小説
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印
証文に押す印章と、その印影。
auleiménde ausenár símbo sáindarei.
読み:アウレイメンデ アウセナール シンボ サインダレイ。
| au-leim-énd-e | au-sen-ár | símbo | sáindar-ei. |
| <お〜になる・御〜>-置く-<〜しますように>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人> | 印<対格> | 証文-<与格> |
「目付殿に、証文に印をお押しいただきたく存じます。」
縁の市で市の目付に頼む改まった言い方。命令の代わりに願望法の3人称を使い、相手を役職名+au- で呼ぶ。「印を押す」は léim-「置く」で言う。sáindar は軽性の子音語幹で、与格は -ei。
ésa dráun símbo némores.
読み:エーサ ドラウン シンボ ネーモレス。
| és-a | dráun | símbo | némor-es. |
| いる-<(軽いものが)> | 狼<主格> | 印<主格> | <我々>-<属格> |
「狼は我々のしるしだ。」
森の氏族の者が、自分の氏族のしるしを言う文。繋辞の文は「és-+主語+述語」の順に並べる。繋辞は主語 dráun(軽性)に一致して -a をとり、述語の名詞 símbo は主格のままにする。
ésa aurá símbo aldáres áurenes.
読み:エーサ アウラー シンボ アルダーレス アウレネス。
| és-a | aurá | símbo | aldár-es | áur-en-es |
| いる-<(軽いものが)> | 縁鷲<主格> | 印<主格> | 座-<属格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格> |
「縁鷲は高き座のしるしである。」
「AはBだ」の文なので、繋辞 és- が文頭に来る。縁鷲が王家のしるしであることを述べる、書物風の言い方。述語の名詞 símbo は主格のまま置き、主語に一致させない。aldáres áurenes は、王を指す総称 aldár áuren「高き座」の属格。分詞も軽性・属格の -es で一致している。
luuménde ausenár símbo só.
読み:ルーメンデ アウセナール シンボ ソー。
| luum-énd-e | au-senár | símbo | só. |
| ご覧になる-<〜しますように>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-目付 | 印<対格> | この<重性> |
「目付殿に、この印をご覧いただきたく存じます。」
市で、手代などが目付にじかに頼むときの上向きの話し方。目の前の相手を2人称で呼ばず、ausenár「目付殿」を3人称の主語にして、願望法で言う。símbo「印」は重性なので、対格は主格と同じ形で、指示詞も só になる。
léimim símbo némes sáindarei.
読み:レーミン シンボ ネーメス サインダレイ。
| léim-im | símbo | ném-es | sáindar-ei. |
| 置く-<私が> | 印<対格> | <私>-<属格> | 証文-<与格> |
「証文に私の印を押します。」
「印を押す」は léim-「置く」に símbo を目的語にとって言う。押す先は与格で表す。帳簿と証文が重んじられる市の取引で、日常的によく聞く言い方。
lúin tóro nébro, mé leimésa símbo sáindarei.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー レイメーサ シンボ サインダレイ。
| lúin | tór-o | nébro, | mé | leim-és-a | símbo | sáindar-ei. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 置く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 印<対格> | 証文-<与格> |
「霧が来たら、証文に印を押さぬこと。」
法典や碑文に見られる当為法の禁止。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の -a をとる。強勢は -és- に移り、語根の ´ は消える。前半は lúin「〜とき」の節で、霧 nébro は重性なので動詞は -o をとる。霧の中で結んだ約束は「霧の約束」として重んじられない、という禁忌を表している。
vóila faronár símbo gandéros, na vóila lisáis.
読み:ヴォイラ ファロナール シンボ ガンデーロス、ナ ヴォイラ リサイス。
| vóil-a | faron-ár | símbo | gandér-os, | na | vóil-a | lis-áis. |
| 見分ける-<(軽いものが)> | 荷-<〜する人> | 印<対格> | 硬木-<属格> | <〜ない> | 読む-<(軽いものが)> | 字-<〜たちを> |
「運び人は硬木の焼印は見分けるが、字は読めない。」
同じ vóil- が、前半では焼印の形を見分ける意味で、後半では文字を読む意味で使われている。丸太の木口の焼印は何百本にも同じ形で押されているので、文字を知らない者もその形を覚える。
pórin vóilimor símbo só?
