dúl-

品詞
動詞
意味
下る
辞書形
dúla
発音
[ˈdula]
読み
ズーラ
分野
基本動作

意味

  1. 下る

    坂・崖道・川筋などを上から下へ移る。水が流れ下ることにも使う。

    dúlo gandér du dálor.

    読み:ドゥーロ ガンデール ドゥ ダーロル。

    dúl-ogandérdudálor
    下る-<(重いものが)>硬木<主格>下手下の国<対格>

    「硬木が下の国へ下りていく。」

    VSO の基本の文。直説法には法の印がないので、語根に人称の語尾が直接つく。主語の gandér は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。du+対格で「下手へ」。dálor も重性なので、主格と対格が同じ形になる。

    mé duliþésa fáron es orénos.

    読み:メー ドゥリセーサ ファーロン エス オレーノス。

    médul-iþ-és-afáronesorén-os
    <禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>から縁-<属格>

    「縁から荷を落とさぬこと。」

    度量衡の碑の一句。当為法の文は mé で否定する。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の形をとる。強勢は当為法の -és- に移り、-íþ- の強勢は消える。

    duþélim sélvanan, an fóndaros ráimaros dúlenan dáumbar téir lóurul, dúlenan fáir þrénul.

    読み:ドゥセーリン セルヴァナン、アン フォンダロス ライマロス ドゥーレナン ダウンバル テール ロールル、ドゥーレナン ファイル スレーヌル。

    du-þél-imsélvan-an,anfóndar-osráimar-osdúl-en-andáumbartéirlóur-ul,dúl-en-anfáirþrén-ul
    <〜させていただく>-名乗る-<私が>セルヴァン-<対格>上手源-<属格>ライマル-<属格>下る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>二十三瀬-<〜たちを>下る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>四段-<〜たちを>

    「ライマルの源から二十三瀬下りた、四段下りの者、セルヴァンと名乗らせていただきます。」

    改まった場での名乗り。固有名も小文字で書く。分詞 dúlenan は二度とも、名前の sélvanan(軽性・単数・対格)に一致している。lóurul と þrénul は道のりの対格。瀬と段は語が違うので、どちらが世代でどちらが身分かがすぐにわかる。

    dulíþan kelárai slúun báronur gandérur.

    読み:ドゥリーサン ケラーライ スルーン バーロヌル ガンデールル。

    dul-íþ-ankel-ár-aislúunbáron-urgandér-ur
    下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>千本-<〜らの>硬木-<〜らの>

    「樵たちが硬木千本を下ろす。」

    slúun「千」は名詞として働き、量の名詞 báron「本」を複数属格でとる。その báron がさらに硬木を複数属格でとるので、属格が二つ続く。直説法では、-íþ- が自分で強勢をとる。

    dúlo gandér kélen kelárar só du orén.

    読み:ドゥーロ ガンデール ケーレン ケラーラル ソー ドゥ オレーン。

    dúl-ogandérkél-enkel-ár-arsóduorén.
    下る-<(重いものが)>硬木<主格>伐る-<〜した・〜された>伐る-<〜する人>-<〜らの>この<重性>下手縁<対格>

    「樵たちが伐ったこの硬木が、縁へ下りていく。」

    名詞句の並び順は「名詞–分詞–属格–指示詞」。分詞は重性・単数・主格なので一致の語尾がない。分詞の後ろの属格 kelárar は「樵たちによって」の意味。関係節がないので、重性の指示詞 só が名詞句の終わりの目印になり、du orén は主節にかかる。

    dúlo du dálor gandér te kéelan kelárai.

    読み:ドゥーロ ドゥ ダーロル ガンデール テ ケーラン ケラーライ。

    dúl-odudálorgandértekéel-ankel-ár-ai.
    下る-<(重いものが)>下手下の国<対格>硬木<主格><関係節>伐る<〜し終えた>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>

    「樵たちが伐り終えた硬木が、下の国へ下りていく。」

    関係節は名詞の後ろに無強勢の te を置き、すぐ後ろに動詞を続ける。目的語が抜けた穴は空けたままにする。関係節は文の終わり(か読点)まで続くので、du dálor を主節にかけるために、関係節つきの重い主語を文末に回している。dúlo gandér te kéelan kelárai du dálor と言うと、du dálor は関係節の中に入ってしまう。gandér は重性だが、関係節を導くのは te のままで、tó にはならない(tó なら「あの硬木」)。

    selvéna ausenár ré mé duliþésa fáron es orénos.

    読み:セルヴェーナ アウセナール レー メー ドゥリセーサ ファーロン エス オレーノス。

    selvén-aau-sen-árrémédul-iþ-és-afáronesorén-os.
    おっしゃる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人><〜と(節)><禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>から縁-<属格>

    「目付殿は、「縁から荷を落とさぬこと」とおっしゃる。」

    ré は「〜と」の節を導き、その節は主節の後ろに置く。ré の後ろの節は、元の文の法を保つ。ここでは度量衡の碑の一句 mé duliþésa fáron es orénos を、当為法のまま引用している。目付が碑の前で揉め事を裁くときの言い方。

    lúin áuran ombára ilánai, dulíþan kelárai gandér.

    読み:ルーイン アウラン オンバーラ イラーナイ、ドゥリーサン ケラーライ ガンデール。

    lúináur-anombárailán-ai,dul-íþ-ankel-ár-aigandér.
    とき昇る-<彼らが>十灯-<〜たちが>下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>硬木<対格>

    「十の灯が昇ると、樵たちは硬木を下ろす。」

    「〜とき」の節は lúin で始め、ふつう主節の前に置く。ombára ilánai「十の灯」は星座の名前で、古い形の「十」が固まって残ったもの。星を数えているわけではない。

    duliþíre kelár fáron es orénos, toriþéla dálor.

    読み:ドゥリシーレ ケラール ファーロン エス オレーノス、トリセーラ ダーロル。

    dul-iþ-ír-ekel-árfáronesorén-os,tor-iþ-él-adálor.
    下る-<〜させる>-<もし〜なら>-<(軽いものが)>伐る-<〜する人・主格>荷<対格>から縁-<属格>来る-<〜させる>-<〜だろう>-<(軽いものが)>下の国<対格>

    「樵が縁から荷を落とせば、下の国を呼び寄せることになろう。」

    条件の節は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけで作り、主節の前に置く。帰結の節は推量法。後半では主語を言っていないが、動詞の語尾から、前半と同じ樵が主語だとわかる。崖から物を落としてはいけない、という禁忌の説明。

    pón dulíþo gandér?

    読み:ポーン ドゥリーソ ガンデール?

    póndul-íþ-ogandér?
    何<対格>下る-<〜させる>-<(重いものが)>硬木<主格>

    「硬木は何を下ろすのか。」

    目的語を尋ねる問い。重性の名詞どうしでも、疑問詞の対格 pón で、残った gandér が主語だとわかる。

    pó dulíþo gandér?

    読み:ポー ドゥリーソ ガンデール?

    pódul-íþ-ogandér?
    何<主格>下る-<〜させる>-<(重いものが)>硬木<対格>

    「何が硬木を下ろすのか。」

    主語を尋ねる問い。疑問詞が主格 pó なので、残った gandér は目的語になる。くだけた言葉では、この形が「硬木は何を下ろすのか」の意味にもなりうる。

    fáron dulíþo ílmo.

    読み:ファーロン ドゥリーソ イルモ。

    fárondul-íþ-oílmo.
    荷<対格>下る-<〜させる>-<(重いものが)>水<主格>

    「荷をこそ、水が下ろす。」

    他動詞の文で前に出した重性の名詞は、既定で目的語として読む。主語の位置にいる ílmo が主語。

    ílmo dulíþo ó fáron.

    読み:イルモ ドゥリーソ オー ファーロン。

    ílmodul-íþ-oófáron.
    水<主格>下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・主格>荷<対格>

    「水こそが、荷を下ろす。」

    前に出した重性の名詞が主語のときは、空いた主語の位置に再述の ó を残す。ó があるので、fáron は目的語に決まる。

    dulíþo ó.

    読み:ドゥリーソ オー。

    dul-íþ-oó.
    下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・対格>

    「(それが)それを下ろす。」

    3人称の目的語は省かないので、単独の ó は目的語。主語は動詞の語尾 -o でわかるので言わない。

    ó dúlo.

    読み:オー ドゥーロ。

    ódúl-o.
    <3人称単数・重性・主格>下る-<(重いものが)>

    「ほかでもなく、それが下りていく。」

    自動詞の文には目的語がないので、前に出した ó は主語として読む。

    gandér dulíþo ó.

    読み:ガンデール ドゥリーソ オー。

    gandérdul-íþ-oó.
    硬木<対格>下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・主格>

    「硬木をこそ、それが下ろす。」

    前に出した gandér が目的語の枠を埋めているので、後ろの ó は主語の枠にある。単独の ó が主語になる例。

    gandér dulíþo óo.

    読み:ガンデール ドゥリーソ オー。

    gandérdul-íþ-oóo.
    硬木<主格>下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・NOM+ACC>

    「硬木こそが、それを下ろす。」

    縁の言葉。主語の枠の再述の ó と、目的語の枠の ó が続くので、一語に縮めて óo と言う。都の人は ó ó と並べるのを嫌い、目的語を名詞で言い直す。

    léisa lisár plánan, duói dúlo fáron du orén.

    読み:レーサ リサール プラーナン、ドゥオイ ドゥーロ ファーロン ドゥ オレーン。

    léis-alis-árplán-an,duóidúl-ofáronduorén.
    書く<〜し終えた>-<(軽いものが)>書く-<〜する人>帳簿-<対格>それから下る-<(重いものが)>荷<主格>下手縁<対格>

    「書記が帳簿を書き終え、それから荷が縁へ下りていく。」

    duói「それの下手で」は、出来事の順序をはっきりさせる。

    áura selvá, salóur dúlo ílmo.

    読み:アウラ セルヴァー、サロール ドゥーロ イルモ。

    áur-aselvá,salóurdúl-oílmo.
    昇る-<(軽いものが)>息<主格>しかし下る-<(重いものが)>水<主格>

    「息は昇る。しかし、水は下る。」

    salóur「瀬の外に」は逆接。強勢があり、後ろに短い切れ目が入る。

    dúlim an dún.

    読み:ドゥーリン アン ドゥーン。

    dúl-imandún.
    下る-<私が>上手丘<対格>

    「私は丘の北側へ下る。」

    都の言い方。an はいつも北を指すので、北へ下る斜面でも an を使う。森や縁の人は、その場の高さで du dún と言う。

    sénim gandér te dulíþo ílmo.

    読み:セーニン ガンデール テ ドゥリーソ イルモ。

    sén-imgandértedul-íþ-oílmo.
    見る-<私が>硬木<対格><関係節>下る-<〜させる>-<(重いものが)>水<主格>

    「私は、水が下ろす硬木を見る。」

    関係節の要は前に出した語と同じ扱いで、既定では目的語の枠を埋める。残った ílmo が主語。

    sénim gandér te dulíþo ó ílmo.

    読み:セーニン ガンデール テ ドゥリーソ オー イルモ。

    sén-imgandértedul-íþ-oóílmo.
    見る-<私が>硬木<対格><関係節>下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・主格>水<対格>

    「私は、水を下ろす硬木を見る。」

    要が主格と対格が同じ形の語で、関係節の主語のときは、主語の枠に再述の ó を残す。

    dulíþo ó gandér ílmo te séna senár.

