小説
左の目次から話を選んでください。
一
数の一。後ろの名詞は単数になる。
éso ílmo klér ín an kórvoi.
読み:エーソ イルモ クレール イーン アン コルヴォイ。
| és-o | ílmo | klér | ín | an | kórv-oi. |
| いる-<(重いものが)> | 水<主格> | 冷たい | 一 | 上手 | 倉-<与格> |
「倉の北側に、冷たい水がある。」
ín「一」を名詞句の終わりに置いて、不定の名詞句を閉じる。閉じたあとの an+与格は比較ではなく場所。
sán fáronul grómul ín an kórvoi.
読み:サーン ファーロヌル グロームル イーン アン コルヴォイ。
| sán | fáron-ul | gróm-ul | ín | an | kórv-oi. |
| いる<彼らが> | 荷-<〜たちが> | 重い-<〜たちが> | 一 | 上手 | 倉-<与格> |
「倉の北側に、重い荷がいくつかある。」
名詞句の終わりの ín は、複数の名詞句にも使える不定の目印。
éso ín fáron gróm ín an kórvoi.
読み:エーソ イーン ファーロン グローン イーン アン コルヴォイ。
| és-o | ín | fáron | gróm | ín | an | kórv-oi. |
| いる-<(重いものが)> | 一 | 荷<主格> | 重い | 一 | 上手 | 倉-<与格> |
「倉の北側に、重い荷が一つある。」
名詞の前の ín は数の「一つの」、名詞句の終わりの ín は不定の「ある」。二つ並べてよい。
faronér ín fáron, ende.
読み:ファロネール イーン ファーロン、エンデ。
| faronér | ín | fáron, | ende. |
| 担ぐ<命令法><あなたが> | 一 | 荷<対格> | どうぞ |
「荷を一つ担いでくれ、頼む。」
崖道や市で、運び人に仕事を頼むときの言葉。ín の後ろの名詞は単数になる。fáron は重性なので、対格も主格と同じ形。むき出しの語幹+ende は取引言葉の型。
lísa lisár ín sáindaran.
読み:リーサ リサール イーン サインダラン。
| lís-a | lis-ár | ín | sáindar-an. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 一 | 証文-<対格> |
「書記が証文を一通書く。」
役所での報告。ín「一」の後ろの名詞は単数になり、ここでは目的語なので単数対格 sáindaran になる。帳簿に記すときは量の名詞を入れるが、話し言葉では省いてよい。
ésa ín rása némei.
読み:エーサ イーン ラーサ ネーメイ。
| és-a | ín | rása | ném-ei. |
| いる-<(軽いものが)> | 一 | 重ね<主格> | <私>-<与格> |
「私は一重ねの身にすぎません。」
重ねる衣の枚数が身分の段を表すことから、自分の身分の低さをへりくだって言う言い方。所有を「ある+持ち主の与格」で表している。動詞は持たれている物の rása(軽性)に一致する。ín「一」の後ろなので、名詞は単数になる。
duténdim ín virán.
読み:ドゥテンディン イーン ヴィラーン。
| du-ténd-im | ín | vir-án |
| <〜させていただく>-句を編む-<私が> | 一 | 言葉-<対格> |
「一句、編ませていただきます。」
詩の挨拶や詩合わせで、目下の者が先に詠むときの前置き。ténd- を詩句に使うのは、「言葉を布のように整えて組む」という比喩による。謙譲の du- は、t- の前ではそのままの形でつく。ín「一」の後ろの名詞は単数になる。
snéimim. léunim ín virán, ausenár.
読み:スネーミン。レウニン イーン ヴィラーン、アウセナール。
| snéimim. | léun-im | ín | vir-án, | au-sen-ár. |
| 失礼します | 申す-<私が> | 一 | 言葉-<対格> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人> |
「失礼いたします。一言申し上げます、目付殿。」
目上の人どうしの話に割りこむときの言い方。snéimim で話の流れを止め、謙譲の補充形 léun-「申す」で発言の許しを求める。ín「一」の後ろの名詞は単数になる。
léunim ín ombríl.
