
| とき | 凍る-<(重いものが)> | 氷<主格> | ひびが入る-<(軽いものが)> | 柱の木<主格> |
「氷が凍ると、柱の木にひびが入る。」
凍りの頃に立ち木が寒さで縦に裂けることを言う。副文は lúin に導かれ、動詞が主語に先立つ。主文も VSO で krása lóna とする。lóna は軽性なので、動詞は軽性の krása をとる。割れきって粉になる意味ではなく、裂け目が入る意味。
lúin gloiréla torár, gánimor sáko torárei.
読み:ルーイン グロイレーラ トラール、ガーニモル サーコ トラーレイ。
| lúin | gloir-él-a | torár, | gán-imor | sáko | torár-ei. |
| とき | お越しになる-<〜だろう>-<(軽いものが)> | 客<主格> | 贈る-<我々が> | 塩<対格> | 客-<与格> |
「客がおいでになると、我らは客に塩を贈る。」
作法や習わしを記すような文。時節の出来事を表す文では、lúin の後ろに動詞を続ける。客の来訪を glóir- で言い、主節では人情として塩を渡す。取引語ではなく、客への礼としての贈与を示す。
lúin háles þelán némes, nóumaurim.
読み:ルーイン ハーレス セラーン ネーメス、ノーマウリン。
| lúin | hál-es | þel-án | ném-es, | nóumaur-im |
| とき | 呼ぶ-<あなたが> | 名前-<対格> | <私>-<属格> | 照れる-<私が> |
「あなたが私の名前を呼ぶと、私は照れる。」
日常会話。lúin節が主節に先行する。þelá「名前」の対格 þelán に、所有の属格 némes を後置して「私の名前」を作る。主節は1人称語尾 -im によって主語を省略できる。
lúin dúlo funelfáron, krémero krénmo fúneloi
読み:ルーイン ドゥーロ フネルファーロン、クレーメロ クレンモ フーネロイ
| lúin | dúl-o | funelfáron, | krémer-o | krénmo | fúnel-oi |
| とき | 下る-<(重いものが)> | 綱荷<主格>, | 環に掛かる-<(重いものが)> | 環<主格> | 綱-<与格> |
「綱荷が下りるとき、輪は綱に掛かっている。」
手順書的な文。lúin「〜とき」の節は主節の前に置く。主語のkrénmoが重性なので、動詞はkrémero。掛かり先の綱は与格fúneloi。
lúin tóra léuma, kréla dralsnéla
読み:ルーイン トーラ レウマ、クレーラ ドラルスネーラ
| lúin | tór-a | léuma, | krél-a | dralsnéla |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 風<主格> | 足りる-<(軽いものが)> | 首巻き<主格> |
「風が吹くと、首巻きで足りる。」
凍りの頃でなく、風の強い日に、首のあたりだけ巻く装いで間に合うという用例。lúin が導く節は「lúin 動詞 主語」の順で、tóra léuma のように動詞が主語に先行する。主節では kréla の主語が dralsnéla。krél- は「足りる」を表す自動詞。
lúin tóra torár, houmníla sélvan viráis.
読み:ルーイン トーラ トラール、ホウンニーラ セルヴァン ヴィライス。
| lúin | tór-a | torár, | houmníl-a | sélvan | vir-áis. |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 客<主格> | 炉ばたの話を盛り上げる-<(軽いものが)> | セルヴァン<主格> | 言葉-<〜たちを> |
「客が来ると、セルヴァンは炉ばたの話を盛り上げる。」
lúin の従属節で、客の来訪という炉ばたの場面を置く。torár が加わることで、人との距離を縮める比喩用法が立つ。sélvan は軽性の名として動詞 -a を受ける。
lúin práima elþá, houmnílim élan.
読み:ルーイン プライマ エルサー、ホウンニーリン エーラン。
| lúin | práim-a | elþá, | houmníl-im | él-an. |
| とき | 細る-<(軽いものが)> | 火<主格> | 炉を(火を)続ける-<私が> | <3人称単数・軽性>-<対格> |
「火が細ると、私は炉を続ける。」
lúin で導く従属節も動詞が先頭。細りかけた火を保つ意で、燃料を単に追加する意ではない。目的語 élan は前の elþá を受ける。
lúin na ráinan endríñai amvirán, drúnan.
読み:ルーイン ナ ライナン エンドリーニャイ アンヴィラーン、ドルーナン。
| lúin | na | ráin-an | endríñ-ai | amvir-án, | drún-an. |
| とき | <〜ない> | 知る-<彼らが> | 子ども-<〜たちが> | 高地語-<対格>, | 首を傾ける-<彼らが> |
「子どもたちは高地語がわからないと、首を傾ける。」
書物的な常態表現。lúin が「〜すると」と副節を導く。副節は否定の na、動詞、主語、目的語の順で、主節は人称接辞 -an が副節の主語 endríñai を受けて省略される。drúnan は、聞き手が相手の言葉を整理しようとするときに見られる自動詞用法。
lúin na vírim þelán, núnim
読み:ルーイン ナ ヴィーリン セラーン、ヌーニン
| lúin | na | vír-im | þel-án, | nún-im |
| とき | <〜ない> | 言う-<私が> | 名-<対格> | 目を閉じる-<私が> |
「その名を口にしないとき、私は目を閉じる。」
弔いや深い悲しみの場面。亡き者の名を唱えない禁忌や、悼みの中で言葉を控える動作として núnim が用いられる。lúin は主節に先行する時の節を導く。
lúin víra ólmar élan, núnim
読み:ルーイン ヴィーラ オルマル エーラン、ヌーニン
| lúin | vír-a | ólmar | él-an, | nún-im |
| とき | 言う-<(軽いものが)> | 年長者<主格> | <3人称単数・軽性>-<対格> | 目を伏せる-<私が> |
「年長者がそれを仰るとき、私は目を伏せる。」
日常の敬意の場面。目上者の前で静かにまぶたを下ろす作法。núnim 自体は謙譲の接頭辞を持たないが、動作が敬意を表す。vír- は他動詞なので、目的語の代名詞 él に対格語尾 -an を付けた él-an を補う。
「〜するとき」「〜すると」という時の節を導く接続の小辞。節の頭に置き、節の中は主節と同じく動詞で始める。時の節はふつう主節の前に置き、読点で区切る(lúin áuran ombára ilánai, dulíþan kelárai gandér)。
接続の小辞。lú-in の二音節で、ui は二重母音にならない。
古い語根 *lú-「時・巡り」に、副詞を作る -in がついた形が、小辞として固まったものとされる。lú-in の二音節で、動詞の副動詞 -in と同じ語尾である。
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