小説
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おや
軽い驚きや、思いがけないことに気づいたときに出す声。
áura selvá an ilánais.
読み:アウラ セルヴァー アン イラーナイス。
| áur-a | selvá | an | ilán-ais |
| 昇る-<(軽いものが)> | 息<主格> | 上手 | 灯-<〜たちを> |
「息は星々のもとへ昇る。」
selvá は軽性a語幹なので、動詞は軽性の -a をとる。星を数を問わずに総称しているので、複数対格の ilánais を使う。
toríro nébro es orénos, na senéimor ilánais.
読み:トリーロ ネーブロ エス オレーノス、ナ セネーモル イラーナイス。
| tor-ír-o | nébro | es | orén-os, | na | sen-é-imor | ilán-ais |
| 来る-<もし〜なら>-<(重いものが)> | 霧<主格> | から | 縁-<属格> | <〜ない> | 見る-<〜だろう>-<我々が> | 灯-<〜たちを> |
「縁から霧が上がってくれば、我々には星が見えなくなるだろう。」
霧 nébro は重性o語幹なので、仮定法の動詞も重性の -o をとる。帰結の部分は推量法で、na で否定している。1人称の語尾の前では、推量法の -él- の l が落ちて -é- になる。
dulíþan kelárai slúun báronur gandérur.
読み:ドゥリーサン ケラーライ スルーン バーロヌル ガンデールル。
| dul-íþ-an | kel-ár-ai | slúun | báron-ur | gandér-ur |
| 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 千 | 本-<〜らの> | 硬木-<〜らの> |
「樵たちが硬木千本を下ろす。」
slúun「千」は名詞として働き、量の名詞 báron「本」を複数属格でとる。その báron がさらに硬木を複数属格でとるので、属格が二つ続く。直説法では、-íþ- が自分で強勢をとる。
dúlo du dálor gandér te kéelan kelárai.
読み:ドゥーロ ドゥ ダーロル ガンデール テ ケーラン ケラーライ。
| dúl-o | du | dálor | gandér | te | kéel-an | kel-ár-ai. |
| 下る-<(重いものが)> | 下手 | 下の国<対格> | 硬木<主格> | <関係節> | 伐る<〜し終えた>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> |
「樵たちが伐り終えた硬木が、下の国へ下りていく。」
関係節は名詞の後ろに無強勢の te を置き、すぐ後ろに動詞を続ける。目的語が抜けた穴は空けたままにする。関係節は文の終わり(か読点)まで続くので、du dálor を主節にかけるために、関係節つきの重い主語を文末に回している。dúlo gandér te kéelan kelárai du dálor と言うと、du dálor は関係節の中に入ってしまう。gandér は重性だが、関係節を導くのは te のままで、tó にはならない(tó なら「あの硬木」)。
lúin áuran ombára ilánai, dulíþan kelárai gandér.
読み:ルーイン アウラン オンバーラ イラーナイ、ドゥリーサン ケラーライ ガンデール。
| lúin | áur-an | ombára | ilán-ai, | dul-íþ-an | kel-ár-ai | gandér. |
| とき | 昇る-<彼らが> | 十 | 灯-<〜たちが> | 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> |
「十の灯が昇ると、樵たちは硬木を下ろす。」
「〜とき」の節は lúin で始め、ふつう主節の前に置く。ombára ilánai「十の灯」は星座の名前で、古い形の「十」が固まって残ったもの。星を数えているわけではない。
aurénde selvá! an ilánais.
読み:アウレンデ セルヴァー!アン イラーナイス。
| aur-énd-e | selvá! | an | ilán-ais. |
| 昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 息<主格> | 上手 | 灯-<〜たちを> |
「「ごきげんよう(あなたの息が昇りますように)。」「星々へ。」」
二人の発話(挨拶と返し)。会ったときと別れるときの挨拶。返しは、動詞を省いた前置詞句だけで答える。語尾 -énde が、市で聞く ende と同じ響きなので、尋はここで二つのつながりに気づくかもしれない。
éso nébro an orénoi, esós na sénimor ilánais.
読み:エーソ ネーブロ アン オレーノイ、エソース ナ セーニモル イラーナイス。
| és-o | nébro | an | orén-oi, | esós | na | sén-imor | ilán-ais. |
| いる-<(重いものが)> | 霧<主格> | 上手 | 縁-<与格> | だから | <〜ない> | 見る-<我々が> | 灯-<〜たちを> |
「縁の上手に霧がある。だから、我々には星が見えない。」
esós「それから(それゆえ)」は理由と結果。es pós「なぜ」と対になる。
na lísim dóulin sáindarais.
読み:ナ リーシン ドーリン サインダライス。
| na | lís-im | dóulin | sáindar-ais. |
| <〜ない> | 書く-<私が> | もう | 証文-<〜たちを> |
「もう証文は書かない。」
否定+ふつうの形+dóulin で「もう〜しない」。
áurau sílarau an ilánais.
読み:アウラウ シーララウ アン イラーナイス。
| áur-au | sílar-au | an | ilán-ais. |
| 昇る-<双数> | 月-<双数> | 上手 | 灯-<〜たちを> |
「二つの月が、星々のほうへ昇る。」
都の言葉。双数の主語には双数の動詞。
áuran sílarau an ilánais.
読み:アウラン シーララウ アン イラーナイス。
| áur-an | sílar-au | an | ilán-ais. |
| 昇る-<彼らが> | 月-<双数> | 上手 | 灯-<〜たちを> |
「二つの月が、星々のほうへ昇る。」
崖道の言葉。名詞は双数のまま、動詞は複数で受ける。
éso nébro an sílarail.
読み:エーソ ネーブロ アン シーラライル。
| és-o | nébro | an | sílar-ail. |
| いる-<(重いものが)> | 霧<主格> | 上手 | 月-<〜らに> |
「二つの月の上手(北側)に霧がある。」
前置詞の後ろの双数は、都でも複数の形で代える(双数の属格と与格は同じ形で、前置詞の意味が決まらないため)。
lísin þíla endríña lisáis.
読み:リーシン シーラ エンドリーニャ リサイス。
| lís-in | þíl-a | endríña | lis-áis. |
| 書く-<〜して・〜く> | 分かる-<(軽いものが)> | 子ども<主格> | 字-<〜たちを> |
「その子は字が書ける。」
副動詞+þíl-「分かる」で、やり方を知っていて「できる」(能力)。
lúin fléira aldár áuren es dúnos, snéiman éndrai.
読み:ルーイン フレーラ アルダール アウレン エス ドゥーノス、スネーマン エンドライ。
| lúin | fléir-a | aldár | áur-en | es | dún-os, | snéim-an | éndr-ai. |
| とき | お出ましになる-<(軽いものが)> | 座<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | から | 王の丘-<属格> | 身をかがめる-<彼らが> | 人-<〜たちが> |
「高き座が王の丘からお出ましになると、人々は身をかがめる。」
都での王の行幸を言う文。単に dún と言っても、文脈から湖都の北の、王の居所がある丘を指す。fléir- は「行く」の尊敬の補充形。lúin の時の節は主節の前に置く。
ké líses lisáis? lísim.
読み:ケー リーセス リサイス?リーシン。
| ké | lís-es | lis-áis? | lís-im. |
| <〜か> | 書く-<あなたが> | 字-<〜たちを> | 書く-<私が> |
「「字は書けるか?」「書ける。」」
二人の発話。はい・いいえの問いは文頭の ké で作る。「はい」にあたる語がないので、答えるときは動詞を自分の人称に変えて繰り返す。lisá「字」は lís- から派生した軽性 a 語幹の名詞。
dúlan kelárai es dúnos.
読み:ドゥーラン ケラーライ エス ドゥーノス。
| dúl-an | kel-ár-ai | es | dún-os. |
| 下る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | から | 丘-<属格> |
「樵たちが丘から下りてくる。」
es+属格で、方向を問わない「〜から」を表す。主語の kelárai は軽性の複数(kél-「伐る」+-ár「〜する人」)なので、動詞は3人称複数の -an をとる。dún の属格は重性の -os になる。
lisésa lisár sáindarais, ré vandénde senár fáron.
読み:リセーサ リサール サインダライス、レー ヴァンデンデ セナール ファーロン。
| lis-és-a | lis-ár | sáindar-ais, | ré | vand-énd-e | sen-ár | fáron. |
| 書く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 証文-<〜たちを> | <〜と(節)> | 量る-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 見る-<〜する人> | 荷<対格> |
「目付が荷を量れるよう、書記は証文を書くべし。」
市の決まりの文。sáindar は軽性の子音語幹なので、複数対格は -ais になる。ré+願望法で目的「〜するように」を表す。この願望法は丁寧さではなく、そうなってほしいことを表している。
lóima lourvirár þeláis an fóndaros.
読み:ロイマ ロウルヴィラール セライス アン フォンダロス。
| lóim-a | lourvirár | þel-áis | an | fóndar-os. |
| 唱える-<(軽いものが)> | 系譜読み<主格> | 名前-<〜たちを> | 上手 | 源-<属格> |
「系譜読みは、始祖から一瀬ずつ名を唱えていく。」
婚姻の取り決めや祖先祀りで、系譜読みが家系を唱える場面を述べる文。系譜を言うときは「an fóndaros(源から)」を前に置くのが改まった言い方。この an は、流れの上手(始祖)から下っていく向きを表す。
fóndaro ráimaros, léunim þeláis aursárar.
読み:フォンダロ ライマロス、レウニン セライス アウルサーラル。
| fóndar-o | ráimar-os, | léun-im | þel-áis | aursár-ar. |
| 源-<〜よ> | ライマル-<属格> | 申す-<私が> | 名前-<〜たちを> | 祖先-<〜らの> |
「ライマルの源よ、祖先たちの名を申し上げます。」
系譜読みが系譜を唱えはじめるときの決まった呼びかけ。呼格は日常では使わず、古い詩と系譜の唱えにだけ残っている。重性の fóndar は呼格で fóndaro になる。léun- は「言う」の謙譲の補充形で、祖先に対して自分を低めている。
kélan kelárai téir gandérul.
読み:ケーラン ケラーライ テール ガンデールル。
| kél-an | kel-ár-ai | téir | gandér-ul. |
| 伐る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 三 | 硬木-<〜たちを> |
「樵たちが硬木を三本伐る。」
伐り出しのようすを言う文。会話では量の名詞 báron(本)を省き、数詞の後ろの名詞をそのまま複数にする。重性名詞は複数でも主格と対格が同じ -ul になる。時制がないので、「伐った」とも訳せる。
méir téir sáindarais némei!
読み:メール テール サインダライス ネーメイ!
| méir | téir | sáindar-ais | ném-ei! |
| 与える<命令法><あなたが> | 三 | 証文-<〜たちを> | <私>-<与格> |
「証文を三通くれ。」
目下の相手や親しい者に向けた、下向きのくだけた命令。会話では量の名詞を省き、数詞の後ろの名詞を直接複数にする。sáindar は軽性なので、複数対格は -ais。語順は「動詞–目的語–与格」。目上の人には命令法を使わず、願望法で言う。
sénim fáir kelárais.
読み:セーニン ファイル ケラーライス。
| sén-im | fáir | kel-ár-ais. |
| 見る-<私が> | 四 | 伐る-<〜する人>-<〜たちを> |
「樵が四人見える。」
目下の者や働き手は人数で数えてよいので、数詞をそのまま使う。目上の人には数詞をつけられないので、同じ言い方はできない。kelár は軽性の子音語幹で、複数対格は -ais。
lúin tóro nébro, dúlan orenvandárai du dálor.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ドゥーラン オレンヴァンダーライ ドゥ ダーロル。
| lúin | tór-o | nébro, | dúl-an | orenvandár-ai | du | dálor. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | 南へ行く-<彼らが> | 縁商人-<〜たちが> | 下手 | 下の国<対格> |
「霧が来るころ、縁商人たちは下(干潟)へ帰っていく。」
dúl- は、北が「上」の国では、そのまま「南へ行く・干潟へ行く」の意味になる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。縁商人は軽性の人なので、複数主格は -ai になる。霧が崖を上りはじめると縁の市が閉じることを述べた文。
dulíþan kelárai gandér es orénos.
読み:ドゥリーサン ケラーライ ガンデール エス オレーノス。
| dul-íþ-an | kel-ár-ai | gandér | es | orén-os. |
| 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 杭材<対格> | から | 縁-<属格> |
「樵たちは縁から硬木の丸太を下ろす。」
乾風期の吊り下ろしを述べる文。gandér は重性なので、主格と対格が同じ形になる。動詞のすぐ後ろの kelárai が主語で、その次の gandér が目的語。ここでは数を言わずに、伐り出された材をひとまとまりとして言っている。帳簿で数を書くときは、かならず量の名詞 báron「本」を添える。
lúin éso nébro, mé vírir þeláis.
読み:ルーイン エーソ ネーブロ、メー ヴィーリル セライス。
| lúin | és-o | nébro, | mé | vír-ir | þel-áis. |
| とき | いる-<(重いものが)> | 霧<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 言う-<皆で〜せよ> | 名前-<〜たちを> |
「霧が出ているときは、名を呼んではならぬ。」
霧の中で名前を呼ぶと下の国に聞かれるという禁忌を、年長者が若者たちに言い聞かせる言い方。vír- が名前を目的語にとると「名を呼ぶ・口にする」の意味になる。禁止は mé+命令法で、相手が複数なので命令法の2複 -ir を使う。lúin の節は主節の前に置く。
lóima lourvirár þeláis an fóndaros ráimaros.
読み:ロイマ ロウルヴィラール セライス アン フォンダロス ライマロス。
| lóim-a | lourvirár | þel-áis | an | fóndar-os | ráimar-os. |
| 唱える-<(軽いものが)> | 系譜読み | 名前-<〜たちを> | 〜から | 源-<属格> | ライマル-<属格> |
「系譜読みが、ライマルの源から名を唱えていく。」
婚姻や祖先祀りで系譜を唱える場面の文。an+属格は「上手から」の出どころを表す。系譜は源から下へ流れるものなので、始祖からの起点は es ではなく an で言うのが改まった言い方になる。
pómbar báronul dulíþan kelárai du dálor?
読み:ポンバル バーロヌル ドゥリーサン ケラーライ ドゥ ダーロル?
| pómbar | báron-ul | dul-íþ-an | kel-ár-ai | du | dálor? |
| いくつ | 本-<〜たちを> | 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 下手 | 下の国<対格> |
「樵たちは下の国へ何本下ろすのか。」
降ろし場での日常の問い。数を問う pómbar は数詞と同じく名詞の前に置き、量の名詞 báron を複数にする。ここでは目的語なので複数対格 báronul(重性なので主格と同じ形)になる。降ろし場で数えるものは硬木と決まっているので、数えるものの複数属格は省いている。数を問う語句は、目的語の名詞句ごと動詞の前に出る。人を数える問いにはこの形を使わない。
ésa lisím sélvanes séuril an lisímail.
読み:エーサ リシーン セルヴァネス セウリル アン リシーマイル。
| és-a | lis-ím | sélvan-es | séuril | an | lis-ím-ail. |
| いる-<(軽いものが)> | 書く-<〜の技・〜さ> | セルヴァン-<属格> | 美しい | 〜よりまさって | 書く-<〜の技・〜さ>-<〜らに> |
「セルヴァンの書法は、並ぶ書法の中でいちばん美しい。」
書の競い合いで勝ちの書をほめる言い方。an+同じ仲間の複数与格で最上級になる。述語の形容詞 séuril は軽性の主語 lisím に一致し、単数主格なので語尾がない。
na néulimor torárais grómais.
読み:ナ ネウリモル トラーライス グローマイス。
| na | néul-imor | torár-ais | gróm-ais. |
| <〜ない> | 好む-<我々が> | 客-<〜たちを> | 粗野な-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格> |
「我々は粗野な客を好まない。」
直説法の否定なので、na を動詞の直前に置く。形容詞は語根に強勢を残したまま、軽性・複数・対格の -ais で名詞に一致する。
lóiman lourvirárai lóurul dáunaun.
読み:ロイマン ロウルヴィラーライ ロールル ダウナウン。
| lóim-an | lourvirár-ai | lóur-ul | dáun-aun. |
| 唱える-<彼らが> | 系譜読み-<〜たちが> | 瀬-<〜たちを> | 二人-<双数の〜の・〜に> |
「系譜読みたちが、二人の瀬を唱え交わす。」
婚姻の取り決めで、両家の系譜読みが、結ばれる二人の系譜を源から一瀬ずつ読み交わす儀礼を述べた文。dáun の属格は、双数の語尾 -aun を重ねて dáunaun になる。属格は名詞 lóurul の後ろに置く。
séiran faronárai társan.
読み:セーラン ファロナーライ タルサン。
| séir-an | faronár-ai | társ-an. |
| 待つ-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | お前たち-<対格> |
「運び人たちがお前たちを待っている。」
語順は「動詞–主語–目的語」。társ の対格は、子音語幹と同じく -an をつけて társan とする。2人称複数の代名詞なので下向きか並びの話し方で、目上の人たちには使わない。
lísan lisárai dáu sáindarau, dulíþan dáun du orén.
読み:リーサン リサーライ ダウ サインダラウ、ドゥリーサン ダウン ドゥ オレーン。
| lís-an | lis-ár-ai | dáu | sáindar-au, | dul-íþ-an | dáun | du | orén. |
| 書く-<彼らが> | 書く-<〜する人>-<〜たちが> | 二 | 証文-<双数> | 下る-<〜させる>-<彼らが> | ふたつ | 下手 | 縁<対格> |
「書記たちは証文を二通書き、そのふたつを縁へ下ろす。」
後半の dáun は、前半の双数 sáindarau を受けている。dáun には性の区別がないので、軽性のものでも重性のものでも同じ形で受ける。後半では主語を省いているが、動詞の語尾から、前半と同じ書記たちが主語だとわかる。
aurélan ombára ilánai dórel.
読み:アウレーラン オンバーラ イラーナイ ドーレル。
| aur-él-an | ombára | ilán-ai | dórel. |
| 昇る-<〜だろう>-<彼らが> | 十 | 灯-<〜たちが> | 明日 |
「明日、十の灯が昇るだろう。」
星読みが年の始まりを告げるときの言い方。ombára は星座名の中にだけ残る古い形の「十」で、「そろった・満ちた」という意味を帯びる。格変化はせず、複数の ilánai を前から飾る。ilánai は a語幹 ilána の複数主格で、語根 ilán- に軽性の複数主格の語尾 -ai がついた形。動詞の前に出られる語は限られているので、時を表す dórel は文末に置く。確かでない未来なので推量法を使う。
lúin áuran ombára ilánai, dúlan kelárai du orén.
読み:ルーイン アウラン オンバーラ イラーナイ、ドゥーラン ケラーライ ドゥ オレーン。
| lúin | áur-an | ombára | ilán-ai, | dúl-an | kel-ár-ai | du | orén. |
| とき | 昇る-<彼らが> | 十 | 灯-<〜たちが> | 下る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 下手 | 縁<対格> |
「十の灯が昇ると、樵たちは縁へ下りていく。」
「〜とき」の節は lúin で始めて、主節の前に置く。ombára ilánai「十の灯」は年の始まりを告げる星の群れの名前で、ombára は数えた結果ではなく名前の一部。そのため、星を数えることの禁忌には当たらない。ilánai は語根 ilán- に複数主格の語尾 -ai がついた形。
ké lísan dalorárai térin?
読み:ケー リーサン ダロラーライ テーリン?
| ké | lís-an | dalor-ár-ai | térin? |
| <〜か> | 書く-<彼らが> | 下の国-<〜する人>-<〜たちが> | そのように |
「下の国の者たちは、ああいうふうに書くのか。」
よそから来た文字の書きぶりを見て尋ねる、はい・いいえの問い。ké は文のいちばん前に置く。térin は、離れたところで見た書き方を指す。答えるときは、動詞を繰り返して lísan か na lísan と言う。
pómbar gandérul dulíþan kelárai?
読み:ポンバル ガンデールル ドゥリーサン ケラーライ?
| pómbar | gandér-ul | dul-íþ-an | kel-ár-ai? |
| いくつ | 硬木-<〜たちを> | 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> |
「樵たちは硬木を何本下ろすのか。」
降ろし場での問い。帳簿では量の名詞 báron「本」を入れるが、会話では省くことが多い。pómbar は名詞の前に置き、名詞は複数にする。疑問の名詞句は目的語として文頭に出るので、gandérul は複数対格。
plúin dulíþan kelárai gandér?
読み:プルーイン ドゥリーサン ケラーライ ガンデール?
| plúin | dul-íþ-an | kel-ár-ai | gandér? |
| いつ | 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> |
「樵たちはいつ硬木を下ろすのか。」
疑問詞 plúin は、ほかの疑問詞と同じく動詞の前に置く。plúin は格変化しない。時制がないので、過去のことにも先のことにも使える。答えはふつう、lúin 節(「十の灯が昇ると」など)か、an nébroi「霧の前に」のような時を表す句で返す。
na lúuman aursárai séndo, lúin tóro nébro es orénos.
読み:ナ ルーマン アウルサーライ センド、ルーイン トーロ ネーブロ エス オレーノス。
| na | lúum-an | aursár-ai | séndo, | lúin | tór-o | nébro | es | orén-os. |
| <〜ない> | ご覧になる-<彼らが> | 祖先-<〜たちが> | この世<対格> | とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | から | 縁-<属格> |
「縁から霧が上がってくるとき、祖先はこの世をご覧にならない。」
霧期を恐れる理由を語る言い方。ここでの séndo は話し手のいる場所ではなく、上(天)と下(干潟・地の底)のあいだにある、人の生きる「中の世界」を指す。祖先には「見る」の尊敬の補充形 lúum- を使う。祖先は数えないので、複数はひとまとまりの「方々」の意味になる。
lúuman aursárai séndo es élvares.
読み:ルーマン アウルサーライ センド エス エルヴァレス。
| lúum-an | aursár-ai | séndo | es | élvar-es. |
| ご覧になる-<彼らが> | 祖先-<〜たちが> | この世<対格> | から | 天-<属格> |
「祖先は天からこの世をご覧になる。」
祖先祀りの詞の一句。上の世界 élvar と、中の世界 séndo が対になる。祖先の行いには尊敬の補充形 lúum- を使う。séndo は重性なので、対格も主格と同じ形になる。
méira houmár tambór kelárail ínin.
