小説
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昇る
煙・息・鳥・星・月などが上へ昇る。
áura selvá an ilánais.
読み:アウラ セルヴァー アン イラーナイス。
| áur-a | selvá | an | ilán-ais |
| 昇る-<(軽いものが)> | 息<主格> | 上手 | 灯-<〜たちを> |
「息は星々のもとへ昇る。」
selvá は軽性a語幹なので、動詞は軽性の -a をとる。星を数を問わずに総称しているので、複数対格の ilánais を使う。
aldána aldár áuren an dúnoi.
読み:アルダーナ アルダール アウレン アン ドゥーノイ。
| aldán-a | aldár | áur-en | an | dún-oi |
| おわす-<(軽いものが)> | 座<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | 上手 | 丘-<与格> |
「高き座は丘の上におわします。」
aldán- は「いる」の尊敬の補充形。áuren は軽性・単数・主格の分詞で、一致の語尾はつかない。an+与格で「上手の側で」。
áurau dáu sílarau.
読み:アウラウ ダウ シーララウ。
| áur-au | dáu | sílar-au |
| 昇る-<双数> | 二 | 月-<双数> |
「二つの月が昇る。」
dáu「二」の後ろの名詞は双数になる。双数の動詞は、人称も性も区別しない。月は星ではないので、数えても双数にしてもかまわない。
lúin áuran ombára ilánai, dulíþan kelárai gandér.
読み:ルーイン アウラン オンバーラ イラーナイ、ドゥリーサン ケラーライ ガンデール。
| lúin | áur-an | ombára | ilán-ai, | dul-íþ-an | kel-ár-ai | gandér. |
| とき | 昇る-<彼らが> | 十 | 灯-<〜たちが> | 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> |
「十の灯が昇ると、樵たちは硬木を下ろす。」
「〜とき」の節は lúin で始め、ふつう主節の前に置く。ombára ilánai「十の灯」は星座の名前で、古い形の「十」が固まって残ったもの。星を数えているわけではない。
ésa lóna áuren an pélsei.
読み:エーサ ローナ アウレン アン ペルセイ。
| és-a | lóna | áur-en | an | péls-ei. |
| いる-<(軽いものが)> | 柱の木<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | 上手 | 脂の木-<与格> |
「柱の木は脂の木より高い。」
性質の程度がまさるときは「an+与格」(〜の上手に)、劣るときは「du+与格」で比べる。「いちばん高い」は an lónail「柱の木々の上手に」と言う。立っている木なので軽性。下向きの性質(「より重い」)も規則どおり an で言うが、皮肉に響く(本文8節)。
aurénde selvá! an ilánais.
読み:アウレンデ セルヴァー!アン イラーナイス。
| aur-énd-e | selvá! | an | ilán-ais. |
| 昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 息<主格> | 上手 | 灯-<〜たちを> |
「「ごきげんよう(あなたの息が昇りますように)。」「星々へ。」」
二人の発話(挨拶と返し)。会ったときと別れるときの挨拶。返しは、動詞を省いた前置詞句だけで答える。語尾 -énde が、市で聞く ende と同じ響きなので、尋はここで二つのつながりに気づくかもしれない。
du dálor gandér, sílarau áurau.
読み:ドゥ ダーロル ガンデール、シーララウ アウラウ。
| du | dálor | gandér, | sílar-au | áur-au. |
| 下手 | 下の国<対格> | 硬木<主格> | 月-<双数> | 昇る-<双数> |
「硬木は下の国へ、二つの月は昇る。」
詩の一句で、十拍(du-dá-lor-gan-dér-sí-la-rau-áu-rau)。前半では動詞を落とし、後半では主語が動詞の前に出ている。会話の中でこの語順を聞くと、高原の人は「詩句の引用だ」とわかる。
áura selvá, salóur dúlo ílmo.
読み:アウラ セルヴァー、サロール ドゥーロ イルモ。
| áur-a | selvá, | salóur | dúl-o | ílmo. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 息<主格> | しかし | 下る-<(重いものが)> | 水<主格> |
「息は昇る。しかし、水は下る。」
salóur「瀬の外に」は逆接。強勢があり、後ろに短い切れ目が入る。
áurau sílarau an ilánais.
読み:アウラウ シーララウ アン イラーナイス。
| áur-au | sílar-au | an | ilán-ais. |
| 昇る-<双数> | 月-<双数> | 上手 | 灯-<〜たちを> |
「二つの月が、星々のほうへ昇る。」
都の言葉。双数の主語には双数の動詞。
áuran sílarau an ilánais.
読み:アウラン シーララウ アン イラーナイス。
| áur-an | sílar-au | an | ilán-ais. |
| 昇る-<彼らが> | 月-<双数> | 上手 | 灯-<〜たちを> |
「二つの月が、星々のほうへ昇る。」
崖道の言葉。名詞は双数のまま、動詞は複数で受ける。
éso dún náuren.
読み:エーソ ドゥーン ナウレン。
| és-o | dún | n-áur-en. |
| いる-<(重いものが)> | 丘<主格> | <〜ない>-昇る-<〜した・〜された> |
「丘は高からぬ(低い)。」
na- は母音の前で n- になる。
sénim lónan áurenan sélvanes.
読み:セーニン ローナン アウレナン セルヴァネス。
| sén-im | lón-an | áur-en-an | sélvan-es. |
| 見る-<私が> | 柱の木-<対格> | 昇る-<〜した・〜された>-<対格> | セルヴァン-<属格> |
「私はセルヴァンの高い柱の木を見る。」
自動詞の分詞(形容詞として固まった áuren)の後ろの属格は、動作主ではなく持ち主。
lúin fléira aldár áuren es dúnos, snéiman éndrai.
読み:ルーイン フレーラ アルダール アウレン エス ドゥーノス、スネーマン エンドライ。
| lúin | fléir-a | aldár | áur-en | es | dún-os, | snéim-an | éndr-ai. |
| とき | お出ましになる-<(軽いものが)> | 座<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | から | 王の丘-<属格> | 身をかがめる-<彼らが> | 人-<〜たちが> |
「高き座が王の丘からお出ましになると、人々は身をかがめる。」
都での王の行幸を言う文。単に dún と言っても、文脈から湖都の北の、王の居所がある丘を指す。fléir- は「行く」の尊敬の補充形。lúin の時の節は主節の前に置く。
lúin áura álmar, émbelimor fóndar némores.
読み:ルーイン アウラ アルマル、エンベリモル フォンダル ネーモレス。
| lúin | áur-a | álmar, | émbel-imor | fóndar | némor-es. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 白月<主格> | 祀る-<我々が> | 源<対格> | <我々>-<属格> |
「白月が昇ると、我々は我らの始祖を祀る。」
白月の満月の夜に祖先を祀る習わしを述べた文。fóndar は重性なので、目的語になっても主格と同じ形のまま。所有者を表す属格 némores は名詞の後ろに置く。lúin の節は主節の前に来る。
aldána aurél aldárei áurenei.
読み:アルダーナ アウレール アルダーレイ アウレネイ。
| aldán-a | aurél | aldár-ei | áur-en-ei. |
| お就きである-<(軽いものが)> | あの方 | 座-<与格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・与格> |
「あの方は、高き座にお就きであられる。」
王や高位の人が位にあることを言う。座は与格 aldárei で表し、分詞 áuren は軽性・単数・与格の -ei で一致する。今の王を個人名で呼ばず、aurél「あの方」と言っている。
aldanénde aurél aldárei áurenei.
読み:アルダネンデ アウレール アルダーレイ アウレネイ。
| aldan-énd-e | aurél | aldár-ei | áur-en-ei. |
| お就きである-<〜しますように>-<(軽いものが)> | あの方 | 座-<与格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・与格> |
「あの方が、高き座にお就きあそばしますように。」
即位の儀のころに宮廷で唱えられる言祝ぎ。願望法の3人称単数・軽性は -énde となり、強勢が語根から接尾辞へ移る(aldánа → aldanénde)。
fléira aldár áuren du orén.
読み:フレーラ アルダール アウレン ドゥ オレーン。
| fléir-a | aldár | áur-en | du | orén. |
| お出ましになる-<(軽いものが)> | 王の位 | 昇る-<〜した・〜された> | 下手 | 縁<対格> |
「高き座が、縁へお出ましになる。」
aldár áuren「高き座」は、王の位と今の王をあわせて指す総称で、今の王を指すときはこれだけで足りる。fléir- は「行く」の尊敬の補充形。王が縁の方へ下る行幸の知らせに使われる。
áura ilána, mé ombér!
読み:アウラ イラーナ、メー オンベール!
| áur-a | ilána, | mé | ombér! |
| 昇る-<(軽いものが)> | 星<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 指さす<命令法><あなたが> |
「星が昇る。指さすな。」
親が子に言い聞かせる禁止の決まり文句。昇ってくる一つの星を言うので単数の ilána を使う。禁止は「mé+命令法」で言う。星は祖先の炉の火とされ、指さすことは禁忌である。
áura ilána ráimaros an álmarei.
読み:アウラ イラーナ ライマロス アン アルマレイ。
| áur-a | ilána | ráimar-os | an | álmar-ei. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 祖先の星<主格> | ライマル-<属格> | 上手 | 白月-<与格> |
「ライマルの星が、白月の上手に昇る。」
祖先の星は、単数の ilána の後ろに祖先の名を属格で添えて呼ぶ(名前のある一つの星なので、単数で指してよい)。星の位置は指さずに、「an+与格」で白月との位置関係として言う。系譜読みや星読みが、夜の時刻や祖先の祀りについて語るときの言い方。
héla houmár aldárei áurenei.
読み:ヘーラ ホウマール アルダーレイ アウレネイ。
| hél-a | houm-ár | aldár-ei | áur-en-ei. |
| 座る-<(軽いものが)> | 炉-<〜する人> | 座-<与格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・与格> |
「家の主は、高い座に座る。」
家の中の上座を言う。炉の北側(上手)の一段高い座が、家の主と年長者の席である。分詞 áuren は修飾する aldárei(軽性・単数・与格)に一致して -ei をとる。houmár は hóum「炉」に -ár「〜する人」がついた語。
funeléra lisár þelán aldáres áurenes.
読み:フネレーラ リサール セラーン アルダーレス アウレネス。
| funelér-a | lis-ár | þel-án | aldár-es | áur-en-es. |
| 書き留める-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 名前-<対格> | 王の位-<属格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格> |
「書記は、高き座の名を書き留める。」
記録の場面の文。属格にすると、分詞も -es で一致して aldáres áurenes「高き座の」となる。王の名は口にできない場合でも、書くことは息を使わないので禁じられない。書くときは上げ書きにする。
lúin áura álmar, hóinimor.
読み:ルーイン アウラ アルマル、ホイニモル。
| lúin | áur-a | álmar, | hóin-imor. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 白月<主格> | 帰る-<我々が> |
「白月が昇ったら、帰ろう。」
日常の時の言い方。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。月は軽性なので、動詞は -a をとる。時刻を月や星の昇りで言うのは、高原ではごくふつうのこと。
sén! áura aurá an élvaran.
読み:セーン!アウラ アウラー アン エルヴァラン。
| sén! | áur-a | aurá | an | élvar-an. |
| 見る<命令法><あなたが> | 昇る-<(軽いものが)> | 縁鷲<主格> | 上手 | 天-<対格> |
「見ろ、縁鷲が天へ昇っていく。」
縁の肩で、崖からの吹き上げに乗る鷲を見て言う言葉。áura「昇る」と aurá「縁鷲(もとは昇るもの)」は、強勢の位置だけが違う。日本語話者には同じに聞こえやすい。
dúlo gromó du dálor, áura selvá.
読み:ドゥーロ グロモー ドゥ ダーロル、アウラ セルヴァー。
| dúl-o | gromó | du | dálor, | áur-a | selvá. |
| 下る-<(重いものが)> | 体<主格> | 下手 | 地の底<対格> | 昇る-<(軽いものが)> | 息<主格> |
「体は地の底へ沈み、息は昇る。」
弔いのときに森の巫や系譜読みが唱える句。重性の gromó「体」と軽性の selvá「息」が、動詞の語尾 -o/-a でも対になっている。dálor はここでは干潟ではなく、上・中・下の三層の「下」、重いものが沈んでいく地の底を指す。
aurénde selvá éles.
