már

品詞
名詞
意味
手
発音
[ˈmar]
読み
マール
分野
身体

意味

  1. 手

    手首から先の部分。

    flúun már, endríña.

    読み:フルーン マール、エンドリーニャ。

    flúunmár,endríña.
    洗う<命令法><あなたが>手<対格>子ども

    「手を洗いなさい、坊や。」

    食事の前に子どもに言う日常の命令。már は重性の子音語幹名詞なので、対格は主格と同じ形。呼びかけには呼格を使わず、名詞を文末に読点で区切って添える。

    auflúuna aurél aumár.

    読み:アウフルーナ アウレール アウマール。

    au-flúun-aaurélau-már.
    <お〜になる・御〜>-洗う-<(軽いものが)>あの方<お〜になる・御〜>-手<対格>

    「あの方は御手をお洗いになる。」

    目上の人の体の部分には au- をつけて aumár「御手」と言い、動詞にも尊敬の au- をつける。aumár は重性なので、対格は主格と同じ形。御手を双数にして aumárou「御両手」と言うのは、人を数えることにならないので許される。

    flúunim frúm es máros.

    読み:フルーニン フルーン エス マーロス。

    flúun-imfrúmesmár-os.
    洗う-<私が>血<対格>から手-<属格>

    「手から血を洗い流す。」

    狩りで獲物をさばいたあとなどの日常の言い方。重性の frúm は対格も主格と同じ形。洗い落とす元の場所は es+属格で示す。

    flúuna líura már si nóumo.

    読み:フルーナ リーウラ マール シ ノーモ。

    flúun-alíuramársinóumo.
    洗う-<(軽いものが)>女<主格>手<対格>と顔<対格>

    「女が手と顔を洗う。」

    基本の VSO の文。主語の líura は人なので、動詞は軽性の -a をとる。体の部分 már・nóumo は重性なので、対格も主格と同じ形になる。目的語を二つ並べるときは si でつなぐ。

    flúun már si nóumo, endríña.

    読み:フルーン マール シ ノーモ、エンドリーニャ。

    flúunmársinóumo,endríña.
    洗う<命令法><あなたが>手<対格>と顔<対格>子ども

    「手と顔を洗いなさい、子よ。」

    下向きの命令法2人称単数は、むき出しの語幹 flúun で言う。呼びかけは呼格を使わず、読点で区切って文の終わりに添える。

    brúumo frélo es máros némes.

    読み:ブルーモ フレーロ エス マーロス ネーメス。

    brúum-ofréloesmár-osném-es.
    落ちる-<(重いものが)>魚<主格>から手-<属格><私>-<属格>

    「魚が私の手から落ちた。」

    日常の文。frélo「魚」は重性o語幹なので、動詞は重性の -o をとる。már「手」も重性で、属格は -os。es+属格で「〜から」。所有者の属格 némes は名詞の後ろに置く。

    brúumo frúm rús es máros némes.

    読み:ブルーモ フルーン ルース エス マーロス ネーメス。

    brúum-ofrúmrúsesmár-osném-es.
    落ちる-<(重いものが)>血<主格>赤いから手-<属格><私>-<属格>

    「私の手から赤い血が落ちる。」

    血 frúm は体に属するものなので重性。動詞は3人称単数・重性の -o をとり、形容詞 rús は重性の主格なので語尾がつかない。樵が手を切ったときのような日常の一言。

    lúin þrílo már, mé vandésa fáron.

    読み:ルーイン スリーロ マール、メー ヴァンデーサ ファーロン。

    lúinþríl-omár,mévand-és-afáron.
    とき震える-<(重いものが)>手<主格><禁止・願いの打ち消し>量る-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>

    「手が震えるときは、荷を量ってはならない。」

    帳場や作法書に見る規則。時節 lúin 節は主節の前に置ける。手のみが一時的に震える(意味2)。主節は主語を言わない当為法なので軽性形 vandésa。

    snémbo már virán.

    読み:スネンボ マール ヴィラーン。

    snémb-omárvir-án.
    なぞる-<(重いものが)>手<主格>言葉-<対格>

    「手が、言葉の上をなぞる。」

    詩的用法。主語 már は体の部分なので重性であり、動詞は3人称単数重性 -o をとる。目的語 virán は抽象的な「言葉」だが、書かれた言葉の表面を指先で触る意に転じた用法。

    snála endríña már

    読み:スナーラ エンドリーニャ マール

    snál-aendríñamár
    閉じる-<(軽いものが)>子<軽性><主格>手<重性><対格>

    「「その子は手を握る。」」

    már を目的語に取ると、開いた手を閉じて握る意。már は重性で、単数対格は無標識。主語の身体部分は所有を表さないのが自然。

    lína ólmar márou.

    読み:リーナ オルマル マーロウ。

    lín-aólmarmár-ou.
    伸ばす-<(軽いものが)>年長者<主格>手-<双数・対格>

    「年長者は両手を伸ばす。」

    両手という一対の肢体。目的語に双数形 márou を取る。主語の身体部位を指す場合、所有の属格を添えない形も自然。

    glünlúin, gíro duléumo klér már.

    読み:グリュンルーイン、ギーロ ドゥレウモ クレール マール。

    glünlúin,gír-oduléumoklérmár
    凍りの頃刺す-<(重いものが)>下風<主格>冷たい手<対格>

    「凍りの頃、冷たい下風が手を刺す。」

    凍りの頃の冷気による刺すような感覚。凍りの頃を場面の枠として文頭に置く。 klér が主語 duléumo を修飾する。冷気が主語の言い方は、改まった場でも自然。

    lámim már táses.