読み:レウニン イーン オンブリール。
| léun-im | ín | ombríl. |
| 申す-<私が> | 一 | 句<対格> |
「一句申し上げます。」
詩の挨拶の前置き。目下の者が先に詠むときに言う。léun- は「言う」の謙譲の補充形。ín「一」の後ろの名詞は単数になる。ombríl は重性の子音語幹なので、対格も主格と同じ形。
funeléra lisár ré éso louríño rúndel ín an orénoi.
読み:フネレーラ リサール レー エーソ ロウリーニョ ルンデル イーン アン オレーノイ。
| funelér-a | lis-ár | ré | és-o | louríño | rúndel | ín | an | orén-oi. |
| 書き留める-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | <〜と(節)> | いる-<(重いものが)> | 小瀬<主格> | 速い | 一 | 上手 | 縁-<与格> |
「書記は「縁の上手に速い小瀬がある」と書き留める。」
書物・記録の場面。ré の後の引用節は存在文。存在文で an orénoi を場所として置くため、名詞句を不定の閉じ ín で閉じてから前置詞句を置く。この閉じがないと、形容詞のすぐ後ろの an+与格は比較として読まれる。形容詞 rúndel は名詞の後ろに置く。
ké ésa ín píma un kórvoi?
読み:ケー エーサ イーン ピーマ ウン コルヴォイ?
| ké | és-a | ín | píma | un | kórv-oi? |
| <〜か> | いる-<(軽いものが)> | 一 | 紙<主格> | 内に | 倉-<与格> |
「倉に紙が一枚あるか。」
倉・帳場での確認の文。意味2「数える対象としての紙一片」を、単位として数える。紙一枚は「ínn píma」と表し、主語は軽性なので存在動詞はéさ。un kórv-oi「倉の中で」。
vándim ín rimbó tambóros.
読み:ヴァンディン イーン リンボー タンボーロス。
| vánd-im | ín | rimbó | tambór-os. |
| 量る-<私が> | 一 | 枡<対格> | 雑穀-GEN. |
「雑穀を枡一枡、量る。」
日常の計量の場面。数量の単位として rimbó を用いる。不定の数量詞 ín は名詞の前に置き、測られた物は部分属格 tambóros で表す。
ké éso fúnel só ín ómbo?
読み:ケー エーソ フーネル ソー イーン オンボ?
| ké | és-o | fúnel | só | ín | ómbo? |
| <〜か> | いる-<(重いものが)> | 綱<主格> | この<重性> | 一 | 指<主格> |
「この綱は、一指(の太さ)あるか。」
市での日常会話。長さ・幅を単位「指」で表す用法。存在・名詞述語文の主語 fúnel が重性単数なので、動詞 és- は重性 3 人称単数 -o をとる。単数の主格 ómbo は、語を切らずに一つの形態素として示す。
éso reinplén ín un kórv-oi.
読み:エーソ レインプレーン イーン ウン コルヴォイ。
| és-o | reinplén | ín | un | kórv-oi |
| いる-<(重いものが)> | 雨よけ<主格> | 一 | 内に | 倉-<与格> |
「倉の中に雨よけがある。」
存在文。不定の閉じínを名詞句の終わりに置いている。存在する対象の雨よけが重性なので、繋辞は3人称単数・重性。倉の中に仕舞っているものを数える場面の書きつけにも使える。
rímbim ín puló.
読み:リンビン イーン プロー。
| rímb-im | ín | puló |
| 数える-<私が> | 一 | 拍<対格> |
「拍を一つ数える。」
市井の帳場や数えの場で、刻みを一つずつ数え上げる場面。数詞 ín は名詞の前に置き、数える名詞は単数のまま。puló は重性o語幹の単数で、主格と対格が同形であるため目的語も puló のまま立つ。
léima ólmar ín slóvo.