読み:アウレンデ セルヴァー エーレス。
| aur-énd-e | selvá | él-es. |
| 昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 魂<主格> | <3人称単数・軽性>-<属格> |
「その魂が昇りますように。」
火葬で煙が昇るのを見送るときの祈り。願望法の3人称単数・軽性は -énde で終わる。挨拶の aurénde selvá!「ごきげんよう」も同じ形で、もとは相手の息(魂)が昇ることを願う言葉である。
áuran slúun sílarar, na tóra lisár.
読み:アウラン スルーン シーララル、ナ トーラ リサール。
| áur-an | slúun | sílar-ar, | na | tór-a | lis-ár. |
| 昇る-<彼らが> | 数えきれぬ | 月-<〜らの> | <〜ない> | 来る-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> |
「数えきれぬほど月が昇ったが、書記は来ない。」
詩や改まった語りの言い方。slúun sílarar「千の月」は数えた結果ではなく、「数えきれないほど長い時が過ぎた」という意味の決まり文句。月は星ではないので、数の言い方をしても禁忌には当たらない。時制がないので、áuran は「昇った」とも訳せる。
éso þrén nadúlen aldárei áurenei.
読み:エーソ スレーン ナドゥーレン アルダーレイ アウレネイ。
| és-o | þrén | na-dúl-en | aldár-ei | áur-en-ei. |
| いる-<(重いものが)> | 段<主格> | <〜ない>-下る-<〜した・〜された> | 座-<与格> | 昇る-<〜した・〜された>-<与格> |
「下りぬ段は高き座のものである。」
宮廷の語りや詩で、王の身分を言う改まった文。所有は「ある+持ち主の与格」で言い、動詞は持たれている物 þrén(重性)に一致して -o をとる。分詞 nadúlen「下りぬ」は、重性・単数・主格の þrén に一致しているので語尾がつかない。áurenei は、軽性の与格 aldárei に一致した形。王の段は数を使わず、「下りぬ段」とだけ言う。
áura virá gléin, dúla virá rúgal.
読み:アウラ ヴィラー グレーン、ドゥーラ ヴィラー ルーガル。
| áur-a | virá | gléin, | dúl-a | virá | rúgal. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 言葉<主格> | 清い | 下る-<(軽いものが)> | 言葉<主格> | 粗い |
「清い言葉は昇り、粗い言葉は下る。」
言葉は息であり上へ昇る、という信仰を述べた言い習わし。粗い言葉は下へ沈むとされるが、virá は文法上つねに軽性なので、動詞 dúl- も重性の -o ではなく軽性の -a をとる。
ésa pélsa sé áuren.
読み:エーサ ペルサ セー アウレン。
| és-a | pélsa | sé | áur-en. |
| いる-<(軽いものが)> | 脂の木<主格> | この<軽性> | 昇る-<〜した・〜された> |
「この脂の木は高い。」
生えている脂の木を言う文。立ち木は軽性なので、繋辞は -a をとる。áuren「高い」は、もとは aur-「昇る」の分詞。伐られて材になると、同じ名詞でも繋辞は重性の éso で受ける。
áura virá sé.
読み:アウラ ヴィラー セー。
| áur-a | virá | sé. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 詩句<主格> | この<軽性> |
「この句は昇る(よくできた句だ)。」
よくできた詩句をたたえる決まった言い方。整った言葉は煙のように上へ昇り、祖先に届くとされるので、「昇る」と言うだけでほめ言葉になる。virá は軽性なので、動詞は3人称単数・軽性の -a をとり、指示詞も軽性の sé になる。
auríþa élvar nébro.
読み:アウリーサ エルヴァル ネーブロ。
| aur-íþ-a | élvar | nébro. |
| 昇る-<〜させる>-<(軽いものが)> | 天<主格> | 霧<対格> |
「天が霧を引き上げる。」
霧期の終わりに霧が持ち上がって雲に変わる様子を、信仰の言い方で語った文。霧が天に引き上げられると、人々は安堵する。nébro は重性o語幹なので、目的語でも主格と同じ形になる。
séirim tásan, lúin áura sílar.
読み:セーリン ターサン、ルーイン アウラ シーラル。
| séir-im | tás-an, | lúin | áur-a | sílar. |
| 待つ-<私が> | <あなた>-<対格> | とき | 昇る-<(軽いものが)> | 月<主格> |
「月が昇るころ、お前を待っている。」
同じ段の者どうしの、くだけた言い方。tás は②型の語尾で格変化し、対格は tásan になる。lúin は「〜とき」の節を導き、節の中も動詞で始まる。目上の人には tás を使わず、役職名などを3人称で言う。
na vírimor þelán aldáres áurenes.
読み:ナ ヴィーリモル セラーン アルダーレス アウレネス。
| na | vír-imor | þel-án | aldár-es | áur-en-es. |
| <〜ない> | 言う-<我々が> | 名前-<対格> | 座-<属格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格> |
「我々は高き座の御名を口にしない。」
王の個人名は即位と崩御のときに一度ずつしか唱えないという決まりを述べた文。na は直説法の動詞の直前に置く。分詞 áuren は座 aldár に一致して、軽性の属格 -es をとる。書くことは息を使わないので、この禁忌には当たらない。
aurénde virá gléin.
読み:アウレンデ ヴィラー グレーン。
| aur-énd-e | virá | gléin. |
| 昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 言葉<主格> | 清らかな |
「清らかな言葉が昇りますように。」
祈りや詩の結びに使う決まった言い方。願望法の3人称単数・軽性では、語尾が -e になる。整った言葉は煙のように祖先のもとへ昇る、という考え方をそのまま言い表している。
þóra lóna áuren.
読み:ソーラ ローナ アウレン。
| þór-a | lóna | áur-en. |
| 立つ-<(軽いものが)> | 柱の木<主格> | 昇る-<〜した・〜された> |
「高い柱の木が立っている。」
生えている木は軽性なので、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。分詞 áuren も軽性・単数・主格の形で、一致の語尾はつかない。
lóima ráuvan loimán ré aurénde selvá.
読み:ロイマ ラウヴァン ロイマーン レー アウレンデ セルヴァー。
| lóim-a | ráuvan | loim-án | ré | aur-énd-e | selvá. |
| 唱える-<(軽いものが)> | 森の巫<主格> | 詞-<対格> | ように | 昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 息<主格> |
「森の巫は、息が昇るよう詞を唱える。」
葬送の場面を述べた文。ré に願望法を続けると、「〜するように」という目的の節になる。aurénde は挨拶の aurénde と同じ形で、ここでは本来の「昇りますように」という意味で使われている。
áurau dáu sílarau, sénim dáun.
読み:アウラウ ダウ シーララウ、セーニン ダウン。
| áur-au | dáu | sílar-au, | sén-im | dáun. |
| 昇る-<双数> | 二 | 月-<双数> | 見る-<私が> | ふたつ |
「二つの月が昇る。私にはふたつとも見える。」
dáun は人だけでなく、そろいの二つのものも受ける。ここでは前の節の「二つの月」を受けて、目的語になっている。dáun は主格と対格が同じ形。月は星ではないので、数詞をつけても双数で受けてもかまわない。星をこの形で受けるのは禁忌にあたる。
aurélan ombára ilánai dórel.
読み:アウレーラン オンバーラ イラーナイ ドーレル。
| aur-él-an | ombára | ilán-ai | dórel. |
| 昇る-<〜だろう>-<彼らが> | 十 | 灯-<〜たちが> | 明日 |
「明日、十の灯が昇るだろう。」
星読みが年の始まりを告げるときの言い方。ombára は星座名の中にだけ残る古い形の「十」で、「そろった・満ちた」という意味を帯びる。格変化はせず、複数の ilánai を前から飾る。ilánai は a語幹 ilána の複数主格で、語根 ilán- に軽性の複数主格の語尾 -ai がついた形。動詞の前に出られる語は限られているので、時を表す dórel は文末に置く。確かでない未来なので推量法を使う。
lúin áuran ombára ilánai, dúlan kelárai du orén.
読み:ルーイン アウラン オンバーラ イラーナイ、ドゥーラン ケラーライ ドゥ オレーン。
| lúin | áur-an | ombára | ilán-ai, | dúl-an | kel-ár-ai | du | orén. |
| とき | 昇る-<彼らが> | 十 | 灯-<〜たちが> | 下る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 下手 | 縁<対格> |
「十の灯が昇ると、樵たちは縁へ下りていく。」
「〜とき」の節は lúin で始めて、主節の前に置く。ombára ilánai「十の灯」は年の始まりを告げる星の群れの名前で、ombára は数えた結果ではなく名前の一部。そのため、星を数えることの禁忌には当たらない。ilánai は語根 ilán- に複数主格の語尾 -ai がついた形。
áura selvá élaures.
読み:アウラ セルヴァー エーラウレス。
| áur-a | selvá | élaur-es. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 息<主格> | 昇りゆく人-<属格> |
「昇りゆく方の息が、昇っていく。」
火葬や喪の祀りで唱える詞の一句。死者の魂を軽い息 selvá として言う。selvá は軽性なので、動詞は -a をとる。昇名が定まる前の一年は、名の代わりにこの語を使う。
aldána aldár áuren þáiles selúin.
読み:アルダーナ アルダール アウレン サイレス セルーイン。
| aldán-a | aldár | áur-en | þáil-es | selúin. |
| おわす-<(軽いものが)> | 座<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | 澄んだ-<属格> | 今の世 |
「今の世には、澄みの高き座がおわします。」
年代記や碑文の改まった文体。ここでの selúin は「この瞬間」ではなく、今の王が座にある時代全体を指す。書き言葉なので座名をそのまま書いてよく、文字では上げ書きにする。aldán- は「いる」の尊敬の補充形。
dúlan ombár þrénul es aldáres áurenes.
読み:ドゥーラン オンバール スレーヌル エス アルダーレス アウレネス。
| dúl-an | ombár | þrén-ul | es | aldár-es | áur-en-es. |
| 下る-<彼らが> | そろった | 段-<〜たちが> | から | 座-<属格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格> |
「欠けのない段は、高き座から下っていく。」
身分の秩序を説く、改まった言い回し。ombár þrénul は「十の段」だが、数えた結果を言うのではなく、「一段も欠けない階段の全体」という意味で使っている。主語の þrénul は重性の複数主格。es+属格で「〜から」。
meirésan hóumul meiró aldárei áurenei.
読み:メイレーサン ホームル メイロー アルダーレイ アウレネイ。
| meir-és-an | hóum-ul | meiró | aldár-ei | áur-en-ei. |
| 与える-<〜すべし>-<彼らが> | 世帯-<〜たちが> | 税<対格> | 座-<与格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・与格> |
「世帯(炉)はそれぞれ、高き座に税を納めるべし。」
法典の文体。当為法の3人称複数で義務を定める。税を負うのは個人ではなく炉(世帯)で、主語は重性の複数主格 hóumul。méir-「与える」は、ここでは「納める」の意味。受け手の aldár áuren「高き座」は与格で、分詞も軽性の与格 -ei で一致する。
snéimim du autról aldáres áurenes.
読み:スネーミン ドゥ アウトロール アルダーレス アウレネス。
| snéim-im | du | au-tról | aldár-es | áur-en-es. |
| 身をかがめる-<私が> | 下手 | <お〜になる・御〜>-足<対格> | 座-<属格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格> |
「高き座の御足もとへ、身をかがめ奉ります。」
宮廷で王の前に出るときの儀礼の言い方。du+対格で「下手へ」を表し、相手より低いほうへ身を下げることを言葉にしている。目上の人の体の部分なので au- をつける。分詞 áurenes は軽性の aldáres に一致する。
élþo gromó, áura selvá.
読み:エルソ グロモー、アウラ セルヴァー。
| élþ-o | gromó, | áur-a | selvá. |
| 燃える-<(重いものが)> | 亡骸<主格> | 昇る-<(軽いものが)> | 息<主格> |
「亡骸は燃え、息は昇る。」
火葬を語る弔いの言い回し。重性の亡骸と軽性の息を並べ、動詞の語尾 -o と -a で、下へ残るものと上へ行くものを対比している。火葬は村の北側の高い場所で行う。
na ésa sóila faronáres áuren.
読み:ナ エーサ ソイラ ファロナーレス アウレン。
| na | és-a | sóila | faronár-es | áur-en. |
| <〜ない> | いる-<(軽いものが)> | 結い髪<主格> | 運び人-<属格> | 昇る-<〜した・〜された> |
「運び人の結い髪は高くない。」
髪を高く結うほど身分が高いとされるので、九段下りの運び人の結い髪は低い。直説法の文なので na で否定する。述語の分詞 áuren(「高い」、もとは「昇った」)は、軽性の主語 sóila に一致している。
áuren sóila, áuren þrén.
