orén

品詞
名詞
意味
縁
発音
[oˈren]
読み
オレーン
分野
自然・天体・天候・地形

意味

  1. 縁(崖)

    高原の南の端の大きな崖。

    mé duliþésa fáron es orénos.

    読み:メー ドゥリセーサ ファーロン エス オレーノス。

    médul-iþ-és-afáronesorén-os
    <禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>から縁-<属格>

    「縁から荷を落とさぬこと。」

    度量衡の碑の一句。当為法の文は mé で否定する。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の形をとる。強勢は当為法の -és- に移り、-íþ- の強勢は消える。

    gloiréla aulisár es orénos?

    読み:グロイレーラ アウリサール エス オレーノス?

    gloir-él-aau-lis-áresorén-os
    お越しになる-<〜だろう>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>から縁-<属格>

    「書記の方は縁からお越しになったのでしょうか。」

    目上の人には問いの小辞 ké を使わず、推量法で推し量る形にする。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。強勢が -él- に移るので、語根の ´ は消える。

    toríro nébro es orénos, na senéimor ilánais.

    読み:トリーロ ネーブロ エス オレーノス、ナ セネーモル イラーナイス。

    tor-ír-onébroesorén-os,nasen-é-imorilán-ais
    来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格><〜ない>見る-<〜だろう>-<我々が>灯-<〜たちを>

    「縁から霧が上がってくれば、我々には星が見えなくなるだろう。」

    霧 nébro は重性o語幹なので、仮定法の動詞も重性の -o をとる。帰結の部分は推量法で、na で否定している。1人称の語尾の前では、推量法の -él- の l が落ちて -é- になる。

    selvéna ausenár ré mé duliþésa fáron es orénos.

    読み:セルヴェーナ アウセナール レー メー ドゥリセーサ ファーロン エス オレーノス。

    selvén-aau-sen-árrémédul-iþ-és-afáronesorén-os.
    おっしゃる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人><〜と(節)><禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>から縁-<属格>

    「目付殿は、「縁から荷を落とさぬこと」とおっしゃる。」

    ré は「〜と」の節を導き、その節は主節の後ろに置く。ré の後ろの節は、元の文の法を保つ。ここでは度量衡の碑の一句 mé duliþésa fáron es orénos を、当為法のまま引用している。目付が碑の前で揉め事を裁くときの言い方。

    duliþíre kelár fáron es orénos, toriþéla dálor.

    読み:ドゥリシーレ ケラール ファーロン エス オレーノス、トリセーラ ダーロル。

    dul-iþ-ír-ekel-árfáronesorén-os,tor-iþ-él-adálor.
    下る-<〜させる>-<もし〜なら>-<(軽いものが)>伐る-<〜する人・主格>荷<対格>から縁-<属格>来る-<〜させる>-<〜だろう>-<(軽いものが)>下の国<対格>

    「樵が縁から荷を落とせば、下の国を呼び寄せることになろう。」

    条件の節は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけで作り、主節の前に置く。帰結の節は推量法。後半では主語を言っていないが、動詞の語尾から、前半と同じ樵が主語だとわかる。崖から物を落としてはいけない、という禁忌の説明。

    éso nébro an orénoi, esós na sénimor ilánais.

    読み:エーソ ネーブロ アン オレーノイ、エソース ナ セーニモル イラーナイス。

    és-onébroanorén-oi,esósnasén-imorilán-ais.
    いる-<(重いものが)>霧<主格>上手縁-<与格>だから<〜ない>見る-<我々が>灯-<〜たちを>

    「縁の上手に霧がある。だから、我々には星が見えない。」

    esós「それから(それゆえ)」は理由と結果。es pós「なぜ」と対になる。

    dúlimor es orénos du dálor.

    読み:ドゥーリモル エス オレーノス ドゥ ダーロル。

    dúl-imoresorén-osdudálor.
    下る-<我々が>から縁-<属格>下手下の国<対格>

    「我々は縁から下の国へ下りる。」

    崖道の商人や運び人が、乾風期に市へ下りるときの言い方。出どころは「es+属格」、行き先は「du+対格」で言う。主語は動詞の語尾 -imor でわかるので、代名詞は言わない。

    tóro nébro an orén.

    読み:トーロ ネーブロ アン オレーン。

    tór-onébroanorén.
    来る-<(重いものが)>霧<主格>上手縁<対格>

    「霧が縁へ這い上がってくる。」

    霧期の始まりを言う文。nébro「霧」は重性なので、動詞は重性の -o をとる。「an+対格」で「上手へ」。orén は重性子音語幹なので、対格は主格と同じ形になる。霧は下の国から崖を上ってくる「下の国の息」とされる。

    toríro nébro, mé dúl es orénos!

    読み:トリーロ ネーブロ、メー ドゥール エス オレーノス!

    tor-ír-onébro,médúlesorén-os!
    来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>下る<命令法><あなたが>から縁-<属格>

    「霧が来たら、縁から下りるな!」

    崖道の上り口で目下の者に言う、下向きの禁止。前半は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけの条件節で、霧 nébro は重性なので語尾は -o。後半は「mé+命令法の2人称単数(むき出しの語幹 dúl)」の形。霧期に崖道を下りるのは危ないうえ、霧は「下の国の息」として恐れられているので、よく聞く戒めである。

    dúla faronár es orénos. mé vír þelán éles!

    読み:ドゥーラ ファロナール エス オレーノス。メー ヴィール セラーン エーレス!

    dúl-afaronáresorén-os.mévírþel-ánél-es!
    下る-<(軽いものが)>運び人<主格>から縁-<属格><禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>名前-<対格><3人称単数・軽性>-<属格>

    「運び人が縁から下りた(落ちて死んだ)。その名を口にするな。」

    崖から落ちて死ぬことは、いちばん恐れられる死である。そのため brúum-「落ちる」とは言わず、dúl-「下る」で遠回しに言う。高原語には時制がないので、dúla は文脈によって「下りた」の意味になる。死後一年は死者の名を口にしない禁忌があるので、すぐ後に禁止の文が続く。

    dulíþan kelárai gandér es orénos.

    読み:ドゥリーサン ケラーライ ガンデール エス オレーノス。

    dul-íþ-ankel-ár-aigandéresorén-os.
    下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>杭材<対格>から縁-<属格>

    「樵たちは縁から硬木の丸太を下ろす。」

    乾風期の吊り下ろしを述べる文。gandér は重性なので、主格と対格が同じ形になる。動詞のすぐ後ろの kelárai が主語で、その次の gandér が目的語。ここでは数を言わずに、伐り出された材をひとまとまりとして言っている。帳簿で数を書くときは、かならず量の名詞 báron「本」を添える。

    lúin brúuma éndra es orénos, dúlau gromó si selvá.

    読み:ルーイン ブルーマ エンドラ エス オレーノス、ドゥーラウ グロモー シ セルヴァー。

    lúinbrúum-aéndraesorén-os,dúl-augromósiselvá.
    とき落ちる-<(軽いものが)>人<主格>から縁-<属格>下る-<双数>体<主格>と魂<主格>

    「人が縁から落ちると、体も魂もともに下へ引かれていく。」

    崖から落ちて死ぬことが恐れられる理由を述べる、教えの文。単数の名詞を si で二つ並べたので、動詞は双数の dúlau になり、性を区別しない。重い体と軽い魂がそろって下るのは、高原の考えではいちばん不吉なことである。

    glóira aurél es orénos.

    読み:グロイラ アウレール エス オレーノス。

    glóir-aaurélesorén-os.
    お越しになる-<(軽いものが)>あの方<主格>から縁-<属格>

    「あの方は縁からお越しになる。」

    目上の人が来ることを、第三者に伝える文。glóir- は tór-「来る」の尊敬の補充形で、au- をつけた形は使わない。主語の aurél「あの方」は人なので、軽性の -a をとる。

    sénimor sílarau es orénos.

    読み:セーニモル シーララウ エス オレーノス。

    sén-imorsílar-auesorén-os.
    見る-<我々が>月-<双数>から縁-<属格>

    「縁から二つの月が見える。」

    白月と赤月の二つを、双数でひと組として言う。月は星ではないので、双数にしても数えても禁忌にならない。es+属格で、方向を問わない「〜から」を表す。

    tóro nébro es orénos.

    読み:トーロ ネーブロ エス オレーノス。

    tór-onébroesorén-os.
    来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>

    「縁から霧が来る。」

    霧期の始まりを告げる言い方。主語の nébro「霧」が重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。es は属格と組んで、方向を問わない「〜から」を表す。

    léunim ré tóro nébro es orénos, ausenár.

    読み:レウニン レー トーロ ネーブロ エス オレーノス、アウセナール。

    léun-imrétór-onébroesorén-os,au-sen-ár.
    申す-<私が><〜と(節)>来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>

    「目付殿、縁から霧が来ると申し上げます。」

    目下の者が目上の人に知らせを伝える改まった言い方。léun- は「言う」の謙譲の補充形で、du- をつけた規則形は使わない。ré の後ろの節は、元の文の法(ここでは直説法)を保つ。呼びかけは呼格を使わず、役職名に au- をつけて、読点で区切って文末に添える。

    mé þraunésa póin es orénos.

    読み:メー スラウネーサ ポイン エス オレーノス。

    méþraun-és-apóinesorén-os.
    <禁止・願いの打ち消し>投げる-<〜すべし>-<(軽いものが)>何か<対格>〜から縁-<属格>

    「縁から物を投げ落とさぬこと。」

    碑文に刻まれる型の禁止の文。当為法の -és- が強勢をとるので、語根 þráun- の強勢は消える。崖の縁から物を投げ落とすことは、決められた降ろし場の作法の外では禁忌とされる。

    ké tórau dáun es orénos?

    読み:ケー トーラウ ダウン エス オレーノス?

    kétór-audáunesorén-os?
    <〜か>来る-<双数>二人から縁-<属格>

    「お前たち二人は、縁から来たのか。」

    双数の動詞 tórau は人称を区別しないので、dáun を添えて「二人が」をはっきりさせている。dáun も人称を区別しないので、「われら二人」「お前たち二人」「あの二人」のどれにあたるかは場面で決まる。ké を使った問いなので、目下か同じ段の相手に向けた言い方になる。

    ké tóres es orénos? tórim.

    読み:ケー トーレス エス オレーノス?トーリン。

    kétór-esesorén-os?tór-im.
    <〜か>来る-<あなたが>から縁-<属格>来る-<私が>

    「「縁から来たのか?」「来た。」」

    二人の発話。ké は文のいちばん前に置いて、はい・いいえで答える問いを作る。時制がないので、過去のことでも同じ形で言う。「はい」にあたる語がないので、答えるときは問いの動詞を自分の人称(1人称単数)に変えて繰り返す。目上の人には ké を使わず、推量法で尋ねる。

    tóra faronár an séndo es orénos.