読み:レーマ オルマル イーン スローヴォ。
| léim-a | ólmar | ín | slóvo |
| 置く-<(軽いものが)> | 年長者<主格> | 一 | 人分<対格> |
「年長者が人分を一つ置いておく。」
配給・食事などの一人分を指す日常的な用例。主語 ólmar は人として軽性なので動詞は軽性単数。slóvo は重性o語幹の単数対格形。
同じ(一つの)
二つ以上のものが一つにまとまっている、同じものであることを表す。ín fóndaros「同じ源から」。
dúlau dáun an ín fóndaros.
読み:ドゥーラウ ダウン アン イーン フォンダロス。
| dúl-au | dáun | an | ín | fóndar-os. |
| 下る-<双数> | 二人 | 上手 | 同じ | 源-<属格> |
「二人は同じ源から流れ下っている(同じ流れの者だ)。」
系譜読みが婚姻や相続の場で使う言い方。ín は「一つの」から転じて「同じ」の意味になる。an+属格で「上手から」。主語が双数の代名詞 dáun なので、動詞も双数になる。
vírau dáun ín virán.
読み:ヴィーラウ ダウン イーン ヴィラーン。
| vír-au | dáun | ín | vir-án. |
| 言う-<双数> | 二人 | 同じ | 言葉-<対格> |
「二人は同じことを言っている。」
日常の言い方で、二人の言い分が一致していることを表す。ここでの ín virán は「一つの言葉」ではなく「同じ言葉」の意味。双数の動詞は人称も性も区別しない。
基数の「一」。名詞の前に置き、後ろの名詞は単数になる(ín báron「一本」)。格変化はしない。数を言うだけでなく「ただ一つの」「同じ一つの」という意味でもよく使う。改まった名乗りや系譜の言い方では、ín fóndaros「同じ源から」のように、二つの家や人が一つの流れに属することを言う。名詞句の終わりに置くと、「ある〜」という不定の名詞句の終わりの目印になる(éso ílmo klér ín an kórvoi「倉の北側に、冷たい水がある」)。くだけた言葉ではよく落ちる。名詞句の終わりの ín は数詞としては感じられず、複数や数えない名詞にも使う。ただし星には付けない(星読みや祀りの作法)。
léisin sáindaran, méirim élan senárei.
読み:レーシン サインダラン、メーリン エーラン セナーレイ。
| léis-in | sáindar-an, | méir-im | él-an | sen-ár-ei. |
| 書く<〜し終えた>-<〜して・〜く> | 証文-<対格> | 与える-<私が> | <3人称単数・軽性>-<対格> | 見る-<〜する人>-<与格> |
「証文を書き終えて、それを目付に渡す。」
完了の語根+-in で「〜し終えて」。主語は後ろの動詞と同じ(私)。 副動詞の句と主節は別の文として数えるので、主節の目的語は代名詞 élan で置く。
vándin fáron, lísa lisár plánan.
読み:ヴァンディン ファーロン、リーサ リサール プラーナン。
| vánd-in | fáron, | lís-a | lis-ár | plán-an. |
| 量る-<〜して・〜く> | 荷<対格> | 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 帳簿-<対格> |
「荷を量りながら、書記は帳簿を書く。」
未完了の語根+-in で「〜しながら」。量るのも書くのも書記。
lísa lisár plánan, vándin fáron.
読み:リーサ リサール プラーナン、ヴァンディン ファーロン。
| lís-a | lis-ár | plán-an, | vánd-in | fáron. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 帳簿-<対格> | 量る-<〜して・〜く> | 荷<対格> |
「書記は荷を量りながら、帳簿を書く。」
未完了の -in は文の後ろに置くのが基本。読点で区切るので、枠には数えない。
na vándin fáron, lísa lisár plánan.