読み:アウレン ソイラ、アウレン スレーン。
| áur-en | sóila, | áur-en | þrén. |
| 昇る-<〜した・〜された> | 結い髪<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | 段<主格> |
「髪高ければ段も高し。」
結い髪の高さが身分の高さを表すことを言った諺。諺の形なので繋辞を落とし、述語の分詞 áuren を名詞の前に出している。前半の分詞は軽性の sóila に、後半の分詞は重性の þrén に一致している。どちらも単数主格なので、一致の語尾はつかない。
auríþan ólmarai kréinul an þráin.
読み:アウリーサン オルマライ クレーヌル アン スライン。
| aur-íþ-an | ólmar-ai | kréin-ul | an | þráin. |
| 昇る-<〜させる>-<彼らが> | 年長者-<〜たちが> | 遺骨-<〜たちを> | 上手 | 峰<対格> |
「年長者たちが遺骨を上手の峰へ運び上げる。」
葬送の描写。火葬のあとの骨は、北の高みや丘の上の納骨所に収める。使役の auríþ-「上げる」と an+対格「上手へ」を組み合わせて、骨を高い所へ送る動きを言う。
lúin glóira aldár áuren, snéiman lisárai.
読み:ルーイン グロイラ アルダール アウレン、スネーマン リサーライ。
| lúin | glóir-a | aldár | áur-en, | snéim-an | lis-ár-ai. |
| とき | お越しになる-<(軽いものが)> | 座<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | 礼をする-<彼らが> | 書く-<〜する人>-<〜たちが> |
「高き座がお越しになると、書記たちは礼をする。」
目上の人に頭を下げて敬意を示す意味。lúin で始まる時の節は主節の前に置く。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。宮廷の作法を記した文の言い方。
áura ilána, mé ombér, lamér.
読み:アウラ イラーナ、メー オンベール、ラメール。
| áur-a | ilána, | mé | ombér, | lamér. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 灯<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 指さす<命令法><あなたが> | 掌を差し上げる<命令法><あなたが> |
「星が昇る。指さすな、掌を差し上げよ。」
星を指さすのは禁忌なので、手のひらを上に向けて目の高さより上へ差し上げ、視線で方向を示すよう子どもに教える言い方。ilána は軽性なので、動詞は -a をとる。lamér- は lámo「掌」に -ér- がついてできた動詞で、命令形は語幹そのままの lamér。
lúin áura ilána an álmarei, laméra ilanár.
読み:ルーイン アウラ イラーナ アン アルマレイ、ラメーラ イラナール。
| lúin | áur-a | ilána | an | álmar-ei, | lamér-a | ilanár. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 灯<主格> | 上手 | 白月-<与格> | 掌を差し上げる-<(軽いものが)> | 星読み<主格> |
「白月の上手に灯が昇ると、星読みは掌を差し上げる。」
星の司の記録の文体。星の位置は、an álmarei「白月の上手に」のように、ほかの天体との関係で言う。指さす代わりに掌を差し上げて示す。名前のある一つの星は、単数の ilána で指せる。
lúin áura álmar, émbelimor aursárais.
読み:ルーイン アウラ アルマル、エンベリモル アウルサーライス。
| lúin | áur-a | álmar, | émbel-imor | aursár-ais. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 白月 | 祀る-<我々が> | 祖先-<〜たちを> |
「白月が昇ると、私たちは祖先を祀る。」
白月の満月の夜に祖先を祀る習わしを言う文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。aursár は人を指すので軽性の子音語幹で、複数対格は -ais。祖先は「数えない」ものなので、数詞をつけず複数でひとまとまりに言う。
duliþésa gráun du augráun aldáres áurenes.
読み:ドゥリセーサ グラウン ドゥ アウグラウン アルダーレス アウレネス。
| dul-iþ-és-a | gráun | du | au-gráun | aldár-es | áur-en-es. |
| 下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 頭部<対格> | 下手 | <お〜になる・御〜>-頭部<対格> | 座-<属格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格> |
「頭は、高き座の御頭より下へ下げるべし。」
宮廷の礼法書にある決まりの文。当為法で主語を言わないので、「人は〜すべし」という一般の人が主語になり、軽性の形をとる。「du+対格」は「〜の下手へ」で、ここでは「〜より低く」の意味になる。目上の人の頭には au- をつけて augráun と言うが、名詞の性は重性のままなので、対格に語尾はつかない。
áura aurá an gráun orénos.
読み:アウラ アウラー アン グラウン オレーノス。
| áur-a | aurá | an | gráun | orén-os. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 縁鷲<主格> | 上手 | 上端<対格> | 縁-<属格> |
「縁鷲が崖のてっぺんへ昇っていく。」
gráun はここでは、崖のいちばん上の端を指す。「an+対格」で「上手へ」の意味になる。áura「昇る」と aurá「縁鷲」は、強勢の位置だけで区別される。重性の gráun は、対格でも語尾がつかない。
áura éndra, dúlo gandér.
読み:アウラ エンドラ、ドゥーロ ガンデール。
| áur-a | éndra, | dúl-o | gandér. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 人<主格> | 下る-<(重いものが)> | 硬木<主格> |
「人は昇り、硬木は下る。」
教えの書にある、人と物の違いを説く一句。人は軽性なので、動詞は -a をとる。硬木は重性なので、動詞は -o をとる。二つの文の動詞の語尾の違いに、「軽いものは上へ、重いものは下へ」という世界観が表れている。
lúin áura endríña an þráin, léuna aursárail.
読み:ルーイン アウラ エンドリーニャ アン スライン、レウナ アウルサーライル。
| lúin | áur-a | endríña | an | þráin, | léun-a | aursár-ail. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 未成年の者<主格> | 上手 | 峰<対格> | 申す-<(軽いものが)> | 祖先-<〜らに> |
「未成年の者は峰に登ると、祖先に言葉を申し上げる。」
成人の儀の次第を述べる書き言葉の文。主節では主語を言っていないが、動詞の語尾から、lúin の節と同じ者が主語だとわかる。祖先に向けた言葉なので、謙譲の補充形 léun- を使う。この儀を終えると成名が与えられ、endríña ではなくなる。
lúin áura álmar, émbelimor aursárais.
読み:ルーイン アウラ アルマル、エンベリモル アウルサーライス。
| lúin | áur-a | álmar, | émbel-imor | aursár-ais. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 白月<主格> | 祀る-<我々が> | 祖先-<〜たちを> |
「白月が昇ると、我々は祖先を祀る。」
家々の祖先祀りを説明する文。白月は見守る祖先のまなざしの象徴とされ、満ちた夜に祖先を祀る。lúin の節は主節の前に置く。月は軽性なので、動詞は -a で受ける。
áurau álmar si rúsil.
読み:アウラウ アルマル シ ルーシル。
| áur-au | álmar | si | rúsil. |
| 昇る-<双数> | 白月<主格> | と | 赤月<主格> |
「白月と赤月が昇る。」
単数の名詞を si で二つ並べると、動詞は双数になる。双数の動詞は人称も性も区別しない。月は星ではないので、二つ並べて双数で受けても禁忌にはならない。二つの月が重なって見える夜は秩序の乱れる夜とされ、人々は出歩かない。
áura álmar an dún.
読み:アウラ アルマル アン ドゥーン。
| áur-a | álmar | an | dún. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 白月<主格> | 上手 | 丘<対格> |
「白月が丘の上手へ昇る。」
年代記や暦の記事にあるような、直説法だけの簡潔な文。白月は軽性なので、動詞は軽性の -a をとる。an+対格で「上手へ」。重性の dún「丘」は、対格でも主格と同じ形になる。白月は暦の基準になる月で、祖先のまなざしの象徴とされる。
fléira aldár áuren es véinoros.
読み:フレーラ アルダール アウレン エス ヴェーノロス。
| fléir-a | aldár | áur-en | es | véinor-os. |
| お出ましになる-<(軽いものが)> | 座<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | から | 湖-<属格> |
「高き座が湖からお出ましになる。」
王の動きを言う、改まった言い方。fléir- は「行く」の尊敬の補充形。座 aldár は人を指すので軽性で、動詞は -a をとる。es+属格で、方向を問わない「〜から」を表す。重性の véinor は、属格が -os になる。
áura aurá an élvaran.
読み:アウラ アウラー アン エルヴァラン。
| áur-a | aurá | an | élvar-an. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 縁鷲<主格> | 上手 | 天-<対格> |
「縁鷲が天へ昇っていく。」
崖から吹き上がる風に乗って鷲が昇るのを見たときの、ごく日常的な言い方。élvar は軽性の子音語幹(aldár と同じ型)で、an+対格で「天へ」の意味になる。
ésa élvar þáil sórel, aurélau dáu sílarau.
読み:エーサ エルヴァル サイル ソーレル、アウレーラウ ダウ シーララウ。
| és-a | élvar | þáil | sórel, | aur-él-au | dáu | sílar-au. |
| いる-<(軽いものが)> | 天<主格> | 澄んだ | 今日 | 昇る-<〜だろう>-<双数> | 二 | 月-<双数> |
「今日は天が澄んでいる。二つの月も昇るだろう。」
乾風期の晴れた日によく交わす言葉。述語の形容詞 þáil は軽性・単数・主格なので語尾がつかない。未来のことは推量法で言い、強勢は -él- に移る。dáu「二」の後ろの名詞は双数になり、双数の動詞は人称も性も区別しない。月は星ではないので、数えて双数にしてもかまわない。
aurénde selvá élaures an élvaran.
読み:アウレンデ セルヴァー エーラウレス アン エルヴァラン。
| aur-énd-e | selvá | élaur-es | an | élvar-an. |
| 昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 息<主格> | 昇りゆく人-<属格> | 上手 | 天-<対格> |
「昇りゆく人の息が、天へ昇りますように。」
火葬の場で唱える送りの詞の一句。死後一年は名前を口にしないので、死者は élaur「昇りゆく人」と言い表す。願望法の3人称単数・軽性の語尾は -e になる。an+対格で「上手へ」。
lúin tóra aurléuma, auriþéla nébro.
読み:ルーイン トーラ アウルレウマ、アウリセーラ ネーブロ。
| lúin | tór-a | aurléuma, | aur-iþ-él-a | nébro. |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 昇る風<主格> | 昇る-<〜させる>-<〜だろう>-<(軽いものが)> | 霧<対格> |
「昇る風が吹いてくれば、霧を持ち上げるだろう。」
霧期の終わりに、農村で雨期の訪れを読む文。霧が持ち上げられて雲に変わると、雨期が始まる。aurléuma は崖下から来るが、崖で押し上げられて雲をつくるので、重性の duléumo とは別の軽性の語になり、動詞も軽性の -a をとる。aur-íþ- は「昇る」の使役で「上げる」の意味。推量法の -él- が強勢を奪うので auriþéla となる。主語は前の節と同じなので、主節では言わない。nébro は重性なので、主格と対格が同じ形になる。
áura aurléuma es orénos, auríþa nébro an élvaran.
読み:アウラ アウルレウマ エス オレーノス、アウリーサ ネーブロ アン エルヴァラン。
| áur-a | aurléuma | es | orén-os, | aur-íþ-a | nébro | an | élvar-an. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 昇る風<主格> | から | 縁-<属格> | 昇る-<〜させる>-<(軽いものが)> | 霧<対格> | 上手 | 天-<対格> |
「昇る風は縁から昇り、霧を天へと持ち上げる。」
雨期の天気のしくみを説明する、書物風の文。an+対格で「上手へ」、つまり天のほうへ向かうことを表す。霧は昇る風に天まで引き上げられると、上に属する清い雲に変わると考えられている。地を這う霧(重性)が自分から雲になるわけではなく、昇る風に引き上げられて初めて雲になる、という見方である。
dúla dulána an álmarei, émbela aldár áuren.
読み:ドゥーラ ドゥラーナ アン アルマレイ、エンベラ アルダール アウレン。
| dúl-a | dulána | an | álmar-ei, | émbel-a | aldár | áur-en. |
| 下る-<(軽いものが)> | 流れ星<主格> | 上手 | 白月-<与格> | 祀る-<(軽いものが)> | 座<主格> | 昇る-<〜した・〜された> |
「白月の上手に流れ星が下る。高き座が祀りを行う。」
年代記の流れ星の項の書き方。年代記は直説法の短い文を並べ、主節のあいだには区切りの印を打つ。星の位置は指さしの代わりに、an álmarei「白月の上手に」のように月との位置関係で示す。時制の語形はないので、過去の出来事でも直説法の形のままで書く。王は総称の aldár áuren「高き座」で書く。
ésa él dulána, na áura selvá éles. elþíþimor fáron éles.