    読み:トーラ ファロナール アン センド エス オレーノス。

    tór-afaronáranséndoesorén-os.
    来る-<(軽いものが)>運び人<主格>上手ここ<対格>から縁-<属格>

    「運び人が縁からここへ上ってくる。」

    道筋を言う文。行き先は an+対格で「上手のここへ」と、高さを決めて言う。出どころは、方向を問わない es に属格を組み合わせて言う。時制がないので「上ってくる」とも「上ってきた」とも訳せる。

    na lúuman aursárai séndo, lúin tóro nébro es orénos.

    読み:ナ ルーマン アウルサーライ センド、ルーイン トーロ ネーブロ エス オレーノス。

    nalúum-anaursár-aiséndo,lúintór-onébroesorén-os.
    <〜ない>ご覧になる-<彼らが>祖先-<〜たちが>この世<対格>とき来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>

    「縁から霧が上がってくるとき、祖先はこの世をご覧にならない。」

    霧期を恐れる理由を語る言い方。ここでの séndo は話し手のいる場所ではなく、上(天)と下(干潟・地の底)のあいだにある、人の生きる「中の世界」を指す。祖先には「見る」の尊敬の補充形 lúum- を使う。祖先は数えないので、複数はひとまとまりの「方々」の意味になる。

    tóran faronárai es orénos telúin.

    読み:トーラン ファロナーライ エス オレーノス テルーイン。

    tór-anfaron-ár-aiesorén-ostelúin.
    来る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>から縁-<属格>その時

    「その時、運び人たちが縁から上がってきた。」

    昔語りや出来事の報告で、すでに話に出た時を指す言い方。動詞には時制がないので、過去のことだとわかるのは telúin と文脈による。faronár は fáron「荷」に -ár「〜する人」がついた語。

    tóran sóur faronárai es orénos.

    読み:トーラン ソール ファロナーライ エス オレーノス。

    tór-ansóurfaron-ár-aiesorén-os.
    来る-<彼らが>六荷-<〜する人>-<〜たちが>から縁-<属格>

    「運び人が六人、縁から上がってくる。」

    運び人のような目下の者や働き手は、数詞で数えてかまわない。目上の人は数えず、ひとまとまりの複数で言う。三以上の数詞の後ろでは、名詞は複数になる。

    tóran pómbarin faronárai es orénos.

    読み:トーラン ポンバリン ファロナーライ エス オレーノス。

    tór-anpómbarinfaronár-aiesorén-os.
    来る-<彼らが>いくつか運び人-<〜たちが>から縁-<属格>

    「縁から運び人が何人か上がってくる。」

    pómbarin は数詞と同じく名詞の前に置き、後ろの名詞は複数にする。運び人は働き手なので数えてよい。目上の人には、はっきりしない数であっても pómbarin は使えない。その場合は fléiran ausenárai「目付の方々がお出ましになる」のように、ひとまとまりの複数で言う。

    fléira ausenár du tról orénos.

    読み:フレーラ アウセナール ドゥ トロール オレーノス。

    fléir-aau-sen-árdutrólorén-os.
    お出ましになる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>下手麓<対格>縁-<属格>

    「目付殿は縁の麓へお出ましになる。」

    tról orénos「縁の麓」は、崖の下、縁の市の立つあたりを指す。du+対格で「下手へ」。fléir- は「行く」の尊敬の補充形。

    dúlan faronárai du múndo orénos.

    読み:ドゥーラン ファロナーライ ドゥ ムンド オレーノス。

    dúl-anfaronár-aidumúndoorén-os.
    下る-<彼らが>運び人-<〜たちが>下手出口<対格>縁-<属格>

    「運び人たちは縁の口へ下りていく。」

    múndo orénos「縁の口」は、崖道が崖の麓に開く下の口を指す。縁の市はここに立つ。du+対格で「下手へ」。属格の orénos は名詞の後ろに置く。

    mé leimésa fáron un múndo orénos.

    読み:メー レイメーサ ファーロン ウン ムンド オレーノス。

    méleim-és-afáronunmúndoorén-os.
    <禁止・願いの打ち消し>置く-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>内に出口<対格>縁-<属格>

    「縁の口の中へ荷を置かぬこと。」

    市の決まりを刻んだ碑文の文体。道の口をふさがないための決まり。当為法は mé で否定する。主語を言わないので「人は」という一般の主語になり、軽性の形をとる。強勢は当為法の -és- に移る。un+対格で「〜の中へ」。

    dúlimor du tról orénos.

    読み:ドゥーリモル ドゥ トロール オレーノス。

    dúl-imordutrólorén-os.
    下る-<我々が>下手麓<対格>縁-<属格>

    「我々は縁の麓へ下りる。」

    崖道を下りるときの言い方。tról は崖や山の麓のほか、立っている木や柱など高いものの根もとにも使う。du+対格で「下手へ」。tról は重性なので、対格は主格と同じ形になる。

    ombéra senár faronáran ré dulíþa fáron es orénos.

    読み:オンベーラ セナール ファロナーラン レー ドゥリーサ ファーロン エス オレーノス。

    ombér-asenárfaronár-anrédul-íþ-afáronesorén-os.
    名指しする-<(軽いものが)>目付<主格>運び人-<対格><〜と(節)>下る-<〜させる>-<(軽いものが)>荷<対格>から縁-<属格>

    「目付は、縁から荷を落としたと運び人を名指しで咎める。」

    人を名指しして咎める意味。ré の後ろの節で、何を咎めたかを言う。縁の市の目付が揉め事を裁く場面の言い方。

    tóra dórin té es orénos.

    読み:トーラ ドーリン テー エス オレーノス。

    tór-adórintéesorén-os.
    来る-<(軽いものが)>男<主格>あの<軽性>から縁-<属格>

    「あの男が縁のほうから来る。」

    dórin は軽性の子音語幹なので、指示詞は軽性の té になる。目下か同じ段の相手について言う、ふつうの言い方である。目上の人をこの語で指すと無礼になり、役職名に au- をつけて言う。

    áura aurá an gráun orénos.

    読み:アウラ アウラー アン グラウン オレーノス。

    áur-aauráangráunorén-os.
    昇る-<(軽いものが)>縁鷲<主格>上手上端<対格>縁-<属格>

    「縁鷲が崖のてっぺんへ昇っていく。」

    gráun はここでは、崖のいちばん上の端を指す。「an+対格」で「上手へ」の意味になる。áura「昇る」と aurá「縁鷲」は、強勢の位置だけで区別される。重性の gráun は、対格でも語尾がつかない。

    tóro dalorár tó es orénos.

    読み:トーロ ダロラール トー エス オレーノス。

    tór-odalorártóesorén-os.
    来る-<(重いものが)>泥の者<主格>あの<重性>から縁-<属格>

    「あの泥の者が縁から上がってくるぞ。」

    陰口やからかいの言い方。dalorár そのものは軽性の語形のままだが、動詞を重性の -o(tóro)で、指示詞を重性の tó で受けている。人を重性で一致させることで、相手を石や泥のような「重いもの」として見下す。軽性で受ける tóra dalorár té なら、ただの「あの下の国の者が来る」になる。

    tóran téir faronárai es orénos.

    読み:トーラン テール ファロナーライ エス オレーノス。

    tór-antéirfaronár-aiesorén-os.
    来る-<彼らが>三運び人-<〜たちが>から縁-<属格>

    「縁から運び人が三人上がってくる。」

    運び人のような働き手は、数詞で人数を数えてよい。目上の人を数えるのは失礼なので、このような言い方はしない。三以上の数詞の後ろでは名詞が複数になる。es+属格で、方向を問わない「〜から」を表す。

    tóra fléura dréum es orénos.

    読み:トーラ フレウラ ドレウン エス オレーノス。

    tór-afléuradréumesorén-os.
    来る-<(軽いものが)>雲<主格>黒いから縁-<属格>

    「縁のほうから黒い雲がやって来る。」

    雨期の初めに、雨が近いことを知らせる言い方。雲は上に属するものなので軽性で、動詞は -a をとる。形容詞 dréum は軽性・主格の形なので語尾がない。同じように下から来るものでも、霧 nébro は重性なので、動詞は tóro になる。

    tóro duléumo es orénos, esélo nébro dórel.

    読み:トーロ ドゥレウモ エス オレーノス、エセーロ ネーブロ ドーレル。

    tór-oduléumoesorén-os,es-él-onébrodórel.
    来る-<(重いものが)>下の風<主格>から縁-<属格>いる-<〜だろう>-<(重いものが)>霧<主格>明日

    「縁から下の風が来ている。明日は霧が出るだろう。」

    空模様を読む日常の文。duléumo は重性o語幹なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。後半は存在の文を推量法にしたもので、確かでない明日のことは推量法で言う。霧 nébro も重性なので、esélo の語尾は -o になる。下の風は崖下から這い上がる湿った風で、霧と病を運ぶものとされる。

    es pós tóra léuma? es orénos tóra.

    読み:エス ポース トーラ レウマ?エス オレーノス トーラ。

    espóstór-aléuma?esorén-ostór-a.
    から何<属格>来る-<(軽いものが)>風<主格>から縁-<属格>来る-<(軽いものが)>

    「「風はどこから来ている?」「縁のほうから来ている。」」

    二人の発話(問いと答え)。疑問詞を含む前置詞句 es pós を動詞の前に出している。es pós は「どこから」と「なぜ」の両方を表すが、ここでは風の出どころを尋ねている。答えに「はい・いいえ」は使わず、動詞 tóra を繰り返す。縁から来る風は崖下からの風なので、答えを聞いた人は湿った下の風(duléumo)を思い浮かべる。

    áura aurléuma es orénos, auríþa nébro an élvaran.

    読み:アウラ アウルレウマ エス オレーノス、アウリーサ ネーブロ アン エルヴァラン。

    áur-aaurléumaesorén-os,aur-íþ-anébroanélvar-an.
    昇る-<(軽いものが)>昇る風<主格>から縁-<属格>昇る-<〜させる>-<(軽いものが)>霧<対格>上手天-<対格>

    「昇る風は縁から昇り、霧を天へと持ち上げる。」

    雨期の天気のしくみを説明する、書物風の文。an+対格で「上手へ」、つまり天のほうへ向かうことを表す。霧は昇る風に天まで引き上げられると、上に属する清い雲に変わると考えられている。地を這う霧(重性)が自分から雲になるわけではなく、昇る風に引き上げられて初めて雲になる、という見方である。

    dúlo krámbo es orénos, na brúumo.

    読み:ドゥーロ クランボ エス オレーノス、ナ ブルーモ。

    dúl-okrámboesorén-os,nabrúum-o.
    下る-<(重いものが)>崖山羊<主格>から縁-<属格><〜ない>落ちる-<(重いものが)>

    「崖山羊は縁から下りても、落ちはしない。」

    崖道でよく言われる言い回し。主語 krámbo が重性なので、二つの動詞はどちらも3人称単数・重性の -o をとる。後ろの節では主語を言わないが、動詞の語尾から同じ崖山羊が主語だとわかる。

    áura aurá es orénos.