読み:メーラ ホウマール タンボール ケラーライル イーニン。
| méir-a | houmár | tambór | kel-ár-ail | ínin. |
| 与える-<(軽いものが)> | 家の主<主格> | 雑穀<対格> | 伐る-<〜する人>-<〜らに> | それぞれ |
「「家の主は、樵たちそれぞれに雑穀を分け与える。」」
炉ばたで食べ物を分ける場面。受け手を与格 íninei で言い、誰のそれぞれかを複数属格 kelárar で添える。ínin は子音語幹の軽性として変化する。
dulíþan kelárai gandér du dálor selúin.
読み:ドゥリーサン ケラーライ ガンデール ドゥ ダーロル セルーイン。
| dul-íþ-an | kel-ár-ai | gandér | du | dálor | selúin. |
| 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> | 下手 | 下の国<対格> | 今の世 |
「今の世、樵たちは硬木を下の国へ下ろしている。」
年代記の記事の書きぶり。昔(統一の前)と比べて、今の王の世のならわしを述べている。直説法には時制がないので、selúin が時代を区切る働きをする。gandér は重性なので、主格と対格が同じ形になる。
tóran faronárai es orénos telúin.
読み:トーラン ファロナーライ エス オレーノス テルーイン。
| tór-an | faron-ár-ai | es | orén-os | telúin. |
| 来る-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | から | 縁-<属格> | その時 |
「その時、運び人たちが縁から上がってきた。」
昔語りや出来事の報告で、すでに話に出た時を指す言い方。動詞には時制がないので、過去のことだとわかるのは telúin と文脈による。faronár は fáron「荷」に -ár「〜する人」がついた語。
tóran sóur faronárai es orénos.
読み:トーラン ソール ファロナーライ エス オレーノス。
| tór-an | sóur | faron-ár-ai | es | orén-os. |
| 来る-<彼らが> | 六 | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | から | 縁-<属格> |
「運び人が六人、縁から上がってくる。」
運び人のような目下の者や働き手は、数詞で数えてかまわない。目上の人は数えず、ひとまとまりの複数で言う。三以上の数詞の後ろでは、名詞は複数になる。
sénim lím kelárais.
読み:セーニン リーン ケラーライス。
| sén-im | lím | kel-ár-ais. |
| 見る-<私が> | 五 | 伐る-<〜する人>-<〜たちを> |
「樵が五人見える。」
くだけた日常会話。樵は目下の働き手なので、数詞で数えてかまわない(目上の人は数えない)。kelár は軽性の子音語幹で、複数対格は -ais になる。
lísim sóur sáindarais.
読み:リーシン ソール サインダライス。
| lís-im | sóur | sáindar-ais. |
| 書く-<私が> | 六 | 証文-<〜たちを> |
「証文を六通書く。」
市での商人の会話。sóur「六」の後ろの名詞は複数になる。sáindar は軽性の子音語幹で、複数対格は -ais になる。帳簿では量の名詞を添えるが、会話では省くのがふつう。
faronéran faronárai nél fáronul du orén.
読み:ファロネーラン ファロナーライ ネール ファーロヌル ドゥ オレーン。
| faron-ér-an | faron-ár-ai | nél | fáron-ul | du | orén. |
| 荷-<〜でする>-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 七 | 荷-<〜たちを> | 下手 | 縁<対格> |
「運び人たちは荷を七つ担いで縁へ下りる。」
崖道の荷運びを言う文。働き手は数えてもよいが、ここで数えているのは荷のほう。fáron は重性なので、複数対格は -ul で、主格と同じ形になる。
lísa lisár ánþa rólanais sóndelar.
読み:リーサ リサール アンサ ローラナイス ソンデラル。
| lís-a | lis-ár | ánþa | rólan-ais | sóndel-ar. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 八 | 巻-<〜たちを> | 書物-<〜らの> |
「書記は書物を八巻書き写す。」
書物は量の名詞 rólan「巻」で数える。数詞は量の名詞にかかり、数えるもの(書物)は複数属格にして後ろに置く。rólan は軽性なので、複数対格は -ais。時制がないので、「書き写している」とも「書き写した」とも訳せる。雨期に書を写す習わしを背景にした文。
ké sénes ánþa kelárais?
読み:ケー セーネス アンサ ケラーライス?
| ké | sén-es | ánþa | kel-ár-ais? |
| <〜か> | 見る-<あなたが> | 八 | 伐る-<〜する人>-<〜たちを> |
「樵が八人見えるか。」
文頭に ké を置いた、はい・いいえの問い。2人称を使っているので、同じ段か下の相手に向けた話し方になる。樵は働き手なので、人数を数えてかまわない(目上の人は数えない)。答えるときは動詞を繰り返して sénim、または na sénim と言う。
rímban brándalai némoran.
読み:リンバン ブランダライ ネーモラン。
| rímb-an | brándal-ai | némor-an. |
| 物のように扱う-<彼らが> | 司-<〜たちが> | <我々>-<対格> |
「お役所の連中は、俺たちを物のように扱う。」
運び人や森の民が、役所への不満を言う決まった言い方。人を数で扱うことは、相手を「下げる」行いとされる。そのため、炉や人数を数えて税を取ることへの反感が、この動詞で言い表される。
lísan lisárai slúumbar lénar sáindarar.
読み:リーサン リサーライ スルーンバル レーナル サインダラル。
| lís-an | lis-ár-ai | slúumbar | lén-ar | sáindar-ar. |
| 書く-<彼らが> | 書く-<〜する人>-<〜たちが> | 一万 | 枚-<〜らの> | 証文-<〜らの> |
「書記たちは証文を一万枚書く。」
書の司の仕事の多さを言う、帳簿や報告で使う言い方。slúumbar は slúun・sénþar と同じく名詞として働き、量の名詞 lén「枚」を複数属格でとる。その lén がさらに証文 sáindar を複数属格でとるので、属格が二つ続く。
mé rimbésa ausenárais!
読み:メー リンベーサ アウセナーライス!
| mé | rimb-és-a | au-sen-ár-ais! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 数える-<〜すべし>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>-<〜たちを> |
「目付の方々を数えてはならぬ。」
目上の人を数で数えることを戒める言い方。数えることは相手を物のように扱い、「下げる」行いとされる。当為法で主語を言わないので「人は〜すべし」という一般の主語になり、軽性の形をとる。強勢は -és- に移る。同じ理屈で、星を数えることも禁じられる。
ké lísa lisár fáir lénais sáindarar?
読み:ケー リーサ リサール ファイル レーナイス サインダラル?
| ké | lís-a | lis-ár | fáir | lén-ais | sáindar-ar? |
| <〜か> | 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | 四 | 枚-<〜たちを> | 証文-<〜らの> |
「書記は証文を四枚書くのか。」
同じ段か下の段の相手への問い。lén は軽性の子音語幹で、三以上の数の後ろでは複数になる。ここでは目的語なので、複数対格の lénais になる。数えるもの sáindar は複数属格。目上の人に尋ねるときは、ké を使わず推量法で尋ねる。
tóran pómbarin faronárai es orénos.
読み:トーラン ポンバリン ファロナーライ エス オレーノス。
| tór-an | pómbarin | faronár-ai | es | orén-os. |
| 来る-<彼らが> | いくつか | 運び人-<〜たちが> | から | 縁-<属格> |
「縁から運び人が何人か上がってくる。」
pómbarin は数詞と同じく名詞の前に置き、後ろの名詞は複数にする。運び人は働き手なので数えてよい。目上の人には、はっきりしない数であっても pómbarin は使えない。その場合は fléiran ausenárai「目付の方々がお出ましになる」のように、ひとまとまりの複数で言う。
lúin glǘno véinor, tóran faronárai snírai séndo.
読み:ルーイン グリューノ ヴェーノル、トーラン ファロナーライ スニーライ センド。
| lúin | glǘn-o | véinor, | tór-an | faronár-ai | snír-ai | séndo. |
| とき | 凍る-<(重いものが)> | 湖<主格> | 来る-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | 少ない-<〜たちが> | ここ |
「湖が凍るころには、ここへ来る運び人は少なくなる。」
lúin の節は主節の前に置く。湖 véinor は地の上の水なので重性で、動詞は -o をとる。主節の主語 faronárai は軽性・複数・主格で、snírai はそれに一致する。運び人のような働き手は数えてよいので、snír で多い少ないを言ってもかまわない。凍りの頃の崖道を言う文。
dulíþan kelárai déral fáronos sórel.
読み:ドゥリーサン ケラーライ デーラル ファーロノス ソーレル。
| dul-íþ-an | kel-ár-ai | déral | fáron-os | sórel. |
| 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 半分<対格> | 荷-<属格> | 今日 |
「今日、樵たちは荷の半分を下ろす。」
何の半分かは属格(fáronos)で後ろに示す。dulíþ- は dúl-「下る」の使役で「下ろす」。直説法なので -íþ- が強勢をとる。sórel のような時の語は文末に置く。降ろし場で、その日の吊り下ろしの段取りを言う文。
gélan faronárai du orén dáu fréimau sórel.
読み:ゲーラン ファロナーライ ドゥ オレーン ダウ フレーマウ ソーレル。
| gél-an | faronár-ai | du | orén | dáu | fréim-au | sórel. |
| 行く-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | 下手 | 縁<対格> | 二 | 度回-<双数> | 今日 |
「運び人たちは今日、縁へ二度下りる。」
崖道の仕事ぶりを述べる日常の文。回数は、数詞と fréim の対格で、動詞を修飾する副詞のように言う(道のりの対格と同じ使い方)。dáu の後ろなので双数の fréimau になる。fréim は軽性の子音語幹として変化する。
lísa lisár téir rólanais sóndelar sórel.
読み:リーサ リサール テール ローラナイス ソンデラル ソーレル。
| lís-a | lis-ár | téir | rólan-ais | sóndel-ar | sórel. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 三 | 巻-<〜たちを> | 書物-<〜らの> | 今日 |
「書記は今日、書物を三巻書く。」
書の司の勤めを述べる直説法の文。時制がないので、「書く」とも「書いた」とも訳せる。量の名詞は「数詞+量の名詞+数えるものの複数属格」の形をとる。数詞 téir の後ろなので rólan は複数になり、目的語なので複数対格 -ais をとる。書物 sóndel は複数属格 sóndelar で後ろに置く。
pómbar rólanais sóndelar lísers?
読み:ポンバル ローラナイス ソンデラル リーセルス?
| pómbar | rólan-ais | sóndel-ar | lís-ers? |
| いくつ | 巻-<〜たちを> | 書物-<〜らの> | 書く-<あなたがたが> |
「お前たちは書物を何巻書くのか。」
学び舎で、書き手たちに書写の量を尋ねる下向きの問い。疑問詞 pómbar を含む名詞句全体が動詞の前に出る。目的語なので量の名詞は複数対格 rólanais になる。書物は人ではないので、数を尋ねても無礼にならない。
méirim téir kéulais tásei.
読み:メーリン テール ケウライス ターセイ。
| méir-im | téir | kéul-ais | tás-ei. |
| 与える-<私が> | 三 | 頭-<〜たちを> | <あなた>-<与格> |
「お前に(家畜を)三頭やろう。」
村や牧での、目下か同輩に向けたくだけた言い方(2人称の tás を使う)。何を数えているかが場面から明らかなので、数えるものの複数属格を省き、量の名詞 kéul だけで言っている。数詞 téir の後ろなので複数、目的語なので複数対格 kéulais になる。語順は動詞–目的語–与格(受け手)。
lúin kélan kelárai gandér, loimésa ráuvan loimán téir fréimais.
読み:ルーイン ケーラン ケラーライ ガンデール、ロイメーサ ラウヴァン ロイマーン テール フレーマイス。
| lúin | kél-an | kel-ár-ai | gandér, | loim-és-a | ráuvan | loim-án | téir | fréim-ais. |
| とき | 伐る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> | 唱える-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 森の巫<主格> | 詞-<対格> | 三 | 度回-<〜たちを> |
「樵たちが硬木を伐るときは、森の巫が詞を三度唱えるべし。」
降ろし場の碑に刻まれるような、儀礼の作法を定める当為法の文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。主節では主語を言っているので、それに一致して3人称単数・軽性になる。強勢は当為法の -és- に移り、語根の ´ は消える。三度は téir fréimais(複数対格)。
slúun rólanar sóndelar, ombár ombár fréimai, ombár fréimai.
読み:スルーン ローラナル ソンデラル、オンバール オンバール フレーマイ、オンバール フレーマイ。
| slúun | rólan-ar | sóndel-ar, | ombár | ombár | fréim-ai, | ombár | fréim-ai. |
| 千 | 巻-<〜らの> | 書物-<〜らの> | 十 | 十 | 倍-<〜たちが> | 十 | 倍-<〜たちが> |
「書物千巻。十の十倍、そのまた十倍。」
荷札や帳簿の、数の念押し(freimvirá)の定型。動詞のない名詞句を並べる。千 slúun は量の名詞 rólan を複数属格でとり、rólan がさらに書物を複数属格でとるので、属格が二つ続く。念押しは「掛けられる数+掛ける数+fréim」の順で言い、fréim の数は掛ける数に合わせる(ombár の後ろなので複数)。干潟の千(sélu)との取り違えを防ぐための言い換えで、度量衡の碑の「千とは、十を十度、それを十度」と同じ考えに立つ。
dulíþes nóumo némes un torárail.
読み:ドゥリーセス ノーモ ネーメス ウン トラーライル。
| dul-íþ-es | nóumo | ném-es | un | torár-ail. |
| 下る-<〜させる>-<あなたが> | 体面<対格> | <私>-<属格> | 内に | 客-<〜らに> |
「お前は客たちの前で、私の顔をつぶした。」
相手をとがめる言い方。慣用句 nóumo dúlo の動詞を使役の dulíþ-「下ろす」に変えて、「人の面目を失わせる」の意味にしている。2人称の直説法を使っているので、下向きか、同じ段の相手への言い方になる。
dúlan faronárai du múndo orénos.
読み:ドゥーラン ファロナーライ ドゥ ムンド オレーノス。
| dúl-an | faronár-ai | du | múndo | orén-os. |
| 下る-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | 下手 | 出口<対格> | 縁-<属格> |
「運び人たちは縁の口へ下りていく。」
múndo orénos「縁の口」は、崖道が崖の麓に開く下の口を指す。縁の市はここに立つ。du+対格で「下手へ」。属格の orénos は名詞の後ろに置く。
auríþan ólmarai kréinul an þráin.
読み:アウリーサン オルマライ クレーヌル アン スライン。
| aur-íþ-an | ólmar-ai | kréin-ul | an | þráin. |
| 昇る-<〜させる>-<彼らが> | 年長者-<〜たちが> | 遺骨-<〜たちを> | 上手 | 峰<対格> |
「年長者たちが遺骨を上手の峰へ運び上げる。」
葬送の描写。火葬のあとの骨は、北の高みや丘の上の納骨所に収める。使役の auríþ-「上げる」と an+対格「上手へ」を組み合わせて、骨を高い所へ送る動きを言う。
lúin glóira aldár áuren, snéiman lisárai.
読み:ルーイン グロイラ アルダール アウレン、スネーマン リサーライ。
| lúin | glóir-a | aldár | áur-en, | snéim-an | lis-ár-ai. |
| とき | お越しになる-<(軽いものが)> | 座<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | 礼をする-<彼らが> | 書く-<〜する人>-<〜たちが> |
「高き座がお越しになると、書記たちは礼をする。」
目上の人に頭を下げて敬意を示す意味。lúin で始まる時の節は主節の前に置く。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。宮廷の作法を記した文の言い方。
ké vríners ólmarais?
読み:ケー ヴリーネルス オルマライス?
| ké | vrín-ers | ólmar-ais? |
| <〜か> | ないがしろにする-<あなたがたが> | 年長者-<〜たちを> |
「お前たちは年長者をないがしろにするのか。」
転じて、目上の人や順序を飛び越えて軽んじる意味。ké は文のいちばん前に置く。年長の者が若い者を叱るときの言い方。
vóila lourvirár þeláis brélar sélvanes.
読み:ヴォイラ ロウルヴィラール セライス ブレーラル セルヴァネス。
| vóil-a | lourvirár | þel-áis | brél-ar | sélvan-es. |
| 読む-<(軽いものが)> | 系譜読み<主格> | 名前-<〜たちを> | きょうだい-<〜らの> | セルヴァン-<属格> |
「系譜読みが、セルヴァンのきょうだいたちの名を読み上げる。」
婚姻の取り決めで、系譜の巻を読み交わす場面の文。名詞の後ろに属格を二つ重ねて、「名前・きょうだいたちの・セルヴァンの」の順に並べる。書かれた名前を読むことは禁忌に当たらない。
klóima dulóur némes lisáis es lisáres.
読み:クロイマ ドゥロール ネーメス リサイス エス リサーレス。
| klóim-a | dulóur | ném-es | lis-áis | es | lis-ár-es. |
| 学ぶ-<(軽いものが)> | 子<主格> | <私>-<属格> | 字-<〜たちを> | から | 書く-<〜する人>-<属格> |
「私の子は書記から字を学んでいる。」
日常会話の文。誰から学ぶかは「es+属格」(〜から)で言う。時制がないので、「学んでいる」とも「学んだ」とも訳せる。
lóima lourvirár þeláis aursárar an fóndaros.
読み:ロイマ ロウルヴィラール セライス アウルサーラル アン フォンダロス。
| lóim-a | lourvirár | þel-áis | aursár-ar | an | fóndar-os. |
| 唱える-<(軽いものが)> | 系譜読み | 名前-<〜たちを> | 祖先-<〜らの> | 上手 | 源-<属格> |
「系譜読みは、源から祖先たちの名を唱えていく。」
婚姻の取り決めや祖先祀りで、系譜を読み上げる場面を言う文。lourvirár は lóur「瀬」+vír-「言う」+-ár「〜する人」からできた語で、軽性の子音語幹。an+属格で「上手から」。系譜は源から一瀬ずつ下へ向かって唱えるので、起点を an fóndaros で示す。
lúin áura álmar, émbelimor aursárais.
読み:ルーイン アウラ アルマル、エンベリモル アウルサーライス。
| lúin | áur-a | álmar, | émbel-imor | aursár-ais. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 白月 | 祀る-<我々が> | 祖先-<〜たちを> |
「白月が昇ると、私たちは祖先を祀る。」
白月の満月の夜に祖先を祀る習わしを言う文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。aursár は人を指すので軽性の子音語幹で、複数対格は -ais。祖先は「数えない」ものなので、数詞をつけず複数でひとまとまりに言う。
fíndan aursárai viráis gléinais.
読み:フィンダン アウルサーライ ヴィライス グレーナイス。
| fínd-an | aursár-ai | vir-áis | gléin-ais. |
| 聞く-<彼らが> | 祖先-<〜たちが> | 言葉-<〜たちを> | 清い-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格> |
「祖先たちは、清い言葉を聞き届ける。」
整った言葉は息となって上へ昇り、天の祖先に届くという信仰を表す、格言のような一句。主語の複数主格 aursárai に合わせて、動詞は3人称複数の -an をとる。形容詞 gléin は、修飾する viráis に合わせて軽性・複数・対格の -ais で一致する。
émbelau véiranau aursárais.
読み:エンベラウ ヴェーラナウ アウルサーライス。
| émbel-au | véiran-au | aursár-ais. |
| 祀る-<双数> | 夫婦-<双数> | 祖先-<〜たちを> |
「夫婦は祖先を祀る。」
双数の véiranau は、数詞 dáu をつけなくても「ひと組の夫婦」を表す。夫婦は、双数がとくに好まれる組み合わせの一つ。双数の動詞の語尾 -au は、人称も性も区別しない。
lúin áura endríña an þráin, léuna aursárail.
読み:ルーイン アウラ エンドリーニャ アン スライン、レウナ アウルサーライル。
| lúin | áur-a | endríña | an | þráin, | léun-a | aursár-ail. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 未成年の者<主格> | 上手 | 峰<対格> | 申す-<(軽いものが)> | 祖先-<〜らに> |
「未成年の者は峰に登ると、祖先に言葉を申し上げる。」
成人の儀の次第を述べる書き言葉の文。主節では主語を言っていないが、動詞の語尾から、lúin の節と同じ者が主語だとわかる。祖先に向けた言葉なので、謙譲の補充形 léun- を使う。この儀を終えると成名が与えられ、endríña ではなくなる。
víran dalorárai ré brúuma naþrenár es élvares.
読み:ヴィーラン ダロラーライ レー ブルーマ ナスレナール エス エルヴァレス。
| vír-an | dalorár-ai | ré | brúum-a | naþrenár | es | élvar-es. |
| 言う-<彼らが> | 下の国の者-<〜たちが> | <〜と(節)> | 落ちる-<(軽いものが)> | 異邦人<主格> | から | 天-<属格> |
「下の国の者たちは、異邦人が天から落ちてきたと言う。」
干潟の言い伝えを、高原の人が伝え聞いた形で言う文。ré の節は主節の後ろに置く。高原の世界観では、上から落ちてくる者は流れ星と同じく不吉なものとされるので、この種の話は泥の国の迷信として語られることが多い。es+属格で方向を問わない「〜から」。
lísa lisár þeláis houmárar.
読み:リーサ リサール セライス ホウマーラル。
| lís-a | lis-ár | þel-áis | houmár-ar. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | 名前-<〜たちを> | 世帯主-<〜らの> |
「書記は世帯主たちの名を書き記す。」
税の取り立ての記録を述べる文。人は数えずに炉(世帯)を数えるので、役所の記録では世帯主の名を一つずつ書き並べる。名詞句は「名詞+属格」の順で、þeláis houmárar は「名・世帯主たちの」。
meirésan houmárai meiró tambóros brándalei.
読み:メイレーサン ホウマーライ メイロー タンボーロス ブランダレイ。
| meir-és-an | houmár-ai | meiró | tambór-os | brándal-ei. |
| 与える-<〜すべし>-<彼らが> | 世帯主-<〜たちが> | 税<対格> | 雑穀-<属格> | 司-<与格> |
「世帯主は、雑穀の税を司に納めるべし。」
法典の条文の文体。当為法 -és- で「〜すべし」を表す。強勢が接尾辞に移るので、語根 méir- の ´ は消える。受け手の司は与格 -ei で表す。
rainíþa ólmar þeláis gandéros kelárail.