    読み:ドゥリーソ オー ガンデール イルモ テ セーナ セナール。

    dul-íþ-oógandérílmotesén-asen-ár.
    下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・主格>硬木<対格>水<主格><関係節>見る-<(軽いものが)>見る-<〜する人>

    「目付が見る水が、硬木を下ろす。」

    都の言葉。関係節つきの主語を後ろへ回し、目的語が主格と対格が同じ形の語なので、空いた主語の枠に ó を残す。

    sénim gandér te dulíþa éndra.

    読み:セーニン ガンデール テ ドゥリーサ エンドラ。

    sén-imgandértedul-íþ-aéndra.
    見る-<私が>硬木<対格><関係節>下る-<〜させる>-<(軽いものが)>人<主格>

    「私は、人が下ろす硬木を見る。」

    関係節の動詞の -a(軽性)が主語は人だと示すので、重性の要は目的語とわかる。

    gandér te sénim, dulíþo ílmo.

    読み:ガンデール テ セーニン、ドゥリーソ イルモ。

    gandértesén-im,dul-íþ-oílmo.
    硬木<対格><関係節>見る-<私が>下る-<〜させる>-<(重いものが)>水<主格>

    「私が見た硬木を、水が下ろす。」

    主題の前置き。読点つきで前に出した名詞句も、他動詞の文では既定で目的語の枠を埋める。

    gandér te sénim, dulíþo ó ílmo.

    読み:ガンデール テ セーニン、ドゥリーソ オー イルモ。

    gandértesén-im,dul-íþ-oóílmo.
    硬木<主格><関係節>見る-<私が>下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・主格>水<対格>

    「私が見た硬木が、水を下ろす。」

    主題の前置きが主語のときは、主語の枠に再述の ó を残す。

    ké gandér te sénim, dulíþo ílmo?

    読み:ケー ガンデール テ セーニン、ドゥリーソ イルモ?

    kégandértesén-im,dul-íþ-oílmo?
    <〜か>硬木<対格><関係節>見る-<私が>下る-<〜させる>-<(重いものが)>水<主格>

    「私が見た硬木を、水が下ろすのか。」

    ké は主題の前置きより前、文のいちばん前に置く。

    dulíþin vúurimor gandér.

    読み:ドゥリーシン ヴーリモル ガンデール。

    dul-íþ-invúur-imorgandér.
    下る-<〜させる>-<〜して・〜く>届く-<我々が>硬木<対格>

    「我々は硬木を下ろせる。」

    副動詞+vúur-「届く」で、状況が許して「できる」。人称の語尾は vúur- につき、前の動詞の目的語 gandér は後ろに置く。

    na dulíþin vúuro fúnel gandér du dálor.

    読み:ナ ドゥリーシン ヴーロ フーネル ガンデール ドゥ ダーロル。

    nadul-íþ-invúur-ofúnelgandérdudálor.
    <〜ない>下る-<〜させる>-<〜して・〜く>届く-<(重いものが)>綱<主格>硬木<対格>下手下の国<対格>

    「綱は硬木を下の国まで下ろせない。」

    否定の na は副動詞の前に置き、二つの動詞をまとめて打ち消す。綱の長さが届かない、という可能の否定。

    dúlan kelárai es dúnos.

    読み:ドゥーラン ケラーライ エス ドゥーノス。

    dúl-ankel-ár-aiesdún-os.
    下る-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>から丘-<属格>

    「樵たちが丘から下りてくる。」

    es+属格で、方向を問わない「〜から」を表す。主語の kelárai は軽性の複数(kél-「伐る」+-ár「〜する人」)なので、動詞は3人称複数の -an をとる。dún の属格は重性の -os になる。

    dúlo ílmo es fóndaros du dálor.

    読み:ドゥーロ イルモ エス フォンダロス ドゥ ダーロル。

    dúl-oílmoesfóndar-osdudálor.
    下る-<(重いものが)>水<主格>から源-<属格>下手下の国<対格>

    「水は源から下の国へと下っていく。」

    水は泉で生まれ、段を下るごとに重くなって、最後は崖の下に沈む。この見方を言い表す、教えや詩でよく使われる言い回し。ílmo(水)は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。es+属格は、方向を問わない「〜から」。

    ésa sélvan dúlen dáumbar lóurul an fóndaros ráimaros.

    読み:エーサ セルヴァン ドゥーレン ダウンバル ロールル アン フォンダロス ライマロス。

    és-asélvandúl-endáumbarlóur-ulanfóndar-osráimar-os.
    いる-<(軽いものが)>セルヴァン<主格>下る-<〜した・〜された>二十瀬-<〜たちを>上手源-<属格>ライマル-<属格>

    「セルヴァンは、ライマルの源から二十瀬下った者である。」

    ある人の世代を、第三者として述べる改まった文。序数を使わず、「分詞 dúlen+数詞+瀬の複数対格(道のりの対格)」で言う。分詞は主語 sélvan(軽性・単数・主格)に一致するので、語尾がつかない。瀬の数が多いのは誉れとされる。

    ésa lisár sé dúlen fáir þrénul.

    読み:エーサ リサール セー ドゥーレン ファイル スレーヌル。

    és-alis-ársédúl-enfáirþrén-ul.
    いる-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格>この<軽性>下る-<〜した・〜された>四段-<〜たちを>

    「この書記は四段下りの者だ。」

    ある人の身分を、第三者に説明する文。身分も「dúlen+数詞+段 þrén の複数対格」で言う。lóur(瀬)ではなく þrén(段)を使っているので、世代ではなく身分の話だとわかる。本人の前でこのように数詞を添えて言うのは、相手の段によっては無作法になる。

    dúlan dáumbar fáronul du orén.

    読み:ドゥーラン ダウンバル ファーロヌル ドゥ オレーン。

    dúl-andáumbarfáron-ulduorén.
    下る-<彼らが>二十荷-<〜たちが>下手縁<対格>

    「二十の荷が縁へ下りていく。」

    崖道で荷が下ろされていくようすを言う文。dáumbar は dáu(二)と ombár(十)が縮まった不規則な形。三以上の数詞と同じく、後ろの名詞を複数にする。重性名詞の複数は -ul になる。動詞は3人称複数の -an で、複数では性を区別しない。

    dúlimor es orénos du dálor.

    読み:ドゥーリモル エス オレーノス ドゥ ダーロル。

    dúl-imoresorén-osdudálor.
    下る-<我々が>から縁-<属格>下手下の国<対格>

    「我々は縁から下の国へ下りる。」

    崖道の商人や運び人が、乾風期に市へ下りるときの言い方。出どころは「es+属格」、行き先は「du+対格」で言う。主語は動詞の語尾 -imor でわかるので、代名詞は言わない。

    dúla ilána an álmarei!

    読み:ドゥーラ イラーナ アン アルマレイ!

    dúl-ailánaanálmar-ei!
    下る-<(軽いものが)>星<主格>上手白月-<与格>

    「白月の上手で、星が流れた!」

    流れ星は「星が下りる」と言う。上から何かが下りてくるしるしとして警戒される。星の位置は指さずに、「an+与格」で白月との位置関係として言う。時制がないので、「流れる」とも「流れた」とも訳せる。

    mé dúl du orén!

    読み:メー ドゥール ドゥ オレーン!

    médúlduorén!
    <禁止・願いの打ち消し>下る<命令法><あなたが>下手崖の際<対格>

    「崖の際へ近寄るな。」

    子どもや新入りの運び人に向けた、強い禁止。禁止は「mé+命令法」で言う。崖の際は南(下手)にあるので、そちらへ向かうことを「下る」と言う。崖から落ちて死ぬことは、魂が下へ引かれる、もっとも恐れられる死とされる。

    dúlo ílmo es þéulos du orén.

    読み:ドゥーロ イルモ エス セウロス ドゥ オレーン。

    dúl-oílmoesþéul-osduorén.
    下る-<(重いものが)>水<主格>から湧き水-<属格>下手縁<対格>

    「水は湧き水から縁へと下っていく。」

    水の流れを言う、ごくふつうの言い切りの文。ílmo「水」は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。es+属格で出どころを、du+対格で行き先を表す。高原の人の考えでは、水は源から生まれて下へ流れていくものなので、この文は自然を述べた文であると同時に、世界観の決まり文句でもある。

    mé vír lúdro! dúla virá gróm du dálor.

    読み:メー ヴィール ルードロ!ドゥーラ ヴィラー グローン ドゥ ダーロル。

    mévírlúdro!dúl-avirágrómdudálor.
    <禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>嘘<対格>下る-<(軽いものが)>言葉<主格>重い下手地の底<対格>

    「嘘をつくな。重い言葉は地の底へ沈むぞ。」

    親が子をたしなめるときの言い方。lúdro「嘘」は重性o語幹なので、対格は主格と同じ形。言葉は本来軽性で上へ昇るものだが、崩れた言葉は「重く」なって下へ落ちる、という考えを表す。virá は軽性なので、形容詞 gróm は語尾なし、動詞は -a をとる。

    toríro nébro, mé dúl es orénos!

    読み:トリーロ ネーブロ、メー ドゥール エス オレーノス!

    tor-ír-onébro,médúlesorén-os!
    来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>下る<命令法><あなたが>から縁-<属格>

    「霧が来たら、縁から下りるな!」

    崖道の上り口で目下の者に言う、下向きの禁止。前半は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけの条件節で、霧 nébro は重性なので語尾は -o。後半は「mé+命令法の2人称単数(むき出しの語幹 dúl)」の形。霧期に崖道を下りるのは危ないうえ、霧は「下の国の息」として恐れられているので、よく聞く戒めである。

    dulíþan kelárai gandér es orénos.

    読み:ドゥリーサン ケラーライ ガンデール エス オレーノス。

    dul-íþ-ankel-ár-aigandéresorén-os.
    下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>杭材<対格>から縁-<属格>

    「樵たちは縁から硬木の丸太を下ろす。」

    乾風期の吊り下ろしを述べる文。gandér は重性なので、主格と対格が同じ形になる。動詞のすぐ後ろの kelárai が主語で、その次の gandér が目的語。ここでは数を言わずに、伐り出された材をひとまとまりとして言っている。帳簿で数を書くときは、かならず量の名詞 báron「本」を添える。

    dúlo gromó du dálor, áura selvá.

    読み:ドゥーロ グロモー ドゥ ダーロル、アウラ セルヴァー。

    dúl-ogromódudálor,áur-aselvá.
    下る-<(重いものが)>体<主格>下手地の底<対格>昇る-<(軽いものが)>息<主格>

    「体は地の底へ沈み、息は昇る。」

    弔いのときに森の巫や系譜読みが唱える句。重性の gromó「体」と軽性の selvá「息」が、動詞の語尾 -o/-a でも対になっている。dálor はここでは干潟ではなく、上・中・下の三層の「下」、重いものが沈んでいく地の底を指す。

    lúin brúuma éndra es orénos, dúlau gromó si selvá.

    読み:ルーイン ブルーマ エンドラ エス オレーノス、ドゥーラウ グロモー シ セルヴァー。

    lúinbrúum-aéndraesorén-os,dúl-augromósiselvá.
    とき落ちる-<(軽いものが)>人<主格>から縁-<属格>下る-<双数>体<主格>と魂<主格>

    「人が縁から落ちると、体も魂もともに下へ引かれていく。」

    崖から落ちて死ぬことが恐れられる理由を述べる、教えの文。単数の名詞を si で二つ並べたので、動詞は双数の dúlau になり、性を区別しない。重い体と軽い魂がそろって下るのは、高原の考えではいちばん不吉なことである。

    dúlau dáu faronárau du orén.