    読み:アウラ アウラー エス オレーノス。

    áur-aauráesorén-os
    昇る-<(軽いものが)>縁鷲<主格>から縁-<属格>

    「縁鷲が縁から昇っていく。」

    VSO の基本の文。動詞 áura「昇る」と名詞 aurá「縁鷲」は綴りが同じで、強勢の位置だけが違う。aurá は「昇る」に -á「〜するもの」がついてできた語で、もとは「昇るもの」の意味。鳥は軽性なので、動詞も軽性の -a をとる。日本語話者は強勢を音の高さとして聞くので、この二つの語を聞き分けにくい。

    drénim es orénos, ré luuménde ausenár sáindaran sé.

    読み:ドレーニン エス オレーノス、レー ルーメンデ アウセナール サインダラン セー。

    drén-imesorén-os,réluum-énd-eau-sen-ársáindar-ansé.
    伺う-<私が>から縁-<属格><〜と(節)>ご覧になる-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>証文-<対格>この<軽性>

    「目付殿にこの証文をご覧いただきたく、縁から伺いました。」

    役所に用事で出向き、来た目的を述べるときの決まった言い方。時制の形がないので、drénim は「伺う」とも「伺った」とも訳せる。目的を表す ré の節では願望法を使う。その中でも、目上の人は職名に au- をつけた3人称で主語にし、「見る」の尊敬の補充形 lúum- を使う。

    faronerélan faronárai sáko es orénos dórel.

    読み:ファロネレーラン ファロナーライ サーコ エス オレーノス ドーレル。

    faroner-él-anfaron-ár-aisákoesorén-osdórel.
    運ぶ-<〜だろう>-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>塩<対格>から縁-<属格>明日

    「明日、運び人たちが縁から塩を運んでくるだろう。」

    これから先のことは推量法 -él- で言う。強勢は -él- に移り、-ér- の ´ は消える。3人称複数の語尾 -an は性を区別しない。塩 sáko は干潟から来る重性の名詞で、上げ荷の代表である。es+属格で、方向を問わない「〜から」を表す。

    bruumíro fáron es orénos, droumélan faronárai.

    読み:ブルーミーロ ファーロン エス オレーノス、ドロウメーラン ファロナーライ。

    bruum-ír-ofáronesorén-os,droum-él-anfaron-ár-ai.
    落ちる-<もし〜なら>-<(重いものが)>荷<主格>から縁-<属格>嘆く-<〜だろう>-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>

    「縁から荷が落ちれば、運び人たちは嘆くだろう。」

    条件の節は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけで作る。仮定法の -ír- が強勢をとるので、語根の ´ は消えて bruumíro になる。崖から物が落ちることは忌まれるので、崖道の人々は口にするのを嫌う言い方でもある。

    mé þraunésa póin es orénos.

    読み:メー スラウネーサ ポイン エス オレーノス。

    méþraun-és-apóinesorén-os.
    <禁止・願いの打ち消し>投げ捨てる-<〜すべし>-<(軽いものが)>何か<対格>から縁-<属格>

    「縁から何ものも投げ捨てぬこと。」

    碑文や決まりごとの文体。当為法 -és- で「〜すべし」、mé で否定して禁止になる。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の形をとる。崖から物を投げ落とすのは禁忌なので、崖について þráun- を使うと、この「投げ捨てる」の意味になる。

    lúin tóro nébro, hóinan faronárai es orénos.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ホイナン ファロナーライ エス オレーノス。

    lúintór-onébro,hóin-anfaron-ár-aiesorén-os.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>帰る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>から縁-<属格>

    「霧が来ると、運び人たちは縁から帰っていく。」

    縁の市の季節の終わりを言う文。nébro「霧」は重性なので、tóro は重性の -o をとる。市は霧の前に閉じるので、崖道の人々は霧を合図に故郷へ帰る。

    lúin véilso múrno, tóro nébro es orénos.

    読み:ルーイン ヴェールソ ムルノ、トーロ ネーブロ エス オレーノス。

    lúinvéils-omúrno,tór-onébroesorén-os.
    とき流れ去る<〜し終えた>-<(重いものが)>腐り氷<主格>来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>

    「腐り氷が流れ去ってしまうと、縁から霧が上がってくる。」

    湖畔の村に伝わる季節の言い習わし。完了相の véils- で「すっかり流れ去った」ことを表す。múrno も nébro も重性なので、二つの動詞はどちらも -o をとる。lúin の節は主節の前に置く。

    poverésa senár fáronul te dúlan es orénos.

    読み:ポヴェレーサ セナール ファーロヌル テ ドゥーラン エス オレーノス。

    pover-és-asen-árfáron-ultedúl-anesorén-os.
    取り調べる-<〜すべし>-<(軽いものが)>見る-<〜する人>荷-<〜たちを><関係節>下る-<彼らが>から縁-<属格>

    「目付は、縁から下りてくる荷を検めるべし。」

    市の決まりを記した碑文の文体。当為法の -és- が強勢をとるので、語根の強勢は消える。主語の senár(軽性)を明示しているので、動詞は3単・軽性。fáronul は重性の複数対格で、関係節 te dúlan es orénos がこれを修飾する。

    tóro duléumo múr es orénos.

    読み:トーロ ドゥレウモ ムール エス オレーノス。

    tór-oduléumomúresorén-os.
    来る-<(重いものが)>下の風<主格>濁ったから縁-<属格>

    「縁から濁った下の風が上がってくる。」

    霧期の前に交わされる天気の話。duléumo「下の風」は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o、形容詞は語尾なしの形をとる。崖の下から来る湿った風は、病を運ぶ濁ったものとされる。

    tóro nébro kéum es orénos.

    読み:トーロ ネーブロ ケウン エス オレーノス。

    tór-onébrokéumesorén-os.
    来る-<(重いものが)>霧<主格>灰色のから縁-<属格>

    「縁から灰色の霧が上がってくる。」

    霧 nébro は下に属するものなので重性で、動詞は -o、形容詞は語尾なしになる。霧期の始まりを告げる言い方で、縁の市が閉じる合図にもなる。

    vandésa grúndo kéndoros orénos.

    読み:ヴァンデーサ グルンド ケンドロス オレーノス。

    vand-és-agrúndokéndor-osorén-os.
    量る-<〜すべし>-<(軽いものが)>掛け<対格>縁の市-<属格>縁-<属格>

    「縁の市の掛けは、量って(精算して)おくべし。」

    度量衡の碑に刻まれた市の決まりを思わせる、当為法の文。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の形をとる。kéndor orénos で「縁の市」を表し、ここでは grúndo「掛け」にかかる属格になっている。

    lúin dúlo gandér du dálor, drénimor du kéndor orénos.

    読み:ルーイン ドゥーロ ガンデール ドゥ ダーロル、ドレーニモル ドゥ ケンドル オレーノス。

    lúindúl-ogandérdudálor,drén-imordukéndororén-os.
    とき下る-<(重いものが)>硬木<主格>下手下の国<対格>参る-<我々が>下手縁の市<対格>縁-<属格>

    「硬木が下の国へ下りるころ、私どもは縁の市へ下って参ります。」

    崖道の商人が目上の人に、最初の下ろしのころに市へ出ることを告げる言い方。「行く」の謙譲の補充形 drén- を使う。縁の市は崖の麓にあるので、かならず du で言う。lúin の節は主節の前に置く。

    þundésa senár grúndo kéndoros orénos.

    読み:スンデーサ セナール グルンド ケンドロス オレーノス。

    þund-és-asenárgrúndokéndor-osorén-os.
    裁く-<〜すべし>-<(軽いものが)>目付<主格>掛け<対格>縁の市-<属格>縁-<属格>

    「目付は縁の市の掛け(の揉め事)を裁くべし。」

    碑文の文体の当為法。碑文や法典では、役職を au- をつけずに一般の名として書く。senár は軽性なので、当為法の動詞も軽性の -a をとる。

    sénan senárai nébro orénos.

    読み:セーナン セナーライ ネーブロ オレーノス。

    sén-ansenár-ainébroorén-os.
    見る-<彼らが>番人-<〜たちが>霧<対格>縁-<属格>

    「番人たちは縁の霧を見張っている。」

    縁の肩の番人を言う文。この意味では九段下りの者を指すので、au- をつけた高め形にはしない。番人は人なので複数で言ってよく、複数主格は -ai になる。nébro は重性で、対格は主格と同じ形。

    lísa lisár dulfáron kéndoros orénos.

    読み:リーサ リサール ドゥルファーロン ケンドロス オレーノス。

    lís-alisárdulfáronkéndor-osorén-os.
    書く-<(軽いものが)>帳付け<主格>下ろし荷<対格>縁の市-<属格>縁-<属格>

    「帳付けが縁の市の下ろし荷を書きつける。」

    商家や市で帳簿をつける者を言う文。帳簿の見開きの片側には下ろし荷を、もう片側には上げ荷を書く。dulfáron は重性で、対格は主格と同じ形。

    lúin tóro nébro es orénos, kráilim gleinó.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ エス オレーノス、クライリン グレイノー。

    lúintór-onébroesorén-os,kráil-imgleinó.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>手に持つ-<私が>護符<対格>

    「縁から霧が上がってくると、私は護符を握りしめる。」

    霧期の暮らしを語る文。霧 nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。gleinó は重性の o語幹で、主格と対格が同じ形になる。

    torélo nébro es orénos dulúin.

    読み:トレーロ ネーブロ エス オレーノス ドゥルーイン。

    tor-él-onébroesorén-osdulúin.
    来る-<〜だろう>-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>のち

    「のちに、縁から霧が上がってくるだろう。」

    乾風期の終わりの、季節の移り変わりを言う文。霧 nébro は重性なので、推量法の動詞も3人称単数・重性の -o をとる(torélo)。副詞の dulúin は動詞の前に出さず、文末に置く。

    dúlan faronárai es méndales orénos.

    読み:ドゥーラン ファロナーライ エス メンダレス オレーノス。

    dúl-anfaronár-aiesméndal-esorén-os.
    下る-<彼らが>運び人-<〜たちが>からまん中-<属格>縁-<属格>

    「「運び人たちは縁のまん中から下りていく。」」

    崖道の主な道筋が、長川の峡谷に沿って縁のまん中を通っていることを言う。「〜のまん中から」は、es+méndal の属格に、全体を表す名詞の属格を続けて言うので、属格が二つ続く。

    tórim es orénos anórelei.

    読み:トーリン エス オレーノス アノーレレイ。

    tór-imesorén-osanórel-ei.
    来る-<私が>から縁-<属格>昨日-<与格>

    「昨日、縁から来た。」

    自分のことを言う日常の文。anórel は an「上手」と órel「日」からできた語で、時の流れの上手にある日、つまり「前の日」を表す。時を表す与格 anórelei で「昨日に」となり、文の後ろのほうに置かれる。

    lúin tóro nébro es orénos, grómim.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ エス オレーノス、グローミン。

    lúintór-onébroesorén-os,grómim.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>体が重い

    「縁から霧が上がってくると、体がだるくなる。」

    霧期には病が流行り、体が重くなると言われる。それを言うときの決まった言い方。霧 nébro は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。

    póþul? tóro nébro es orénos?