読み:ライニーサ オルマル セライス ガンデーロス ケラーライル。
| rain-íþ-a | ólmar | þel-áis | gandér-os | kel-ár-ail. |
| 知る-<〜させる>-<(軽いものが)> | 長老<主格> | 名前-<〜たちを> | 硬木-<属格> | 伐る-<〜する人>-<〜らに> |
「長老は樵たちに硬木の呼び名を教える。」
村の暮らしを述べる文。硬木は、心材の色、沈み方、樹齢、伐ったあとの状態で何通りにも呼び分けられ、その呼び名は村の長老が受け継いで伝える。rainíþ-「教える」は ráin-「知る」に使役の -íþ- がついた形で、教わる人を与格、教える内容を対格でとる。
na vóila naþrenár té lisáis némores.
読み:ナ ヴォイラ ナスレナール テー リサイス ネーモレス。
| na | vóil-a | naþrenár | té | lis-áis | némor-es. |
| <〜ない> | 読む-<(軽いものが)> | 異邦人<主格> | あの<軽性> | 字-<〜たちを> | <我々>-<属格> |
「あの異邦人は我々の字を読めない。」
日常の会話。時制も「できる」の語形もないので、「読まない」と「読めない」は文脈で決まる。na は動詞の直前に置く。名詞句は「名詞+指示詞」「名詞+属格」の順。
faronéran faronárai fáronul du orén.
読み:ファロネーラン ファロナーライ ファーロヌル ドゥ オレーン。
| faronér-an | faronár-ai | fáron-ul | du | orén. |
| 担ぐ-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | 荷-<〜たちを> | 下手 | 縁<対格> |
「運び人たちが荷を担いで縁へ下っていく。」
乾風期の崖道のありふれた光景を言う文。faronár は軽性の子音語幹なので、複数主格は -ai。fáron「荷」は重性なので、複数対格は -ul。du+対格で下手(南)への方向を表す。縁の orén は重性なので、主格と対格が同じ形になる。
tóran téir faronárai es orénos.
読み:トーラン テール ファロナーライ エス オレーノス。
| tór-an | téir | faronár-ai | es | orén-os. |
| 来る-<彼らが> | 三 | 運び人-<〜たちが> | から | 縁-<属格> |
「縁から運び人が三人上がってくる。」
運び人のような働き手は、数詞で人数を数えてよい。目上の人を数えるのは失礼なので、このような言い方はしない。三以上の数詞の後ろでは名詞が複数になる。es+属格で、方向を問わない「〜から」を表す。
lúin áura álmar, émbelimor aursárais.
読み:ルーイン アウラ アルマル、エンベリモル アウルサーライス。
| lúin | áur-a | álmar, | émbel-imor | aursár-ais. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 白月<主格> | 祀る-<我々が> | 祖先-<〜たちを> |
「白月が昇ると、我々は祖先を祀る。」
家々の祖先祀りを説明する文。白月は見守る祖先のまなざしの象徴とされ、満ちた夜に祖先を祀る。lúin の節は主節の前に置く。月は軽性なので、動詞は -a で受ける。
ráuman faronárai tráumoi véinoros.
読み:ラウマン ファロナーライ トラウモイ ヴェーノロス。
| ráum-an | faronár-ai | tráum-oi | véinor-os. |
| 歩く-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | 渡り氷-<与格> | 湖-<属格> |
「「運び人たちが、湖の厚い氷の上を歩いて渡る。」」
湖が厚く凍ると、氷の上が道にも市にもなる。tráumo は道のりの対格。重性o語幹なので、主格と対格が同じ形になる。
hóina selvá an élvaran, an aursárais.
読み:ホイナ セルヴァー アン エルヴァラン、アン アウルサーライス。
| hóin-a | selvá | an | élvar-an, | an | aursár-ais. |
| 帰る-<(軽いものが)> | 息<主格> | 上手 | 天-<対格> | 上手 | 祖先-<〜たちを> |
「息は天へ、祖先たちのもとへ帰っていく。」
死と魂についての教えを説く書物によく出る文。前置詞句を二つ並べて、天と祖先が同じ場所であることを示している。魂が天へ行くことを、「行く」ではなく hóin-「帰る」で言うのが決まった言い方である。
lúin brúuma réina, ésa fléura du aursárail.
読み:ルーイン ブルーマ レーナ、エーサ フレウラ ドゥ アウルサーライル。
| lúin | brúum-a | réina, | és-a | fléura | du | aursár-ail. |
| とき | 落ちる-<(軽いものが)> | 雨<主格> | いる-<(軽いものが)> | 天の屋根<主格> | 下手 | 祖先-<〜らに> |
「雨が降るときも、天の屋根は祖先の方々の下にある。」
雨期に星が見えなくても不安に思わなくてよい、と説くときの決まった言い方。du+与格で「〜の下手に」。天の屋根が祖先の下にあるということは、祖先は屋根の上にいて、変わらず下界を聞いているということになる。
an éndrail snélo, du aursárail fléura.
読み:アン エンドライル スネーロ、ドゥ アウルサーライル フレウラ。
| an | éndr-ail | snélo, | du | aursár-ail | fléura. |
| 上手 | 人-<〜らに> | 屋根<主格> | 下手 | 祖先-<〜らに> | 天の屋根<主格> |
「人の上には家の屋根、祖先の下には天の屋根。」
雨期の詩合わせでよく引かれる、動詞のない詩句。an と du、家の屋根(重性の snélo)と天の屋根(軽性の fléura)を対にしている。人は家の屋根の下に、祖先は天の屋根の上にいる、という縦の並びを詠んでいる。
émbelan faronárai krámbo.
読み:エンベラン ファロナーライ クランボ。
| émbel-an | faronár-ai | krámbo. |
| 祀る-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | 崖山羊<対格> |
「運び人たちは崖山羊を祀る。」
崖道の運び人の信仰を述べる文。krámbo は動物なのに重性o語幹に属する古い語で、主格と対格が同じ形になる。そのため、目的語だとわかるのは VSO の語順(動詞のすぐ後ろの faronárai が主語)による。
lúin glǘno véinor, tóran dráunai du véinor.
読み:ルーイン グリューノ ヴェーノル、トーラン ドラウナイ ドゥ ヴェーノル。
| lúin | glǘn-o | véinor, | tór-an | dráun-ai | du | véinor. |
| とき | 凍る-<(重いものが)> | 湖<主格> | 来る-<彼らが> | 狼-<〜たちが> | 下手 | 湖<対格> |
「湖が凍ると、狼たちが湖へ下りてくる。」
湖畔の村で凍りの頃について言う文。lúin の節は主節の前に置く。dráun は軽性の子音語幹で、複数主格は dráunai。du+対格で「下手へ」。véinor は重性なので、主格と対格が同じ形になる。
ái, ésa tókal an lónei sé.
読み:アイ、エーサ トーカル アン ローネイ セー。
| ái, | és-a | tókal | an | lón-ei | sé |
| おや | いる-<(軽いものが)> | きつつき<主格> | 上手 | 柱の木-<与格> | この<軽性> |
「おや、この柱の木の上のほうにきつつきがいる。」
森の中でふと口にするひとこと。「〜がいる」は「és-+主語+場所」の形で言う。an+与格は「〜の上手で」という意味で、ここでは木の上のほうの位置を表す。生えている柱の木は軽性なので、与格の語尾は -ei、指示詞は軽性の sé になる。指示詞は格によって形が変わらない。きつつきは、木の中が空洞か詰まっているかを知る鳥とされている。
faronéran faronárai árnelan só du orén.
読み:ファロネーラン ファロナーライ アルネラン ソー ドゥ オレーン。
| faron-ér-an | faron-ár-ai | árnel-an | só | du | orén. |
| 荷-<〜でする>-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 木-<対格> | この<重性> | 下手 | 縁<対格> |
「運び人たちがこの材木を縁へ担いでいく。」
faronér-「担ぐ」は fáron「荷」に、名詞から動詞を作る -ér- をつけた語。faronár「運び人」は同じ語に -ár「〜する人」をつけた語。伐られた木なので、名詞は軽性の対格 árnelan のまま、指示詞は重性の só で一致させる。名詞の語尾と一致の性が食い違うのは、伐った木の決まった扱い方。
tilésa lisáis flaindélei, mé tilésa gandér.
読み:ティレーサ リサイス フラインデーレイ、メー ティレーサ ガンデール。
| til-és-a | lis-áis | flaindél-ei, | mé | til-és-a | gandér. |
| 彫る-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 字-<〜たちを> | 版の木-<与格>, | <禁止・願いの打ち消し> | 彫る-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 硬木<対格> |
「字は版の木に彫るべし。硬木は彫らぬこと。」
彫り師の作法を説く教えの言葉で、法典や碑文と同じ当為法を使う。主語を言わないので「人は〜すべし」の意味になり、動詞は軽性の -a をとる。flaindél は軽性の子音語幹なので与格は -ei。後半の gandér は重性なので、主格と対格が同じ形のまま目的語になる。言葉は上へ昇るもので、版の木はそれを載せる木、硬木は下へ行く木なので彫らない、という考えを述べた文。
þóran planélai bróusai or flaindélail.
読み:ソーラン プラネーライ ブローサイ オル フラインデーライル。
| þór-an | planél-ai | bróus-ai | or | flaindél-ail. |
| 立つ-<彼らが> | 白樹皮の木-<〜たちが> | 多い-<〜たちが> | 日の出側 | 版の木-<〜らに> |
「版の木々の日の出側に、白樹皮の木がたくさん立っている。」
森の道案内や土地の説明に使う言い方。方角は絶対方位で言い、or+与格で「〜の日の出側に」を表す。生えている木は軽性なので、planél の複数主格は -ai になり、形容詞 bróus も軽性の複数主格 -ai で一致する。版の木も軽性なので、複数与格は -ail になる。
táulan faronárai drúmo ré noiréndan.
読み:タウラン ファロナーライ ドルーモ レー ノイレンダン。
| tául-an | faronár-ai | drúmo | ré | noir-énd-an. |
| 取る-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | 苔<対格> | <〜と(節)> | 眠る-<〜しますように>-<彼らが> |
「運び人たちは、眠るために苔を集める。」
崖道の野宿を語る文。苔は寝具や家のすき間の詰め物に使われる。drúmo は重性o語幹なので、対格は主格と同じ形になる。目的の「〜するために」は ré+願望法で表す。ここでの願望法は丁寧さではなく、「そうなってほしいこと」を表す。
lúin hóinan faronárai, manélan.
読み:ルーイン ホイナン ファロナーライ、マネーラン。
| lúin | hóin-an | faronár-ai, | man-él-an. |
| とき | 帰る-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | 食事をとる-<〜だろう>-<彼らが> |
「運び人たちが戻ったら、食事にするだろう。」
lúin で始まる時の節を主節の前に置いている。主節は推量法で、これから先のことを言う。推量法の -él- には強勢があり、語根の強勢を奪う(mán- → manélan)。主節の主語は、語尾から時の節と同じ運び人たちだとわかるので言わない。
méiran ólmarai kailó kelárail.
読み:メーラン オルマライ カイロー ケラーライル。
| méir-an | ólmar-ai | kailó | kel-ár-ail. |
| 与える-<彼らが> | 年長者-<〜たちが> | 乾酪<対格> | 伐る-<〜する人>-<〜らに> |
「年長者たちが樵たちに乾酪を与える。」
主語が複数なので、動詞は3人称複数の -an をとる。語順は動詞–主語–目的語–与格(受け手)。受け手の kelár「樵」は軽性の子音語幹で、複数与格は -ail。kailó「乾酪」は重性o語幹の名詞で、対格も主格と同じ形。
kráilir trúndo, faronárai.
読み:クライリル トルンド、ファロナーライ。
| kráil-ir | trúndo, | faronár-ai. |
| つかんで離さない-<皆で〜せよ> | 杭<対格> | 運び人-<〜たちが> |
「杭につかまれ、運び人たち。」
崖道や降ろし場で、風や凍った足場のときに掛ける下向きの命令。2人称複数の命令法 -ir を使う。日常では呼格を使わず、呼びかける相手の名詞を読点で区切って文末に置く。
bróla lisár virán aursárail.
読み:ブローラ リサール ヴィラーン アウルサーライル。
| bról-a | lis-ár | vir-án | aursár-ail. |
| 詩を作る-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 言葉-<対格> | 祖先-<〜らに> |
「書記が祖先に捧げる詩を作る。」
祖先に詩を捧げる習わしを言う文。virá を目的語にとると「詩を作る」の意味になる。捧げる相手は与格で示す。
gélan kelárai or véinor dórel.
読み:ゲーラン ケラーライ オル ヴェーノル ドーレル。
| gél-an | kel-ár-ai | or | véinor | dórel. |
| 行く-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 日の出側 | 湖<対格> | 明日 |
「明日、樵たちは日の出側の湖へ行く。」
時制の語形はないので、未来のことでも直説法で言い切れる。確かでなければ推量法 geléla などを使う。東西の移動は or(日の出側)・vel(日の入り側)+対格で表す。véinor は重性で、対格でも形が変わらない。
drénan dubrélai némes an dún sórel.
読み:ドレーナン ドゥブレーライ ネーメス アン ドゥーン ソーレル。
| drén-an | dubrél-ai | ném-es | an | dún | sórel. |
| 参る-<彼らが> | 弟妹-<〜たちが> | <私>-<属格> | 上手 | 丘<対格> | 今日 |
「今日、私の弟たちが丘の上へ参ります。」
話し手自身だけでなく、身内の行き先を目上の人に告げるときにも謙譲の drén- を使う。an+対格で「上手へ」。丘の上は身分の高い家の場所なので、丘へ上がる身内を低めて言う。
rainíþa ólmar sóumbo kelárail.
読み:ライニーサ オルマル ソーンボ ケラーライル。
| rain-íþ-a | ólmar | sóumbo | kel-ár-ail. |
| 知る-<〜させる>-<(軽いものが)> | 年長者<主格> | きのこ<対格> | 伐る-<〜する人>-<〜らに> |
「年長者が樵たちに、食べられるきのこを教える。」
きのこの見分け方は村の年長者が受け継ぐ知識で、この文はそれを伝える場面を表す。語順は動詞–主語–目的語–与格(受け手)。rainíþ-「教える」は ráin-「知る」に使役の -íþ- がついた語で、強勢は -íþ- に移る。
faronerélan faronárai sáko es orénos dórel.
読み:ファロネレーラン ファロナーライ サーコ エス オレーノス ドーレル。
| faroner-él-an | faron-ár-ai | sáko | es | orén-os | dórel. |
| 運ぶ-<〜だろう>-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 塩<対格> | から | 縁-<属格> | 明日 |
「明日、運び人たちが縁から塩を運んでくるだろう。」
これから先のことは推量法 -él- で言う。強勢は -él- に移り、-ér- の ´ は消える。3人称複数の語尾 -an は性を区別しない。塩 sáko は干潟から来る重性の名詞で、上げ荷の代表である。es+属格で、方向を問わない「〜から」を表す。
lúin glóira ausenár, þóran faronárai.
読み:ルーイン グロイラ アウセナール、ソーラン ファロナーライ。
| lúin | glóir-a | au-sen-ár, | þór-an | faron-ár-ai. |
| とき | お越しになる-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人> | 立つ-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> |
「目付殿がお越しになると、運び人たちは立ち上がる。」
lúin で始まる「〜とき」の節を主節の前に置いている。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。þór- は「立っている」状態と「立ち上がる」動作の両方を表し、時制がないので、どちらの意味かは文脈で決まる。
lúin tóro nébro, ráuman faronárai du orén.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ラウマン ファロナーライ ドゥ オレーン。
| lúin | tór-o | nébro, | ráum-an | faron-ár-ai | du | orén. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | 歩く-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 下手 | 縁<対格> |
「霧が来ると、運び人たちは縁のほうへ歩いていく。」
lúin の節を主節の前に置いている。霧 nébro は重性o語幹なので、動詞は -o をとる。行き先は du+対格「下手へ」で言う。高原語の移動の言い方では、上るのか下るのかをかならず言い分ける。
lúin ráumsan faronárai téir lóurul, hélan.
読み:ルーイン ラウンサン ファロナーライ テール ロールル、ヘーラン。
| lúin | ráums-an | faron-ár-ai | téir | lóur-ul, | hél-an. |
| とき | 旅をする<〜し終えた>-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 三 | 瀬-<〜たちを> | 座る-<彼らが> |
「瀬を三つたどり終えると、運び人たちは腰を下ろす。」
ráum- の語根は二重母音をもつので、完了相は -s- を足して ráums- にする。téir lóurul は、どれだけの道のりをたどったかを表す道のりの対格で、téir「三」の後ろの重性名詞は複数 -ul になる。川沿いの道を、瀬をひとつずつ数えながら進む言い方。
léimsan aursárai sárvo ré mé duliþésa fáron du dálor.
読み:レーンサン アウルサーライ サルヴォ レー メー ドゥリセーサ ファーロン ドゥ ダーロル。
| léims-an | aursár-ai | sárvo | ré | mé | dul-iþ-és-a | fáron | du | dálor. |
| 据える<〜し終えた>-<彼らが> | 祖先-<〜たちが> | 禁忌<対格> | <〜と(節)> | <禁止・願いの打ち消し> | 下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 荷<対格> | 下手 | 下の国<対格> |
「祖先たちは、下の国へ荷を落としてはならぬという禁忌を定めた。」
ré の後ろの節は当為法を保ち、mé で否定している。主語を言わない当為法は「人は〜すべし」の意味で、軽性の -a をとる。強勢は -és- に移る。崖から物を落としてはいけない、という禁忌のいわれを語る文。
lúin émbelimor aursárais, flúunimor nóumo.
読み:ルーイン エンベリモル アウルサーライス、フルーニモル ノーモ。
| lúin | émbel-imor | aursár-ais, | flúun-imor | nóumo. |
| とき | 祀る-<我々が> | 祖先-<〜たちを> | 清める-<我々が> | 顔<対格> |
「祖先を祀るとき、我々は顔を清める。」
lúin の節を主節の前に置いている。祀りのための清めは、ふつう軒で集めた雨水で行う。体の部分 nóumo「顔」は重性o語幹なので、対格も同じ形になる。
bruumíro fáron es orénos, droumélan faronárai.
読み:ブルーミーロ ファーロン エス オレーノス、ドロウメーラン ファロナーライ。
| bruum-ír-o | fáron | es | orén-os, | droum-él-an | faron-ár-ai. |
| 落ちる-<もし〜なら>-<(重いものが)> | 荷<主格> | から | 縁-<属格> | 嘆く-<〜だろう>-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> |
「縁から荷が落ちれば、運び人たちは嘆くだろう。」
条件の節は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけで作る。仮定法の -ír- が強勢をとるので、語根の ´ は消えて bruumíro になる。崖から物が落ちることは忌まれるので、崖道の人々は口にするのを嫌う言い方でもある。
lúin tóro nébro, hóinan faronárai es orénos.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ホイナン ファロナーライ エス オレーノス。
| lúin | tór-o | nébro, | hóin-an | faron-ár-ai | es | orén-os. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | 帰る-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | から | 縁-<属格> |
「霧が来ると、運び人たちは縁から帰っていく。」
縁の市の季節の終わりを言う文。nébro「霧」は重性なので、tóro は重性の -o をとる。市は霧の前に閉じるので、崖道の人々は霧を合図に故郷へ帰る。
duséiran lisárai aldáran áurenan.
読み:ドゥセーラン リサーライ アルダーラン アウレナン。
| du-séir-an | lis-ár-ai | aldár-an | áur-en-an. |
| <〜させていただく>-控えて待つ-<彼らが> | 書く-<〜する人>-<〜たちが> | 座-<対格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・対格> |
「書記たちは高き座(のお指図)を控えて待つ。」
宮廷の記録の文体。王に仕える者の行いを、王に対して低めて謙譲の duséir- で書く。aldár áuren「高き座」は対格になり、分詞 áuren も軽性・対格の -an で一致する。
élþan elþái aursárar élvarei, áurau dáu sílarau.
読み:エルサン エルサイ アウルサーラル エルヴァレイ、アウラウ ダウ シーララウ。
| élþ-an | elþ-ái | aursár-ar | élvar-ei, | áur-au | dáu | sílar-au. |
| 灯る-<彼らが> | 火-<〜たちが> | 祖先-<〜らの> | 天-<与格> | 昇る-<双数> | 二 | 月-<双数> |
「天に祖先たちの火が灯り、二つの月が昇る。」
詩の言い回し。星を祖先の炉の火と見る考え方から、星を「祖先たちの火」と言い換え、élþ-「灯る」を使っている。星を数えない言い方なので禁忌には当たらない。月は星ではないので、数詞 dáu をつけて双数で言える。
lúin hóina sílar, lísimor viráis aursárail.
読み:ルーイン ホイナ シーラル、リーシモル ヴィライス アウルサーライル。
| lúin | hóin-a | sílar, | lís-imor | vir-áis | aursár-ail. |
| とき | 巡ってくる-<(軽いものが)> | 月<主格> | 書く-<我々が> | 言葉-<〜たちを> | 祖先-<〜らに> |
「白月がまた巡ってくると、我々は祖先たちに言葉を書く。」
白月の満月の夜に祖先を祀る習わしを言う文。白月が一巡りしてまた満ちることに hóin- を使う。lúin の節は主節の前に置く。受け手の祖先たちは複数与格 -ail で示す。
fíndan aursárai viráis némores an élvarei.
読み:フィンダン アウルサーライ ヴィライス ネーモレス アン エルヴァレイ。
| fínd-an | aursár-ai | vir-áis | némor-es | an | élvar-ei. |
| 聞く-<彼らが> | 祖先-<〜たちが> | 言葉-<〜たちを> | <我々>-<属格> | 上手 | 天-<与格> |
「祖先たちは天の上で、我々の言葉を聞いている。」
信仰を説く言い方。言葉は息なので上へ昇り、天にいる祖先の耳に届く、という考えを表している。時制がないので、いつでも成り立つ事柄として直説法で言う。an+与格で「上手の側で」。
hál faronárais!
読み:ハール ファロナーライス!
| hál | faron-ár-ais! |
| 呼ぶ<命令法><あなたが> | 荷-<〜する人>-<〜たちを> |
「運び人たちを呼べ。」
下向きの命令。語幹 hál- は語末の子音のつながりを削る必要がないので、むき出しの語幹がそのまま命令法2人称単数の形になる。縁の市の取引言葉では、格語尾を落として hál faronár, ende とも言う。
na fíndan kelárai viráis ólmarar.