    読み:ドゥーラウ ダウ ファロナーラウ ドゥ オレーン。

    dúl-audáufaron-ár-auduorén.
    下る-<双数>二荷-<〜する人>-<双数>下手縁<対格>

    「二人の運び人が縁へ下りていく。」

    崖道の様子を言う日常の文。dáu の後ろの名詞は双数になる(faronár → faronárau)。主語が双数なので、動詞も双数 -au になる。双数の動詞は人称も性も区別しない。運び人は働き手なので、数詞で数えても失礼にならない。目上の人を指す高め名詞には、dáu も双数もつけられない。

    dúlim dáumbar téir lóurul an fóndaros ráimaros.

    読み:ドゥーリン ダウンバル テール ロールル アン フォンダロス ライマロス。

    dúl-imdáumbartéirlóur-ulanfóndar-osráimar-os.
    下る-<私が>二十三世代-<〜たちを>上手源-<属格>ライマル-<属格>

    「私はライマルの源から二十三瀬下った者だ。」

    自分の世代を言う、ふつうの話し方の文。改まった名乗りでは謙譲の動詞と分詞 dúlenan を使うが、ここでは直説法の動詞 dúlim を使う。lóurul は道のりの対格で、「何世代下ったか」を表す。身分の段 þrén と語が違うので、世代の話だとすぐにわかる。

    dúlimor þrénul dúnos.

    読み:ドゥーリモル スレーヌル ドゥーノス。

    dúl-imorþrén-uldún-os.
    下る-<我々が>段-<〜たちを>丘-<属格>

    「我々は丘の石段を下りる。」

    þrénul は、どこを下りるかを表す道のりの対格。dún「丘」の属格 dúnos を、名詞の後ろに置いている。坂や石段を下りるときは目下の者が先を歩き、上るときは目上の者が先を歩く。

    pómbar þrénul dúles?

    読み:ポンバル スレーヌル ドゥーレス?

    pómbarþrén-uldúl-es?
    いくつ段-<〜たちを>下る-<あなたが>

    「お前は何段下りの者だ。」

    相手の身分を尋ねる、下向きの問い。身分は「頂から何段下りたか」で言うので、動詞 dúl- と道のりの対格 þrénul を使う。答えは、たとえば réum þrénul dúlim「九段下りだ」となる。目上の人にこう尋ねるのはひどく無礼で、目上の人には推量法を使って遠回しに確かめる。

    dulíþan slúun kelárar gandér du orén.

    読み:ドゥリーサン スルーン ケラーラル ガンデール ドゥ オレーン。

    dul-íþ-anslúunkel-ár-argandérduorén.
    下る-<〜させる>-<彼らが>数えきれぬ伐る-<〜する人>-<〜らの>硬木<対格>下手縁<対格>

    「数えきれぬほどの樵が、硬木を縁へ下ろす。」

    誇張をこめた語りの言い方。この slúun は実際の数ではなく、「数えきれないほど多い」の意味。「slúun+複数属格」が主語になると、動詞は3人称複数で受ける。gandér と orén は重性なので、対格は主格と同じ形になる。du+対格で「下手へ」。

    dúl du þrén só.

    読み:ドゥール ドゥ スレーン ソー。

    dúlduþrénsó.
    下る<命令法><あなたが>下手段<対格>この<重性>

    「この段まで下りてこい。」

    坂道や石段でのくだけた命令。命令法の2人称単数なので、下向きの話し方か、ごく親しい間柄でしか使わない。þrén は重性なので、対格は主格と同じ形になり、指示詞は só を使う。du+対格で「下手へ」。目上の人より高い段に立つのは無礼とされるので、立つ段の高さに気を配る。

    éso þrén nadúlen aldárei áurenei.

    読み:エーソ スレーン ナドゥーレン アルダーレイ アウレネイ。

    és-oþrénna-dúl-enaldár-eiáur-en-ei.
    いる-<(重いものが)>段<主格><〜ない>-下る-<〜した・〜された>座-<与格>昇る-<〜した・〜された>-<与格>

    「下りぬ段は高き座のものである。」

    宮廷の語りや詩で、王の身分を言う改まった文。所有は「ある+持ち主の与格」で言い、動詞は持たれている物 þrén(重性)に一致して -o をとる。分詞 nadúlen「下りぬ」は、重性・単数・主格の þrén に一致しているので語尾がつかない。áurenei は、軽性の与格 aldárei に一致した形。王の段は数を使わず、「下りぬ段」とだけ言う。

    áura virá gléin, dúla virá rúgal.

    読み:アウラ ヴィラー グレーン、ドゥーラ ヴィラー ルーガル。

    áur-avirágléin,dúl-avirárúgal.
    昇る-<(軽いものが)>言葉<主格>清い下る-<(軽いものが)>言葉<主格>粗い

    「清い言葉は昇り、粗い言葉は下る。」

    言葉は息であり上へ昇る、という信仰を述べた言い習わし。粗い言葉は下へ沈むとされるが、virá は文法上つねに軽性なので、動詞 dúl- も重性の -o ではなく軽性の -a をとる。

    pómbar báronul dulíþan kelárai du dálor?

    読み:ポンバル バーロヌル ドゥリーサン ケラーライ ドゥ ダーロル?

    pómbarbáron-uldul-íþ-ankel-ár-aidudálor?
    いくつ本-<〜たちを>下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>下手下の国<対格>

    「樵たちは下の国へ何本下ろすのか。」

    降ろし場での日常の問い。数を問う pómbar は数詞と同じく名詞の前に置き、量の名詞 báron を複数にする。ここでは目的語なので複数対格 báronul(重性なので主格と同じ形)になる。降ろし場で数えるものは硬木と決まっているので、数えるものの複数属格は省いている。数を問う語句は、目的語の名詞句ごと動詞の前に出る。人を数える問いにはこの形を使わない。

    méirim grúndo tásei an duliþímei fáronos.

    読み:メーリン グルンド ターセイ アン ドゥリシーメイ ファーロノス。

    méir-imgrúndotás-eiandul-iþ-ím-eifáron-os.
    与える-<私が>掛け<対格><あなた>-<与格>〜の前に下る-<〜させる>-<〜の技・〜さ>-<与格>荷-<属格>

    「掛けは、荷を下ろす前にお前に払う。」

    縁の市での約束の言い方。時間は川の流れにたとえられ、早いほうが上手なので、an+与格が「〜の前に」の意味になる。duliþímei は dulíþ-「下ろす」に -ím「〜すること」がついた名詞の与格で、強勢は -ím に移る。同じ組み立ての決まり文句に an nébroi「霧の前に(=期限までに)」がある。

    hóinimor du duliþímei.

    読み:ホイニモル ドゥ ドゥリシーメイ。

    hóin-imordudul-iþ-ím-ei.
    帰る-<我々が>〜の後に下る-<〜させる>-<〜の技・〜さ>-<与格>

    「下ろしが済んだら帰ろう。」

    du+与格で「〜の下手で」、つまり時間の「〜の後に」を表す。時間を源から流れ下る川と見るので、遅いほうが下手になる。動詞に時制がないので、文脈によって「帰る」「帰った」「帰ろう」のどれにも訳せる。

    dúlo lóna kélen du orén.

    読み:ドゥーロ ローナ ケーレン ドゥ オレーン。

    dúl-olónakél-enduorén.
    下る-<(重いものが)>柱材<主格>伐る-<〜した・〜された>下手縁<対格>

    「伐った柱材が縁へ下りていく。」

    名詞の lóna は軽性の語形のままだが、伐られた材なので、動詞は重性の -o で一致する。分詞 kélen も重性・主格の形で、語尾はつかない。du+対格で「下手へ」。

    pá dulíþa fáron só?

    読み:パー ドゥリーサ ファーロン ソー?

    pádul-íþ-afáronsó?
    誰<主格>下る-<〜させる>-<(軽いものが)>荷<対格>この<重性>

    「この荷は誰が下ろすのだ?」

    降ろし場で荷の担い手を尋ねる言い方。疑問詞 pá を文頭に出している。人を指すので、動詞は軽性の -a をとる。目上の人には問いの形を使わず、推量法で言い換える。

    dúlo fáron némores du orén.

    読み:ドゥーロ ファーロン ネーモレス ドゥ オレーン。

    dúl-ofáronnémor-esduorén.
    下る-<(重いものが)>荷<主格>我々-<属格>下手縁<対格>

    「我々の荷は縁へ下りていく。」

    属格 némores「我々の」は名詞 fáron の後ろに置く。荷 fáron は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。崖道の商人どうしが、荷の段取りを確かめるときの言い方。némor は聞き手を含む場合も含まない場合も同じ形で、どちらなのかは文脈で決まる。

    lísan lisárai dáu sáindarau, dulíþan dáun du orén.

    読み:リーサン リサーライ ダウ サインダラウ、ドゥリーサン ダウン ドゥ オレーン。

    lís-anlis-ár-aidáusáindar-au,dul-íþ-andáunduorén.
    書く-<彼らが>書く-<〜する人>-<〜たちが>二証文-<双数>下る-<〜させる>-<彼らが>ふたつ下手縁<対格>

    「書記たちは証文を二通書き、そのふたつを縁へ下ろす。」

    後半の dáun は、前半の双数 sáindarau を受けている。dáun には性の区別がないので、軽性のものでも重性のものでも同じ形で受ける。後半では主語を省いているが、動詞の語尾から、前半と同じ書記たちが主語だとわかる。

    du pó dúles?

    読み:ドゥ ポー ドゥーレス?

    dupódúl-es?
    下手何<対格>下る-<あなたが>

    「下手のどこへ下りていくんだ?」

    方向の前置詞をつけた pó は「どこへ」の意味になる。高原語には方向を決めない「どこへ」がないので、du pó「下手の何へ」のように、高さを決めて尋ねる。前置詞句ごと動詞の前に出る。2人称を使っているので、下向きのくだけた問いになる。

    kéla kelár gandér, dulíþa ó du orén.

    読み:ケーラ ケラール ガンデール、ドゥリーサ オー ドゥ オレーン。

    kél-akel-árgandér,dul-íþ-aóduorén.
    伐る-<(軽いものが)>伐る-<〜する人>硬木<対格>下る-<〜させる>-<(軽いものが)>それ<対格>下手縁<対格>

    「樵は硬木を伐り、それを縁へ下ろす。」

    前の節に出た重性名詞 gandér を、代名詞 ó で受けている。ó は重性なので、主格と対格が同じ形になる。後ろの節では主語を言わないが、動詞の語尾から同じ樵が主語だとわかる。

    lúin áuran ombára ilánai, dúlan kelárai du orén.

    読み:ルーイン アウラン オンバーラ イラーナイ、ドゥーラン ケラーライ ドゥ オレーン。

    lúináur-anombárailán-ai,dúl-ankel-ár-aiduorén.
    とき昇る-<彼らが>十灯-<〜たちが>下る-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>下手縁<対格>

    「十の灯が昇ると、樵たちは縁へ下りていく。」

    「〜とき」の節は lúin で始めて、主節の前に置く。ombára ilánai「十の灯」は年の始まりを告げる星の群れの名前で、ombára は数えた結果ではなく名前の一部。そのため、星を数えることの禁忌には当たらない。ilánai は語根 ilán- に複数主格の語尾 -ai がついた形。

    pómbar fáronul dulíþes?