    読み:ポースル?トーロ ネーブロ エス オレーノス?

    póþul?tór-onébroesorén-os?
    なんだって(意外)来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>

    「なんだって? 縁から霧が上がってくるだと?」

    思いがけない知らせに驚いて、相手の文をそのまま問いの調子で繰り返している。nébro「霧」は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。霧が来ると市は閉じ、精算は霧の前に済ませなければならないので、霧の知らせは商人にとって一大事である。

    ké tóres es orénos? éun, tórim.

    読み:ケー トーレス エス オレーノス?エウン、トーリン。

    kétór-esesorén-os?éun,tór-im.
    <〜か>来る-<あなたが>から縁-<属格>うん来る-<私が>

    「「縁から来たのか?」「うん、来た。」」

    森や崖道のくだけたやりとり。高原語には「はい」がなく、ふつうは動詞を自分の人称に変えて繰り返して答えるが、くだけた場では éun を先に言い、そのあとに動詞を添えることが多い。時制がないので tóres は「来る」とも「来た」とも訳せる。目上の人には使わない。

    ái, tóro nébro es orénos.

    読み:アイ、トーロ ネーブロ エス オレーノス。

    ái,tór-onébroesorén-os.
    おや来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>

    「おや、縁から霧が上がってくる。」

    思いがけないことに気づいたときの軽い声。霧 nébro は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。霧期の初めによく聞かれる言い方。

    aursáre! brúumsa faronár es orénos.

    読み:アウルサーレ!ブルーンサ ファロナール エス オレーノス。

    aursáre!brúums-afaron-áresorén-os.
    ああ落ちる<〜し終えた>-<(軽いものが)>荷-<〜する人>から縁-<属格>

    「ああ、ご先祖よ、運び人が縁から落ちてしまった。」

    凶事を聞いたときの言い方。崖から落ちて死ぬことは、魂が下へ引かれるとして最も恐れられる死に方で、このような知らせには aursáre を添えることが多い。brúum- の語根は長母音なので、完了相は -s- を足して brúums- になる。

    aursáre! tóro nébro es orénos.

    読み:アウルサーレ!トーロ ネーブロ エス オレーノス。

    aursáre!tór-onébroesorén-os.
    ああ来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>

    「ああ、ご先祖よ!縁から霧が上がってくる。」

    霧期の初めの不安の声。霧は「下の国の息」で、祖先と人とのあいだに割りこむものとされる。nébro は重性o語幹なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。

    tóra fléila es orénos.

    読み:トーラ フレーラ エス オレーノス。

    tór-afléilaesorén-os.
    来る-<(軽いものが)>手紙<主格>から縁-<属格>

    「縁から手紙が届いた。」

    ふだんの報せの言い方。手紙は紙に書かれ、言葉を載せて昇るものなので軽性で、動詞は -a をとる。時制がないので、「届く」とも「届いた」とも訳せる。es+属格は、方向を問わない「〜から」。

    tóra es orénos faronár te faronéra fáron.

    読み:トーラ エス オレーノス ファロナール テ ファロネーラ ファーロン。

    tór-aesorén-osfaron-ártefaron-ér-afáron.
    来る-<(軽いものが)>から縁-<属格>荷-<〜する人><関係節>荷-<〜でする>-<(軽いものが)>荷<対格>

    「荷を担いだ運び人が、縁から上がってくる。」

    崖道や縁の市でよく聞く、見たままを言う文。関係節の主語にあたる部分(運び人)は空けておく。関係節は文の終わりか読点まで続く。そのため、関係節のついた重い主語を文末に回し、前置詞句 es orénos を主語より前に出している。主語の後ろに es orénos を置くと、関係節の中の語と受けとられてしまう。

    mé þráun fáron es orénos, murár!

    読み:メー スラウン ファーロン エス オレーノス、ムラール!

    méþráunfáronesorén-os,mur-ár!
    <禁止・願いの打ち消し>投げる<命令法><あなたが>荷<対格>から縁-<属格>濁った-<〜する人>

    「縁から荷を投げるな、このぼんくら!」

    崖の上の降ろし場や崖道で、年長の者が目下の者をどなりつけるときの言い方。禁止は「mé+命令法」で言い、命令法の2人称単数は語幹のまま(þráun)。murár は呼びかけなので、文の終わりに読点で区切って主格のまま添える。崖から物を投げ落とすのは禁忌なので、ここではただの不注意ではなく、「下の国を呼び寄せかねない愚かさ」をとがめる響きがある。

    mé þraunésa dulilmó es orénos.

    読み:メー スラウネーサ ドゥリルモー エス オレーノス。

    méþraun-és-adulilmóesorén-os.
    <禁止・願いの打ち消し>投げる-<〜すべし>-<(軽いものが)>下汲み桶<対格>から縁-GEN.

    「縁から桶を落とさぬこと。」

    崖道の碑文・禁忌の文。当為法は主語を言わないので一般の「人」(軽性)が主語になり、動詞は軽性の -a。mé(働きかけの否定)で当為法を否定。重性の目的語は主格・対格が同じ形(dulilmó)。es+属格で「〜から」。度量衡の碑の「縁から荷を落とさぬこと」と同じ構造。

    éun duloréno ílmo es orénos

    読み:エウン ドゥロレーノ イルモ エス オレーノス

    éundulorén-oílmoesorén-os
    うんこぼれる-<(重いものが)>水<主格>から縁-<属格>

    「「うん、水が縁からこぼれる。」」

    日常会話で、手元の液体が縁を越えて落ちるのを指す短い発話。複合語 dulorén- は「下る」と「縁」から、液体が縁を越えて下へ行く意を表す。

    anórel duloréno ílmo es orénos kórvos

    読み:アノーレル ドゥロレーノ イルモ エス オレーノス コルヴォス

    anóreldulorén-oílmoesorén-oskórv-os
    昨日こぼれる-<(重いものが)>水<主格>から縁-<属格>倉-<属格>

    「「昨日、倉の縁から水がこぼれた。」」

    書物・帳簿的な記述。文法上の時制がないため、時を表す語 anórel を伴い、現在形で過去の出来事を記す。es の後に「縁」の属格があり、その後に置かれた「倉」の属格が縁の所属を示す。

    þréulo krúndo un orénoi

    読み:スレウロ クルンド ウン オレーノイ

    þréul-okrúndounorén-oi
    積もる-<(重いものが)>泥<主格>内に縁-<与格>

    「縁に泥が積もっている。」

    重性の名詞 krúndo「泥」が主語なので、動詞は 3 人称単数重性 -o をとる。un+与格で場所を示す。縁 orén の与格は orén-oi。

    funeléra lisár ré éso louríño rúndel ín an orénoi.

    読み:フネレーラ リサール レー エーソ ロウリーニョ ルンデル イーン アン オレーノイ。

    funelér-alis-árréés-olouríñorúndelínanorén-oi.
    書き留める-<(軽いものが)>書く-<〜する人><〜と(節)>いる-<(重いものが)>小瀬<主格>速い一上手縁-<与格>

    「書記は「縁の上手に速い小瀬がある」と書き留める。」

    書物・記録の場面。ré の後の引用節は存在文。存在文で an orénoi を場所として置くため、名詞句を不定の閉じ ín で閉じてから前置詞句を置く。この閉じがないと、形容詞のすぐ後ろの an+与格は比較として読まれる。形容詞 rúndel は名詞の後ろに置く。

    tóra þúmva es orénos.

    読み:トーラ スンヴァ エス オレーノス。

    tór-aþúmvaesorén-os.
    来る-<(軽いものが)>口笛<主格>から縁-<属格>

    「「縁から口笛が聞こえてきた。」」

    主語を音として軽性とみなし、動詞は tór-a をとる。es は出所を表し、後ろに属格を伴う。

    sénim vróundan un orénoi.

    読み:セーニン ヴローンダン ウン オレーノイ。

    sén-imvróund-anunorén-oi.
    見る-<私が>人ごみ-<対格>内に縁-<与格>

    「縁のあたりに人ごみが見える。」

    道案内・日常会話向けの知覚文。vróunda は人を数える語ではなく、密集した状況を単数の集合名詞として扱う。軽性の目的語なので対格語尾 -an をつける。

    mé þráun krailílmo es orénos.

    読み:メー スラウン クライリルモ エス オレーノス。

    méþráunkrailílmoesorén-os
    <禁止・願いの打ち消し>投げる<命令法><あなたが>水袋<対格>から縁-<属格>

    「縁から水袋を投げ落とすな。」

    縁の縁から物を投げ落とすことを禁じる作法・禁忌の場面。禁止は mé に命令法を続ける。動詞 þráun-「投げる」の2人称単数命令法は語幹のまま þráun。出どころは前置詞 es と属格で表す。

    þarnéro ílmo an orénoi.

    読み:サルネーロ イルモ アン オレーノイ。

    þarnér-oílmoanorén-oi.
    行き止まる-<(重いものが)>水<主格>上手縁-<与格>

    「水は縁で行き止まりになる。」

    流れが端に着いてこれ以上先へ進めなくなる意。水 ílmo は重性なので動詞は 3 人称単数・重性の -o。場所 an orén-oi は「縁の側で」。

    króiro nébro orénoi.

    読み:クロイロ ネーブロ オレーノイ。

    króir-onébroorén-oi.
    近づく-<(重いものが)>霧<主格>縁-<与格>

    「霧が縁へ近づいてくる。」

    意味1。近づき先は裸の与格で取る。主語 nébro は重性o語幹なので、動詞は3人称単数・重性の語尾 -o をとる。縁付近で霧が迫るさまを言う日常の文。

    ké éso prúumo an orénoi? na éso.

    読み:ケー エーソ プルーモ アン オレーノイ?ナ エーソ。

    kéé-soprúumoanorén-oi?naé-so.
    <〜か>存在-<(重いものが)>水たまり<主格>上手縁-<与格><〜ない>存在-<(重いものが)>

    「「縁の上手に水たまりがあるか。」「ない。」」

    日常会話。an と与格 orénoi が場所を示す。prúumo は重性o語幹で、単数主格は辞書形のままとする。存在文への否定応答は éso を繰り返す。

    prémpa faronár endríñan orénoi.

    読み:プレンパ ファロナール エンドリーニャン オレーノイ。

    prémp-afaronárendríñ-anorén-oi.
    受け止める-<(軽いものが)>運び人<主格>子ども-<対格>縁-<与格>

    「運び人が、縁で子どもを受け止める。」

    縁での場面を短く言い切る文。orénoi は orén の与格で「縁で」。

    ké tóres es dáloros, orvél tóres es orénos?