読み:エーサ エール ドゥラーナ、ナ アウラ セルヴァー エーレス。エルシーシモル ファーロン エーレス。
| és-a | él | dulána, | na | áur-a | selvá | él-es. | elþ-íþ-imor | fáron | él-es. |
| いる-<(軽いものが)> | <3人称単数・軽性> | 落ちてきた者<主格> | <〜ない> | 昇る-<(軽いものが)> | 息<主格> | <3人称単数・軽性>-<属格> | 燃える-<〜させる>-<我々が> | 荷<対格> | <3人称単数・軽性>-<属格> |
「その人は落ちた者だ。その息は昇らない。だから我々は、その人の荷を燃やす。」
弔いの場での言い方。崖から落ちて死んだ者は、魂が体と一緒に下へ引かれて昇れなくなるとされ、dulána と呼ばれる。遺体が見つからないときは、持ち物を燃やして魂を上へ送る。dulána は人を指すので、繋辞も代名詞も軽性の形(ésa、él)で受ける。elþ-íþ- は「燃える」の使役で「燃やす」の意味で、直説法では -íþ- に強勢が置かれる。
lúin áura órel, gélimor du orén.
読み:ルーイン アウラ オーレル、ゲーリモル ドゥ オレーン。
| lúin | áur-a | órel, | gél-imor | du | orén. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 日<主格> | 行く-<我々が> | 下手 | 縁<対格> |
「日が昇ったら、縁へ下りていこう。」
旅立ちの段取りを言う日常の文。lúin「〜とき」の節は主節の前に置く。órel は天体なので軽性で、動詞は -a で一致する。行き先が南の縁なので du+対格で言い、重性の orén は主格と同じ形になる。
éso þráin tó áuren.
読み:エーソ スライン トー アウレン。
| és-o | þráin | tó | áur-en. |
| いる-<(重いものが)> | 峰<主格> | あの<重性> | 昇る-<〜した・〜された> |
「あの峰は高い。」
一年じゅう雪の消えない峰を見上げて言う日常の文。「AはBだ」の文も繋辞 és- を先頭に置く。þráin は重性なので、繋辞は -o、指示詞は重性の tó になる。述語の分詞 áuren は重性・単数・主格なので一致の語尾がつかない。
fléira aldár áuren an þráinul.
読み:フレーラ アルダール アウレン アン スライヌル。
| fléir-a | aldár | áur-en | an | þráin-ul. |
| お出ましになる-<(軽いものが)> | 座<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | 上手 | 峰-<〜たちを> |
「高き座が北の高みへお出ましになる。」
王家の聖地や納骨所のある北の高みへの行幸を言う文。峰の複数 þráinul が「北の高み(峰々の連なり)」を表す。an+対格で「上手へ」。重性の複数は主格も対格も -ul。fléir- は「行く」の尊敬の補充形。
dúla órel, áurau dáu sílarau.
読み:ドゥーラ オーレル、アウラウ ダウ シーララウ。
| dúl-a | órel, | áur-au | dáu | sílar-au. |
| 下る-<(軽いものが)> | 日<主格> | 昇る-<双数> | 二 | 月-<双数> |
「日が沈み、二つの月が昇る。」
夕暮れを言う決まった言い方で、詩にもよく使われる。日の入りは dúl-「下る」で言う。órel は軽性なので dúla になる。月は星ではないので、dáu「二」と双数で言える。双数の動詞は人称も性も区別しない。
áura hervíña an dún.
読み:アウラ ヘルヴィーニャ アン ドゥーン。
| áur-a | hervíña | an | dún. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 小鹿<主格> | 上手 | 丘<対格> |
「小鹿が丘を駆け上がっていく。」
森の村の日常の文。hervíña は hérvan「大鹿」に指小辞 -íña がついた軽性の a 語幹で、森の民が狩る小型の鹿を広く指す。獣は軽性なので、動詞は -a をとる。an+対格で「上手へ」。dún は重性なので、対格も主格と同じ形になる。
áura aurá es orénos.
読み:アウラ アウラー エス オレーノス。
| áur-a | aurá | es | orén-os |
| 昇る-<(軽いものが)> | 縁鷲<主格> | から | 縁-<属格> |
「縁鷲が縁から昇っていく。」
VSO の基本の文。動詞 áura「昇る」と名詞 aurá「縁鷲」は綴りが同じで、強勢の位置だけが違う。aurá は「昇る」に -á「〜するもの」がついてできた語で、もとは「昇るもの」の意味。鳥は軽性なので、動詞も軽性の -a をとる。日本語話者は強勢を音の高さとして聞くので、この二つの語を聞き分けにくい。
ésa aurá símbo aldáres áurenes.
読み:エーサ アウラー シンボ アルダーレス アウレネス。
| és-a | aurá | símbo | aldár-es | áur-en-es |
| いる-<(軽いものが)> | 縁鷲<主格> | 印<主格> | 座-<属格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格> |
「縁鷲は高き座のしるしである。」
「AはBだ」の文なので、繋辞 és- が文頭に来る。縁鷲が王家のしるしであることを述べる、書物風の言い方。述語の名詞 símbo は主格のまま置き、主語に一致させない。aldáres áurenes は、王を指す総称 aldár áuren「高き座」の属格。分詞も軽性・属格の -es で一致している。
lúin hála húula, áura sílar.
読み:ルーイン ハーラ フーラ、アウラ シーラル。
| lúin | hál-a | húula, | áur-a | sílar |
| とき | 呼ぶ-<(軽いものが)> | ふくろう<主格> | 昇る-<(軽いものが)> | 月<主格> |
「ふくろうが呼ぶと、月が昇る。」
ふくろうを夜と星読みの使いとみる考えにもとづく言い習わし。lúin の節は主節の前に置く。月 sílar も軽性なので、主節の動詞も軽性の -a をとる。
áura árnel an élvaran.
読み:アウラ アルネル アン エルヴァラン。
| áur-a | árnel | an | élvar-an. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 木<主格> | 上手 | 天-<対格> |
「木は天へ向かって伸びる。」
生えている木は上へ伸びるものなので、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。木が下と上をつなぐ、という考え方を表す格言風の文。an+対格で「上手へ」。
nélisa aldár áuren muró.
読み:ネーリサ アルダール アウレン ムロー。
| nélis-a | aldár | áur-en | muró. |
| お飲みになる-<(軽いものが)> | 座<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | 濁り酒<対格> |
「高き座は濁り酒をお飲みになる。」
nélis- は、目上の人が食べることにも飲むことにも使う。aldár áuren「高き座」は軽性なので、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。分詞 áuren は軽性・単数・主格なので一致の語尾がつかない。宮廷の宴を述べる、記録風の文。
lúin áurau sílarau, fluunésa kumbór.
読み:ルーイン アウラウ シーララウ、フルーネーサ クンボール。
| lúin | áur-au | sílar-au, | fluun-és-a | kumbór. |
| とき | 昇る-<双数> | 月-<双数> | 清める-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 青銅<対格> |
「二つの月が昇るときには、青銅を清めるべし。」
作法書や詞に見られる当為法の文。強勢は -és- に移り、語根の ´ は消える。主語を言わないので「人は〜すべし」の意味で、軽性の -a をとる。月は星ではないので双数で言える。二つの月が重なる夜は秩序が乱れる夜とされ、祀りの器を清める。
duséiran lisárai aldáran áurenan.
読み:ドゥセーラン リサーライ アルダーラン アウレナン。
| du-séir-an | lis-ár-ai | aldár-an | áur-en-an. |
| <〜させていただく>-控えて待つ-<彼らが> | 書く-<〜する人>-<〜たちが> | 座-<対格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・対格> |
「書記たちは高き座(のお指図)を控えて待つ。」
宮廷の記録の文体。王に仕える者の行いを、王に対して低めて謙譲の duséir- で書く。aldár áuren「高き座」は対格になり、分詞 áuren も軽性・対格の -an で一致する。
lúin élþa virá lísen, áura an élvaran.
読み:ルーイン エルサ ヴィラー リーセン、アウラ アン エルヴァラン。
| lúin | élþ-a | virá | lís-en, | áur-a | an | élvar-an. |
| とき | 燃える-<(軽いものが)> | 言葉<主格> | 書く-<〜した・〜された> | 昇る-<(軽いものが)> | 上手 | 天-<対格> |
「書かれた言葉は燃えると、天へ昇っていく。」
願いごとを書いた紙を燃やして祖先に届ける習わしを言う、儀礼の場の文。lísen は virá(軽性・単数・主格)に一致する分詞で、一致の語尾はつかない。後半の主語は省かれているが、動詞の語尾から前半と同じ「言葉」だとわかる。lúin の節は主節の前に置き、an+対格で「上手へ」と言う。
élþan elþái aursárar élvarei, áurau dáu sílarau.
読み:エルサン エルサイ アウルサーラル エルヴァレイ、アウラウ ダウ シーララウ。
| élþ-an | elþ-ái | aursár-ar | élvar-ei, | áur-au | dáu | sílar-au. |
| 灯る-<彼らが> | 火-<〜たちが> | 祖先-<〜らの> | 天-<与格> | 昇る-<双数> | 二 | 月-<双数> |
「天に祖先たちの火が灯り、二つの月が昇る。」
詩の言い回し。星を祖先の炉の火と見る考え方から、星を「祖先たちの火」と言い換え、élþ-「灯る」を使っている。星を数えない言い方なので禁忌には当たらない。月は星ではないので、数詞 dáu をつけて双数で言える。
lúin pándan viráis éles, áura þelá éles.
読み:ルーイン パンダン ヴィライス エーレス、アウラ セラー エーレス。
| lúin | pánd-an | vir-áis | él-es, | áur-a | þelá | él-es. |
| とき | 刷る-<彼らが> | 言葉-<〜たちを> | <3人称単数・軽性>-<属格> | 昇る-<(軽いものが)> | 名声<主格> | <3人称単数・軽性>-<属格> |
「その人の言葉が版木で刷られると、その人の名声は高まる。」
詩合わせで勝った詩が刷られて広まることを言う文。「名が昇る」は、名声が高まるという意味の決まった言い方。前半の pándan は主語を言わない3人称複数で、「人々が刷る」という受け身に近い意味になる。
lúin áura álmar, ésa aurþelá aursáres lóimen.
読み:ルーイン アウラ アルマル、エーサ アウルセラー アウルサーレス ロイメン。
| lúin | áur-a | álmar, | és-a | aurþelá | aursár-es | lóim-en. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 白月<主格> | いる-<(軽いものが)> | 昇名<主格> | 祖先-<属格> | 唱える-<〜した・〜された> |
「白月が昇ると、祖先の昇名が唱えられる。」
祖先祀りの場面。生前の名前は二度と声に出さないので、祖先を口にするときはかならず昇名を使う。時を表す lúin の節は、ふつう主節の前に置く。後半は「és-+主語+分詞」で、受け身にあたる意味を表している。
þílo þéul, áura selvá.
読み:シーロ セウル、アウラ セルヴァー。
| þíl-o | þéul, | áur-a | selvá. |
| 澄む-<(重いものが)> | 湧き水<主格> | 昇る-<(軽いものが)> | 息 |
「湧き水は澄み、息は昇る。」
詩の言い方。水は重性なので動詞は -o、息は軽性なので -a で受ける。重性と軽性の対を並べた句。
lúin áura sílar, nóurimor aursárais.
読み:ルーイン アウラ シーラル、ノーリモル アウルサーライス。
| lúin | áur-a | sílar, | nóur-imor | aursár-ais. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 月<主格> | 思い慕う-<我々が> | 祖先-<〜たちを> |
「月が昇るとき、我々は祖先を偲ぶ。」
祖先祀りの場の言い方。白月は見守る祖先のまなざしの象徴とされ、満月の夜には祖先を祀る。
dunéulimor aldáran áurenan.
読み:ドゥネウリモル アルダーラン アウレナン。
| du-néul-imor | aldár-an | áur-en-an. |
| <〜させていただく>-慕う-<我々が> | 座-<対格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・対格> |
「我らは高き座をお慕い申し上げる。」
改まった場での言い方。自分たちの行いなので謙譲の du- をつける。分詞 áuren は、目的語の aldár(軽性・単数・対格)に一致して -an をとる。
gremésa aursárar si aldáres áurenes.