読み:ナ ヴァンディン ファーロン、リーサ リサール プラーナン。
| na | vánd-in | fáron, | lís-a | lis-ár | plán-an. |
| <〜ない> | 量る-<〜して・〜く> | 荷<対格> | 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 帳簿-<対格> |
「荷を量らずに、書記は帳簿を書く。」
「〜せずに」は -in の動詞の前に na を置く。量らないのも書くのも書記。
lísa lisár plánan gléinin.
読み:リーサ リサール プラーナン グレーニン。
| lís-a | lis-ár | plán-an | gléin-in. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 帳簿-<対格> | 清い-<〜して・〜く> |
「書記は帳簿を清く書く。」
形容詞+-in で副詞「〜く」。
anórel, an kórvoi, léisin sáindaran, méira lisár élan senárei.
読み:アノーレル、アン コルヴォイ、レーシン サインダラン、メーラ リサール エーラン セナーレイ。
| anórel, | an | kórv-oi, | léis-in | sáindar-an, | méir-a | lis-ár | él-an | sen-ár-ei. |
| 昨日 | 上手 | 倉-<与格> | 書く<〜し終えた>-<〜して・〜く> | 証文-<対格> | 与える-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | <3人称単数・軽性>-<対格> | 見る-<〜する人>-<与格> |
「昨日、倉の北側で、証文を書き終えて、書記はそれを目付に渡した。」
場面の枠は「時 → 場所 → -in の句」の順。それぞれ読点で区切る。「それを」は軽性の証文を受けるので élan。
dulíþin vúurimor gandér.
読み:ドゥリーシン ヴーリモル ガンデール。
| dul-íþ-in | vúur-imor | gandér. |
| 下る-<〜させる>-<〜して・〜く> | 届く-<我々が> | 硬木<対格> |
「我々は硬木を下ろせる。」
副動詞+vúur-「届く」で、状況が許して「できる」。人称の語尾は vúur- につき、前の動詞の目的語 gandér は後ろに置く。
na dulíþin vúuro fúnel gandér du dálor.
読み:ナ ドゥリーシン ヴーロ フーネル ガンデール ドゥ ダーロル。
| na | dul-íþ-in | vúur-o | fúnel | gandér | du | dálor. |
| <〜ない> | 下る-<〜させる>-<〜して・〜く> | 届く-<(重いものが)> | 綱<主格> | 硬木<対格> | 下手 | 下の国<対格> |
「綱は硬木を下の国まで下ろせない。」
否定の na は副動詞の前に置き、二つの動詞をまとめて打ち消す。綱の長さが届かない、という可能の否定。
lísin þíla endríña lisáis.
読み:リーシン シーラ エンドリーニャ リサイス。
| lís-in | þíl-a | endríña | lis-áis. |
| 書く-<〜して・〜く> | 分かる-<(軽いものが)> | 子ども<主格> | 字-<〜たちを> |
「その子は字が書ける。」
副動詞+þíl-「分かる」で、やり方を知っていて「できる」(能力)。
ké rímbin þíles?
読み:ケー リンビン シーレス?
| ké | rímb-in | þíl-es? |
| <〜か> | 数える-<〜して・〜く> | 分かる-<あなたが> |
「お前は数えられるのか。」
能力を尋ねる。2人称を使うので下向きの話し方。目上の人には使わない。
rímbin þílim, salóur na rímbin vúurim sórel.
読み:リンビン シーリン、サロール ナ リンビン ヴーリン ソーレル。
| rímb-in | þíl-im, | salóur | na | rímb-in | vúur-im | sórel. |
| 数える-<〜して・〜く> | 分かる-<私が> | しかし | <〜ない> | 数える-<〜して・〜く> | 届く-<私が> | 今日 |
「数え方は知っているが、今日は数えられない。」
能力の þíl- と、可能の vúur- を並べて使い分ける。
tóra faronár, martórin.
読み:トーラ ファロナール、マルトーリン。
| tór-a | faron-ár, | martór-in. |
| 来る-<(軽いものが)> | 荷-<〜する人> | 手招き-<〜して・〜く> |
「「運び人が、手招きしながら来る。」」
場面の描写に使う。未完了の副動詞 -in は主文と同じ主語の同時動作を表し、読点で区けて文末に置く。faronár は fáron「荷」+ -ár による人・軽性の名詞で、動詞 tóra は軽性の 3 人称単数で受ける。
kléla raumvirá rúndelin.