    読み:ポンバル ファーロヌル ドゥリーセス?

    pómbarfáron-uldul-íþ-es?
    いくつ荷-<〜たちを>下る-<〜させる>-<あなたが>

    「お前は荷をいくつ下ろすのか。」

    下向きの問い(2人称を使う)。pómbar は数詞と同じく名詞の前に置き、名詞は複数にする。fáron は重性なので、複数対格は -ul になる。人ではなく物を数える問いなので、無礼にはならない。

    pómbar gandérul dulíþan kelárai?

    読み:ポンバル ガンデールル ドゥリーサン ケラーライ?

    pómbargandér-uldul-íþ-ankel-ár-ai?
    いくつ硬木-<〜たちを>下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>

    「樵たちは硬木を何本下ろすのか。」

    降ろし場での問い。帳簿では量の名詞 báron「本」を入れるが、会話では省くことが多い。pómbar は名詞の前に置き、名詞は複数にする。疑問の名詞句は目的語として文頭に出るので、gandérul は複数対格。

    plúin dulíþan kelárai gandér?

    読み:プルーイン ドゥリーサン ケラーライ ガンデール?

    plúindul-íþ-ankel-ár-aigandér?
    いつ下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>硬木<対格>

    「樵たちはいつ硬木を下ろすのか。」

    疑問詞 plúin は、ほかの疑問詞と同じく動詞の前に置く。plúin は格変化しない。時制がないので、過去のことにも先のことにも使える。答えはふつう、lúin 節(「十の灯が昇ると」など)か、an nébroi「霧の前に」のような時を表す句で返す。

    ké dúlo fáron du séndo?

    読み:ケー ドゥーロ ファーロン ドゥ センド?

    kédúl-ofáronduséndo?
    <〜か>下る-<(重いものが)>荷<主格>下手ここ<対格>

    「荷はここへ下りてくるのか。」

    店先で荷の行き先を確かめる、くだけた問い。séndo は重性o語幹の名詞として変化し、主格と対格が同じ形になる。du+対格で「(下手の)ここへ」を表す。動詞は主語の fáron(重性)に一致して dúlo になる。答えは dúlo(来る)か na dúlo(来ない)。

    dulíþan kelárai gandér du dálor selúin.

    読み:ドゥリーサン ケラーライ ガンデール ドゥ ダーロル セルーイン。

    dul-íþ-ankel-ár-aigandérdudálorselúin.
    下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>硬木<対格>下手下の国<対格>今の世

    「今の世、樵たちは硬木を下の国へ下ろしている。」

    年代記の記事の書きぶり。昔(統一の前)と比べて、今の王の世のならわしを述べている。直説法には時制がないので、selúin が時代を区切る働きをする。gandér は重性なので、主格と対格が同じ形になる。

    dúlau dáun an ín fóndaros.

    読み:ドゥーラウ ダウン アン イーン フォンダロス。

    dúl-audáunanínfóndar-os.
    下る-<双数>二人上手同じ源-<属格>

    「二人は同じ源から流れ下っている(同じ流れの者だ)。」

    系譜読みが婚姻や相続の場で使う言い方。ín は「一つの」から転じて「同じ」の意味になる。an+属格で「上手から」。主語が双数の代名詞 dáun なので、動詞も双数になる。

    ésa faronár dúlen réum þrénul.

    読み:エーサ ファロナール ドゥーレン レウン スレーヌル。

    és-afaron-árdúl-enréumþrén-ul.
    いる-<(軽いものが)>荷-<〜する人・主格>下る-<〜した・〜された>九段-<〜たちを>

    「運び人は九段下りの者だ。」

    身分の言い方「dúlen+数詞+þrén の複数対格(道のりの対格)」。réum þrénul「九段」は、いちばん下の段を指す。分詞 dúlen は、主語 faronár(軽性・単数・主格)に一致するので、一致の語尾がつかない。

    dúlan ombár þrénul es aldáres áurenes.

    読み:ドゥーラン オンバール スレーヌル エス アルダーレス アウレネス。

    dúl-anombárþrén-ulesaldár-esáur-en-es.
    下る-<彼らが>そろった段-<〜たちが>から座-<属格>昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格>

    「欠けのない段は、高き座から下っていく。」

    身分の秩序を説く、改まった言い回し。ombár þrénul は「十の段」だが、数えた結果を言うのではなく、「一段も欠けない階段の全体」という意味で使っている。主語の þrénul は重性の複数主格。es+属格で「〜から」。

    dúlan nél fáronul du orén.

    読み:ドゥーラン ネール ファーロヌル ドゥ オレーン。

    dúl-annélfáron-ulduorén.
    下る-<彼らが>七荷-<〜たちが>下手縁<対格>

    「七つの荷が縁へ下りていく。」

    nél「七」の後ろの名詞は複数になる。fáron「荷」は重性なので、複数主格は -ul。主語が複数なので、動詞は3人称複数の -an をとる。du+対格で「下手へ」の意味になり、重性の orén は主格と対格が同じ形。

    dulíþan slúumbar kelárar gandér.

    読み:ドゥリーサン スルーンバル ケラーラル ガンデール。

    dul-íþ-anslúumbarkel-ár-argandér.
    下る-<〜させる>-<彼らが>一万伐る-<〜する人>-<〜らの>硬木<対格>

    「一万人の樵が硬木を下ろす。」

    伐り出しの規模を誇張まじりに言う文。目上の人は数えないが、働き手は人数で数えてよいので、kelár「樵」を複数属格でとれる。slúumbar kelárar 全体が主語なので、動詞は3人称複数になる。

    dulíþan kelárai déral fáronos sórel.

    読み:ドゥリーサン ケラーライ デーラル ファーロノス ソーレル。

    dul-íþ-ankel-ár-aidéralfáron-ossórel.
    下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>半分<対格>荷-<属格>今日

    「今日、樵たちは荷の半分を下ろす。」

    何の半分かは属格(fáronos)で後ろに示す。dulíþ- は dúl-「下る」の使役で「下ろす」。直説法なので -íþ- が強勢をとる。sórel のような時の語は文末に置く。降ろし場で、その日の吊り下ろしの段取りを言う文。

    dúlan dulfáronul bróusul du orén sórel.

    読み:ドゥーラン ドゥルファーロヌル ブロースル ドゥ オレーン ソーレル。

    dúl-andulfáron-ulbróus-ulduorénsórel.
    下る-<彼らが>下ろし荷-<〜たちが>多い-<〜たちが>下手縁<対格>今日

    「今日は多くの下ろし荷が縁へ下りていく。」

    乾風期の前半、降ろし場や崖道で聞かれる日常の文。形容詞 bróus は名詞の後ろに置き、名詞の性・数・格に一致する。dulfáron は重性なので、形容詞も重性の複数主格 -ul をとる。動詞は複数の主語に一致して3人称複数 -an になる。

    lúin na glénim, dúlo nóumo némes.

    読み:ルーイン ナ グレーニン、ドゥーロ ノーモ ネーメス。

    lúinnaglén-im,dúl-onóumoném-es.
    とき<〜ない>答える-<私が>下る-<(重いものが)>体面<主格><私>-<属格>

    「答えられなければ、私の面目が潰れる。」

    nóumo dúlo「顔が下りる」は面目を失うという慣用句。敬意や名誉を高さで表す考え方から来ている。詩合わせや問答で返しができないときなどに使う。

    dulíþes nóumo némes un torárail.

    読み:ドゥリーセス ノーモ ネーメス ウン トラーライル。

    dul-íþ-esnóumoném-esuntorár-ail.
    下る-<〜させる>-<あなたが>体面<対格><私>-<属格>内に客-<〜らに>

    「お前は客たちの前で、私の顔をつぶした。」

    相手をとがめる言い方。慣用句 nóumo dúlo の動詞を使役の dulíþ-「下ろす」に変えて、「人の面目を失わせる」の意味にしている。2人称の直説法を使っているので、下向きか、同じ段の相手への言い方になる。

    dúlan faronárai du múndo orénos.

    読み:ドゥーラン ファロナーライ ドゥ ムンド オレーノス。

    dúl-anfaronár-aidumúndoorén-os.
    下る-<彼らが>運び人-<〜たちが>下手出口<対格>縁-<属格>

    「運び人たちは縁の口へ下りていく。」

    múndo orénos「縁の口」は、崖道が崖の麓に開く下の口を指す。縁の市はここに立つ。du+対格で「下手へ」。属格の orénos は名詞の後ろに置く。

    dúlimor du tról orénos.

    読み:ドゥーリモル ドゥ トロール オレーノス。

    dúl-imordutrólorén-os.
    下る-<我々が>下手麓<対格>縁-<属格>

    「我々は縁の麓へ下りる。」

    崖道を下りるときの言い方。tról は崖や山の麓のほか、立っている木や柱など高いものの根もとにも使う。du+対格で「下手へ」。tról は重性なので、対格は主格と同じ形になる。

    dulíþa faronár fáron es rúunos.

    読み:ドゥリーサ ファロナール ファーロン エス ルーノス。

    dul-íþ-afaronárfáronesrúun-os.
    下る-<〜させる>-<(軽いものが)>運び人<主格>荷<対格>から背-<属格>

    「運び人が背から荷を下ろす。」

    崖道の運び人の仕事を述べた文。rúun は重性の子音語幹で、属格は rúunos。es+属格で「〜から」を表す。使役の dulíþ-「下ろす」は、後ろに強勢をもつ接辞がないので、-íþ- が強勢をとる。

    dúlo frúm es fréunos.

    読み:ドゥーロ フルーン エス フレウノス。

    dúl-ofrúmesfréun-os.
    下る-<(重いものが)>血<主格>から額-<属格>

    「額から血が流れ落ちている。」

    怪我をした者を見て言う文。frúm は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。液体が流れ落ちることも dúl-「下る」で言う。es+属格で「〜から」。

    ombéra senár faronáran ré dulíþa fáron es orénos.

    読み:オンベーラ セナール ファロナーラン レー ドゥリーサ ファーロン エス オレーノス。

    ombér-asenárfaronár-anrédul-íþ-afáronesorén-os.
    名指しする-<(軽いものが)>目付<主格>運び人-<対格><〜と(節)>下る-<〜させる>-<(軽いものが)>荷<対格>から縁-<属格>

    「目付は、縁から荷を落としたと運び人を名指しで咎める。」

    人を名指しして咎める意味。ré の後ろの節で、何を咎めたかを言う。縁の市の目付が揉め事を裁く場面の言い方。

    dúlo ráun dúlen du dálor anlúin.

    読み:ドゥーロ ラウン ドゥーレン ドゥ ダーロル アンルーイン。

    dúl-oráundúl-endudáloranlúin.
    下る-<(重いものが)>水の落ちた流れ<主格>下る-<〜した・〜された>下手下の国<対格>昔

    「昔、水の落ちた流れが下の国へと下りていった。」

    約千二百年前の冷害で崖を下りた人々(干潟でいう縁の民)を、年代記や語りで遠回しに言う書き方。ráun dúlen は決まった言い回しで、分詞は規則どおり語根に -en をつけた形。ráun は重性なので、動詞も重性の -o で一致する。人を直接言わずに重性の名詞で言うところに、恥と悲しみがこもる。

    dróuma ólmar es ráunos dúlenos.