    読み:ラーミン マール ターセス。

    lám-immártás-es.
    掌でさする-<私が>手<対格><あなた>-<属格>

    「私はあなたの手を掌でさする。」

    相対で冷えた手のひらに掌を添える場面。目的語は手。所有は第二人称代名詞の属格を名詞後に後置して示す。

    hoinkráilim fáron es máros ós.

    読み:ホインクライリン ファーロン エス マーロス オース。

    hoinkráil-imfáronesmár-osós
    手受け-<私が>荷<対格>から手-<属格><3人称単数・重性・属格>

    「私は彼の手の荷を受け取る。」

    日常の実務的な場面。手受け義で荷を目的語に取る。es が支配する属格句で出所を表す。所属は possessum と possessors を属格で示す。3人称重性単数属格の代名詞は語全体の形 ós として扱い、ó-s と分割しない。

    klámba andaulóura kréin dáu mároun.

    読み:クランバ アンダウローラ クレーン ダウ マーロウン。

    klámb-aandaulóurakréindáumár-oun
    挟む-<(軽いものが)>祖母<主格>骨<対格>二手-<双数・与格>

    「祖母は両手で骨を挟んで押さえている。」

    世話的な用い方。基本語順はVSOで、主語は動詞の直後に置く。人の主語なので動詞は軽性の語尾 -a。kréin「骨」は重性だが、重性名詞は対格が無標。押さえる側の「両手」は与格双数 dáu mároun。

    marméir már táses, ende.

    読み:マルメール マール ターセス、エンデ。

    marméirmártás-es,ende
    差し向ける<命令法><あなたが>手<対格><あなた>-<属格>どうぞ

    「あなたの手を差し向けてくれ、頼む。」

    物の受け渡しではなく、受け取る用意を示す身振り。命令法は語幹形になる。már は重性子音語幹で、直接格に語尾がつかない。tás の属格は táses。

    síl súm mároi!

    読み:シール スーン マーロイ!

    sílsúmmár-oi!
    払う<命令法><あなたが>煤<対格>手-<与格>

    「手から煤を払い落としなさい。」

    家事や食事の前の、くだけた指示の場面。síl は「払い落とす」の意の命令法で、取り除く対象を対格に、その対象が付着している身体部位を与格に取る。この文の súm は炉の炭化物一般ではなく、手にこびりついて黒ずんだ汚れになっている煤を指す。

    síl-a endríña derván es máros.

    読み:シーラ エンドリーニャ デルヴァーン エス マーロス。

    síl-aendríñaderv-ánesmár-os
    払う(弾いて落とす)-<(軽いものが)>子ども<主格>粉-<対格>から手-<属格>

    「子どもが手から粉を払う。」

    dervá「粉」を目的語に取り、手についた粉を軽く弾いて落とす日常の動作。síl- は klén-「拭く」とはちがい、表面に軽く当てて粒子を飛ばす意。es+属格は払い落とす出所を示す。

    síl-a ráuvan elþíñan es máros.

    読み:シーラ ラウヴァン エルシーニャン エス マーロス。

    síl-aráuvanelþíñ-anesmár-os
    払う(弾いて落とす)-<(軽いものが)>巫<主格>火の粉-<対格>から手-<属格>

    「森の巫が手から火の粉を払う。」

    elþíña「火の粉」を目的語とする。炉仕事や儀礼のあと、手についていた小さな火の粉を軽く弾いて落とす場面。拭くのではなく、何回か軽く叩いて外へ落とす動作である。

  2. 手跡

    書かれた字の書きぶり。書の巧拙を言うときに使う(már sélvanes「セルヴァンの手」)。

    éso már sélvanes séuril.

    読み:エーソ マール セルヴァネス セウリル。

    és-omársélvan-esséuril.
    いる-<(重いものが)>手跡<主格>セルヴァン-<属格>美しい

    「セルヴァンの手跡は美しい。」

    手跡の意味でも már は重性のままで、繋辞は -o をとる。書き手は属格で後ろに示す。書きぶりや字の美しさが身分と教養の証になるので、人の手跡をほめるのは改まった賛辞になる。

    ké éso már táses só?

    読み:ケー エーソ マール ターセス ソー?

    kéés-omártás-essó?
    <〜か>いる-<(重いものが)>手跡<主格><あなた>-<属格>この<重性>

    「「この手跡はお前のものか。」」

    はい・いいえの問いで、ké を文のいちばん前に置く。már は重性なので、指示詞は重性の só、繋辞は -o。手紙や証文の筆跡が誰のものか確かめるときの、下向きの問い。目上の人には ké を使わず、推量法で尋ねる。

  3. 手(長さの単位)

    長さの単位。腕(daumár)の十分の一。手を広げた幅(約17センチ)。

    rímbim lím márul fúnelos.

    読み:リンビン リーン マールル フーネロス。

    rímb-imlímmár-ulfúnel-os.
    数える-<私が>五手(長さの単位)-<〜たちを>綱-<属格>

    「綱の五手分を数える。」

    帳簿・記録での数量の言い方。数詞+単位 márul+対象の属格 fúnelos という定型で、「五手分の綱」を表す。単位としての már は重性の名詞として働く。

解説

手首から先の手。物をつかむ、書く、量る手を指す、もっともふつうの語。体の部分なので重性。両手をそろえて言うときは双数 márou を使う。目上の人の手は au- をつけて aumár「御手」と言い、双数 aumárou「御両手」も許される(高めた持ち物は数えてよいため)。比喩で「書きぶり・手跡」の意味にもなる。

文法

名詞・重性・子音語幹。属 máros、与 mároi、双 márou、複 márul。尊敬形 aumár。

語源

古高原語 *mára から。古い語末母音の脱落で már になった。綴りは〈mara〉。

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