読み:クレーラ ラウンヴィラー ルンデリン。
| klél-a | raumvirá | rúndel-in. |
| 走る-<(軽いものが)> | 噂<主格> | 早い-<〜して・〜く> |
「噂は速く駆け巡る。」
書物やことわざのような比喩的用法。人ではなく「噂」が主語で、話や事態が急速に展開する意。形容詞 rúndel「早い」に副詞化の -in をつけて rúndelin とし、動詞を修飾する。
na vírin virán, senosálimor.
読み:ナ ヴィーリン ヴィラーン、セノサーリモル。
| na | vír-in | vir-án, | senosál-imor. |
| <〜ない> | 言う-<〜して・〜く> | 言葉-<対格> | 目合わせ-<我々が> |
「私たちは、ひとことも言わず、目を合わせる(無言で合意する)。」
意味2。副動詞 -in に na をつけた否定形で「言わずに」と前置し、本句の「目合わせる」が無言の合意を示す。主語は本句の -imor が示す一人称複数。virán は virá「言葉」の単数対格。
trúno fáron sáunin un kéndoroi.
読み:トルーノ ファーロン サウニン ウン ケンドロイ。
| trún-o | fáron | sáun-in | un | kéndor-oi. |
| 転がる-<(重いものが)> | 荷<主格> | 良い-<〜して・〜く> | 内に | 市-<与格> |
「荷が市の中でうまく回る。」
市や取引の場で、商いが順調に進むことを「荷がうまく転がる」と言って表す。形容詞 sáun に -in をつけて「よく・うまく」の意の副詞を作る。un+与格で「〜の中で」。
nárim velíman nílin ílmo
読み:ナーリン ヴェリーマン ニーリン イルモ
| nár-im | vel-ím-an | níl-in | ílmo |
| しのぐ-<私が> | 渇く-<〜の技・〜さ>-<対格> | 飲む-<〜して・〜く> | 水<対格> |
「私は水を飲んで渇きをしのぐ。」
日常会話で、喉の渇きを完全に止めるまでではないが、水を含んで取り急ぎやりすごす動作を示す。velím は véli- の語根 vel- に抽象名詞化の -ím をつけた軽性名詞で、対格単数は -an。副動詞 nílin は主語が後ろの動詞と同一であることを示す。ílmo は重性名詞で、対格単数は同形。
kráilin maranlóur, þóndim.
読み:クライリン マランロール、ソンディン。
| kráil-in | maranlóur, | þónd-im. |
| 持つ-<〜して・〜く> | 親指<対格> | 誓う-<私が> |
「親指を握り、私は誓う。」
儀礼的な所作。副動詞-inのkráilinは主節þóndimと同一主語の「〜しながら」を表す。maranlóurは重性名詞で主格と対格が同形だが、kráil-が他動詞であるため、その直後の語を目的語として読む。
ké grúmbes kálmo sáunin
読み:ケー グルンベス カルモ サウニン
| ké | grúmb-es | kálmo | sáun-in |
| <〜か> | 噛む-<あなたが> | 粟<対格> | 良い-<〜して・〜く> |
「お前は粟をよく噛んでいるか。」
日常会話の二項質問。主語の代名詞 tás は動詞語尾で足りるため省く。sáun に副詞化の -in をつけた sáunin が「よく」の意味になる。
kráilin kailíñan, tóra endríña.
読み:クライリン カイリーニャン、トーラ エンドリーニャ。
| kráil-in | kailíñ-an, | tór-a | endríña. |
| 手に持つ-<〜して・〜く> | 藁-<対格> | 来る-<(軽いものが)> | 子<主格> |
「藁を持って、子どもが来る。」
同一主語を続ける副動詞 -in の構文。「持ってくる」を「持つ-CVB」と「来る」の二語で表す。主語 endríña は軽性。
þréinin, nanóirim.