    読み:ドローマ オルマル エス ラウノス ドゥーレノス。

    dróum-aólmaresráun-osdúl-en-os.
    嘆く-<(軽いものが)>年長者<主格>から水の落ちた流れ-<属格>下る-<〜した・〜された>-<重性・属格>

    「「年長者は、水の落ちた流れのことを嘆く。」」

    村や家の会話での言い方。崖を下りた人々を正面から「下りた者たち」とは言わず、この婉曲表現を目的語にしている。重性の名詞と分詞は、対格でも語尾がつかない。

    lúin glóira ausenár, duliþéndes gráun.

    読み:ルーイン グロイラ アウセナール、ドゥリセンデス グラウン。

    lúinglóir-aau-sen-ár,dul-iþ-énd-esgráun.
    ときお越しになる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>下る-<〜させる>-<〜しますように>-<あなたが>頭部<対格>

    「目付殿がお越しになったら、頭を下げなさいね。」

    親が子に作法をやさしく教えるときの言い方。命令法ではなく願望法の2人称を使っているので、口調がやわらかくなる。gráun は重性の子音語幹なので、対格も主格と同じ形になる。強勢は願望法の -énd- に移るので、-íþ- の強勢は消える。命令の相手の頭のことなので、「誰の頭か」は言わない。目上の人の頭は augráun と言う。

    duliþésa gráun du augráun aldáres áurenes.

    読み:ドゥリセーサ グラウン ドゥ アウグラウン アルダーレス アウレネス。

    dul-iþ-és-agráunduau-gráunaldár-esáur-en-es.
    下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>頭部<対格>下手<お〜になる・御〜>-頭部<対格>座-<属格>昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格>

    「頭は、高き座の御頭より下へ下げるべし。」

    宮廷の礼法書にある決まりの文。当為法で主語を言わないので、「人は〜すべし」という一般の人が主語になり、軽性の形をとる。「du+対格」は「〜の下手へ」で、ここでは「〜より低く」の意味になる。目上の人の頭には au- をつけて augráun と言うが、名詞の性は重性のままなので、対格に語尾はつかない。

    áura éndra, dúlo gandér.

    読み:アウラ エンドラ、ドゥーロ ガンデール。

    áur-aéndra,dúl-ogandér.
    昇る-<(軽いものが)>人<主格>下る-<(重いものが)>硬木<主格>

    「人は昇り、硬木は下る。」

    教えの書にある、人と物の違いを説く一句。人は軽性なので、動詞は -a をとる。硬木は重性なので、動詞は -o をとる。二つの文の動詞の語尾の違いに、「軽いものは上へ、重いものは下へ」という世界観が表れている。

    dúlo rúndo du véinor.

    読み:ドゥーロ ルンド ドゥ ヴェーノル。

    dúl-orúndoduvéinor.
    下る-<(重いものが)>走り水<主格>下手湖<対格>

    「走り水が湖へ流れ下る。」

    北の高みから下りてきた沢が、湖盆の湖に注ぐようすを言う。走り水 rúndo も湖 véinor も重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。du+対格で「下手へ」を表す。véinor は重性の子音語幹なので、対格にも語尾がつかない。

    na dúlo séimo.

    読み:ナ ドゥーロ セーモ。

    nadúl-oséimo.
    <〜ない>下る-<(重いものが)>静み水<主格>

    「静み水は流れ下らない。」

    湖の静かな水が、谷を走る水と違って流れ下らないことを言う。直説法の文なので、na で否定する。séimo は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。

    dúla anléuma es þráinos, ésa élvar þáil.

    読み:ドゥーラ アンレウマ エス スライノス、エーサ エルヴァル サイル。

    dúl-aanléumaesþráin-os,és-aélvarþáil.
    下る-<(軽いものが)>上の風<主格>から峰-<属格>いる-<(軽いものが)>天<主格>澄んだ

    「上の風が峰から下りてきて、空が澄みわたっている。」

    乾風期の初めのころの空模様を言う文。接続詞を使わずに主節を二つ並べ、あいだを区切りの印(読点)で区切っている。anléuma は北の高みから下りてくる風なので、動詞は「昇る」ではなく dúl-「下る」を使う。þráin「峰」は石の峰なので重性で、属格は -os になる。anléuma は清く良い風とされ、この風が吹くと星読みの季節が来る。

    dúla dulána, mé ombérir!

    読み:ドゥーラ ドゥラーナ、メー オンベーリル!

    dúl-adulána,méombér-ir!
    下る-<(軽いものが)>流れ星<主格><禁止・願いの打ち消し>指さす-<皆で〜せよ>

    「流れ星だ。皆、指をさすな!」

    夜空を見上げた場面での、日常の叫び。流れ星は上から何かが下りてくるしるしとして警戒され、星を指さすことも禁忌とされる。そのため、流れ星を見た人はまず指さしを止めさせる。禁止は「mé+命令法」。dulána は星を指す語なので、数詞や双数をつけて数えることはしない。

    dúla dulána an álmarei, émbela aldár áuren.

    読み:ドゥーラ ドゥラーナ アン アルマレイ、エンベラ アルダール アウレン。

    dúl-adulánaanálmar-ei,émbel-aaldáráur-en.
    下る-<(軽いものが)>流れ星<主格>上手白月-<与格>祀る-<(軽いものが)>座<主格>昇る-<〜した・〜された>

    「白月の上手に流れ星が下る。高き座が祀りを行う。」

    年代記の流れ星の項の書き方。年代記は直説法の短い文を並べ、主節のあいだには区切りの印を打つ。星の位置は指さしの代わりに、an álmarei「白月の上手に」のように月との位置関係で示す。時制の語形はないので、過去の出来事でも直説法の形のままで書く。王は総称の aldár áuren「高き座」で書く。

    dúla órel, áurau dáu sílarau.

    読み:ドゥーラ オーレル、アウラウ ダウ シーララウ。

    dúl-aórel,áur-audáusílar-au.
    下る-<(軽いものが)>日<主格>昇る-<双数>二月-<双数>

    「日が沈み、二つの月が昇る。」

    夕暮れを言う決まった言い方で、詩にもよく使われる。日の入りは dúl-「下る」で言う。órel は軽性なので dúla になる。月は星ではないので、dáu「二」と双数で言える。双数の動詞は人称も性も区別しない。

    dúlo krámbo es orénos, na brúumo.

    読み:ドゥーロ クランボ エス オレーノス、ナ ブルーモ。

    dúl-okrámboesorén-os,nabrúum-o.
    下る-<(重いものが)>崖山羊<主格>から縁-<属格><〜ない>落ちる-<(重いものが)>

    「崖山羊は縁から下りても、落ちはしない。」

    崖道でよく言われる言い回し。主語 krámbo が重性なので、二つの動詞はどちらも3人称単数・重性の -o をとる。後ろの節では主語を言わないが、動詞の語尾から同じ崖山羊が主語だとわかる。

    dúlo búl árneles du dálor.

    読み:ドゥーロ ブール アルネレス ドゥ ダーロル。

    dúl-obúlárnel-esdudálor.
    下る-<(重いものが)>根<主格>木-<属格>下手下の国<対格>

    「木の根は下の国へ向かって下りていく。」

    búl は重性の名詞なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。複数にすると母音交替で bǘl になる。根は下へ、梢は上へ伸びるという世界観を述べた文で、森の巫が木を語るときによく出る言い方。

    dúla lóiva es árneles.

    読み:ドゥーラ ロイヴァ エス アルネレス。

    dúl-alóivaesárnel-es.
    下る-<(軽いものが)>森の髭<主格>から木-<属格>

    「森の髭が木から垂れ下がっている。」

    深い森を描く文。dúl-「下る」は、垂れ下がる様子にも使う。森の髭は生きた木から垂れ下がるものなので軽性に扱い、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。es+属格で「〜から」を表す。

    léimsan aursárai sárvo ré mé duliþésa fáron du dálor.

    読み:レーンサン アウルサーライ サルヴォ レー メー ドゥリセーサ ファーロン ドゥ ダーロル。

    léims-anaursár-aisárvorémédul-iþ-és-afárondudálor.
    据える<〜し終えた>-<彼らが>祖先-<〜たちが>禁忌<対格><〜と(節)><禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>下手下の国<対格>

    「祖先たちは、下の国へ荷を落としてはならぬという禁忌を定めた。」

    ré の後ろの節は当為法を保ち、mé で否定している。主語を言わない当為法は「人は〜すべし」の意味で、軽性の -a をとる。強勢は -és- に移る。崖から物を落としてはいけない、という禁忌のいわれを語る文。

    hálimor aursáran nadúlenan fóndar.

    読み:ハーリモル アウルサーラン ナドゥーレナン フォンダル。

    hál-imoraursár-anna-dúl-en-anfóndar.
    呼ぶ-<我々が>祖先-<対格><〜ない>-下る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>源<対格>

    「我々は、下りぬ祖先を「源」と呼ぶ。」

    二つの対格をとる用法。一つ目の対格が呼ばれるもの、二つ目の対格がその呼び名を表す。fóndar は重性なので、対格も主格と同じ形になる。分詞 nadúlenan は aursáran(軽性・単数・対格)に一致している。家系を川の流れとみる世界観で、始祖のことを説明するときの言い方。

    mé dulénde þelá némores!

    読み:メー ドゥレンデ セラー ネーモレス!

    médul-énd-eþelánémor-es!
    <禁止・願いの打ち消し>下る-<〜しますように>-<(軽いものが)>名声<主格><我々>-<属格>

    「我が家の名が落ちることのないように。」

    家の年長者が若い者を戒めるときの言い方。「名が下る」は評判が落ちるという意味で、「名が昇る」の反対にあたる。願望法の文なので mé で否定する。強勢は願望法の -énd- に移る。

    ké ráines ré dúlan faronárai du orén dórel?

    読み:ケー ライネス レー ドゥーラン ファロナーライ ドゥ オレーン ドーレル?

    kéráin-esrédúl-anfaronár-aiduoréndórel?
    <〜か>知る-<あなたが><〜と(節)>下る-<彼らが>運び人-<〜たちが>下手縁<対格>明日

    「運び人たちが明日縁へ下りることを、お前は知っているか。」

    知っている内容を ré の節で示す、日常の問い。ké は文のいちばん前に置く。ré の後ろの節も動詞で始まる。下向きか並びの相手に使う言い方。

    duþélim sélvanan, an fóndaros móros ráimaros dúlenan téir lóurul.

    読み:ドゥセーリン セルヴァナン、アン フォンダロス モーロス ライマロス ドゥーレナン テール ロールル。

    du-þél-imsélvan-an,anfóndar-osmór-osráimar-osdúl-en-antéirlóur-ul.
    <〜させていただく>-名乗る-<私が>セルヴァン-<対格>上手源-<属格>偉大な-<重性・属格>ライマル-<属格>下る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>三瀬-<〜たちを>

    「偉大なるライマルの源から三瀬下りた、セルヴァンと名乗らせていただきます。」

    改まった場での名乗り。名詞句の中は「名詞–形容詞–属格」の順に並び、形容詞は重性の fóndar に合わせて属格 -os になる。mór を家や氏族に使うと、その勢いが大きいことを誇る言い方になる。目上の人自身を mór と言うことはしない。

    povéra senár faronárei ré pá dulíþa fáron só.

    読み:ポヴェーラ セナール ファロナーレイ レー パー ドゥリーサ ファーロン ソー。

    povér-asen-árfaronár-eirépádul-íþ-afáronsó.
    取り調べる-<(軽いものが)>見る-<〜する人>運び人-<与格><〜と(節)>誰<主格>下る-<〜させる>-<(軽いものが)>荷<対格>この<重性>

    「「目付は運び人を取り調べ、誰がこの荷を下ろしたのかと問いただす。」」

    「取り調べる」の意味では、調べられる人を対格の目的語にとる。ré の節の中では、疑問詞 pá「誰」が動詞の前に出ている。重性の指示詞 só は、名詞 fáron の後ろに置く。

    poverésa senár fáronul te dúlan es orénos.