読み:ナ フィンダン ケラーライ ヴィライス オルマラル。
| na | fínd-an | kel-ár-ai | vir-áis | ólmar-ar. |
| <〜ない> | 聞き入れる-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 言葉-<〜たちを> | 年長者-<〜らの> |
「「樵たちは年長者の言うことを聞かない。」」
年長者がこぼすときによく使う言い方。直説法なので、否定は na を動詞の直前に置く。この意味の fínd- は、言葉を耳で聞くことではなく、言われたとおりにすることを表す。
lúin pándan viráis éles, áura þelá éles.
読み:ルーイン パンダン ヴィライス エーレス、アウラ セラー エーレス。
| lúin | pánd-an | vir-áis | él-es, | áur-a | þelá | él-es. |
| とき | 刷る-<彼らが> | 言葉-<〜たちを> | <3人称単数・軽性>-<属格> | 昇る-<(軽いものが)> | 名声<主格> | <3人称単数・軽性>-<属格> |
「その人の言葉が版木で刷られると、その人の名声は高まる。」
詩合わせで勝った詩が刷られて広まることを言う文。「名が昇る」は、名声が高まるという意味の決まった言い方。前半の pándan は主語を言わない3人称複数で、「人々が刷る」という受け身に近い意味になる。
ké ráines ré dúlan faronárai du orén dórel?
読み:ケー ライネス レー ドゥーラン ファロナーライ ドゥ オレーン ドーレル?
| ké | ráin-es | ré | dúl-an | faronár-ai | du | orén | dórel? |
| <〜か> | 知る-<あなたが> | <〜と(節)> | 下る-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | 下手 | 縁<対格> | 明日 |
「運び人たちが明日縁へ下りることを、お前は知っているか。」
知っている内容を ré の節で示す、日常の問い。ké は文のいちばん前に置く。ré の後ろの節も動詞で始まる。下向きか並びの相手に使う言い方。
lúin vóila endríña lisáis fóndelais, glóuma.
読み:ルーイン ヴォイラ エンドリーニャ リサイス フォンデライス、グローマ。
| lúin | vóil-a | endríña | lis-áis | fóndel-ais, | glóum-a. |
| とき | 読む-<(軽いものが)> | 子ども<主格> | 字-<〜たちを> | 古い-<〜たちを> | 惑う-<(軽いものが)> |
「子どもは古い字を読むと戸惑う。」
主節の主語は、lúin の節の主語と同じなので言わない。軽性の動詞の語尾 -a で受けている。
auráina aurainiþár sáindarais fóndelais.
読み:アウライナ アウライニサール サインダライス フォンデライス。
| au-ráin-a | au-rainiþár | sáindar-ais | fóndel-ais. |
| <お〜になる・御〜>-心得ている-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-師 | 証文-<〜たちを> | 由緒ある-<〜たちを> |
「師は由緒ある証文をよくご存じでいらっしゃる。」
改まった場で使う、ほめ言葉としての用法。動詞にも名詞にも尊敬の au- がつく。形容詞 fóndel は名詞の性・数・格(軽性・複数・対格)に一致する。
lúin nóiran kelárai, nóura ólmar.
読み:ルーイン ノイラン ケラーライ、ノーラ オルマル。
| lúin | nóir-an | kel-ár-ai, | nóur-a | ólmar. |
| とき | 眠る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 思案する-<(軽いものが)> | 年長者<主格> |
「樵たちが眠ると、年長者は思いにふける。」
「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。nóur- はここでは、ひとりで静かに考えこむことを表す。
lúin áura sílar, nóurimor aursárais.
読み:ルーイン アウラ シーラル、ノーリモル アウルサーライス。
| lúin | áur-a | sílar, | nóur-imor | aursár-ais. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 月<主格> | 思い慕う-<我々が> | 祖先-<〜たちを> |
「月が昇るとき、我々は祖先を偲ぶ。」
祖先祀りの場の言い方。白月は見守る祖先のまなざしの象徴とされ、満月の夜には祖先を祀る。
néulan aursárai viráis séurilais.
読み:ネウラン アウルサーライ ヴィライス セウリライス。
| néul-an | aursár-ai | vir-áis | séuril-ais. |
| 好む-<彼らが> | 祖先-<〜たちが> | 言葉-<〜たちを> | 美しい-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格> |
「祖先は美しい言葉を好む。」
整った言葉は昇って祖先に届く、という信仰を言う教えの文。形容詞 séuril は、修飾する virá(軽性)の複数対格に一致して -ais をとる。
dróuman kelárai es meirós.
読み:ドローマン ケラーライ エス メイロース。
| dróum-an | kel-ár-ai | es | meir-ós. |
| 嘆く-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | から | 税-<属格> |
「樵たちは税を嘆いている。」
日常の不満を言う文。meiró は語尾に強勢のある重性o語幹で、属格は -ós。
néulan lisárai rainiþáran.
読み:ネウラン リサーライ ライニサーラン。
| néul-an | lis-ár-ai | rainiþár-an. |
| 慕う-<彼らが> | 書く-<〜する人>-<〜たちが> | 師-<対格> |
「書記たちは師を慕っている。」
人を目的語にすると「慕う」の意味になる。直説法には法の印がないので、語根に3人称複数の -an が直接つく。lisár は lís-「書く」に -ár「〜する人」がついた語。
lúin sénan éndrai sílarau, gréman aursárar.
読み:ルーイン セーナン エンドライ シーララウ、グレーマン アウルサーラル。
| lúin | sén-an | éndr-ai | sílar-au, | grém-an | aursár-ar. |
| とき | 見る-<彼らが> | 人-<〜たちが> | 月-<双数> | 畏れる-<彼らが> | 祖先-<〜らの> |
「人は二つの月を仰ぐとき、祖先を畏れかしこむ。」
lúin の節は主節の前に置く。月は星ではないので双数で言える。後半の主節では主語を言っていないが、動詞の語尾から前半と同じ人々だとわかる。畏れる対象は属格でとる。
ausailéndan aursárai lisímei sé.
読み:アウサイレンダン アウルサーライ リシーメイ セー。
| au-sail-énd-an | aursár-ai | lis-ím-ei | sé. |
| <お〜になる・御〜>-嘉する-<〜しますように>-<彼らが> | 祖先-<〜たちが> | 書く-<〜の技・〜さ>-<与格> | この<軽性> |
「ご祖先がこの手跡を嘉したまいますように。」
願いを書いた紙を燃やして祖先に届けるときの決まり文句。高い者が主語なので尊敬の au- をつけ、願望法で言う。強勢は -énd- に移る。嘉する対象は与格。
rainiþésan rainiþárai hémbro éndrail.
読み:ライニセーサン ライニサーライ ヘンブロ エンドライル。
| rain-iþ-és-an | rainiþár-ai | hémbro | éndr-ail. |
| 知る-<〜させる>-<〜すべし>-<彼らが> | 師-<〜たちが> | 恥じる心<対格> | 人-<〜らに> |
「師たちは、人々に恥を知る心を教えるべし。」
学び舎の心得を記した書の文。当為法の3人称複数。強勢は -és- に移る。教わる相手は与格の複数 -ail で示す。重性の hémbro は対格でも主格と同じ形。
þóndim aursárail ré na vírim lúdro.
読み:ソンディン アウルサーライル レー ナ ヴィーリン ルードロ。
| þónd-im | aursár-ail | ré | na | vír-im | lúdro. |
| 誓う-<私が> | 祖先-<〜らに> | <〜と(節)> | <〜ない> | 言う-<私が> | 嘘<対格> |
「私は祖先に、嘘は言わないと誓う。」
星の見える晴れた夜に立てる誓いの基本の形。誓う相手は与格で示し(aursárail「祖先たちに」)、誓う中身は ré の節で後ろに置く。ré の節は元の文の法をそのまま保つので、ここでは直説法の否定 na vírim になる。時制はないので、「言わない」は文脈から未来のことと読む。
viríres lúdro, gruunélan aursárai tásei.
読み:ヴィリーレス ルードロ、グルーネーラン アウルサーライ ターセイ。
| vir-ír-es | lúdro, | gruun-él-an | aursár-ai | tás-ei. |
| 言う-<もし〜なら>-<あなたが> | 嘘<対格> | 怒る-<〜だろう>-<彼らが> | 祖先-<〜たちが> | <あなた>-<与格> |
「嘘をつけば、ご先祖様がお前にお怒りになるだろう。」
年長者が子どもを戒めるときの言い方。条件は接続詞を使わず、仮定法で表す。帰結の部分は推量法になる。法の接尾辞 -ír-・-él- は強勢をもつので、語根の ´ は消える(grúun- → gruunélan)。
lóima lourvirár þeláis aursárar fóndelar.
読み:ロイマ ロウルヴィラール セライス アウルサーラル フォンデラル。
| lóim-a | lourvirár | þel-áis | aursár-ar | fóndel-ar. |
| 唱える-<(軽いものが)> | 系譜読み<主格> | 名前-<〜たちを> | 祖先-<〜らの> | 源に近い-<軽性・〜ら(古い母音交替)・属格> |
「系譜読みは、源に近い祖先たちの名を唱える。」
祖先祀りで系譜を唱える場面の文。系譜について fóndel と言うと、始祖から下った瀬の数が少ないことを表す。古い詩の言い方で、改まった響きがある。形容詞は aursár の複数属格に合わせて -ar になる。
mé vír viráis gráisais!
読み:メー ヴィール ヴィライス グライサイス!
| mé | vír | vir-áis | gráis-ais! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 言う<命令法><あなたが> | 言葉-<〜たちを> | 悪い-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格> |
「悪い言葉を口にするな。」
炉の前で粗野な言葉を使ってはいけないという禁忌を、親が子に言い聞かせるときの言い方。禁止は mé+命令法で表す。形容詞は軽性の virá に一致して、複数対格の -ais をとる。
méira houmár tambór kelárail pírail.
読み:メーラ ホウマール タンボール ケラーライル ピーライル。
| méir-a | houm-ár | tambór | kel-ár-ail | pír-ail. |
| 与える-<(軽いものが)> | 炉-<〜する人> | 雑穀<対格> | 伐る-<〜する人>-<〜らに> | 若い-<軽性・〜ら(古い母音交替)・与格> |
「家の主は、若い樵たちに雑穀を与える。」
語順は「動詞–主語–目的語–与格」。人は軽性なので、形容詞は軽性の複数与格 -ail で一致する。
lúin kélan kelárai gandér, lóima ráuvan loimán.
読み:ルーイン ケーラン ケラーライ ガンデール、ロイマ ラウヴァン ロイマーン。
| lúin | kél-an | kel-ár-ai | gandér, | lóim-a | ráuvan | loim-án. |
| とき | 伐る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> | 唱える-<(軽いものが)> | 森の巫<主格> | 詞-<対格> |
「樵たちが硬木を伐るとき、森の巫が詞を唱える。」
硬木を伐るときの儀礼を説明する文。loimá「詞」は lóim- に -á「〜するもの」がついた派生語で、動詞の目的語に同じ語根の名詞をとっている。
lúin áura sílar, ansénan aursárais.
読み:ルーイン アウラ シーラル、アンセーナン アウルサーライス。
| lúin | áur-a | sílar, | ansén-an | aursár-ais. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 月<主格> | 思い出す-<彼らが> | 祖先-<〜たちを> |
「月が昇ると、人々は祖先を思い出す。」
祖先祀りの習わしを述べる文。月 sílar は軽性なので、動詞は3単・軽性の -a。主節の主語を言わない3人称複数 ansénan は、「人々は」という一般の主語を表す。
lóimimor viráis aursárail.
読み:ロイミモル ヴィライス アウルサーライル。
| lóim-imor | vir-áis | aursár-ail. |
| 詠む-<我々が> | 言葉-<〜たちを> | 祖先-<〜らに> |
「我々は祖先たちに詩句を詠む。」
都の暮らしと祖先祀りを語る文。整った言葉は祖先への捧げものとされる。1人称複数の語尾 -imor には強勢がなく、強勢は語根に残る。受け手の祖先は複数与格で言う。
lóimsa endríña virán an aursárais.
読み:ロインサ エンドリーニャ ヴィラーン アン アウルサーライス。
| lóims-a | endríña | vir-án | an | aursár-ais. |
| 詠む<〜し終えた>-<(軽いものが)> | 子ども<主格> | 言葉-<対格> | 上手 | 祖先-<〜たちを> |
「子どもは祖先たちへ向けて、句を詠み終えた。」
成人の儀を終えたことを伝える文。語根 lóim- は二重母音をもつので、完了相は -s- を足して lóims- にする。「an+対格」で、祖先のいる上方へ向けることを表す。
ansóina lourvirár þeláis aursárar an fóndaros.
読み:アンソイナ ロウルヴィラール セライス アウルサーラル アン フォンダロス。
| ansóin-a | lourvirár | þel-áis | aursár-ar | an | fóndar-os. |
| 覚えている<〜し終えた>-<(軽いものが)> | 系譜読み<主格> | 名前-<〜たちを> | 祖先-<〜らの> | 上手 | 源-<属格> |
「「系譜読みは、源から続く祖先たちの名を覚えている。」」
ansén- は「思い出す」のほか、「記憶にとどめている」という状態も表す。時制がないので、未完了の形のままで、いつも覚えているという意味になる。系譜読みの務めを説明する文。
na néulim viráis trúumais.
読み:ナ ネウリン ヴィライス トルーマイス。
| na | néul-im | vir-áis | trúum-ais. |
| <〜ない> | 好む-<私が> | 言葉-<〜たちを> | 陳腐な-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格> |
「私は陳腐な言葉を好まない。」
詩合わせなどで、使い古された句を批判するときの言い方。言葉が使い古されていることも、物が古びているのと同じ trúum で表す。virá は軽性なので、形容詞も軽性・複数・対格の -ais になる。
víra senár viráis klérais orenvandárei.
読み:ヴィーラ セナール ヴィライス クレーライス オレンヴァンダーレイ。
| vír-a | sen-ár | vir-áis | klér-ais | orenvandár-ei. |
| 言う-<(軽いものが)> | 見る-<〜する人> | 言葉-<〜たちを> | よそよそしい-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格> | 縁商人-<与格> |
「目付は縁商人によそよそしい言葉をかける。」
人の態度が冷ややかなことも klér で表す。この文では言葉を修飾している。語順は動詞–主語–目的語–与格(受け手)の基本どおり。段の外の相手に、改まってはいても打ち解けない話し方をする様子を言う。
vóilsim viráis fóumais ambréles.
読み:ヴォイルシン ヴィライス フォーマイス アンブレーレス。
| vóils-im | vir-áis | fóum-ais | ambrél-es. |
| 読む<〜し終えた>-<私が> | 言葉-<〜たちを> | 親身な-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格> | 兄・姉-<属格> |
「兄(姉)の心のこもった言葉を読み終えた。」
手紙に書かれた言葉について言う文。語根 vóil- は二重母音をもつので、完了相は母音を変えず、-s- を足して vóils- にする。言葉は軽性なので、形容詞も軽性・複数・対格になる。
dulíþan kelárai téir gandérul dréumul.
読み:ドゥリーサン ケラーライ テール ガンデールル ドレウムル。
| dul-íþ-an | kel-ár-ai | téir | gandér-ul | dréum-ul. |
| 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 三 | 硬木-<〜たちを> | 黒い-<重性・〜ら(古い母音交替)・対格> |
「樵たちは黒い硬木を三本下ろす。」
心材の黒い硬木を言う文。会話なので、量の名詞を省いている。三より上の数の後ろでは名詞が複数になり、形容詞も重性・複数・対格の -ul で一致する。
na fíndan aursárai virán múran.
読み:ナ フィンダン アウルサーライ ヴィラーン ムーラン。
| na | fínd-an | aursár-ai | vir-án | múr-an. |
| <〜ない> | 聞く-<彼らが> | 祖先-<〜たちが> | 言葉-<対格> | 崩れた-<軽性・対格> |
「祖先は崩れた言葉を聞き入れない。」
宮廷や家で、言葉づかいを戒めるときの言い方。virá「言葉」は軽性なので、形容詞は軽性・対格の -an をとって múran となる。崩れた言葉は重く、上へ昇らないという信仰が背景にある。
lísa sélvan lisáis séurilais.
読み:リーサ セルヴァン リサイス セウリライス。
| lís-a | sélvan | lis-áis | séuril-ais. |
| 書く-<(軽いものが)> | セルヴァン<主格> | 字-<〜たちを> | 整った-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格> |
「セルヴァンは整った字を書く。」
人の書きぶりをほめる言い方。séuril を書の字に使うと、形が正しく整っていることを表す。lisá「字」は軽性なので、形容詞は軽性・複数・対格の -ais をとる。
na pánda pandá rúgal lisáis séurilais.
読み:ナ パンダ パンダー ルーガル リサイス セウリライス。
| na | pánd-a | pand-á | rúgal | lis-áis | séuril-ais. |
| <〜ない> | 刷る-<(軽いものが)> | 刷る-<〜するもの(重)・主格> | 粗い | 字-<〜たちを> | 整った-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格> |
「粗い版木では、整った字は刷れない。」
彫り師の仲間で言われる言い回しで、作りの雑な版木を戒める。pandá「版木」は版の木で作られ、伐ったあとも軽性なので、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。
víran faronárai viráis múrais senárei.
読み:ヴィーラン ファロナーライ ヴィライス ムーライス セナーレイ。
| vír-an | faron-ár-ai | vir-áis | múr-ais | sen-ár-ei. |
| 言う-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 言葉-<〜たちを> | 崩れた-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格> | 見る-<〜する人>-<与格> |
「運び人たちは目付に崩れた言葉で話す。」
都の人が、縁の市の取引言葉について言うときの言い方。受け手の目付は与格 senárei で表す。形容詞は軽性・複数・対格の -ais の形で viráis に一致している。
mé lisésa lisáis sáindarei húmelei.
読み:メー リセーサ リサイス サインダレイ フーメレイ。
| mé | lis-és-a | lis-áis | sáindar-ei | húmel-ei. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 書く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 字-<〜たちを> | 証文-<与格> | 湿った-<軽性・与格> |
「湿った証文に字を書かぬこと。」
書記の心得として書かれる決まり。当為法の文を mé で否定している。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の形をとる。sáindar「証文」は軽性なので、形容詞も軽性・与格の húmelei で一致する。霧で湿った紙に書くと墨がにじんで下へ流れるとされ、霧期には大事な書きものを避ける。
dróuma ólmar ré víran faronárai viráis rúgalais.
読み:ドローマ オルマル レー ヴィーラン ファロナーライ ヴィライス ルーガライス。
| dróum-a | ólmar | ré | vír-an | faron-ár-ai | vir-áis | rúgal-ais. |
| 嘆く-<(軽いものが)> | 年長者<主格> | <〜と(節)> | 言う-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 言葉-<〜たちを> | 粗野な-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格> |
「年長者は、運び人たちが粗野な言葉を使うと嘆く。」
都でよく聞く嘆き。ré の後ろの節も、主節と同じく動詞で始まる。形容詞は軽性・複数・対格の rúgalais の形で viráis に一致している。
ésa ambrél némes krán, na fínda viráis némes.
読み:エーサ アンブレール ネーメス クラーン、ナ フィンダ ヴィライス ネーメス。
| és-a | ambrél | ném-es | krán, | na | fínd-a | vir-áis | ném-es. |
| いる-<(軽いものが)> | 兄姉<主格> | <私>-<属格> | 頑固な | <〜ない> | 聞く-<(軽いものが)> | 言葉-<〜たちを> | <私>-<属格> |
「兄は頑固で、私の言うことを聞かない。」
家族についての愚痴。人について言うときは軽性の一致になり、繋辞は éisa をとる。ambrél は年上のきょうだいを指し、性別は区別しない。属格 némes は名詞の後ろに置く。
tílim lisáis flaindélei náumei.
読み:ティーリン リサイス フラインデーレイ ナウメイ。
| tíl-im | lis-áis | flaindél-ei | náum-ei. |
| 彫る-<私が> | 字-<〜たちを> | 版の木-<与格> | 柔らかい-<軽性・与格> |
「柔らかな版の木に字を彫る。」
彫り師の仕事を言う文。版の木は伐って寝かせたあとも軽性のままなので、形容詞は軽性の与格 -ei で一致する。伐った脂の木なら重性の -oi で一致するので、その違いが比べどころになる。
selvéna aurél viráis náumais.
読み:セルヴェーナ アウレール ヴィライス ナウマイス。
| selvén-a | aurél | vir-áis | náum-ais. |
| おっしゃる-<(軽いものが)> | あの方<主格> | 言葉-<〜たちを> | 穏やかな-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格> |
「あの方は穏やかなお言葉をおかけになる。」
目上の人の話しぶりをほめる言い方。selvén- は「言う」の尊敬の補充形。形容詞 náum は viráis(軽性・複数・対格)に一致して náumais になる。
kéla houmár árnelais, ré esénde lúsa élei.
読み:ケーラ ホウマール アルネライス、レー エセンデ ルーサ エーレイ。
| kél-a | houmár | árnel-ais, | ré | es-énd-e | lúsa | él-ei. |
| 伐る-<(軽いものが)> | 家の主<主格> | 木-<〜たちを> | <〜と(節)> | いる-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 日々の糧<主格> | <3人称単数・軽性>-<与格> |
「家の主は、粥に困らぬよう木を伐る。」
「ré+願望法」は目的を表す。所有は「ある+持ち主の与格」で言うので、「その人に粥がある」が「暮らしに困らない」という意味になる。élei は家の主を指す。ここでの lúsa は、日々の食い扶持を広く指している。
táulan kelárai méldo.
読み:タウラン ケラーライ メルド。
| tául-an | kel-ár-ai | méldo. |
| 取る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 蜜<対格> |
「樵たちは蜜をとる。」
森の暮らしを述べる文。méldo は重性o語幹で、対格は主格と同じ形。森の民は蜂の巣から蜜と蝋の両方をとる。
ámbelai árnelai, sílarau áurau.