読み:グレメーサ アウルサーラル シ アルダーレス アウレネス。
| grem-és-a | aursár-ar | si | aldár-es | áur-en-es. |
| 畏れる-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 祖先-<〜らの> | と | 座-<属格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格> |
「人は祖先と高き座を畏れるべし。」
教えの書や詞に見える当為法の文。主語を言わないので「人は」という一般の主語になり、軽性の形をとる。強勢が -és- に移るので、語根の ´ は消える。畏れる対象は属格でとり、分詞 áurenes も aldáres の属格に一致する。
ausáila aldár áuren es lisímes sélvanes.
読み:アウサイラ アルダール アウレン エス リシーメス セルヴァネス。
| au-sáil-a | aldár | áur-en | es | lis-ím-es | sélvan-es. |
| <お〜になる・御〜>-嘉する-<(軽いものが)> | 座<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | から | 書く-<〜の技・〜さ>-<属格> | セルヴァン-<属格> |
「高き座は、セルヴァンの書法を嘉された。」
年代記の地の文に見える直説法の文。時制がないので、過去の出来事も直説法で言う。理由を es+属格で示している。
áura tíula kumbóros an élvaran.
読み:アウラ ティーウラ クンボーロス アン エルヴァラン。
| áur-a | tíula | kumbór-os | an | élvar-an. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 音<主格> | 青銅-<属格> | 上手 | 天-<対格> |
「青銅の音は天へ昇る。」
祭祀や鈴の護符について言う決まり文句。音は「上へ昇る軽いもの」なので tíula は軽性で、動詞も -a をとる。青銅 kumbór は重性なので、属格は -os になる。an+対格で「上手へ」。
áura aurá pír.
読み:アウラ アウラー ピール。
| áur-a | aurá | pír. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 縁鷲<主格> | 若い |
「若い縁鷲が舞い上がる。」
人や獣について pír を使うと「年若い」の意味になる。縁鷲は軽性で、単数・主格の形容詞には語尾がつかない。áura「昇る」と aurá「縁鷲」は、強勢の位置だけが違う。
lúin áura sílar, ansénan aursárais.
読み:ルーイン アウラ シーラル、アンセーナン アウルサーライス。
| lúin | áur-a | sílar, | ansén-an | aursár-ais. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 月<主格> | 思い出す-<彼らが> | 祖先-<〜たちを> |
「月が昇ると、人々は祖先を思い出す。」
祖先祀りの習わしを述べる文。月 sílar は軽性なので、動詞は3単・軽性の -a。主節の主語を言わない3人称複数 ansénan は、「人々は」という一般の主語を表す。
lúin áura órun ál, dúlimor du orén.
読み:ルーイン アウラ オールン アール、ドゥーリモル ドゥ オレーン。
| lúin | áur-a | órun | ál, | dúl-imor | du | orén. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 日の出<主格> | 明るい | 下る-<我々が> | 下手 | 縁<対格> |
「明るい夜明けが来たら、我々は縁へ下りる。」
夜明けの明るさを言う文。lúin で始まる時の節は主節の前に置き、節の中も動詞で始まる。崖道へ下りていく旅の段取りを言う、日常的な言い方。
lúin áura sílar ál, sénimor dún.
読み:ルーイン アウラ シーラル アール、セーニモル ドゥーン。
| lúin | áur-a | sílar | ál, | sén-imor | dún. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 月<主格> | 明るい | 見る-<我々が> | 丘<対格> |
「明るい月が昇ると、我々には丘が見える。」
月明かりについて言うとき、ál は「明るい」の意味になる。月は軽性なので、動詞は -a をとる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。dún は重性なので、対格も主格と同じ形。
áurau dáu sílarau séurilau.
読み:アウラウ ダウ シーララウ セウリラウ。
| áur-au | dáu | sílar-au | séuril-au. |
| 昇る-<双数> | 二 | 月-<双数> | 美しい-<軽性・双数> |
「美しい二つの月が昇る。」
乾風期の澄んだ夜空をほめる言い方。dáu「二」の後ろで名詞は双数になり、形容詞も軽性・双数の -au で一致する。月は星ではないので、数えても双数にしてもかまわない。
áura virá séuril.
読み:アウラ ヴィラー セウリル。
| áur-a | virá | séuril. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 言葉<主格> | 整った |
「整った言葉は昇る。」
整った言葉は息として祖先のもとへ昇る、という信仰を言う格言で、子どもの躾や詩の教えで引かれる。virá は軽性・単数・主格なので、形容詞には語尾がつかない。
ámbelai árnelai, sílarau áurau.
読み:アンベライ アルネライ、シーララウ アウラウ。
| ámbel-ai | árnel-ai, | sílar-au | áur-au. |
| 金色の-<軽性・〜ら(古い母音交替)・主格> | 木-<〜たちが> | 月-<双数> | 昇る-<双数> |
「金色なるは木々、昇りゆくは二つの月。」
詩の一句。前半は繋辞を落として形容詞を先に置く、格言・詩の語順。後半は主語が動詞の前に出ている。乾風期の初めに木々の葉が金色に変わり、澄んだ夜空に月が昇るさまを詠む。生えている木 árnel は軽性なので、複数主格は -ai。
lísa lisár þelán aldáres áurenes þáiles sáindarei.
読み:リーサ リサール セラーン アルダーレス アウレネス サイレス サインダレイ。
| lís-a | lis-ár | þel-án | aldár-es | áur-en-es | þáil-es | sáindar-ei. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 名前-<対格> | 座-<属格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格> | 澄み-<属格> | 証文-<与格> |
「書記は証文に「澄みの高き座」の名を書く。」
座名「aldár áuren+称えの語の属格」で、名詞として使った þáil「澄み」が称えの語になっている。座名ごと属格で þelán にかかる。書き言葉では座名を記してよく、上げ書きにする。
glóira aurél bóralos áurenos.
読み:グロイラ アウレール ボーラロス アウレノス。
| glóir-a | aurél | bóral-os | áur-en-os. |
| お越しになる-<(軽いものが)> | あの方 | 館-<属格> | 昇る-<〜した・〜された>-<重性・属格> |
「高き館の方がお越しになる。」
目上の人の個人名は口にしないので、住んでいる館で遠回しに言う。bóral は重性なので、分詞 áuren も重性の属格 -os で一致する。動詞は人を受けるので軽性の -a をとる。丘の上にある家ほど身分が高いので、áuren「高き」を添えると大家の館の意味になる。
lúin ésa snélo élvares dréum, lúuman aursárai némoran.
読み:ルーイン エーサ スネーロ エルヴァレス ドレウン、ルーマン アウルサーライ ネーモラン。
| lúin | és-a | snélo | élvar-es | dréum, | lúum-an | aurs-ár-ai | némor-an. |
| とき | いる-<(軽いものが)> | 天の屋根<主格> | 天-<属格> | 黒い | ご覧になる-<彼らが> | 昇る<〜し終えた>-<〜する人>-<〜たちが> | <我々>-<対格> |
「天の屋根が黒いときも、祖先は我々をご覧になっている。」
雨期に星が見えなくても不安がらない理由を説く、信仰の言い方。雲は上の層に属するので、祖先は屋根の上から変わらず下界を見ていると考えられている。snélo は重性の語形だが、この意味では一致が軽性になる(ésa)。lúum- は「見る」の尊敬の補充形。
gléin dreumá, áuren virá.
読み:グレーン ドレウマー、アウレン ヴィラー。
| gléin | dreumá, | áur-en | virá. |
| 清い | 墨<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | 言葉<主格> |
「清きは墨、高きは言葉。」
書の手ほどきで引かれる諺。諺では繋辞を落として述語を先に置くので、形容詞が文頭に来る。雨水ですった清い墨で書いた字は上へ昇りやすい、という信仰をふまえている。
lúin áura sílar, téndimor viráis.
読み:ルーイン アウラ シーラル、テンディモル ヴィライス。
| lúin | áur-a | sílar, | ténd-imor | vir-áis |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 月<主格> | 句を編む-<我々が> | 言葉-<〜たちを> |
「月が昇ると、私たちは詩句を編む。」
月の出を題にして詩を作る習わしを言う文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。月 sílar は軽性の子音語幹なので、動詞は -a をとる。詩句 virá の複数対格は viráis。
áura elþá aursáres an élvaran.
読み:アウラ エルサー アウルサーレス アン エルヴァラン。
| áur-a | elþá | aursár-es | an | élvar-an. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 火<主格> | 祖先-<属格> | 上手 | 天-<対格> |
「祖先の火(星)が天へ昇っていく。」
詩の一句。星を、昇っていった祖先の炉の火とみて elþá と言う。一つの祖先の火を指しているので単数で、数詞はつけない。an+対格で「上手へ」。
lúin áura álmar, embeléimor aursárais.
読み:ルーイン アウラ アルマル、エンベレーモル アウルサーライス。
| lúin | áur-a | álmar, | embel-é-imor | aursár-ais. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 白月<主格> | 祀る-<〜だろう>-<我々が> | 祖先-<〜たちを> |
「白月が昇ったら、我々は祖先を祀ろう。」
満月の夜に祖先を祀る習わしについての、家の中の会話。lúin の節は主節の前に置く。推量法の -él- は、1人称の語尾 -imor の前で l が落ちて -é- になる。強勢が接尾辞に移るので、語根の ´ は消える。
áura aurvirá an aursárais.
読み:アウラ アウルヴィラー アン アウルサーライス。
| áur-a | aurvirá | an | aursár-ais. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 祈り<主格> | 上手 | 祖先-<〜たちを> |
「祈りは祖先のもとへ昇る。」
祈りについての決まった言い方で、葬送や祭祀の場で唱える。aurvirá は言葉に属するので軽性になり、動詞は軽性の -a をとる。an+対格で「上手へ」。
lúin kélan kelárai gandér, áura aurvirá ráuvanes.
読み:ルーイン ケーラン ケラーライ ガンデール、アウラ アウルヴィラー ラウヴァネス。
| lúin | kél-an | kel-ár-ai | gandér, | áur-a | aurvirá | ráuvan-es. |
| とき | 伐る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> | 昇る-<(軽いものが)> | 祈り<主格> | 森の巫-<属格> |
「樵たちが硬木を伐るとき、森の巫の祈りが昇る。」
硬木を伐るときの儀式を述べる文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。属格 ráuvanes は名詞の後ろに置く。
élþa aurvirá, áura virá an aursárais.
読み:エルサ アウルヴィラー、アウラ ヴィラー アン アウルサーライス。
| élþ-a | aurvirá, | áur-a | virá | an | aursár-ais. |
| 燃える-<(軽いものが)> | 祈りの紙<主格> | 昇る-<(軽いものが)> | 言葉<主格> | 上手 | 祖先-<〜たちを> |
「祈りの紙が燃え、その言葉は祖先のもとへ昇っていく。」
願いを書いた紙を燃やす習わしを述べる文。紙は言葉を載せて昇るものなので軽性で、動詞は軽性の -a をとる。動詞で始まる節を二つ、読点で区切って並べている。
áura þondá némes an élvaran.
読み:アウラ ソンダー ネーメス アン エルヴァラン。
| áur-a | þondá | ném-es | an | élvar-an. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 誓い<主格> | <私>-<属格> | 上手 | 天-<対格> |
「私の誓いは天へ昇る。」
星の見える晴れた夜に、改まった誓いを立てるときの言葉。誓いは息なので軽いもので、上へ昇って祖先に届くと考えられている。þondá は軽性なので、動詞は -a で一致する。
lúin éso nébro, na áura þondá, na fíndan aursárai élan.
読み:ルーイン エーソ ネーブロ、ナ アウラ ソンダー、ナ フィンダン アウルサーライ エーラン。
| lúin | és-o | nébro, | na | áur-a | þondá, | na | fínd-an | aursár-ai | él-an. |
| とき | いる-<(重いものが)> | 霧<主格> | <〜ない> | 昇る-<(軽いものが)> | 誓い<主格> | <〜ない> | 聞く-<彼らが> | 祖先-<〜たちが> | <3人称単数・軽性>-<対格> |
「霧が出ているときには、誓いは昇らない。祖先にはそれが聞こえない。」
霧の夜に立てた誓いは無効だという教えを述べる文。霧 nébro は重性なので éso、þondá は軽性なので動詞は -a で一致する。後半では、その誓いを軽性の代名詞の対格 élan で受けている。
áura hóurna an élvaran, sáilimor.