    読み:ポヴェレーサ セナール ファーロヌル テ ドゥーラン エス オレーノス。

    pover-és-asen-árfáron-ultedúl-anesorén-os.
    取り調べる-<〜すべし>-<(軽いものが)>見る-<〜する人>荷-<〜たちを><関係節>下る-<彼らが>から縁-<属格>

    「目付は、縁から下りてくる荷を検めるべし。」

    市の決まりを記した碑文の文体。当為法の -és- が強勢をとるので、語根の強勢は消える。主語の senár(軽性)を明示しているので、動詞は3単・軽性。fáronul は重性の複数対格で、関係節 te dúlan es orénos がこれを修飾する。

    lúin áura órun ál, dúlimor du orén.

    読み:ルーイン アウラ オールン アール、ドゥーリモル ドゥ オレーン。

    lúináur-aórunál,dúl-imorduorén.
    とき昇る-<(軽いものが)>日の出<主格>明るい下る-<我々が>下手縁<対格>

    「明るい夜明けが来たら、我々は縁へ下りる。」

    夜明けの明るさを言う文。lúin で始まる時の節は主節の前に置き、節の中も動詞で始まる。崖道へ下りていく旅の段取りを言う、日常的な言い方。

    dulíþan kelárai téir gandérul dréumul.

    読み:ドゥリーサン ケラーライ テール ガンデールル ドレウムル。

    dul-íþ-ankel-ár-aitéirgandér-uldréum-ul.
    下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>三硬木-<〜たちを>黒い-<重性・〜ら(古い母音交替)・対格>

    「樵たちは黒い硬木を三本下ろす。」

    心材の黒い硬木を言う文。会話なので、量の名詞を省いている。三より上の数の後ろでは名詞が複数になり、形容詞も重性・複数・対格の -ul で一致する。

    dúlo gandér káil du ílmo.

    読み:ドゥーロ ガンデール カイル ドゥ イルモ。

    dúl-ogandérkáilduílmo.
    下る-<(重いものが)>硬木<主格>乾いた下手水<対格>

    「乾かした硬木でも水の底へ沈む。」

    硬木の性質を言う、樵や森の司の言い方。káil は乾かし終えた材についても使う。du+対格で「下手へ」、つまり水の中へ沈むことを表す。硬木が「下へ行きたがる木」とされるのは、この性質のためである。

    dúla kéira du orén.

    読み:ドゥーラ ケーラ ドゥ オレーン。

    dúl-akéiraduorén.
    下る-<(軽いものが)>蜜蝋<主格>下手縁<対格>

    「蜜蝋が縁へ下りていく。」

    交易の品としての蜜蝋が、下ろし荷として崖道を下っていく様子を述べる文。この意味の kéira は、蝋燭の形になっていない材料の蝋を指す。du+対格で「下手へ」の意味になる。

    dulíþan faronárai kumbórul du orén.

    読み:ドゥリーサン ファロナーライ クンボールル ドゥ オレーン。

    dul-íþ-anfaron-ár-aikumbór-ulduorén.
    下る-<〜させる>-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>青銅器-<〜たちを>下手縁<対格>

    「運び人たちが青銅器を縁へ下ろしていく。」

    下ろし荷の品目としての kumbór。器の一つ一つを指すときは、重性の複数 kumbórul(主格・対格が同じ形)を使う。使役の -íþ- は、後ろに強勢をもつ接辞がないので、自分で強勢をとる。

    glüníro fúnel, mé duliþésa gandér.

    読み:グリュニーロ フーネル、メー ドゥリセーサ ガンデール。

    glün-ír-ofúnel,médul-iþ-és-agandér.
    凍る-<もし〜なら>-<(重いものが)>綱<主格><禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>硬木<対格>

    「綱が凍ったなら、硬木を下ろさぬこと。」

    降ろし場の決まりを書いた碑文の文体。条件の節は接続詞なしに、動詞を仮定法にするだけで作る。綱は重性なので仮定法の語尾は -íro。後半は当為法の禁止で、主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の形をとる。凍りの頃に吊り下ろしが止まるのは、この決まりによる。

    dúlo trúndo gandéros du dálor.

    読み:ドゥーロ トルンド ガンデーロス ドゥ ダーロル。

    dúl-otrúndogandér-osdudálor
    下る-<(重いものが)>杭<主格>硬木-<属格>下手下の国<対格>

    「硬木の杭が下の国へ下りていく。」

    trúndo は重性o語幹の名詞。材料は属格で後ろに添えて trúndo gandéros「硬木の杭」と言う。硬木の杭が崖の下へ下りるのは、木が向かうべき場所へ帰ることだとされている。

    dúlo pelsó du orén.

    読み:ドゥーロ ペルソー ドゥ オレーン。

    dúl-opelsóduorén
    下る-<(重いものが)>樹脂<主格>下手縁<対格>

    「樹脂が縁へと下りていく。」

    乾風期に、下ろし荷として樹脂が崖の下へ運ばれることを言う文。樹脂は重性なので、動詞は -o をとる。du+対格で「下手へ」。orén も重性なので、対格は主格と同じ形になる。

    dúlo trúndo du dálor.

    読み:ドゥーロ トルンド ドゥ ダーロル。

    dúl-otrúndodudálor
    下る-<(重いものが)>杭<主格>下手下の国<対格>

    「杭が下の国へ下りていく。」

    杭は干潟の泥に打ちこまれるために、崖の下へ下ろされる。trúndo は重性o語幹なので、動詞は -o をとる。du+対格で「下手へ」。下の国 dálor も重性で、対格は主格と同じ形になる。

    lúin dúlo gandér du dálor, drénimor du kéndor orénos.

    読み:ルーイン ドゥーロ ガンデール ドゥ ダーロル、ドレーニモル ドゥ ケンドル オレーノス。

    lúindúl-ogandérdudálor,drén-imordukéndororén-os.
    とき下る-<(重いものが)>硬木<主格>下手下の国<対格>参る-<我々が>下手縁の市<対格>縁-<属格>

    「硬木が下の国へ下りるころ、私どもは縁の市へ下って参ります。」

    崖道の商人が目上の人に、最初の下ろしのころに市へ出ることを告げる言い方。「行く」の謙譲の補充形 drén- を使う。縁の市は崖の麓にあるので、かならず du で言う。lúin の節は主節の前に置く。

    dúlan dulfáronul du orén.

    読み:ドゥーラン ドゥルファーロヌル ドゥ オレーン。

    dúl-andulfáron-ulduorén.
    下る-<彼らが>下ろし荷-<〜たちが>下手縁<対格>

    「下ろし荷が縁へ下りていく。」

    dulfáron は fáron「荷」と同じく重性の子音語幹で、複数主格は dulfáronul になる。3人称複数の動詞は性を区別しない。乾風期の前半、硬木・地金・紙などの下ろし荷が崖道を下りる。

    ái, dúla hóurna du orén! hálimor ráuvanan.

    読み:アイ、ドゥーラ ホールナ ドゥ オレーン!ハーリモル ラウヴァナン。

    ái,dúl-ahóurnaduorén!hál-imorráuvan-an.
    おや下る-<(軽いものが)>送りの煙<主格>下手縁<対格>呼ぶ-<我々が>森の巫-<対格>

    「おや、送りの煙が縁のほうへ下りていく!森の巫を呼ぼう。」

    風で煙が南(下)へ流れたときの驚きの声。これは不吉なこととされ、魂を上へ引き上げる詞を唱えてもらうために祭司を呼ぶ。du+対格で「下手へ」。

    dulíþan kelárai gandér an órunei.

    読み:ドゥリーサン ケラーライ ガンデール アン オールネイ。

    dul-íþ-ankel-ár-aigandéranórun-ei.
    下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>硬木<対格>上手日の出-<与格>

    「樵たちは日の出の前に硬木を下ろす。」

    時の前後を、川の上手・下手として言う文。an+与格は「〜の上手で」で、「〜の前に」を表す。「日の出の後に」なら du órunei と言う。órun は軽性の子音語幹で、与格は -ei になる。

    tóra tráimel ível, dulíþan kelárai gandér.

    読み:トーラ トライメル イーヴェル、ドゥリーサン ケラーライ ガンデール。

    tór-atráimelível,dul-íþ-ankel-ár-aigandér.
    来る-<(軽いものが)>年<主格>新しい下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>硬木<対格>

    「新しい年が来て、樵たちは硬木を下ろす。」

    暦と仕事の流れを説明する文。年は乾風期の初めに始まり、硬木の最初の下ろしもこの時期に行われる。tráimel は軽性の子音語幹で、形容詞 ível はその後ろに置いて一致させる。主節は二つ並んでいるので、あいだに読点を打つ。

    dulíþan kelárai dáumbar gandérul tráimelei sé.

    読み:ドゥリーサン ケラーライ ダウンバル ガンデールル トライメレイ セー。

    dul-íþ-ankel-ár-aidáumbargandér-ultráimel-eisé.
    下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>二十硬木-<〜たちを>年-<与格>この<軽性>

    「この年、樵たちは硬木を二十本下ろした。」

    年代記や森の司の記録に見られる書き方。「この年に」は、与格 tráimelei に指示詞 sé を添えて言う。九十九までの数詞は名詞の前に置き、三以上なら名詞を複数にする。重性の複数対格は -ul になる。

    dúlan téir tráimelai, na tóra séulin némes.

    読み:ドゥーラン テール トライメライ、ナ トーラ セウリン ネーメス。

    dúl-antéirtráimel-ai,natór-aséulinném-es.
    下る-<彼らが>三年齢・年数-<〜たちが><〜ない>来る-<(軽いものが)>友<主格><私>-<属格>

    「三年が過ぎたが、私の友は来ない。」

    年月が経つことは、川の水が下るのにたとえて dúl-「下る」で言う。時制がないので、「過ぎた」ことは文脈から読みとる。三以上の数詞の後ろでは、名詞は複数になる(tráimelai)。動詞はこの複数の主語に一致して、3人称複数の -an をとる。

    áura órel es órunes, dúla un vélunan.

    読み:アウラ オーレル エス オールネス、ドゥーラ ウン ヴェールナン。

    áur-aórelesórun-es,dúl-aunvélun-an.
    昇る-<(軽いものが)>日<主格>から日の出-<属格>下る-<(軽いものが)>中へ・中から西-<対格>

    「日は日の出の方から昇り、西へと沈む。」

    子どもに教える書物によく出る決まった言い方。後半の主語は動詞の語尾でわかるので省いている。un+対格で「西の内へ」と、方角に入っていく動きを表す。órun と vélun が対になる。

    dúlan faronárai du dúror.

    読み:ドゥーラン ファロナーライ ドゥ ドゥーロル。

    dúl-anfaronár-aidudúror.
    下る-<彼らが>運び人-<〜たちが>下手下手・南<対格>

    「運び人たちは南の縁へと下りていく。」

    dúror は重性の子音語幹で、主格と対格が同じ形になる。du+対格で「下手へ」。高原では南は低い土地なので、崖道を下る動きと南へ向かう動きが同じ言い方になる。

    dúlim du dúror.