読み:アンベライ アルネライ、シーララウ アウラウ。
| ámbel-ai | árnel-ai, | sílar-au | áur-au. |
| 金色の-<軽性・〜ら(古い母音交替)・主格> | 木-<〜たちが> | 月-<双数> | 昇る-<双数> |
「金色なるは木々、昇りゆくは二つの月。」
詩の一句。前半は繋辞を落として形容詞を先に置く、格言・詩の語順。後半は主語が動詞の前に出ている。乾風期の初めに木々の葉が金色に変わり、澄んだ夜空に月が昇るさまを詠む。生えている木 árnel は軽性なので、複数主格は -ai。
dulíþan faronárai kumbórul du orén.
読み:ドゥリーサン ファロナーライ クンボールル ドゥ オレーン。
| dul-íþ-an | faron-ár-ai | kumbór-ul | du | orén. |
| 下る-<〜させる>-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 青銅器-<〜たちを> | 下手 | 縁<対格> |
「運び人たちが青銅器を縁へ下ろしていく。」
下ろし荷の品目としての kumbór。器の一つ一つを指すときは、重性の複数 kumbórul(主格・対格が同じ形)を使う。使役の -íþ- は、後ろに強勢をもつ接辞がないので、自分で強勢をとる。
méiran orenvandárai sáko, méirimor kumbórul.
読み:メーラン オレンヴァンダーライ サーコ、メーリモル クンボールル。
| méir-an | orenvandár-ai | sáko, | méir-imor | kumbór-ul. |
| 与える-<彼らが> | 縁商人-<〜たちが> | 塩<対格> | 与える-<我々が> | 青銅器-<〜たちを> |
「縁商人は塩を出し、我々は青銅器を出す。」
取引の取り決めを述べる文。二つの主節を接続詞なしで並べ、読点で区切っている。上げ荷の塩と下ろし荷の青銅器を対にして言うのは、帳簿の見開きの書き方にも通じる言い回しである。
lúin tóro nébro, kúulan ólmarai.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、クーラン オルマライ。
| lúin | tór-o | nébro, | kúul-an | ólmar-ai. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | 煮出す-<彼らが> | 年長者-<〜たちが> |
「霧が来るころになると、年長者たちは(影の木の葉を)煮出す。」
霧の季節に葉を煮出して茶にする習わしを述べた文。煮出す物は文脈でわかるので、言っていない。lúin の節は主節の前に置く。霧 nébro は重性なので、節の動詞は -o をとる。
lúin ésa snélo élvares dréum, lúuman aursárai némoran.
読み:ルーイン エーサ スネーロ エルヴァレス ドレウン、ルーマン アウルサーライ ネーモラン。
| lúin | és-a | snélo | élvar-es | dréum, | lúum-an | aurs-ár-ai | némor-an. |
| とき | いる-<(軽いものが)> | 天の屋根<主格> | 天-<属格> | 黒い | ご覧になる-<彼らが> | 昇る<〜し終えた>-<〜する人>-<〜たちが> | <我々>-<対格> |
「天の屋根が黒いときも、祖先は我々をご覧になっている。」
雨期に星が見えなくても不安がらない理由を説く、信仰の言い方。雲は上の層に属するので、祖先は屋根の上から変わらず下界を見ていると考えられている。snélo は重性の語形だが、この意味では一致が軽性になる(ésa)。lúum- は「見る」の尊敬の補充形。
lúin áura sílar, téndimor viráis.
読み:ルーイン アウラ シーラル、テンディモル ヴィライス。
| lúin | áur-a | sílar, | ténd-imor | vir-áis |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 月<主格> | 句を編む-<我々が> | 言葉-<〜たちを> |
「月が昇ると、私たちは詩句を編む。」
月の出を題にして詩を作る習わしを言う文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。月 sílar は軽性の子音語幹なので、動詞は -a をとる。詩句 virá の複数対格は viráis。
aurainiþénde aulisár lisáis némei.
読み:アウライニセンデ アウリサール リサイス ネーメイ。
| au-rainiþ-énd-e | au-lisár | lis-áis | ném-ei. |
| <お〜になる・御〜>-教える-<〜しますように>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-書記 | 字-<〜たちを> | <私>-<与格> |
「書記の方に、私に字をお教えいただきたく存じます。」
目上の書記に教えを請う、上向きの願い。動詞にも名詞にも尊敬の au- をつける。教わる人は与格で言う。強勢は願望法の -énd- に移るので、使役の -íþ- の強勢は消える。
fléiran aubrándalai an dún.
読み:フレーラン アウブランダライ アン ドゥーン。
| fléir-an | au-brándal-ai | an | dún. |
| お出ましになる-<彼らが> | <お〜になる・御〜>-諸司-<〜たちが> | 上手 | 丘<対格> |
「宮廷の方々が丘の上へお出ましになる。」
複数形で宮廷の役人全体を漠然と指す、高めた言い方。高め名詞には数詞をつけられないので、何人かは言わず、ひとまとまりの複数で受ける。dún は重性で、対格は主格と同じ形。
na néulan brándalai virán dalorárar.
読み:ナ ネウラン ブランダライ ヴィラーン ダロラーラル。
| na | néul-an | brándal-ai | vir-án | dalorár-ar. |
| <〜ない> | 好む-<彼らが> | 諸司-<〜たちが> | 言葉-<対格> | 下の国の者-<〜らの> |
「宮廷のお役人たちは、下の国の者の言葉を好まない。」
運び人や崖道の商人の、くだけた陰口。au- をつけずに brándalai と言うのは、相手のいない場での遠慮のない言い方。否定の na は動詞の直前に置く。
sénan senárai nébro orénos.
読み:セーナン セナーライ ネーブロ オレーノス。
| sén-an | senár-ai | nébro | orén-os. |
| 見る-<彼らが> | 番人-<〜たちが> | 霧<対格> | 縁-<属格> |
「番人たちは縁の霧を見張っている。」
縁の肩の番人を言う文。この意味では九段下りの者を指すので、au- をつけた高め形にはしない。番人は人なので複数で言ってよく、複数主格は -ai になる。nébro は重性で、対格は主格と同じ形。
méiran houmárai tambór brándalei.
読み:メーラン ホウマーライ タンボール ブランダレイ。
| méir-an | houmár-ai | tambór | brándal-ei. |
| 与える-<彼らが> | 家の主-<〜たちが> | 雑穀<対格> | 司-<与格> |
「家の主たちは司に雑穀を納める。」
乾風期の前半に、倉の司が税の雑穀を取り立てることを言う文。受け手の司は与格 -ei で言う。
na ráina faronár lisáis, ráina símbo.
読み:ナ ライナ ファロナール リサイス、ライナ シンボ。
| na | ráin-a | faronár | lis-áis, | ráin-a | símbo. |
| <〜ない> | 知る-<(軽いものが)> | 運び人<主格> | 字-<〜たちを> | 知る-<(軽いものが)> | 焼印<対格> |
「運び人は字を知らないが、焼印なら知っている。」
後半の文は、主語が前半と同じなので省いている。símbo は重性o語幹なので、対格も主格と同じ形になる。ここでは単数で「焼印というもの」を総称している。同じ形の焼印が何百本もの丸太に押されているので、字の読めない者もまず焼印の形を覚える。
lúin áura álmar, embeléimor aursárais.
読み:ルーイン アウラ アルマル、エンベレーモル アウルサーライス。
| lúin | áur-a | álmar, | embel-é-imor | aursár-ais. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 白月<主格> | 祀る-<〜だろう>-<我々が> | 祖先-<〜たちを> |
「白月が昇ったら、我々は祖先を祀ろう。」
満月の夜に祖先を祀る習わしについての、家の中の会話。lúin の節は主節の前に置く。推量法の -él- は、1人称の語尾 -imor の前で l が落ちて -é- になる。強勢が接尾辞に移るので、語根の ´ は消える。
rainíþa rainiþár férmalan kloimárail.
読み:ライニーサ ライニサール フェルマラン クロイマーライル。
| rain-íþ-a | rain-iþ-ár | férmal-an | kloim-ár-ail. |
| 知る-<〜させる>-<(軽いものが)> | 知る-<〜させる>-<〜する人・主格> | 法-<対格> | 学ぶ-<〜する人>-<〜らに> |
「師は弟子たちに法を教える。」
書記を育てる学び舎での営みを述べる文。基本の語順は、動詞–主語–目的語–与格(受け手)。rainíþ-「教える」は ráin-「知る」の使役形で、-ár をつけると「師」になる。
vóila senár férmalais kéumos.
読み:ヴォイラ セナール フェルマライス ケウモス。
| vóil-a | sen-ár | férmal-ais | kéum-os. |
| 読む-<(軽いものが)> | 見る-<〜する人・主格> | 法の条-<〜たちを> | 碑-<属格> |
「目付は碑に刻まれた条々を読み上げる。」
縁の市で揉め事を裁く前に、目付が度量衡の碑の条々を読み上げる場面の文。複数形の férmalais は、一つひとつの決まりを並べた「条々」を指す。属格 kéumos は名詞の後ろに置く。
émbelau ráuvan si kelár aursárais.
読み:エンベラウ ラウヴァン シ ケラール アウルサーライス。
| émbel-au | ráuvan | si | kel-ár | aursár-ais. |
| 祀る-<双数> | 森の巫<主格> | と | 伐る-<〜する人・主格> | 祖先-<〜たちを> |
「森の巫と樵が祖先を祀る。」
祖先を祀る祭祀を述べる文。単数の名詞を si で二つ並べているので、動詞は双数の -au になる。双数の動詞は人称も性も区別しない。
dulémbelim virán aursárail.
読み:ドゥレンベリン ヴィラーン アウルサーライル。
| dul-émbel-im | vir-án | aursár-ail. |
| <〜させていただく>-捧げる-<私が> | 言葉-<対格> | 祖先-<〜らに> |
「ご先祖さまに、言葉を捧げさせていただきます。」
祖先を祀る場で詩を捧げるときの前置き。謙譲の du- は母音の前で dul- になる。捧げる相手は与格で表す。
lúin hóinan faronárai, émbelan virán aursárail.
読み:ルーイン ホイナン ファロナーライ、エンベラン ヴィラーン アウルサーライル。
| lúin | hóin-an | faron-ár-ai, | émbel-an | vir-án | aursár-ail. |
| とき | 帰る-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 捧げる-<彼らが> | 言葉-<対格> | 祖先-<〜らに> |
「運び人たちは帰ってくると、祖先に言葉を捧げる。」
崖道から戻った者が、改まった言葉を祖先に捧げる習わしを説明する文。後半の主語は前半と同じなので言わない。
áura aurvirá an aursárais.
読み:アウラ アウルヴィラー アン アウルサーライス。
| áur-a | aurvirá | an | aursár-ais. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 祈り<主格> | 上手 | 祖先-<〜たちを> |
「祈りは祖先のもとへ昇る。」
祈りについての決まった言い方で、葬送や祭祀の場で唱える。aurvirá は言葉に属するので軽性になり、動詞は軽性の -a をとる。an+対格で「上手へ」。
lúin kélan kelárai gandér, áura aurvirá ráuvanes.
読み:ルーイン ケーラン ケラーライ ガンデール、アウラ アウルヴィラー ラウヴァネス。
| lúin | kél-an | kel-ár-ai | gandér, | áur-a | aurvirá | ráuvan-es. |
| とき | 伐る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> | 昇る-<(軽いものが)> | 祈り<主格> | 森の巫-<属格> |
「樵たちが硬木を伐るとき、森の巫の祈りが昇る。」
硬木を伐るときの儀式を述べる文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。属格 ráuvanes は名詞の後ろに置く。
élþa aurvirá, áura virá an aursárais.
読み:エルサ アウルヴィラー、アウラ ヴィラー アン アウルサーライス。
| élþ-a | aurvirá, | áur-a | virá | an | aursár-ais. |
| 燃える-<(軽いものが)> | 祈りの紙<主格> | 昇る-<(軽いものが)> | 言葉<主格> | 上手 | 祖先-<〜たちを> |
「祈りの紙が燃え、その言葉は祖先のもとへ昇っていく。」
願いを書いた紙を燃やす習わしを述べる文。紙は言葉を載せて昇るものなので軽性で、動詞は軽性の -a をとる。動詞で始まる節を二つ、読点で区切って並べている。
lísa lisár téir férmalais ívelais.
読み:リーサ リサール テール フェルマライス イーヴェライス。
| lís-a | lis-ár | téir | férmal-ais | ível-ais. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | 三 | 法の条-<〜たちを> | 新しい-<〜たちを> |
「書記は新しい条を三つ書いた。」
年代記や役所の記録に見られる、直説法の簡潔な文。時制を表す語形がないので、「書く」とも「書いた」とも訳せる。三以上の数詞の後ろでは、名詞が複数になる。形容詞 ível は名詞の後ろに置き、軽性・複数・対格で一致する。
faronéran faronárai aurfáron an orén.
読み:ファロネーラン ファロナーライ アウルファーロン アン オレーン。
| faronér-an | faronár-ai | aurfáron | an | orén. |
| 担ぐ-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | 上げ荷<対格> | 上手 | 縁<対格> |
「運び人たちが上げ荷を縁の上へ担ぎ上げる。」
崖道の日常の描写。aurfáron は重性の子音語幹なので、主格と対格が同じ形になる。an+対格は「上手へ」の移動を表し、崖の下から縁へ荷を運び上げる向きをはっきり示す。
lóiman ráuvanai loimán sérin, ésa tróval fóndel.
読み:ロイマン ラウヴァナイ ロイマーン セーリン、エーサ トローヴァル フォンデル。
| lóim-an | ráuvan-ai | loim-án | sérin, | és-a | tróval | fóndel. |
| 唱える-<彼らが> | 森の巫-<〜たちが> | 詞-<対格> | このように | いる-<(軽いものが)> | しきたり<主格> | 古い |
「森の巫たちはこのように詞を唱える。それが由緒あるしきたりなのだ。」
儀式の手順を説明する文。接続詞なしで節を二つ並べ、読点で区切っている。fóndel は「由緒ある古さ」を表す形容詞で、主語の tróval(軽性・主格)に一致し、語尾はつかない。
lúin éso nébro, na áura þondá, na fíndan aursárai élan.
読み:ルーイン エーソ ネーブロ、ナ アウラ ソンダー、ナ フィンダン アウルサーライ エーラン。
| lúin | és-o | nébro, | na | áur-a | þondá, | na | fínd-an | aursár-ai | él-an. |
| とき | いる-<(重いものが)> | 霧<主格> | <〜ない> | 昇る-<(軽いものが)> | 誓い<主格> | <〜ない> | 聞く-<彼らが> | 祖先-<〜たちが> | <3人称単数・軽性>-<対格> |
「霧が出ているときには、誓いは昇らない。祖先にはそれが聞こえない。」
霧の夜に立てた誓いは無効だという教えを述べる文。霧 nébro は重性なので éso、þondá は軽性なので動詞は -a で一致する。後半では、その誓いを軽性の代名詞の対格 élan で受けている。
lúin élþa hóurna, loimésa ráuvan loimáis bróusais.
読み:ルーイン エルサ ホールナ、ロイメーサ ラウヴァン ロイマイス ブローサイス。
| lúin | élþ-a | hóurna, | loim-és-a | ráuvan | loim-áis | bróus-ais. |
| とき | 燃える-<(軽いものが)> | 弔い<主格> | 唱える-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 森の巫<主格> | 詞-<〜たちを> | 多い-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格> |
「「弔いの火が焚かれるときは、森の巫は多くの詞を唱えるべし。」」
葬送の作法を定めた書の文。魂を上へ送るために詞を唱える。霧期の火葬では、煙が霧に閉じこめられるので、とくに念入りに唱える。lúin の節は主節の前に置く。詞は軽性なので、形容詞は -ais で一致する。
ái, dúla hóurna du orén! hálimor ráuvanan.
読み:アイ、ドゥーラ ホールナ ドゥ オレーン!ハーリモル ラウヴァナン。
| ái, | dúl-a | hóurna | du | orén! | hál-imor | ráuvan-an. |
| おや | 下る-<(軽いものが)> | 送りの煙<主格> | 下手 | 縁<対格> | 呼ぶ-<我々が> | 森の巫-<対格> |
「おや、送りの煙が縁のほうへ下りていく!森の巫を呼ぼう。」
風で煙が南(下)へ流れたときの驚きの声。これは不吉なこととされ、魂を上へ引き上げる詞を唱えてもらうために祭司を呼ぶ。du+対格で「下手へ」。
lúin gélim an kreinándo, áura mélna némes an aursárais.
読み:ルーイン ゲーリン アン クレイナンド、アウラ メルナ ネーメス アン アウルサーライス。
| lúin | gél-im | an | kreinándo, | áur-a | mélna | ném-es | an | aursár-ais. |
| とき | 行く-<私が> | 上手 | 納骨所<対格> | 昇る-<(軽いものが)> | 詩<主格> | <私>-<属格> | 上手 | 祖先-<〜たちを> |
「納骨所へ上るときには、私の詩が祖先の方々のもとへ昇っていく。」
成人の儀や祖先祀りで聖地に登る人の言葉。移動の動詞 gél- には方向の前置詞をかならず添えるので、an「上手へ」で上りの道だとわかる。詩は息なので軽く、祖先への捧げものとして上へ昇る。祖先は複数対格 -ais で表す。
ké tóra ráuvan? na tóra. séiran kelárai.
読み:ケー トーラ ラウヴァン?ナ トーラ。セーラン ケラーライ。
| ké | tór-a | ráuvan? | na | tór-a. | séir-an | kel-ár-ai. |
| <〜か> | 来る-<(軽いものが)> | 森の巫<主格> | <〜ない> | 来る-<(軽いものが)> | 待つ-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> |
「「巫は来たか?」「まだ来ていない。樵たちが待っている。」」
伐り出しの前の、森の村での日常のやりとり。二人の発話を一つにまとめている。儀式の詞を唱えずには硬木を伐れないので、樵たちは森の巫の到着を待つ。「はい/いいえ」にあたる語はなく、問いの動詞を繰り返して答える(否定なら na tóra)。時制がないので、tóra は「来た」とも「来ている」とも訳せる。
mé rimbéndes, endríña! rímban ilanárai.
読み:メー リンベンデス、エンドリーニャ!リンバン イラナーライ。
| mé | rimb-énd-es, | endríña! | rímb-an | ilanár-ai. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 数える-<〜しますように>-<あなたが> | 子ども | 数える-<彼らが> | 星読み-<〜たちが> |
「数えてはいけませんよ。数えるのは星読みたちです。」
星を数えようとする子を、親がたしなめるときの言い方。命令法の代わりに「mé+願望法2人称」を使った、やわらかい禁止になっている。強勢は願望法の -énd- に移る。呼びかけの endríña は読点で区切る。後ろの文は ilanárai が主語で、「数えてよいのは星読みたちだけだ」という対比を表す。何を数えるかは言わなくても文脈でわかる。
lúin kélan kelárai gandér, áura loimá ráuvanes.
読み:ルーイン ケーラン ケラーライ ガンデール、アウラ ロイマー ラウヴァネス。
| lúin | kél-an | kel-ár-ai | gandér, | áur-a | loimá | ráuvan-es. |
| とき | 伐る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> | 昇る-<(軽いものが)> | 詞<主格> | 森の巫-<属格> |
「樵たちが硬木を伐るときには、森の巫の詞が立ちのぼる。」
硬木を伐る作法を述べた文。詞は息なので、煙のように上へ昇るものとされ、動詞 áur-「昇る」の主語になる。loimá は軽性なので、動詞は軽性の -a をとる。硬木 gandér は重性なので、主格と対格が同じ形になる。
na ésa ilanrimbá ráinen éndrar, ráinan ilanárai.
読み:ナ エーサ イランリンバー ライネン エンドラル、ライナン イラナーライ。
| na | és-a | ilanrimbá | ráin-en | éndr-ar, | ráin-an | ilanár-ai. |
| <〜ない> | いる-<(軽いものが)> | 灯の数え<主格> | 知る-<〜した・〜された> | 人-<〜らの> | 知る-<彼らが> | 星読み-<〜たちが> |
「灯の数えは世の人に知られていない。知っているのは星読みたちだ。」
灯の数えが秘儀であることを言う、一般向けの説明の文。分詞の後ろの属格 éndrar は「人々によって」の意味になる。接続詞を使わずに主節を二つ並べるので、あいだに区切りの印(読点)を打つ。ilanrimbá は ilána(灯)と rimbá(数)を合わせた複合語で、軽性である。
vándan lisárai meiró tambóros.
読み:ヴァンダン リサーライ メイロー タンボーロス。
| vánd-an | lis-ár-ai | meiró | tambór-os. |
| 量る-<彼らが> | 書く-<〜する人>-<〜たちが> | 税<対格> | 雑穀-<属格> |
「書記たちが雑穀の税を量る。」
乾風期の前半、倉の司が雑穀の税を取り立てる場面の文。meiró は méir-「与える」に重いものを表す -ó がついた語で、もとは「差し出されるもの」の意味。重性o語幹なので、主格と対格が同じ形になる。何の税かは、属格を後ろに置いて表す。
duméiran kelárai meiró pelsós aldárei áurenei.
読み:ドゥメーラン ケラーライ メイロー ペルソース アルダーレイ アウレネイ。
| du-méir-an | kel-ár-ai | meiró | pels-ós | aldár-ei | áur-en-ei. |
| <〜させていただく>-与える-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 貢ぎ物<対格> | 樹脂-<属格> | 座-<与格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・与格> |
「樵たちは、高き座に樹脂の貢ぎ物を献上する。」
森の氏族が王に産物を納めることを述べる文。差し出す側を低める謙譲の du- を動詞につけ、受け手の「高き座」は与格で表す。分詞 áurenei は aldárei(軽性・単数・与格)に一致する。同じ meiró でも、受け手が王なら「貢ぎ物」、倉なら「税」と訳し分ける。
gélan faronárai or kórvo.
読み:ゲーラン ファロナーライ オル コルヴォ。
| gél-an | faronár-ai | or | kórvo. |
| 行く-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | 東へ | 倉<対格> |
「運び人たちは倉の東の方へ向かっていく。」
東への移動を言う文。or+対格で、目印の東側へ向かう動きを表す。kórvo は重性o語幹なので、対格も主格と同じ形になる。この場所で止まっていることを言うなら、与格の or kórvoi にする。
hóinan faronárai vel orén.
読み:ホイナン ファロナーライ ヴェル オレーン。
| hóin-an | faronár-ai | vel | orén. |
| 帰る-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | 西へ | 縁<対格> |
「運び人たちは縁の日の入り側へと帰っていく。」
西への移動を言う文。vel+対格で「西へ」の意味になる。属格と組んだ vel orénos なら「縁の日の入り側から」になる。高原では南北を an・du の高さで言い、東西はこの or・vel で言い分ける。
dulíþan kelárai gandér an órunei.