読み:アウラ ホールナ アン エルヴァラン、サイリモル。
| áur-a | hóurna | an | élvar-an, | sáil-imor. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 送りの煙<主格> | 上手 | 天-<対格> | 喜ぶ-<我々が> |
「送りの煙が天へ昇っていく。我らは喜ぶ。」
火葬に立ち会う人々の言葉。煙がまっすぐ高く昇るほど、魂がよく昇ったとされる。煙は軽いものなので、動詞は軽性の -a で一致する。
lúin gélim an kreinándo, áura mélna némes an aursárais.
読み:ルーイン ゲーリン アン クレイナンド、アウラ メルナ ネーメス アン アウルサーライス。
| lúin | gél-im | an | kreinándo, | áur-a | mélna | ném-es | an | aursár-ais. |
| とき | 行く-<私が> | 上手 | 納骨所<対格> | 昇る-<(軽いものが)> | 詩<主格> | <私>-<属格> | 上手 | 祖先-<〜たちを> |
「納骨所へ上るときには、私の詩が祖先の方々のもとへ昇っていく。」
成人の儀や祖先祀りで聖地に登る人の言葉。移動の動詞 gél- には方向の前置詞をかならず添えるので、an「上手へ」で上りの道だとわかる。詩は息なので軽く、祖先への捧げものとして上へ昇る。祖先は複数対格 -ais で表す。
lóima ráuvan, ré aurénde selvá.
読み:ロイマ ラウヴァン、レー アウレンデ セルヴァー。
| lóim-a | ráuvan, | ré | aur-énd-e | selvá. |
| 唱える-<(軽いものが)> | 森の巫<主格> | <〜と(節)> | 昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 息<主格> |
「森の巫は、死者の息が昇るよう詞を唱える。」
葬送の場面を述べた文。ráuvan は人を指すので軽性で、動詞は -a で一致する。「ré+願望法」は目的の「〜するように」を表す。この願望法は丁寧さではなく、そうなってほしいことを表している。selvá(息)は、ここでは死者の魂を指す。
lúin kélan kelárai gandér, áura loimá ráuvanes.
読み:ルーイン ケーラン ケラーライ ガンデール、アウラ ロイマー ラウヴァネス。
| lúin | kél-an | kel-ár-ai | gandér, | áur-a | loimá | ráuvan-es. |
| とき | 伐る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> | 昇る-<(軽いものが)> | 詞<主格> | 森の巫-<属格> |
「樵たちが硬木を伐るときには、森の巫の詞が立ちのぼる。」
硬木を伐る作法を述べた文。詞は息なので、煙のように上へ昇るものとされ、動詞 áur-「昇る」の主語になる。loimá は軽性なので、動詞は軽性の -a をとる。硬木 gandér は重性なので、主格と対格が同じ形になる。
duméiran kelárai meiró pelsós aldárei áurenei.
読み:ドゥメーラン ケラーライ メイロー ペルソース アルダーレイ アウレネイ。
| du-méir-an | kel-ár-ai | meiró | pels-ós | aldár-ei | áur-en-ei. |
| <〜させていただく>-与える-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 貢ぎ物<対格> | 樹脂-<属格> | 座-<与格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・与格> |
「樵たちは、高き座に樹脂の貢ぎ物を献上する。」
森の氏族が王に産物を納めることを述べる文。差し出す側を低める謙譲の du- を動詞につけ、受け手の「高き座」は与格で表す。分詞 áurenei は aldárei(軽性・単数・与格)に一致する。同じ meiró でも、受け手が王なら「貢ぎ物」、倉なら「税」と訳し分ける。
lúuma aldár áuren meiró kumbóros.
読み:ルーマ アルダール アウレン メイロー クンボーロス。
| lúum-a | aldár | áur-en | meiró | kumbór-os. |
| ご覧になる-<(軽いものが)> | 座<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | 貢ぎ物<対格> | 青銅-<属格> |
「高き座は青銅の貢ぎ物をご覧になった。」
年代記のような書き言葉の文。lúum- は「見る」の尊敬の補充形。時制がないので「ご覧になる」とも「ご覧になった」とも読める。書き言葉では aldár áuren を上げ書きにする。
lúin áura álmar or dún, émbelan ólmarai aursárais.
読み:ルーイン アウラ アルマル オル ドゥーン、エンベラン オルマライ アウルサーライス。
| lúin | áur-a | álmar | or | dún, | émbel-an | ólmar-ai | aursár-ais. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 白月<主格> | 日の出側 | 丘<対格> | 祀る-<彼らが> | 年長者-<〜たちが> | 祖先-<〜たちを> |
「白月が丘の日の出側に昇ると、年長者たちは祖先を祀る。」
天体の位置を言う決まった言い方。星や月は指さしてはいけないので、よく知られた目印と方向の前置詞で位置を示す。or+対格で「〜の日の出側へ」を表す。lúin で始まる時の節は主節の前に置く。
áura álmar es órunes.
読み:アウラ アルマル エス オールネス。
| áur-a | álmar | es | órun-es. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 白月<主格> | から | 東-<属格> |
「白月は東から昇る。」
órun を方角そのものを表す名詞として使い、es+属格で「東から」を表している。前置詞の or は、この語から生まれた。álmar は軽性なので、動詞は軽性の -a をとる。
na ésa aldár áuren anlúinei.
読み:ナ エーサ アルダール アウレン アンルーイネイ。
| na | és-a | aldár | áur-en | anlúin-ei. |
| <〜ない> | いる-<(軽いものが)> | 座<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | 昔-<与格> |
「昔は、高き座はなかった。」
統一より前の時代を語る、書物や語りの文。「昔に」のように時を言うときは与格 anlúinei を使う。否定の na は動詞の直前に置く。aldár áuren は「高き座」で、分詞 áuren は軽性・単数・主格に一致しているので語尾がつかない。
áura órel es órunes, dúla un vélunan.
読み:アウラ オーレル エス オールネス、ドゥーラ ウン ヴェールナン。
| áur-a | órel | es | órun-es, | dúl-a | un | vélun-an. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 日<主格> | から | 日の出-<属格> | 下る-<(軽いものが)> | 中へ・中から | 西-<対格> |
「日は日の出の方から昇り、西へと沈む。」
子どもに教える書物によく出る決まった言い方。後半の主語は動詞の語尾でわかるので省いている。un+対格で「西の内へ」と、方角に入っていく動きを表す。órun と vélun が対になる。
áura selvá es méndales an élvaran.
読み:アウラ セルヴァー エス メンダレス アン エルヴァラン。
| áur-a | selvá | es | méndal-es | an | élvar-an. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 息<主格> | から | 中の世界-<属格> | 上手 | 天-<対格> |
「「息は中の世界から天へと昇る。」」
弔いの詞や祈りによく出る一句。méndal は重性の子音語幹として変化する(属格 méndalos)。人の住む高原を、天と下の国にはさまれた層として言う。
áura álmar an méndalan élvares.
読み:アウラ アルマル アン メンダラン エルヴァレス。
| áur-a | álmar | an | méndal-an | élvar-es. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 白月<主格> | 上手 | まん中-<対格> | 天-<属格> |
「「白月が天のまん中へと昇っていく。」」
天体の位置を、まわりのものとの関係で言う言い方。月は星ではないので、こうして名指しして言ってよい。méndal は重性なので、対格は主格と同じ形になる。
aldána aldár áuren lóuvan es némores.
読み:アルダーナ アルダール アウレン ローヴァン エス ネーモレス。
| aldán-a | aldár | áur-en | lóuvan | es | némor-es. |
| おわす-<(軽いものが)> | 座<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | 隔たった | から | 我々-<属格> |
「高き座は、我々からは遠く隔たったところにおわす。」
身分の隔たりを言う、改まった文。王について述べるので、「いる」の尊敬の補充形 aldán- を繋辞に使っている。aldár áuren「高き座」の後ろに述語の lóuvan が並ぶ。es+人称代名詞の属格で「我々から」を表す。
ésa nóra, áura ilanár an dún.
読み:エーサ ノーラ、アウラ イラナール アン ドゥーン。
| és-a | nóra, | áur-a | ilanár | an | dún. |
| いる-<(軽いものが)> | 夜分<主格> | 昇る-<(軽いものが)> | 星読み<主格> | 上手 | 丘<対格> |
「夜分となり、星読みが丘の上へ昇った。」
年代記に見られる、直説法の短い文を並べた記事の書きぶり。時制がないので、文脈から過去と読む。an+対格で「上手へ」。dún は重性なので、対格は主格と同じ形になる。
aurénde, élaur! áura selvá, na dúla.
読み:アウレンデ、エーラウル!アウラ セルヴァー、ナ ドゥーラ。
| aurénde, | élaur! | áur-a | selvá, | na | dúl-a. |
| さようなら | 昇りゆく人 | 昇る-<(軽いものが)> | 息<主格> | <〜ない> | 下る-<(軽いものが)> |
「さようなら、昇りゆく人よ。息は昇り、下りはしない。」
火葬の場で死者に別れを告げる言い方。死後一年は生前の名前を口にできないので、名前を呼ばずに élaur「昇りゆく人」と呼びかける。後半の二つの動詞は、どちらも軽性の selvá を主語として受ける。aurénde がもとから持つ「息が上へ昇るように」という意味が、ここではそのまま生きている。
vérin áura selvá.
読み:ヴェーリン アウラ セルヴァー。
| vérin | áur-a | selvá. |
| まことに | 昇る-<(軽いものが)> | 息<主格> |
「まことに、息は昇る。」
弔いや祀りの場で、死者の魂が軽い息となって上へ昇ることを請け合う改まった言い方。文頭の vérin は事柄の確かさを強める。selvá は軽性なので、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。
ésa traimlisá áuren an sóndelail.
読み:エーサ トラインリサー アウレン アン ソンデライル。
| és-a | traimlisá | áur-en | an | sóndel-ail. |
| いる-<(軽いものが)> | 年代記<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | 上手 | 書物-<〜らに> |
「年代記はあらゆる書物の中でいちばん尊い。」
「いちばん〜」は「an+同じ仲間の複数与格」で言う(直訳は「書物たちの上手に高い」)。書かれた言葉を重んじる王国で、年代記が書物の頂に置かれていることを表す。
áuren virnourá, gléin mélna.
読み:アウレン ヴィルノウラー、グレーン メルナ。
| áur-en | virnourá, | gléin | mélna |
| 昇る-<〜した・〜された> | 含み<主格> | 清い | 詩<主格> |
「高きは含み、清きは詩。」
よい詩をほめるときに引かれる、格言ふうの句。繋辞を落とし、述語の形容詞・分詞を先に置く諺の語順になっている。ほのめかしが深いほど詩は「高く昇る」という考え方を表している。
aurénde mélna an aursárais.
読み:アウレンデ メルナ アン アウルサーライス。
| aur-énd-e | mélna | an | aursár-ais |
| 昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 詩<主格> | 上手 | 祖先-<〜たちを> |
「この詩が、ご先祖様がたのもとへ昇りますように。」
崖道から都へ帰った人などが、祖先に詩を捧げるときの言葉。主語 mélna は軽性なので、願望法の3人称単数は -e になる。an+対格で「上手へ」。
lisésa aldáran áurenan aurlisímei.
読み:リセーサ アルダーラン アウレナン アウルリシーメイ。
| lis-és-a | aldár-an | áur-en-an | aurlisím-ei. |
| 書く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 座-<対格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・対格> | 上げ書き-<与格> |
「「高き座」は上げ書きで書くべし。」
書の作法を教える書物の一句。当為法で主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の -a をとる。分詞 áurenan は aldáran(軽性・単数・対格)に一致する。手段の「〜で」を与格 aurlisímei で言っている。
sarénei, áura virá an ilánais.
読み:サレーネイ、アウラ ヴィラー アン イラーナイス。
| sarén-ei, | áur-a | virá | an | ilán-ais. |
| 本番-<与格> | 昇る-<(軽いものが)> | 言葉<主格> | 上手 | 灯-<〜たちを> |
「本番では、言葉は星々のもとへ昇る。」
日常で、練習とは違う本番の重みを言い聞かせるときの言い回し。練習の言葉は数に入らないが、本番の言葉は息となって祖先に届く、という考え方を表す。与格 sarénei を場面の枠に置き、読点で区切る。主語の virá は軽性なので、動詞は -a で受ける。
drelésa aurbúl un aurándoi, ré aurénde selvá an ilánais.