読み:ポーリン ヴォイリモル シンボ ソー?
| pórin | vóil-imor | símbo | só? |
| どのように | 見分ける-<我々が> | 印<対格> | この<重性> |
「この印は、どう見分ければいいのか。」
荷札や焼印のしるしの読み方を仲間に尋ねる言い方。疑問詞 pórin は動詞の前に置く。símbo は重性なので、指示詞も重性の só を使う。
lísa lisár símbo monþóros.
読み:リーサ リサール シンボ モンソーロス。
| lís-a | lis-ár | símbo | monþór-os |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 印<対格> | 壁-<属格> |
「書記は壁の印を書く。」
記録・帳簿向き。目的語的名詞句「壁の印」は、中心語 símbo の後ろに属格 monþóros を置く。monþór の単数属格は monþóros。
þalíþim símbo es sáindares.
読み:サリーシン シンボ エス サインダレス。
| þal-íþ-im | símbo | es | sáindar-es. |
| 止まる-<〜させる>-<私が> | 印<対格> | から | 証文-<属格> |
「私は証文から印を消す。」
帳場・書の日常。痕を消す意。símbo は重性o語幹で、単数の主格と対格は同形。es+属格 sáindares は「証文から」。
ké éso brinó símbos?
読み:ケー エーソ ブリノー シンボス?
| ké | és-o | brinó | símb-os? |
| <〜か> | いる-<(重いものが)> | 摩耗<主格> | 印-<属格> |
「印の摩耗があるか。」
帳簿・荷札・目印などの刻み・印が摩耗して薄れるかどうかを問う、市や帳場での言い方。ké を文頭に置いてはい・いいえの問いを作る。
éso sindrasímbo símbo aldáres.
読み:エーソ シンドラシンボ シンボ アルダーレス。
| és-o | sindrasímbo | símbo | aldár-es. |
| いる-<(重いものが)> | 役札<主格> | 印<主格> | 座-<属格> |
「役札は座の印である。」
書物や帳場での定義文。繋辞és-による述語名詞文で、述語名詞は自分の格と性を保つ。名詞+属格の順で「座の印」を作り、役札が座(役)を象徴するしるしであることを説明する。
na dulilána lisár símbo sáindares
読み:ナ ドゥリラーナ リサール シンボ サインダレス
| na | dulilán-a | lis-ár | símbo | sáindar-es |
| <〜ない> | 痕を消す-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | 印<対格> | 証文-<属格> |
「書記は証文の印を消さない」
記録・書物の文。否定の na を動詞の前に置く。主語は書記で、主語が軽性なので動詞は3人称単数軽性の -a で一致する。目的語の印が証文に属することを後置の属格で示す。
焼印
硬木の丸太の木口に押すしるし。
sén símbo gandéros só!
読み:セーン シンボ ガンデーロス ソー!
| sén | símbo | gandér-os | só! |
| 見る<命令法><あなたが> | 焼印<対格> | 硬木-<属格> | この<重性> |
「この硬木の焼印を見ろ。」
下向きの命令。森の司の検め役が、運び人や樵に向かって言うような言い方。硬木の丸太には木札を結べないので、木口に焼印を押す。並び順は「名詞–属格–指示詞」。
na ráina faronár lisáis, ráina símbo.
読み:ナ ライナ ファロナール リサイス、ライナ シンボ。
| na | ráin-a | faronár | lis-áis, | ráin-a | símbo. |
| <〜ない> | 知る-<(軽いものが)> | 運び人<主格> | 字-<〜たちを> | 知る-<(軽いものが)> | 焼印<対格> |
「運び人は字を知らないが、焼印なら知っている。」
後半の文は、主語が前半と同じなので省いている。símbo は重性o語幹なので、対格も主格と同じ形になる。ここでは単数で「焼印というもの」を総称している。同じ形の焼印が何百本もの丸太に押されているので、字の読めない者もまず焼印の形を覚える。
証文や帳簿に押す印章と、押された印影。王国では、証文は印を押してはじめて効力をもつ。硬木の丸太の木口に押す焼印もこの語で呼び、森の司の印、伐った谷のしるし、等級のしるしの三つが並ぶ。「印を押す」は派生動詞 simbér- で言い、市の決まり文句の一つになっている。
重性・o語幹(④型)。属 símbos、複 símbul。派生動詞 simbér-「印を押す」。
語源未詳。古くは青銅の印章だけを指した。日本語話者は si を「シ」と聞く。
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