    読み:ドゥーリン ドゥ ドゥーロル。

    dúl-imdudúror.
    下る-<私が>下手下座<対格>

    「私は下座へ下がります。」

    目上の人の前で、自分から下座に移るときの言い方。du+対格で「下手へ」を表す。dúror は重性なので、主格と対格が同じ形になる。炉の南側の低い座が下座。

    mé duliþésa ólmaran du dúror.

    読み:メー ドゥリセーサ オルマラン ドゥ ドゥーロル。

    médul-iþ-és-aólmar-andudúror.
    <禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>年長者-<対格>下手下座<対格>

    「年長者を下座へ下げてはならない。」

    作法の書に見られる当為法の文。当為法は mé で否定する。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の -a をとる。強勢は -és- に移る。

    dúlo gandér es méndales du dálor.

    読み:ドゥーロ ガンデール エス メンダレス ドゥ ダーロル。

    dúl-ogandéresméndal-esdudálor.
    下る-<(重いものが)>硬木<主格>から中の世界-<属格>下手下の国<対格>

    「「硬木は中の世界を離れ、下の国へと下りていく。」」

    最初の下ろしの作法を語る文。硬木が下の国の杭になることを、木の「成就」とみる考え方を映している。

    dúlan faronárai es méndales orénos.

    読み:ドゥーラン ファロナーライ エス メンダレス オレーノス。

    dúl-anfaronár-aiesméndal-esorén-os.
    下る-<彼らが>運び人-<〜たちが>からまん中-<属格>縁-<属格>

    「「運び人たちは縁のまん中から下りていく。」」

    崖道の主な道筋が、長川の峡谷に沿って縁のまん中を通っていることを言う。「〜のまん中から」は、es+méndal の属格に、全体を表す名詞の属格を続けて言うので、属格が二つ続く。

    dúla álva: tóra reinálva, tóra kailálva, tóro nebrálvo.

    読み:ドゥーラ アルヴァ:トーラ レイナルヴァ、トーラ カイラルヴァ、トーロ ネブラルヴォ。

    dúl-aálva:tór-areinálva,tór-akailálva,tór-onebrálvo
    下る-<(軽いものが)>季節<主格>来る-<(軽いものが)>雨期<主格>来る-<(軽いものが)>乾風期<主格>来る-<(重いものが)>霧期<主格>

    「季節は流れ下る。雨期が来て、乾風期が来て、霧期が来る。」

    暦の書や子どもへの教えに出てくる文。時間を川の流れとみるので、季節がめぐることを dúl-「下る」で言う。雨期と乾風期は軽性なので動詞は -a をとるが、霧期 nebrálvo だけは霧と同じ重性なので、動詞が -o(tóro)になる。

    dúla álva, tóra kailálva.

    読み:ドゥーラ アルヴァ、トーラ カイラルヴァ。

    dúl-aálva,tór-akailálva
    下る-<(軽いものが)>季節<主格>来る-<(軽いものが)>乾風期<主格>

    「季節は移り、乾風期となりました。」

    手紙の書き出しによく使われる季節の決まり文句。時間を源から流れ下る川とみるので、季節が移ることを dúl-「下る」で言う。主語の álva と kailálva はどちらも軽性なので、動詞は -a で一致する。

    lúin ésa reinálva, na dúlan faronárai du dálor.

    読み:ルーイン エーサ レイナルヴァ、ナ ドゥーラン ファロナーライ ドゥ ダーロル。

    lúinés-areinálva,nadúl-anfaron-ár-aidudálor
    ときいる-<(軽いものが)>雨期<主格><〜ない>下る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下手下の国<対格>

    「雨期のあいだは、運び人は下の国へ下りない。」

    雨期には崖道が滑りやすく、閉じられることを述べた文。「雨期である間」は lúin+és- で言う。否定の na は動詞の直前に置く。faronár は「荷」に行為者の -ár をつけた語で、軽性なので複数主格は -ai になる。

    lúin tóra kailálva, dúlan faronárai du dálor.

    読み:ルーイン トーラ カイラルヴァ、ドゥーラン ファロナーライ ドゥ ダーロル。

    lúintór-akailálva,dúl-anfaron-ár-aidudálor
    とき来る-<(軽いものが)>乾風期<主格>下る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下手下の国<対格>

    「乾風期が来ると、運び人たちは下の国へ下りていく。」

    乾風期に崖道が開き、縁の市へ荷が運ばれることを述べた文。前の雨期の例文とちょうど裏返しの内容になる。kailálva は軽性なので、動詞は -a で一致する。dálor は重性なので、対格も主格と同じ形になる。

    lúin ésa kailálva, dulíþan kelárai gandér du dálor.

    読み:ルーイン エーサ カイラルヴァ、ドゥリーサン ケラーライ ガンデール ドゥ ダーロル。

    lúinés-akailálva,dul-íþ-ankel-ár-aigandérdudálor
    ときいる-<(軽いものが)>乾風期<主格>下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>硬木<対格>下手下の国<対格>

    「乾風期のあいだ、樵たちは硬木を下の国へ下ろす。」

    乾風期が硬木の伐り出しと吊り下ろしの季節であることを述べた文。gandér と dálor は重性なので、主格と対格が同じ形になる。使役の -íþ- は、後ろに強勢をもつ接辞がないので、自分で強勢をとる。

    lúin tóra þailúin, dúlan faronárai du orén.

    読み:ルーイン トーラ サイルーイン、ドゥーラン ファロナーライ ドゥ オレーン。

    lúintór-aþailúin,dúl-anfaronár-aiduorén.
    とき来る-<(軽いものが)>澄みの頃<主格>下る-<彼らが>運び人-<〜たちが>下手縁<対格>

    「澄みの頃が来ると、運び人たちが縁へ下りていく。」

    「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。þailúin は節の主語で、動詞は軽性の tóra で受ける。崖道がいちばんにぎわい、縁の市が盛りを迎える時期を言う、決まった言い回し。

    mé duliþésa gandér glünlúinei.

    読み:メー ドゥリセーサ ガンデール グリュンルーイネイ。

    médul-iþ-és-agandérglünlúin-ei.
    <禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>硬木<対格>凍りの頃-<与格>

    「凍りの頃には、硬木を下ろさぬこと。」

    降ろし場の決まりを述べる、碑文や触れ書きの文体。当為法なので mé で否定し、主語を言わずに一般の人を主語にしている(軽性の形)。凍りの頃は綱が凍って危ないので、吊り下ろしが止まる。

    aurénde, élaur! áura selvá, na dúla.

    読み:アウレンデ、エーラウル!アウラ セルヴァー、ナ ドゥーラ。

    aurénde,élaur!áur-aselvá,nadúl-a.
    さようなら昇りゆく人昇る-<(軽いものが)>息<主格><〜ない>下る-<(軽いものが)>

    「さようなら、昇りゆく人よ。息は昇り、下りはしない。」

    火葬の場で死者に別れを告げる言い方。死後一年は生前の名前を口にできないので、名前を呼ばずに élaur「昇りゆく人」と呼びかける。後半の二つの動詞は、どちらも軽性の selvá を主語として受ける。aurénde がもとから持つ「息が上へ昇るように」という意味が、ここではそのまま生きている。

    lúin dulíþim fáron, fláinim.

    読み:ルーイン ドゥリーシン ファーロン、フライニン。

    lúindul-íþ-imfáron,fláinim.
    とき下る-<〜させる>-<私が>荷<対格>軽くなった

    「荷を下ろしたら、肩が軽くなった。」

    「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。dulíþ- は dúl-「下る」に使役の -íþ- をつけた「下ろす」で、後ろに強勢をもつ接辞がないので、-íþ- が強勢をとる。

    hóu! ké dúles du orén?

    読み:ホー!ケー ドゥーレス ドゥ オレーン?

    hóu!kédúl-esduorén?
    おーい<〜か>下る-<あなたが>下手縁<対格>

    「おーい!縁へ下りるのか?」

    谷の向こうや坂の下にいる相手に、大声で行き先を確かめる言い方。はい・いいえの問いは文のいちばん前に ké を置くが、間投詞 hóu はさらにその前に、独立した叫びとして置く。目上の人には使わない、くだけた呼びかけ。

    ké dúlimor du orén dórel? éun.

    読み:ケー ドゥーリモル ドゥ オレーン ドーレル?エウン。

    kédúl-imorduoréndórel?éun.
    <〜か>下る-<我々が>下手縁<対格>明日うん

    「「明日、縁へ下りるか?」「うん。」」

    運び人どうしのくだけたやりとり。時を表す語 dórel は文の後ろに置く。éun だけで答えるのは仲間内や目下への返事で、改まった場では動詞を繰り返すか、目上の人には dómim を使う。

    lúin tóro nébro, dúla lisá du dálor.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ドゥーラ リサー ドゥ ダーロル。

    lúintór-onébro,dúl-alisádudálor.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>下る-<(軽いものが)>字<主格>下手下の国<対格>

    「「霧が来ると、字は下の国へ流れ落ちる。」」

    霧の中で書いた字は墨がにじんで下へ流れる、という言い伝えを述べた文。霧期に大事な書きものを避ける理由になる。霧 nébro は重性なので動詞は -o、字 lisá は軽性なので -a をとる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。

    dúla lourlisá an fóndaros ráimaros dáumbar téir lóurul.

    読み:ドゥーラ ロウルリサー アン フォンダロス ライマロス ダウンバル テール ロールル。

    dúl-alourlisáanfóndar-osráimar-osdáumbartéirlóur-ul.
    下る-<(軽いものが)>系譜の巻<主格>上手源-<属格>ライマル-<属格>二十三瀬-<〜たちを>

    「系譜の巻は、ライマルの源から二十三瀬を下っていく。」

    系譜の巻に書かれた流れが、源から一瀬ずつ下っていくことを言う文。系譜読みが唱えはじめるときの言い方でもある。an+属格で「上手から」。lóurul は道のりの対格で、自動詞 dul- もこの格をとれる。巻は紙なので軽性で、動詞は -a をとる。

    pó dulíþo ó gandér marfúneloi?

    読み:ポー ドゥリーソ オー ガンデール マルフーネロイ?

    pódul-íþ-oógandérmarfúnel-oi?
    何<主格>下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・主格>硬木<対格>綱臂-<与格>?

    「綱臂で、硬木を(何が)下ろすのだ?」

    崖道のくだけた話し方での問い。pónを使わないため、主語を尋ねる場合は主語の枠に再述のóを残す(統語論1.2節「前に出した語の読み方」)。póは主格。marfúneloiは場所の与格(重性③型DAT -oi)。降ろし場の仕組みを尋ねる文で、綱臂の役割を問う。

    ombrélo fáron, duói dúlimor du dulándo.

    読み:オンブレーロ ファーロン、ドゥオイ ドゥーリモル ドゥ ドゥランド。

    ombrél-ofáron,duóidúl-imordudulándo.
    足りる-<(重いものが)>荷<主格>それから下る-<我々が>下手ドゥランド<対格>

    「荷はそろってる。じゃあ、ドゥランドまで下ろう。」

    運び人のくだけた言葉。duói「それから」は出来事の順序。dúl-imor「下る-1PL」は崖道の言葉で双数の代わりに複数で受ける形。くだけた話し方では語末の母音が落ち ombrélo → ombrél となる(語末が子音の dúl-imor は脱落しない)。

    mé duliþésa ruunkréinul es drúnoros.