読み:ドレレーサ アウルブール ウン アウランドイ、レー アウレンデ セルヴァー アン イラーナイス。
| drel-és-a | aurbúl | un | auránd-oi, | ré | aur-énd-e | selvá | an | ilán-ais |
| 焚く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 薪<対格> | 内に | 社-<与格> | <〜と(節)> | 昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 息<主格> | 上手 | 灯-<〜たちを> |
「社は薪を焚くべし。息が星々のもとへ昇りますように。」
社の碑文や祀りの手引書に刻まれる当為法の文。主語を言わないので「人は」の意味になり、軽性の形をとる(当為法・3SG.LT)。ré+願望法で目的(祈り)を示す。aurándo「社」は重性o語幹で与格 -oi。度量衡の碑の mé duliþésa… と同じく、法定的・規範的な文書に当為法が用いられる例。
drélim aurbúl si aurénde selvá an ilánais.
読み:ドレーリン アウルブール シ アウレンデ セルヴァー アン イラーナイス。
| drél-im | aurbúl | si | aur-énd-e | selvá | an | ilán-ais |
| 焚く-<私が> | 薪<対格> | と | 昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 息<主格> | 上手 | 灯-<〜たちを> |
「薪を焚く。息が星々のもとへ昇りますように。」
祀りの場で、炉に薪を焚いて祖先に祈りを届ける場面。drél-「焚く」は他動詞で、1人称単数は drélim(drél-im)。aurbúl(重性・子音語幹)が目的語。si は読点を伴わず、二つの文を同じ高さに並べる(統語論9.2節)。二つめの文は願望法で祈りの形にする。an ilánais は「星々のもとへ」で、挨拶の定型 aurénde selvá! ― an ilánais. と同じ前置詞句。星は数を言わず総称の複数 ilánai を用いる。
éso houmíño aldáres áurenes món ál.
読み:エーソ ホウミーニョ アルダーレス アウレネス モーン アール。
| és-o | houmíño | aldár-es | áur-en-es | món | ál. |
| いる-<(重いものが)> | 椀<主格> | 座-<属格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格> | 石<主格> | 白い |
「高き座の椀は白い石(の器)である。」
宮廷の器の記述。aldár áuren(高き座)の属格が椀の持ち主をなす。述語の名詞句 món ál は自分の性・主格のまま置かれ、主語に一致しない。白い石英(聖なる石)を素材とする王の器の記述。
dúlo houmíño es aldáres áurenes.
読み:ドゥーロ ホウミーニョ エス アルダーレス アウレネス。
| dúl-o | houmíño | es | aldár-es | áur-en-es. |
| 下りる-<(重いものが)> | 椀<主格> | から | 座-<属格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格> |
「高き座から、(恵みの)椀が下りてくる。」
詩的用法。houmíño は器そのものではなく、高き座から下される食物(恵み)を器の形で指す。es+属格の「〜から(出どころ)」は運動動詞の論項なので、動詞の後ろに置く(統語論1.2節、基本語順:動詞…主語 目的語 [与格] [前置詞句])。重性名詞 houmíño が主語なので動詞は -o。
ruunáura lisár sé
読み:ルーナウラ リサール セー
| ruun-áur-a | lis-ár | sé |
| 背-昇-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | この<軽性> |
「この書記は肩をすくめる。」
日常の会話で、人の身振りを述べる文。主語は人なので動詞は軽性一致をとる。背 rúun は複合語に組み込まれ、独立した名詞としては現れない。
ruunáura senár té
読み:ルーナウラ セナール テー
| ruun-áur-a | sen-ár | té |
| 背-昇-<(軽いものが)> | 見る-<〜する人> | あの<軽性> |
「あの目付は軽く断った。」
宮廷の作法を記すような改まった描写。字義は身振りの描写にすぎないが、改まった場面では軽い辞退として読まれる。áur- の本来の「天へ昇る」意味への自覚的な皮肉を含み、祭祀や祈りでは決して使われない。
lúin áuran ombára ilánai, þrínan éndrai.
読み:ルーイン アウラン オンバーラ イラーナイ、スリーナン エンドライ。
| lúin | áur-an | ombára | ilán-ai, | þrín-an | éndr-ai. |
| とき | 昇る-<彼らが> | 十 | 灯-<〜たちが> | 目を覚ます-<彼らが> | 人-<〜たちが> |
「十の灯が昇ると、人々は目を覚ます。」
暦や儀礼の詞に似た書面の文。lúin 節は主節の前に置く。ombára ilánai は「十の灯」という星座名で、古い形 ombára が名前にだけ残っている。「十の灯」は通常の星の数えではなく、星を数えている意味にはならない。3複数の動詞は性を区別しない。
lúin áuran ombára ilánai, seláura ólmar.
読み:ルーイン アウラン オンバーラ イラーナイ、セラウラ オルマル。
| lúin | áur-an | ombára | ilán-ai, | seláur-a | ólmar |
| とき | 昇る-<彼らが> | 十 | 灯-<〜たちが> | 目覚める-<(軽いものが)> | 年長者<主格> |
「十の灯が昇ると、年長者は目を覚ます。」
書物・年代記向けの描写。lúin による時節節が主節の前に置かれる。áuran ombára ilánai は「十の灯が昇る」という星座名に基づく定型表現。主節の seláura は主語 ólmar に一致して軽性 3 人称単数。
aurénde selvá es grélos.
読み:アウレンデ セルヴァー エス グレーロス。
| aur-énd-e | selvá | es | grél-os. |
| 昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 息<主格> | から | のど-<属格> |
「息がのどから昇りますように。」
声・息・言葉が上へ昇るという信仰に基づく祝祷文。aur- の願望法軽性3人称単数は軽性の主語 selvá に一致する。前置詞 es に重性名詞 grél の属格 grélos をとり、出所「のどから」を表す。
áura auréla.
読み:アウラ アウレーラ。
| áur-a | auréla |
| 昇る-<(軽いものが)> | 太陽<主格> |
「太陽が昇る。」
基本語順は動詞–主語。詩語 auréla と語根 áur- を響き合わせ、詩句・儀礼の詞のような改まった叙述を作る。auréla は本来ふだんの会話では用いられない。
aurénde auréla!
読み:アウレンデ アウレーラ!
| aur-énd-e | auréla |
| 昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 太陽<主格> |
「太陽が昇りますように。」
願望法の祈り。改まった場で天を呼ぶ句。auréla は軽性なので願望法の 3 人称単数は -e をとる。
áura houmselvá
読み:アウラ ホウンセルヴァー
| áur-a | houmselvá |
| 昇る-<(軽いものが)> | 炉の息<主格> |
「炉の息が昇る。」
儀礼的・詩的な場面。帰宅者の息が炉と結ばれて上へ向かうという信仰的な用法。houmselvá は軽性名詞として扱うため、動詞は軽性 3 人称単数語尾 -a をとる。
áura elþíña es elþés.
読み:アウラ エルシーニャ エス エルセース。
| áur-a | elþíña | es | elþ-és. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 火の粉<主格> | から | 燃える-<属格> |
「火から火の粉が上がる。」
火元から火の粉が散るさま。es と属格の組み合わせで「〜から」。elþés は elþá「火」の属格単数。主語 elþíña が軽性単数なので動詞は -a を受ける。
plúin áura snéula?
読み:プルーイン アウラ スネウラ?
| plúin | áur-a | snéula? |
| いつ | 昇る-<(軽いものが)> | 粉じん<主格> |
「粉じんはいつ舞い上がるか。」
日常の問いで、意味2の訳語「粉じん」を用いる。疑問詞 plúin は動詞の前に置く。軽性名詞に動詞 áur- が一致する。
áuro kravó éles
読み:アウロ クラヴォー エーレス
| áur-o | kravó | él-es |
| 昇る-<(重いものが)> | 顎<主格> | <3人称単数・軽性>-<属格> |
「彼の顎が上がった。」
怒りや威勢を示す仕草の文。nóumo「顔」や drál「首」では曖昧になりやすい顎の線の動きを、kravó を主語にして áur-「昇る」型仕草語で直接表す。重性主語なので動詞は3人称単数・重性の -o に一致する。所有の属格 él-es は名詞の後。
senáura ólmar aldáran áurenan.
読み:セナウラ オルマル アルダーラン アウレナン。
| senáur-a | ólmar | aldár-an | áur-en-an. |
| 見上げる-<(軽いものが)> | 年長者<主格> | 座-<対格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・対格> |
「年長者は高き座を見上げる。」
敬意を伴う仰ぎ。高き座(aldár áuren)を見上げる作法。対象の名詞と分詞が軽性単数対格に一致する。-an を LT.ACC として独立の形態素で示す。
aurénde þóuma an þoumsnúlvo.
読み:アウレンデ ソーマ アン ソウンスヌルヴォ。
| aur-énd-e | þóuma | an | þoumsnúlvo. |
| 昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 煙<主格> | 上手 | 煙穴<対格> |
「煙が煙穴のほうへ上がりますように。」
炉の火を整える際に唱える、儀礼的な煙穴向け表現。前置詞 an は上手への方向を表し、対格名詞をともなう。þóuma「煙」は上へ昇るものとして軽性に扱い、願望法の 3 人称単数軽性語尾 -e をとる。
lóima ilanár aldarviran aldáres áurenes.
読み:ロイマ イラナール アルダルヴィラン アルダーレス アウレネス。
| lóim-a | ilanár | aldarvir-an | aldár-es | áur-en-es |
| 唱える-<(軽いものが)> | 星読み<主格> | 敬称-<対格> | 座-<属格> | 昇る-<〜した・〜された>-<属格> |
「星読みが高き座の座名を唱える。」
宮廷儀礼の場面。名詞句の中心を対格 aldarviran とし、その後に「高き座の」という属格句 aldáres áurenes を修飾として置く。「高き座」の属格は aldáres áurenes。王や高位の人の座につけられた固有名を唱える用法。意味2。
aurénde aurselvá un aurándoi.
読み:アウレンデ アウルセルヴァー ウン アウランドイ。
| aur-énd-e | aurselvá | un | auránd-oi. |
| 昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 祖先に届く言葉<主格> | 内に | 社-<与格> |
「社の中で、祖先に届く言葉が昇りますように。」
祭祀の祈願文。aurénde は aur- +願望法 -énd- +軽性主語の語尾 -e。un +与格で「〜の中で」。aurándo は重性 o語幹の名詞で、与格は auránd-oi。
aurénde anaurím an aldáran áurenan
読み:アウレンデ アナウリーン アン アルダーラン アウレナン
| aur-énd-e | anaurím | an | aldár-an | áur-en-an |
| 昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 高き座の秩序<主格> | 上手 | 座-<対格> | 昇る-<〜した・〜された>-<対格> |
「高き座の秩序が高き座の方へ高まりますように。」
儀礼・祈りの文。願望法 aurénde で高き座の秩序の向上を願う。an aldáran は「高き座へ」という方向。形容詞 áurenan も名詞 aldáran に一致する対格。
lúin áurau sílarau, gélau némor dáun du krambóra.
読み:ルーイン アウラウ シーララウ、ゲーラウ ネーモル ダウン ドゥ クランボーラ。
| lúin | áur-au | sílar-au, | gél-au | némor | dáun | du | krambóra. |
| とき | 昇る-<双数> | 月-<双数> | 行く-<双数> | <我々> | 二人 | 下手 | クランボーラ<対格> |
「二つの月が昇ると、我ら二人はクランボーラへ下っていく。」
道筋や季節を記す書物的な文。lúin 節は読点で主節と区切る。双数の動詞 áurau・gélau は人称を表さないが、主節の némor が加わって話し手を含む二人であることがわかる。du + 対格で下手・南方向への動きを示す。krambóra は固有名詞として、対格でも語尾が立たない。
áura lundá sé
読み:アウラ ルンダー セー
| áur-a | lundá | sé |
| 昇る-<(軽いものが)> | 節<主格> | この<軽性> |
「この節は上へ昇る。」
lundá を、言葉そのものより節回し・旋律として使う例。指示詞 sé は名詞句の後に置かれ、格変化しない。
áura tíula sávres.
読み:アウラ ティーウラ サーヴレス。
| áur-a | tíula | sávr-es |
| 昇る-<(軽いものが)> | 音<主格> | 葦笛-<属格> |
「葦笛の音が昇っていく。」
sávr-es は sávra の斜格語幹 sávr に単数属格 -es が付いた形。tíula「音」は上へ昇るものとして軽性で、動詞 áura も軽性の語尾 -a で受ける。葦笛は軽性のまま受けるため、重性の属格 -os ではなく軽性の属格 -es をとる。
áura aurselvá an élvaran.
