伐られた木は重くなる――名詞を飾る語

この課では、名詞に飾りの語を添えて、「高い柱の木」「書記が書いたこの札」のように詳しく言えるようにします。

高原語では、飾りの語はすべて名詞の後ろに並びます。飾りの語は、名詞と同じ性・数・格の語尾をとります。この課では、動詞から「〜した・〜された」という形(分詞)を作る方法も学びます。

この言語が話されている土地では、森の木が暮らしを支えています。木を伐ると、その木を受ける語の形が変わります。生えている木は「上へ伸びるもの」なので軽性です。伐られて根を断たれた木は「もう昇らないもの」なので、重性の形で受けます。ただし紙と版の木だけは例外で、伐ったあとも軽いままです。語尾の小さな違いから、木をどう見ているかがわかってきます。

この課の目標

新出語

árnel[ˈarnel]木「木」を広く指す語です。生えている木は軽性で受けます。枯れた木や伐った木は、重性で受ける人が多いです。
plíndo[ˈplindo]札札。荷札も木札もこの語で言います。脂の木の薄板で作るので、はじめから重性の名詞です(o語幹)。
flaindél[flainˈdel]版の木版の木。伐って寝かせても軽性のままの、数少ない例外です。
pandá[panˈda]版木版木。字を彫って刷る板です。版の木から作るので軽性です(a語幹)。
trúndo[ˈtrundo]杭杭。干潟の泥に打ちこむ硬木の杭です。重性です。
þór-[ˈθor]立つ立つ。分詞 þóren は「立っている」、木なら「生えている」の意味になります。
léim-[ˈleim]置く置く。分詞 léimen は「置かれた」です。材木なら「寝かせた(乾かすために置いてある)」の意味になります。
tíl-[ˈtil]彫る彫る。分詞 tílen は「彫られた」です。
káil[ˈkail]乾いた乾いた。寝かせた材木によく使います。
ível[ˈivel]新しい新しい。
krán[ˈkran]硬い硬い。硬木や石によく使います。

1. 飾りの語は名詞の後ろに並ぶ

規則:名詞を飾る語は、すべて名詞の後ろに置きます。並ぶ順番は決まっています。

① ② ③ ④
名詞 形容詞・分詞 「〜の」(属格) 指示詞(この・あの)

例:

注意:

2. 「〜した・〜された」の形:-en(分詞)

規則:動詞の語根に -en をつけると、「〜した」「〜された」という形容詞のような語ができます。これを分詞と言います。

動詞 分詞 意味
áur- 昇る áuren 昇った → 高い
dúl- 下る dúlen 下りた
kél- 伐る kélen 伐られた
lís- 書く lísen 書かれた
þór- 立つ þóren 立っている・生えている
léim- 置く léimen 置かれた・寝かせた
tíl- 彫る tílen 彫られた

例:

注意:

この形で言えないこと:他動詞の -en は「〜された」の意味なので、「証文が書かれた」とは言えても、「証文を書いた書記」のように、書いた人の側を飾ることはできません。これは、後の課で学ぶ関係節(te)で言います。

3. 飾りの語の語尾を名詞に合わせる

規則:形容詞と分詞は、飾る名詞と同じ性・数・格の語尾をとります。語尾は次のとおりです。

軽性 重性
単数「〜が」 (語尾なし) (語尾なし)
単数「〜を」 -an (語尾なし)
単数「〜の」 -es -os
単数「〜に」 -ei -oi
二つ(が・を) -au -ou
複数「〜が」 -ai -ul
複数「〜を」 -ais -ul

例:

注意:

4. 「〜ぬ」は頭に na-

規則:分詞の頭に na- をつけると、「〜していない」「〜ぬ」の意味になります。

分詞 「〜ぬ」の形 意味
dúlen 下りた nadúlen 下りぬ
kélen 伐られた nakélen 伐られぬ・伐っていない
lísen 書かれた nalísen 書かれぬ・白紙の

例:

注意:

5. 伐った木は重性に移る

規則:pélsa「脂の木」や lóna「柱の木」は、名詞としては軽性です。けれども伐られて材木や札になると、それを受ける語(動詞・指示詞・形容詞・分詞)だけが重性の形になります。名詞そのものの語尾は、軽性のまま変わりません。

生えている木 伐った木
「この柱の木は…」 ésa lóna sé … éso lóna só …
「柱の木を見る」 sénim lónan þórenan sénim lónan kélen
「脂の木に」 pélsei þórenei pélsei kélenoi

例外:紙と版の木は軽いまま

注意:

例文

ésa lóna sé áuren.