読み:ドゥリーサン ケラーライ ガンデール アン オールネイ。
| dul-íþ-an | kel-ár-ai | gandér | an | órun-ei. |
| 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> | 上手 | 日の出-<与格> |
「樵たちは日の出の前に硬木を下ろす。」
時の前後を、川の上手・下手として言う文。an+与格は「〜の上手で」で、「〜の前に」を表す。「日の出の後に」なら du órunei と言う。órun は軽性の子音語幹で、与格は -ei になる。
tóran ólmarai an aurándo, émbelan aursárais.
読み:トーラン オルマライ アン アウランド、エンベラン アウルサーライス。
| tór-an | ólmar-ai | an | aurándo, | émbel-an | aursár-ais. |
| 来る-<彼らが> | 年長者-<〜たちが> | 上手 | 社<対格> | 祀る-<彼らが> | 祖先-<〜たちを> |
「年長者たちは上手の社へやって来て、祖先を祀る。」
儀礼について述べる文。白月の満月の夜の祖先祀りなどで使う言い方。aurándo は áur-「昇る」+-ándo「〜する所」から来た語で、「昇る所」を表す。重性o語幹なので、対格は主格と同じ形になる。an+対格で「上手へ」を表す。後半の節は主語を言わず、動詞の語尾から前半と同じ年長者たちが主語だとわかる。
lúin áura álmar or dún, émbelan ólmarai aursárais.
読み:ルーイン アウラ アルマル オル ドゥーン、エンベラン オルマライ アウルサーライス。
| lúin | áur-a | álmar | or | dún, | émbel-an | ólmar-ai | aursár-ais. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 白月<主格> | 日の出側 | 丘<対格> | 祀る-<彼らが> | 年長者-<〜たちが> | 祖先-<〜たちを> |
「白月が丘の日の出側に昇ると、年長者たちは祖先を祀る。」
天体の位置を言う決まった言い方。星や月は指さしてはいけないので、よく知られた目印と方向の前置詞で位置を示す。or+対格で「〜の日の出側へ」を表す。lúin で始まる時の節は主節の前に置く。
tóran ólmarai vel kórvo.
読み:トーラン オルマライ ヴェル コルヴォ。
| tór-an | ólmar-ai | vel | kórvo. |
| 来る-<彼らが> | 年長者-<〜たちが> | 日の入り側 | 倉<対格> |
「年長者たちは日の入り側の倉へやって来る。」
行き先を方角で言う文。vel+対格で、日の入り側(西側)へ向かうことを表す。vel は vélun「日の入り」から来た語で、強勢がない。kórvo は重性なので、対格は主格と同じ形になる。日本語話者は v をバ行に聞くので、vel を「ベル」と聞き取ることが多い。
émbelan ólmarai aursárais órunei.
読み:エンベラン オルマライ アウルサーライス オールネイ。
| émbel-an | ólmar-ai | aursár-ais | órun-ei. |
| 祀る-<彼らが> | 年長者-<〜たちが> | 祖先-<〜たちを> | 日の出-<与格> |
「年長者たちは日の出の時刻に祖先を祀る。」
時刻を言う文。前置詞のない与格 órunei で、「日の出の時刻に」「明け方に」を表す。年代記で、出来事が明け方に起きたことを書くときにも、この与格を使う。
voilélan éndrai dulúines sóndelan sé.
読み:ヴォイレーラン エンドライ ドゥルーイネス ソンデラン セー。
| voil-él-an | éndr-ai | dulúin-es | sóndel-an | sé. |
| 読む-<〜だろう>-<彼らが> | 人-<〜たちが> | 行く末-<属格> | 書物-<対格> | この<軽性> |
「行く末の人々が、この書物を読むだろう。」
書物の序や詩に見られる言い回し。属格 dulúines を「人々」の後ろに置いて「後の世の人々」と言う。名詞句の中では、名詞のすぐ後ろに属格、そのあとに指示詞 sé が来る。
tóra tráimel ível, dulíþan kelárai gandér.
読み:トーラ トライメル イーヴェル、ドゥリーサン ケラーライ ガンデール。
| tór-a | tráimel | ível, | dul-íþ-an | kel-ár-ai | gandér. |
| 来る-<(軽いものが)> | 年<主格> | 新しい | 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> |
「新しい年が来て、樵たちは硬木を下ろす。」
暦と仕事の流れを説明する文。年は乾風期の初めに始まり、硬木の最初の下ろしもこの時期に行われる。tráimel は軽性の子音語幹で、形容詞 ível はその後ろに置いて一致させる。主節は二つ並んでいるので、あいだに読点を打つ。
dulíþan kelárai dáumbar gandérul tráimelei sé.
読み:ドゥリーサン ケラーライ ダウンバル ガンデールル トライメレイ セー。
| dul-íþ-an | kel-ár-ai | dáumbar | gandér-ul | tráimel-ei | sé. |
| 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 二十 | 硬木-<〜たちを> | 年-<与格> | この<軽性> |
「この年、樵たちは硬木を二十本下ろした。」
年代記や森の司の記録に見られる書き方。「この年に」は、与格 tráimelei に指示詞 sé を添えて言う。九十九までの数詞は名詞の前に置き、三以上なら名詞を複数にする。重性の複数対格は -ul になる。
dúlan téir tráimelai, na tóra séulin némes.
読み:ドゥーラン テール トライメライ、ナ トーラ セウリン ネーメス。
| dúl-an | téir | tráimel-ai, | na | tór-a | séulin | ném-es. |
| 下る-<彼らが> | 三 | 年齢・年数-<〜たちが> | <〜ない> | 来る-<(軽いものが)> | 友<主格> | <私>-<属格> |
「三年が過ぎたが、私の友は来ない。」
年月が経つことは、川の水が下るのにたとえて dúl-「下る」で言う。時制がないので、「過ぎた」ことは文脈から読みとる。三以上の数詞の後ろでは、名詞は複数になる(tráimelai)。動詞はこの複数の主語に一致して、3人称複数の -an をとる。
lúin tóra vélun, hóinan kelárai an dún.
読み:ルーイン トーラ ヴェールン、ホイナン ケラーライ アン ドゥーン。
| lúin | tór-a | vélun, | hóin-an | kel-ár-ai | an | dún. |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 日の入り<主格> | 帰る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 上手 | 丘<対格> |
「日が沈むと、樵たちは丘の上へ帰っていく。」
vélun は軽性の子音語幹として変化する。lúin の節は主節の前に置く。「日の入りが来る」という言い方で「夕方になる」を表す。日常の語り口の文。
drénimor an ánoran ré embeléndimor aursárais.
読み:ドレーニモル アン アーノラン レー エンベレンディモル アウルサーライス。
| drén-imor | an | ánor-an | ré | embel-énd-imor | aursár-ais. |
| 参る-<我々が> | 上手 | 上手・北-<対格> | <〜と(節)> | 祀る-<〜しますように>-<我々が> | 祖先-<〜たちを> |
「我々は、祖先を祀るために北の高みへ参る。」
北の高みの納骨所へ向かうときの言い方。drén- は「行く」の謙譲の補充形で、聖地に向かう行いを低めて言う。ré+願望法で目的を表す。an ánoran は「上手の北の地へ」で、前置詞と名詞が同じ方向を重ねて表している。
dúlan faronárai du dúror.
読み:ドゥーラン ファロナーライ ドゥ ドゥーロル。
| dúl-an | faronár-ai | du | dúror. |
| 下る-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | 下手 | 下手・南<対格> |
「運び人たちは南の縁へと下りていく。」
dúror は重性の子音語幹で、主格と対格が同じ形になる。du+対格で「下手へ」。高原では南は低い土地なので、崖道を下る動きと南へ向かう動きが同じ言い方になる。
dúlan faronárai es méndales orénos.
読み:ドゥーラン ファロナーライ エス メンダレス オレーノス。
| dúl-an | faronár-ai | es | méndal-es | orén-os. |
| 下る-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | から | まん中-<属格> | 縁-<属格> |
「「運び人たちは縁のまん中から下りていく。」」
崖道の主な道筋が、長川の峡谷に沿って縁のまん中を通っていることを言う。「〜のまん中から」は、es+méndal の属格に、全体を表す名詞の属格を続けて言うので、属格が二つ続く。
lóima lourvirár þeláis aursárar trúinar.
読み:ロイマ ロウルヴィラール セライス アウルサーラル トルーイナル。
| lóim-a | lourvirár | þel-áis | aursár-ar | trúin-ar. |
| 唱える-<(軽いものが)> | 系譜読み<主格> | 名前-<〜たちを> | 祖先-<〜らの> | 近しい-<〜らの> |
「系譜読みは、近しい祖先たちの名を唱える。」
祖先を祀る場の文。trúin は、瀬の数が少ない(世代の近い)祖先を言っている。形容詞は修飾する aursárar(軽性・複数・属格)に一致して trúinar になる。名詞句の語順は「名詞–属格–形容詞」ではなく、「祖先-の・近しい-の」と属格の名詞の後ろに形容詞が続く。
tóran kelárai sal hóum.
読み:トーラン ケラーライ サル ホーン。
| tór-an | kel-ár-ai | sal | hóum. |
| 来る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 〜の外に | 炉<対格> |
「樵たちが炉ばたの外へ出てくる。」
日常の文。sal はほかの方向の前置詞と同じく強勢をもたず、組む格で意味が変わる。この文のように対格と組むと「〜の外へ」という向きを表し、与格と組むと「〜の外で」という場所を表す。hóum「炉」は重性なので、対格は主格と同じ形になる。
éso nebrálvo trúin, lísir sáindarais.
読み:エーソ ネブラルヴォ トルーイン、リーシル サインダライス。
| és-o | nebrálvo | trúin, | lís-ir | sáindar-ais. |
| いる-<(重いものが)> | 霧期<主格> | 近しい | 書く-<皆で〜せよ> | 証文-<〜たちを> |
「霧期が近い。証文を書いておけ。」
縁の市で、乾風期の終わりに商人たちが言い合う文。trúin は時間の近さを表す。nebrálvo は重性o語幹なので、繋辞は -o になる。霧の約束は重んじられないので、霧期の前に証文を済ませておけ、という含みがある。
lisésa lisár sáindaran un téir ombrénail.
読み:リセーサ リサール サインダラン ウン テール オンブレーナイル。
| lis-és-a | lis-ár | sáindar-an | un | téir | ombrén-ail |
| 書く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 証文-<対格> | 内 | 三 | 十日-<〜らに> |
「書記は三旬のうちに証文を書くべし。」
法典や役所の定めの文体で、当為法を使っている。勤めや期限は十日を単位に数えるので、「三つの十日」でおよそ一か月を表す。三以上の数詞の後ろでは名詞が複数になり、un「〜の内に」と組むので与格をとる。
lúin tóra reinálva, lísan éndrai.
読み:ルーイン トーラ レイナルヴァ、リーサン エンドライ。
| lúin | tór-a | reinálva, | lís-an | éndr-ai |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 雨期<主格> | 書く-<彼らが> | 人-<〜たちが> |
「雨期が来ると、人々は書きものをする。」
雨期は家にこもって書を写し、詩を作る季節とされる。そのことを述べた一般的な文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。reinálva は雨(上から来るもの)に属する季節なので軽性で、動詞は -a で一致する。
lúin ésa reinálva, na dúlan faronárai du dálor.
読み:ルーイン エーサ レイナルヴァ、ナ ドゥーラン ファロナーライ ドゥ ダーロル。
| lúin | és-a | reinálva, | na | dúl-an | faron-ár-ai | du | dálor |
| とき | いる-<(軽いものが)> | 雨期<主格> | <〜ない> | 下る-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 下手 | 下の国<対格> |
「雨期のあいだは、運び人は下の国へ下りない。」
雨期には崖道が滑りやすく、閉じられることを述べた文。「雨期である間」は lúin+és- で言う。否定の na は動詞の直前に置く。faronár は「荷」に行為者の -ár をつけた語で、軽性なので複数主格は -ai になる。
lúin tóra kailálva, dúlan faronárai du dálor.
読み:ルーイン トーラ カイラルヴァ、ドゥーラン ファロナーライ ドゥ ダーロル。
| lúin | tór-a | kailálva, | dúl-an | faron-ár-ai | du | dálor |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 乾風期<主格> | 下る-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 下手 | 下の国<対格> |
「乾風期が来ると、運び人たちは下の国へ下りていく。」
乾風期に崖道が開き、縁の市へ荷が運ばれることを述べた文。前の雨期の例文とちょうど裏返しの内容になる。kailálva は軽性なので、動詞は -a で一致する。dálor は重性なので、対格も主格と同じ形になる。
lúin ésa kailálva, dulíþan kelárai gandér du dálor.
読み:ルーイン エーサ カイラルヴァ、ドゥリーサン ケラーライ ガンデール ドゥ ダーロル。
| lúin | és-a | kailálva, | dul-íþ-an | kel-ár-ai | gandér | du | dálor |
| とき | いる-<(軽いものが)> | 乾風期<主格> | 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> | 下手 | 下の国<対格> |
「乾風期のあいだ、樵たちは硬木を下の国へ下ろす。」
乾風期が硬木の伐り出しと吊り下ろしの季節であることを述べた文。gandér と dálor は重性なので、主格と対格が同じ形になる。使役の -íþ- は、後ろに強勢をもつ接辞がないので、自分で強勢をとる。
kélan kelárai gandér þailúinei.
読み:ケーラン ケラーライ ガンデール サイルーイネイ。
| kél-an | kel-ár-ai | gandér | þailúin-ei. |
| 伐る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> | 澄みの頃-<与格> |
「澄みの頃には、樵たちが硬木を伐る。」
森の村で、一年の仕事の段取りを話すときの言い方。時を表す þailúin は前置詞をつけず、与格だけで「〜の頃に」を表す。軽性の子音語幹なので与格は -ei になる。硬木の伐り出しが始まる時期であることをよく表す文。
lúin tóra þailúin, dúlan faronárai du orén.
読み:ルーイン トーラ サイルーイン、ドゥーラン ファロナーライ ドゥ オレーン。
| lúin | tór-a | þailúin, | dúl-an | faronár-ai | du | orén. |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 澄みの頃<主格> | 下る-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | 下手 | 縁<対格> |
「澄みの頃が来ると、運び人たちが縁へ下りていく。」
「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。þailúin は節の主語で、動詞は軽性の tóra で受ける。崖道がいちばんにぎわい、縁の市が盛りを迎える時期を言う、決まった言い回し。
póso? na vóilim lisáis.
読み:ポーソ?ナ ヴォイリン リサイス。
| póso? | na | vóil-im | lis-áis. |
| これは何だ | <〜ない> | 読む-<私が> | 字-<〜たちを> |
「これは何だ? 字が読めないんだ。」
字の書かれた荷札や木札を示して尋ねる言い方。下向きかくだけた場で使う問いで、目上の人には使わない。高原語には「〜できる」を表す専用の形がないので、「字を読まない」で「読めない」の意味を表す。
ái, tóro nébro es orénos.
読み:アイ、トーロ ネーブロ エス オレーノス。
| ái, | tór-o | nébro | es | orén-os. |
| おや | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | から | 縁-<属格> |
「おや、縁から霧が上がってくる。」
思いがけないことに気づいたときの軽い声。霧 nébro は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。霧期の初めによく聞かれる言い方。
ái, tóra séulin némes.
読み:アイ、トーラ セウリン ネーメス。
| ái, | tór-a | séulin | ném-es. |
| おや | 来る-<(軽いものが)> | 友<主格> | <私>-<属格> |
「おや、友が来た。」
ちょっとした驚きを表す日常の言い方。所有者は属格の代名詞 némes で、名詞の後ろに置く。人は軽性なので、動詞は -a をとる。
ké vóiles lisáis?
読み:ケー ヴォイレス リサイス?
| ké | vóil-es | lis-áis? |
| <〜か> | 読む-<あなたが> | 字-<〜たちを> |
「お前は字が読めるか。」
はい・いいえで答える下向きの問い。「〜できる」にあたる専用の形はなく、直説法で「字を読むか」と尋ねて読み書きの力を問う。答えは動詞を繰り返して vóilim、または na vóilim と言う。
vóila faronár símbo gandéros, na vóila lisáis.
読み:ヴォイラ ファロナール シンボ ガンデーロス、ナ ヴォイラ リサイス。
| vóil-a | faron-ár | símbo | gandér-os, | na | vóil-a | lis-áis. |
| 見分ける-<(軽いものが)> | 荷-<〜する人> | 印<対格> | 硬木-<属格> | <〜ない> | 読む-<(軽いものが)> | 字-<〜たちを> |
「運び人は硬木の焼印は見分けるが、字は読めない。」
同じ vóil- が、前半では焼印の形を見分ける意味で、後半では文字を読む意味で使われている。丸太の木口の焼印は何百本にも同じ形で押されているので、文字を知らない者もその形を覚える。
rainíþa rainiþár lisáis kloimárei.
読み:ライニーサ ライニサール リサイス クロイマーレイ。
| rainíþ-a | rainiþ-ár | lis-áis | kloim-ár-ei. |
| 教える-<(軽いものが)> | 教える-<〜する人> | 字-<〜たちを> | 学ぶ-<〜する人>-<与格> |
「師は弟子に字を教える。」
rainíþ- は ráin-「知る」に使役の -íþ- がついた語で、「知らせる」から「教える」になった。行為者名詞 rainiþár「師」は同じ語根から作られている。教わる人は与格で表す。
lúin tóro nébro, na trálan lisárai sóndelais.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ トラーラン リサーライ ソンデライス。
| lúin | tór-o | nébro, | na | trál-an | lis-ár-ai | sóndel-ais. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | <〜ない> | 写す-<彼らが> | 書く-<〜する人>-<〜たちが> | 書物-<〜たちを> |
「霧が来ると、書記たちは書物を写さない。」
霧の中で書いた字は下へ流れるとされるので、霧期には書物の書き写しを避ける(書物を写すのは雨期の仕事)。否定の小辞 na は動詞の直前に置く。sóndel は巻物も綴じ本も含めた書物全般を指す。
ésa traimlisá áuren an sóndelail.
読み:エーサ トラインリサー アウレン アン ソンデライル。
| és-a | traimlisá | áur-en | an | sóndel-ail. |
| いる-<(軽いものが)> | 年代記<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | 上手 | 書物-<〜らに> |
「年代記はあらゆる書物の中でいちばん尊い。」
「いちばん〜」は「an+同じ仲間の複数与格」で言う(直訳は「書物たちの上手に高い」)。書かれた言葉を重んじる王国で、年代記が書物の頂に置かれていることを表す。
funeléran lisárai sélvanan.
読み:フネレーラン リサーライ セルヴァナン。
| funelér-an | lis-ár-ai | sélvan-an. |
| 書き留める-<彼らが> | 書く-<〜する人>-<〜たちが> | セルヴァン-<対格> |
「書記たちはセルヴァンの名を書き留める。」
言葉を消えないように字にして留めることを表す動詞。書くことは息を使わないので、口にしてはいけない名前でも書き留めてかまわない。直説法の3人称複数 -an には強勢がないので、強勢は -ér- に残る。
klóimim lisáis es rainiþáres.
読み:クロイミン リサイス エス ライニサーレス。
| klóim-im | lis-áis | es | rainiþár-es |
| 学ぶ-<私が> | 字-<〜たちを> | から | 師-<属格> |
「私は師から字を学んでいる。」
日常の会話で、自分が習っていることを言う文。主語は動詞の語尾 -im でわかるので言わない。「誰から学ぶか」は es+属格(〜から)で言う。時制がないので、「学んでいる」とも「学んだ」とも訳せる。
rainíþa rainiþár lisáis kloimárail.
読み:ライニーサ ライニサール リサイス クロイマーライル。
| rainíþ-a | rainiþár | lis-áis | kloimár-ail |
| 教える-<(軽いものが)> | 師<主格> | 字-<〜たちを> | 弟子-<〜らに> |
「師は弟子たちに字を教える。」
基本の語順「動詞–主語–目的語–与格」の文。rainiþár は rainíþ-「教える」に -ár「〜する人」がついた語で、強勢は -ár に移る。教わる人は与格で表す。
pómbar kloimárais rainíþes?
読み:ポンバル クロイマーライス ライニーセス?
| pómbar | kloimár-ais | rainíþ-es |
| いくつ | 弟子-<〜たちを> | 教える-<あなたが> |
「弟子を何人教えているのか。」
同じ段の師どうしの会話。目上の人は数えないが、弟子は目下なので、数を尋ねる疑問詞 pómbar で数えてよい。疑問詞は名詞句ごと文頭に出て、名詞は複数対格になる。
kloimésa endríña lisáis rainiþárei.
読み:クロイメーサ エンドリーニャ リサイス ライニサーレイ。
| kloim-és-a | endríña | lis-áis | rainiþár-ei |
| 学ぶ-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 子ども<主格> | 字-<〜たちを> | 師-<与格> |
「子は師のもとで字を学ぶべし。」
学び舎の心得として書かれる当為法の文。当為法の -és- は強勢をもつので、語根 klóim- の強勢は消えて kloimésa となる。学ぶ場所(師のもと)は前置詞なしの与格で言う。
aurainiþénde aurainiþár lisáis dunémei.
読み:アウライニセンデ アウライニサール リサイス ドゥネーメイ。
| au-rainiþ-énd-e | au-rainiþár | lis-áis | duném-ei |
| <お〜になる・御〜>-教える-<〜しますように>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-師<主格> | 字-<〜たちを> | 手前-<与格> |
「師の方に、手前に字をお教えいただきたく存じます。」
弟子が師に願い出るときの上向きの言い方。命令法ではなく願望法の3人称を使い、目の前の師を3人称の主語 aurainiþár として扱う。動詞にも名詞にも尊敬の au- がつき、r で始まる語なので au- はそのままの形でつく。自分は謙譲の代名詞 duném の与格で言う。
aurénde mélna an aursárais.
読み:アウレンデ メルナ アン アウルサーライス。
| aur-énd-e | mélna | an | aursár-ais |
| 昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 詩<主格> | 上手 | 祖先-<〜たちを> |
「この詩が、ご先祖様がたのもとへ昇りますように。」
崖道から都へ帰った人などが、祖先に詩を捧げるときの言葉。主語 mélna は軽性なので、願望法の3人称単数は -e になる。an+対格で「上手へ」。
tóran kloimárai an kloimándo lisárar.