読み:アウラ アウルセルヴァー アン エルヴァラン。
| áur-a | aurselvá | an | élvar-an. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 高原語(詩語)<主格> | 上手 | 天-<対格> |
「高原語(詩語)は天へ向かって昇る。」
儀礼や詩の一行。意味1では aurselvá を、高原語そのものを詩語として指す名に使う。主語は軽性a語幹の無標主格で、動詞 áur- は軽性の3人称単数 -a をとる。an élvaran は方向句で、an と組んだ élvar の対格 élvaran が「天へ」を示す。
auríþo nebroauró nébro an élvaran.
読み:アウリーソ ネブロアウロー ネーブロ アン エルヴァラン。
| aur-íþ-o | nebroauró | nébro | an | élvar-an |
| 昇る-<〜させる>-<(重いものが)> | 霧上げ<主格> | 霧<対格> | 上手 | 天-<対格> |
「霧上げが霧を天へ持ち上げる。」
儀礼・詩の語り。nebroauró を自然現象の行為者として重性単数主格で使う。nébro の対格は主格と同形。方向は an+対格。
auríþim mardrál némes.
読み:アウリーシン マルドラール ネーメス。
| aur-íþ-im | mardrál | ném-es. |
| 昇る-<〜させる>-<私が> | 手首<対格> | <私>-<属格> |
「私は自分の手首を上げる。」
作法書や身振りの説明で、所作を一人称で示す文。使役 áuríþ- を用いて、手首を上へ向ける動きを表す。重性名詞 mardrál は対格标示を持たず、主語が一人称なので語尾 -im で示し、代名詞は省く。
áuran ombára ilánai, duói dulíþan kelárai dulfáron.
読み:アウラン オンバーラ イラーナイ、ドゥオイ ドゥリーサン ケラーライ ドゥルファーロン。
| áur-an | ombára | ilán-ai, | duói | dul-íþ-an | kel-ár-ai | dulfáron. |
| 昇る-<彼らが> | 十 | 灯-<〜たちが> | その次に | 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 下ろし荷<対格> |
「十の灯が昇る。その次に、樵たちが下ろし荷を下ろす。」
年代記の記事を読み上げる場面。決まった順の項目を、文1, duói 文2の形でつなぐ改まった用法。duóiは原因ではなく単に項目順を示す。第二節は動詞で始まる。
ésa torár sé ormároi aldáres áurenes.
読み:エーサ トラール セー オルマーロイ アルダーレス アウレネス。
| és-a | torár | sé | ormár-oi | aldár-es | áur-en-es. |
| いる-<(軽いものが)> | 客<主格> | この<軽性> | 左-<与格> | 座-<属格> | 昇る-<〜した・〜された>-<属格・軽性> |
「この客は高き座の左側にいる。」
儀礼・書物での位置記述。人を指す名詞 torár には軽性の動詞形が対応する。左側を ormároi で示し、その持ち主を属格句 aldáres áurenes「高き座の」で後に受ける。左は尊い側とされる。
aurénde flíva
読み:アウレンデ フリーヴァ
| aur-énd-e | flíva |
| 昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 昇る魂<主格> |
「昇る魂が昇りますように。」
弔いの詞や祈りの定型として、魂の上昇を願う言い方。aur-「昇る」の願望法第三人称単数軽 aur-énd-e で、目の前の相手に直接命令するのではなく、上昇を祈る用法。flíva は詩語として「昇る魂」の意。
nunésa an aldáran áurenan
読み:ヌネーサ アン アルダーラン アウレナン
| nun-és-a | an | aldár-an | áur-en-an |
| 目を伏せる-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 上手 | 座-<対格> | 昇る-<〜した・〜された>-<対格> |
「高き座へ向かう際には、目を伏せるべきである。」
作法書や碑文の当為法。主語を言わない一般主語は軽性の -a で現れる。an aldáran áurenan は「高き座へ向かって」。
kréuna nóra, salóur áura selvá
読み:クレウナ ノーラ、サロール アウラ セルヴァー
| kréun-a | nóra, | salóur | áur-a | selvá |
| 更ける-<(軽いものが)> | 夜<主格> | しかし | 昇る-<(軽いものが)> | 息<主格> |
「夜は更ける。しかし、息は昇る。」
詩文・儀礼語のような対句。逆接の salóur は第二節頭に立つ。夜 nóra も息 selvá も軽性の主語として扱われ、動詞はいずれも軽性の3人称単数語尾 -a をとる。夜の「更ける」と息の「昇る」を上下の対として並べる型である。
高い(分詞 áuren)
分詞 áuren で「高い」「高き」を表す。aldár áuren「高き座」。
luuménde aldár áuren sáindaran sé.
読み:ルーメンデ アルダール アウレン サインダラン セー。
| luum-énd-e | aldár | áur-en | sáindar-an | sé. |
| ご覧になる-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 座<主格> | 高い-<〜した・〜された> | 証文-<対格> | この<軽性> |
「高き座に、この証文をご覧いただきたく存じます。」
宮廷で王に書きものを差し出すときの、上向きの依頼。命令の代わりに願望法の3人称を使い、「見る」は尊敬の補充形 lúum- にする。aldár áuren「高き座」は王の位の総称で、今の王はふつうこれだけで指す。
ésa lóna sé áuren.
読み:エーサ ローナ セー アウレン。
| és-a | lóna | sé | áur-en. |
| いる-<(軽いものが)> | 柱の木<主格> | この<軽性> | 高い-<〜した・〜された> |
「この柱の木は高い。」
分詞 áuren を述語の形容詞として使った文。生えている柱の木は軽性なので、指示詞は sé になり、分詞は軽性・単数・主格で語尾がつかない。伐られて材木になると、まわりの語は重性の一致に変わる。
お昇りになる(死の婉曲)
魂が上へ昇ることから、人の死、とくに目上の人や王の死を高めて言う。
áursa ólmar némes sórel.
読み:アウルサ オルマル ネーメス ソーレル。
| áurs-a | ólmar | ném-es | sórel. |
| お昇りになる<〜し終えた>-<(軽いものが)> | 年長者<主格> | <私>-<属格> | 今日 |
「私どもの年長者が、今日お昇りになりました。」
人の死を、魂が上へ昇ることとして高めて言う婉曲表現。二重母音の語根 áur- は、-s- を足した áurs- で完了相を作る。死者の名は一年のあいだ口にしないので、名前ではなく親族の呼び方や立場で指す。
mé vír þelán aldáres te áursa!
読み:メー ヴィール セラーン アルダーレス テ アウルサ!
| mé | vír | þel-án | aldár-es | te | áurs-a! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 言う<命令法><あなたが> | 名前-<対格> | 座-<属格> | <関係節> | お昇りになる<〜し終えた>-<(軽いものが)> |
「お昇りになった座のお名を口にするな。」
王の崩御から一年のあいだの禁忌を言う文。この間は座名も声に出さず、aldár te áursa「お昇りになった座」と言う。aldár áuren「高き座」の分詞ではなく、関係節に完了形を入れて区別している。関係節は文の終わりまで続く。
下から上へ移ることを表す基本の自動詞。煙・息・魂・音・言葉が上へ昇ること、星や月が空に昇ること、鷲が風に乗って高く昇ることに使う。「軽くなって上に近づく」というよい意味を帯びる。死者の魂が上へ昇ることから、死を高めて言う婉曲にもなる。分詞 áuren は「高い」の意味の形容詞として使われる。
ésau dáu kéulau aurár némei.
読み:エーサウ ダウ ケウラウ アウラール ネーメイ。
| és-au | dáu | kéul-au | aur-ár | ném-ei. |
| いる-<双数> | 二 | 頭-<双数> | 縁鷲-<〜らの> | <私>-<与格> |
「私には縁鷲が二羽(二頭)いる。」
所有の文。持ち主は与格 némei で表す。動詞は持たれているもの(kéulau、双数)に一致するので、双数の ésau になる。数詞 dáu の後ろなので、量の名詞は双数 kéulau。数えられる生き物 aurá は、複数属格 aurár で後ろに置く。鷹狩りに使う縁鷲のような生き物も、kéul で数える。
ombéra endríña aurán te áura an dún.
読み:オンベーラ エンドリーニャ アウラーン テ アウラ アン ドゥーン。
| ombér-a | endríña | aur-án | te | áur-a | an | dún. |
| 指さす-<(軽いものが)> | 子ども<主格> | 縁鷲-<対格> | <関係節> | 昇る-<(軽いものが)> | 上手 | 丘<対格> |
「子どもが、丘の上手へ昇っていく縁鷲を指さす。」
鳥を指さすのはかまわない。指さすのが禁じられているのは、星と目上の人。aurá は語尾に強勢のあるa語幹なので、対格は aurán。関係節は te で始まり、主語の抜けた穴は空けたままにする。dún「丘」は重性なので、an の後ろの対格も主格と同じ形になる。
selvána aurólmar ré torélo nébro.
読み:セルヴァーナ アウロルマル レー トレーロ ネーブロ。
| selván-a | aur-ólmar | ré | tor-él-o | nébro. |
| おっしゃる-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-長老 | <〜と(節)> | 来る-<〜だろう>-<(重いものが)> | 霧<主格> |
「長老の方は、霧が来るだろうとおっしゃる。」
敬われる長老の言葉を人に伝える言い方。尊敬の接頭辞 au- は母音の前で aur- になる(au-+ólmar → aurólmar)。selván- は「言う」の尊敬の補充形。ré の後ろの節は元の法を保ち、ここでは推量法。霧 nébro は重性なので、動詞は -o をとる。
auransoinéla ausenár sáindaran sé?
読み:アウランソイネーラ アウセナール サインダラン セー?
| aur-ansoin-él-a | au-sen-ár | sáindar-an | sé? |
| <お〜になる・御〜>-思い出す<〜し終えた>-<〜だろう>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人> | 証文-<対格> | この<軽性> |
「「目付殿は、この証文を覚えておいででしょうか。」」
上向きの問い。目上の人には ké を使わず、推量法で推し量る形で尋ねる。「覚えている」は「思い出す」ansén- の完了語幹(補充形)ansóin- で言い、尊敬の au- は母音の前で aur- になる。推量法の -él- が強勢をとるので、語根の強勢は消える(auransoinéla)。相手は役職名に au- をつけた3人称で言う。
lúin glóira aurilanár es dúnos, dulísimor plánan.
読み:ルーイン グロイラ アウリラナール エス ドゥーノス、ドゥリーシモル プラーナン。
| lúin | glóir-a | aur-ilanár | es | dún-os, | du-lís-imor | plán-an. |
| とき | お越しになる-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-星読み<主格> | から | 丘-<属格> | <〜させていただく>-書く-<我々が> | 帳簿-<対格> |
「星読みの方が丘からお越しになるときは、我々が帳簿を書かせていただきます。」
目下の者が星読みについて話す改まった文。星読みは四段下りの役人なので、au- をつけて高める。au- は母音の前で aur- になるので、au-ilanár は aurilanár になる。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。主節は謙譲の接頭辞 du- で自分たちの行いを低めている(du-lís-imor)。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。
áuro áurmo gráis es orénos.
読み:アウロ アウルモ グライス エス オレーノス。
| áur-o | áurmo | gráis | es | orén-os. |
| rise-<(重いものが)> | smell<主格> | bad | from | edge-GEN. |
「縁から悪い匂いが立ち上る。」
書物や年代記的な記述。主語名詞句 áurmo gráis は「名詞+形容詞」の順。動詞 áur- は重性の主語 áurmo に一致して語尾 -o をとる。es + 属格の orénos は「縁から」を表す出処の前置詞句。
þuláura naþelár, áuro nóumo éles
読み:スラウラ ナセラール、アウロ ノーモ エーレス
| þuláur-a | naþelár, | áur-o | nóumo | él-es |
| 得意がる-<(軽いものが)> | 若者<主格>, | 上がる-<(重いものが)> | 顔<主格> | <3人称単数・軽性>-<属格> |
「青年は得意がっており、顔が上がっている。」
得意がりを述べる文に、顔が上がった様子を無接続で添える常套句。主語の若者に動詞が軽性一致し、顔は体の部分で重性なので áur- が重性一致する。顔一面に得意が表れた意。
自動詞。直説法3単 áura(軽)/áuro(重)。語根が二重母音なので、完了語根は -s- を足して áurs-。分詞 áuren「高い・昇った」。使役 auríþ-「上げる」。áura と aurá「縁鷲」は強勢の位置だけで区別される。
古高原語 *aur-。尊敬の接頭辞 au-、派生語 aurá「縁鷲(昇るもの)」、aurím「高さ」と同じ源。
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