読み:エーサ ローナ セー アウレン。

és-alónaséáur-en.
いる-<(軽いものが)>柱の木<主格>この<軽性>昇る-<〜した・〜された>

「この柱の木は高い。」

生えている木なので軽性です。動詞 ésa も指示詞 sé も軽性の形になります。áuren は「昇った」がもとの意味の分詞です。

éso lóna só kélen.

読み:エーソ ローナ ソー ケーレン。

és-olónasókél-en.
いる-<(重いものが)>柱の木<主格>この<重性>伐る-<〜した・〜された>

「この柱の木は伐ってある。」

名詞は lóna のままですが、伐った材木なので、動詞は éso、指示詞は só と重性の形になります。例文1と比べてください。

dúlo gandér kélen du orén.

読み:ドゥーロ ガンデール ケーレン ドゥ オレーン。

dúl-ogandérkél-enduorén.
下る-<(重いものが)>硬木<主格>伐る-<〜した・〜された>下手縁<対格>

「伐られた硬木が縁へ下りていく。」

gandér は生えていても重性の名詞です。分詞 kélen は重性・単数・「〜が」の形なので、語尾はつきません。

lísa lisár virán pélsei kélenoi.

読み:リーサ リサール ヴィラーン ペルセイ ケーレノイ。

lís-alis-árvir-ánpéls-eikél-en-oi.
書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>言葉-<対格>脂の木-<与格>伐る-<〜した・〜された>-<重性・与格>

「書記は、伐った脂の木(の札)に字を書く。」

pélsei は軽性の「〜に」の形のままです。分詞は伐った材を受けるので、重性の「〜に」-oi になります。荷札が重く扱われるのは、この規則によります。

ésa plána sé lísen.

読み:エーサ プラーナ セー リーセン。

és-aplánasélís-en.
いる-<(軽いものが)>帳簿<主格>この<軽性>書く-<〜した・〜された>

「この帳簿は書いてある。」

紙は木から作りますが、例外として軽性のままです。ésa・sé と軽性で受けます。

ésa flaindél sé léimen.

読み:エーサ フラインデール セー レーメン。

és-aflaindélséléim-en.
いる-<(軽いものが)>版の木<主格>この<軽性>置く-<〜した・〜された>

「この版の木は寝かせてある。」

版の木も例外で、伐って寝かせても軽性です。léimen「置かれた」は、材木なら「乾かすために寝かせた」の意味になります。

séna senár plíndo lísen lisáres só.

読み:セーナ セナール プリンド リーセン リサーレス ソー。

sén-asen-árplíndolís-enlis-ár-essó.
見る-<(軽いものが)>見る-<〜する人>札<対格>書く-<〜した・〜された>書く-<〜する人>-<属格>この<重性>

「目付は、書記が書いたこの札を見る。」

名詞句は「札・書かれた・書記の・この」の順に並びます。plíndo は重性なので、「〜を」の形でも語尾がなく、分詞も語尾なしです。指示詞 só が名詞句の終わりの目印になります。

sénim lónan þórenan.

読み:セーニン ローナン ソーレナン。

sén-imlón-anþór-en-an.
見る-<私が>柱の木-<対格>立つ-<〜した・〜された>-<軽性・対格>

「私は生えている柱の木を見る。」

生えている木なので軽性です。名詞と同じく、分詞にも「〜を」の -an がつきます。

sénim lónan kélen.

読み:セーニン ローナン ケーレン。

sén-imlón-ankél-en.
見る-<私が>柱の木-<対格>伐る-<〜した・〜された>

「私は伐った柱の木を見る。」

名詞は軽性の lónan のままです。分詞は重性の「〜を」になるので、語尾がありません。例文8と並べると、語尾の「ちぐはぐ」がよくわかります。

ésa pélsa té nakélen.