読み:トーラン クロイマーライ アン クロイマンド リサーラル。
| tór-an | kloim-ár-ai | an | kloimándo | lis-ár-ar. |
| 来る-<彼らが> | 学ぶ-<〜する人>-<〜たちが> | 上手 | 学び舎<対格> | 書く-<〜する人>-<〜らの> |
「弟子たちが、上手にある書記たちの学び舎へ上ってくる。」
都の様子を記した書物の文。学び舎は場所名詞 -ándo の語で重性なので、対格は主格と同じ形になる。an+対格で「上手へ」。属格 lisárar「書記たちの」は名詞の後ろに置く。
pándir téir lénais!
読み:パンディル テール レーナイス!
| pánd-ir | téir | lén-ais! |
| 刷る-<皆で〜せよ> | 三 | 枚-<〜たちを> |
「皆で三枚刷れ。」
刷りの工房で、上の者が下の者たちに言う命令。命令法の2人称複数は -ir をつけて作る。語幹の後ろに語尾が続くので、nd は削られずに残る。2人称単数なら語幹がむき出しになり、語末の nd が n に削られて pán となる。
tíla brándal viráis.
読み:ティーラ ブランダル ヴィライス。
| tíl-a | brándal | vir-áis. |
| 刻む-<(軽いものが)> | 司<主格> | 言葉-<〜たちを> |
「司が言葉を刻む。」
碑の由来を記す書き言葉の文。時制がないので、「刻む」とも「刻んだ」とも読める。石に刻んだ言葉は、昇りも消えもせず、その場所に据えておくものとされる。
trál lisáis rainiþáres!
読み:トラール リサイス ライニサーレス!
| trál | lis-áis | rain-iþ-ár-es! |
| 手本をなぞる<命令法><あなたが> | 字-<〜たちを> | 知る-<〜させる>-<〜する人>-<属格> |
「師の字をなぞれ。」
書の稽古で、師が弟子に言う下向きの命令。rainiþár「師」は ráin-「知る」に使役の -íþ- と「〜する人」の -ár がついた語で、ここでは属格「師の」。
trálan kloimárai lisáis.
読み:トラーラン クロイマーライ リサイス。
| trál-an | kloim-ár-ai | lis-áis. |
| 手本をなぞる-<彼らが> | 学ぶ-<〜する人>-<〜たちが> | 字-<〜たちを> |
「弟子たちは手本の字をなぞる。」
弟子 kloimár は軽性なので、複数主格は -ai。主語が複数なので、動詞は3人称複数の -an をとる。
toríþa ráuvan kelárais un krévan, salóur na kélan kelárai árnelan.
読み:トリーサ ラウヴァン ケラーライス ウン クレーヴァン、サロール ナ ケーラン ケラーライ アルネラン。
| tor-íþ-a | ráuvan | kel-ár-ais | un | kréva-n, | salóur | na | kél-an | kel-ár-ai | árnel-an. |
| 来る-<〜させる>-<(軽いものが)> | 森の巫<主格> | 伐る-<〜する人>-<〜たちを> | 内に | 練習の場-<対格> | しかし | <〜ない> | 伐る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 木-<対格> |
「森の巫は樵たちを稽古の場へ呼び寄せるが、樵たちは木を伐らない。」
un と対格を組み合わせると「〜の中へ」の意味になり、un krévan は「稽古の場へ」となる。伐り出しの詞を稽古で唱えても本番の儀式にはならず、樵はそこでは斧を入れない。そのことを言った文である。使役の toríþ-「呼び寄せる」は、後ろに強勢のある接辞がないので、-íþ- が強勢をとる。逆接の salóur は二つめの文の頭に置く。立っている木 árnel は軽性なので、対格は -an になる。
drénan kloimárai un krévan, duói léunan mélnan rainiþárei, si na rímba rainiþár virán gráisan.
読み:ドレーナン クロイマーライ ウン クレーヴァン、ドゥオイ レウナン メルナン ライニサーレイ、シ ナ リンバ ライニサール ヴィラーン グライサン。
| drén-an | kloimár-ai | un | kréva-n, | duói | léun-an | méln-an | rainiþár-ei, | si | na | rímb-a | rainiþár | vir-án | gráis-an. |
| 参る-<彼らが> | 弟子-<〜たちが> | 内に | 練習の場-<対格> | それから | 申す-<彼らが> | 詩-<対格> | 師-<与格> | と | <〜ない> | 数える-<(軽いものが)> | 師<主格> | 言葉-<対格> | 悪い-<対格> |
「弟子たちは稽古の場へ参り、それから師に詩を申し上げる。師は言い誤りを数えない。」
宮廷や学び舎での詩の稽古を言った文。弟子の行いは謙譲の補充形で表し、drén-「参る」と léun-「申す」を使っている。un krévan は「稽古の場へ」で、本番ではない場であることを示す。virán gráisan「悪い言葉」は、ここでは無礼な言葉ではなく、言い損なった語を指す。形容詞 gráis は名詞の後ろに置かれ、軽性・対格の -an で一致している。
sarénei, áura virá an ilánais.
読み:サレーネイ、アウラ ヴィラー アン イラーナイス。
| sarén-ei, | áur-a | virá | an | ilán-ais. |
| 本番-<与格> | 昇る-<(軽いものが)> | 言葉<主格> | 上手 | 灯-<〜たちを> |
「本番では、言葉は星々のもとへ昇る。」
日常で、練習とは違う本番の重みを言い聞かせるときの言い回し。練習の言葉は数に入らないが、本番の言葉は息となって祖先に届く、という考え方を表す。与格 sarénei を場面の枠に置き、読点で区切る。主語の virá は軽性なので、動詞は -a で受ける。
drelésa aurbúl un aurándoi, ré aurénde selvá an ilánais.
読み:ドレレーサ アウルブール ウン アウランドイ、レー アウレンデ セルヴァー アン イラーナイス。
| drel-és-a | aurbúl | un | auránd-oi, | ré | aur-énd-e | selvá | an | ilán-ais |
| 焚く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 薪<対格> | 内に | 社-<与格> | <〜と(節)> | 昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 息<主格> | 上手 | 灯-<〜たちを> |
「社は薪を焚くべし。息が星々のもとへ昇りますように。」
社の碑文や祀りの手引書に刻まれる当為法の文。主語を言わないので「人は」の意味になり、軽性の形をとる(当為法・3SG.LT)。ré+願望法で目的(祈り)を示す。aurándo「社」は重性o語幹で与格 -oi。度量衡の碑の mé duliþésa… と同じく、法定的・規範的な文書に当為法が用いられる例。
drélim aurbúl si aurénde selvá an ilánais.
読み:ドレーリン アウルブール シ アウレンデ セルヴァー アン イラーナイス。
| drél-im | aurbúl | si | aur-énd-e | selvá | an | ilán-ais |
| 焚く-<私が> | 薪<対格> | と | 昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 息<主格> | 上手 | 灯-<〜たちを> |
「薪を焚く。息が星々のもとへ昇りますように。」
祀りの場で、炉に薪を焚いて祖先に祈りを届ける場面。drél-「焚く」は他動詞で、1人称単数は drélim(drél-im)。aurbúl(重性・子音語幹)が目的語。si は読点を伴わず、二つの文を同じ高さに並べる(統語論9.2節)。二つめの文は願望法で祈りの形にする。an ilánais は「星々のもとへ」で、挨拶の定型 aurénde selvá! ― an ilánais. と同じ前置詞句。星は数を言わず総称の複数 ilánai を用いる。
flúunim manó téir fréimai.
読み:フルーニン マノー テール フレーマイ。
| flúun-im | manó | téir | fréim-ai. |
| 清める-<私が> | 椀<対格> | 三 | 度-<〜たちが> |
「一日三回、椀を清める(=三食の食事をいただく)。」
比喩用法。manóが椀そのものではなく、椀に盛られた食事(食の行為)を指す。flúun-「洗う・清める」が食後の感謝の意を含む。食の文脈での定型に近い表現で、椀を清める=食事をいただく、という比喩が定着している。数詞 téir(三)の後ろの名詞は複数主格 fréimai(軽性子音語幹②型の複数主格 -ai)になる。
émbela ólmar houmíño aursárail.
読み:エンベラ オルマル ホウミーニョ アウルサーライル。
| émbel-a | ólmar | houmíño | aursár-ail. |
| 祀る-<(軽いものが)> | 年長者<主格> | 椀<対格> | 祖先-<〜らに> |
「年長の方は、(恵みの)椀を祖先に供する。」
祖先祀りの場面。houmíño は供えられる食物そのものを指す詩的用法。aursár(「昇った者=祖先」)は複合名詞として1語の語根で、複数与格語尾 -ail が付く。動詞は主語の年長者(人・軽性)に一致。炉の北側の座から火のうえへ置く行為の婉曲な言い方。
krúnan faronárai gandér.
読み:クルーナン ファロナーライ ガンデール。
| krún-an | faronár-ai | gandér. |
| 支える-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | 硬木<対格> |
「運び人たちが硬木を支えている。」
降ろし場や荷場での共同作業を示す文。複数人が体重をかけて硬木の重みに耐えている。硬木は重性名詞で、対格語尾はつかないが、VSO語順により目的語とわかる。主語が複数なので動詞は3PLを用いる。
krávan faronárai du orén.
読み:クラーヴァン ファロナーライ ドゥ オレーン。
| kráv-an | faron-ár-ai | du | orén |
| 叫ぶ-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 下手 | 縁<対格> |
「「運び人たちが縁へ向けて叫ぶ。」」
縁や降ろし場で、荷の動きを知らせる合図として叫ぶ描写。主語が複数名なので直説法複数 -an。faronár の複数は faronárai。du+対格は縁の市・崖下への方向を示す。
krávir, faronárai!
読み:クラーヴィル、ファロナーライ!
| kráv-ir, | faron-ár-ai |
| 叫ぶ-<皆で〜せよ> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> |
「「叫べ、運び人たち!」」
励ましとしての命令。凍りの頃の崖道で仲間へ気合いを送る場面。日常では呼格を使わず、呼びかけとして主格複数を句末に置く。
sénan torárai bormúndo.
読み:セーナン トラーライ ボルムンド。
| sén-an | tor-ár-ai | bormúndo. |
| 見る-<彼らが> | 来る-<〜する人>-<〜たちが> | 出入口<対格> |
「客たちが出入口を見る。」
見出し語 bormúndo は重性o語幹の単数主格・対格と同一形なので、ここでは与格や属格を作らず、そのまま対格として用いる。
brúnan faronárai dulfáron.
読み:ブルーナン ファロナーライ ドゥルファーロン。
| brún-an | faron-ár-ai | dulfáron |
| 背負う-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 下ろし荷<対格> |
「運び人たちは下ろし荷を背負う。」
縁の市での仕事の描写。faronárは人なので、動詞は性を区別しない3複。dulfáronは「下ろし荷」を表す重性名詞で、対格も主格と同形。
þúelan kelárai tromó.
読み:スーエラン ケラーライ トロモー。
| þúel-an | kel-ár-ai | tromó. |
| 追う-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 足跡<対格> |
「樵たちは足跡をたどる。」
kelárai は kelár「樵」の複数主語。tromó は足跡をひと続きの痕として受ける。比喩的「跡を追う」の用法。
púlan faronárai krúndo.
読み:プーラン ファロナーライ クルンド。
| púl-an | faron-ár-ai | krúndo. |
| 軽く叩く-<彼らが> | 運ぶ-<〜する人>-<〜たちが> | 荷担ぎ歌<対格> |
「運び人たちは荷担ぎ歌(の拍子)を軽く打つ。」
荷運びの拍子に軽く打つ用法。目的語の krúndo は重性o語幹の単数対格で、主格 krúndo と同形である。軽性の対格語尾 -án を添えるのは誤り。ここでは歌そのものより、その歌に付随する拍子を受ける比喩的用法。主体 faronárai は複数軽性なので、動詞は性を区別しない3人称複数 -an をとる。
sórel, vélan endríñai.
読み:ソーレル、ヴェーラン エンドリーニャイ。
| sórel, | vél-an | endríñ-ai. |
| 今日 | 渇く-<彼らが> | 子ども-<〜たちが> |
「今日、子どもたちは渇いている。」
書物の記述では、時の語を短く示してから状態を言い切る。複数の子どもは軽性だが、動詞は複数の人称語尾のみで性を区別しない。
rímba senár téir lénais plénur.
読み:リンバ セナール テール レーナイス プレーヌル。
| rímb-a | sen-ár | téir | lén-ais | plén-ur |
| 数える-<(軽いものが)> | 見る-<〜する人> | 三 | 枚-<〜たちを> | 板-<〜らの> |
「目付が板材を三枚数える。」
検めの場面。平らな部材を数える量の名詞 lén は軽性で、目的語としての三枚は lén-ais。数えられる板は複数属格 plénur にして量の名詞の後ろに置く。
auþovonóran ólmarai.
読み:アウソヴォノーラン オルマライ。
| au-þovonór-an | ólmar-ai |
| <お〜になる・御〜>-顔を影へ向ける-<彼らが> | 年長者-<〜たちが> |
「年長者たちは、顔を影へ向けられた。」
礼法書や詩で、年長者複数名の失望を示す叙述。主語は人なので軽性複数-ai、動詞は3複-an。au- は年長者複数全体への敬意を示す。日常では用いられず、礼法上の不信心・道徳的拒絶を記すときに近い。
ái, mombrúumo brés némes.
読み:アイ、モンブルーモ ブレース ネーメス。
| ái, | mombrúum-o | brés | ném-es. |
| おや, | 石落ちる-<(重いものが)> | 胸<主格> | <私>-<属格> |
「おや、胸がすっとした(ほっとした)。」
くだけた日常の独白・短い応答。主語は「私の胸」。体の部分名詞は文法上重性なので、動詞は3人称単数・重性の-oで受ける。直接「安堵した」と言わず、身体から重みが落ちる感覚として述べる婉曲表現。改まった場では使わない。
sensálim endríñais
読み:センサーリン エンドリーニャイス
| sensál-im | endríñ-ais |
| 見回す-<私が> | 子-<〜たちを> |
「私は子どもたちを順に見回す。」
家庭や炉ばたでの日常。並ばせた子どもらに、視線を一人ずつ通す場面。sál-の「ならす」ニュアンスが残り、見落としなく均等に行き届ける感じが出る。対象は軽性名詞 endríña の複数対格 endríñais。
anórel, sensála ólmar endríñais
読み:アノーレル、センサーラ オルマル エンドリーニャイス
| anórel, | sensál-a | ólmar | endríñ-ais |
| 昨日 | 見回す-<(軽いものが)> | 年長者<主格> | 子-<〜たちを> |
「昨日、年長者が子どもたちを順に見回した。」
書物・記録風。時表現 anórel を動詞の前に置いている。主語 ólmar は人を指す軽性なので、動詞は軽性3人称単数の -a。高原語に時制標識はないが、anórel が過去を指定する。
ái! senkráno senó némes.
読み:アイ!センクラーノ セノー ネーメス。
| ái! | senkrán-o | senó | ném-es. |
| おや! | 目が止まる-<(重いものが)> | 目<主格> | <私>-<属格> |
「おや!私の目が、思わず見開かれた。」
驚きの感嘆詞 ái を添えた日常の言い方。身体部位の所有は名詞に属格代名詞を後接する。主語が単数の目なので、動詞は重性3SG.HV。両目を指す文脈では双数の主語形も取りうる。
lúin áuran ombára ilánai, þrínan éndrai.
読み:ルーイン アウラン オンバーラ イラーナイ、スリーナン エンドライ。
| lúin | áur-an | ombára | ilán-ai, | þrín-an | éndr-ai. |
| とき | 昇る-<彼らが> | 十 | 灯-<〜たちが> | 目を覚ます-<彼らが> | 人-<〜たちが> |
「十の灯が昇ると、人々は目を覚ます。」
暦や儀礼の詞に似た書面の文。lúin 節は主節の前に置く。ombára ilánai は「十の灯」という星座名で、古い形 ombára が名前にだけ残っている。「十の灯」は通常の星の数えではなく、星を数えている意味にはならない。3複数の動詞は性を区別しない。
lúin áuran ombára ilánai, seláura ólmar.
読み:ルーイン アウラン オンバーラ イラーナイ、セラウラ オルマル。
| lúin | áur-an | ombára | ilán-ai, | seláur-a | ólmar |
| とき | 昇る-<彼らが> | 十 | 灯-<〜たちが> | 目覚める-<(軽いものが)> | 年長者<主格> |
「十の灯が昇ると、年長者は目を覚ます。」
書物・年代記向けの描写。lúin による時節節が主節の前に置かれる。áuran ombára ilánai は「十の灯が昇る」という星座名に基づく定型表現。主節の seláura は主語 ólmar に一致して軽性 3 人称単数。
kekélan kelárai derván.
読み:ケケーラン ケラーライ デルヴァーン。
| kekél-an | kel-ár-ai | derv-án. |
| こねる-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 粉-<対格> |
「樵たちは粉をこねる。」
食事作りの場面。主語 kelárai が複数名詞句なので、動詞は3人称複数形の kekélan になる。粉を表す dervá は軽性a語幹で、対格は derv-án。
þóla fandár viráis.
読み:ソーラ ファンダール ヴィライス。
| þól-a | fandár | vir-áis |
| 声を呑む-<(軽いものが)> | 新入り<主格> | 言葉-<〜たちを> |
「新入りは言葉を呑み、黙っている。」
「声を呑む」の用法。selvá「息」を目的語には取らない。ここでは virá「言葉」の複数対格 viráis を目的語に取る。主語 fandár は人を指す軽性名詞なので、動詞は 3人称単数・軽性の -a を受ける。改まった場や書物の語り向き。
un sélnarail, snénan torárai.
読み:ウン セルナライル、スネーナン トラーライ。
| un | sélnar-ail, | snén-an | torár-ai. |
| 内 | 宿場-<〜らに> | 泊まる-<彼らが> | 客-<〜たちが> |
「宿場では客が泊まる。」
意味2。宿場の複数与格un sélnarailを場面枠として動詞前に置く。toráraiは客の複数主格。
ái, ilméra plána!
読み:アイ、イルメーラ プラーナ!
| ái, | ilmér-a | plána! |
| おや | 濡れる-<(軽いものが)> | 帳簿<主格> |
「おや、帳簿が濡れている。」
日常会話。紙の帳簿が外から水を含んで濡れ重くなっている様子を見る。動詞の ilmér- は、表面が少し湿るだけでなく、物の内側にまで水が入った含みを帯びる。
lína lisár viráis.
読み:リーナ リサール ヴィライス。
| lín-a | lis-ár | vir-áis. |
| 伸ばす-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | 言葉-<〜たちを> |
「書記は言葉を延ばす。」
言葉・話の長びきを延ばす用法。対象は virá の複数対格 viráis。
vándan kundárai fáron
読み:ヴァンダン クンダーライ ファーロン
| vánd-an | kundár-ai | fáron |
| 量る-<彼らが> | 役人-<〜たちが> | 荷<対格> |
「役人たちが荷を量る。」
縁の市や降ろし場の帳場で、度量の手当て・荷の検めを記す文。複数主語でも人を数詞で直接数えず、名詞の複数形で受ける。荷を量るのは帳場の勤め人の仕事として描かれる。
snauléndan lénþai!
読み:スナウレンダン レンサイ!
| snaul-énd-an | lénþ-ai! |
| 生える-<〜しますように>-<彼らが> | 若菜-<〜たちが> |
「若菜たちが育ちますように!」
儀礼・祈願。願望法3複 -énd-an。語根の強勢が消え、接辞 -énd- に移る。
anórel, na snáulan lénþai.
読み:アノーレル、ナ スナウラン レンサイ。
| anórel, | na | snául-an | lénþ-ai. |
| 昨日 | <〜ない> | 生える-<彼らが> | 若菜-<〜たちが> |
「昨日、若菜は伸びなかった。」
書物・記録。場面枠の anórel の後に否定 na を動詞の直前に置く。
vótan méulai endríñais.
読み:ヴォータン メウライ エンドリーニャイス。
| vót-an | méul-ai | endríñ-ais. |
| 産む-<彼らが> | 毛山羊-<〜たちが> | 子-<〜たちを> |
「毛山羊たちが子を出す。」
群れの記録のような記述。主語と目的語が複数。主語は軽性 a 語幹の複数主格 -ai、目的語は軽性 a 語幹の複数対格 -ais。直説法で事実として言い切る。
máina méula kailíñais náumais.
読み:マイナ メウラ カイリーニャイス ナウマイス。
| máin-a | méula | kailíñ-ais | náum-ais. |
| 食べる<〜し終えた>-<(軽いものが)> | 毛山羊<主格> | 藁-<〜たちを> | 柔らかい-<〜たちを> |
「毛山羊が柔らかい藁を食べた。」
家畜に揉んだ藁を与える場面。「干藁」の意味。máina は mán-「食べる」の完了相。対象が複数のため kailíñ-ais と náum-ais となり、形容詞は軽性複数対格に一致する。
tendéran endríñai.
読み:テンデーラン エンドリーニャイ。
| tendér-an | endríñ-ai. |
| 身を寄せ合う-<彼らが> | 子ども-<〜たちが> |
「子どもたちは身を寄せ合っている。」
意味3は複数を主語として取る。専用の相互語形はないが、自動詞用法の目的語無配列が相互的な読みを補う。
un drúnoroi, krándan faronárai dulfáronul
読み:ウン ドルーノロイ、クランダン ファロナーライ ドゥルファーロヌル
| un | drúnor-oi, | kránd-an | faron-ár-ai | dulfáron-ul |
| 内に | 道-<与格> | 奪う-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 下ろし荷-<〜たちを> |
「崖道で、運び人たちが下ろし荷を掠め取る。」
道での争いや混乱に乗じて、荷を取り合う場面。un+与格の場所句を動詞の前に置くと、そこで起きた出来事として述べる。運び人は faron「荷」+-ár「〜する人」で表し、複数主格は faronárai。下ろし荷 dulfáron は重性複数名詞で、主格と対格が同形。
na selvatáulim viráis, salóur selvatáulim virnourán.