    読み:ケー トーレス エス ダーロロス、オルヴェール トーレス エス オレーノス?

    kétór-esesdálor-os,orvéltór-esesorén-os?
    <〜か>来る-<あなたが>から下国-<属格>,OR来る-<あなたが>から縁-<属格>?

    「下の国から来たのか、それとも縁から来たのか。」

    道中や再会で相手の出所を二者択一で問う日常句。kéは最初の節にのみ置き、orvélは二つ目の節の頭に置く。2人称は動詞語尾に現れるため、主語代名詞は繰り返さない。

    lúin tór-o nébro es orénos, gúma tíula.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ エス オレーノス、グーマ ティーウラ。

    lúintór-onébroesorén-os,gúm-atíula
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>くぐもる-<(軽いものが)>音<主格>

    「縁から霧が上がってくると、音がくぐもる。」

    縁や崖道の日常語としての場面。主節・従属節ともに動詞を先頭にする。霧 nébro は重性なので、来るの動詞は3人称単数・重性の -o になる。es は属格と組んで「〜から」。

    éso snúlvo bún orénoi.

    読み:エーソ スヌルヴォ ブーン オレーノイ。

    és-osnúlvobúnorén-oi.
    いる-<(重いものが)>窪み<主格>深い縁-<与格>

    「縁には深い窪みがある。」

    地形や書物の記述のような存在文。名詞句内では名詞に形容詞が後続する。縁 orén は重性子音語幹で、与格は orén-oi。存在動詞 éso は主語 snúlvo に一致する。

    éso nébro snóimoi orénos.

    読み:エーソ ネーブロ スノイモイ オレーノス。

    és-onébrosnóim-oiorén-os
    いる-<(重いものが)>霧<主格>物肩-<与格>縁-<属格>

    「縁の物肩に霧がかかっている。」

    《物肩》は崖や丘・屋根など、上の面と下の面の境にある張り出した部分を表す。縁の属格を後置して、霧が所在する物肩を示す。o語幹の与格は語尾 -oi で表す。

    ké ráuman faronárai drúnoroi es orénos du kéndor?

    読み:ケー ラウマン ファロナーライ ドルーノロイ エス オレーノス ドゥ ケンドル?

    kéráum-anfaron-ár-aidrúnor-oiesorén-osdukéndor?
    <〜か>歩く-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>縁の石段道-<与格>から縁-<属格>下手市<対格>

    「運び人たちは、縁の石段道を、縁から市まで歩いているのか。」

    日常の問いかけ。faronárai は faronár の複数。drúnor は重性子音語幹として与格単数 drúnoroi を取る。 ráum-「歩く」は道・経路を裸の与格で取るため un は用いない。 es orénos du kéndor が両端を指定することで、縁の石段道をひと続きの区間として指す用法を示す。

  2. 崖の際

    崖の切れ目、ものの端。物を落としてはならない場所として言う。

    mé þraunésa póin es orénos.

    読み:メー スラウネーサ ポイン エス オレーノス。

    méþraun-és-apóinesorén-os.
    <禁止・願いの打ち消し>投げる-<〜すべし>-<(軽いものが)>何か<対格>から崖の際-<属格>

    「崖の際から何も投げ落とさぬこと。」

    碑文や法の文体。当為法は mé で否定する。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の形をとる。強勢は当為法の -és- に移る(þraunésa)。崖から物を投げ落とすのは、下の国を呼び寄せる行いとして禁じられている。

    mé dúl du orén!

    読み:メー ドゥール ドゥ オレーン!

    médúlduorén!
    <禁止・願いの打ち消し>下る<命令法><あなたが>下手崖の際<対格>

    「崖の際へ近寄るな。」

    子どもや新入りの運び人に向けた、強い禁止。禁止は「mé+命令法」で言う。崖の際は南(下手)にあるので、そちらへ向かうことを「下る」と言う。崖から落ちて死ぬことは、魂が下へ引かれる、もっとも恐れられる死とされる。

解説

高原の南の端で、干潟へ数百メートル切れ落ちる崖「縁」。崖そのもの、崖のすぐ上の台地(縁の肩)、崖の際という三つをまとめて指す。高原でいちばん「下」に近い場所なので、少し不吉で危うい響きがある。崖の縁から物を投げ落とすことは禁じられている。

そのほかの用例

dúlo gandér kélen kelárar só du orén.

読み:ドゥーロ ガンデール ケーレン ケラーラル ソー ドゥ オレーン。

dúl-ogandérkél-enkel-ár-arsóduorén.
下る-<(重いものが)>硬木<主格>伐る-<〜した・〜された>伐る-<〜する人>-<〜らの>この<重性>下手縁<対格>

「樵たちが伐ったこの硬木が、縁へ下りていく。」

名詞句の並び順は「名詞–分詞–属格–指示詞」。分詞は重性・単数・主格なので一致の語尾がない。分詞の後ろの属格 kelárar は「樵たちによって」の意味。関係節がないので、重性の指示詞 só が名詞句の終わりの目印になり、du orén は主節にかかる。

léisa lisár plánan, duói dúlo fáron du orén.

読み:レーサ リサール プラーナン、ドゥオイ ドゥーロ ファーロン ドゥ オレーン。

léis-alis-árplán-an,duóidúl-ofáronduorén.
書く<〜し終えた>-<(軽いものが)>書く-<〜する人>帳簿-<対格>それから下る-<(重いものが)>荷<主格>下手縁<対格>

「書記が帳簿を書き終え、それから荷が縁へ下りていく。」

duói「それの下手で」は、出来事の順序をはっきりさせる。

gélau némor dáun du orén.

読み:ゲーラウ ネーモル ダウン ドゥ オレーン。

gél-aunémordáunduorén.
行く-<双数><我々>二人下手縁<対格>

「我ら二人は縁へ行く。」

双数の動詞は人称を区別しないので、主語の dáun は省けない。人称を言うときは複数の代名詞を前に添える(némor dáun「我ら二人」)。

ké gélau társ dáun du orén? gélau.

読み:ケー ゲーラウ タルス ダウン ドゥ オレーン?ゲーラウ。

kégél-autársdáunduorén?gél-au.
<〜か>行く-<双数><あなたがた>二人下手縁<対格>行く-<双数>

「「お前たち二人は縁へ行くのか」「行く」」

答えの形では、問いに出た語(ここでは主語の társ dáun と行き先)を省ける。双数の動詞は人称で形が変わらないので、答えも gélau のまま。

na gélim dóulin du orén.

読み:ナ ゲーリン ドーリン ドゥ オレーン。

nagél-imdóulinduorén.
<〜ない>行く-<私が>もう下手縁<対格>

「私はもう縁へは行かない。」

否定+dóulin で「もう〜しない」。

du nébro, ráumimor du orén.

読み:ドゥ ネーブロ、ラウミモル ドゥ オレーン。

dunébro,ráum-imorduorén.
下手霧<対格>歩く-<我々が>下手縁<対格>

「霧の季節まで、我々は縁へ歩いて通う。」

場面の枠に置いた時の句は、動きの動詞の文でも時の読みになる。

gélimor du orén.

読み:ゲーリモル ドゥ オレーン。

gél-imorduorén.
行く-<我々が>下手縁<対格>

「我ら(二人)は縁へ行く。」

崖道の言葉。双数を人称つきの複数で受けるので、動詞から人称がわかり、dáun を省ける。

gélimor ném si sélvan si silára du orén.

読み:ゲーリモル ネーン シ セルヴァン シ シラーラ ドゥ オレーン。

gél-imornémsisélvansisiláraduorén.
行く-<我々が><私>とセルヴァン<主格>とシラーラ<主格>下手縁<対格>

「私とセルヴァンとシラーラは縁へ行く。」

三つ以上を並べた主語の人称は、1人称>2人称>3人称の順に優先する。「私」が入るので1人称複数。

gélers tás si sélvan si silára du orén.

読み:ゲーレルス タース シ セルヴァン シ シラーラ ドゥ オレーン。

gél-erstássisélvansisiláraduorén.
行く-<あなたがたが><あなた>とセルヴァン<主格>とシラーラ<主格>下手縁<対格>

「お前とセルヴァンとシラーラは縁へ行く。」

「お前」が入るので2人称複数。

sénim orén es dúnos.

読み:セーニン オレーン エス ドゥーノス。

sén-imorénesdún-os.
見る-<私が>縁<対格>から丘-<属格>

「丘から縁を見下ろす。」

主語は動詞の語尾 -im でわかるので言わない。orén は重性なので、主格と対格が同じ形になる。丘の上から南の縁の方を見る、という高原の縦の地理らしい文。

dúlan dáumbar fáronul du orén.

読み:ドゥーラン ダウンバル ファーロヌル ドゥ オレーン。

dúl-andáumbarfáron-ulduorén.
下る-<彼らが>二十荷-<〜たちが>下手縁<対格>

「二十の荷が縁へ下りていく。」

崖道で荷が下ろされていくようすを言う文。dáumbar は dáu(二)と ombár(十)が縮まった不規則な形。三以上の数詞と同じく、後ろの名詞を複数にする。重性名詞の複数は -ul になる。動詞は3人称複数の -an で、複数では性を区別しない。

fléira aldár áuren du orén.

読み:フレーラ アルダール アウレン ドゥ オレーン。

fléir-aaldáráur-enduorén.
お出ましになる-<(軽いものが)>王の位昇る-<〜した・〜された>下手縁<対格>

「高き座が、縁へお出ましになる。」

aldár áuren「高き座」は、王の位と今の王をあわせて指す総称で、今の王を指すときはこれだけで足りる。fléir- は「行く」の尊敬の補充形。王が縁の方へ下る行幸の知らせに使われる。

dúlo ílmo es þéulos du orén.

読み:ドゥーロ イルモ エス セウロス ドゥ オレーン。

dúl-oílmoesþéul-osduorén.
下る-<(重いものが)>水<主格>から湧き水-<属格>下手縁<対格>

「水は湧き水から縁へと下っていく。」

水の流れを言う、ごくふつうの言い切りの文。ílmo「水」は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。es+属格で出どころを、du+対格で行き先を表す。高原の人の考えでは、水は源から生まれて下へ流れていくものなので、この文は自然を述べた文であると同時に、世界観の決まり文句でもある。

dúlau dáu faronárau du orén.

読み:ドゥーラウ ダウ ファロナーラウ ドゥ オレーン。

dúl-audáufaron-ár-auduorén.
下る-<双数>二荷-<〜する人>-<双数>下手縁<対格>

「二人の運び人が縁へ下りていく。」

崖道の様子を言う日常の文。dáu の後ろの名詞は双数になる(faronár → faronárau)。主語が双数なので、動詞も双数 -au になる。双数の動詞は人称も性も区別しない。運び人は働き手なので、数詞で数えても失礼にならない。目上の人を指す高め名詞には、dáu も双数もつけられない。

dulíþan slúun kelárar gandér du orén.