読み:スレーニン、ナノイリン。
| þréin-in, | nanóir-im. |
| 目覚める<〜し終えた>-<〜して・〜く> | 眠れない-<私が> |
「目を覚ましてからは、眠れない。」
同一主語の継起は duói でなく完了相の副動詞 -in で表す。þrín-「目覚める」の完了語根 þréin- に -in をつけ、後続の nanóirim で同じ主語を受ける。
funeltrénan faronárai fúnel gléinin.
読み:フネルトレーナン ファロナーライ フーネル グレーニン。
| funeltrén-an | faron-ár-ai | fúnel | gléin-in. |
| 綱を手繰る-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 綱<対格> | 清い-ADV |
「運び人たちは綱を整えながら手繰る。」
作法書や手引のような常態文。主語が複数なので動詞は3複語尾 -an。gléinin が整える様子を表し、意味2として読む。
kráilin þaimfúnel, þáimim ílmo.
読み:クライリン サインフーネル、サイミン イルモ。
| kráil-in | þaimfúnel, | þáim-im | ílmo. |
| 持つ-<〜して・〜く> | 汲み綱<対格> | 汲む-<私が> | 水<対格> |
「汲み綱を手に持ちながら、私は水を汲む。」
水を汲み上げる道具としての使用場面。副動詞 kráilin と後ろの動詞 þáimim の主語は同じ一人称。þáimim ílmo は「汲む-1SG 水(重性の対格)」で、汲み綱は「手に持つ」句として前に置いている。
trálin, sénim páilan píran.
読み:トラーリン、セーニン パイラン ピーラン。
| trál-in, | sén-im | páil-an | pír-an |
| 写す-<〜して・〜く>, | 見る-<私が> | 間違い-<対格> | 小さい-<対格> |
「写しながら、私は小さな誤りを見つける。」
書の場で、手順のなかの小さな狂いを言う。同一主語の動作を副動詞 -in で主節につなぐ。páilan píran は目的語と、それに後置して一致する形容詞。páil は軽性子音語幹名詞で、目的語に -an が付く。形容詞 pír も軽性対格として píran になる。
táulin, sénim páilan píran.
読み:タウリン、セーニン パイラン ピーラン。
| tául-in, | sén-im | páil-an | pír-an |
| 取る-<〜して・〜く>, | 見る-<私が> | 間違い-<対格> | 小さい-<対格> |
「取っている途中で、小さなうっかりを見つける。」
物の受け取り・扱いの場面。副動詞 -in の動作と主節の動作は同一主語。受け渡しの中の不手際を、罪ではなく正しうる小さな誤りとして表す。
troltáulin pǘlmo, ráumim du orén.
読み:トロルタウリン ピュルモ、ラウミン ドゥ オレーン。
| troltául-in | pǘlmo, | ráum-im | du | orén. |
| 履く-<〜して・〜く> | 草鞋<対格> | 歩く-<私が> | 下手 | 縁<対格> |
「草鞋を履いて、私は縁の方へ歩いていく。」
日常の場面。副動詞接尾辞 -in により、同一主語のまま「草鞋を履いている」状態を背景として示す。主節は ráumim「私は歩く」。du は「下手へ」を表す前置詞で、orén「縁」は重性名詞のため単数の対格は主格と同形となる。
orveléimin lisáis, pándim.
読み:オルヴェレーミン リサイス、パンディン。
| orveléim-in | lis-áis, | pánd-im. |
| 組み替える<〜し終えた>-<〜して・〜く> | 字-<〜たちを> | 刷る-<私が> |
「字を組み替え終えて、刷る。」
版組みの手順を表す定型。副動詞の orveléimin は、主節の pándim と同一の主語を持つ完了副動詞である。目的語の lisáis は活字・駒・字札などの複数対格。
ké vóilin þíles sóndelan un þailviréi?