読み:ナ セルヴァタウリン ヴィライス、サロール セルヴァタウリン ヴィルノウラーン。
| na | selvatául-im | vir-áis, | salóur | selvatául-im | virnour-án |
| <〜ない> | 聞き取る-<私が> | 言葉-<〜たちを> | しかし | 聞き取る-<私が> | 意味-<対格> |
「言葉そのものではなく、意味を聞き取っている。」
意味をくみ取る用法。na は直説法の否定。salóur は逆接の接続小辞で、二つめの文の頭に置かれる。
þarnéran plánai.
読み:サルネーラン プラーナイ。
| þarnér-an | plán-ai. |
| 切り上がる-<彼らが> | 帳簿-<〜たちが> |
「帳簿が切り上がる。」
帳簿・会計の締めを表す事務的な文。plána は軽性 a 語幹で、複数主格は plánai。物事を一区切りとして終える意味 2 の用法。
monlína lisár lisáis un plánei
読み:モンリーナ リサール リサイス ウン プラーネイ
| monlín-a | lis-ár | lis-áis | un | plán-ei |
| 並べる-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | 字-<〜たちを> | 内 | 帳簿-<与格> |
「書記は帳簿の中に字を並べる。」
帳簿・書物の中で字を列や行として整える用法。平らな面に整列させる含みがある。
gúnan háunai.
読み:グーナン ハウナイ。
| gún-an | háun-ai. |
| 集まる-<彼らが> | 大人-<〜たちが> |
「成人たちが集まる。」
帳簿・規約・年代記のような文。複数形háunaiは、集会・労働・礼法に出席すべき成人集団を指す。動詞は3人称複数。単数の成人個人ではなく、共同体の義務を担う総称として使う。
noumosénan houmárai.
読み:ノウモセーナン ホウマーライ。
| noumosén-an | houmár-ai |
| 顔色をうかがう-<彼らが> | 家の主-<〜たちが> |
「家の主たちが顔色をうかがい合った。」
集まりや相談の場面、また書物の記述に多い言い方。複数の者が判断の手がかりを得るため互いの顔を読む意。主語が複数なので動詞は3複数。noumosén- の第二義。
lóima kloimár pílmais sé.
読み:ロイマ クロイマール ピルマイス セー。
| lóim-a | kloimár | pílm-ais | sé |
| 唱える-<(軽いものが)> | 弟子<主格> | 字の読み-<〜たちを> | この<軽性> |
「弟子がこれらの字の読みを唱える。」
読み一覧や声出しの練習で用いる文。pílma の複数対格は pílmais。指示詞 sé は数を標識しないので、複数名詞句にもそのまま添えられる。
lúin tóra oráur, lisan lisárai plánan.
読み:ルーイン トーラ オラウル、リサン リサーライ プラーナン。
| lúin | tór-a | oráur, | lís-an | lis-ár-ai | plán-an. |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 夜明け<主格> | 書く-<彼らが> | 書く-<〜する人>-<〜たちが> | 帳簿-<対格> |
「夜明けが来ると、書記たちは帳簿を書く。」
帳場・書記の場面。lisár は lís「書く」+ -ár「〜する人」。目的語 planned は軽性a語幹の対格。
lúin tóra oráur, gélan faronárai du orén.
読み:ルーイン トーラ オラウル、ゲーラン ファロナーライ ドゥ オレーン。
| lúin | tór-a | oráur, | gél-an | faron-ár-ai | du | orén. |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 夜明け<主格> | 行く-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 下手 | 縁<対格> |
「夜明けが来ると、運び人たちは縁へ下る。」
運搬作業の場面。lúin 節は主節の前に置く。gélan は gél-「行く」+3複数 -an。faronárai は faron「荷」+ -ár「〜する人」+軽性複数主格 -ai。
funeltrénan faronárai fúnel gléinin.
読み:フネルトレーナン ファロナーライ フーネル グレーニン。
| funeltrén-an | faron-ár-ai | fúnel | gléin-in. |
| 綱を手繰る-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 綱<対格> | 清い-ADV |
「運び人たちは綱を整えながら手繰る。」
作法書や手引のような常態文。主語が複数なので動詞は3複語尾 -an。gléinin が整える様子を表し、意味2として読む。
frándan plíndul un plánail.
読み:フランダン プリンドゥル ウン プラーナイル。
| fránd-an | plínd-ul | un | plán-ail. |
| 並ぶ-<彼らが> | 荷札-<〜たちが> | 中に | 帳簿-<〜らに> |
「帳簿の中に荷札が並んでいる。」
記録・書物についての文。札が帳簿の中で横に揃った状態を記述する。意図的な整列の行為は表さず、出来上がっている列の状態を言う。
pláinan faronárai es nourés senáres.
読み:プライナン ファロナーライ エス ノウレース セナーレス。
| pláin-an | faron-ár-ai | es | nour-és | sen-ár-es |
| 気づく-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | から | 心-<属格> | 見る-<〜する人>-<属格> |
「運び人たちは目付の心中を察する。」
nourán は対格なので pláin- に合わない。es nourés とし、属格の従属語を後置して es nourés senáres とする。faronárai は既知の語と接辞 -ár, -ai で作られる。
mé gromvirésa aursárais.
読み:メー グロンヴィレーサ アウルサーライス。
| mé | gromvir-és-a | aursár-ais. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 人を重として呼ぶ-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 祖先-<〜たちを> |
「「祖先たちを重として呼んではならない。」」
法典・儀礼の禁止定。mé + 当為法は、主語を言わないかぎり一般の人が主語として表され、法文では「〜してはならない」と解される。語根に -és- が付くと強勢が移るので、gromvír- の語根の ´ は消える。祖先は人籍であり、これを重扱いに呼ぶことは禁じられる。
lísa endríña lisáis eelþoplénoi
読み:リーサ エンドリーニャ リサイス エールソプレーノイ
| lís-a | endríña | lis-áis | eelþoplén-oi |
| 書く-<(軽いものが)> | 子<主格> | 字-<〜たちを> | 灰盤-<与格> |
「子どもは灰盤に文字を書く。」
灰面として使う文。与格 eelþoplénoi が、字を付ける灰面を表す。重性子音語幹の与格単数は -oi。日常の習字の場面。
lúnda faronár lundáis aurándos
読み:ルンダ ファロナール ルンダイス アウランドス
| lúnd-a | faronár | lund-áis | auránd-os |
| 歌う-<(軽いものが)> | 運び人<主格> | 歌-<〜たちを> | 社-<属格> |
「運び人が社の歌を歌う。」
社で歌われる歌の場面。faronár は単数の主語で、動詞は軽性単数一致 -a をとる。aurándo は重性o語幹名詞で、属格は -os。
sénim frélul un sávrail.
読み:セーニン フレールル ウン サーヴライル。
| sén-im | frél-ul | un | sávr-ail |
| 見る-<私が> | 魚-<〜たちを> | 内に | 葦-<〜らに> |
「葦原の中に、魚が見える。」
sávra は生えている草として軽性で受けるが、複数 sávrai はそのまま「葦の茂み・葦原」を指す。un sávrail は「葦原の中に」で、un と葦の与格複数 sávr-ail が組み合わさっている。frélo は魚として文法上重性だが、重性の単数主格と対格は同じ形であり、1人称の語尾が主語を兼ねるため frélul は目的語として読まれる。
hóinan krambárai sórel.
読み:ホイナン クランバーライ ソーレル。
| hóin-an | krambár-ai | sórel |
| 帰る-<彼らが> | 狩人-<〜たちが> | 今日 |
「狩人たちは今日戻る。」
複数名詞krambáraiを主語に取った出入り記録向きの文。縁の町では特定の獲物を限定せず、狩人一般を指す用法がある。双数ではなく複数で受ける。
rímba ráuvan traimfiláis sé
読み:リンバ ラウヴァン トラインフィライス セー
| rímb-a | ráuvan | traimfil-áis | sé |
| 数える-<(軽いものが)> | 森の巫<主格> | 年輪-<〜たちを> | この<軽性> |
「森の巫がこれらの年輪を数えている」
森の巫が年輪を数える場面を示す文。主語 ráuvan は人なので軽性とし、動詞は軽性3人称単数 -a で受ける。目的語が複数なので traimfiláis を使い、指示詞 sé は名詞句の末尾に置く。
anlúin, máinan éndrai hégro bóules.
読み:アンルーイン、マイナン エンドライ ヘーグロ ボーレス。
| anlúin, | máin-an | éndr-ai | hégro | bóul-es. |
| 昔 | 食べる<〜し終えた>-<彼らが> | 人-<〜たちが> | 団子<対格> | どんぐり-<属格> |
「昔、人々はどんぐり団子を食べた。」
歴史的な過去は完遂相の直説法で表す。hégro bóules は熟語的にどんぐり団子を指す。
séulan lisárai dulfáron hóumuls.
読み:セウラン リサーライ ドゥルファーロン ホームルス。
| séul-an | lis-ár-ai | dulfáron | hóum-uls. |
| 散らして配る-<彼らが> | 書く-<〜する人>-<〜たちが> | 下ろし荷<対格> | 炉-<与格・〜ら(古い母音交替)> |
「書記たちが、下ろし荷を各家の炉へ配る。」
倉・市での分配を表す日常用法。dulfáron は下ろし荷という集団的な受詞。hóumuls は与格複数で、各家の世帯を表す。動詞 séulan は主語 lisárai と複数一致している。
séulan fléurai réinan.
読み:セウラン フレウライ レーナン。
| séul-an | fléur-ai | réin-an. |
| 散らして配る-<彼らが> | 雲-<〜たちが> | 雨-<対格> |
「雲たちが、雨を散らして配る。」
詩的な用法。天からの恵みが四方へ散る意味に用いられる。fléura は軽性名詞で、fléurai は複数主格。受詞 réinan は軽性の対格。与格は文脈で省略されている。
buldúlan aursárai éndrais
読み:ブルドゥーラン アウルサーライ エンドライス
| buldúl-an | aursár-ai | éndr-ais |
| 根を下ろす-<彼らが> | 祖先-<〜たちが> | 人-<〜たちを> |
「祖先たちが、人々の根となる。」
儀礼や系譜の唱えに用いる句。主語 aursárai は軽性複数で、動詞は 3人称複数 -an をとる。目的語 éndrais は軽性複数の対格。人数を表すには数詞や双数を避け、複数形だけで表す。比喩的な主語が人を支える基盤になるという意味。
méilan endríñai.
読み:メーラン エンドリーニャイ。
| méil-an | endríñ-ai |
| 遊ぶ-<彼らが> | 子ども-<〜たちが> |
「子どもたちが遊んでいる。」
日常の描写文。endrīña は人を指す軽性名詞で、複数主格は -ai。méil- は自動詞なので、この文には直接格の目的語はない。
mé wáur kláulais aulisáres
読み:メー ワウル クラウライス アウリサーレス
| mé | wáur | klául-ais | au-lis-ár-es |
| <禁止・願いの打ち消し> | まねる<命令法> | 物真似-<〜たちを> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<属格> |
「書記の方の物真似をするな。」
高位者の真似を禁じる、やや口頭の禁制。否定禁止は mé+命令法で、命令法 2 単数は語幹 wáur。kláulais は軽性の複数対格。aulisáres は au-lisár「書記の方」の単数属格。
wálan torárai sórel
読み:ワーラン トラーライ ソーレル
| wál-an | tor-ár-ai | sórel |
| 変わる-<彼らが> | 来る-<〜する人>-<〜たちが> | 今日 |
「今日、客たちが替わる。」
話相手が次々と交代する「替わる」の用法。torár は tor-(来る) + -ár の派生語で、複数主格は tor-ár-ai。主語が複数なので、動詞は3人称複数 -an をとる。
áuran ombára ilánai, duói dulíþan kelárai dulfáron.
読み:アウラン オンバーラ イラーナイ、ドゥオイ ドゥリーサン ケラーライ ドゥルファーロン。
| áur-an | ombára | ilán-ai, | duói | dul-íþ-an | kel-ár-ai | dulfáron. |
| 昇る-<彼らが> | 十 | 灯-<〜たちが> | その次に | 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 下ろし荷<対格> |
「十の灯が昇る。その次に、樵たちが下ろし荷を下ろす。」
年代記の記事を読み上げる場面。決まった順の項目を、文1, duói 文2の形でつなぐ改まった用法。duóiは原因ではなく単に項目順を示す。第二節は動詞で始まる。
brólan faronárai helándo.
読み:ブローラン ファロナーライ ヘランド。
| bról-an | faron-ár-ai | helándo. |
| 作る-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 休み場<対格> |
「運び人たちは休み場を作る。」
道路整備や作業の場面。重性名詞 helándo は主格と対格が同型だが、VSO の語順により目的語として読める。faronárai は faron「荷」+-ár「〜する人」+複数主格。
sán rásai eulérenai sé.
読み:サーン ラーサイ エウレーレナイ セー。
| sán | rás-ai | euléren-ai | sé. |
| いる<彼らが> | 衣-<〜たちが> | 別々の-<〜たちが> | この<軽性> |
「これらの衣は互いに違っている。」
比べる相手を言わない複数主語なので、「それぞれ別だ」の意味になる。日常の仕立てや市でのやり取りの形。指示詞 sé が名詞句の終わりを示す。
sán éndrai eulérenai es némores.
読み:サーン エンドライ エウレーレナイ エス ネーモレス。
| sán | éndr-ai | euléren-ai | es | némor-es. |
| いる<彼らが> | 人-<〜たちが> | 流れの違う-<〜たちが> | から | <我々>-<属格> |
「人々は我々とは違う(身内ではない)。」
人を指して euléren を使うと、単に性質が違うのではなく、「別の流れ」に属する、つまり身内でないという冷ややかな意味になる。es némoresは「我々から/我々の身内から」。
orveléim lisáis!
読み:オルヴェレーン リサイス!
| orveléim | lis-áis! |
| 組み替える<命令法><あなたが> | 字-<〜たちを> |
「字を組み替えろ!」
活字作業の現場で使う下向きの命令法。orveléim- の命令法 2 人称単数は語幹そのまま。組み替える対象を直接目的語にとる。
orveléimin lisáis, pándim.
読み:オルヴェレーミン リサイス、パンディン。
| orveléim-in | lis-áis, | pánd-im. |
| 組み替える<〜し終えた>-<〜して・〜く> | 字-<〜たちを> | 刷る-<私が> |
「字を組み替え終えて、刷る。」
版組みの手順を表す定型。副動詞の orveléimin は、主節の pándim と同一の主語を持つ完了副動詞である。目的語の lisáis は活字・駒・字札などの複数対格。
flínim viráis te na lísa éndra.
読み:フリーニン ヴィライス テ ナ リーサ エンドラ。
| flín-im | vir-áis | te | na | lís-a | éndra. |
| 受け入れがたいと思う-<私が> | 言葉-<〜たちを> | <関係節> | <〜ない> | 書く-<(軽いものが)> | 人<主格> |
「人々が書き残さない言葉は、受け入れがたい。」
帳場や書の文脈で、書き残されない言葉を不当・不自然とみなす言い方。主文の目的語は軽性複合語viráの複対形viráis。関係節はteで導かれ、te句では関係の要となる目的語の空白をそのまま空ける。不定の一般的主語としてéndraを主格に置き、関係節内の動詞lís-aはその軽性の主語に一致する。teは無強勢で、指示詞の強勢あるtéと転写上は区別される。
dúlan faronárai bérun du dálor.
読み:ドゥーラン ファロナーライ ベールン ドゥ ダーロル。
| dúl-an | faron-ár-ai | bérun | du | dálor |
| 下る-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 道のり<対格> | 下手 | 下の国<対格> |
「運び人たちは道のり(道筋)を下りて下の国へ行く。」
移動動詞と組む道のり用法。重性名詞 bérun は対格接語を持たず、主格と同形のまま道のりを表す。複数主語 faronárai は軽性行為者名詞 faronár の複数主格。
houméran endríñai elþán
読み:ホウメーラン エンドリーニャイ エルサーン
| houmér-an | endríñ-ai | elþ-án |
| 囲む-<彼らが> | 子ども-<〜たちが> | 火-<対格> |
「子どもたちが火を囲む。」
日常場面。elþá「火」は軽性a語幹で、単数対格は elþán。主語 endríñai は「子どもたち」の複数主格。
houméran dráunai hervíñan
読み:ホウメーラン ドラウナイ ヘルヴィーニャン
| houmér-an | dráun-ai | hervíñ-an |
| 囲む-<彼らが> | 狼-<〜たちが> | 小鹿-<対格> |
「狼たちが小鹿を囲む。」
獣が獲物を四方から取り巻く場面。dráun「狼」は軽性の子音語幹で、複数主格は dráunai。hervíña「小鹿」は軽性a語幹で、単数対格は hervíñan。
houméran endríñai si torárai ó
読み:ホウメーラン エンドリーニャイ シ トラーライ オー
| houmér-an | endríñ-ai | si | torár-ai | ó |
| 囲む-<彼らが> | 子ども-<〜たちが> | と | 客-<〜たちが> | <3人称単数・重性・対格> |
「子どもたちと客たちは、炉を囲んで炉ばたに集う。」
本来は目的語 hóum「炉」を伴う他動詞用法。目的語を省略しないため、3人称重性の対格 ó を残す。
krémban virái sé nouráis
読み:クレンバン ヴィライ セー ノウライス
| krémb-an | vir-ái | sé | nour-áis |
| 引きつける-<彼らが> | 言葉-<〜たちが> | この<軽性> | 心-<〜たちを> |
「これらの言葉は、心を引きつける。」
くだけた日常語でも使える喩的用法。主語が複数なので動詞は3人称複数形をとり、性を区別しない。目的語は「心」の複数対格 nouráis。krémb- の本来の「引く・曳く」から、心や関心を引きつける意味へ転じた文。
flóran faronárai prámbo.
読み:フローラン ファロナーライ プランボ。
| flór-an | faron-ár-ai | prámbo. |
| 取り決める-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 値<対格> |
「運び人たちが値をとり決める。」
prámbo「値」は重性語で、単数の目的語には対格語尾が overt に立たない。複数主体 faronárai に応じて動詞は -an。値決めを段取りとして確定させる用法。
líreran endríñai vrélmo.
読み:リーレラン エンドリーニャイ ヴレルモ。
| lírer-an | endríñ-ai | vrélmo |
| 縫う-<彼らが> | 子ども-<〜たちが> | 毛皮<対格> |
「子どもたちは毛皮を縫う。」
主語が複数の現在の文。動詞は3人称複数で性を区別しない。毛皮を接ぐという日常の縫い仕事の場面。
noumovíran aursárai, na víran aursárai
読み:ノウモヴィーラン アウルサーライ、ナ ヴィーラン アウルサーライ
| noumo-vír-an | aursár-ai, | na | vír-an | aursár-ai |
| 顔-言う-<彼らが> | 祖先-<〜たちが> | <〜ない> | 言う-<彼らが> | 祖先-<〜たちが> |
「祖先たちは顔で通じ合い、口には語らない。」
儀礼・系譜の読み上げなどで祖先どうしの通じを述べる、改まった定型句。主語 aursárai「祖先たち」が複数なので動詞は3複の -an をとる。第二節で vír-「言う」の否定を並べ、無言の合図が発語と同格に扱われることを示す。
houmnílim viráis.
読み:ホウンニーリン ヴィライス。
| houmníl-im | vir-áis. |
| 炉ばたの話を盛り上げる-<私が> | 言葉-<〜たちを> |
「私は炉ばたの話を盛り上げる。」
viráis は炉ばたの会話・言葉を受ける目的語。火を燃料で維持する語を転じて、会話を活性化する意を表す。一人称は動詞語尾に現れる。
lúin tóra torár, houmníla sélvan viráis.
読み:ルーイン トーラ トラール、ホウンニーラ セルヴァン ヴィライス。
| lúin | tór-a | torár, | houmníl-a | sélvan | vir-áis. |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 客<主格> | 炉ばたの話を盛り上げる-<(軽いものが)> | セルヴァン<主格> | 言葉-<〜たちを> |
「客が来ると、セルヴァンは炉ばたの話を盛り上げる。」
lúin の従属節で、客の来訪という炉ばたの場面を置く。torár が加わることで、人との距離を縮める比喩用法が立つ。sélvan は軽性の名として動詞 -a を受ける。
lúin na ráinan endríñai amvirán, drúnan.
読み:ルーイン ナ ライナン エンドリーニャイ アンヴィラーン、ドルーナン。
| lúin | na | ráin-an | endríñ-ai | amvir-án, | drún-an. |
| とき | <〜ない> | 知る-<彼らが> | 子ども-<〜たちが> | 高地語-<対格>, | 首を傾ける-<彼らが> |
「子どもたちは高地語がわからないと、首を傾ける。」
書物的な常態表現。lúin が「〜すると」と副節を導く。副節は否定の na、動詞、主語、目的語の順で、主節は人称接辞 -an が副節の主語 endríñai を受けて省略される。drúnan は、聞き手が相手の言葉を整理しようとするときに見られる自動詞用法。
rainíþim þúmvan endríñail sérin
読み:ライニーシン スンヴァン エンドリーニャイル セーリン
| rainíþ-im | þúmv-an | endríñ-ail | sérin |
| 教える-<私が> | 口笛-<対格> | 子-<与格・〜ら(古い母音交替)> | このように |
「子どもたちに口笛をこのように教える。」
教則・作法の書のような記述。rainíþ- は教えるものを対格、受け手を与格に取る。endríñail は endríña の与格複数。行為のやり方を教える文脈で、音としての一声ではなく働きを表す。
ké ráuman faronárai drúnoroi es orénos du kéndor?
読み:ケー ラウマン ファロナーライ ドルーノロイ エス オレーノス ドゥ ケンドル?
| ké | ráum-an | faron-ár-ai | drúnor-oi | es | orén-os | du | kéndor? |
| <〜か> | 歩く-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 縁の石段道-<与格> | から | 縁-<属格> | 下手 | 市<対格> |
「運び人たちは、縁の石段道を、縁から市まで歩いているのか。」
日常の問いかけ。faronárai は faronár の複数。drúnor は重性子音語幹として与格単数 drúnoroi を取る。 ráum-「歩く」は道・経路を裸の与格で取るため un は用いない。 es orénos du kéndor が両端を指定することで、縁の石段道をひと続きの区間として指す用法を示す。
男女や身分を問わず使う、ふつうの感嘆の間投詞。軽い驚きに使い、強い驚きや畏れには aursáre を使う。
活用しない。
古高原語 *ái から
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