読み:ドゥリーサン スルーン ケラーラル ガンデール ドゥ オレーン。

dul-íþ-anslúunkel-ár-argandérduorén.
下る-<〜させる>-<彼らが>数えきれぬ伐る-<〜する人>-<〜らの>硬木<対格>下手縁<対格>

「数えきれぬほどの樵が、硬木を縁へ下ろす。」

誇張をこめた語りの言い方。この slúun は実際の数ではなく、「数えきれないほど多い」の意味。「slúun+複数属格」が主語になると、動詞は3人称複数で受ける。gandér と orén は重性なので、対格は主格と同じ形になる。du+対格で「下手へ」。

séna senár orén.

読み:セーナ セナール オレーン。

sén-asen-árorén.
見張る・検める-<(軽いものが)>見る-<〜する人>縁<対格>

「番人が縁を見張っている。」

縁の肩の見張りについて言う文。「見張る」の意味の sén- は、場所や土地を目的語にとる。senár「目付・見張る者」はこの動詞に -ár がついた語で、動詞と主語が同じ語根をもつ。

mé fleirénde ausenár du orén.

読み:メー フレイレンデ アウセナール ドゥ オレーン。

méfleir-énd-eau-sen-árduorén.
<禁止・願いの打ち消し>お出ましになる-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>下手縁<対格>

「目付殿、縁へはお出ましになりませぬよう。」

目上の人への禁止。命令法は使わず、「mé+願望法3人称」で言う。目の前の相手も、役職名に au- をつけた3人称の主語として扱う。du+対格で「下手へ」。orén は重性なので、主格と対格が同じ形になる。霧期に、霧のあふれる縁の方へ行くのをいさめるときの言い方。

fléira aulisár du orén.

読み:フレーラ アウリサール ドゥ オレーン。

fléir-aau-lis-árduorén.
お出ましになる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>下手縁<対格>

「書記の方は、縁へお出ましになる。」

目上の人の移動を言い切る文。fléir- 自体が「行く」gél- の尊敬の補充形なので、au- はつけない。主語の aulisár は役職名に au- をつけた高め名詞。du+対格で「下手へ」の意味になる。時制がないので「お出ましになった」とも訳せる。

drénim du orén dórel.

読み:ドレーニン ドゥ オレーン ドーレル。

drén-imduoréndórel.
参る-<私が>下手へ・下手で縁<対格>明日

「明日、縁へ参ります。」

du+対格で、下手(南・縁・干潟の方向)への移動を表す。drén- は「行く」の謙譲の補充形。du は動詞 dúl-「下る」や謙譲の接頭辞 du- と同じ語源で、強勢をもたない。

dúlo lóna kélen du orén.

読み:ドゥーロ ローナ ケーレン ドゥ オレーン。

dúl-olónakél-enduorén.
下る-<(重いものが)>柱材<主格>伐る-<〜した・〜された>下手縁<対格>

「伐った柱材が縁へ下りていく。」

名詞の lóna は軽性の語形のままだが、伐られた材なので、動詞は重性の -o で一致する。分詞 kélen も重性・主格の形で、語尾はつかない。du+対格で「下手へ」。

dúlo fáron némores du orén.

読み:ドゥーロ ファーロン ネーモレス ドゥ オレーン。

dúl-ofáronnémor-esduorén.
下る-<(重いものが)>荷<主格>我々-<属格>下手縁<対格>

「我々の荷は縁へ下りていく。」

属格 némores「我々の」は名詞 fáron の後ろに置く。荷 fáron は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。崖道の商人どうしが、荷の段取りを確かめるときの言い方。némor は聞き手を含む場合も含まない場合も同じ形で、どちらなのかは文脈で決まる。

lísan lisárai dáu sáindarau, dulíþan dáun du orén.

読み:リーサン リサーライ ダウ サインダラウ、ドゥリーサン ダウン ドゥ オレーン。

lís-anlis-ár-aidáusáindar-au,dul-íþ-andáunduorén.
書く-<彼らが>書く-<〜する人>-<〜たちが>二証文-<双数>下る-<〜させる>-<彼らが>ふたつ下手縁<対格>

「書記たちは証文を二通書き、そのふたつを縁へ下ろす。」

後半の dáun は、前半の双数 sáindarau を受けている。dáun には性の区別がないので、軽性のものでも重性のものでも同じ形で受ける。後半では主語を省いているが、動詞の語尾から、前半と同じ書記たちが主語だとわかる。

kéla kelár gandér, dulíþa ó du orén.

読み:ケーラ ケラール ガンデール、ドゥリーサ オー ドゥ オレーン。

kél-akel-árgandér,dul-íþ-aóduorén.
伐る-<(軽いものが)>伐る-<〜する人>硬木<対格>下る-<〜させる>-<(軽いものが)>それ<対格>下手縁<対格>

「樵は硬木を伐り、それを縁へ下ろす。」

前の節に出た重性名詞 gandér を、代名詞 ó で受けている。ó は重性なので、主格と対格が同じ形になる。後ろの節では主語を言わないが、動詞の語尾から同じ樵が主語だとわかる。

lúin áuran ombára ilánai, dúlan kelárai du orén.

読み:ルーイン アウラン オンバーラ イラーナイ、ドゥーラン ケラーライ ドゥ オレーン。

lúináur-anombárailán-ai,dúl-ankel-ár-aiduorén.
とき昇る-<彼らが>十灯-<〜たちが>下る-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>下手縁<対格>

「十の灯が昇ると、樵たちは縁へ下りていく。」

「〜とき」の節は lúin で始めて、主節の前に置く。ombára ilánai「十の灯」は年の始まりを告げる星の群れの名前で、ombára は数えた結果ではなく名前の一部。そのため、星を数えることの禁忌には当たらない。ilánai は語根 ilán- に複数主格の語尾 -ai がついた形。

faronéran faronárai nél fáronul du orén.

読み:ファロネーラン ファロナーライ ネール ファーロヌル ドゥ オレーン。

faron-ér-anfaron-ár-ainélfáron-ulduorén.
荷-<〜でする>-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>七荷-<〜たちを>下手縁<対格>

「運び人たちは荷を七つ担いで縁へ下りる。」

崖道の荷運びを言う文。働き手は数えてもよいが、ここで数えているのは荷のほう。fáron は重性なので、複数対格は -ul で、主格と同じ形になる。

dúlan nél fáronul du orén.

読み:ドゥーラン ネール ファーロヌル ドゥ オレーン。

dúl-annélfáron-ulduorén.
下る-<彼らが>七荷-<〜たちが>下手縁<対格>

「七つの荷が縁へ下りていく。」

nél「七」の後ろの名詞は複数になる。fáron「荷」は重性なので、複数主格は -ul。主語が複数なので、動詞は3人称複数の -an をとる。du+対格で「下手へ」の意味になり、重性の orén は主格と対格が同じ形。

léim senó an orén!

読み:レーン セノー アン オレーン!

léimsenóanorén!
置く<命令法><あなたが>見張り<対格>上手縁<対格>

「縁の上手へ見張りを置け。」

崖の縁の番について言う下向きの命令。見張りの意味の senó は、人そのものではなく「見張る役目」として扱うので、重性のままで使う。見張る人個人を指すときは senár を使うのがふつうである。an+対格は「〜の上手へ」。

gélan faronárai du orén dáu fréimau sórel.

読み:ゲーラン ファロナーライ ドゥ オレーン ダウ フレーマウ ソーレル。

gél-anfaronár-aiduoréndáufréim-ausórel.
行く-<彼らが>運び人-<〜たちが>下手縁<対格>二度回-<双数>今日

「運び人たちは今日、縁へ二度下りる。」

崖道の仕事ぶりを述べる日常の文。回数は、数詞と fréim の対格で、動詞を修飾する副詞のように言う(道のりの対格と同じ使い方)。dáu の後ろなので双数の fréimau になる。fréim は軽性の子音語幹として変化する。

dúlan dulfáronul bróusul du orén sórel.

読み:ドゥーラン ドゥルファーロヌル ブロースル ドゥ オレーン ソーレル。

dúl-andulfáron-ulbróus-ulduorénsórel.
下る-<彼らが>下ろし荷-<〜たちが>多い-<〜たちが>下手縁<対格>今日

「今日は多くの下ろし荷が縁へ下りていく。」

乾風期の前半、降ろし場や崖道で聞かれる日常の文。形容詞 bróus は名詞の後ろに置き、名詞の性・数・格に一致する。dulfáron は重性なので、形容詞も重性の複数主格 -ul をとる。動詞は複数の主語に一致して3人称複数 -an になる。

faronéran faronárai fáronul du orén.

読み:ファロネーラン ファロナーライ ファーロヌル ドゥ オレーン。

faronér-anfaronár-aifáron-ulduorén.
担ぐ-<彼らが>運び人-<〜たちが>荷-<〜たちを>下手縁<対格>

「運び人たちが荷を担いで縁へ下っていく。」

乾風期の崖道のありふれた光景を言う文。faronár は軽性の子音語幹なので、複数主格は -ai。fáron「荷」は重性なので、複数対格は -ul。du+対格で下手(南)への方向を表す。縁の orén は重性なので、主格と対格が同じ形になる。

brúuma réina sórel, mé gél du orén!

読み:ブルーマ レーナ ソーレル、メー ゲール ドゥ オレーン!

brúum-aréinasórel,mégélduorén!
落ちる-<(軽いものが)>雨<主格>今日<禁止・願いの打ち消し>行く<命令法><あなたが>下手縁<対格>

「今日は雨だ。縁へは行くな。」

雨で崖道が滑るときに、目下の者や家の者に言う注意。雨は上から来るものなので軽性で、動詞は -a をとる。禁止は mé+命令法で、命令法の2人称単数はむき出しの語幹 gél になる。

lúin tóro duléumo, mé gélir du orén.

読み:ルーイン トーロ ドゥレウモ、メー ゲーリル ドゥ オレーン。

lúintór-oduléumo,mégél-irduorén.
とき来る-<(重いものが)>下の風<主格><禁止・願いの打ち消し>行く-<皆で〜せよ>下手縁<対格>

「下の風が吹いてきたら、皆、縁のほうへ行ってはならん。」

年長者が子どもたちに言い聞かせるような禁止の文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。主節は「mé+命令法・2人称複数(-ir)」で、目下の者への下向きの話し方になる。du+対格で「下手へ」。下の風が来る方向へ行けば、湿った重い空気に引かれると考えられている。

lúin áura órel, gélimor du orén.

読み:ルーイン アウラ オーレル、ゲーリモル ドゥ オレーン。

lúináur-aórel,gél-imorduorén.
とき昇る-<(軽いものが)>日<主格>行く-<我々が>下手縁<対格>

「日が昇ったら、縁へ下りていこう。」

旅立ちの段取りを言う日常の文。lúin「〜とき」の節は主節の前に置く。órel は天体なので軽性で、動詞は -a で一致する。行き先が南の縁なので du+対格で言い、重性の orén は主格と同じ形になる。

faronéran faronárai árnelan só du orén.

