小説
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雨
空から降る雨そのもの。
lúin brúuma réina, éso rúndo múr.
読み:ルーイン ブルーマ レーナ、エーソ ルンド ムール。
| lúin | brúum-a | réina, | és-o | rúndo | múr. |
| とき | 落ちる-<(軽いものが)> | 雨<主格> | いる-<(重いものが)> | 走り水<主格> | 濁った |
「雨が降ると、走り水は濁る。」
lúin で始まる「〜とき」の節を、主節の前に置いた文。雨 réina は軽性で、地を走る水 rúndo は重性なので、二つの節で動詞の語尾が -a と -o に分かれる。雨期に谷の流れが増水して濁るようすを言う。
lúin brúuma réina, ésa fléura du aursárail.
読み:ルーイン ブルーマ レーナ、エーサ フレウラ ドゥ アウルサーライル。
| lúin | brúum-a | réina, | és-a | fléura | du | aursár-ail. |
| とき | 落ちる-<(軽いものが)> | 雨<主格> | いる-<(軽いものが)> | 天の屋根<主格> | 下手 | 祖先-<〜らに> |
「雨が降るときも、天の屋根は祖先の方々の下にある。」
雨期に星が見えなくても不安に思わなくてよい、と説くときの決まった言い方。du+与格で「〜の下手に」。天の屋根が祖先の下にあるということは、祖先は屋根の上にいて、変わらず下界を聞いているということになる。
brúuma réina sórel, mé gél du orén!
読み:ブルーマ レーナ ソーレル、メー ゲール ドゥ オレーン!
| brúum-a | réina | sórel, | mé | gél | du | orén! |
| 落ちる-<(軽いものが)> | 雨<主格> | 今日 | <禁止・願いの打ち消し> | 行く<命令法><あなたが> | 下手 | 縁<対格> |
「今日は雨だ。縁へは行くな。」
雨で崖道が滑るときに、目下の者や家の者に言う注意。雨は上から来るものなので軽性で、動詞は -a をとる。禁止は mé+命令法で、命令法の2人称単数はむき出しの語幹 gél になる。
ké bruuméla réina dórel?
読み:ケー ブルーメーラ レーナ ドーレル?
| ké | bruum-él-a | réina | dórel? |
| <〜か> | 落ちる-<〜だろう>-<(軽いものが)> | 雨<主格> | 明日 |
「明日は雨が降るだろうか。」
天気を尋ねる日常の問い。未来のことは推量法で言う。強勢は -él- に移るので、語根の ´ は消える。答えるときは bruuméla「降るだろう」か na bruuméla と、動詞を繰り返す。
bresérim réines.
読み:ブレセーリン レーネス。
| bres-ér-im | réin-es. |
| 胸-<〜でする>-<私が> | 雨-<属格> |
「私は雨に驚く。」
くだけた日常会話。一人称は動詞の語尾 -im で示し、主語の代名詞は省略する。原因は裸の属格 réines で示す。brés「胸」に接尾辞 -ér- がついた語で、直説法には時制がなく、文脈により「驚く/驚いた」と読む。
þarnéra réina.
読み:サルネーラ レーナ。
| þarnér-a | réina. |
| 終わる-<(軽いものが)> | 雨<主格> |
「雨が終わる。」
自然現象についての実況的な一文。雨 réina は軽性なので、動詞は 3 人称単数・軽性の -a で受ける。雨期の終わりや天候の変わり目を短く述べる。
séulan fléurai réinan.
読み:セウラン フレウライ レーナン。
| séul-an | fléur-ai | réin-an. |
| 散らして配る-<彼らが> | 雲-<〜たちが> | 雨-<対格> |
「雲たちが、雨を散らして配る。」
詩的な用法。天からの恵みが四方へ散る意味に用いられる。fléura は軽性名詞で、fléurai は複数主格。受詞 réinan は軽性の対格。与格は文脈で省略されている。
雨水
軒の樋で集めた雨の水。墨や祀りに使う清い水。
ké ésa réina gléin tásei?
読み:ケー エーサ レーナ グレーン ターセイ?
| ké | és-a | réina | gléin | tás-ei? |
| <〜か> | いる-<(軽いものが)> | 雨水<主格> | 清い | <あなた>-<与格> |
「清い雨水はお前のところにあるか。」
墨をするときや祀りの器を清めるときに、家の者に尋ねる言い方。所有は「ある+持ち主の与格」で言う。動詞は持ち主ではなく、持たれている雨水 réina(軽性)に一致する。答えは éisa か na éisa。
esésa réina gléin.
読み:エセーサ レーナ グレーン。
| es-és-a | réina | gléin. |
| いる-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 雨水<主格> | 清い |
「雨水は清くあるべし。」
祀りの作法を記した書の一句。当為法の動詞が主語の réina(軽性)に一致して、-a をとる。強勢は -és- に移る。軒で集めた雨水を祀りに使うときの決まりを述べたもの。
上からの恵み
天から返されてくる恵み一般の比喩。下から来る塩と対にして言う。
an élvares réina, es dáloros sáko.
読み:アン エルヴァレス レーナ、エス ダーロロス サーコ。
| an | élvar-es | réina, | es | dálor-os | sáko. |
| 上手 | 天-<属格> | 上からの恵み<主格> | から | 下の国-<属格> | 塩<主格> |
「上からは雨の恵み、下からは塩。」
動詞のない諺。天からの恵み(軽性の réina)と、下の国から来る塩(重性の sáko)を対にしている。塩をありがたがりながらも少し後ろめたく思う、という気持ちを表す。an+属格は「上手から」の意味になる。
ésa réina aursárar, dúmarimor.
読み:エーサ レーナ アウルサーラル、ドゥーマリモル。
| és-a | réina | aursár-ar, | dúmar-imor. |
| いる-<(軽いものが)> | 上からの恵み<主格> | 祖先-<〜らの> | いただく-<我々が> |
「祖先の方々の恵みがここにある。いただきます。」
雑穀の食事の前に、家の者がそろって唱える言葉。雨で実った穀物を「雨」と呼んで、上から返されてきた恵みとして言う。dúmar- は「食べる」の謙譲の補充形。
空から降る雨。いったん天に昇って清められた水が、祖先の手で上から返されてくるものとされ、「上からの恵み」と呼ばれる清い水である。軒で集めた雨水は墨をするのにも、祀りの器を清めるのにも使う。地の上を流れる水(ílmo)とは別の語で、文法上も軽性に属する。雨の音は祖先が屋根を叩く音だとも言う。降り方(細い・長い・叩きつける)や時期(雨期の初めの雨・刈り入れの雨・季節外れの雨)は、形容詞や属格を添えて呼び分ける。
軽性・a語幹(①型、語根に強勢)。属 réines、与 réinei。雨水を指すときも軽性のまま。
古高原語 *réina から。
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