読み:エーサ ペルサ テー ナケーレン。

és-apélsaténa-kél-en.
いる-<(軽いものが)>脂の木<主格>あの<軽性><〜ない>-伐る-<〜した・〜された>

「あの脂の木は伐られていない。」

na- は分詞の頭につく「〜ぬ」の形です。まだ伐られていないので、ésa・té と軽性で受けます。

練習問題

  1. 穴埋め:下線部に入る語尾や語を書きましょう。

    (a) 生えている柱の木について:és__ lóna s__ áuren.「この柱の木は高い」

    (b) 伐った柱の木について:és__ lóna s__ kélen.「この柱の木は伐ってある」

    解答

    (a) ésa lóna sé áuren.

    (b) éso lóna só kélen.

    名詞 lóna の形はどちらも同じです。伐った木は、動詞と指示詞が重性の形(éso・só)になります。

  2. 高原語→日本語:次の文を日本語に訳しましょう。

    (a) ésa pandá sé tílen.

    (b) éso pélsa só káil.

    解答

    (a) 「この版木は彫ってある」。版木は版の木から作るので、軽性の ésa・sé で受けます。

    (b) 「この(伐った)脂の木は乾いている」。名詞は軽性の pélsa ですが、éso・só と重性で受けているので、伐った材木だとわかります。

  3. 語尾を合わせる:下線部に分詞の語尾を入れましょう。

    (a) pélsei kél__「伐った脂の木に」

    (b) pélsei þór__「生えている脂の木に」

    (c) sénim plánan lís__「私は書かれた帳簿を見る」

    解答

    (a) kélenoi。伐った材なので、重性の「〜に」-oi をとります。

    (b) þórenei。生えている木なので、軽性の「〜に」-ei をとります。

    (c) lísenan。紙は伐った木から作っても軽性なので、軽性の「〜を」-an をとります。

  4. 日本語→高原語:「私は、書記が書いたこの帳簿を見る」を高原語にしましょう。名詞句の並び順に気をつけてください。

    解答

    sénim plánan lísenan lisáres sé.

    名詞句は「帳簿を・書かれた・書記の・この」の順に並びます。plána は軽性なので、分詞にも「〜を」の -an がつきます。指示詞は軽性の sé です。

  5. 誤りを直す:次の文には一か所、合わない語があります。「この柱の木は伐ってある」という意味になるように直しましょう。

    ésa lóna só kélen.

    解答

    éso lóna só kélen.

    指示詞は重性の só なのに、動詞が軽性の ésa になっていました。伐った木なので、動詞も重性の éso にそろえます。

    só を sé に直しても、ésa・sé で語尾はそろいます。それでも正解が éso なのは、kélen「伐ってある」が伐り終えた木を表すからです。伐った木は重性で受けるので、動詞も指示詞も重性の éso・só にそろえます。

  6. 発音:次の語は、どの音節を強く読むでしょうか。カタカナで書き、強く読む音を太字にしましょう。

    (a) kélenoi (b) nakélen (c) áurenan

    解答

    (a) ケレノイ (b) ナケレン (c) アウレナン

    分詞の -en、そのあとにつく語尾、頭の na- には、どれも強勢がありません。強勢は、いつも動詞の語根の音節に残ります。

コラム:紙の帳簿は軽く、木の荷札は重い

この言語が話されている土地では、崖の麓に市が立つ季節になると、荷にたくさんの木札が結びつけられます。荷札 plíndo は、脂の木を薄く割いた板で作り、墨で品名・等級・数・送り主を書きこみます。字が書いてあっても、荷札は重性の語です。材料が伐った木で、根を断たれてもう昇らないものだからです。

一方、商人が取引を書きつける帳簿 plána は紙でできています。紙も白い樹皮の木から作るのに、こちらは軽性です。紙は言葉を載せて上へ運ぶものとされていて、伐られた木とは別の扱いを受けます。同じ「字の書かれたもの」でも、紙の帳簿は軽く、木の荷札は重いのです。

木版の版木 pandá を作る版の木 flaindél も、紙と同じく軽いものとされます。版の木は淡い黄色の材で、水に浮きます。それに対して干潟の杭になる硬木 gandér は、乾かしても水に沈みます。この土地の人々は、硬木を「下へ行きたがる木」と考えています。硬木に字を彫ると言葉が木と一緒に沈んでしまうと言われ、硬木で版木を作ることは禁じられています。

文法の性は、ただの語尾の決まりではありません。軽いか重いかは、その物が上へ昇るか下へ沈むかという、この土地の人々の見方をそのまま映しています。木の札について書いた文で語尾が「ちぐはぐ」に見えたら、その木が伐られて重くなったしるしだと思ってください。

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