読み:ファロネーラン ファロナーライ アルネラン ソー ドゥ オレーン。

faron-ér-anfaron-ár-aiárnel-ansóduorén.
荷-<〜でする>-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>木-<対格>この<重性>下手縁<対格>

「運び人たちがこの材木を縁へ担いでいく。」

faronér-「担ぐ」は fáron「荷」に、名詞から動詞を作る -ér- をつけた語。faronár「運び人」は同じ語に -ár「〜する人」をつけた語。伐られた木なので、名詞は軽性の対格 árnelan のまま、指示詞は重性の só で一致させる。名詞の語尾と一致の性が食い違うのは、伐った木の決まった扱い方。

du pó géles? gélim du orén.

読み:ドゥ ポー ゲーレス?ゲーリン ドゥ オレーン。

dupógél-es?gél-imduorén.
下手何<対格>行く-<あなたが>行く-<私が>下手縁<対格>

「「下手のどこへ行く?」「縁へ行く。」」

二人の発話。高原語には方向を決めない「どこへ」がないので、du pó「下手のどこへ」と前置詞句ごと文頭に出して尋ねる。行き先は前置詞+対格で表す。2人称を使っているので、同輩か目下の相手への問い。

lúin tóro nébro, ráuman faronárai du orén.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ラウマン ファロナーライ ドゥ オレーン。

lúintór-onébro,ráum-anfaron-ár-aiduorén.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格>歩く-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下手縁<対格>

「霧が来ると、運び人たちは縁のほうへ歩いていく。」

lúin の節を主節の前に置いている。霧 nébro は重性o語幹なので、動詞は -o をとる。行き先は du+対格「下手へ」で言う。高原語の移動の言い方では、上るのか下るのかをかならず言い分ける。

ráumau lisár si senár du orén.

読み:ラウマウ リサール シ セナール ドゥ オレーン。

ráum-aulis-ársisen-árduorén.
旅をする-<双数>書く-<〜する人・主格>と見る-<〜する人・主格>下手縁<対格>

「書記と目付は、縁へ旅をする。」

単数の名詞二つを si で並べているので、動詞は双数の -au になる。双数の動詞は人称も性も区別しない。都から縁の市まで、何日もかけて下っていく旅を言う。

ké ráines ré dúlan faronárai du orén dórel?

読み:ケー ライネス レー ドゥーラン ファロナーライ ドゥ オレーン ドーレル?

kéráin-esrédúl-anfaronár-aiduoréndórel?
<〜か>知る-<あなたが><〜と(節)>下る-<彼らが>運び人-<〜たちが>下手縁<対格>明日

「運び人たちが明日縁へ下りることを、お前は知っているか。」

知っている内容を ré の節で示す、日常の問い。ké は文のいちばん前に置く。ré の後ろの節も動詞で始まる。下向きか並びの相手に使う言い方。

þílim, gélim du orén dórel.

読み:シーリン、ゲーリン ドゥ オレーン ドーレル。

þíl-im,gél-imduoréndórel.
了解する-<私が>行く-<私が>下手縁<対格>明日

「了解した、明日縁へ下りていく。」

同じ段どうしの頼みに応じる言い方。時制がないので、明日のことも直説法 gélim で言える。gél- は方向をもたない「行く」だが、du で「下手へ」の向きを示す。

dunóurim ré fleiréla ausenár du orén.

読み:ドゥノーリン レー フレイレーラ アウセナール ドゥ オレーン。

du-nóur-imréfleir-él-aau-sen-árduorén.
<〜させていただく>-思う-<私が><〜と(節)>お出ましになる-<〜だろう>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>下手縁<対格>

「目付殿は縁へお出ましになるかと存じます。」

謙譲の du- で自分の考えを低め、目上の人の動きを推量法でやわらげて言う。

lúin grúuno duléumo, mé gélir du orén.

読み:ルーイン グルーノ ドゥレウモ、メー ゲーリル ドゥ オレーン。

lúingrúun-oduléumo,mégél-irduorén.
ときうなる-<(重いものが)>下の風<主格><禁止・願いの打ち消し>行く-<皆で〜せよ>下手縁<対格>

「下の風がうなるときは、皆、縁のほうへ行くな。」

崖の上の番人や運び人の間での戒め。duléumo「下の風」は重性o語幹なので、動詞は重性の -o をとる。軽性の léuma「風」なら grúuna になる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。禁止は「mé+命令法・複数」。

lúin áura órun ál, dúlimor du orén.

読み:ルーイン アウラ オールン アール、ドゥーリモル ドゥ オレーン。

lúináur-aórunál,dúl-imorduorén.
とき昇る-<(軽いものが)>日の出<主格>明るい下る-<我々が>下手縁<対格>

「明るい夜明けが来たら、我々は縁へ下りる。」

夜明けの明るさを言う文。lúin で始まる時の節は主節の前に置き、節の中も動詞で始まる。崖道へ下りていく旅の段取りを言う、日常的な言い方。

dúla kéira du orén.

読み:ドゥーラ ケーラ ドゥ オレーン。

dúl-akéiraduorén.
下る-<(軽いものが)>蜜蝋<主格>下手縁<対格>

「蜜蝋が縁へ下りていく。」

交易の品としての蜜蝋が、下ろし荷として崖道を下っていく様子を述べる文。この意味の kéira は、蝋燭の形になっていない材料の蝋を指す。du+対格で「下手へ」の意味になる。

dulíþan faronárai kumbórul du orén.

読み:ドゥリーサン ファロナーライ クンボールル ドゥ オレーン。

dul-íþ-anfaron-ár-aikumbór-ulduorén.
下る-<〜させる>-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>青銅器-<〜たちを>下手縁<対格>

「運び人たちが青銅器を縁へ下ろしていく。」

下ろし荷の品目としての kumbór。器の一つ一つを指すときは、重性の複数 kumbórul(主格・対格が同じ形)を使う。使役の -íþ- は、後ろに強勢をもつ接辞がないので、自分で強勢をとる。

dúlo pelsó du orén.

読み:ドゥーロ ペルソー ドゥ オレーン。

dúl-opelsóduorén
下る-<(重いものが)>樹脂<主格>下手縁<対格>

「樹脂が縁へと下りていく。」

乾風期に、下ろし荷として樹脂が崖の下へ運ばれることを言う文。樹脂は重性なので、動詞は -o をとる。du+対格で「下手へ」。orén も重性なので、対格は主格と同じ形になる。

dúlan dulfáronul du orén.

読み:ドゥーラン ドゥルファーロヌル ドゥ オレーン。

dúl-andulfáron-ulduorén.
下る-<彼らが>下ろし荷-<〜たちが>下手縁<対格>

「下ろし荷が縁へ下りていく。」

dulfáron は fáron「荷」と同じく重性の子音語幹で、複数主格は dulfáronul になる。3人称複数の動詞は性を区別しない。乾風期の前半、硬木・地金・紙などの下ろし荷が崖道を下りる。

faronéran faronárai aurfáron an orén.

読み:ファロネーラン ファロナーライ アウルファーロン アン オレーン。

faronér-anfaronár-aiaurfáronanorén.
担ぐ-<彼らが>運び人-<〜たちが>上げ荷<対格>上手縁<対格>

「運び人たちが上げ荷を縁の上へ担ぎ上げる。」

崖道の日常の描写。aurfáron は重性の子音語幹なので、主格と対格が同じ形になる。an+対格は「上手へ」の移動を表し、崖の下から縁へ荷を運び上げる向きをはっきり示す。

ái, dúla hóurna du orén! hálimor ráuvanan.

読み:アイ、ドゥーラ ホールナ ドゥ オレーン!ハーリモル ラウヴァナン。

ái,dúl-ahóurnaduorén!hál-imorráuvan-an.
おや下る-<(軽いものが)>送りの煙<主格>下手縁<対格>呼ぶ-<我々が>森の巫-<対格>

「おや、送りの煙が縁のほうへ下りていく!森の巫を呼ぼう。」

風で煙が南(下)へ流れたときの驚きの声。これは不吉なこととされ、魂を上へ引き上げる詞を唱えてもらうために祭司を呼ぶ。du+対格で「下手へ」。

hóinan faronárai vel orén.

読み:ホイナン ファロナーライ ヴェル オレーン。

hóin-anfaronár-aivelorén.
帰る-<彼らが>運び人-<〜たちが>西へ縁<対格>

「運び人たちは縁の日の入り側へと帰っていく。」

西への移動を言う文。vel+対格で「西へ」の意味になる。属格と組んだ vel orénos なら「縁の日の入り側から」になる。高原では南北を an・du の高さで言い、東西はこの or・vel で言い分ける。

gélim du orén sórelei.

読み:ゲーリン ドゥ オレーン ソーレレイ。

gél-imduorénsórel-ei.
行く-<私が>下手縁<対格>今日-<与格>

「今日、私は縁へ下りていく。」

日常の会話。「今日」のようにその事柄が起こる日は、場所と同じく与格(-ei)で言う。時を表す語句は動詞の前に出さず、文の後ろに置く。du+対格で「下手へ」。縁は南(下手)にあるので、行き先は du で言う。

ké éso orén trúin? éso trúin.

読み:ケー エーソ オレーン トルーイン?エーソ トルーイン。

kéés-ooréntrúin?és-otrúin.
<〜か>いる-<(重いものが)>縁<主格>近いいる-<(重いものが)>近い

「「縁は近いか。」「近い。」」

二人のやりとりで、道を尋ねる日常の問いと答え。orén は重性なので、繋辞は -o をとり、述語の trúin も重性・主格の形(語尾なし)になる。高原語には「はい」がなく、答えるときは動詞と述語をくり返す。

lúin tóra þailúin, dúlan faronárai du orén.

読み:ルーイン トーラ サイルーイン、ドゥーラン ファロナーライ ドゥ オレーン。

lúintór-aþailúin,dúl-anfaronár-aiduorén.
とき来る-<(軽いものが)>澄みの頃<主格>下る-<彼らが>運び人-<〜たちが>下手縁<対格>

「澄みの頃が来ると、運び人たちが縁へ下りていく。」

「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。þailúin は節の主語で、動詞は軽性の tóra で受ける。崖道がいちばんにぎわい、縁の市が盛りを迎える時期を言う、決まった言い回し。

fláinim. faronéres fáron némes du orén.

読み:フライニン。ファロネーレス ファーロン ネーメス ドゥ オレーン。

fláinim.faron-ér-esfáronném-esduorén.
助かる荷-<〜でする>-<あなたが>荷<対格><私>-<属格>下手縁<対格>

「助かったよ。俺の荷を縁まで担いでくれて。」

運び人どうしの礼。faronér- は名詞 fáron「荷」に -ér- をつけて作った動詞。持ち主は、名詞の後ろに属格 némes を置いて言う。時制がないので、faronéres は「担いだ」とも「担いでくれる」とも訳せる。

grómim sórel. na gélim du orén.

