小説
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だから
前の文を理由として、後ろの文がその結果であることを示す。書き言葉では「それゆえ」に近い改まった響きになる。
éso nébro an orénoi, esós na sénimor ilánais.
読み:エーソ ネーブロ アン オレーノイ、エソース ナ セーニモル イラーナイス。
| és-o | nébro | an | orén-oi, | esós | na | sén-imor | ilán-ais. |
| いる-<(重いものが)> | 霧<主格> | 上手 | 縁-<与格> | だから | <〜ない> | 見る-<我々が> | 灯-<〜たちを> |
「縁の上手に霧がある。だから、我々には星が見えない。」
esós「それから(それゆえ)」は理由と結果。es pós「なぜ」と対になる。
anórel, níla faronár té muró bróus, esós ésa él murár sórel.
読み:アノーレル、ニーラ ファロナール テー ムロー ブロース、エソース エーサ エール ムラール ソーレル。
| anórel, | níl-a | faron-ár | té | muró | bróus, | esós | és-a | él | mur-ár | sórel. |
| 昨日 | 飲む-<(軽いものが)> | 荷-<〜する人> | あの<軽性> | 濁り酒<対格> | 多い | だから | いる-<(軽いものが)> | <3人称単数・軽性> | 濁った-<〜する人> | 今日 |
「昨日、あの運び人は濁り酒をしこたま飲んだ。だから今日のあいつは、まるで酔いどれだ。」
崖道の宿などで交わす、くだけた噂話。muró「濁り酒」と murár の音が近いことを使った当てこすりで、ここでは「酔ってぼんやりしている者」の意味になる。時の語 anórel は場面の枠に置いて読点で区切る。esós「だから」は二つめの文の頭に置く。主語の代名詞 él をわざわざ言っているので、「あいつときたら」という強調の響きがある。
éso fáron gróm, esós éso tromsnór nalóun.
読み:エーソ ファーロン グローン、エソース エーソ トロンスノール ナローン。
| és-o | fáron | gróm, | esós | és-o | tromsnór | nalóun. |
| いる-<(重いものが)> | 荷<主格> | 重い, | だから | いる-<(重いものが)> | 歩幅<主格> | 短い |
「荷が重いので、歩幅は短い。」
荷場での日常の言い方。荷の重さを見積もる場で、足から足の間隔が短くなることを言う。身分の「段」ではなく、歩幅を意味するtromsnórの直義。
próso fáron néman, esós trolþálim.
読み:プローソ ファーロン ネーマン、エソース トロルサーリン。
| prós-o | fáron | ném-an, | esós | trolþál-im. |
| 押す-<(重いものが)> | 荷<主格> | <私>-<対格> | だから | 踏ん張る-<私が> |
「荷が私を押すので、私は踏ん張る。」
荷は重性なので prós- は 3人称単数・重性の -o を受ける。一人称代名詞の対格は néman と書き、形態素境界は ném-an と書く。esós は直前の出来事を理由として後続の節を導く。荷の力を受け止める意味では、圧力に耐える場そのものが想定される。
na ráinim virán, esós drúnim.
読み:ナ ライニン ヴィラーン、エソース ドルーニン。
| na | ráin-im | vir-án, | esós | drún-im. |
| <〜ない> | 知る-<私が> | 言葉-<対格>, | だから | 首を傾ける-<私が> |
「言葉がわからないので、首を傾ける。」
日常会話での一人称の発話。否定の na は直説法動詞の直前に置き、原因を表す接続 esós は後続節の頭に立つ。主語は動詞の人称接辞 -im から示され、名詞は置かない。drúnim は、一度だけ首を横に傾ける仕草を表す自動詞用法。
そういうわけで
es pós「なぜか」と問われたとき、文頭に置いて、続く文が理由の筋道からの帰結であることを示す答え方。下向き・並びの会話でだけ使う。
esós gélim du orén sórel.
読み:エソース ゲーリン ドゥ オレーン ソーレル。
| esós | gél-im | du | orén | sórel |
| そういうわけで | 行く-<私が> | 下手 | 縁<対格> | 今日 |
「そういうわけで、今日縁へ行く。」
『なぜ縁へ行くのか』(es pós géles du orén?)と問われたとき、答えの文頭に置いて、行くという帰結を述べる例。下向き・並びの会話で使う。答語では問いに出た補語を省略できるが、ここでは行き先を残している。
esós lísim sáindaran sórel.
読み:エソース リーシン サインダラン ソーレル。
| esós | lís-im | sáindar-an | sórel |
| そういうわけで | 書く-<私が> | 証文-<対格> | 今日 |
「そういうわけで、今日証文を書く。」
『なぜ証文を書くのか』(es pós líses sáindaran?)と問われたとき、答えの文頭に置いて、書くという帰結を述べる例。帳簿・書記の場面。答語では目的語を繰り返してもよい。
前の文を理由・出どころとして、後ろの文がそこから「流れ下って」出てくる結果であることを示す接続の小辞。「文1, esós 文2」の形で、動詞で始まる二つめの文の頭に置く(例:éso nébro an orénoi, esós na sénimor ilánais.「縁の上手に霧がある。だから我々には星が見えない」)。高原語では出どころも理由も es「〜から」で言い(es pós「どこから/なぜ」)、esós はその答えにあたる「それから=それゆえ」である。理由は源(泉)、結果は川下と見るので、前の文全体を重性の代名詞 ó で受けている。年代記や法官の裁き、星読みの記録など、筋道を順に立てて述べる書き言葉で好まれ、碑文では当為法の決まりの前に置いて、その決まりの根拠を示す(…, esós mé duliþésa fáron es orénos.)。日常の会話でも広く使われるが、目上の人の行いについて「だからなさったのだ」と理由を言い切るのは、その人の心の出どころを推し量りすぎることになり、無礼とされる。その場合は後ろの文を推量法にするのがふつうである。日本語話者には「エソース」と聞こえ、強勢のある短い o を長く聞きやすい。
強勢あり(第2音節 -sós)。格変化しない。二つめの文の先頭に置き、前の文とのあいだに区切り(転写では読点)を打つ。後ろには動詞か、na・mé+動詞が続く(esós na…、esós mé…)。疑問の小辞 ké とは組まない。書き言葉では一語〈esos〉に綴り、前置詞句 es ós「それ(重いもの)から」と書き分ける。話し言葉では、句の es ós は es が無強勢で次に寄りかかるだけなので、意味の上でも「その物から」の場所・材料の意味になる。
前置詞 es「〜から(属格と組む)」と、3人称単数・重性の代名詞 ó の属格 ós「それの」が一語に縮まったもの。字義は「それ(の源)から」。理由を出どころと見る es pós「なぜ(何から)」と対をなし、問いと答えで es pós? ― esós…の組になる。前の事柄を重性で受けるのは、源 fóndar・瀬 lóur が重性であるのと同じく、流れ下る水の始まりとして事柄をとらえたことの名残とされる。
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