    読み:メー ドゥリセーサ ルーンクレーヌル エス ドルーノロス。

    médul-iþ-és-aruunkréin-ulesdrúnor-os.
    <禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>背負い枠-<〜たちを>から崖道-<属格>

    「崖道から背負い枠を落としてはならない。」

    記録や法文で使う当為法。主語を言わない当為法は、軽性の単数形になる。背負い枠の複数直接目的語は、重性名詞の複数語尾 -ul を受けた ruunkréinul となる。ここでは、荷そのものの墜落ではなく、運び人の道具である背負い枠を崖道から落としていけないという規則として書かれている。

    dulíþa funelár funelfáron.

    読み:ドゥリーサ フネラール フネルファーロン。

    dul-íþ-afunelárfunelfáron.
    下る-<〜させる>-<(軽いものが)>綱番綱荷<対格>

    「綱番が綱荷を下ろす。」

    日常の降ろし作業の文。基本語順はVSO。主語 funelár は軽性の名詞なので、動詞は3人称単数軽性の -a をとる。funelfáron は、荷が単に置かれているだけでなく、綱臂・巻胴などの綱場の操作に組み込まれて吊り下ろす対象になった荷を指す。重性名詞の単数の対格は無標なので、目的語でも funelfáron の形のままになる。

    dúlo fróumo.

    読み:ドゥーロ フローモ。

    dúl-ofróumo
    下る-<(重いものが)>荷車<主格>

    「荷車は下りていく。」

    fróumo を主語に取る文。fróumo は重性o語幹の単数主格。動詞 dúlo は重性の単数主語に一致する。

    mé duliþésa fáron es kráumos só

    読み:メー ドゥリセーサ ファーロン エス クラウモス ソー

    médul-iþ-és-afároneskráum-ossó
    <禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>から露岩-<属格>この<重性>

    「この崖壁から荷を落とすな。」

    碑文や市の禁令のような改まった禁止表現。当為法が無主語のまま使われている。es+属格で「〜から」。ここでの kráum は、崩れやすい崖壁・崖縁を指している。

    dúlo lourílmo du dálor.

    読み:ドゥーロ ロウリルモ ドゥ ダーロル。

    dúl-olourílmodudálor.
    下る-<(重いものが)>滝<主格>下手下の国<対格>

    「滝が下の国へ下りていく。」

    地図・川筋・書物的な語り。lourílmo を流れの一部としてとらえ、その流れが川筋に沿って下流へ向かう様子を表す。重性主語なので動詞語尾は -o。du+対格で「下手へ」。

    dúlo louvrúndo lóurul análoros.

    読み:ドゥーロ ロウヴルンド ロールル アナーロロス。

    dúl-olouvrúndolóur-ulanálor-os.
    下る-<(重いものが)>長川<主格>瀬-<〜たちを>上手の国-<属格>

    「長川は、上手の国の瀬を流れ下る。」

    宮廷詩で王国の流れを詠む表現。lóur は「川瀬」と「世代」を兼ね、lóurul は重性名詞の複数対格で、流れ下る道のり・世代を表す。louvrúndo を王国そのものの流れとして詠む。

    dúlo alfilrúndo du orén.

    読み:ドゥーロ アルフィルルンド ドゥ オレーン。

    dúl-oalfilrúndoduorén.
    下る-<(重いものが)>白糸川<主格>下手縁<対格>

    「白糸川は縁へ下る。」

    VSOの基本語順。河川名 alfilrúndo は地上の水なので重性o語幹で、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。du+対格で「下手へ/縁へ」。地誌や帳簿の定型のような地文。

    áuran ombára ilánai, duói dulíþan kelárai dulfáron.

    読み:アウラン オンバーラ イラーナイ、ドゥオイ ドゥリーサン ケラーライ ドゥルファーロン。

    áur-anombárailán-ai,duóidul-íþ-ankel-ár-aidulfáron.
    昇る-<彼らが>十灯-<〜たちが>その次に下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>下ろし荷<対格>

    「十の灯が昇る。その次に、樵たちが下ろし荷を下ろす。」

    年代記の記事を読み上げる場面。決まった順の項目を、文1, duói 文2の形でつなぐ改まった用法。duóiは原因ではなく単に項目順を示す。第二節は動詞で始まる。

    duláu du sirnóra!

    読み:ドゥラウ ドゥ シルノーラ!

    dul-áudusirnóra
    下る-<命令法・双数>下手Sirnóra<対格>

    「二人でシルノーラへ降りていけ!」

    旧道を降りるときの日常的な指示。命令法双数 -áu は二人に対して使う。前置詞 du が対格を支配し、旧地名 sirnóra は格標識を持たないまま対格的に解釈される。

    dúlan faronárai bérun du dálor.

    読み:ドゥーラン ファロナーライ ベールン ドゥ ダーロル。

    dúl-anfaron-ár-aibérundudálor
    下る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>道のり<対格>下手下の国<対格>

    「運び人たちは道のり(道筋)を下りて下の国へ行く。」

    移動動詞と組む道のり用法。重性名詞 bérun は対格接語を持たず、主格と同形のまま道のりを表す。複数主語 faronárai は軽性行為者名詞 faronár の複数主格。

    lúin dúlo funelfáron, krémero krénmo fúneloi

    読み:ルーイン ドゥーロ フネルファーロン、クレーメロ クレンモ フーネロイ

    lúindúl-ofunelfáron,krémer-okrénmofúnel-oi
    とき下る-<(重いものが)>綱荷<主格>,環に掛かる-<(重いものが)>環<主格>綱-<与格>

    「綱荷が下りるとき、輪は綱に掛かっている。」

    手順書的な文。lúin「〜とき」の節は主節の前に置く。主語のkrénmoが重性なので、動詞はkrémero。掛かり先の綱は与格fúneloi。

    dúlo seníño ném-es.

    読み:ドゥーロ セニーニョ ネーメス。

    dúl-oseníñoném-es
    下る-<(重いものが)>拙い涙<主格><私>-<属格>

    「私の拙い涙が流れます。」

    自分の涙をへりくだり、それが下りていくとする書き言葉・独白。主語が重性o語幹の単数なので、動詞は3人称単数・重性。所有は名詞の後ろに1人称属格を置く。

  2. 南へ行く

    北が上の国なので、南の縁や干潟の方へ行くこと。「下へ行く」はそのまま干潟へ行く意味になる。

    ké dúles sórel? na dúlim, duléim dórel.

    読み:ケー ドゥーレス ソーレル?ナ ドゥーリン、ドゥレーン ドーレル。

    kédúl-essórel?nadúl-im,dul-é-imdórel.
    <〜か>南へ行く-<あなたが>今日<〜ない>南へ行く-<私が>南へ行く-<〜だろう>-<私が>明日

    「「今日は下へ行くのか?」「いや、行かない。明日行くだろう。」」

    崖道の商人どうしの、くだけた問いと答え。はい・いいえの問いは文頭の ké で作り、答えは問いの動詞を自分の人称に変えてくり返す。確かでない未来のことは推量法で言う。1人称の語尾の前では推量の -él- の l が落ちて duléim になる。

    lúin tóro nébro, dúlan orenvandárai du dálor.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ドゥーラン オレンヴァンダーライ ドゥ ダーロル。

    lúintór-onébro,dúl-anorenvandár-aidudálor.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格>南へ行く-<彼らが>縁商人-<〜たちが>下手下の国<対格>

    「霧が来るころ、縁商人たちは下(干潟)へ帰っていく。」

    dúl- は、北が「上」の国では、そのまま「南へ行く・干潟へ行く」の意味になる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。縁商人は軽性の人なので、複数主格は -ai になる。霧が崖を上りはじめると縁の市が閉じることを述べた文。

  3. 〜段・〜瀬下りた

    分詞 dúlen に数詞と段・瀬の複数対格を続け、身分や世代の隔たりを表す。序数の代わりになる言い方。

    ésa lisár sé dúlen fáir þrénul.

    読み:エーサ リサール セー ドゥーレン ファイル スレーヌル。

    és-alis-ársédúl-enfáirþrén-ul.
    いる-<(軽いものが)>書く-<〜する人>この<軽性>〜段・〜瀬下りた-<〜した・〜された>四段-<〜たちを>

    「この書記は四段下りの者だ。」

    身分の段を言う言い方。分詞 dúlen に数詞と þrén「段」の複数対格(道のりの対格)を続けて、頂からどれだけ下りているかを表す。高原語にはこれにあたる序数がない。分詞は主語 lisár(軽性・単数・主格)に一致するので、語尾がつかない。þrénul を lóurul「瀬を」に替えると、身分ではなく世代の言い方になる。

  4. 落ちる(婉曲)

    崖から落ちる、縁の民が崖下へ移り住んだ、といった口にしにくい出来事を遠回しに言う。

    dúla faronár es orénos. mé vír þelán éles!

    読み:ドゥーラ ファロナール エス オレーノス。メー ヴィール セラーン エーレス!

    dúl-afaronáresorén-os.mévírþel-ánél-es!
    下る-<(軽いものが)>運び人<主格>から縁-<属格><禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>名前-<対格><3人称単数・軽性>-<属格>

    「運び人が縁から下りた(落ちて死んだ)。その名を口にするな。」

    崖から落ちて死ぬことは、いちばん恐れられる死である。そのため brúum-「落ちる」とは言わず、dúl-「下る」で遠回しに言う。高原語には時制がないので、dúla は文脈によって「下りた」の意味になる。死後一年は死者の名を口にしない禁忌があるので、すぐ後に禁止の文が続く。

解説

上から下へ、北から南へ移ることを表す基本の自動詞。水が流れ下る、硬木が崖の下へ下ろされる、人が坂や崖道を下りる、のすべてに使う。北が「上」、南が「下」の国なので、「南へ行く」「干潟へ行く」の意味にもなる。分詞 dúlen は道のりの対格をとり、身分の段や系譜の瀬を「何段下りた」「何瀬下りた」と数える言い方の中心になる。下へ行くことは重くなることでもあるので、崖から落ちる・崖下へ移り住むといった不吉な出来事を遠回しに言うのにも使う。

そのほかの用例

dulémbelim virán aursárail.

読み:ドゥレンベリン ヴィラーン アウルサーライル。

dul-émbel-imvir-ánaursár-ail.
<〜させていただく>-捧げる-<私が>言葉-<対格>祖先-<〜らに>

「ご先祖さまに、言葉を捧げさせていただきます。」

祖先を祀る場で詩を捧げるときの前置き。謙譲の du- は母音の前で dul- になる。捧げる相手は与格で表す。

dúlo houmíño es aldáres áurenes.

読み:ドゥーロ ホウミーニョ エス アルダーレス アウレネス。

dúl-ohoumíñoesaldár-esáur-en-es.
下りる-<(重いものが)>椀<主格>から座-<属格>昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格>

「高き座から、(恵みの)椀が下りてくる。」

詩的用法。houmíño は器そのものではなく、高き座から下される食物(恵み)を器の形で指す。es+属格の「〜から(出どころ)」は運動動詞の論項なので、動詞の後ろに置く(統語論1.2節、基本語順:動詞…主語 目的語 [与格] [前置詞句])。重性名詞 houmíño が主語なので動詞は -o。

文法

自動詞。直説法3単は dúla(軽)/dúlo(重)。完了語根 dóul-。分詞 dúlen(否定 nadúlen「下りぬ」)。使役 dulíþ-「下ろす・落とす」。命令2単 dúl。くだけた話し方では dúlo が dúl になる。

語源

古高原語 *dul-。前置詞 du「下手」、謙譲の接頭辞 du-、派生語 duló「滝」と同じ源。

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