読み:グローミン ソーレル。ナ ゲーリン ドゥ オレーン。

grómimsórel.nagél-imduorén.
体が重い今日<〜ない>行く-<私が>下手縁<対格>

「今日は体が重い。縁へは下りないよ。」

疲れやだるさを言う、文字どおりの言い方。時を表す sórel は文の後ろに置く。du+対格で「下手へ」となり、gél-「行く」に方向を決めた前置詞を添えている。

hóu! ké dúles du orén?

読み:ホー!ケー ドゥーレス ドゥ オレーン?

hóu!kédúl-esduorén?
おーい<〜か>下る-<あなたが>下手縁<対格>

「おーい!縁へ下りるのか?」

谷の向こうや坂の下にいる相手に、大声で行き先を確かめる言い方。はい・いいえの問いは文のいちばん前に ké を置くが、間投詞 hóu はさらにその前に、独立した叫びとして置く。目上の人には使わない、くだけた呼びかけ。

ké dúlimor du orén dórel? éun.

読み:ケー ドゥーリモル ドゥ オレーン ドーレル?エウン。

kédúl-imorduoréndórel?éun.
<〜か>下る-<我々が>下手縁<対格>明日うん

「「明日、縁へ下りるか?」「うん。」」

運び人どうしのくだけたやりとり。時を表す語 dórel は文の後ろに置く。éun だけで答えるのは仲間内や目下への返事で、改まった場では動詞を繰り返すか、目上の人には dómim を使う。

kórvino an kórvo, fáron du orén.

読み:コルヴィノ アン コルヴォ、ファーロン ドゥ オレーン。

kórvinoankórvo,fáronduorén.
受け入れられるべきもの<主格>上手倉<対格>荷<主格>下手縁<対格>

「受け入れられるべきものは倉の上手へ、荷は縁の下手へ。」

詩の語順(動詞を落とし、主語を動詞の前に出す)。an+対格「上手へ」、du+対格「下手へ」。比喩的に「納まるべきもの」と「運ばれるべきもの」の対比。

krávan faronárai du orén.

読み:クラーヴァン ファロナーライ ドゥ オレーン。

kráv-anfaron-ár-aiduorén
叫ぶ-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下手縁<対格>

「「運び人たちが縁へ向けて叫ぶ。」」

縁や降ろし場で、荷の動きを知らせる合図として叫ぶ描写。主語が複数名なので直説法複数 -an。faronár の複数は faronárai。du+対格は縁の市・崖下への方向を示す。

áuro áurmo gráis es orénos.

読み:アウロ アウルモ グライス エス オレーノス。

áur-oáurmográisesorén-os.
rise-<(重いものが)>smell<主格>badfromedge-GEN.

「縁から悪い匂いが立ち上る。」

書物や年代記的な記述。主語名詞句 áurmo gráis は「名詞+形容詞」の順。動詞 áur- は重性の主語 áurmo に一致して語尾 -o をとる。es + 属格の orénos は「縁から」を表す出処の前置詞句。

géla vándar es snáuros só du orén.

読み:ゲーラ ヴァンダル エス スナウロス ソー ドゥ オレーン。

gél-avándaressnáur-ossóduorén.
行く-<(軽いものが)>商人<主格>から町-<属格>この<重性>下手縁<対格>

「商人はこの町を下って縁へ行く。」

移動の動詞 gél- に、起点の es+属格、下向きの方向の du+対格を続ける。商人は人なので動詞の一致は軽性 -a。snáur の属格は重性 -os。du orén は「下手へ、縁へ」の定型句。

þrúno ílmo orén.

読み:スルーノ イルモ オレーン。

þrún-oílmoorén.
削る-<(重いものが)>水<主格>縁<対格>

「水が縁を削る。」

自然の作用。主語 ílmo は重性なので動詞は3人称単数重性をとる。orén は重性の対格。

géla vróunda du orén.

読み:ゲーラ ヴローンダ ドゥ オレーン。

gél-avróundaduorén.
行く-<(軽いものが)>人ごみ<主格>下手縁<対格>

「人ごみが縁の方へ向かう。」

人ごみそのものを移動する集合として述べる日常文。du+対格は方向「下手へ・縁へ」を示す。動詞は軽性の3人称単数語尾 -a をとる。

brúna faronár trenó du orén

読み:ブルーナ ファロナール トレノー ドゥ オレーン

brún-afaron-ártrenóduorén
背負う-<(軽いものが)>荷-<〜する人・主格>編み籠<対格>下手縁<対格>

「運び人が編み籠を背負って縁へ下りていく。」

作業場面の文。faronárは軽性なので動詞は3SG.LT。見出し形trenóを単数対格として使う。数詞を使うと複数形になるため、ここでは単数のまま。

krílo dóulin plondó orén.

読み:クリーロ ドーリン プロンドー オレーン。

kríl-odóulinplondóorén.
離す-<(重いものが)>もう道を絶つ崩落<主格>縁<対格>

「道を絶つ崩落は、もう崖縁を断った。」

年代記・報告のような書面的文。VSOで動詞の直後に相の副詞 dóulin を置く。kríl は他動詞、orén を対格で受ける。重性名詞のため対格は無標識。plondó は単なる落石ではなく、往来を断つ崩落を名指す。

lúin tóra oráur, gélan faronárai du orén.

読み:ルーイン トーラ オラウル、ゲーラン ファロナーライ ドゥ オレーン。

lúintór-aoráur,gél-anfaron-ár-aiduorén.
とき来る-<(軽いものが)>夜明け<主格>行く-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下手縁<対格>

「夜明けが来ると、運び人たちは縁へ下る。」

運搬作業の場面。lúin 節は主節の前に置く。gélan は gél-「行く」+3複数 -an。faronárai は faron「荷」+ -ár「〜する人」+軽性複数主格 -ai。

plúna houmár faronáran du orén.

読み:プルーナ ホウマール ファロナーラン ドゥ オレーン。

plún-ahoumárfaronár-anduorén.
使いに出す-<(軽いものが)>家の主<主格>運び人-<対格>下手縁<対格>

「家の主は運び人を縁へ使いに出す。」

家庭・職場での日常の文。段の低い運び人を、所定の用向きに遣る言い方。やや直截だが、この範囲では普通に使える。

géla sílan du orén

読み:ゲーラ シーラン ドゥ オレーン

gél-asílanduorén
行く-<(軽いものが)>シラン<主格>下手縁<対格>

「シランは縁へ行く。」

道順や予定を語る日常の発話。主語の固有名詞 sílan は主格で形を変えない。動詞 géla は軽性の3人称単数語尾。du orén は方向の前置詞 du と対格による「縁へ」。

dúlo alfilrúndo du orén.

読み:ドゥーロ アルフィルルンド ドゥ オレーン。

dúl-oalfilrúndoduorén.
下る-<(重いものが)>白糸川<主格>下手縁<対格>

「白糸川は縁へ下る。」

VSOの基本語順。河川名 alfilrúndo は地上の水なので重性o語幹で、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。du+対格で「下手へ/縁へ」。地誌や帳簿の定型のような地文。

géla fleuréla du orén.

読み:ゲーラ フレウレーラ ドゥ オレーン。

gél-afleuréladuorén
行く-<(軽いものが)>フレウレラ<主格>下手縁<対格>

「フレウレラは縁へ行く。」

日常の会話で使われる文。基本語順はVSO。fleurélaは軽性の人名なので、動詞は3人称単数・軽性の -a で受ける。du+対格で「下手へ」、orén は「縁」。

esós gélim du orén sórel.

読み:エソース ゲーリン ドゥ オレーン ソーレル。

esósgél-imduorénsórel
そういうわけで行く-<私が>下手縁<対格>今日

「そういうわけで、今日縁へ行く。」

『なぜ縁へ行くのか』(es pós géles du orén?)と問われたとき、答えの文頭に置いて、行くという帰結を述べる例。下向き・並びの会話で使う。答語では問いに出た補語を省略できるが、ここでは行き先を残している。

troltáulin pǘlmo, ráumim du orén.

読み:トロルタウリン ピュルモ、ラウミン ドゥ オレーン。

troltául-inpǘlmo,ráum-imduorén.
履く-<〜して・〜く>草鞋<対格>歩く-<私が>下手縁<対格>

「草鞋を履いて、私は縁の方へ歩いていく。」

日常の場面。副動詞接尾辞 -in により、同一主語のまま「草鞋を履いている」状態を背景として示す。主節は ráumim「私は歩く」。du は「下手へ」を表す前置詞で、orén「縁」は重性名詞のため単数の対格は主格と同形となる。

géla berunvríma sé du orén.

読み:ゲーラ ベルンヴリーマ セー ドゥ オレーン。

gél-aberunvrímaséduorén.
行く-<(軽いものが)>道連れ<主格>この<軽性>下手縁<対格>

「この道連れは縁へ行く。」

道行き・縁往来での日常的な言い方。名詞句は名詞+指示詞の順。berunvríma は行程を共有する人を含む語として軽性扱いとなり、動詞は軽性の3人称単数語尾 -a をとる。

géla berunvríma du orén.

読み:ゲーラ ベルンヴリーマ ドゥ オレーン。

gél-aberunvrímaduorén.
行く-<(軽いものが)>旅の伴<主格>下手縁<対格>

「旅の伴は縁へ行く。」

普通文。軽性単数の名詞を主語に取る。

féla faronár fúnel du orén.

読み:フェーラ ファロナール フーネル ドゥ オレーン。

fél-afaronárfúnelduorén
引く-<(軽いものが)>運び人<主格>綱<対格>下手縁<対格>

「運び人が綱を縁の方へ引く。」

崖道の日常。運び人 faronár は人を指すので軽性、動詞は 3 人称単数・軽性 -a。fúnel も orén も重性で、単数対格は主格と同じ。du orén は「下手へ、縁へ」の方向句。fél- は本来の krémb- に代えて、縁・崖道でよく使う。

bala faronár orén.

読み:バラ ファロナール オレーン。

bal-afaronárorén
空ける-<(軽いものが)>運び人<主格>縁<対格>

「運び人が縁の道を空ける。」

`orén` は「縁・縁沿い」を指す重性子音語幹で、目的語(対格)は主格と同形。縁沿いの道・崖道の意味をさして使う。

áumel, gélim du orén.

読み:アウメル、ゲーリン ドゥ オレーン。

áumel,gél-imduorén.
朝行く-<私が>下手縁<対格>

「朝、私は縁へ行く。」

場面枠に置かれた独立の時間名詞。動詞は未完了の直説法で、主語の代名詞は省略。du は「下手へ」を表し、orén は重性単数で対格が主格と同型。

文法

重性・子音語幹。主格・対格 orén、属 orénos、与 orénoi、複 orénul。du orén「縁へ」、es orénos「縁から」。

語源

古高原語 *oréna。古い脱落で語末の母音が落ちた。

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