読み:ケー ヴォイリン シーレス ソンデラン ウン サイルヴィレー?
| ké | vóil-in | þíl-es | sóndel-an | un | þailvir-éi? |
| <〜か> | 読む-<〜して・〜く> | 分かる-<あなたが> | 書物-<対格> | 内に | 高原語(雅称)-<与格> |
「書物を高原語(雅称)で読めるか。」
学び舎で能力を尋ねる文。副動詞+þíl-「分かる」で、やり方を身につけていてできることを問う。ここでのþailviráは、都の改まった言葉としてだけでなく、高原語全体を雅に呼ぶ名として使う。
ké prambérin þíles dervó só?
読み:ケー プランベーリン シーレス デルヴォー ソー?
| ké | prambér-in | þíl-es | dervó | só? |
| <〜か> | 品定めする-<〜して・〜く> | 分かる-<あなたが> | 挽き石<対格> | この<重性> |
「この挽き石を品定めできるか。」
prambér-in þíl- は能力表現。主語の2人称は þíles の語尾で示す。対象の dervó só は重性単数の目的語。
vérin, vréna ólmar pír-in.
読み:ヴェーリン、ヴレーナ オルマル ピーリン。
| vérin, | vrén-a | ólmar | pír-in. |
| そのとおり, | うなずく-<(軽いものが)> | 年長者<主格> | 小さい-<〜して・〜く> |
「「そのとおり」と年長者は小さくうなずく。」
改まった集まりで了解を示す動作を記述する文。主語の人名詞は軽性なので、動詞は3人称単数・軽性の-aを取る。程度は後続の副詞pír-inが表す。
þréula sírna aldárei múlin.
読み:スレウラ シルナ アルダーレイ ムーリン。
| þréul-a | sírna | aldár-ei | múl-in. |
| 着く-<(軽いものが)> | 霜<主格> | 座-<与格> | 厚い-CVB. |
「霜は座に厚く着いている。」
改まった描写でも、時制を表す語形がないため未完了で現在結果の状態を言う。裸の与格が着く場所を示す。霜は軽性なので軽性の3人称単数語尾-aで受ける。
sórel, þréulo eelþó múlin.
読み:ソーレル、スレウロ エールソー ムーリン。
| sórel, | þréul-o | eelþó | múl-in. |
| 今日, | 着く-<(重いものが)> | 灰<主格> | 厚い-CVB. |
「今日は灰が厚く着いている。」
日常の観察文。今日sórel。完了を表す語尾 s は立てず、未完了の直説法で、現在に至る結果の状態を述べる。灰は重性なので動詞は重性の3人称単数語尾-oをとる。
fíndim kraselván, lúndin krúndo.
読み:フィンディン クラセルヴァーン、ルンディン クルンド。
| fínd-im | kraselv-án, | lúnd-in | krúndo. |
| 聞く-<私が> | 裂けた声-<対格>, | 歌う-<〜して・〜く> | 荷担ぎ歌<対格> |
「荷担ぎ歌を歌いながら、裂けた声を聞く。」
荷担ぎ歌を歌い続ける日常場面。主節と副動詞の主語は同じ一人称。krúndo は重性o語幹の単数対格で、主格 krúndo に同じ。
tromráum, faronérin fáron!
読み:トロンラウン、ファロネーリン ファーロン!
| tromráum, | faronér-in | fáron! |
| 急ぐ<命令法><あなたが> | 担ぐ-<〜して・〜く> | 荷<対格> |
「荷を担いで、急げ。」
縁や崖道で聞こえる口語的な促し。命令法 2 人称単数は語幹のみで、tromráum の語末 m はそのまま保たれる。副動詞 faronérin fáron は主語を共有する同時動作を表し、荷は faronér- の目的語。
数詞。不変化。後続の名詞は単数。 名詞句の終わりに置くと不定の閉じになる。
古高原語から変わらない形。ínin「それぞれ」はこの語からできた。
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